JP4609816B2 - 水性一時保護塗料組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、自動車等の外装塗膜等の一時保護を目的とする塗料組成物に関する。さらに詳しくは、例えば0℃以下といったような低温でも被保護面との密着性が高く、かつ剥がしたいときは例えば50℃以上といったような高温でも容易に剥離できるという相反する性能のバランスに優れた可使温度範囲の広い一時保護塗膜を形成する水性一時保護塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車、鉄道車両、航空機、船舶、各種機械部品等の金属製品から、家具等の木工製品、プラスチック製品、ガラス製品等に至るまで、製品が工場から消費者の手に渡るまでの輸送、保管期間の一時保護、たとえば砂、塵、鉄粉、酸性雨、鳥糞、塩類、太陽光等による表面の傷、しみ、変色から表面等を保護することを目的として、あるいは、換気扇等の汚れ防止を目的として、これまでにもいろいろな方法が提案されている。
その一つにまず、ワックス類の脂肪族炭化水素系の有機溶剤分散液を被保護材の表面に塗布する方法が挙げられるが、これは塗膜を剥離除去する際の剥離剤や洗浄後の廃液処理が環境保全の立場から問題となっている。そこで剥離剤等の使用が不要で、かつ連続した皮膜として剥離可能な保護膜が強く求められている。
この剥離性保護膜には、大きく分けて、スプレー、ロール塗装等の塗装により塗膜を形成する水性一時保護塗料、いわゆるストリッパブルペイントと、オレフィン系フィルム等のフィルムに粘着剤を塗布したものが挙げられる。後者は、形状が単純なものにはある程度対応できるが、複雑な形状や定型外のサイズのものに対しては対応が困難である。
このような状況から前者、つまり有機溶剤等を含まず、複雑な形状や定形外のサイズのものにも対応することができる水性一時保護塗料に注目が集まり、種々の方法が提案されているが、いずれも何らかの課題を抱えている。
【0003】
特公昭44−29593では、アクリロニトリルを必須単量体として含むアクリル系単量体を共重合させて得られる共重合体のエマルジョンからなる塗膜強度に優れる水性一時保護塗料が提案されているが、これは剥離後に不要となった塗膜を焼却廃棄する際に、有害なシアンガスを発生するという問題がある。また、特開平9−192593では、ガラス転移温度(以下Tgということがある。)が5〜30℃のアクリルエマルジョンが提案されている。この水性一時保護塗料はアクリロニトリルを含まないので上記のような問題を起こさないが、Tgより高い温度では塗膜強度が脆弱なものとなるため剥離性が悪く、Tgより低い温度では被保護面との密着性が悪くなって、製品が低温下で放置された場合には容易に塗膜が剥離してしまうという欠点がある。このような問題を解決するために、特開平9−286934では、Tg40℃以上のアクリルエマルジョンとTg5〜−20℃のアクリルエマルジョンを併用することにより、密着性、特に低温密着性と剥離性、特に高温剥離性とのバランスを取ることが提案されている。これはそれ以前のものに比べ、密着性と剥離性に関しては、一応実用レベルに達してはいるものの、更なる性能向上が要求されている。すなわち、自動車外板用等、−20〜70℃といった広い温度範囲で使用される用途においては、その温度範囲において安定に密着し、かつ容易に剥離が可能であるという性質が要求されているが、まだ満足しうるレベルには達していない。また、2種類のエマルジョンを混合するという煩雑な工程を必要とする点も改良の余地がある。特開平9−241541においては伸び率が100%以上で、引っ張り強度が100kg/cm2であるゴムまたはその誘導体を含むエマルジョンからなる可剥離性水性被覆組成物が提案されているが、ゴムまたはその誘導体を一旦粉末状にしたものを水に分散したのちアクリルエマルジョンと混合するという煩雑な工程を必要とする点に改良の余地がある。
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は低温での密着性を維持し、広い温度範囲で容易に剥離が可能であり、剥離時に破断しない塗膜強度を有する保護塗膜を形成する水性一時保護塗料組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、全単量体混合物100重量部中、1〜60重量部の共役ジエン系単量体(1)と40〜99重量部の(1)と共重合可能な重合性単量体(2)を含んでなる単量体混合物を反応させて得られる共重合体のエマルジョンを含んでなる水性一時保護塗料組成物が前記課題をすべて解決することを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は
(1)全単量体混合物100重量部中、1〜60重量部の共役ジエン系単量体(1)および40〜99重量部の(1)と共重合可能な重合性単量体(2)を含んでなる単量体混合物を反応させて得られる共重合体エマルジョンを含んでなる水性一時保護塗料組成物、
(2)さらに全単量体混合物100重量部当たり、0.01〜5重量部の耐候安定剤を含んでなる前記(1)記載の水性一時保護塗料組成物、
(3)(1)と共重合可能な重合性単量体(2)が炭素数1〜20のアルキル(メタ)アクリレートまたは芳香族ビニル化合物を含むものである前記(1)記載の水性一時保護塗料組成物、
(4)炭素数1〜20のアルキル(メタ)アクリレートまたは芳香族ビニル化合物を全単量体混合物100重量部中、20〜98.9重量部含むものである前記(3)記載の水性一時保護塗料組成物、
