JP4612996B2 - 微生物を利用した染料の除去及び回収方法 - Google Patents

微生物を利用した染料の除去及び回収方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生物吸着法による染料排水中の染料を除去・回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の経済の国際化の進行に伴い、多くの伝統産業は中国をはじめとする開発途上国にその拠点が移されるようになった。中国は、現在では、世界最大の染料生産国、消費国及び輸出国となっており、多量の染料・染料排水による汚染に悩まされており、これらの効率的な処理方法の確立が求められている。
【0003】
オゾン、フェントン試薬等を用いた、染料及び染料排水の化学的処理方法は、効率的な脱色が可能であるが、高い処理コストが実用化の壁となっている。
【0004】
一方、脱色細菌による染料含有排水の処理に関する研究が長年世界中で行われてきたが、染料には生分解性の悪い物質が多く含まれており、且つ、水質変動が非常に大きいこの種の排水処理系に、特定種類の脱色細菌を優先種として維持することは非常に困難である。そのため、生物分解による脱色は、実用上まだ多くの問題が残されている。
【0005】
特許文献1に、微生物による吸着又は取り込みを用いて染料を含む排水から染料を除去する方法及び染料を吸着又は取り込んだ微生物を破壊して、吸着又は取り込まれた染料を微生物から分離する方法が開示されている。この公報記載の方法に用い得る微生物として、Aspergillus fumigatus、Penicillium janthinellum、Agrobacterium radiobacter、Pseudomonas putida及びPseudomonas sp. strain CDC group 1が開示されている。特許文献1記載の染料を微生物から分離する方法においては、微生物菌体は破壊される。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−233197号公報、特許請求の範囲
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記現状に鑑み、本発明者らは、生物吸着による効率的且つ染料排水の水質変動に対して安定な染料の分離・回収方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明者らは、効率的に染料を吸着又は取り込む微生物を探索した。その結果、染料工場周辺から採取した土壌サンプルから、染料を吸着又は取り込むことができる菌株を分離した。これらの中から、振とう培養において菌糸体ペレットを形成する性質を有する種の菌株を選択した。この菌株は、糸状菌であり、効率的に染料を吸着又は取り込むことができ、また、菌糸体ペレットを形成することから排水からの分離が容易であることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、染料を吸着又は取り込む能力を有する、ペニシリウム・オクザリカム(Penicillium oxalicum)種に属し、CGMCC寄託番号第0810号の菌株と、染料を含む水性液体とを接触させる工程と、該染料を吸着した微生物を該水性液体から分離する工程を含むことを特徴とする、染料を含む水性液体からの染料の除去方法を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、染料を吸着又は取り込んだ、ペニシリウム・オクザリカム(Penicillium oxalicum)種に属し、CGMCC寄託番号第0810号の菌株を、有機溶媒と接触させることによって吸着又は取り込まれている染料を脱着させることを特徴とする染料の回収方法を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の染料を含む水性液体からの染料の除去方法(以下、本発明の染料除去方法という)は、染料を吸着又は取り込む能力を有する、ペニシリウム・オクザリカム(Penicillium oxalicum)種に属し、CGMCC寄託番号第0810号の菌株(BX1)、ペニシリウム・フレクエンタス(ペニシリウム・グラブラム)(Penicillium