JP4610819B2 - 内部に荷重支持材を有する壁の耐火構造 - Google Patents

内部に荷重支持材を有する壁の耐火構造 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内部に金属製等の荷重支持材を有する壁の耐火構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
建物などの壁において、その耐火性能は、内装面材や外装面材などの壁の耐火性面材、また、壁内に入れられた不燃性断熱材などによって確保することが行われている。しかしながら、壁の内部に柱などの荷重支持材が備えられている場合は、壁の面材が耐火性能上問題のないものであっても、耐火面材の背面の温度上昇に荷重支持材が耐えられず、その結果、壁の耐火性能を確保できないということが起こりうる。特に、荷重支持材が金属製である場合にはそういうことが起こりやすい。そこで、内部に荷重支持材が備えられている壁では、耐火性能を確保するため、壁の耐火性面材について、その厚さ寸法を大きくするなど仕様をアップすることが行われていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、壁の耐火性面材の仕様をアップすることは、荷重支持材から離れたところの一般部の耐火性面材の仕様もアップすることにつながり、コストアップを招くという問題があった。
【0004】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、耐火性面材の仕様をアップすることなく、コスト的に有利に耐火性能を確保することができる、内部に荷重支持材を有する壁の耐火構造を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、荷重支持材を挟むいずれか一方又は両方に耐火性面材が設置され、この耐火性面材と前記荷重支持材との間に、耐火性面材とは別の耐火層が介設されていることを特徴とする内部に荷重支持材を有する壁の耐火構造によって解決される。
【0006】
この構造では、耐火性面材の背面の温度が上昇しても、内部の荷重支持材は、それらの間に介設されている耐火層により温度の上昇を抑えられ、それによって、壁としての耐火性能が確保される。このように、内部に荷重支持材を有する壁の耐火性能を、耐火性面材と荷重支持材との間に耐火層を介設するだけで確保することができ、耐火性面材の仕様をアップする必要はなく、コスト的な有利性を発揮することができる。
【0007】
前記耐火層は荷重支持材の側に金具で留め付けられて備えられており、
この留め金具は、耐火層の背面側において荷重支持材の側に取り付けられた取付け部と、この取付け部から耐火層に貫通して差し込まれた差込み部とを備え、
この差込み部の差込み方向の中間位置を挟む基端側で耐火層が下方に落ちないように保持されていると共に、
この差込み部の差込み方向の中間位置を挟む先端側が屈曲され、この屈曲部で耐火層が荷重支持材から離れないように保持されているのものよい。
【0008】
この構造では、耐火層は荷重支持材の側に金具で留め付けられているから、荷重支持材の側に耐火層を留め付け、しかる後、耐火性面材を取り付けるという施工を行うことができ、耐火層も耐火性面材もそれぞれ施工容易に取り付けることができる。
【0009】
しかも、荷重支持材の側への耐火層の留め付けは、金具の取付け部を荷重支持材の側に取り付け、耐火層を荷重支持材に沿わせるようにして金具の差込み部を差し込んで貫通させ、差込み部の先端側を屈曲させるだけでよく、耐火層を荷重支持材の側に対し容易にしかもしっかりと留め付けることができる。
【0010】
加えて、金具の取付け部は耐火層の背面側において荷重支持材の側に取り付けられているから、耐火性面材の背面の温度が上昇しても、耐火層によって取付け部の温度上昇は抑えられ、荷重支持材に対する金具の取付け状態を、耐火性面材の背面の温度上昇の有無にかかわらずしっかりと維持することができ、耐火層を適正に機能させることができる。
【0011】
