以下、本発明の実施の形態に係る揺動型圧縮機を添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態を示し、図1において、1は内部にクランク室2が画成されたクランクケースで、該クランクケース1には、クランク室2内に位置して電動モータ3の出力軸4に固定されたクランク軸5が回転可能に支持されている。また、出力軸4はクランク軸5の一部をなすもので、該出力軸4にはクランク軸5に当接してバランスウェイト6が取付けられている。
7はクランクケース1上に取付けられた円筒状のシリンダで、該シリンダ7は、基端側がクランク室2内に開口すると共に、その内周面7Aが後述するピストン部18の摺動面となっている。また、シリンダ7の先端側には、シリンダヘッド8が搭載され、該シリンダヘッド8内には、図1、図2に示す如く、吸込口9Aを介して外部に連通する吸込室9と、吐出口10Aを介して外部に連通する吐出室10とが画成されている。
11はシリンダ7とシリンダヘッド8との間に挟持された弁座板で、該弁座板11には、吸込室9を後述の圧縮室19に連通する吸込穴11Aと、吐出室10を圧縮室19に連通する吐出穴11Bとが形成されている。また、弁座板11にはリード弁としての吸込弁12、吐出弁13が取付けられ、該吸込弁12、吐出弁13は、基端側がねじ等を介して弁座板11に固定された固定端となり、先端側は自由端となって、吸込穴11A、吐出穴11Bをそれぞれ開,閉する。
14はシリンダ7内に摺動可能に挿嵌されたロッキングピストン(以下、ピストン14という)を示している。このピストン14は、一端側がクランク室2内に位置しクランク軸5に軸受15を介して回転可能に連結された連結部16と、該連結部16に一体形成されシリンダ7内へと伸長した棒状のピストンロッド17と、該ピストンロッド17の他端側に一体的に形成された円盤部としてのピストン部18とによって構成されている。これにより、ピストン14は、クランク軸5が回転駆動することにより、図2、図3に示すようにシリンダ7内でピストン部18が矢示A,A′方向に揺動しつつ往復動する。
そして、ピストン部18は、シリンダ7の内径寸法よりも小さい外径寸法をもって略円盤状に形成されると共に、シリンダ7内に位置して弁座板11との間に圧縮室19を画成している。また、ピストン部18は、後述のピストン本体20、リテーナ21等から構成されている。
20はピストンロッド17を挟んで連結部16の反対側に設けられた円盤状のピストン本体を示している。このピストン本体20は、図4、図6に示す如く、下面中央にピストンロッド17の他端部が一体的に取付けられている。また、ピストン本体20は、端面20Aの中央に後述するリテーナ21の小径部21Aが嵌合する取付凹部20Bが凹設され、該取付凹部20Bの中心部にはねじ穴20Cが形成されている。また、ピストン本体20には、リテーナ21が対面する端面20Aの外周部を縮径することにより、全周に亘って環状段差部20Dが形成されている。この環状段差部20Dは、後述するリテーナ21の下面21Cに閉塞されることにより該下面21Cと協働してリング溝23を形成するものである。
21はピストン本体20の端面20Aに対面して取付けられたリテーナで、該リテーナ21は、ピストン本体20と共にピストン部18を構成している。また、リテーナ21は、後述のピストンリング24をリング溝23に取付け、取外しできるように、ピストン本体20のねじ穴20Cにボルト22を用いて着脱可能に締着されている。ここで、リテーナ21は、後述する回転規制部材25の突起部26がピストン14の揺動方向(矢示A,A′方向)に対してほぼ直交する位置からずれないように、ピストン本体20に対する周方向の回転を規制した状態で取付けられている。
また、リテーナ21は、ピストン本体20の取付凹部20B内に嵌合する小径部21Aと、該小径部21Aの上側に設けられた大径な大径部21Bとにより段付円盤状に形成されている。そして、大径部21Bの下面21Cはピストン本体20の端面20Aに対面し、該下面21Cの外周側は、後述するリング溝23の上壁面をなしている。また、リテーナ21の上端面には、吸込弁12との干渉を防止するための弁収容溝21Dがピストン14の揺動方向(矢示A,A′方向)に延びて設けられている。さらに、下面21Cの外周側には、後述する回転規制部材25の突起部26が設けられている。
