JP4614839B2 - 制動制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、制動制御装置に係り、特に、車両における駆動輪のスリップの発生を防止する制動制御装置に関する。
車両が発進する際、駆動輪の速度を早くしすぎると、駆動輪がスリップしてしまい、車両の加速を妨げてしまうことがある。このような駆動輪のスリップを防止するための制動制御を行うものがある。この制動制御を行うものとして、特許2650459号公報(特許文献1)に開示された加速スリップ制御装置がある。
この加速スリップ制御装置は、左右の駆動輪におけるそれぞれの速度のうち低い方の速度と左右の非駆動輪におけるそれぞれの速度のうち高い方の速度に基づいて制御目標を設定する。それから、左右の駆動輪のうち、回転速度が高い方の駆動輪のブレーキ装置を作動させ、その駆動輪の速度を制御目標となるように制御するというものである。このような駆動輪の速度を制御目標となるように制御することにより、車両の加速時におけるスリップを抑制し、特に、非駆動輪に横滑りが生じたり、車両が加速しながら旋回したりする場合に、運転者の意図に反して生じる加速不良を抑えながら加速スリップを低減することができるというものである。
また、この加速スリップ制御装置には、TRAC/LSD/OFF切換スイッチが設けられており、ドライバの意図により、上記の加速スリップ制御装置のON/OFFを設定することができる。
特許2650459号公報
しかし、上記特許文献1に記載された加速スリップ制御装置では、加速スリップ制御をOFFからONの状態に切り換えた場合、急激にエンジンが絞られたり、逆に吹け上がったりすることや、急激な制動が生じ、車両に急激な加減速を生じることがある。このような車両の急激な加減速が生じると、ドライバに違和感を与える可能性があるという問題があった。
そこで、本発明の課題は、制動制御装置のON−OFFを変更した場合などであっても、急激な加減速が車両に生じないようにし、もってドライバに与える違和感を小さくすることができる制動制御装置を提供することにある。
上記課題を解決した本発明に係る制動制御装置は、車両における目標スリップ率を設定し、車両における駆動輪の加速スリップを制御する加速スリップ制御手段と、加速スリップ制御手段による加速スリップの制御を中止させる加速スリップ制御中止手段と、目標スリップ率となるように車輪速を制御する車輪速制御手段と、を備える制動制御装置であって、加速スリップ制御中止手段は、加速スリップ制御が行われる加速スリップ制御実行状態と、加速スリップ制御が中止されている加速スリップ制御中止状態とを、車両の走行中、所定の条件に応じて切り替え、加速スリップ制御手段は、加速スリップ制御中止状態における目標スリップ率を、加速スリップ制御実行状態における目標スリップ率よりも高く設定し、加速スリップ制御中止状態から加速スリップ制御実行状態に移行する際には目標スリップ率を徐々に減少させ、加速スリップ制御実行状態から加速スリップ制御中止状態に移行する際には目標スリップ率を徐々に増加させることを特徴とする。
本発明に係る制動制御装置では、車両の走行中、加速スリップ制御中止状態から加速スリップ制御実行状態に移行する際には目標スリップ率を徐々に減少させ、加速スリップ制御実行状態から加速スリップ制御中止状態に移行する際には目標スリップ率を徐々に増加させている。このため、加速スリップ制御中止状態から加速スリップ制御実行状態に移行する際および加速スリップ制御実行状態から加速スリップ制御中止状態に移行する際における目標スリップ率の変化を穏やかにしている。したがって、制動制御装置のON−OFFを変更した場合などであっても、急激な加減速が車両に生じないようでき、もってドライバに与える違和感を小さくすることができる。
ここで、加速スリップ制御実行状態から加速スリップ制御中止状態へと移行する際の所定の条件は、車両の速度が一定速度以下の場合である態様とすることができる。

このように、車両の速度が一定速度以下の場合に、加速スリップ制御が行われる場合、ドライバの意図とは無関係に加速スリップ制御中止状態と加速スリップ制御実行状態とが移行する。このときに、急激な加減速が生じないようにすることができるので、ドライバに不意に違和感を与えることを防止することができる。
また、車両に、加速スリップ制御中止手段のON/OFFを行う操作スイッチが設けられており、所定の条件は、操作スイッチにより、加速スリップ制御中止状態と加速スリップ制御実行状態とが切り換えられる態様とすることもできる。