特に、前記留め金具が金属製の板曲げ一体成形品からなり、前記取付け部と、差込み板部とを備え、差込み板部の差込み方向の中間部位置に、先端側から基端側への熱伝導通路面積を小さくした折り曲げ用の強度劣弱部が形成され、前記屈曲部は、差込み板部がこの強度劣弱部で折り曲げられて形成されているとよい。
【0012】
この構造では、耐火性面材の背面の温度が上昇することで金具の屈曲部の温度が上昇しても、この屈曲部の熱は、折り曲げられた強度劣弱部において取付け部の側への熱の伝導を抑えられ、それによって、取付け部の温度上昇を効果的に抑えることができて、荷重支持材の側に対する金具の留付け状態をしっかりと維持することができ、耐火層を適正に機能させることができる。それでいて、板状の取付け部や、板状の差込み部、板状の屈曲部により、安定でしっかりとした留付け状態を実現することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図3に示す実施形態の壁の耐火構造において、1は上枠、2は下枠、3,3は左右の側枠であり、上下の枠1,2には、荷重支持材としての形鋼柱4,4が左右方向に間隔をおいてわたされ、各形鋼柱4の左右両脇には、図1及び図2に示すように、溝形鋼からなる縦枠5,5が形鋼柱4と一体化されて備えられ、左右の側枠3,3及び縦枠5…間には横桟15…が上下方向に間隔をおくようにしてわたされ、これらによって囲まれた内部にロックウールの25kg品などからなる不燃性断熱材6が入れられている。
【0015】
そして、上下の枠1,2には、この不燃性断熱材6を前後両側から挟むように縦向き下地材7…,7…が左右方向に間隔をおいてわたされ、不燃性断熱材6の前後両側に石膏ボードからなる耐火性面材8,8が設置され、これら耐火性面材8,8はタッピンネジなどによって縦向き下地材7…,7…に取り付けられ、形鋼柱4や不燃性断熱材6と、耐火性面材8,8との間に縦向き下地材7…,7…をスペーサーとする空間部9,9が形成されている。
【0016】
上記の耐火性面材8,8はそれぞれ、例えば、12.5mm厚の下張りの通常石膏ボード8aと、同じく12.5mm厚の上張りの強化石膏ボード8bとを重ね合わせたものからなっていて、この耐火性面材8,8のみでは、この面材を通じて内部の形鋼柱4,4に過剰な熱が伝わることがあり、壁としての耐火性能が充分には確保されない。
【0017】
そこで、図1及び図2に示すように、形鋼柱4と耐火性面材8,8との間にはそれぞれ、そこに設けられている空間部9,9を利用して、耐火性面材8とは別に、ロックウールの80kg品などからなる耐火層10,10が、形鋼柱4に沿うように上下方向に延ばされ、かつ、形鋼柱4と左右の縦枠5,5を越えて左右両方に張り出すようにして介設されている。
【0018】
この耐火層10は、留め金具11…で形鋼柱4の側に留め付けられている。この留め金具11は、図4(イ)に示すように、鉄などの金属製の板曲げ一体成形品からなっており、取付け部としての折返し状のクリップ部12と、差込み板部13とを備え、これらが直角にされたL字形のものに形成されている。そして、差込み板部13の差込み方向の中間部位置には強度劣弱部14が形成され、この強度劣弱部14を折り曲げ部として、図4(ロ)に示すように、それより先端側13aを屈曲させることができるようになされている。
【0019】
この強度劣弱部14は、板幅方向の両端に形成された切欠き部14a,14aと、これら切欠き部14a,14a間に間隔的に明けられたミシン目状の孔14b…とで形成され、それにより熱伝導通路面積が小さくされて、この強度劣弱部14を挟む両側間での熱の行き来が抑えられるようになされている。
【0020】
形鋼柱4の側への耐火層10の留付けは、図5(イ)(ロ)に示すように、まず、留め金具11を、差込み板部13を外に向けるようにしてクリップ部12で形鋼柱4脇の溝形縦枠5の外側の側辺を両側からバネ弾性力で挟み込んで留め付ける。
【0021】
しかる後、図5(ロ)(ハ)に示すように、耐火層10を形成する耐火材を形鋼柱4に沿わせるようにして留め金具11の差込み板部13を耐火層10の幅方向中間部位置において差し込み、この耐火層10を貫通させる。なお、耐火層10には予め、留め金具11の差込み板部13を差し込む孔が明けられていてもよい。
【0022】