23はピストン部18の外周側に設けられたリング溝で、該リング溝23はピストンリング24が取付けられるものである。また、リング溝23は、ピストン本体20の環状段差部20Dをリテーナ21の下面21Cにより閉塞することにより、該ピストン本体20の環状段差部20Dとリテーナ21の下面21Cとの間で径方向外側に開口したコ字状の全周凹溝として形成されている。
24はリング溝23に装着され非リップ形状をした第1の実施の形態によるピストンリングを示している。このピストンリング24は、例えば耐摩耗性および自己潤滑性に優れた樹脂材料、金属材料等によって略円環状に形成されている。また、ピストンリング24は、上端面24A、下端面24B、内周面24Cおよび外周面24Dを有する断面略四角形状に形成されている。
ここで、ピストンリング24には、図4ないし図6に示す如く、周方向の一部を切離すことができるように合口部24Eが形成され、該合口部24Eの位置では、上側段部24Fと上側突部24G、下側段部24Hと下側突部24Jが互い違いになるように対向している。そして、合口部24Eは、ピストンリング24の直径寸法を拡径、縮径可能とすることにより、シリンダ7の内周面7Aに対する密着性を高めるものである。しかし、合口部24Eの位置は、シリンダ7と摩擦接触したときに変形、偏摩耗等を生じ易い脆弱部となっている。また、ピストンリング24には、合口部24Eと径方向の反対側に位置して後述する回転規制部材25の嵌合凹部27が形成されている。
さらに、ピストンリング24の外周側には、ピストン14の往復動方向の両端側に位置して上端面24A、下端面24Bと外周面24Dとの角隅にそれぞれR面取り部24Kが形成されている。このR面取り部24Kは、ピストン14がシリンダ7内を揺動しつつ往復動するときに、ピストンリング24の角隅が局部的に接触するのを防止し、シリンダ7の内周面7A上を滑らかに摺動させるものである。
25はピストン部18のリング溝23とピストンリング24との間に設けられた回転規制手段としての回転規制部材を示している。この回転規制部材25は、ピストンリング24がピストン部18の周方向に回転するのを規制することにより、ピストンリング24の脆弱部となる合口部24Eがピストン14の揺動方向(矢示A,A′方向)となる位置、即ち、運転時にシリンダ7の内周面7Aに摺動接触する位置に配置されるのを防止するものである。このため、回転規制部材25は、例えばシリンダ7の内周面7Aに接触する位置から最も離間し、シリンダ7との摺動接触が最小限となるように、この接触位置から90度回転した位置に合口部24Eを位置決めしている。そして、回転規制部材25は、後述の突起部26と嵌合凹部27とにより構成されている。
26はリング溝23を構成するリテーナ21の下面21Cに設けられた突起部を示している。この突起部26は、リテーナ21の下面21C外周側でピストン14の揺動方向(矢示A,A′方向)に対してほぼ直交する位置に下向きに突設されている。また、突起部26は、リテーナ21と一体的に設けられている。
27はピストンリング24の上端面24A側に設けられた嵌合凹部を示している。この嵌合凹部27は、合口部24Eと径方向の反対側に位置し、上端面24Aの内側寄りから内周面24Cの下側寄りに亘って径方向に切欠かれた凹溝として形成されている。また、嵌合凹部27は、ピストン14の揺動方向(矢示A,A′方向)から外れた位置、例えば揺動方向に対してほぼ90度回転した位置に配置されている。
このように構成された回転規制部材25は、ピストン部18を組立てるときに、突起部26を嵌合凹部27に嵌合するようにピストン本体20にリテーナ21を取付けるだけで、ピストンリング24の脆弱部となる合口部24E、嵌合凹部27をピストン14の揺動方向(矢示A,A′方向)となる位置から最も離間した位置に位置決めすることができる。
なお、28はピストンリング24の内周側に位置してリング溝23に装着されたテンションリングを示している。このテンションリング28は、ピストンリング24を拡径する方向に付勢することにより、該ピストンリング24をシリンダ7の内周面7Aに押付けて気密性を高めるものである。
29は出力軸4の先端側に固定された冷却ファンを示し、該冷却ファン29はクランク室2内に冷却風を送風する。
第1の実施の形態による空気圧縮機は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
まず、電動モータ3を回転駆動すると、ピストン14がシリンダ7内を矢示A,A′方向に揺動しつつ往復動する。これにより、空気圧縮機は、吸込室9から圧縮室19内に空気を吸入する吸入行程と、圧縮室19内の空気を圧縮し吐出室10に圧縮空気を吐出する圧縮行程とを繰返す圧縮運転を行う。
