以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、図1に示すように第1の無線通信装置100と第2の無線通信装置101の間で、同一周波数帯を使用する複数種の無線通信方式を切り換えながら通信を行う通信環境下において、第1の無線通信装置100が、第1の無線通信方式を用いて第2の無線通信装置101から受信した既知信号を基に、同じ無線伝送路環境下において第2の無線通信方式を用いて通信した場合の通信品質を擬似的に推定する場合の構成および動作について説明する。ここでは、第1の無線通信方式はIEEE802.11bの規格におけるDSSS(直接拡散:Direct Sequence Spread Spectrum)方式に準じた無線通信方式とし、第2の無線通信方式はIEEE802.11gの規格におけるOFDM(直交周波数分割多重:Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式に準じた無線通信方式とした場合を一例として説明する。また本実施の形態では通信品質として、IEEE802.11gの規格におけるOFDM方式のサブキャリア帯域毎の受信CNR値を求める場合について説明する。
図1において、第1の無線通信装置100は、第1の無線通信方式及び第2の無線通信方式を用いて第2の無線通信装置101と通信可能であり、第2の無線通信装置101との間で第1の無線通信方式および第2の無線通信方式を切り換えながら通信を行う。また、第1の無線通信装置100は、第1の無線通信方式を用いて第2の無線通信装置101と通信中に、第2の無線通信装置101から受信した既知信号を基に、同じ無線伝送路環境下において第2の無線通信方式を用いて通信した場合の通信品質を擬似的に推定する。
第2の無線通信装置101は、第1の無線通信方式、および、第2の無線通信方式を用いて第1の無線通信装置100と通信可能であり、第1の無線通信装置100との間で第1の無線通信方式および第2の無線通信方式を切り換えながら通信を行うことができるようになっている。
図2に、本実施の形態における第1の無線通信装置100の構成例を示す。第1の無線通信装置100は、無線部200、通信品質推定部201、無線部構成記憶部202及びリファレンス信号記憶部203を有する。
無線部200は、少なくとも第1の無線通信方式及び第2の無線通信方式に対応可能なアンテナと、機能の変更が可能なリコンフィギュラブル処理部とを有する。リコンフィギュラブル処理部は、例えばソフトウェアの書き換えなどにより再構成可能なプログラマブルデバイスにより構成されている。リコンフィギュラブル処理部は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、CPU(Central Processing Unit)、リコンフィギュラブルプロセッサなど機能および動作がソフトウェアプログラムやコンフィギュレーションデータの読み込みにより変更可能なデバイスのうち一つ、もしくは上記デバイスの組み合わせにより構成される。これにより、単一の無線部で第1の無線通信方式および第2の無線通信方式を切り換えながら、第2の無線通信装置101と通信可能となる。また無線部200は、通信品質推定部201に受信信号を送出する。
通信品質推定部201は、無線部200から出力される第2の無線通信装置101から第1の無線通信方式を用いて受信した受信信号の既知信号部分とリファレンス信号記憶部203から出力されるリファレンス信号とに対して第2の無線通信規格に基づいた無線通信方式に特有の変換処理を行った後、これらを比較することによって、同じ無線伝送路環境下において第2の無線通信方式を用いて通信した場合の通信品質を推定し、この推定結果を出力する。
ここで既知信号部分とは、あらかじめその信号の内容および位置が送信側、受信側ともにわかっている信号部分のことであり、一般に通信パケット内に挿入されるプリアンブル部やパイロット信号の部分を適用することが可能である。本実施の形態では既知信号部分の一例として、IEEE802.11bのPPDUフレームフォーマットにおけるPLCPプリアンブル部分を用いるものとする。図4にIEEE802.11bのPPDUフレームフォーマットを示す。また、リファレンス信号とは、第1の無線通信方式による送信信号の既知信号部分を時間系列の信号として受信側であらかじめ保持したものである。
無線部構成記憶部202は、無線部200の再構成に必要な情報を保持している。
リファレンス信号記憶部203は、通信品質の推定に用いる既知信号をリファレンス信号としてあらかじめ保持している。本実施の形態ではリファレンス信号としてIEEE802.11bのPPDUフレームフォーマットにおけるPLCPプリアンブル部分を時間系列信号で保持している。
図3に、本実施の形態における通信品質推定部201の構成例を示す。通信品質推定部201は、既知信号抽出部300、DFT部301、DFT部302、雑音電力推定部303、搬送波電力推定部304、およびCNR(搬送波電力対雑音電力比)推定部305を有する。
既知信号抽出部300は、受信信号から既知信号部分を抽出し、この信号を受信既知信号としてDFT部301に対して出力する。本実施の形態では受信既知信号としてIEEE802.11bのPPDUフレームフォーマットにおけるPLCPプリアンブル部分を時間系列信号で出力する。
DFT部301は、離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)処理を行うことで、既知信号抽出部300から出力される受信既知信号を、時間領域から周波数領域に変換する。これにより、受信既知信号の周波数特性を求め、雑音電力推定部303にこの周波数特性を出力する。
DFT部302は、DFT部301と同様に離散フーリエ変換処理を行うことで、リファレンス信号記憶部203から出力されるリファレンス信号を、時間領域から周波数領域に変換する。これにより、リファレンス信号の周波数特性を求め、雑音電力推定部303、および搬送波電力推定部304にこの周波数特性を出力する。
本実施の形態では、一例として、DFT部301とDFT部302によって、1024ポイントのFFT(Fast Fourier Transform)処理を行うものとする。
雑音電力推定部303は、DFT部301から出力される受信既知信号の周波数特性と、DFT部302から出力されるリファレンス信号の周波数特性を比較することにより、受信信号の各周波数における雑音成分を抽出し、各周波数における雑音成分の電力を推定し、CNR推定部305にこの雑音電力を出力する。具体的には、雑音電力推定部303は、双方の入力ベクトルの要素毎に信号点間距離を求め、この信号点間距離の二乗を要素毎に演算し、演算結果を出力する。
搬送波電力推定部304は、DFT部302から出力されるリファレンス信号の周波数特性から、各周波数における搬送波電力を推定し、CNR推定部305に対してこの搬送波電力を出力する。
CNR推定部305は、雑音電力推定部303から出力される雑音成分の電力と、搬送波電力推定部304から出力される搬送波電力から、IEEE802.11g規格におけるOFDM信号のサブキャリア帯域毎の受信CNR値の推定値を出力するものである。
ここで、本実施の形態ではIEEE802.11bの使用周波数帯域の中心周波数と、IEEE802.11gの使用周波数帯域の中心周波数は同じであるとし、IEEE802.11bの信号の周波数帯域幅は11MHzとする。また、IEEE802.11gの信号の周波数帯域幅は16.5625MHzとする。
以上の構成において、同一周波数帯を使用するIEEE802.11bの規格に準じた第1の無線通信方式とIEEE802.11gの規格に準じた第2の無線通信方式を切り換えながら通信可能な第1の無線通信装置100が、第2の無線通信装置101からの第1の無線通信方式による通信の受信信号を基に、同じ無線伝送路環境下において第2の無線通信方式を用いて通信した場合の通信品質を推定する具体的な動作について以下で説明する。
まず、第1の無線通信装置100は、第2の無線通信装置101からIEEE802.11bの規格に準じて送信された信号を、無線部200において受信する。無線部200はこの受信信号に対して、通常のIEEE802.11bの受信処理を行って復調データを得るとともに、ベースバンド信号を通信品質推定部201に出力する。ここで、通信品質の推定を行う際の受信既知信号とリファレンス信号の振幅および位相を合わせるために、受信信号に対して振幅補償、位相補償を施してベースバンド信号を形成する構成としてもよい。この振幅補償、位相補償の具体的な方法については特に限定されるものではないが、例えば、受信既知信号とリファレンス信号を比較し、受信既知信号の振幅変動および位相変動を抽出し、この振幅変動および位相変動量を用いて位相補償および振幅補償の処理を施すことで実現できる。
通信品質推定部201は、まず既知信号抽出部300において、無線部200から出力された受信信号のベースバンド信号からIEEE802.11bのPLCPプリアンブル部分の信号を抽出し、抽出された信号部分を受信既知信号としてDFT部301に出力する。
DFT部301は、既知信号抽出部300から出力された受信既知信号に対してDFT処理を施すことで、周波数特性を求める。具体的には、受信既知信号に対して1024ポイントのFFT処理を施す。これにより、次式で表されるように、11MHzの帯域内に約10.74kHz毎に合計1024要素の複素ベクトルでなる受信既知信号の周波数特性を得る。
この周波数特性の一例を図5に示す。図5に示すように11MHzの帯域内に1024要素の複素ベクトルでなる受信既知信号の周波数特性が得られる。DFT部301は、このようにして得た受信既知信号の周波数特性を、雑音電力推定部303に出力する。
リファレンス信号記憶部203には、IEEE802.11bの規格における送信信号のうちPLCPプリアンブル部分の時間系列信号があらかじめリファレンス信号として保持されている。DFT部302は、このリファレンス信号記憶部203に保持されているリファレンス信号に対して、DFT部301と同様に1024ポイントのFFT処理を施すことにより、11MHzの帯域内に約10.74kHz毎に合計1024要素の複素ベクトルでなるリファレンス信号の周波数特性を得る。DFT部302は、このようにして得たリファレンス信号の周波数特性を、雑音電力推定部303、および搬送波電力推定部304に出力する。
雑音電力推定部303は、DFT部301から出力される受信既知信号の周波数特性と、DFT部302から出力されるリファレンス信号の周波数特性とを比較することにより、受信信号の各周波数における雑音成分を抽出し、各周波数における雑音成分の電力を推定し、IEEE802.11g規格におけるOFDM信号のサブキャリア帯域毎の雑音成分の電力を求めて、CNR推定部305に出力する。雑音成分の電力の推定方法については限定されるものではないが、一例として受信既知信号の周波数特性とリファレンス信号の周波数特性の複素平面上での信号点間距離から雑音成分の電力を推定する方法について以下で説明する。
図6は、受信既知信号の周波数特性とリファレンス信号の周波数特性を、1024要素の周波数成分のうちのある一つの周波数成分について複素平面上にプロットした図である。図6において、受信既知信号の周波数特性とリファレンス信号の周波数特性の複素平面上での信号点間距離を算出し、この距離の二乗を算出することで雑音成分の電力を求めることができる。この処理を1024要素の各周波数成分について行うことで、各周波数における雑音成分の電力を求めることができる。この処理は、1024要素のうちi番目の周波数における受信既知信号の周波数特性を(a
i+jb
i)(j:虚数)、リファレンス信号の周波数特性を(c
i+jd
i)、雑音電力をN
iとすると、次式のように表すことができる。
前記のようにして算出された1024要素の周波数成分毎の雑音電力N
iを、IEEE802.11g規格におけるOFDM信号の各サブキャリア帯域に相当する周波数成分の区間毎に足し合わせることにより、サブキャリア帯域毎の雑音成分の電力を求めることができる。具体的には、まず、IEEE802.11g規格におけるOFDM信号の一サブキャリアの帯域幅を312.5kHzとすると、11MHz帯域内には次式で得られるようにIEEE802.11g規格におけるOFDM信号のサブキャリアが35本(11MHz/312.5kHz=35.2)入ることになる。
このことから、1サブキャリアの帯域内に含まれる雑音成分の電力は、次式より、29要素もしくは30要素となる。