frequentans (Penicillium glabrum))種に属し、CGMCC寄託番号第0811号の菌株(ZD20)、ペニシリウム(Penicillium)属に属し、CGMCC寄託番号第0812号の菌株(CX4)、ペニシリウム・テレストル(Penicillium terrestre)種に属し、CGMCC寄託番号第0809号の菌株(GX2)、及びペニシリウム(Penicillium)属に属し、CGMCC寄託番号第0816号の菌株(f4)からなる群から選択される1種以上の微生物と、染料を含む水性液体とを接触させる工程と、該染料を吸着した微生物を該水性液体から分離する工程を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の染料除去方法で用いる微生物は、中国国内の染料に汚染された複数の染色工場敷地内で採取した土壌サンプルから見出されたものである。微生物の取得は次のように行った。
【0013】
各土壌サンプル10gを、それぞれガラスビーズと共に90mLの脱イオン水の入った300mLのエーレンマイヤーフラスコに加え、5分間激しく振とうし、懸濁した混合物を調製した。懸濁混合物から0.2mLづつを取り、50mLのスクリーニング培養培地(下記表1に培地組成を示す)を入れた250mLのエーレンマイヤーフラスコに加えた。それらを、振とう速度120rpmのロータリー・シェイカー中、30℃で培養し、5日毎に培養培地を取り換えた(古い培養培地10mLを取り出し、新鮮な培養培地50mLを加えた)。10日後、段階的に増加させた濃度(30mg/L、60mg/L、90mg/L及び120mg/L)の染料を含む培地を用いて、菌を豊富化した。染料濃度120mg/L、10日間で培養された培養物を、同じ濃度の染料を含有する平板培地に移し、さらに30℃で4日間培養した後、それらを斜面培地に接種した。それぞれの菌株を120mg/mLの染料を含有するフラスコに接種し、ロータリー・シェイカーで3日間培養した。
【0014】
液体培養時の培地吸光度の低下又は平板培養時のコロニー周辺の脱色度合いを指標として用い、高い染料吸着容量を示し、且つ、振とう培養において菌糸体ペレットを形成する性質を有する糸状菌5株を選択した。以下、選択した菌株を、それぞれBX1、GX2、ZD20、CX4及びf4と称する。
【0015】
【表1】
Figure 0004612996
【0016】
各菌株は、下記の菌学的特徴を示し、それぞれ以下の通り同定された。
(1)BX1
(a)巨視的観察
ツァペック寒天平板培地で25℃、7日間の培養において、直径45〜46mmのコロニーを形成する。コロニーの中心は小さく膨れ上がり、他の部分は平坦、表面は少しビロード状である。大量の分生胞子を形成し、薄緑色から薄黄緑色(Grayish Olieve, R. pl. ZL. VI)に近い色を呈する。コロニー間の部分はピンク色を呈する。長期培養検体から滲出液及び可溶性色素の産生は認められない。コロニー裏面の中心部は黄褐色を呈し、縁の部分は緑色を帯びる。
【0017】
ツァペック酵母エキス寒天平板培地(Czapek Yeast Extract Agar;CYA)で25℃、7日間の培養において直径60〜65mmのコロニーを形成する。コロニーは平坦で表面はビロード状である。大量の分生胞子を形成し、薄黄緑色(Grayish Olive)から薄浅黄色(Pee Green, R. pl. ZL. VII)に近い色を呈する。長期培養検体から滲出液及び可溶性色素の産生は認められない。コロニー裏面は緑紫色を帯びる。
【0018】
麦芽エキス寒天平板培地で、25℃、7日間の培養において、直径60〜65mmのコロニーを形成する。コロニーに関する他の形態学的特徴はCYAの場合と同様である。
【0019】
25%グリセロリン酸塩寒天培地で、25℃、7日間の培養において、直径9〜10mmのコロニーを形成する。コロニーの中心は、イボ状に膨れ上がり、他の部分は平坦、表面はビロード状である。大量の分生胞子を形成し、エメラルド・グリーン色から薄浅黄色(Pee Green)に近い色を呈す。長期培養検体から滲出液及び可溶性色素の産生は認められない。コロニー裏面は緑褐色である。
【0020】