そして、圧縮運転が行われている間は、ピストンリング24の外周面24D側がシリンダ7の内周面7Aに常時摺接する。これにより、ピストンリング24はピストン14とシリンダ7との間を気密にシールし、圧縮室19内の空気がクランク室2に向けて漏洩するのを防止している。
一方、電動モータ3を停止したときには、ピストン14の往復動も電動モータ3と一緒に停止する。ここで、例えばピストン14が圧縮室19内の空気を圧縮する圧縮行程で停止した場合には、圧縮室19内に高圧な圧縮空気が残存することがある。このとき、ピストンリング24とリング溝23との間には環状の空間が形成されているから、圧縮室19内に残った高圧な圧縮空気はピストンリング24とリング溝23との間の隙間を通じてクランク室2内に向けて漏洩する。これにより、圧縮室19内に高圧な圧縮空気が残存することがないから、空気圧縮機の再起動時に電動モータ3等に過負荷が作用するのを防止することができ、円滑に再起動することができる。
また、ピストンリング24の外周側に角隅が形成される場合には、ピストン14の揺動角が最大となったときにピストンリング24の角隅が局部的にシリンダ7に接触して偏摩耗や圧縮空気の漏洩が生じる虞がある。これに対し、ピストンリング24の外周側にR面取り部24Kを設けたから、シリンダ7との局部的な接触を防止することができ、圧縮空気の漏洩を防止して圧縮性能を高めることができる。
かくして、第1の実施の形態によれば、ピストン14のピストン部18にはリング溝23を介してピストンリング24を装着したから、ピストンリング24を用いてピストン14とシリンダ7との間をシールすることができる。また、実施の形態では、ピストンリング24を用いてピストン14とシリンダ7との間をシールするから、従来技術のようにリップシールを用いる場合に比べて、屈曲等が生じるリップ部が存在せず、ピストンリング24の強度を上げることができ、耐久性、信頼性を高めることができる。この結果、例えば数MPa程度の高圧な空気圧縮機に対してもロッキングピストン14を用いることができ、部品点数を削減して製造コストの低減、装置の小型化を図ることができる。
また、ピストン14のピストン部18にはリング溝23を介してピストンリング24を装着したから、空気圧縮機の停止時にはリング溝23とピストンリング24との隙間を通じて圧縮室19内の圧縮空気をクランクケース1側に逃すことができる。このため、空気圧縮機の起動時には常に圧縮室19内を低圧な状態に保持することができるから、再起動時の負荷を低減することができる。
また、本実施の形態ではピストンリング24の外周側には円弧状のR面取り部24Kを設けたから、このR面取り部24Kによりシリンダ7との局部的な接触を防止することができ、圧縮性能を高めることができると共に、信頼性を向上することができる。
一方、ピストン部18のリング溝23とピストンリング24との間に回転規制部材25を設けているから、ピストンリング24の脆弱部となる合口部24E、嵌合凹部27を、ピストン14が揺動したときにシリンダ7の内周面7Aと摺動接触する揺動方向(矢示A,A′方向)から外れた位置に位置決めすることができる。
この結果、合口部24E、嵌合凹部27が設けられたピストンリング24の脆弱部が変形、偏摩耗等を生じるのを防止することができるから、圧縮漏れを防止して運転効率や信頼性を高めることができる。また、ピストンリング24の変形、摩耗を抑えて寿命を延ばすことができる。
また、回転規制部材25は、リング溝23を構成するリテーナ21の下面21Cに設けた突起部26と、ピストンリング24に設けた嵌合凹部27とにより構成している。従って、突起部26を嵌合凹部27に嵌合するようにピストン本体20にリテーナ21を取付けるだけで、ピストンリング24の合口部24Eをピストン14の揺動方向となる位置から離間した位置に位置決めすることができる。これにより、ピストン本体20、リテーナ21、回転規制部材25を容易に組立てることができる。
また、回転規制部材25の突起部26は、ピストン部18を構成するリテーナ21と一体的に設けているから、突起部26がリテーナ21から脱落するような事態を未然に防ぐことができる。また、突起部26をリテーナ21と一体成形することができ、製造コストを低減することができる。