図7に各周波数における雑音電力をIEEE802.11g規格におけるOFDM信号のサブキャリア帯域毎に足し合わせる処理の図例を示す。図7に示すように1024要素の雑音電力のうちの各サブキャリア帯域内の29要素、もしくは30要素の雑音電力の要素を足し合わせることで、OFDM信号における一サブキャリアの帯域幅にほぼ相当する約311.5(≒10.74×29)kHz帯域幅、もしくは約322.2(≒10.74×30)kHz帯域幅の雑音電力N'k(k:k番目のサブキャリア、1≦k≦35)を求める。雑音電力推定部303は、このようにして得たサブキャリア帯域毎の雑音電力N'kをCNR推定部305に出力する。
搬送波電力推定部304は、DFT部302から出力されるリファレンス信号の周波数特性を、1024要素の各周波数成分について二乗することで、各周波数における搬送波電力を算出する。この処理は、i番目の周波数における搬送波電力をC
iとすると、次式のように表すことができる。
この処理によって得られた1024要素の周波数成分毎の搬送波電力Ciを、雑音電力の場合と同様にIEEE802.11g規格におけるOFDM信号の各サブキャリア帯域内の29要素、もしくは30要素の搬送波電力の要素を足し合わせることにより、サブキャリア帯域毎の搬送波電力C'k(k:k番目のサブキャリア、1≦k≦35)を求めることができる。具体的には、各サブキャリア帯域内の29要素もしくは30要素の搬送波電力の要素を足し合わせることで、OFDM信号における一サブキャリアの帯域幅にほぼ相当する約311.5kHz帯域幅、もしくは約322.2kHz帯域幅の搬送波電力C'kを求める。搬送波電力推定部304は、このようにして得たサブキャリア帯域毎の搬送波電力C'kをCNR推定部305に出力する。
CNR推定部305は、搬送波電力推定部304から出力されるサブキャリア帯域毎の搬送波電力C'kと、雑音電力推定部303から出力されるサブキャリア帯域毎の雑音電力N'kの比を求めることによって、OFDM信号におけるサブキャリア帯域ごとの受信CNR値を求める。具体的には、サブキャリア帯域毎の搬送波電力C'kとサブキャリア帯域毎の雑音電力N'kについて、同じサブキャリア位置の成分同士で搬送波電力を雑音電力で割ることによって、OFDM信号におけるサブキャリア帯域ごとの受信CNR値を得る。これらの処理によって、IEEE802.11g規格に基づくOFDM信号におけるサブキャリアのうち、IEEE802.11bの変調信号帯域と重複する部分のサブキャリア位置における受信CNR値を求めることができる。
なお、既知信号の周波数特性が平坦でなく有色性を持つ場合には、受信CNR値の推定結果に既知信号の周波数特性の影響が現れるため、推定結果の周波数特性の変動が伝送路におけるマルチパスや雑音の影響によるものか既知信号の持つ周波数特性の影響か判別できなくなる。このような場合には、既知信号の周波数特性の影響を除去するために、11MHz帯域内のサブキャリア帯域毎の搬送波電力値について平均値を求め、その搬送波電力の平均値とサブキャリア帯域毎の雑音電力の比を求めることによって、サブキャリア帯域毎の受信CNR値の推定値を求めてもよい。このときのサブキャリア帯域毎の搬送波電力値とその平均値の関係を図8に示す。
また、IEEE802.11bの11MHz帯域よりも外側のIEEE802.11g規格におけるOFDM信号のサブキャリア帯域の受信CNR値については、前記のように算出された11MHz帯域内の受信CNR値の推定値を用いて推定してもよい。例えば、前記のように算出されたIEEE802.11bの変調信号帯域内の約10.74kHz帯域幅毎の受信CNR値の分布特性を外挿補完処理することにより推定を行うことができる。
かくして本実施の形態によれば、第1の無線通信装置100と第2の無線通信装置101の間で、同一周波数帯を使用する複数種の無線通信方式を切り換えながら通信を行う通信環境下において、第1の無線通信装置100が、第1の無線通信方式を用いて第2の無線通信装置101から受信した信号を基に、同じ無線伝送路環境下において第2の無線通信方式を用いて通信した場合の通信品質を擬似的に推定することが可能となる。さらには、この通信品質を基に、無線通信方式を適応的に切り換えることによって、効率的かつ的確に無線通信方式の切り換えを行うことができる。
ここで、無線通信方式の適応的な切り換えについては限定されるものではないが、例えば、第1の無線通信方式から第2の無線通信方式に無線通信方式を切り換える場合に、通信方式の切り換えの基準となるCNR値のしきい値をあらかじめ定めておき、上述のサブキャリア毎の受信CNR値の平均値がこのしきい値を上回った場合または下回った場合に、無線通信方式の切り換えを行う構成とすればよい。また、基準となるCNR値を超えたサブキャリアの本数をしきい値とし、受信CNR値が基準となるCNR値を超えているサブキャリアの数がしきい値の本数を上回った場合または下回った場合に、無線通信方式の切り換えを行う構成としてもよい。このように上述の通信品質を基に無線通信方式を適応的に切り替えることによって、効率的かつ的確に無線通信方式の切り換えを行うことが可能となる。
なお上述した実施の形態では、通信品質としてIEEE802.11g規格におけるOFDM信号のサブキャリア帯域毎の受信CNR値を推定して用いる構成および動作を一例として説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、第1の無線通信方式により送信された信号のうち、既知の信号が送信されている部分の受信信号を用いて第2の無線通信方式における特徴量を擬似的に推定する構成とすれば、他の構成および動作によっても実施可能である。
例えば、以下の構成および動作により第2の無線通信方式におけるビット誤り数やビット誤り率(BER)を擬似的に推定することもできる。図9にBER値を推定する場合の通信品質推定部900の構成を示す。図9において図3と同じ構成要素には同じ符号を用い、その説明を省略する。BER推定部901は、DFT部301から出力される受信既知信号の周波数特性と、DFT部302から出力されるリファレンス信号の周波数特性とを周波数成分毎に比較することにより、ビット誤りが生じ得るか否かを擬似的に推定し、推定結果を基にIEEE802.11g規格におけるOFDM信号のサブキャリア帯域毎のBER値を推定し、このBER値の推定結果を推定通信品質として出力する。
以上の構成におけるBER値を推定する動作について以下で説明する。ここで、BER値の推定の対象となるIEEE802.11g規格におけるOFDMサブキャリア部分は一例として16値QAMで一次変調されるものとする。また、IEEE802.11b規格におけるPLCPプリアンブル部分はDBPSKで一次変調されているものとする。16値QAMの信号点配置を図10に示す。
まず、DBPSK信号(IEEE802.11bのPLCPプリアンブル部分:受信既知信号)と16値QAM信号(IEEE802.11gのサブキャリア部分)とで受信電力が同じ場合、受信既知信号の周波数特性の全周波数成分における実効振幅の平均値をaとすると、16値QAM信号の周波数領域でのIQベクトルは、図10に示すように、(±aM/√10,±aM/√10)(M=1,3)と表すことができる。一般的にグレイ符号化されている16値QAMでは、受信信号のIQベクトルのI、Q成分の符号の正負を判定することにより、信号点を表す4ビット中の2ビットが判定され、振幅の大小を判定することにより残りの2ビットが判定される。このうち振幅判定の際のしきい値は、図10の点線で示すように、I=±2a/√10、Q=±2a/√10となり、16値QAM信号におけるそれぞれの信号点からI軸、Q軸ともにa/√10の距離に設定されることになる。
このことを考慮して、DFT部302から出力されるリファレンス信号の周波数特性の各周波数成分におけるIQベクトルに対してI軸、Q軸方向それぞれにa/√10の距離にしきい値を設定する。以上のようにして設定されたしきい値と、DFT部301から出力される受信既知信号の周波数特性とを周波数成分毎にそれぞれI軸、Q軸について比較することにより、しきい値判定ビット誤りを推定する。
しきい値の設定としきい値判定ビット誤りの判定を図11に示す。図11に示すように、リファレンス信号に対して設けたI軸、Q軸の両方のしきい値内に受信既知信号が入っている場合には、IEEE802.11gを用いて通信した場合にその周波数成分の信号は誤りなく受信されると推定する。これに対して、I軸、Q軸の各軸方向のうちのどちらか一方についてしきい値の領域に入らなかった場合には、IEEE802.11gを用いて通信した場合にその周波数成分の信号には2ビット中1ビットのしきい値判定ビット誤りが生じると推定する。また、I軸、Q軸の各軸方向の両方についてしきい値の領域に入らなかった場合には、IEEE802.11gを用いて通信した場合にその周波数成分の信号には2ビット中2ビットのしきい値判定ビット誤りが生じると推定する。
このようにして求めたしきい値判定ビット誤りの結果を基に、IEEE802.11g規格におけるOFDM信号の各サブキャリア帯域内の29要素もしくは30要素毎に割合を求めることで、一サブキャリア帯域毎のしきい値判定ビット誤り率Pthrを求めることができる。すなわち、IEEE802.11g規格におけるOFDM信号の各サブキャリア帯域内の29要素もしくは30要素について、しきい値判定ビット誤り数を、ビット数(58ビットもしくは60ビット)で割ればよい。
このようにして求めたしきい値判定ビット誤り率の結果を基に、一つのサブキャリア帯域毎の振幅判定ビット誤り率P
ampと符号判定ビット誤り率P
sigを求める。まず、振幅判定ビット誤りについては、I軸方向のみについて考えた場合、16値QAMにグレイ符号を用いているため、正方向もしくは負方向のうちのどちらか一方にしきい値を超えた場合には振幅判定ビット誤りが生じるが、もう一方にしきい値を超えた場合には振幅判定ビット誤りは生じない。Q軸方向についても同様であることから、一つのサブキャリア帯域毎の振幅判定ビット誤り率P
ampは次式で表される。
次に、符号誤りビットについては、I軸方向のみについて考えた場合、16値QAMの信号点のうち、絶対値の大きい外側の2点については正方向、負方向のどちらにしきい値を超えても符号判定ビット誤りは生じない。また、16値QAMの信号点のうち、絶対値の小さい内側の2点については正方向もしくは負方向のうちのどちらか一方にしきい値を超えた場合には符号判定ビット誤りが生じるが、もう一方にしきい値を超えた場合には符号判定ビット誤りは生じない。Q軸方向についても同様であることから、一つのサブキャリア帯域毎の符号判定ビット誤り率P
sigは次式で表される。
ここで、1サブキャリア帯域毎のビット誤り率をP
allとすると、P
amp、P
sig、P
allの関係は統計的に次式で表されることが知られている。
したがって、上述の手順で得られた一つのサブキャリア帯域毎のしきい値判定ビット誤り率を(8)式に代入することによって一つのサブキャリア帯域毎のBER値を推定することができる。
以上の構成および動作により、IEEE802.11g規格におけるサブキャリア帯域毎のBER値を擬似的に推定することができる。
また、BER値を推定するより単純な方法として、サブキャリア帯域毎の受信CNR値の推定値からBER値を推定し、このBER値を通信品質として用いる構成としてもよい。具体的には、各サブキャリア帯域の受信CNR値の推定値からテーブルを参照するなどしてBER値を推定することができる。
また上述した実施の形態では、推定を行うタイミングについては特に言及していないが、本発明を適用するシステムに適したタイミングで行えばよく、例えば常に通信品質を推定する構成としてもよいし、ある一定の期間ごとに通信品質を推定する構成としてもよい。また、現在通信を行っている第1の無線通信方式の通信品質についても推定を行う構成とし、現在の通信の通信品質があるしきい値を下回った場合、もしくはあるしきい値を超えた場合等に、必要に応じて第2の無線通信方式を用いて通信を行った場合の通信品質を推定するものとしてもよい。
また上述した実施の形態では、既知信号の周波数特性が平坦でなく有色性を持つ場合には、11MHz帯域内のサブキャリア帯域毎の搬送波電力値について平均値を求めることで、既知信号の周波数特性の影響を除去するとしたが、これに限定されるものではなく、他の方法で既知信号の周波数特性の影響を除去するようにしてもよい。例えば、サブキャリア帯域毎に受信CNR値の推定値を求めた後に、既知信号の周波数特性の影響を除去する構成としてもよい。
また上述した実施の形態では、無線部200でIEEE802.11bの通常の受信処理を行う際のタイミング同期誤差の影響については説明していないが、タイミング同期誤差がある場合には、受信信号に対して周波数軸方向に移動平均を求めることにより雑音による影響とタイミング同期誤差による影響とを分離し、タイミング同期誤差による影響のみを受信信号から除去する構成としてもよい。また、周波数同期誤差についても上記と同様の平均化処理を行うことにより、周波数誤差の影響を受信信号から除去する処理を行う構成としてもよい。