(5)(1)と共重合可能な重合性単量体(2)が1分子中に少なくとも1つのカルボキシル基、ヒドロキシル基またはスルホン酸(塩)基を有する単量体を全単量体混合物100重量部中、0.1〜10重量部含む前記(1)記載の水性一時保護塗料組成物、
(6)耐候安定剤がフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤またはヒンダードアミン系光安定剤である前記(2)記載の水性一時保護塗料組成物、
(7)共役ジエン系単量体(1)が1,3−ブタジエンである前記(1)記載の水性一時保護塗料組成物、
(8)炭素数1〜20のアルキル(メタ)アクリレートがメチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートまたはイソノニルアクリレートであり、芳香族ビニル化合物がスチレンである前記(3)記載の水性一時保護塗料組成物、
(9)自動車の塗装外板または外装部品の一時保護用である前記(1)〜(8)のいずれかに記載の水性一時保護塗料組成物、および
(10)前記(1)〜(8)のいずれかに記載の水性一時保護塗料組成物を被保護材表面に塗布、乾燥することにより得られる一時保護塗膜、
である。
【0006】
【発明実施の形態】
本発明に用いられる共重合体エマルジョンは従来より知られている乳化重合法、すなわち、例えば、水のような水性媒体中に共役ジエン系単量体(1)、(1)と共重合可能な重合性単量体(2)を含んでなる単量体混合物、重合開始剤、界面活性剤、および重合連鎖移動剤等を適宜加えて乳化重合を行うことにより得ることができる。単量体成分の添加方法は特に制限されるものではなく、一括添加法、連続添加法、あるいは多段添加法等の任意の方法が採用される。また、乳化重合法によって得られる粒子の構造は特に制限されるものではなく、単相構造、多相構造等任意の構造により本発明の課題を解決しうるが、多相構造をとる場合にはコア/シェル構造のものが好ましい。
本発明において用いられる共役ジエン系単量体(1)としては、たとえば1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等を挙げることができる。これらの共役ジエン系単量体(1)は単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。本発明においては、特に、1,3−ブタジエンが好ましく用いられる。
【0007】
このような共役ジエン系単量体(1)の使用量は、全単量体混合物100重量部中、1〜60重量部、好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは15〜45重量部の範囲である。これらの使用量が1重量部より少ないと低温での付着力が不足して、風などで容易に塗膜が剥がれたり、十分に付着力が得られるものでも、Tgより低い温度で剥離する場合には、剥離の途中で塗膜が割れてしまうということがあり、一方、高温で剥離する際には塗膜がちぎれてしまうという不具合が起こることがある。(1)の使用量が60重量部を越えると塗膜強度の上昇よりも被保護材との密着性が高くなりすぎた結果剥離できなくなる。
本発明において用いられる(1)と共重合可能な重合性単量体(2)は、ラジカル重合性を有する単量体であればどのようなものでもよいが、たとえば、以下のものを挙げることができる。
(a) アルキル(メタ)アクリレート単量体
このグループに属するものとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート 、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1〜20のアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができるが、好ましいものは炭素数が1〜9のアルキル(メタ)アクリレートであり、さらに好ましいものはメチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレートであり、最も好ましいものはメチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートである。
(b) 芳香族ビニル化合物、芳香族ビニリデン化合物
このグループに属するものとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、 α−メチルスチレン等を挙げることができるが、好ましいものはスチレンである。
(c)カルボキシル基を有する単量体
このグループに属するものとしては、例えば、アクリル酸、 メタクリル酸、 マレイン酸、 イタコン酸、フマル酸等、1分子中に二重結合とカルボキシル基を有する化合物が挙げられるが、好ましいものは炭素数3〜6のモノまたはジカルボン酸であり、最も好ましいものは、アクリル酸およびメタクリル酸である。
【0008】
(d)ヒドロキシル基を有する単量体
このグループに属するものとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、 2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、 2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ラクトン変性ヒドロキシル(メタ)アクリレート等の1分子中に二重結合とヒドロキシル基を有する化合物が挙げられるが、好ましいものはヒドロキシル基を有する炭素数1〜6のアルキル基の(メタ)アクリレートであり、最も好ましいものは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。