さらに、ピストン部18をピストン本体20とリテーナ21とにより構成し、該ピストン本体20の環状段差部20Dをリテーナ21で閉塞することによりリング溝23を形成している。従って、ピストン本体20からリテーナ21を取外すことにより、リング溝23にピストンリング24を簡単に取付けることができ、組立作業性を向上することができる。
次に、図7および図8は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、嵌合凹部をピストンリングに設けられた合口部としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
31は第2の実施の形態によるピストンリングで、該ピストンリング31は、第1の実施の形態によるピストンリング24とほぼ同様に、上端面31A、下端面31B、内周面31Cおよび外周面31Dを有する断面略四角形状に形成され、合口部31Eの位置が上側段部31F、上側突部31G、下側段部31H、下側突部31Jとなり、外周側にR面取り部31Kを有している。しかし、第2の実施の形態によるピストンリング31は、第1の実施の形態による嵌合凹部27を廃止し、合口部31Eを後述の嵌合凹部33として用いている点で、第1の実施の形態によるピストンリング24と相違している。
32は第2の実施の形態による回転規制手段としての回転規制部材を示している。この回転規制部材32は、第1の実施の形態による回転規制部材25とほぼ同様に、ピストンリング31がピストン部18の周方向に回転するのを規制するもので、ピストン部18のリング溝23とピストンリング31との間に設けられている。そして、回転規制部材32は、リテーナ21の下面21Cに下向きに突設された突起部26と、後述の嵌合凹部33とにより構成されている。
33はピストンリング31の上端面31A側に設けられた嵌合凹部を示している。この嵌合凹部33は、図8に示すように、合口部31Eにより形成されている。即ち、嵌合凹部33は、合口部31Eの位置で上側段部31Fと上側突部31Gとの間に周方向に形成された隙間を利用して設けられている。
かくして、このように構成された第2の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態によれば、回転規制部材32の嵌合凹部33は、ピストンリング31に設けられた合口部31Eの上側段部31Fと上側突部31Gとの間に形成している。この結果、新たに嵌合凹部を形成することなく、既存の合口部31Eを利用して回転規制部材32を容易に形成することができる。
次に、図9は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、回転規制手段の突起部をピストン本体に設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
41は第3の実施の形態によるロッキングピストン(以下、ピストン41という)、42は該ピストン41のピストン本体を示している。このピストン本体42は、第1の実施の形態によるピストン本体20とほぼ同様に、端面42A、嵌合凹部、ねじ穴(いずれも図示せず)および環状段差部42Dを有している。しかし、第3の実施の形態によるピストン本体42は、環状段差部42Dに後述の突起部45が形成されている点で、第1の実施の形態によるピストン本体20と相違している。
43はリング溝23に装着され非リップ形状をした略円環状のピストンリングで、該ピストンリング43は、第1の実施の形態によるピストンリング24とほぼ同様に、上端面43A、下端面43B、内周面43Cおよび外周面43Dを有する断面略四角形状に形成され、合口部43Eの位置が上側段部43F、上側突部43G、下側段部43H、下側突部43Jとなっている。また、ピストンリング43の外周側にはR面取り部43Kが設けられている。
44は第3の実施の形態による回転規制手段としての回転規制部材を示している。この回転規制部材44は、第1の実施の形態による回転規制部材25とほぼ同様に、ピストンリング43が周方向に回転するのを規制するもので、リング溝23とピストンリング43との間に設けられている。そして、回転規制部材44は、後述の突起部45と嵌合凹部46とにより構成されている。
45はピストン本体42の環状段差部42Dに設けられた突起部を示している。この突起部45は、ピストン41の揺動方向(矢示A,A′方向)に対してほぼ直交する位置に上向きに突設されている。