また上述した実施の形態では、通信品質推定部201にDFT部301および302を設けこれらを用いて受信既知信号およびリファレンス信号の周波数特性を求める構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、本来IEEE802.11g規格のOFDM方式に準じた通信の受信時に用いられるFFT処理部を用いて、受信既知信号およびリファレンス信号の周波数特性を求める構成としてもよい。このように、現在通信を行っている無線通信方式とは異なる無線通信方式に用いられる機能を通信品質の推定に用いることによって、無線通信装置の機能を有効に活用することができる。
また上述した実施の形態では、IEEE802.11bの中心周波数とIEEE802.11gの中心周波数が同じ場合について述べたが、これに限定されるものではなく、IEEE802.11bの11MHzの帯域とIEEE802.11gの帯域に重複部分があれば、重複帯域内のサブキャリア帯域の受信CNR値を推定することが可能であり、この受信CNR値の推定値を用いて重複帯域外のサブキャリア帯域の受信CNR値を推定することでIEEE802.11gの使用周波数帯域について通信品質の推定を行うことが可能である。
また上述した実施の形態では、第1の無線通信方式はIEEE802.11bの規格におけるDSSS方式に準じた無線通信方式とし、第2の無線通信方式はIEEE802.11gの規格におけるOFDM方式に準じた無線通信方式としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1の無線通信方式の使用する周波数帯域と第2の無線通信方式の使用する周波数帯域の一部または全てが重複していれば他の無線通信方式へも適用可能であることは言うまでもない。例えば第1の無線通信方式をIEEE802.11bの規格におけるDSSS方式に準じた無線通信方式とし、第2の無線通信方式をBluetoothの規格に準じた無線通信方式としても適用可能である。この場合、上述した実施の形態ではOFDM信号におけるサブキャリア帯域毎の雑音電力、搬送波電力を求めてOFDM信号におけるサブキャリア帯域毎の受信CNR値を求めたのに対して、Bluetoothの規格における周波数チャネル毎の雑音電力、搬送波電力を求め、これらの比を求めることでBluetoothの規格における周波数チャネル毎の受信CNR値を求めるようにすればよい。
また上述した実施の形態では、IEEE802.11bの中心周波数は固定とし、11MHz帯域よりも外側のサブキャリア帯域については11MHz帯域内の受信CNR値の推定値を用いて推定を行う場合について述べたが、これに限定されるものではない。例えば、IEEE802.11bの中心周波数を少しずつ変更しながら受信CNR値の推定を行うことにより、所望の周波数帯域についての受信CNR値を推定することが可能となる。
また上述した実施の形態では、無線通信方式は第1の無線通信方式と第2の無線通信方式の二種類としたが、これに限定されるものではなく、三種類以上の無線通信方式を用いる構成としてもよい。この場合、双方の無線通信装置の無線部200および第1の無線通信装置100の通信品質推定部201を三種類以上の無線通信方式に対応可能な構成とし、ある無線通信方式を用いて通信を行いながら、他の複数種の無線通信方式で通信した場合の通信品質を推定し、推定した複数種の通信品質を比較し、最も効率の高い無線通信方式に切り換えることによって、より効率的に通信することが可能となる。
また上述した実施の形態では、第1の無線通信装置100のみが通信品質の推定を行う構成としたが、これに限定されるものではなく、第2の無線通信装置101にも通信品質推定部およびリファレンス信号記憶部を設け、第1の無線通信装置100および第2の無線通信装置101の双方で通信品質の推定を行う構成としてもよい。
また上述した実施の形態では、第1の無線通信装置100の無線部200をソフトウェアの書き換えなどにより再構成可能なプログラマブルデバイスを用いることにより第1の無線通信方式と第2の無線通信方式に対応するものとしたが、これに限定されるものではなく、第1の無線通信方式および第2の無線通信方式のそれぞれに対応する無線部を独立に設け、必要に応じて使用する無線部を動作させて通信する構成としてもよい。また、アンテナの本数についても、一つの無線部に対して一本のみを具備する構成に限定されるものではなく、一つの無線部に対して複数本のアンテナを具備する構成としてもよい。
また上述した実施の形態では、第1の無線通信装置100を無線部200、通信品質推定部201、無線部構成記憶部202、および、リファレンス信号記憶部203から構成したが、これに限定されるものではなく、上述した構成に加えて、通信品質の推定結果を他の処理部または機器に対して出力する出力部を設けるようにしてもよい。このようにすれば、出力部からPCやTV、プリンタなどのなどの外部機器に通信品質の推定結果を出力することにより、他の機器と通信品質の推定結果を共有、利用することができ、また、通信品質の推定結果を映像や文字情報として出力することができるようになる。これにより、ユーザに通信品質の推定結果を伝えることも可能となる。
また上述した実施の形態では、第1の無線通信装置100の通信品質推定部201の既知信号抽出部300において既知信号部分を抽出する構成としたが、これに限定されるものではなく、第1の無線通信装置100の無線部200において既知信号部分を抽出し、既知信号部分のみを通信品質推定部201に出力する構成としてもよい。
また上述した実施の形態では、無線部構成記憶部202とリファレンス信号記憶部203の二種類の記憶部を個別に設ける構成としたが、これに限定されるものではなく、二種類の記憶部を共通化し、一つの記憶部に無線部200の再構成に必要な情報とリファレンス信号の両方を保持する構成としてもよい。
また上述した実施の形態では、時間領域の信号を周波数領域に変換する際に1024ポイントのFFT処理を用いたが、これに限定されるものではない。例えば、2048ポイント、または4096ポイントというようにFFT処理のポイント数を大きくすることにより、雑音電力、搬送波電力の周波数特性を細かく推定することが可能となる。また、512ポイント、256ポイントというようにFFT処理のポイント数を小さくすることにより、処理演算数を軽減することが可能となる。また、FFT処理ではなく任意のポイント数のDFT処理を用いるものとしてもよい。
また上述した実施の形態では、受信既知信号のDFT処理とリファレンス信号のDFT処理には異なるDFT部を用いる構成としたが、これに限定されるものではなく、受信既知信号のDFT処理とリファレンス信号のDFT処理を時間的に分けて行うことにより、単一のDFT部で処理を行う構成としてもよい。
また上述した実施の形態では、既知信号部分としてPLCPプリアンブル部を用いる場合について述べたが、これに限定されるものではなく、受信側で既知の信号であればよく、例えば、PLCPヘッダ部分や、データ部分に既知の信号を埋め込み、この信号を用いて推定を行う構成としてもよい。このように、通信品質の推定に用いる信号を増やすことにより、通信品質の推定精度を上げることができる。
また上述した実施の形態では、CNR推定部305を設け、搬送波電力対雑音電力比を求める場合について述べたが、本発明はこれに限らず、CNR推定部305に代えてCINR推定部を設け、搬送波電力対干渉雑音電力比を求めることで、周波数成分毎の通信品質を擬似的に推定するようにしてもよい。
さらに上述した実施の形態では、OFDM信号のサブキャリア帯域毎に、雑音電力及び搬送波電力を求め、サブキャリア帯域毎の通信品質を擬似的に推定した場合について述べたが、サブキャリア帯域毎に限らず、任意の周波数帯域毎に雑音電力及び搬送波電力を求め、この周波数帯域毎の通信品質を擬似的に推定した場合でも同様の効果を得ることができる。すなわち、実施の形態のサブキャリア帯域を任意の周波数帯域と読み換えても、実施の形態と同様に実施することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、図12に示すように第1の無線通信装置1200と第2の無線通信装置1201の間で、同一周波数帯を使用する複数種の無線通信方式を切り換えながら通信を行う通信環境下において、第1の無線通信装置1200が、第1の無線通信方式を用いて第2の無線通信装置1201から受信した既知信号を基に、同じ無線伝送路環境下において第2の無線通信方式を用いて通信した場合の通信品質を擬似的に推定する場合の構成および動作について説明する。ここでは、第1の無線通信方式はIEEE802.11gの規格におけるERP-OFDM方式に準じた無線通信方式とし、第2の無線通信方式はIEEE802.11bの規格におけるDSSS方式に準じた無線通信方式とした場合を一例として説明する。
図12において、第1の無線通信装置1200は、第1の無線通信方式及び第2の無線通信方式を用いて第2の無線通信装置1201と通信可能であり、第2の無線通信装置1201との間で第1の無線通信方式および第2の無線通信方式を切り換えながら通信を行う。また、第1の無線通信装置1200は、第1の無線通信方式を用いて第2の無線通信装置1201と通信中に、第2の無線通信装置1201から受信した既知信号を基に、同じ無線伝送路環境下において第2の無線通信方式を用いて通信した場合の通信品質を擬似的に推定する。ここで、既知信号にはIEEE802.11gの規格におけるERP-OFDM方式のPLCPプリアンブル部分を用いるものとする。
第2の無線通信装置1201は、第1の無線通信方式、および、第2の無線通信方式を用いて第1の無線通信装置1200と通信可能であり、第1の無線通信装置1200との間で第1の無線通信方式および第2の無線通信方式を切り換えながら通信を行うことができるようになっている。
図13に、本実施の形態における第1の無線通信装置1200の構成例を示す。第1の無線通信装置1200は、無線部1300、通信品質推定部1301、無線部構成記憶部1302及びリファレンス信号記憶部1303を有する。
無線部1300は、少なくとも第1の無線通信方式及び第2の無線通信方式に対応可能なアンテナと、機能の変更が可能なリコンフィギュラブル処理部とを有する。リコンフィギュラブル処理部は、例えばソフトウェアの書き換えなどにより再構成可能なプログラマブルデバイスにより構成されている。リコンフィギュラブル処理部は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、CPU(Central Processing Unit)、リコンフィギュラブルプロセッサなど機能および動作がソフトウェアプログラムやコンフィギュレーションデータの読み込みにより変更可能なデバイスのうち一つ、もしくは上記デバイスの組み合わせにより構成される。これにより、単一の無線部で第1の無線通信方式および第2の無線通信方式を切り換えながら、第2の無線通信装置1201と通信可能となる。また無線部1300は、通信品質推定部1301に受信信号を送出する。
通信品質推定部1301は、無線部1300から出力される第2の無線通信装置1201から第1の無線通信方式を用いて受信した受信信号と、リファレンス信号記憶部1303から出力されるリファレンス信号と用いて、同じ無線伝送路環境下において第2の無線通信方式を用いて通信した場合の通信品質を推定し、この推定結果を推定通信品質として出力する。
無線部構成記憶部1302は、無線部1300の再構成に必要な情報を保持している。
リファレンス信号記憶部1303は、通信品質の推定に用いる既知信号をリファレンス信号としてあらかじめ保持している。
図14に、本実施の形態における通信品質推定部1301の構成例を示す。通信品質推定部1301は、既知信号抽出部1400、リファレンス信号抽出部1401、変動推定部1402、およびDSSS_BER推定部1403を有する。
既知信号抽出部1400は、受信信号から既知信号部分を抽出し、この信号を受信既知信号として変動推定部1402に出力する。既知信号部分とは、あらかじめその信号の内容および位置が受信側でわかっている信号部分のことであり、一般に通信パケット内に挿入されるプリアンブル部やパイロット信号の部分を適用することが可能である。本実施の形態では既知信号部分の一例として、IEEE802.11gのERP-OFDM方式のPPDUフレームフォーマットにおけるPLCPプリアンブル部を用いる。図15にIEEE802.11gのERP-OFDM方式のPPDUフレームフォーマットを示す。ここで、本実施の形態においては、IEEE802.11gのERP-OFDM方式のPLCPプリアンブル部の信号のサンプリングレートと、IEEE802.11bのDSSS方式の信号のサンプリングレートが異なるため、既知信号部分の抽出の際に抽出後の信号のサンプリングレートがIEEE802.11bのDSSS方式の信号のサンプリングレートに等しくなるように間引きを行う。その詳細については後述する。既知信号抽出部1400は、このようにして得た受信既知信号を変動推定部1402に出力する。