(e)スルホン酸(塩)基を有する単量体
このグループに属するものとしては、例えば、スチレンスルホン酸ナトリウム塩、スルホエチルメタクリレートおよびそのナトリウム塩もしくはアンモニウム塩等1分子中にスルホン酸(塩)基と二重結合を有する化合物が挙げられるが、好ましいものはスチレンスルホン酸ナトリウム塩、2−スルホエチルメタクリレートナトリウムである。
【0009】
(f)グリシジル基を有する単量体
このグループに属するものとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(g)その他の(メタ)アクリレート単量体
このグループに属するものとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
(h)ビニルエステル単量体
このグループに属するものとしては、例えば、酢酸ビニルエステル、プロピオン酸ビニルエステル、ミリスチン酸ビニルエステル、オレイン酸ビニルエステル、安息香酸ビニルエステル等を挙げることができる。
【0010】
(i)架橋性単量体
本発明において用いられる架橋性単量体とは1分子中に少なくとも2つ同種の重合性基を有するものである。
このグループに属するものとしては、例えば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物、エチレングリコールジアクリレート、 エチレングリコールジメタクリレート、 ブチレングリコールジアクリレート、 ブチレングリコールジメタクリレート、 ヘキサンジオールジアクリレート、 ヘキサンジオールジメタクリレート、 オリゴエチレングリコールジアクリレート、 オリゴエチレンジメタクリレート、 トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、 トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアルカンポリオールポリアクリレートまたはアルカンポリオールポリメタクリレート等を挙げることができる。
(j)グラフト性単量体
本発明において用いられるグラフト性単量体とは1分子中に少なくとも2つ反応性の異なる重合性基を有するものである。
このグループに属するものとしては、例えば、アリルアクリレート、 アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、 ジアリルフマレート、 ジアリルイタコネート等の不飽和カルボン酸アリルエステル等を挙げることができる。
【0011】
(1)と共重合可能な重合性単量体(2)の使用量は、全単量体混合物100重量部中、40〜99重量部、好ましくは50〜95重量部、さらに好ましくは55〜85重量部である。これら(2)の中で上記(a)または(b)は、全単量体混合物中、20〜98.9重量部、好ましくは30〜94.9重量部用いられる。
上記(c)、(d)または(e)は全単量体混合物100重量部中、0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部含ませることが望ましい。これらの単量体が0.1重量部より少ないと共重合物のエマルジョンの安定性が低下することがあり、また、添加剤等を配合する際に凝集してしまうことがある。また、スプレー塗装の際に凝集物が発生し、ノズルが詰まる等の不具合が生じることもある。一方10重量部より多いと基材との密着性が高くなりすぎて剥離できなくなることがある。
上記(f)〜(j)は、それぞれ全単量体混合物100重量部中、0〜5重量部、好ましくは0〜3重量部の範囲で用いることができる。
【0012】
乳化重合の際用いられる重合開始剤としては過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩系重合開始剤、アゾビスイソブチロニトリル、 2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、 2,2′−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、 メチルプロパンイソ酪酸ジメチル等のアゾ系開始剤、クメンハイドロパーオキサイド、 ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系開始剤、過酸化水素、ターシャルブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物とアスコルビン酸、ナトリウム・ホルムアルデヒド・スルホキシレート等の還元剤からなるレドックス系開始剤を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
重合開始剤の使用量は全単量体成分100重量部当たり0.05〜3重量部である。
界面活性剤としてはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸エステルナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、(ジ)ステアリルベンジルジメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、 ポリオキシエチレンモノステアレート等のノニオン性界面活性剤、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム、(メタ)アクリロイルポリオキシアルキレン硫酸エステルナトリウム等の反応性界面活性剤を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