このように、加速スリップ制御中止手段のON/OFFを行う操作スイッチにより、加速スリップ制御中止状態と加速スリップ制御実行状態とが切り換えられる態様の場合にも、急激な加減速が車両に生じないようでき、もってドライバに与える違和感を小さくすることができる。
さらに、目標スリップ率を変化させる際、0.05〜0.2Gの加速度変化が生じるよう変化させる態様とすることができる。
目標スリップ率を0.05〜0.2Gの加速度変化が生じるよう変化させる範囲に設定することにより、より好適に急激な加減速が車両に生じないようでき、もってドライバに与える違和感を小さくすることができる。
本発明に係る制動制御装置によれば、制動制御装置のON−OFFを変更した場合などであっても、急激な加減速が車両に生じないようにし、もってドライバに与える違和感を小さくすることができる。
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本発明に係る制動制御装置を備える車両のブロック構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係る車両Mには、制動制御装置1が設けられている。この制動制御装置1には、加速スリップ制御(以下「TRC制御」という)手段11、TRC制御中止手段12、および車輪速制御手段13が設けられている。さらに、制動制御装置1には、速度センサ2A〜2D、操作スイッチ3、エンジン4、およびブレーキ5が接続されている。
速度センサ2A,2Bは、従動輪6,6にそれぞれ取り付けられており、従動輪6,6の車輪速度である従動輪速度を検出している。また、速度センサ2C,2Dは、駆動輪7,7にそれぞれ取り付けらており、駆動輪7,7の車輪速度である駆動輪速度を検出している。速度センサ2A〜2Dは、検出した従動輪速度および駆動輪速度を制動制御装置1におけるTRC制御中止手段12に送信している。TRC制御中止手段12は、速度センサ2A〜2Dから送信された従動輪速度および駆動輪速度に基づいて、必要な車輪速度を算出する車輪速度算出手段としても機能している。また、TRC制御中止手段12は、従動輪速度や駆動輪速度を加速スリップ制御手段11に送信する。
操作スイッチ3は、たとえば車両Mにおける図示しないハンドル近傍またはインストルメントパネルに設けられており、運転中のドライバが容易に操作可能な位置に配設されている。操作スイッチ3には、ON/OFF位置が設定され、操作スイッチ3は、制動制御装置1におけるTRC制御中止手段12に接続されている。この操作スイッチ3をONにすると、TRC通常制御モードとなり、TRC制御中止手段12がTRC制御手段11を停止させることなく、目標スリップ率の制御を行う。一方、操作スイッチ3をOFFにすると、TRC通常制御外モードとなり、TRC制御中止手段12が作動して、目標スリップ率の制御を中止する。
エンジン4は、駆動輪7,7のシャフトに接続されており、駆動輪7,7に駆動力を付与している。また、エンジン4には、制動制御装置1における車輪速制御手段13が接続されており、車輪速制御手段13から送信される制御信号に基づいて、出力の調整がなされる。
ブレーキ5は、駆動輪7,7に取り付けられたディスクブレーキであり、制動制御装置1における車輪速制御手段13に接続されている。ブレーキ5は、車輪速制御手段13から送信される制御信号に基づいて、駆動輪7,7に所定の制動力を付与する。
制動制御装置1におけるTRC制御手段11は、中止手段12から送信される従動輪速度およびTRC制御中止手段12から送信されるモードに基づいて、TRC通常制御とするかTRC通常制御外とするかを決定する。TRC通常制御とする場合には、従動輪を基準とする制御を行い、TRC通常制御外とする場合には、駆動輪のうち車輪速度の低い方の車輪速度を基準とし、高い方の車輪速を低い方の車輪速となるように制動制御を行うLSD制御を行うか、あるいは制御をOFFとする。
TRC制御手段11は、TRC通常制御またはTRC通常制御外の条件に基づいて、目標スリップ率を満たす駆動輪7,7の目標制御速度(以下「TRC目標制御速度」という)を求める。TRC制御手段11は、求めたTRC目標制御速度を車輪速制御手段13に送信する。