CYAで、37℃、7日間の培養において、直径37mmの平坦なコロニーを形成する。表面はビロード状である。大量の分生胞子を形成し、薄緑色から薄黄緑色(Grayish olive)に近い色を呈する。長期培養検体から滲出液及び可溶性色素の産生は認められない。コロニー裏面の中心部は薄い褐色を呈し、縁の部分は緑色を帯びる。
【0021】
CYAで、5℃、7日間の培養において、直径3mmのコロニーを形成する。
分生胞子はまだ形成されていなかった。
【0022】
(b)微視的観察
分生子柄は100〜300×3.5〜4.5μmで、壁は滑らかである。ペニシラス状の柄が最大で二輪生となり、隅に単輪生も診られた。メトレは2〜4個互いに密生して生え、13〜25×3.5〜4.0μmで、フィアライドは6〜10個で、9.0〜15×3.0〜3.5μmで、披針形に近い。
【0023】
分生胞子は楕円形で、4.0〜6.5×3.0〜3.5μmで、表面は滑らかで、分生胞子の鎖は円柱状である。
【0024】
(c)分類は、青カビ属(Penicillium)、双状亜属(Subgenus Furcatum)、草酸系(Series oxalica)と推定された。
【0025】
(d)また、以下の観察も行った。
(i)培養的及び形態的性質
修飾マーチン寒天培養培地(グルコース、10g/L;(NH42SO4、1g/L;KH2PO4、1g/L;MgSO4・7H2O、0.5g/L;寒天、30g/L;pH5.5±0.1)を用い、BX1菌株の胞子(spore)を培養した。
【0026】
BX1菌株の菌糸体は、顕微鏡下で、中隔(septum)及び枝状に分かれた(分岐)管状である。通常無色である。固体培地上の胞子は、碧青色の粉末である。
【0027】
(ii)生理的及び化学的分類学上の特徴
▲1▼至適培養pHは4.0であり、至適培養温度は30℃である。
▲2▼培養pH範囲は2〜9であり、培養温度範囲は4〜40℃である。
▲3▼NaCl濃度が45g/Lにおいても菌糸体ペレットを形成できる。
【0028】
(e)上記菌学的性質から、BX1菌株をペニシリウム・オクザリカム(Penicillium oxalicum)種であると同定した。この菌株を、CGMCC(China General Microbiological Culture Collection Center)に寄託した(寄託日:2002年10月11日、寄託番号:0810)。
【0029】
(2)f4
次のようにして、f4株について、属レベルの帰属分類群の推定を行った。
(a)方法
検体をツァペック酵母エキス寒天平板培地(CYA)、麦芽エキス寒天平板培地(Malt Extract Agar;MEA)及び25%硝酸グリセロール寒天平板培地(Glycerol Nitrate Agar;G25N)の各寒天平板培地に接種し、25℃で7日間培養した後、コロニーの巨視的特徴の観察を肉眼及び実体顕微鏡にて行った。CYAに関しては、37℃での生育も確認した。コロニー色調に関する記述はKornerup及びWamscher(1978)"Methuem handbook of colour", 第3版, Eyre Methuen, London, UK, 243 pp.に従った。また、CYA培養検体の微視的特徴の観察を光学顕微鏡にて行った。
【0030】
(b)結果
i)巨視的観察結果
全ての平板培地においてコロニーはビロード状乃至フェルト状で、菌糸色は白色を呈する。MEAでは淡褐灰色(putty)(4B2)、CYAでは琥珀黄色(amber yellow)(4B6)の裏面着色(reverse coloration)を示す。
【0031】
生育は中程度早く、25℃、10日間培養のCYAでは直径45mm程度、MEAでは65mm程度、G25Nでは25mm程度の生育を示す。また、37℃培養下のCYAでは22〜24mmの生育を示す。
【0032】
培養7日目までにG25Nで碧青灰色(grayish turquoise)(24C3)、MEAで深緑色(dull green)(29-30D3)の分生子を形成する。また、長期培養検体からも滲出液及び可溶性色素の産生は認められない。
【0033】
ii)微視的観察結果
光学顕微鏡による観察では、ペニシラス様の分生胞子形成構造が確認される。
分生子柄(conidiophore)は最大で二輪生(biverticillate)となる。分生子形成構造はフィアロ型(phialidic)である。柄(stipe)先端に頂嚢(vesicle)を形成しない。メトレ(metula)は柄の先端より圧着(appressed)して生じ、対称形となる。