界面活性剤の使用量は全単量体成分100重量部あたり0.05〜3重量部である。
【0013】
重合連鎖移動剤としては、例えば、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類、例えば、四塩化炭素、四臭化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素、例えば、チオグリコール酸2−エチルヘキシルエステル、メルカプトプロピオン酸トリデシルエステル等のメルカプトカルボン酸アルキルエステル、例えば、メルカプト酢酸メトキシブチルエステル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチルエステル等のメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステル、例えば、オクタン酸2−メルカプトエチルエステル等のカルボン酸メルカプトアルキルエステル及びα−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、アニソール、アリルアルコール等を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
重合連鎖移動剤の使用量は、全単量体成分100重量部当たり0〜5重量部である。
また、本発明の方法においては、必要に応じて、乳化重合をエチレンジアミン四酢酸ナトリウム等のキレート剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の分散剤や重炭酸ナトリウム等の無機塩等の存在下に行っても良い。
【0014】
これらの原料を用いて従来公知の乳化重合法により得られた共重合物の粒子径は50〜700nm、好ましくは50〜200nmである。粒子径がこれよりも小さい場合、実生産上効率が低下し、逆に、これより大きな場合には塗装時の作業性が低下する場合があり、やはり実生産上効率がよくない。本発明に於ける粒子径とは重量平均粒子径を表しており、例えば、動的光散乱測定装置(LPA−3000/LPA−3100、大塚電子(株)製)を用い、動的光散乱法により測定することが出来る。
また、本発明における共重合物のゲル分率は、30〜99%、好ましくは40〜95%である。ゲル分率がこれより小さいと剥離する際塗膜に十分な強度が得られない。なお、ここでいうゲル分率とは、後記測定方法により求められたトルエン不溶解分を意味する。このゲル分率は、連鎖移動剤の種類や量、重合時の重合開始剤の種類や量、重合温度等を選ぶことにより調整することができる。本発明においては共役ジエン系単量体(1)を用いることにより、ゲル分率が高い場合でも柔軟性のある塗膜を得ることができるため、塗膜のTgより低い温度においても割れずに剥離できる塗膜が得られる。これに対し、共役ジエン系化合物を用いない従来のアクリルエマルジョンにおいては、剥離時の十分な塗膜強度を得るために、ゲル分率を高めようとすると前記架橋性単量体や、グラフト性単量体を使用しなければならず、これらの単量体を多く使用すると、成膜性が悪くなり、塗膜の柔軟性も不足するため、剥離する際に塗膜が割れてしまうことがある。また、金属の酸化物や水酸化物によりイオン架橋を導入することも可能であるが、この場合には成膜性は得られるものの、塗膜の柔軟性は得られないことがある。
【0015】
本発明における共重合体のTgは−30〜50℃、好ましくは−20〜40℃、最も好ましくは−15〜30℃である。Tgが−30℃より低いと塗膜にベトツキが生じ、好ましくない。一方、Tgが50℃を越えると成膜性が悪くなり、塗膜にワレを生じる。ここでいうTgとは次式より求められる。
1/Tg=Σ(Wn/Tgn)
(Tg:共重合体の絶対温度で表示したTg、
Tgn:各成分の単独重合体の絶対温度で表示したTg値、
Wn:各成分の重量分率)
各成分の単独重合体のTgnは固有のもので、例えば、ブチルアクリレートは233K、メチルメタクリレートは403Kである。
この式を用いて、任意のTgを有する共重合体を調製することが可能であり、その際特に単量体の種類、組成に制限はない。
【0016】
このようにして得られた共重合体エマルジョンは、単量体の一部として共役ジエン系単量体(1)を用いたことにより、従来のアクリル系単量体のみを使用した水性一時保護塗料組成物とは異なり、塗膜のTgより低い温度においても容易に剥離することのない十分な付着力を有する塗膜が得られる。さらに、共役ジエン系単量体(1)を共重合させたことにより、架橋構造が形成されるため、塗膜強度に優れた保護塗膜を得ることができ、その結果、剥離時に塗膜が破断せず、広い温度範囲で容易に塗膜を剥離することが可能となる。また、共役ジエン系単量体(1)を共重合させたことにより、塗膜の耐水性が向上するため、雨や露などにより、塗膜が剥離することもない。従来のアクリル系単量体のみを用いた場合は、塗膜が十分な耐水性を得るために界面活性剤の量や水溶性単量体の使用量を厳密にコントロールしなければならず、その結果、エマルジョンの安定性が低下するという不具合を生じることがあった。また、アクリル系単量体のみを用いた保護塗膜は、それを夏期に屋外へ放置すること、すなわち長時間太陽光線、および高温下にさらすことにより、塗膜の被保護材への付着力が上昇するとともに、塗膜強度が不足しているために剥離の途中で塗膜がちぎれてしまうという不具合な点もあった。しかし、共役ジエン系単量体(1)を共重合させたことにより、架橋構造を形成し、塗膜強度が向上するため、付着力が多少強くなっても剥離する際に塗膜がちぎれるということがない。