TRC目標制御速度VTとしては、TRC通常制御時のTRC通常制御速度VT1と、TRC通常制御外速度VT2とがそれぞれ定数として設定されている。ここで、TRC制御中止手段12によってTRC制御が中止されているTRC制御中止状態における目標スリップ率は、TRC制御が行われるTRC制御実行状態における目標スリップ率よりも高く設定されている。このため、TRC通常制御外速度VT2は、TRC通常制御速度VT1よりも大きく設定されている。また、TRC通常制御からTRC通常制御外への移行時またはTRC通常制御外からTRC通常制御への移行時には、目標スリップ率を変更するが、このときには、目標スリップ率を徐々に変化させる。このため、TRC目標制御速度を徐々に変化させる。
TRC目標制御速度VTをTRC通常制御速度VT1からTRC通常制御外速度VT2に移行させる際には、所定の速度上昇勾配ΔVTupをもってTRC目標制御速度VTを徐々に増加させる。また、TRC目標制御速度VTをTRC通常制御外速度VT2からTRC通常制御速度VT1に移行させる際には、所定の速度下降勾配ΔVTdwをもってTRC目標制御速度VTを徐々に減少させる。
ここでの速度上昇勾配ΔVTupおよび速度下降勾配ΔVTdwは、TRC通常制御速度VT1とTRC通常制御外速度VT2との差に基づいて決定されている。たとえば、速度上昇勾配ΔVTupは、TRC通常制御速度VT1からTRC通常制御外速度VT2にいたるまでに、駆動輪速度に0.05〜0.2Gの間でいずれかの加速度変化が生じる値とされている。同様に、速度下降勾配ΔVTdwは、TRC通常制御外速度VT2からTRC通常制御速度VT1にいたるまでに、駆動輪速度に0.05〜0.2Gの間でいずれかの減速度変化が生じる値とされている。
TRC制御中止手段12は、速度センサ2A〜2Dからそれぞれ送信される従動輪速度または操作スイッチ3から送信されるON/OFF情報に基づいて、TRC通常制御とするかTRC通常制御外とするかを決定する。TRC制御中止手段12は、TRC通常制御を行うと決定した際には、TRC制御手段11にTRC通常制御信号を送信する。
TRC制御手段11では、TRC制御中止手段12からのTRC通常制御信号を受信した際に加速スリップ制御実行状態となり、TRC通常制御として従動輪基準制御を行う。また、TRC通常制御外を行うと決定した際には、TRC制御手段11にTRC通常制御外信号を送信する。TRC制御手段11では、TRC制御中止手段12からのTRC通常制御外信号を受信した際に加速スリップ制御中止状態となり、TRC通常制御以外の制御として駆動輪基準制御を行うかあるいは制御を行わないようにする。
車輪速制御手段13は、TRC制御手段11から送信されたTRC目標制御速度に基づいて、エンジン4による駆動輪7,7の駆動力およびブレーキ5による駆動輪7,7の制動力を求める。こうして求めた駆動力および制動力に基づいて、それぞれエンジン4およびブレーキ5を制御する。
次に、本実施形態に係る制動制御装置1における制御手順について説明する。本実施形態に係る制動制御装置1では、操作スイッチ3の操作状態に応じた制御および速度センサ2A〜2Dによって検出された車輪速度に応じた制御が行われる。ここでは、先に、操作スイッチ3の操作状態に応じた制御について説明する。図2は、TRC制御手段による第一のTRC制御の手順を示すフローチャートである。
図2に示すように、第一のTRC制御では、最初に前回がTRC通常制御外モードであり、かつ今回がTRC通常制御モードであるか否かを判断する(S1)。その結果、前回がTRC通常制御外モードであり、かつ今回がTRC通常制御モードであるとはなっていないと判断した場合には、続いて前回がTRC通常制御モードであり、かつ今回がTRC通常制御外モードであるか否かを判断する(S2)。その結果、前回がTRC通常制御モードであり、かつ今回がTRC通常制御外モードであるとなっていないと判断した場合には、TRC通常制御に移行中であるか否かを判断する(S3)。
その結果、TRC通常制御移行中でないと判断した場合には、TRC通常制御外移行中であるか否かを判断する(S4)。その結果、TRC通常制御外移行中でないと判断した場合には、TRC通常制御モードであるか否かを判断する(S5)。その結果、TRC通常モードでないと判断した場合には、現在TRC通常制御外にあることになる。
TRC通常制御外にある場合には、TRC目標制御速度VTをTRC通常制御外速度VT2にセットし(S6)、TRC通常制御外(S7)の処理を行う。TRC通常制御外の処理では、LSD制御を行うか、あるいはTRC制御を行わないようにする。