【0034】
フィアライド(phialide)はメトレ先端より圧着して生じ、形状はアンプル形(ampuliform)となる。分生子は1細胞性で、表面は粗面(rough)、形状は球状(globose)が多数を占める。分生子は鎖状に連なっている。また、長期培養検体からもテレオモルフ(teleomorph)及び分生子柄束(synnemata)の形成は確認されない。
【0035】
(c)考察
Arx, J. A. von(1974)”The genera of fungi sporulating in pure culture”, A.R. Gantner Verlag KG, Vaduz, Germany, 315 pp.、Domschら(1993)”Compendium of soil fungi”, 第1巻, IHW−Verlag, Eching, Germany, 再版, 860 pp.及びMalloch(1981)”Moulds−their isolation, cultivation, and identification”, University of Tronto Press, Tronto, USA, 97 pp.に記載されている分類体系に基づき本検体の属までの帰属分類群を推定すると、f4株は、コロニー色調、無性生殖器官の形態からペニシリウム(Penicillium)属分類群に帰属すると考えられる。
【0036】
同様の分生子形成構造を生じる属としてはGliocladium、Geosmithia、Merimbla、Paecilomyces等が知られているが、分生子がドライなチェインになること、成熟分生子が基本的に球形であること、頂嚢の幅が広くないこと、フィアライドがアンプル形で首が短いことなどから、これらの属とは区別される。また、本検体は、Carmichaelら(1980)”Genera of Hyphomycetes”, The University of Alberta Press., Alberta, USA, 386 pp.に記載のペニシリウム(Penicillium)属の形態性状とも合致している。
【0037】
(d)結論
上記3種類の寒天プレート上のコロニー性状及び分生子形成構造体の形態的特徴を根拠として、f4株は、ペニシリウム(Penicillium)属に帰属するものと推定した。
【0038】
(e)上記菌学的性質から、f4菌株をペニシリウム(Penicillium)属に帰属するものであると同定した。この菌株を、CGMCCに寄託した(寄託日:2002年10月11日、寄託番号:0816)。
【0039】
(3)GX2
(a)コロニーの特徴
質感(texture):フェルト状
色:緑色
滲出液(exudate):なし
臭い:なし
裏面の色:クリーム白色(creamy white)
【0040】
(b)分生胞子段階(conidiospore period)
分生子柄形状(Coremioid):非対称二輪生(double-cycle-asymmetry)
分生子柄長さ(Coremioid stem):長い
分生胞子形状:楕円形
質感:平坦
菌核(Mycelitha):なし
【0041】
(c)上記菌学的性質から、GX2菌株をペニシリウム・テレストル(Penicillium terrestre)であると同定した。この菌株を、CGMCCに寄託した(寄託日:2002年10月11日、寄託番号:0809)。
【0042】
(4)ZD20
(a)コロニーの特徴
質感(texture):フェルト状
色:青磁色
滲出液(exudate):なし
臭い:なし
裏面の色:クリーム白色(creamy white)
【0043】
(b)分生胞子段階(conidiospore period)
分生子柄(Coremioid):分岐単輪生(single-cycle-ramifying)
分生胞子柄長さ(Coremioid stem):長い
分生胞子形状:楕円形
質感:平坦
菌核(Mycelitha):なし
【0044】
(c)上記菌学的性質から、ZD20菌株をペニシリウム・ふれ(Penicillium)属に帰属するものであると同定した。この菌株を、CGMCCに寄託した(寄託日:2002年10月11日、寄託番号:0811)。