リファレンス信号抽出部1401は、リファレンス信号記憶部1303から出力されるリファレンス信号に対し、そのサンプリングレートがIEEE802.11bのDSSS方式の信号と等しくなるように、間引きを行う。この間引き後のリファレンス信号を参照信号として変動推定部1402に出力する。
変動推定部1402は、既知信号抽出部1400から出力される受信既知信号と、リファレンス信号抽出部1401から出力される参照信号とを用いて、受信信号の振幅変動および位相変動を表す変動ベクトルを求め、この変動ベクトルをDSSS_BER推定部1403に出力する。
DSSS_BER推定部1403は、変動推定部1402から出力される変動ベクトルを用いて、IEEE802.11bのDSSS方式で通信した場合のBERを推定し、その推定結果を推定通信品質として出力する。
ここで、本実施の形態では一例として、第1の無線通信方式の使用周波数帯域と、第2の無線通信方式の使用周波数帯域はほぼ同じであるとする。
以上の構成において、同一周波数帯を使用するIEEE802.11gの規格におけるERP-OFDM方式に準じた第1の無線通信方式とIEEE802.11bの規格におけるDSSS方式に準じた第2の無線通信方式を切り換えながら通信可能な第1の無線通信装置1200が、第2の無線通信装置1201からの第1の無線通信方式による通信の受信信号を基に、同じ無線伝送路環境下において第2の無線通信方式を用いて通信した場合の通信品質を推定する具体的な動作について以下で説明する。
まず、第1の無線通信装置1200は、第2の無線通信装置1201からIEEE802.11gの規格におけるERP-OFDM方式に準じて送信された信号を、無線部1300において受信する。無線部1300はこの受信信号に対して、通常のIEEE802.11gのERP-OFDM方式の受信処理を行って復調データを得るとともに、ベースバンド信号を通信品質推定部1301に出力する。
通信品質推定部1301は、まず既知信号抽出部1400において、無線部1300から出力された受信信号からIEEE802.11gの規格におけるERP-OFDM方式のPLCPプリアンブル部分をIEEE802.11bのDSSS方式の信号のサンプリングレートにあわせて抽出し、抽出した信号部分を受信既知信号として変動推定部1402に出力する。この具体的な動作について以下で説明する。
図16に、DSSS方式の受信信号(図16(a))、ERP-OFDM方式の受信信号(図16(b))、およびERP-OFDM方式の受信信号からDSSS方式の信号のサンプリングレートにあわせて抽出した受信既知信号(図16(c))を示す。図16に示すように、DSSS方式ではサンプリングレートは11MHzであるのに対し、ERP-OFDM方式では20MHzであるため、タイミングがほぼ等しくなるように信号を抜き出し、受信既知信号を抽出する必要がある。本実施の形態では一例として20MHzのERP-OFDM方式の受信信号の1シンボル内の20サンプル(0〜19)に対し、0、2、4、6、8、9、11、13、15、17、19番目のサンプルを抽出する。こうすることにより、20MHzのERP-OFDM方式の受信信号から11MHzの受信既知信号を生成することができる。既知信号抽出部1400は、このようにして生成した受信既知信号を変動推定部1402に出力する。
また、リファレンス信号抽出部1401は既知信号抽出部1400と同様の手順で20MHzのERP-OFDM信号のリファレンス信号から11MHzの参照信号を抽出する。この参照信号を変動推定部1402に出力する。
変動推定部1402は、既知信号抽出部1400から出力される受信既知信号とリファレンス信号抽出部1401から出力される参照信号を用いて受信信号のサンプル毎の振幅変動および位相変動を推定する。受信信号の振幅変動および位相変動の推定方法については限定されるものではないが、一例としてサンプル毎に受信既知信号ベクトルを参照信号ベクトルで割ることによって1サンプルあたりの振幅変動および位相変動を推定する方法について図17を用いて以下で説明する。
図17に受信既知信号ベクトルを示す。この図において、(a
i+jb
i)は受信既知信号ベクトルを表しa
0〜a
10の11サンプルで1シンボルが構成される。また、(c
i+jd
i)は参照信号ベクトルを表し、b
0〜b
10の11サンプルで1シンボルが構成される。これらの信号に対し1サンプル毎に次式によって1サンプルあたりの変動ベクトル(e
i+jf
i)を求め、この変動ベクトルをDSSS_BER推定部1403に出力する。
DSSS_BER推定部1403は、変動推定部1402から出力される変動ベクトルを用いて同じ無線伝送路環境下においてIEEE802.11b規格のDSSS方式で通信した場合に誤りが発生するかどうかをシンボル毎に推定し、その結果を推定通信品質として出力する。ここで、本実施の形態では通信品質としてビット誤り率(BER:Bit Error Rate)を求める。図18を用いて以下で具体的に説明する。まずDSSS_BER推定部1403で、変動推定部1402から出力される1サンプルあたりの変動ベクトルの1シンボル区間(11サンプル)の和を次式を用いて求めることによって、1シンボルあたりの変動ベクトルG (= g+jh)を推定する。
ここで、IEEE802.11b規格におけるDSSS方式に用いられているDBPSK、およびDQPSKでは現在のシンボルと一つ前のシンボルとの位相差によってデータの復調を行う。そのため、変動推定部1402から出力されるn番目のシンボルの変動ベクトルをGn、n-1番目のシンボルの変動ベクトルをGn-1とすると、GnとGn-1の位相差φ(0≦φ<2π)を求め、このφの大きさによってビット誤りを推定することができる。一例としてDSSS方式の1Mbps伝送(DBPSK)の通信品質を推定する場合、図18(a)に示すように、φが0≦φ<π/2または3π/2<φ<2πの時にはそのシンボルは誤りなく受信できると推定し、φがπ/2≦φ≦3π/2の時にはそのシンボルでは1ビットの誤りが生じると推定する。また、DSSS方式の2Mbps伝送(DQPSK)の通信品質を推定する場合、図18(b)に示すように、φが0≦φ<π/4または7π/4<φ<2πの時にはそのシンボルは誤りなく受信できると推定し、φがπ/4≦φ<3π/4または5π/4<φ≦7π/4の時にはそのシンボルでは1ビットの誤りが生じると推定し、φが3π/4≦φ≦5π/4の時にはそのシンボルでは2ビットの誤りが生じると推定する。以上の動作により、IEEE802.11gの規格におけるERP-OFDM方式の受信信号からIEEE802.11bの規格におけるDSSS方式を用いて通信した場合の誤りを推定することができる。DSSS_BER推定部1403は、このようにして求めたビット誤りを基にBERを算出し、このBERを推定通信品質として出力する。
かくして本実施の形態によれば、第1の無線通信装置1200と第2の無線通信装置1201の間で、同一周波数帯を使用する複数種の無線通信方式を切り換えながら通信を行う通信環境下において、第1の無線通信装置1200が、第1の無線通信方式を用いて第2の無線通信装置1201から受信した信号を基に、同じ無線伝送路環境下において第2の無線通信方式を用いて通信した場合の通信品質を擬似的に推定することが可能となる。さらには、この通信品質を基に、無線通信方式を適応的に切り換えることによって、効率的かつ的確に無線通信方式の切り換えを行うことができる。
なお上述した実施の形態では、通信品質としてIEEE802.11b規格におけるDSSS信号のBERを推定して用いる構成および動作を一例として説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、第1の無線通信方式により送信された信号のうち、既知の信号が送信されている部分の受信信号を用いて第2の無線通信方式における特徴量を擬似的に推定する構成とすれば、他の構成および動作によっても実施可能である。
例えば、以下の構成および動作により第2の無線通信方式における搬送波電力対雑音電力比(CNR)を擬似的に推定することもできる。図19にCNR値を推定する場合の通信品質推定部1900の構成を示す。図19において図14と同じ構成要素には同じ符号を用い、その説明を省略する。
CNR推定部1901は、変動推定部1402から出力される1サンプルあたりの変動ベクトルと、リファレンス信号抽出部1401から出力される1サンプルあたりの参照信号ベクトルを用いてCNR値を推定し、このCNR値の推定結果を推定通信品質として出力する。具体的な動作としては、変動推定部1402から出力される1サンプルあたりの変動ベクトルについて1シンボル区間の和を(10)式を用いて求めることによって、1シンボルあたりの変動ベクトルG (= g+jh)を推定する。また、次式に示すように、リファレンス信号抽出部1401から出力される1サンプルあたりの参照信号ベクトル(c
i+jd
i)の絶対値をシンボル区間内で加算することによって、1シンボルあたりの搬送波ベクトル(k+jl)を求める。
CNR推定部1901は、これらの1シンボルあたりの変動ベクトルと搬送波ベクトルの差分ベクトルを求め、この差分ベクトルの振幅の2乗を雑音電力Nとして算出する。また、CNR推定部1901は、搬送波ベクトルの振幅の2乗を搬送波電力Cとして算出する。そして、CNR推定部1901は、この搬送波電力Cを前記雑音電力Nで割ることにより、CNR値を求め、このCNR値の推定結果を推定通信品質として出力する。
以上の構成および動作により、IEEE802.11b規格におけるDSSS方式のCNR値を擬似的に推定することができる。
なお上述した実施の形態では、CNR推定部1901を設け、搬送波電力対雑音電力比を求める場合について述べたが、本発明はこれに限らず、CNR推定部1901に代えてCINR推定部を設け、搬送波電力対干渉雑音電力比を通信品質として擬似的に推定するようにしてもよい。またCNR値の推定値からBER値を推定し、このBER値を通信品質として用いる構成としてもよい。具体的には、CNR値の推定値からテーブルを参照するなどしてBER値を推定することができる。
また上述した実施の形態では、現在のシンボルと一つ前のシンボルの位相差を基にビット誤りを推定し、このビット誤りに基づいてBERを算出し、このBERを推定通信品質として出力する場合について述べたが、これに限定されるものではない。例えば、現在のシンボルと一つ前のシンボルの位相差φを推定通信品質として出力する構成としてもよい。
また上述した実施の形態では、推定を行うタイミングについては特に言及していないが、本発明を適用するシステムに適したタイミングで行えばよく、例えば常に通信品質を推定する構成としてもよいし、ある一定の期間ごとに通信品質を推定する構成としてもよい。また、現在通信を行っている第1の無線通信方式の通信品質についても推定を行う構成とし、現在の通信の通信品質があるしきい値を下回った場合、もしくはあるしきい値を超えた場合等に、必要に応じて第2の無線通信方式を用いて通信を行った場合の通信品質を推定するようにしてもよい。
また上述した実施の形態では、第1の無線通信方式にはIEEE802.11gの規格におけるERP-OFDM方式に準じた無線通信方式を用いるものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1の無線通信方式にIEEE802.11gの規格におけるDSSS-OFDM方式や、ERP-PBCC方式や、IEEE802.11b規格と互換性のあるDSSS方式やCCK方式やPBCC方式など、プリアンブル信号に11MHzの信号を用いる方式を適用する構成としてもよい。この場合、第1の無線通信方式の既知信号のサンプリングレートと、通信品質推定先である第2の無線通信方式のサンプリングレートが同じ11MHzとなるため、通信品質推定部1301の既知信号抽出部1400およびリファレンス信号抽出部1401においてサンプリングレートの変換を行う必要がなくなりこの2つの処理部を具備しない構成でも適用が可能となる。また、この場合、プリアンブル信号にはロングプリアンブルフォーマットとショートプリアンブルフォーマットがあるがどちらを適用する構成としてもよい。
また上述した実施の形態では、第2の無線通信方式にはIEEE802.11bの規格に準じた無線通信方式を用いる場合について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく、第2の無線通信方式にIEEE802.11の規格に準じた無線通信方式を用いた場合でも、上述の実施の形態と同様に実施可能であることは言うまでもない。