また、ステップS1で前回がTRC通常制御外モードであり、かつ今回がTRC通常制御モードであるとなっていると判断した場合には、TRC通常制御外からTRC通常制御への移行中(S8)とされる。また、ステップS2で前回がTRC通常制御モードであり、かつ今回がTRC通常制御外モードであるとなっていると判断した場合には、TRC通常制御からTRC通常制御外へ移行中(S9)とされる。
ステップS8でTRC通常制御移行中とされた場合、ステップS3において、TRC通常制御移行中であると判断される。この場合には、現在のTRC目標制御速度VTがTRC通常制御速度VT1以下となっているか否かを判断する(S10)。その結果、TRC目標制御速度VTがTRC通常制御速度VT1以下となっていないと判断した場合には、TRC目標制御速度VTから速度下降勾配ΔVTdwを減算してTRC目標制御速度VTに設定する(S11)。
一方、TRC目標制御速度VTがTRC通常制御速度VT1以下となっていると判断した場合には、TRC制御移行中ではないと判断する(S12)。この場合には、TRC目標制御速度VTをそのまま維持する。こうして、TRC目標制御速度VTを求めたら、TRC通常制御を行う(S13)。
また、ステップS9でTRC通常制御外移行中であるとされた場合には、ステップS4においてTRC通常制御外移行中であると判断される。このように、TRC通常制御外移行中であると判断された場合には、TRC目標制御速度VTがTRC通常制御外速度VT2以上となっているか否かを判断する(S14)。
その結果、TRC目標制御速度VTがTRC通常制御外速度VT2以上となっていないと判断した場合には、TRC目標制御速度VTから速度上昇勾配ΔVTupを加算してTRC目標制御速度VTに設定する(S15)。一方、TRC目標制御速度VTがTRC通常制御外速度VT2以上となっていると判断した場合には、TRC制御移行中ではないと判断する(S12)。この場合には、TRC目標制御速度VTをそのまま維持する。こうして、TRC目標制御速度VTを求めたら、TRC通常制御を行う(S13)。
さらに、ステップS5でTRC通常制御モードであると判断した場合には、TRC目標制御速度VTをTRC通常制御速度VT1にセットし(S16)、TRC通常制御を行う(S13)。
以上の制御による車両の具体的な挙動の例について説明する。図3(a)は、従来のTRC制御による車両の挙動の一例を示すグラフ、(b)は、本実施形態の第一のTRC制御による車両の挙動の一例を示すグラフである。ここでの従来のTRC制御では、従動輪速度に対して、一定のTRC目標制御速度を設定した例を示している。また、この例では、車両が走行を開始した直後はTRC通常制御外モードに設定され、その後、操作スイッチ3の操作によってTRC通常制御モードに移行し、さらにその後、操作スイッチ3の操作によってTRC通常制御外モードに移行した例を示している。また、グラフ中L1は従動輪速度、L2はTRC目標制御速度、L3は駆動輪速度を示している。
図3(a)に示すように、従来のTRC制御においては、車両が走行を開始から、TRC通常制御外にあるため、従動輪速度は比例的に増加する一方、駆動輪速度は大幅に増加する。このとき、TRC目標制御速度は、従動輪速度に合わせて比例的に増加している。
この状態から、時刻t1で操作スイッチ3が操作され、TRC通常制御モードへ移行すると、これに合わせてTRC通常制御に移行する。TRC通常制御に移行すると、駆動輪速度が大きく増加しているのに対して、従動輪速度はあまり大きく増加しておらず、合わせてTRC目標制御速度も低い速度となっている。このため、駆動輪速度が大きく減少し、駆動輪速度の減少に合わせて車両に加速不良が生じる。
この車両の加速不良により、ドライバなどの乗員が違和感を覚える可能性が高くなる。また、TRC通常制御に移行した後、しばらくの間、駆動輪速度は、TRC目標制御速度を達成するようにフィードバック制御がなされ、安定した速度となる。その後、時刻t2で再び操作スイッチ3が操作され、TRC通常制御外モードに移行すると、これに合わせてTRC通常制御外に移行する。TRC通常制御外に移行すると、駆動輪速度も大きく上昇してしまう。
これに対して、本実施形態に係る第一のTRC制御においては、図3(b)に示すように、車両が走行を開始から、TRC通常制御外にあるため、従動輪速度は比例的に増加する一方、駆動輪速度は大幅に増加する。このとき、TRC目標制御速度は、従動輪速度に合わせて比例的に増加している。ここまでは、従来のTRC制御と同様であるが、TRC目標制御速度は従来と比較して高いTRC通常制御外速度VT2となっている。