【0045】
(5)CX4
(a)コロニーの特徴
質感(texture):フェルト状
色:緑色
滲出液(exudate):なし
臭い:なし
裏面の色:クリーム白色(creamy white)
【0046】
(b)分生胞子段階(conidiospore period)
分生子柄束(Coremioid):分岐単輪生(single-cycle-ramifying)
分生胞子柄長さ(Coremioid stem):短い
分生胞子形状:楕円形
質感:平坦
菌核(Mycelitha):なし
【0047】
(c)上記菌学的性質から、CX4菌株をペニシリウム・フレクエンタス(ペニシリウム・グラブラム)(Penicillium frequentans (Penicillium glabrum))種に帰属するものであると同定した。この菌株を、CGMCCに寄託した(寄託日:2002年10月11日、寄託番号:0812)。
【0048】
本発明で用いる上記5種の微生物が、その菌体に染料を吸着又は取り込むことができ、且つ、吸着又は取り込む染料の存在下で生存可能であることは上記スクリーニング結果から明らかである。なお、染料吸着のメカニズムは明らかではないが、染料を吸着した微生物を、脱イオン水中で24時間放置しても染料は脱離しないので、吸着は単なる物理的吸着ではなく、染料と菌糸体との間には安定な化学結合が存在すると考えられる。さらに、菌糸体表面への染料の吸着だけでなく、菌糸体中への取り込みもあり得ると考えられる。なお、本明細書においては、「染料を吸着又は取り込む」ことを、まとめて「染料を吸着」ということがある。逆に、「染料を脱着」という場合は、染料を菌体表面から脱着させること及び/又は菌体中に取り込まれている染料を菌体外に脱離させることを意味する。
【0049】
本発明において、微生物は、上記5種のうちの1種のみを用いても、又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。
【0050】
本発明の染料除去方法では、5種の菌株は、修飾マーチン寒天培養培地(グルコース、10g/L;(NH42SO4、1g/L;MgSO4・7H2O、0.5g/L;pH5.5±0.1;寒天、30g/L)を用い、菌を斜面培地に接種し、30℃で5日間培養した後、4℃で保存したものを用いることができる。
【0051】
菌株の培養は、図1に示すようなエアー・リフト式発酵器(air lift fermentor)を用いて行うことができる。
【0052】
本発明によって染料を含む水性液体から除去可能な染料には特に制限はなく、いずれの種類の染料であってもよい。例えば、反応性染料、建染染料、分散染料等が挙げられ、特に、最も広く使用されている反応性染料に対する除去効率が高く、好ましい(後記する試験例1参照)。
【0053】
染料を含む水性液体とは、一般に、染料排水であるがこれに限定されない。この水性液体には、除去されるべき染料の他、本発明で用いる微生物の生育を阻害しない限り如何なるものが含まれていてもよいが、必要に応じて、水性液体を希釈、pH調整、微生物の栄養源(炭素源、窒素源、無機物質等)の補填の前処理を行ってもよい。菌糸体ペレットの形成及び染料の吸着のための好ましい炭素源及び窒素源は、それぞれ澱粉糖及び(NH42SO4であり、好ましいpH範囲は、3.5〜7.5である。
【0054】
本発明の染料除去方法において、微生物と染料を含む水性液体とを接触させる方法(微生物の水性液体への適用方式)としては、適切な栄養分を添加した染料を含む水性液体(排水)中で微生物を培養しながら染料吸着を行わせる方法(微生物の培養と染料吸着とを同時に行う方法)と、上記のような専用の微生物培養容器でペレット状微生物を培養し、菌体を収穫してから、染料を含む水性液体(排水)を入れた別の容器の中で染料吸着を行う方法(微生物と培養と染料吸着とを別々に行う方法)が挙げられる。
【0055】
前者の方法の場合は、専用の微生物培養容器を必要としない利点があるが、吸着時間は1日〜2日以上と長くなる上に、微生物が排水中の重金属成分や他の共存物の影響を受けやすいという欠点がある。後者の方法の場合、専用の微生物培養容器を必要とするが、培養と吸着とを別々に行うため、排水成分の影響を避けることができるだけでなく、吸着速度が速い。
【0056】