また上述した実施の形態では、無線通信方式は第1の無線通信方式と第2の無線通信方式の二種類としたが、これに限定されるものではなく、三種類以上の無線通信方式を用いる構成としてもよい。この場合、双方の無線通信装置の無線部1300および第1の無線通信装置1200の通信品質推定部1301を三種類以上の無線通信方式に対応可能な構成とし、ある無線通信方式を用いて通信を行いながら、他の複数種の無線通信方式で通信した場合の通信品質を推定し、推定した複数種の通信品質を比較し、最も効率の高い無線通信方式に切り換えることによって、より効率的に通信することが可能となる。
また上述した実施の形態では、第1の無線通信装置1200のみが通信品質の推定を行う構成としたが、これに限定されるものではなく、第2の無線通信装置1201にも通信品質推定部およびリファレンス信号記憶部を設け、第1の無線通信装置1200および第2の無線通信装置1201の双方で通信品質の推定を行う構成としてもよい。
また上述した実施の形態では、第1の無線通信装置1200の無線部1300はソフトウェアの書き換えなどにより再構成可能なプログラマブルデバイスを用いることにより第1の無線通信方式と第2の無線通信方式に対応するものとしたが、これに限定されるものではなく、第1の無線通信方式および第2の無線通信方式のそれぞれに対応する無線部を独立に設け、必要に応じて使用する無線部を動作させて通信する構成としてもよい。また、アンテナの本数についても、一つの無線部に対して一本のみを具備する構成に限定されるものではなく、一つの無線部に対して複数本のアンテナを具備する構成としてもよい。
また上述した実施の形態では、第1の無線通信装置1200を無線部1300、通信品質推定部1301、無線部構成記憶部1302、および、リファレンス信号記憶部1303から構成したが、これに限定されるものではなく、上述した構成に加えて、通信品質の推定結果を他の処理部または機器に対して出力する出力部を設けるようにしてもよい。このようにすれば、出力部からPCやTV、プリンタなどのなどの外部機器に通信品質の推定結果を出力することにより、他の機器と通信品質の推定結果を共有、利用することができ、また、通信品質の推定結果を映像や文字情報として出力することができるようになる。これにより、ユーザに通信品質の推定結果を伝えることも可能となる。
また上述した実施の形態では、第1の無線通信装置1200の通信品質推定部1301の既知信号抽出部1400において既知信号部分を抽出する構成としたが、これに限定されるものではなく、第1の無線通信装置1200の無線部1300において既知信号部分を抽出し、既知信号部分のみを通信品質推定部1301に出力する構成としてもよい。
また上述した実施の形態では、第1の無線通信装置1200の通信品質推定部1301のリファレンス信号抽出部1401において、リファレンス信号のサンプリングレートがIEEE802.11bのDSSS方式の信号と等しくなるように、間引きを行う構成としたが、これに限定されるものではなく、第1の無線通信装置1200のリファレンス信号記憶部1303にあらかじめサンプリングレートがIEEE802.11bのDSSS方式の信号と等しくなるような参照信号を保持しておく構成としてもよい。こうすることにより、リファレンス信号記憶部1303から出力される参照信号をリファレンス信号抽出部1401を用いずに変動推定部1402で用いることが可能となるので、リファレンス信号抽出部1401を設けなくても済むようになる。
また上述した実施の形態では、既知信号抽出部1400およびリファレンス信号抽出部1401において受信既知信号および参照信号のサンプリングレートが11MHzになるように、20MHzのERP-OFDM方式の受信信号およびリファレンス信号の1シンボル内の20サンプル(0〜19)に対し、0、2、4、6、8、9、11、13、15、17、19番目のサンプルを抽出する構成としたが、これに限定されるものではなく、1シンボル内の任意のタイミングで11サンプル抽出する構成としてもよい。また、サンプリングレート変換フィルタを用いてサンプリングレートの変換を行う構成としてもよい。
また上述した実施の形態では、無線部構成記憶部1302とリファレンス信号記憶部1303の二種類の記憶部を個別に設ける構成としたが、これに限定されるものではなく、二種類の記憶部を共通化し、一つの記憶部に無線部1300の再構成に必要な情報とリファレンス信号の両方を保持する構成としてもよい。
また上述した実施の形態では、既知信号部分としてPLCPプリアンブル部を用いる場合について述べたが、これに限定されるものではなく、受信側で既知の信号であればよく、例えば、PLCPヘッダ部分や、データ部分に既知の信号を埋め込み、この信号を用いて推定を行う構成としてもよい。このように、通信品質の推定に用いる信号を増やすことにより、通信品質の推定精度を上げることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2と同様に、図12に示すように第1の無線通信装置1200と第2の無線通信装置1201の間で、同一周波数帯を使用する複数種の無線通信方式を切り換えながら通信を行う通信環境下において、第1の無線通信装置1200が、第1の無線通信方式を用いて第2の無線通信装置1201から受信した既知信号を基に、同じ無線伝送路環境下において第2の無線通信方式を用いて通信した場合の通信品質を擬似的に推定する場合の構成および動作について説明する。ここで、実施の形態2と異なる部分は、本実施の形態では第2の無線通信方式にはIEEE802.11bの規格におけるCCK方式に準じた無線通信方式を用いる点である。以下で実施の形態2と同じ構成および動作を行う部分については説明を省略し、異なる構成および動作を行う部分についてのみ説明する。
図20に、本実施の形態における第1の無線通信装置1200の通信品質推定部2000の構成例を示す。通信品質推定部2000は既知信号抽出部1400、リファレンス信号抽出部1401、変動推定部1402、およびCCK_BER推定部2001を有する。実施の形態2の通信品質推定部1301とは、DSSS_BER推定部1403の代わりにCCK_BER推定部2001を具備する構成となっている点が異なる。他の既知信号抽出部1400、リファレンス信号抽出部1401、および変動推定部1402は実施の形態2と同じ構成および動作を行う。
CCK_BER推定部2001は、変動推定部1402から出力される変動ベクトルを用いて、IEEE802.11bのDSSS方式で通信した場合のBERを推定し、その推定結果を推定通信品質として出力する。
ここで、本実施の形態においても、実施の形態2と同様に、既知信号部分の一例としてIEEE802.11gのERP-OFDM方式のPPDUフレームフォーマットにおけるPLCPプリアンブル部を用いるものとする。また、第1の無線通信方式の使用周波数帯域と、第2の無線通信方式の使用周波数帯域はほぼ同じであるとする。また、IEEE802.11bの規格におけるCCK方式には5.5Mbpsと11Mbpsの2種類があるが、本実施の形態では11Mbpsの方式を用いるものとする。
以上の構成において、同一周波数帯を使用するIEEE802.11gの規格におけるERP-OFDM方式に準じた第1の無線通信方式とIEEE802.11bの規格におけるCCK方式に準じた第2の無線通信方式を切り換えながら通信可能な第1の無線通信装置1200が、第2の無線通信装置1201からの第1の無線通信方式による通信の受信信号を基に、同じ無線伝送路環境下において第2の無線通信方式を用いて通信した場合の通信品質を推定する具体的な動作について、実施の形態2と異なる部分についてのみ以下で説明する。
まず、第1の無線通信装置1200では、実施の形態2と同様に第2の無線通信装置1201からIEEE802.11gの規格におけるERP-OFDM方式に準じて送信された信号を、無線部1300において受信する。無線部1300はこの受信信号に対して、通常のIEEE802.11gのERP-OFDM方式の受信処理を行って復調データを得るとともに、ベースバンド信号を通信品質推定部2000に出力する。
通信品質推定部2000は、既知信号抽出部1400において、無線部1300から出力された受信信号から実施の形態2と同様に受信既知信号を抽出し、変動推定部1402に出力する。また、リファレンス信号抽出部1401においても実施の形態2と同様に参照信号を抽出し変動推定部1402に出力する。変動推定部1402は、これらの受信既知信号および参照信号を基に、1サンプルあたりの振幅変動および位相変動を表す変動ベクトルを推定し、この変動ベクトルをCCK_BER推定部2001に出力する。
CCK_BER推定部2001は、変動推定部1402から出力された変動ベクトルを用いて同じ無線伝送路環境下においてIEEE802.11b規格のCCK方式で通信した場合に誤りが発生するかどうかをシンボル毎に推定し、その結果を推定通信品質として出力する。なお、本実施の形態では通信品質としてビット誤り率(BER:Bit Error Rate)を求める。
ここで、IEEE802.11bの規格におけるCCK方式について説明する。CCK方式では、次式に示す符号S={s
0、s
1、s
2、s
3、s
4、s
5、s
6、s
7}を用いて拡散変調が行われる。
(12)式においてθiは送信データによって定まり、11MbpsのCCK方式の場合θ1〜θ4はそれぞれ8ビットの送信データT={t0、t1、t2、t3、t4、t5、t6、t7}の各2ビットに対応する。t0、t1とθ1の対応を表1に、t0〜t7とθ2〜θ4の対応を表2に示す。
CCK_BER推定部2001は、変動推定部1402から出力された1サンプル単位の変動ベクトルに対し、8サンプルを1つのシンボルとして(12)式および表1、表2の対応を基にビット誤りを推定し、BERを推定する。具体的な手順について以下で説明する。1シンボル分(8サンプル)の変動ベクトルをE={e0、e1、e2、e3、e4、e5、e6、e7}とすると、(12)式から、e0とe1の位相差、e2と-e3の位相差、e4とe5の位相差、および-e6とe7の位相差をそれぞれ求め、これらの位相差を平均化することによってθ2の位相変動α2を求めることができる。同様に、e0とe2の位相差、e1と-e3の位相差、e4と-e6の位相差、およびe5とe7の位相差からθ3の位相変動α3を、e0とe4の位相差、e1とe5の位相差、e2と-e6の位相差、および-e3とe7の位相差からθ4の位相変動α4を求めることができる。また、これらのα2〜α4を(12)式に代入することによりθ1の位相変動α1を求める。以上の手順により求めたα1〜α4に対して表3の対応表に基づいて、送信データTのうちそれぞれ2ビットについて誤りを推定する。
以上の動作により、IEEE802.11gの規格におけるERP-OFDM方式の受信信号からIEEE802.11bの規格におけるCCK方式を用いて通信した場合の誤りを推定することができる。CCK_BER推定部2001は、このようにして求めたビット誤りを基にBERを算出し、このBERを推定通信品質として出力する。
かくして本実施の形態によれば、第1の無線通信装置1200と第2の無線通信装置1201の間で、同一周波数帯を使用する複数種の無線通信方式を切り換えながら通信を行う通信環境下において、第1の無線通信装置1200が、第1の無線通信方式を用いて第2の無線通信装置1201から受信した信号を基に、同じ無線伝送路環境下において第2の無線通信方式を用いて通信した場合の通信品質を擬似的に推定することが可能となる。さらには、この通信品質を基に、無線通信方式を適応的に切り換えることによって、効率的かつ的確に無線通信方式の切り換えを行うことができる。
なお上述した実施の形態では、推定を行うタイミングについては特に言及していないが、本発明を適用するシステムに適したタイミングで行えばよく、例えば常に通信品質を推定する構成としてもよいし、ある一定の期間ごとに通信品質を推定する構成としてもよい。また、現在通信を行っている第1の無線通信方式の通信品質についても推定を行う構成とし、現在の通信の通信品質があるしきい値を下回った場合、もしくはあるしきい値を超えた場合等に、必要に応じて第2の無線通信方式を用いて通信を行った場合の通信品質を推定するようにしてもよい。