そして、図5(ハ)に示すように、差込み板部13を強度劣弱部14において折り曲げ、差込み板部13の先端側を屈曲させ、この屈曲部13aを耐火層10の外面側に沿わせるようにする。差込み板部13には強度劣弱部14が備えられているから、この強度劣弱部14によって容易に折り曲げることができる。
【0023】
こうして、耐火層10は、差込み板部13の差込み方向の中間位置を挟む基端側で下方に落ちないように保持されると共に、この差込み板部13の差込み方向の中間位置を挟む先端側の屈曲部13aで形鋼柱4から離れないように保持され、それにより、形鋼柱4の側にしっかりと留め付けられる。この留付け状態において、留め金具11のクリップ部12は耐火層10の背面側に位置することになる。
【0024】
なお、本実施形態では、形鋼柱4の左右両脇に溝形の縦枠5,5が備えられているので、左右の縦枠5,5のそれぞれに留め金具11,11が取り付けられ、耐火層10は、左右方向に間隔をおいた二箇所において、屈曲部13a,13aを互いに反対の方向に向けて留め付けられている。また、上下方向においても必要に応じて間隔をおいた二箇所以上で止め付けるようにしてもよいことはいうまでもない。
【0025】
こうして耐火層10を形鋼柱4の側に留め付けた後、耐火層10の外側から耐火性面材8を縦向き下地材7…に対して取り付ければよい。
【0026】
上記の耐火構造では、耐火性面材8の背面の温度が上昇しても、内部の形鋼柱4と縦枠5,5は、これらと耐火性面材8との間に介設されている耐火層10によって温度の上昇を抑えられ、これにより、内部にこのような形鋼柱4や縦枠5等の荷重支持材が備えられていても、壁としての耐火性能を確保することができる。
【0027】
しかも、内部の形鋼柱4や縦枠5の温度上昇を抑えるために、耐火性面材8と荷重支持材4との間に耐火層10を介設しただけであるから、耐火性面材8の厚さ寸法を大きくするなどの耐火性面材8の仕様アップを行う必要はなく、壁の耐火性能をコスト的に有利に確保することができる。
【0028】
加えて、耐火層10は、耐火性面材8の側にではなく、形鋼柱4の側に留め付けるようにしているから、形鋼柱4の側に耐火層10を留め付け、しかる後、耐火性面材8を取り付けるという施工を行うことができ、耐火層も耐火性面材もそれぞれ施工容易に取り付けていくことができる。
【0029】
しかも、形鋼柱4の側への耐火層10の留付けは、留め金具11を用い、そのクリップ部12を形鋼柱4の側にワンタッチで挟み付け、そして、耐火層10を形鋼柱4に沿わせるようにして留め金具11の差込み板部13を差し込んで貫通させ、差込み板部13の先端側を屈曲させるだけでよく、耐火層10を形鋼柱4の側に容易にしかもしっかりと留め付けることができる。
【0030】
加えて、留め金具11のクリップ部12は耐火層10の背面側に位置しているから、耐火性面材8の背面の温度が上昇しても、耐火層10によってクリップ部12の温度上昇は抑えられ、ワンタッチで留め付けることのできるクリップ式の留め金具11でありながら、形鋼柱4の側に対する留め金具11の留付け状態を、耐火性面材8の背面の温度上昇にもかかわらずしっかりと維持することができ、耐火層10を適正に機能させることができる。
【0031】
特に、耐火性面材8の背面の温度が上昇することで留め金具11の屈曲部13aの温度が上昇しても、この屈曲部13aの熱は、強度劣弱部14においてクリップ部12の側への熱の伝導を抑えられるので、形鋼柱4の側に対する留め金具11の取付け状態をしっかりと維持することができ、耐火層10を適正に機能させることができる。
【0032】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で、各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、耐火性能が壁の両面において求められる場合の構造を示しているが、一方の面にのみ耐火性能が求められる場合には、荷重支持材の温度上昇を抑える耐火層をその一方の側の耐火性面材の側にのみ介設するようにしてもよい。また、本発明の壁は、屋内と屋外を仕切る壁であってもよいし、屋内の室と室とを仕切る壁であってもよいし、その他の壁であってもよいし、特に制限はない。