染料を含む水性液体(排水)と微生物との接触方式としては、微生物ペレットを排水中に添加し混合しながら染料吸着を行う方法や、微生物ペレットを吸着槽に充填しその中に排水を流通させながら染料吸着を行う方法がある。
【0057】
微生物ペレットを排水中に添加・混合する方式の場合において、本発明の染料の除去方法に用いる微生物の量は、染料の種類、濃度などにより適宜選択すべきであるが、通常、染料を含む水性液体1Lに対して0.2〜5g、好ましくは0.5〜3gの微生物ペレットを添加する。排水を流通させる方式の場合には、微生物ペレットを充填した吸着槽に染料を含む水性液体を空間速度(space velocity;SV)0.1〜10h-1、好ましくは0.5〜5h-1の速度で流通させる。
【0058】
微生物を水性液体と接触させる際の条件は、用いる微生物の性質、水性液体の組成、除去すべき染料の性質等に応じて適宜選択すべきである。一般に、微生物の培養と染料の吸着とを同時に行う場合は、微生物を染料を含む水性液体に添加し、温度0〜80℃、好ましくは5〜50℃の範囲で、回転数80〜200rpm、好ましくは150rpmで撹拌しながら、48時間以内、好ましくは10〜36時間培養する。これにより、微生物がペレット状に成長する過程(通常1日以上)で、水性液体中の染料が微生物に吸着されて水性液体の脱色が進む。また、微生物の培養と吸着とを別々に行う場合には、水性液体との接触は常温で行うことができ、上記の場合よりも短時間で染料が微生物に吸着される。
【0059】
染料を吸着した微生物を水性液体から分離する方法については特に制限はなく、本発明で用いる微生物のペレットを形成する性質を利用した自然沈降、遠心分離、濾過、膜分離等の通常の方法によって微生物を水性液体から分離することができる。
【0060】
次に、本発明の染料の回収方法について説明する。
本発明の染料回収方法は、染料を吸着又は取り込んだ、ペニシリウム・オクザリカム(Penicillium oxalicum)種に属し、CGMCC寄託番号第0810号の菌株(BX1)、ペニシリウム・フレクエンタス(ペニシリウム・グラブラム)(Penicillium frequentans (Penicillium glabrum))種に属し、CGMCC寄託番号第0811号の菌株(ZD20)、ペニシリウム(Penicillium)属に属し、CGMCC寄託番号第0812号の菌株(CX4)、ペニシリウム・テレストル(Penicillium terrestre)種に属し、CGMCC寄託番号第0809号の菌株(GX2)、及びペニシリウム(Penicillium)属に属し、CGMCC寄託番号第0816号の菌株(f4)からなる群から選択される1種以上の微生物を、有機溶媒と接触させることによって吸着されている染料を脱着させることを特徴とする。
【0061】
本発明においては、染料を含む水性液体から微生物によって吸着・分離された染料を再利用することを目的として回収する。上記のようにして水性液体から分離された、染料を吸着した微生物を有機溶媒と接触させる。
【0062】
特許文献1に記載の発明では、染料を微生物から脱着(分離)するには、菌体を破壊することが必要であり、従って微生物は使い捨てである。これに対し、有機溶媒によって染料を脱着させた本発明で用いられる微生物は、破壊されることはなく、再度の染料回収に用いることができる。
【0063】
微生物から染料を脱着させるために用いる有機溶媒は、脱着すべき染料の種類、化学的性質等によって適宜選択すべきであり、例えば、メタノール、メタノールとアセトンとの混合物、メタノールと1%NaOHとの混合物などのメタノールを主とした溶媒が挙げられる。
【0064】
微生物から脱着された染料は、そのまま、適宜希釈して又は精製して染色に利用することができる。
【0065】
なお、上述したように、染料を脱着した後の微生物は、適切な培養条件下で培養し、再度染料の回収のために用いることができる。
【0066】
微生物からの染料の回収方法における、染料の脱着条件は次のとおりである。
染料脱着時の温度は常温でもよいが、加熱することにより脱着率と脱着速度が促進されることがあるため、適宜に加熱することが好ましい。染料脱着時間は6時間以内、好ましくは4時間程度であり、回転数100〜200rpm、好ましくは150rpmで撹拌する。
【0067】