この状態から、時刻t1で操作スイッチ3が操作され、TRC通常制御モードに移行すると、TRC通常制御に移行するが、本実施形態に係る第一のTRC目標制御速度VTは、即座にTRC通常制御速度VT1まで減少することなく、速度下降勾配ΔVTdwをもって徐々に減少する。このため、車両を急激に減速しないようにすることができるので、ドライバなどの乗員に与える違和感を少なくすることができる。
その後、時刻t2となり、再び操作スイッチ3が操作され、TRC通常制御外モードのまま維持する。このとき、本実施形態に係る第一のTRC目標制御速度は、即座にTRC通常制御外速度VT2まで増加することなく、速度上昇勾配ΔVTupをもって徐々に増加する。このため、駆動輪を急激に加速しないようにすることができるので、ドライバなどの乗員に与える違和感を少なくすることができる。
次に、本実施形態に係るTRC制御における第二のTRC制御について説明する。第二のTRC制御を行うにあたり、TRC制御中止手段12においては、従動輪速度に対して、所定のしきい値Vthを設定している。速度センサ2A,2Bから送信される従動輪速度がしきい値Vth未満となっているときに、TRC通常制御をTRC通常制御外とするTRC通常制御外信号をTRC制御手段11に送信する。
また、TRC制御手段11は、図4に示すマップを記憶している。図4に示すマップは、TRC通常制御用TRC目標制御速度マップMP1と、TRC通常制御外用TRC目標制御速度マップMP2とを有している。このうち、TRC通常制御用TRC目標制御速度マップMP1は、推定車体速度V0に対して、ほぼ比例する形のマップを形成している。一方、TRC通常制御外用TRC目標制御速度マップMP2は、推定車体速度V0がしきい値Vth未満にあるときには、TRC通常制御用TRC目標制御速度マップMP1と推定車体速度V0との差よりも大きな差をTRC目標制御速度が決定されるマップとされている。また、推定車体速度V0がしきい値Vthを超えてから、徐々に推定車体速度V0に対するTRC目標制御速度が小さくなり、やがてTRC通常制御用TRC目標制御速度マップMP1と重なるマップとされている。このTRC通常制御用TRC目標制御速度マップMP1により設定される目標車速をVT1、TRC通常制御外用TRC目標制御速度マップMP2により設定される目標車速をVT2とする。
続いて、TRC制御における第二のTRC制御の手順について説明する。図5は、TRC制御手段による第二のTRC制御の手順を示すフローチャートである。図5に示すように、第二のTRC制御においては、現在、TRC通常制御モードにあるか否かを判断する(S21)。その結果、TRC通常制御モードにない場合には、TRC通常制御外用TRC目標制御速度マップMP2を選択する(S22)。一方、TRC通常制御モードであると判断した場合には、TRC通常制御用TRC目標制御速度マップMP1を選択する(S23)。
続いて、現在、TRC通常制御モードにいるか、あるいは推定車体速度V0がしきい値Vth未満となっているかのいずれかの条件を満たしているか否かを判断する(S24)。その結果、いずれの条件をも満たしていないと判断した場合には、TRC通常制御外とする(S25)。一方、少なくともいずれかの条件を満たしていると判断した場合には、TRC通常制御を行う(S26)。
以上の制御による車両の具体的な挙動の例について説明する。図6(a)は、従来のTRC制御による車両の挙動の一例を示すグラフ、(b)は、本実施形態の第二のTRC制御による車両の挙動の一例を示すグラフである。ここでの従来のTRC制御では、従動輪速度に対して、一定のTRC目標制御速度を設定した例を示している。また、この例では、車両が走行を開始した直後はTRC通常制御外に設定され、その後、車両が所定のしきい値Vthを超えた後、TRC通常制御が行われる例を示している。また、グラフ中L1は従動輪速度、L2はTRC目標制御速度、L3は駆動輪速度を示している。
図6(a)に示すように、従来のTRC制御においては、車両が走行を開始から、TRC通常制御外にあるため、従動輪速度は比例的に増加する一方、駆動輪速度は大幅に増加する。このとき、TRC目標制御速度は、従動輪速度に合わせて比例的に増加している。