46はピストンリング43の下端面43B側に設けられた嵌合凹部を示している。この嵌合凹部46は、ピストン41の揺動方向(矢示A,A′方向)から外れるように合口部43Eと径方向の反対側に配置されている。また、嵌合凹部46は、下端面43Bの内側寄りから内周面43Cの上側寄りに亘って径方向に切欠かれた凹溝として形成されている。
かくして、このように構成された第3の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態によれば、ピストン本体42に設けた突起部45にピストンリング43に設けた嵌合凹部46を嵌合するだけで、該ピストンリング43が回転するのを規制して合口部43E、嵌合凹部46の位置での変形、偏摩耗等を防止することができる。
次に、図10および図11は本発明の第4の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、回転規制手段を、ピストン本体に突設した突起部とピストンリングの合口部からなる嵌合凹部とにより構成したことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
51はシリンダ7内に摺動可能に挿嵌された第4の実施の形態によるロッキングピストン(以下、ピストン51という)、52は該ピストン51のピストン本体を示している。このピストン本体52は、第3の実施の形態によるピストン本体42とほぼ同様に、端面52A、嵌合凹部、ねじ穴(いずれも図示せず)および環状段差部52Dを有し、環状段差部52Dに後述の突起部55が形成されている。
53は第4の実施の形態によるピストンリングで、該ピストンリング53は、第2の実施の形態によるピストンリング31とほぼ同様に、上端面53A、下端面53B、内周面53Cおよび外周面53Dを有する断面略四角形状に形成され、合口部53Eの位置が上側段部53F、上側突部53G、下側段部53H、下側突部53Jとなり、外周側にR面取り部53Kを有している。
54は第4の実施の形態による回転規制手段としての回転規制部材を示している。この回転規制部材54は、第1の実施の形態による回転規制部材25とほぼ同様に、ピストンリング53が周方向に回転するのを規制するもので、リング溝23とピストンリング53との間に設けられている。そして、回転規制部材54は、後述の突起部55と嵌合凹部56とにより構成されている。
55はピストン本体52の環状段差部52Dに設けられた突起部を示している。この突起部55は、ピストン51の揺動方向(矢示A,A′方向)に対してほぼ直交する位置に上向きに突設されている。
56はピストンリング53の下端面53B側に設けられた嵌合凹部を示している。この嵌合凹部56は、図11に示すように、合口部53Eにより形成されている。即ち、嵌合凹部56は、合口部53Eの位置で下側段部53Hと下側突部53Jとの間に周方向に形成された隙間を利用して設けられている。
かくして、このように構成される第4の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
次に、図12および図13は本発明の第5の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ピストンリングの合口部を、クランク軸に設けられた冷却ファンと対向する位置に配置したことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
61はシリンダ7内に摺動可能に挿嵌された第5の実施の形態によるロッキングピストン(以下、ピストン61という)を示している。このピストン61は、前記第1の実施の形態によるピストン14とほぼ同様に構成され、ピストン部18のリング溝23に後述のピストンリング62が装着されている。
62はピストン部18のリング溝23に装着された第5の実施の形態によるピストンリングを示している。このピストンリング62は、例えば第1の実施の形態によるピストンリング24と同様に、断面略四角形状に形成され、合口部62Aを有している。そして、第5の実施の形態によるピストンリング62は、図13に示すように、その合口部62Aがピストン61の揺動方向(矢示A,A′方向)から外れ、後述の冷却ファン63と対向する位置に配置されている。
63は出力軸4の先端側に固定された第5の実施の形態による冷却ファンを示している。この冷却ファン63は、第1の実施の形態による冷却ファン29よりも大径となり、シリンダ7に向けて冷却風を送風することができる。