染料を脱着した微生物を染料溶液から分離する方法については特に制限はなく、本発明で用いる微生物のペレットを形成する性質を利用した自然沈降、遠心分離、濾過、膜分離等の通常の方法によって微生物を水性液体から分離することができる。
【0068】
【実施例】
以下、試験例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの試験例によって何ら限定されることはない。
【0069】
試験例1:微生物による染料吸着試験
下記表2に示す各種染料(染料濃度:120mg/L)を含有する修飾マーチン培養培地(グルコース、5g/L;(NH42SO4、1g/L;KH2PO4、1g/L;MgSO4・7H2O、0.5g/L;pH5.5±0.1)中で4種の微生物を培養したときの、培地からの染料の除去率(%)を、下記式によって算出し、得られた種々の染料の吸着最大量及び吸着最大量に達した時間を表2に示す。
染料除去率(%)=(1−Ce/C0)×100
ここで、C0:吸着前の染料濃度
e:染料の平衡濃度
【0070】
【表2】
Figure 0004612996
【0071】
表2の結果から、本発明で用いる微生物が、広いスペクトル及び高い効率で染料を吸着できることが明らかになった。特に、BX1菌株は、試験した24種の染料について平均除去率が95%と高く、最も広く使用されている反応性染料を、極めて高い効率で染料排水から除去できることが明らかになった。
【0072】
試験例2:染料を吸着した微生物からの染料の脱着試験
染料の回収・再利用を目的として、染料を含む水性液体からBX1菌糸体ペレットによって吸着された染料の脱着条件を検討した。
下記表3に示す各種染料を吸着したBX1菌糸体ペレットを沈降分離させた後、表3に示す有機溶剤の脱着剤(strippant)中に添加し、温度25℃で緩やかな撹拌条件下(150rpm)で染料を脱着させた。微生物からの染料の脱着率(%)と最大の脱着率に達した時間を表3に示す。
【0073】
【表3】
Figure 0004612996
【0074】
表3の結果から、多くの種類の染料が、メタノールを主とする溶媒によって微生物から脱着できることがわかる。
なお、試験例2において微生物から脱着された染料は、そのまま、適宜希釈して又は精製して染色に利用することができるものであった。
【0075】
【発明の効果】
本発明の染料除去方法によれば、微生物を利用して、染料を含む水性液体から効率よく染料を除去することができる。
【0076】
本発明の染料回収方法によれば、染料を吸着又は取り込んだ微生物から染料を脱着させて回収することができる。回収された染料は再利用することができる。
【0077】
本発明で用いる微生物は、本発明の染料回収方法によって染料脱着後、再度染料の除去に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の染料除去方法において用いる微生物を培養するために用いる装置の概要を示す図である。

Claims (5)

  1. 染料を吸着又は取り込む能力を有する、ペニシリウム・オクザリカム(Penicillium oxalicum)種に属し、CGMCC寄託番号第0810号の菌株と、染料を含む水性液体とを接触させる工程と、該染料を吸着した微生物を該水性液体から分離する工程とを含むことを特徴とする、染料を含む水性液体からの染料の除去方法。
  2. 染料が、反応性染料、建染染料及び分散染料からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の染料の除去方法。
  3. 染料が、反応性染料からなる群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の染料の除去方法。
  4. 染料を吸着又は取り込んだ、ペニシリウム・オクザリカム(Penicillium oxalicum)種に属し、CGMCC寄託番号第0810号の菌株を、有機溶媒と接触させることによって吸着又は取り込まれている染料を脱着させることを特徴とする染料の回収方法。
  5. 有機溶媒が、少なくともメタノールを含むことを特徴とする、請求項4に記載の染料の回収方法。
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