この状態から、時刻t1で推定車体速度V0がしきい値Vthを超え、TRC通常制御モードへ移行すると、これに合わせてTRC通常制御に移行する。TRC通常制御に移行すると、駆動輪速度が大きく増加しているのに対して、従動輪速度はあまり大きく増加していない。また、TRC目標制御速度はTRC通常制御用TRC目標制御速度マップMP1にしたがって変化することから、従動輪速度に合わせて低い速度となる。このため、駆動輪速度が大きく減少し、駆動輪速度の減少に伴って車両の速度も大きく減少する。
これに対して、本実施形態に係る第二のTRC制御においては、図6(b)に示すように、車両が走行を開始から、TRC通常制御外にあるため、従動輪速度は比例的に増加する一方、駆動輪速度は大幅に増加する。このとき、TRC目標制御速度は、従動輪速度に合わせて比例的に増加している。ここまでは、従来のTRC制御と同様であるが、TRC目標制御速度は従来と比較して高いTRC通常制御外速度VT2となっている。
この状態から、推定車体速度V0がしきい値Vthを超え、TRC通常制御モードに移行すると、TRC通常制御に移行するが、本実施形態に係る第二のTRC目標制御速度VTは、即座にTRC通常制御速度VT1まで減少することなく、図4に示すTRC通常制御外用TRC目標制御速度マップMP2にしたがって徐々に減少する。このため、車両を急激に減速しないようにすることができるので、ドライバなどの乗員に与える違和感を少なくすることができる。
本発明に係る制動制御装置を備える車両のブロック構成図である。 第一のTRC制御の手順を示すフローチャートである。 (a)は、従来のTRC制御による車両の挙動の一例を示すグラフ、(b)は、本実施形態の第一のTRC制御による車両の挙動の一例を示すグラフである。 推定車体速度と目標制御速度との関係を示すマップである。 第二のTRC制御の手順を示すフローチャートである。 (a)は、従来のTRC制御による車両の挙動の一例を示すグラフ、(b)は、本実施形態の第二のTRC制御による車両の挙動の一例を示すグラフである。
符号の説明
1…制動制御手段、2…速度センサ、3…操作スイッチ、4…エンジン、5…ブレーキ、6…従動輪、7…駆動輪、11…TRC制御手段、12…TRC制御中止手段、13…車輪速制御手段、M…車両。

Claims (5)

  1. 車両における目標スリップ率を設定し、車両における駆動輪の加速スリップを制御する加速スリップ制御手段と、加速スリップ制御手段による加速スリップの制御を中止させる加速スリップ制御中止手段と、目標スリップ率となるように車輪速を制御する車輪速制御手段と、を備える制動制御装置であって、
    加速スリップ制御中止手段は、加速スリップ制御が行われる加速スリップ制御実行状態と、加速スリップ制御が中止されている加速スリップ制御中止状態とを、車両の走行中、所定の条件に応じて切り替え、
    加速スリップ制御手段は、加速スリップ制御中止状態における目標スリップ率を、加速スリップ制御実行状態における目標スリップ率よりも高く設定し、
    加速スリップ制御中止状態から加速スリップ制御実行状態に移行する際には目標スリップ率を徐々に減少させ、
    加速スリップ制御実行状態から加速スリップ制御中止状態に移行する際には目標スリップ率を徐々に増加させることを特徴とする制動制御装置。
  2. 加速スリップ制御実行状態から加速スリップ制御中止状態へと移行する際の所定の条件は、車両の速度が一定速度以下の場合である請求項1に記載の制動制御装置。
  3. 車両に、加速スリップ制御中止手段のON/OFFを行う操作スイッチが設けられており、
    所定の条件は、操作スイッチにより、加速スリップ制御中止状態と加速スリップ制御実行状態とが切り換えられる請求項1または請求項2に記載の制動制御装置。
  4. 目標スリップ率を変化させる際、0.05〜0.2Gの加速度変化が生じるよう変化させる請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載の制動制御装置。
  5. 加速スリップ制御手段は、目標スリップ率を徐々に変化させる際、加速スリップ制御実行状態における目標スリップ率を満たす駆動輪の目標制御速度と、加速スリップ制御中止状態における目標スリップ率を満たす駆動輪の目標制御速度とに基づいて、目標スリップ率の変化勾配を決定することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の制動制御装置。
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