また上述した実施の形態では、第1の無線通信方式にはIEEE802.11gの規格におけるERP-OFDM方式に準じた無線通信方式を用いるものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1の無線通信方式にIEEE802.11gの規格におけるDSSS-OFDM方式や、ERP-PBCC方式や、IEEE802.11b規格と互換性のあるDSSS方式やCCK方式やPBCC方式など、プリアンブル信号に11MHzの信号を用いる方式を適用する構成としてもよい。この場合、第1の無線通信方式の既知信号のサンプリングレートと、通信品質推定先である第2の無線通信方式のサンプリングレートが同じ11MHzとなるため、通信品質推定部2000の既知信号抽出部1400およびリファレンス信号抽出部1401においてサンプリングレートの変換を行う必要がなくなりこの2つの処理部を具備しない構成でも適用が可能となる。また、この場合、プリアンブル信号にはロングプリアンブルフォーマットとショートプリアンブルフォーマットがあるがどちらを適用する構成としてもよい。
また上述した実施の形態では、無線通信方式は第1の無線通信方式と第2の無線通信方式の二種類としたが、これに限定されるものではなく、三種類以上の無線通信方式を用いる構成としてもよい。この場合、双方の無線通信装置の無線部1300および第1の無線通信装置1200の通信品質推定部2000を三種類以上の無線通信方式に対応可能な構成とし、ある無線通信方式を用いて通信を行いながら、他の複数種の無線通信方式で通信した場合の通信品質を推定し、推定した複数種の通信品質を比較し、最も効率の高い無線通信方式に切り換えることによって、より効率的に通信することが可能となる。
また上述した実施の形態では、第1の無線通信装置1200のみが通信品質の推定を行う構成としたが、これに限定されるものではなく、第2の無線通信装置1201にも通信品質推定部およびリファレンス信号記憶部を設け、第1の無線通信装置1200および第2の無線通信装置1201の双方で通信品質の推定を行う構成としてもよい。
また上述した実施の形態では、第1の無線通信装置1200の無線部1300はソフトウェアの書き換えなどにより再構成可能なプログラマブルデバイスを用いることにより第1の無線通信方式と第2の無線通信方式に対応するものとしたが、これに限定されるものではなく、第1の無線通信方式および第2の無線通信方式のそれぞれに対応する無線部を独立に具備し、必要に応じて使用する無線部を動作させて通信する構成としてもよい。また、アンテナの本数についても、一つの無線部に対して一本のみを具備する構成に限定されるものではなく、一つの無線部に対して複数本のアンテナを具備する構成としてもよい。
また上述した実施の形態では、第1の無線通信装置1200を無線部1300、通信品質推定部2000、無線部構成記憶部1302、および、リファレンス信号記憶部1303から構成したが、これに限定されるものではなく、上述した構成に加えて、通信品質の推定結果を他の処理部または機器に対して出力する出力部を設けるようにしてもよい。このようにすれば、出力部からPCやTV、プリンタなどのなどの外部機器に通信品質の推定結果を出力することにより、他の機器と通信品質の推定結果を共有、利用することができ、また、通信品質の推定結果を映像や文字情報として出力することができるようになる。これにより、ユーザに通信品質の推定結果を伝えることも可能となる。
また上述した実施の形態では、第1の無線通信装置1200の通信品質推定部2000の既知信号抽出部1400において既知信号部分を抽出する構成としたが、これに限定されるものではなく、第1の無線通信装置1200の無線部1300において既知信号部分を抽出し、既知信号部分のみを通信品質推定部2000に出力する構成としてもよい。
また上述した実施の形態では、第1の無線通信装置1200の通信品質推定部2000のリファレンス信号抽出部1401において、リファレンス信号のサンプリングレートがIEEE802.11bのCCK方式の信号と等しくなるように、間引きを行う構成としたが、これに限定されるものではなく、第1の無線通信装置1200のリファレンス信号記憶部1303にあらかじめサンプリングレートがIEEE802.11bのCCK方式の信号と等しくなるような参照信号を保持しておく構成としてもよい。こうすることにより、リファレンス信号記憶部1303から出力される参照信号をリファレンス信号抽出部1401を用いずに変動推定部1402で用いることが可能となるので、リファレンス信号抽出部1401を設けなくても済むようになる。
また上述した実施の形態では、既知信号抽出部1400およびリファレンス信号抽出部1401において受信既知信号および参照信号のサンプリングレートが11MHzになるように、20MHzのERP-OFDM方式の受信信号およびリファレンス信号の1シンボル内の20サンプル(0〜19)に対し、0、2、4、6、8、9、11、13、15、17、19番目のサンプルを抽出する構成としたが、これに限定されるものではなく、1シンボル内の任意のタイミングで11サンプル抽出する構成としてもよい。また、サンプリングレート変換フィルタを用いてサンプリングレートの変換を行う構成としてもよい。
また上述した実施の形態では、無線部構成記憶部1302とリファレンス信号記憶部1303の二種類の記憶部を個別に設ける構成としたが、これに限定されるものではなく、二種類の記憶部を共通化し、一つの記憶部に無線部1300の再構成に必要な情報とリファレンス信号の両方を保持する構成としてもよい。
また上述した実施の形態では、既知信号部分としてPLCPプリアンブル部を用いる場合について述べたが、これに限定されるものではなく、受信側で既知の信号であればよく、例えば、PLCPヘッダ部分や、データ部分に既知の信号を埋め込み、この信号を用いて推定を行う構成としてもよい。このように、通信品質の推定に用いる信号を増やすことにより、通信品質の推定精度を上げることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、図1に示すように、第1の無線通信装置100と第2の無線通信装置101の間で、ほぼ同じ周波数帯を使用する複数種の無線通信方式を切り換えながら通信を行う通信環境下において、第1の無線通信装置100が、第1の無線通信方式としてBluetooth規格に準じた周波数ホッピング方式の無線通信方式により通信している際の受信信号を用いて、第2の無線通信方式としてIEEE802.11g規格に準じたOFDM方式の無線通信方式により通信した場合の通信品質を擬似的に推定する場合の構成および動作の一例について、図21から図29を用いて説明する。
ここで、Bluetooth規格とIEEE802.11g規格の各々において使用される周波数チャネルの関係を図21に示す。Bluetooth規格による無線通信方式では、GFSKで変調された1Mbpsの変調信号が2402MHzから2480MHzの周波数帯に1MHz間隔で配置された79通りの周波数チャネル上で周波数ホッピングが施され通信が行われる。これに対し、IEEE802.11g規格のOFDM方式による無線通信方式では、2412MHzから2472MHzの周波数帯にMHz間隔で配置された13通りの周波数チャネルのうちの一つが選択され、そのチャネル上で通信が行われる(ただし、周波数帯やチャネル数の仕様は日本国内での使用の場合で記載)。なお、図21(a)の波線部分がBluetooth規格における使用サブキャリアを示すものであり、図21(b)はその詳細を示すものである。また、図21(a)の台形部分がIEEE802.11g規格における使用帯域を示すものであり、図21(c)はその詳細を示すものである。また図21において、Bluetooth規格のチャネルは<ch1>のように示し、IEEE802.11g規格のチャネルは(ch1)のように示した。図21で示すように、Bluetooth規格とIEEE802.11g規格では、使用する周波数帯のほとんどが重複している。本発明は、このように使用する周波数帯が重複していることを利用するものであり、例えば、第1の無線通信装置100と第2の無線通信装置101が、Bluetooth規格に準じた方式で通信を行っている際に、前記第1の無線装置100と第2の無線装置101の機能をIEEE802.11g規格のOFDM方式に切り換えて通信を行ってもよい通信リンク状況にあるか否かを推定するものである。
以下では、Bluetooth規格に順じた通信時の受信信号を用い、通信機能をIEEE802.11g規格に準じた方式により2412MHzのチャネルで通信を行うように切り換えた場合に想定される通信品質を推定する場合の例について説明する。
図22は、本実施の形態における第1の無線通信装置100の構成を示したものであり、リコンフィギュラブル無線信号処理部2201、通信品質推定部2203、機能変更情報記憶部2202により構成されている。
リコンフィギュラブル無線信号処理部2201は、無線信号処理の機能を変更することにより複数の無線通信規格に対応した所望の無線通信用信号処理を行い、少なくとも、受信結果と、設定されているチャネルに関する情報とを出力するものである。本実施の形態では、リコンフィギュラブル無線信号処理部2201は、少なくともBluetooth規格とIEEE802.11g規格の2つの無線通信方式に対応するよう機能変更が可能な構成となっている。さらに具体的には、Bluetooth規格に準じた無線通信方式に対応した無線信号処理として、GFSK方式の変復調処理、2.4GHz帯への周波数変換処理や周波数ホッピング等の処理が含まれ、またIEEE802.11g規格に準じた無線通信方式に対応した無線信号処理として、BPSK、QPSK、16値QAM、64値QAMのような変復調処理、2.4GHz帯への周波数変換やOFDM多重等の処理が含まれる。また、受信結果としては、所定の増幅、フィルタ、周波数変換等が行われた後の直交ベクトル信号を出力する。
通信品質推定部2203は、リコンフィギュラブル無線信号処理部2201から出力されるBluetooth規格に準じた無線通信方式による信号の受信結果とチャネル設定情報とを用いて、同様の無線伝送路環境下においてIEEE802.11g規格に準じた無線通信方式により通信を行った場合に想定される通信品質を擬似的に推定し、これにより得た通信品質擬似推定結果を出力する。
機能変更情報記憶部2202は、リコンフィギュラブル無線信号処理部2201における信号処理機能の変更に必要なソフトウェアプログラムもしくはコンフィギュレーションデータを記憶しておき、これを必要に応じて前記リコンフィギュラブル無線信号処理部2201に供給する。本実施の形態では、機能変更情報記憶部2202には、Bluetooth規格に対応した無線信号処理を行う機能に設定するためのソフトウェアプログラムもしくはコンフィギュレーションデータと、IEEE802.11g規格に対応した無線信号処理を行う機能に設定するためのソフトウェアプログラムもしくはコンフィギュレーションデータと、が記憶されている。
図23は、図22における通信品質推定部2203の詳細な構成例を示したものであり、受信品質推定部2301、周波数チャネル別受信品質記憶部2302、IEEE802.11g通信品質擬似推定部2303により構成されている。
受信品質推定部2301は、リコンフィギュラブル無線信号処理部2201から入力されるBluetooth規格に準じた無線通信方式の受信結果を用い、Bluetoothにおける受信スロット単位での受信品質を推定し推定結果を出力する。その動作の詳細については後述する。本実施の形態では、受信品質推定部2301は、受信品質として受信信号の搬送波電力対干渉雑音電力比(以下CINR:Carrier to Interference and Noise Ratio)を推定する。
周波数チャネル(ch)別受信品質記憶部2302は、入力される受信品質推定結果とチャネル設定情報を用い、Bluetooth規格において用いられる周波数ホッピングのチャネル毎の受信品質を記憶しておき、必要に応じて読み出し出力する。その動作の詳細については後述する。
IEEE802.11g通信品質擬似推定部2303は、周波数チャネル別受信品質記憶部2302に記憶されているホッピングチャネル毎の受信品質情報を必要に応じて読み出し、同様の無線伝送路環境下においてIEEE802.11g規格に準じた無線通信方式により通信を行った場合に想定される通信品質を擬似的に推定し、これにより得た通信品質擬似推定結果を出力する。本実施の形態では、IEEE802.11g通信品質擬似推定部2303は、通信品質として受信CINR値を擬似的に推定する。
以下、図22および図23の構成により第1の無線通信装置100においてBluetooth規格に準じた無線通信信号を用い、リンクの無線通信方式をIEEE802.11gに変更した場合に想定される通信品質として受信CINR値を擬似的に推定する方法について説明する。