かくして、このように構成された第5の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態によれば、ピストンリング62の合口部62Aを冷却ファン63と対向する位置に配置しているから、冷却ファン63からの冷却風をピストンリング62の合口部62Aに向けて供給することができる。これにより、脆弱なピストンリング62の合口部62Aを冷却風で積極的に冷却することができるから、合口部62Aが溶融して固着したり、熱によって変形、偏摩耗を生じるのを防止でき、信頼性や寿命を向上することができる。
次に、図14ないし図16は本発明の第6の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、2段式空気圧縮機の低圧側と高圧側との両方に対してロッキングピストンを使用すると共に、それぞれのロッキングピストンにリング溝を介してピストンリングを装着する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
71は軸方向の両端が開口した筒状のクランクケースで、該クランクケース71の後側には有底筒状のモータケース72が配設されている。そして、モータケース72とクランクケース71との間にはステータ73Aとロータ73Bからなる電動モータ73が固定して取付けられている。また、電動モータ73は出力軸74を有し、該出力軸74は、クランクケース71とモータケース72に対し軸受75,76を介して回転可能に支持されている。一方、クランクケース71の内部には、出力軸74が伸長して設けられると共に、後述するクランク軸90,110が出力軸74に接続された状態で収容されている。
また、出力軸74にはクランクケース71内に位置して回転バランスをとるためのバランスウエイト77が取付けられると共に、クランクケース71の前端側の開口はカバー78を用いて閉塞されている。さらに、出力軸74の先端側には、クランクケース71の外側に位置して圧縮機を冷却する冷却ファン79が取付けられている。
81はクランクケース71に設けられた低圧側圧縮部で、該低圧側圧縮部81は、外部から吸入した空気を圧縮するものである。そして、低圧側圧縮部81は、図15に示す如く、後述のシリンダ82、ピストン91等から大略構成されている。
82はクランクケース71に一体に設けられた低圧側のシリンダで、該シリンダ82にはシリンダヘッド83が設けられている。そして、シリンダヘッド83内には吸込室84および吐出室85が画成されている。
また、シリンダ82とシリンダヘッド83との間には弁座板86が設けられ、該弁座板86と後述のピストン91との間には低圧側の圧縮室87が画成されている。そして、この圧縮室87は、配管(図示せず)等を介して後述する高圧側圧縮部101と連通している。
また、弁座板86には、吸込室84と圧縮室87とを連通する吸込ポート86Aが設けられると共に、吐出室85と圧縮室87とを連通する吐出ポート86Bが設けられている。さらに、弁座板86には吸込ポート86A、吐出ポート86Bと対応した位置にそれぞれ吸込弁88、吐出弁89が設けられている。
90は後述するバランスウエイト77の後側に位置して出力軸74に固定して設けられたクランク軸で、該クランク軸90には後述するピストン91が回転可能に連結されている。
91はシリンダ82内に摺動可能に挿嵌された低圧側のロッキングピストン(以下、ピストン91という)で、該ピストン91は、一端側がクランク軸90に対して軸受92を介して回転可能に連結された連結部93と、該連結部93に一体形成されシリンダ82内へと伸長した棒状のピストンロッド94と、該ピストンロッド94の他端側に一体形成された円盤部としてのピストン部95とによって構成されている。
ここで、ピストン部95は、シリンダ82の内径寸法よりも小さい外径寸法をもって略円盤状に形成されると共に、シリンダ82内に位置して弁座板86との間に圧縮室87を画成している。そして、ピストン部95は、第1の実施の形態によるピストン部18とほぼ同様に、ピストン本体95Aとリテーナ95Bとにより構成されている。
96はピストン部95の外周側に凹陥して設けられたリング溝で、該リング溝96は、ピストン本体95Aとリテーナ95Bとの間に形成された環状の凹溝によって構成されている。そして、リング溝96には、第1の実施の形態によるピストンリング24とほぼ同様のピストンリング97が装着されている。これにより、ピストンリング97は、シリンダ82とピストン91との間を気密にシールしている。また、リング溝96とピストンリング97との間には、前述した各実施の形態と同様の回転規制部材(図示せず)が設けられている。