また、上記実施形態では、壁の内部に備えられる荷重支持材が柱である場合を示しているが、荷重を支えるものであればよく、その他の縦材や、また横材、斜め材などであってもよい。また、上記のように、荷重支持材が鋼などの金属からなる場合には耐火面で非常に有効的な構造であるが、荷重支持材は、金属に限らず、木材などの他の材質のものからなっていてもよい。また、耐火層は、荷重支持材を含む広い範囲にわたって入れられていてもよい。また、上記の実施形態では、耐火層10を形成する耐火材としてロックウールを用いた場合を示しているが、その他の耐火材が用いられてもよい。耐火性の面材についても、石膏ボードのほか、窯業系面材など、各種耐火性面材が用いられてよい。また、上記の実施形態で用いられている留め金具11は、クリップ部12と差込み部13とが直角に向けられているが、差込み部に対するクリップ部12の向きは、荷重支持材の側の留付け部分との関係で適当に決められてよい。また、留め金具に備えられる取付け部は、クリップ式のものに限られるものではなく、荷重支持材が木材からなる場合には、ビスや釘などで荷重支持材に取り付けることができるような取付け部であってもよい。更に、留め金具の差込み板部における強度劣弱部の熱伝導通路面積を小さくする手段として、その部分の肉厚を全体として薄したものなどであってもよく、要は、先端側から基端側への熱伝導通路面積が小さくなるように形成されているものであればよい。また、この強度劣弱部は、差込み板部を折り曲げやすくするだけのものであってもよい。
【0033】
【発明の効果】
本発明は、以上のとおりのものであるから、内部に荷重支持材を有する壁の耐火構造において、耐火性面材の仕様をアップすることなく、コスト的に有利に耐火性能を確保することができる等の効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の壁の耐火構造において、荷重支持材である形鋼柱のある部分を示す断面平面図である。
【図2】同切欠き斜視図である。
【図3】図(イ)は同壁の正面図、図(ロ)は同断面平面図である。
【図4】図(イ)は留め金具の斜視図、図(ロ)は差込み板部の先端側を屈曲させた状態の斜視図である。
【図5】図(イ)〜図(ハ)は、耐火層の取付け方法を順次に示す平面図である。
【符号の説明】
4…形鋼柱(荷重支持材)
8…耐火性面材
9…空間部
10…耐火層
11…留め金具
12…クリップ部(取付け部)
13…差込み部
13a…屈曲部
14…強度劣弱部

Claims (4)

  1. 荷重支持材を挟むいずれか一方又は両方に耐火性面材が設置され、この耐火性面材と前記荷重支持材との間に、耐火性面材とは別の耐火層が介設され
    前記耐火層は荷重支持材の側に金具で留め付けられて備えられており、
    この留め金具は、耐火層の背面側において荷重支持材の側に取り付けられた取付け部と、この取付け部から耐火層に貫通して差し込まれた差込み部とを備え、
    この差込み部の差込み方向の中間位置を挟む基端側で耐火層が下方に落ちないように保持されていると共に、
    この差込み部の差込み方向の中間位置を挟む先端側が屈曲され、この屈曲部で耐火層が荷重支持材から離れないように保持されていることを特徴とする内部に荷重支持材を有する壁の耐火構造。
  2. 前記留め金具が金属製の板曲げ一体成形品からなり、前記取付け部と、差込み板部とを備え、
    差込み板部の差込み方向の中間部位置に、先端側から基端側への熱伝導通路面積を小さくした折り曲げ用の強度劣弱部が形成され、前記屈曲部は、差込み板部がこの強度劣弱部で折り曲げられて形成されている請求項に記載の内部に荷重支持材を有する壁の耐火構造。
  3. 金属製の板曲げ一体成形品からなり、取付け板部と、差込み板部とを備え、
    差込み板部の差込み方向の中間部位置に折り曲げ用の強度劣弱部が形成されていることを特徴とする留め金具。
  4. 前記強度劣弱部が、これを挟む先端側から基端側への熱伝導通路面積を小さくするものからなっている請求項に記載の留め金具。
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