第2の無線通信装置101からBluetooth規格に準じて周波数ホッピング方式により送信された信号は、リコンフィギュラブル無線信号処理部2201におけるアンテナにて受信され、リコンフィギュラブル無線信号処理部2201は、前記周波数ホッピングのパターンに同期した上で、各ホッピングチャネル毎に所定の無線信号処理を行う。ここで、所定の無線信号処理とは、例えば増幅、フィルタ、周波数変換、GFSK復調やコーデック処理である。この過程で得られた受信信号としてベースバンド帯の直交ベクトル信号2204が通信品質推定部2203へ出力される。前記直交ベクトル信号2204はGFSK変調が施されているので、例えば図24に示すような波形の信号となっている。また、周波数ホッピングで同期しているホッピングチャネルに関する設定情報2205も通信品質推定部2202へ出力される。具体的には、Bluetooth規格において定義されている1チャネル(2402MHz)から79チャネル(2480MHz)に相当する1MHz単位のチャネル番号に相当する情報が出力される。
通信品質推定部2203における受信品質推定部2301では、入力された直交ベクトル信号を用い、受信したスロット毎の受信品質として、例えばCINR値が推定される。CINR値の推定方法としては様々な方法が適用可能であるが、例えば図25に示すような構成によりおおよそのCINR値を算出することも可能である。すなわち、入力された直交ベクトル信号は振幅平均処理部2502において直交ベクトルの振幅の平均化処理が行われ、平均振幅値が振幅分散算出部2501へ供給されるとともに、前記平均振幅値の2乗値が搬送波電力値CとしてCINR算出部2503へ供給される。GFSK変調された信号はほぼ定振幅な特性をもっており、その平均振幅値から搬送波電力に相当する値を算出することが可能である。また、前記平均振幅と各サンプルタイミングにおける直交ベクトルの振幅に差がある場合、この振幅差は受信時に混入した干渉波と雑音による影響の成分に相当するので、この振幅差の分散を算出することにより、等価的に干渉波成分と雑音成分の総和の電力に相当する値を算出することが可能である。なお、厳密には、この差異の中にガウシアンフィルタの影響による振幅変動の成分も若干含まれる場合もあるが、ここでは無視することとするが、必要に応じてこの誤差量を補正するよう処理してもよい。
振幅分散算出部2501は、振幅平均処理部2502から供給される平均振幅値と直交ベクトル信号を用い、直交ベクトルの振幅の分散値を算出し、算出した分散値を干渉および雑音電力(I+N)の値としてCINR算出部2503へ出力する。
CINR算出部2503は、入力される搬送波電力値Cと干渉及雑音電力値(I+N)の比を算出し、これにより得たCINR値を受信品質推定結果として出力する。
以上のような動作により、受信したGFSK信号の直交ベクトル信号の振幅値を用いて受信CINR値に相当する受信品質値を得ることが可能となる。なお、前記方法により算出値に一定の誤差を生じる場合には、補正処理を施してもよいことは言うまでもない。
周波数チャネル別受信品質記憶部2302は、受信品質推定部2301において算出された受信スロット毎のCINR値と、リコンフィギュラブル無線信号処理部2201から供給されるホッピングチャネルに関する設定情報2205とを用いて、前記ホッピング周波数毎に受信品質推定結果であるCINR値を記憶する。ここで、Bluetooth規格では、1秒あたり1600回の頻度で周波数ホッピングによるチャネル変更が行われるため、長い時間区間にわたってホッピングチャネル毎の受信品質推定および記憶を行うことにより、Bluetooth規格においてチャネル配置されている2402MHzから2480MHzまでの間の1MHz間隔での79チャネル分の受信CINR値に関する情報を記憶することができる。
IEEE802.11g通信品質擬似推定部2303は、周波数チャネル別受信品質記憶部2302に記憶されているBluetooth規格における2402MHzから2480MHz間での1MHz単位での受信品質推定結果に関する情報を用いて、同様の無線伝送路環境下において第1の無線通信装置100と第2の無線通信装置101とがその無線通信機能をBluetooth規格に準じたものからIEEE802.11g規格に準じたOFDM方式へ変更し通信した場合の通信品質を擬似的に推定する。ここでは、受信したBluetooth規格に準じた信号のホッピングチャネル毎のCINR推定値が図26に示すような状態であった場合に、IEEE802.11g規格におけるチャネル1(中心周波数2412MHz)に切り換えて通信した場合の通信品質の擬似推定動作を一例として説明する。なお、図26(a)はBluetooth規格の信号のCINR値の例を示したものであり、図26(b)はIEEE802.11gの信号のCINR値の例を示したものである。この場合、周波数チャネル別受信品質記憶部2302において記憶されているホッピングチャネル毎の受信品質推定結果の情報のうち、2404MHzから2420MHzまでのCINR推定値が読み出され用いられることになる。IEEE802.11g規格のOFDM方式により通信が行われる場合には、サブキャリア間隔Δf=312.5kHzで52本のサブキャリアを用いて通信が行われることになり、ここでは各々のサブキャリアにk={-26, -25, …, -2, -1, +1, +2, …, +25, +26}なる番号を付することにする。まずサブキャリア毎に想定されるCINR値が次式に基づいて算出される。
ここで、CINR(k)はIEEE802.11g規格のOFDM方式で伝送すると想定した場合におけるサブキャリア位置kでのCINRの擬似推定値、CINRBT(k)はBluetooth規格での受信結果から得られた受信品質情報に基づくサブキャリア位置kにおけるCINR値の推定値、γPは送信電力補正パラメータ、γB1はフィルタ帯域幅補正項を表しており、各々の詳細について以下で述べる。
CINR
BT(k)は、例えば次式を用いて算出することができる。
ここで、CINR_tbl(f
BT)はBluetooth規格におけるホッピングチャネル周波数f
BTにおけるCINR推定値であり、周波数チャネル別受信品質記憶部2302に記憶されていて読み出される値である。f
BTは例えば次式を用いて換算することができる。
ここで、round{}は、値をMHzの位で四捨五入する処理を表しており、すなわちIEEE802.11g規格におけるOFDM信号のサブキャリア位置kにおける周波数をMHzより下の位を四捨五入することにより、Bluetooth規格におけるホッピング周波数チャネルに当てはめる処理を意味している。ここでは、OFDM信号が中心周波数2412MHzのチャネルを使用する場合を想定しているので、f
sc(k)は次式により表すことができる。
送信電力補正パラメータγPは、第1の無線通信装置100と第2の無線通信装置101がBluetooth規格に準じた方式に機能を設定して通信する場合とIEEE802.11g規格に準じた方式に機能を設定して通信する場合とで、送信系における送信電力の違いと受信系における増幅利得の違いに基づいて想定される搬送波電力の相違を補正するためのパラメータである。例えば、Bluetooth規格による通信の場合に送信電力が1mW、IEEE802.11g規格による通信の場合に送信電力が100mW、受信系での増幅利得は双方同様であると仮定すると、IEEE802.11gにより通信した方が受信搬送波電力としては100倍が期待できるので、γP=100となる。
フィルタ帯域幅補正項γB1は、第1の無線通信装置100と第2の無線通信装置101がBluetooth規格に準じた方式に機能を設定して通信する場合に、受信系におけるチャネル選択フィルタの通過帯域幅がGFSK変調方式の占有帯域幅よりも広帯域に設定されている場合に、フィルタを通過して混入する雑音および干渉成分の電力がIEEE802.11g規格での受信時に比べて大きくなってしまうのを補正するためのパラメータである。例えば、Bluetooth規格によりGFSKで通信する場合の占有帯域幅が1MHzで、受信系における受信フィルタの通過帯域幅が2MHzである場合には、GFSK変調スペクトラムの2倍の帯域幅の雑音および干渉成分の電力が混入していることになるので、γB1=1/0.5 = 2.0を設定して補正する。
以上により算出された、IEEE802.11g規格におけるOFDM信号のサブキャリア毎のCINR値の擬似推定値CINR(k)に基づき、OFDM信号全体としてのCINR値を次式により算出することができる。
ここで、avg{}
kは全ての要素kにわたる平均化処理を表している。
以上のように、本実施の形態によれば、機能の変更が可能な第1の無線通信装置と第2の無線通信装置の間でBluetooth規格に準じて周波数ホッピング方式により通信を行っている際の受信信号を用い、同様の無線伝送路環境下で無線機能をIEEE802.11g規格に準じたOFDM方式で通信を行った場合に想定される通信品質として、受信CINR値を擬似的に推定することが可能となる。
なお、本実施の形態では、擬似的に推定する通信品質を示すパラメータとしてCINR値を用いた場合を一例として説明したが、必ずしもCINR値に限定されるものではなく、例えば代わりにマルチパス状況を示す指標値や、想定されるビット誤り率を推定する構成および動作としてもよい。
例えば、マルチパス状況を示す指標値を推定する場合には、図27に示すように、IEEE802.11g擬似通信品質推定部2303において、前記で説明したように(13)式から(17)式までの処理によりCINR値を擬似的に算出して出力するとともに(13)式により得られたサブキャリア毎のCINR推定値を別途出力する擬似CINR値算出手段2701を設け、さらに前記サブキャリア毎に推定されたCINR値を用い、OFDM信号を構成しているマルチキャリア内に図26で例示したようなCINR値の落ち込みがあるか否かを検出し、検出された場合にはその落ち込み数のカウント結果をマルチパス状況の指標値として出力するCINR落ち込み数カウント部2702を設けると好適である。ここで、OFDM変調信号の帯域内に複数の電力落ち込みが存在する場合、遅延時間の比較的大きいマルチパス波が存在している場合があり、OFDM方式による伝送に対して大きな品質劣化を及ぼすおそれがある。これに対し、落ち込みの数が少ない場合には、マルチパスが存在しないか、もしくは遅延時間の比較的短いマルチパスが存在している場合で、無線伝送路の品質は比較的良好であると予測できる。さらには、前記のようなCINRの落ち込み数をカウントするのではなく、CINR値のサブキャリア位置に応じた変化量の大小をマルチパス状況の指標として用いるようにしてもよい。この場合、前記変化量が大きい場合の方が無線伝送路におけるマルチパスの影響の度合いが大きいことを示すことになる。
また、例えば図28に示すように、CINR落ち込み数カウント部2702の代わりに、IEEE802.11gにより通信を行った場合におけるCINR値と受信ビット誤り率の関係をあらかじめ取得しておき読み出しテーブルとして記憶しておくCINR対BER変換テーブル2801を設け、(13)式により得られたOFDM信号におけるサブキャリア成分毎のCINR擬似推定値に基づいて、各サブキャリアで想定されるビット誤り率を前記テーブル2801から読み出し、全サブキャリア成分にわたって平均化することによりOFDM信号全体での受信ビット誤り率を擬似的に推定するようにしてもよい。さらには、図29に示すように、前記CINR落ち込み数カウント部2702により推定されたマルチパス状況の指標値に基づき、各々の状況の場合毎に得られるビット誤り率特性を複数通りのテーブルとして記憶しておくマルチパス状況別CINR対BER変換テーブル2901を設け、複数用意されているCINR対BERの特性テーブルのうち、推定されたマルチパス状況に基づいて最適なテーブルを選択しビット誤り率を擬似的に推定する構成としてもよい。
また、本実施の形態では、第1の無線通信装置と第2の無線通信装置との間の通信で用いる無線通信規格として、Bluetooth規格とIEEE802.11g規格を一例として説明したが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。本発明の本質は、機能の切り換えが可能な無線通信装置間において周波数ホッピングによる無線通信方式とOFDMによる無線通信方式とを切り換えながら通信を行う場合に、周波数ホッピングによる無線通信方式により通信している際の受信信号を用いて、OFDM方式に切り換えて通信を行った場合に想定される通信品質を擬似的に推定するものであり、この本質的な部分が共通していれば、他の無線通信規格にも適用可能である。