101は低圧側圧縮部81と対向してクランクケース71に設けられた高圧側圧縮部で、該高圧側圧縮部101は、低圧側圧縮部81から導かれた低圧な圧縮空気を再び圧縮し、高圧な圧縮空気を得るものである。そして、この高圧側圧縮部101は、図16に示す如く、後述のシリンダ102、ピストン111等によって大略構成されている。
102はクランクケース71に一体に設けられた高圧側のシリンダで、該シリンダ102にはシリンダヘッド103が設けられている。そして、シリンダヘッド103内には吸込室104と吐出室105とが画成されている。
また、シリンダ102とシリンダヘッド103との間には弁座板106が設けられ、該弁座板106と後述のピストン111との間には高圧側の圧縮室107が画成されている。そして、この圧縮室107は、圧縮室87からの圧縮空気を高圧に再度圧縮するものである。
また、弁座板106には吸込室104と圧縮室107とを連通する吸込ポート106Aが設けられると共に、吐出室105と圧縮室107とを連通する吐出ポート106Bが設けられている。さらに、弁座板106には吸込ポート106A、吐出ポート106Bと対応した位置にそれぞれ吸込弁108、吐出弁109が設けられている。
110はクランク軸90の後側に位置して出力軸74に固定して設けられたクランク軸で、該クランク軸110には後述するピストン111が回転可能に連結されている。
111はシリンダ102内に摺動可能に挿嵌された高圧側のロッキングピストン(以下、ピストン111という)で、該ピストン111は、低圧側のピストン91とほぼ同様に、一端側がクランク軸110に対して軸受112を介して回転可能に連結された連結部113と、該連結部113に一体形成されシリンダ102内へと伸長した棒状のピストンロッド114と、該ピストンロッド114の他端側に一体形成された円盤部としてのピストン部115とによって構成されている。
ここで、ピストン部115は、シリンダ102の内径寸法よりも小さい外径寸法をもって略円盤状に形成されると共に、シリンダ102内に位置して弁座板106との間に圧縮室107を画成している。そして、ピストン部115は、前述した低圧側のピストン部95とほぼ同様に、ピストン本体115Aとリテーナ115Bとにより構成されている。
116はピストン部115の外周側に凹陥して設けられたリング溝で、該リング溝116は、ピストン本体115Aとリテーナ115Bとの間に形成された環状の凹溝によって構成されている。そして、リング溝116にも、第1の実施の形態によるピストンリング24とほぼ同様のピストンリング117が装着されている。これにより、ピストンリング117は、シリンダ102とピストン111との間を気密にシールしている。また、リング溝116とピストンリング117との間には、前述した各実施の形態と同様の回転規制部材(図示せず)が設けられている。
第6の実施の形態による往復動圧縮機は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について述べる。
まず、電動モータ73によって出力軸74が回転駆動され、低圧側圧縮部81と高圧側圧縮部101とが駆動する。これにより、低圧側圧縮部81では、クランク軸90が回転すると、ピストン91がシリンダ82内を揺動しつつ往復動する。この結果、シリンダ82側では吸込室84から圧縮室87内に空気を吸入する吸入行程と、圧縮室87内の空気を圧縮し吐出室85に低圧な圧縮空気を吐出する圧縮行程とを繰返す圧縮運転を行う。
一方、高圧側圧縮部101では、低圧側圧縮部81の吐出室85からの低圧な圧縮空気を吸込室104から圧縮室107内に吸入する吸入行程と、圧縮室107内の空気を圧縮し吐出室105に高圧な圧縮空気を吐出する圧縮行程とを繰り返す。
このように当該往復動圧縮機は、低圧側圧縮部81の圧縮室87内で一度圧縮した低圧な空気を高圧側圧縮部101の圧縮室107内で圧縮し、高圧な圧縮空気として外部に吐出するものである。
かくして、このように構成される第6の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、ピストン91,111にはリング溝96,116を介してピストンリング97,117を装着し、各ピストンリング97,117を用いてピストン91,111とシリンダ82,102との間をシールする構成としたから、従来技術のようにリップシールを用いる場合に比べて、ピストンリング97,117の変形、損傷を防止しつつ高圧の圧縮空気をシールすることができる。この結果、2段式空気圧縮機の低圧側圧縮部81に加えて高圧側圧縮部101にもロッキングピストン111を使用することができるから、例えばピストンとピストンロッドとを別部材で形成した場合に比べて、部品点数を削減して製造コストの低減、装置の小型化を図ることができる。