さらには、OFDM方式の一例としてIEEE802.11g規格を用いた場合の実施の形態について説明したが、必ずしも擬似的に通信品質を推定する対象の無線通信方式はOFDM方式である必要はなく、例えばIEEE802.11b規格に見られるようなDSSS(直接拡散)方式やCCK方式を対象とした場合にも適用可能である。この場合には、本実施の形態において、OFDM信号におけるサブキャリア単位で行っていた通信品質推定を行う必要が無く、ホッピングチャネル毎に推定された受信品質情報を用い、IEEE802.11bで使用される周波数帯域と重複する部分の前記ホッピングチャネル毎の受信品質推定値を平均化もしくは補間処理、もしくはスペクトラム形状に応じて最大値合成することにより、通信品質を擬似的に推定するよう構成してもよい。
また、本発明においては、リコンフィギュラブル無線信号処理部2201がいかなる構成によるかによって限定されるものではなく、リコンフィギュラブル無線信号処理部2201は、その無線信号処理機能がBluetooth規格に準じた機能とIEEE802.11g規格に準じたものとに変更可能であれば、本実施の形態における構成例と異なる構成としてもよいことは言うまでもない。
また、Bluetooth規格では、通信動作モードによっては、79チャネル用意されているホッピングチャネルの全てを使用しない場合があるが、このような状況下では、使用されないホッピングチャネルに相当する周波数帯における通信品質の推定は、使用されている近傍のホッピングチャネルにおける通信品質の推定結果を流用する、もしくは上側と下側の双方の近傍ホッピングチャネルにおける通信品質を平均化処理もしくは補間処理した値を用いるようにしてもよい。
また、周波数チャネル別受信品質記憶部2302において、ホッピングチャネル毎の受信品質推定結果を記憶するにあたり、既に周波数チャネル別受信品質記憶部2302にそのチャネルにおける受信品質情報が記憶されている場合における動作については、システムおよび無線通信装置が実装される環境や仕様形態に応じて適した方法を選べばよい。例えば、周囲環境が刻々と変動することが予想される環境下では、常に最新に得られた情報を記憶するように推定結果を上書きするよう構成してもよい。逆に、周囲環境があまり変動しないことが予想されている場合には、既に記憶されている受信品質推定値と新たに取得された値との間で平均化処理を行うことにより、推定誤差の影響を低減するよう制御してもよい。
また、本発明において擬似的に通信品質を推定する方法は、必ずしも(13)式から(17)式に示された算出処理に限定されるものではなく、それぞれの処理における本来の意図に沿う演算であれば、他の算出処理を用いてもよい。例えば、Bluetooth規格での受信結果から得られた受信品質情報に基づくサブキャリア位置kにおけるCINR値の推定値CINRBT(k)を算出する処理は、必ずしも(14)式と(15)式に基づいた算出処理に限定されるものではなく、IEEE802.11g規格のOFDM信号における各サブキャリアの位置の上側、下側双方に隣接する2つのBluetooth規格のホッピングチャネルにおけるCINR値の記憶値を用い、前記サブキャリアの位置と前記2つのホッピングチャネルの位置との間の距離に応じた補間処理により前記サブキャリア位置におけるCINR値を推定する処理としてもよい。また、通信品質算出の過程で行う補正パラメータγPやγBによる補正の目的は、Bluetooth規格により通信する場合の通信系の仕様とIEEE802.11g規格により通信する場合の通信系の仕様との相違によりあらかじめ通信品質に相違が想定される要因がある場合に、その相違に相当する分を補正するための処理を行うことであり、ここで例示した補正項目の他に補正を要する項目がある場合には、補正パラメータを追加してもよいし、前記補正が精度上無視できる範囲内であれば、補正処理を行わない構成としてもよい。
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1において無線伝送路環境がマルチパス環境であった場合に、第1の無線通信装置100が第1の無線通信方式(この場合IEEE802.11bの規格におけるDSSS方式に準じた無線通信方式)を用いて第2の無線通信装置101から受信した既知信号を基に、同じ無線伝送路環境下において第2の無線通信方式(この場合IEEE802.11gの規格におけるOFDM方式に準じた無線通信方式)を用いて通信した場合の通信品質を擬似的に推定する推定精度を向上するための第1の無線通信装置の動作について説明する。本実施の形態における第1の無線通信装置100および通信品質推定部201の構成は、それぞれ図2および図3と同じであり、実施の形態1と同じ動作については説明を省略し、異なる動作を行う部分について説明する。
マルチパス環境では静的伝搬環境の場合と異なり遅延波の干渉により受信信号に周波数選択性フェージングを生じる。その結果、受信既知信号の位相、振幅が変動する。また、マルチパスによる遅延波から受ける影響の度合いは、そのとき通信に用いている無線通信方式によって異なる。例えば、IEEE802.11gの規格におけるOFDM方式に準じた無線通信方式では遅延波によるシンボル間干渉を回避する目的で送信信号にガードインターバルという冗長信号を挿入している。ガードインターバル信号はIFFT出力信号系列の後端の一定期間をコピーして、IFFT出力信号系列の先端につなぎ合わせて挿入する。このようにするとガードインターバル部分とIFFT出力部分のつなぎ目にかけての信号は連続となる。従って、遅延波の隣接シンボル成分が重ならないガードインターバル以降の信号部分を復調することによって、遅延波によるシンボル間干渉を受けない受信が可能となる。
一方で、IEEE802.11bの規格におけるDSSS方式に準じた無線通信方式では上記のようなガードインターバル信号は存在しない。従って、IEEE802.11gの規格に準じた無線通信方式は、IEEE802.11bの規格に準じた無線通信方式に比べてマルチパスによる遅延波の影響を受けにくい通信方式となっている。
このように無線通信方式自体に遅延波への耐性の違いがあるため、マルチパス環境下において、第1の無線通信装置100が第1の無線通信方式を用いて第2の無線通信装置101から受信した信号を基に、第2の無線通信方式を用いて通信した場合の通信品質を擬似的に推定しようとすると、その推定精度が静的伝搬環境下における推定精度に比べ劣化してしまう。
本実施の形態では、実施の形態1に記載の通信品質推定法においてIEEE802.11gの規格におけるガードインターバルの効果をIEEE802.11bの規格におけるPLCPプリアンブル部において実現することで通信品質の推定精度を向上するための第1の無線通信装置の動作を示す。
通信品質推定部201は、無線部200から出力される第2の無線通信装置101から第1の無線通信方式を用いて受信した受信信号の既知信号部分とリファレンス信号記憶部203から出力されるリファレンス信号とに対して第2の無線通信規格に準じた無線通信方式に特有または類似の変換処理を行なった後、これらを比較することによって、同じ無線伝送路環境下において第2の無線通信方式を用いて通信した場合の通信品質を推定し、この結果を出力するものである。
ここで既知信号部分とは、あらかじめその信号の内容および位置が送信側、受信側ともに分かっている信号部分のことであり、一般に通信パケット内に挿入されているプリアンブル部やパイロット信号部分を適用することが可能である。本実施の形態では、実施の形態1と同様にIEEE802.11bのPPDUフレームフォーマットにおけるPLCPプリアンブル部を用いるが、実施の形態1とはPLCPプリアンブル部の中でも更に通信品質推定に使用する信号系列が限定されている点が異なる。
次に、IEEE802.11gのガードインターバルを考慮したうえでIEEE802.11bのPLCPプリアンブル部から通信品質推定に使用する信号系列を抽出する方法について説明する。本実施の形態では、PLCPプリアンブル部から抽出する信号系列にIEEE802.11gのガードインターバルとしての効果を与えるために、任意の長さの信号系列のうち後端の一定期間の系列と先端の一定期間の系列が一致するような信号系列を抽出する。具体的な抽出例を示す。
IEEE802.11bのPLCPプリアンブル部のDBPSK変調後の時間系列信号(実部)を図30に示す。この信号系列の中から後端の一定期間の信号系列と先端の一定期間の信号系列が一致するような任意の長さの信号系列を抽出する。IEEE802.11gのガードインターバル長は0.8μsecである。一方で、IEEE802.11bのPLCPプリアンブル部のビットレートは1Mbpsであるため、1ビット長は1μsecとなる。これはIEEE802.11gのガードインターバルとほとんど同じ時間長であるため、ここではPLCPプリアンブル部のうち任意の1ビットをガードインターバルとみなすことにする。すなわち図30に示す信号系列から最後の1ビットと先頭の1ビットが一致している信号系列を抽出する。抽出する際の信号系列の長さは特に限定されるものではないが、短すぎるとIEEE802.11bのPLCPプリアンブル部の周波数特性を十分に表現できない可能性がある。上述のことを考慮し本実施の形態では“1,-1, 1, 1, 1, 1, 1”の7ビットの信号系列を抽出することにする。前記7ビットの信号系列は、図31に示すようにPLCPプリアンブル部から3箇所抽出することができる。
リファレンス信号記憶部203は、通信品質の推定に用いる既知信号をリファレンス信号としてあらかじめ保持するものである。本実施の形態ではリファレンス信号として、上述のようにしてPLCPプリアンブル部から抽出した信号系列を時間系列信号で保持する。
既知信号抽出部300は、受信信号から既知信号部分を抽出し、この信号を受信既知信号としてDFT部301に出力する。本実施の形態では受信既知信号として、上述のようにしてPLCPプリアンブル部から抽出した信号系列を時間系列信号で出力する。
DFT部301は、離散フーリエ変換処理を行うことで、既知信号抽出部300から出力される受信既知信号を、時間軸領域から周波数軸領域に変換する。これにより、受信既知信号の周波数特性を求め、雑音電力推定部303にこの周波数特性を出力する。
DFT部302は、DFT部301と同様に離散フーリエ変換処理を行うことで、リファレンス信号記憶部203から出力されるリファレンス信号を、時間領域から周波数領域に変換する。これにより、リファレンス信号の周波数特性を求め、雑音電力推定部303、および搬送波電力推定部304にこの周波数特性を出力する。
本実施の形態の場合、DFT部301、およびDFT部302は抽出した信号系列に対して時間軸領域から周波数軸領域への変換を次のようにして行なう。実際には抽出した信号系列はバーカー符号により11倍に拡散されており、この拡散された状態の信号に対して周波数軸領域への変換を行なうため、信号系列の長さは11の整数倍になる。従って実施の形態1のようにFFT処理を用いることは不可能となる。本実施の形態では抽出した信号系列のうち最初の1ビットはガードインターバルとして扱うので、この1ビットを除く残りの6ビットに対してDFT処理を行なう。ここではDFTのサイズは6×11=66ポイントとなる。このようにして得られたDFT出力を通信品質推定に用いることにより、本来ガードインターバルがないIEEE802.11bの規格においてもガードインターバルと同等の効果を得ることが可能になる。
かくして本実施の形態によれば、第1の無線通信装置100と第2の無線通信装置101の間で、同一周波数帯を使用する複数種の無線通信方式を切り換えながら通信を行う通信環境下において、第1の無線通信装置100が、第1の無線通信方式を用いて第2の無線通信装置101から受信した信号を基に、同じ無線伝送路環境下において第2の無線通信方式を用いて通信した場合の通信品質を擬似的に推定する場合に、第2の無線通信方式がOFDM方式に準じた通信方式でガードインターバルが挿入されている場合でもガードインターバルの効果を考慮した通信品質推定が可能となり、マルチパス環境下における通信品質の推定性能を向上することが可能となる。さらには、この通信品質を基に、無線通信方式を適応的に切り換えることによって、効率的かつ的確に無線通信方式の切り換えを行うことができる。
なお、本実施の形態では“1,-1, 1, 1, 1, 1, 1”の信号系列を抽出することにしたが、他の信号系列を抽出してもよい。例えば“1,-1, 1, 1, 1, 1, 1”以外にも図32に示すように“-1,-1,-1, 1, 1, 1,-1”(一点鎖線枠)や“-1, 1, 1, 1,-1, 1,-1”(点線枠)という系列も併せて抽出してもよし、更に他の信号系列を抽出してもよい。
また、本実施の形態ではDBPSK変調後のプリアンブル信号に対して信号区間を抽出する構成としたが、これに限らずDBPSK変調前のPLCPプリアンブルを用いて抽出する信号区間を判断してもよい。IEEE802.11bの規格におけるDBPSK変調では入力ビットに対して図33に示す対応関係により位相を回転させることで変調処理するため、ビット“1”が偶数個含まれるような信号系列を抽出すればよい。