次に、図17ないし図19は本発明の第7の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、単一の部材から形成されたピストン部にリング溝を設け、このリング溝に突起部を設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
121は第7の実施の形態によるロッキングピストン(以下、ピストン121という)で、該ピストン121は、一端側がクランク軸5に対して軸受15を介して回転可能に連結された連結部122と、該連結部122に一体形成されシリンダ7内へと伸長した棒状のピストンロッド123と、該ピストンロッド123の他端側に一体形成された円盤部としてのピストン部124とによって構成されている。ここで、ピストン部124は、図18、図19に示す如く、円盤状をした単一部材として構成され、その外周面にはリング溝125が形成されている。
126は第7の実施の形態によるピストンリングで、該ピストンリング126は、第1の実施の形態によるピストンリング24とほぼ同様に、上端面126A、下端面126B、内周面126Cおよび外周面126Dを有する断面略四角形状に形成され、合口部126Eの位置が上側段部126F、上側突部126G、下側段部126H、下側突部126Jとなり、外周側にR面取り部126Kを有している。
127は第7の実施の形態による回転規制手段としての回転規制部材を示している。この回転規制部材127は、第1の実施の形態による回転規制部材25とほぼ同様に、ピストンリング126が周方向に回転するのを規制するもので、リング溝125とピストンリング126との間に設けられている。そして、回転規制部材127は、リング溝125に突出してピストン部124に設けられた突起部128と、該突起部128に嵌合するようにピストンリング126に設けられた嵌合凹部129とにより構成されている。
かくして、このように構成された第7の実施の形態でも、各実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態によれば、ピストン部124を、円盤状をした単一部材により形成し、その外周面にはリング溝125を形成する構成としているから、ピストン121の構成を簡略化することができる。
なお、前記第6の実施の形態では、低圧側圧縮部81と高圧側圧縮部101とを備えた2段式空気圧縮機に対してピストンリング97,117を装着したロッキングピストン91,111を用いる構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば3個以上の圧縮部を備えた多段式空気圧縮機に対してピストンリングを装着したロッキングピストンを用いる構成としてもよい。
また、前記第6の実施の形態では、低圧側圧縮部81と高圧側圧縮部101との両方のロッキングピストン91,111に対してピストンリング97,117を装着する構成としたが、例えば低圧側圧縮部のロッキングピストンにはリップシールを装着し、高圧側圧縮部のロッキングピストンにのみピストンリングを装着する構成としてもよい。
また、前記第1の実施の形態では、ピストン本体20に環状段差部20Dを設け、該環状段差部20Dとリテーナ21の下面21Cとの間にリング溝23を形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、リテーナ21に環状段差部を設ける構成としてもよく、またピストン本体20とリテーナ21の両方に環状段差部を設ける構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
また、前記第1の実施の形態では、ピストンリング24の外周側にR面取り部24Kを設けた場合を例示した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、R面取り部に代えて例えばC面取り部等の他の面取りを適用してもよい。また、面取り加工を施さない構成としてもよい。
さらに、前記各実施の形態では、揺動型圧縮機として空気圧縮機を例に挙げて説明したが、例えば空気以外の気体や冷媒等を圧縮する揺動型圧縮機に適用してもよい。