【0017】
また、従来のアクリルエマルジョンを含む水性一時保護塗料はTgより高い温度では塗膜強度が脆弱なため剥離性が悪く、かつTgより低い温度ではひび割れるという欠点があるが、本発明における水性一時保護塗料は塗膜強度が優れるので、Tgより高い温度でも十分な剥離性が得られ、かつTgより低い温度で剥離する際も十分な塗膜強度を有し、剥離の途中で割れない柔軟性のある塗膜が得られる。
本発明に使用される耐候安定剤としては、たとえばペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等のフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のホスファイト系酸化防止剤、ジラウリル−3,3´−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3´−チオジプロピオネート、ジトリデシル−3,3´−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、テトラキス〔メチレン−3−(ドデシルチオ)プロピオネート〕メタン等のチオエーテル系酸化防止剤、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート等のヒンダードアミン系光安定剤等を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの耐候安定剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明における水性一時保護塗料においては共役ジエン系化合物の酸化劣化を抑制することが塗膜の耐候安定性に効果的であり、フェノール系酸化防止剤とチオエーテル系酸化防止剤の組み合わせが好ましく用いられる。
【0018】
本発明において、これら耐候安定剤の使用量は、全単量体混合物100重量部当たり0.01〜5重量部であり、好ましくは0.1〜3重量部である。0.01重量部より少ないと、共役ジエン系共重合物の欠点である耐候性を補うことができず、例えば、自動車用途等、屋外放置される場合には、塗膜の表面にヒビやワレが発生し、剥離する際に途中で破断してしまうというような不具合が生じる場合がある。一方、5重量部より多いと原料コストが高くなり、実用上好ましくない。
本発明の水性一時保護塗料は、用途によりさらに、酸化チタン等の顔料、炭酸カルシウム等の充填剤、無機系、有機系等の増粘剤、パラフィンワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックス、シリコーン系化合物、フッ素系化合物等の剥離助剤、エチレングリコールアルキルエーテル、ジエチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテル、ジプロピレングリコールアルキルエーテル等の造膜助剤、低級アルコール等の乾燥助剤、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、レベリング剤、消泡剤、防腐剤、pH調整剤等を添加することができる。
本発明において上記組成物を基材に塗布する方法としては、例えば刷毛塗り、ローラー塗り、スプレー塗りが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
【実施例】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」は断りのない限り重量部を表す。
実施例、比較例中に用いる略語は下記の通りである。
<単量体>
1,3−ブタジエン Bd
n−ブチルアクリレート BA
メチルメタクリレート MMA
エチルアクリレート EA
スチレン St
アクリル酸 AA
メタクリル酸 MAA
スチレンスルホン酸ナトリウム NaSS
2−ヒドロキシルエチルメタクリレート HEMA
1, 4−ブチレングリコールジアクリレート BGA
【0020】
【0021】
また、前記式により共重合体のTgを計算する際、各成分の単独重合体のTgとして、以下の値を用いている。
Bd −80℃
BA −40℃
MMA 130℃
EA −24℃
St 105℃
HEMA 55℃
AA 87℃
MAA 228℃
BGA 100℃
ゲル分率の測定方法:得られた共重合体エマルジョンをガラスモールドに流し、厚さ0.3mmのフィルムを作製する。このフィルムを2〜3mm角に切り、0.4gを精秤する。その試料をサンプル瓶に入れてトルエン100mlに浸漬し、密封した後、30℃の振とう式恒温槽で6時間振とうする。その後、100メッシュ金網で濾過し、濾液の固形分を求め、このゾル固形分よりゲル分率を算出する。
粒子径の測定方法:動的光散乱測定装置(LPA−3000/LPA−3100、大塚電子(株)製 )を用い、動的光散乱法により測定。
【0022】
実施例1 (共重合体エマルジョンAの製造)
2リットル還流冷却器付重合容器内にDIW 1528.2g、F−25 7.2gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら60℃に昇温した。昇温後、MMA36gを添加し、10分間攪拌後、2%KPS水溶液 180gを添加し、シードラテックスを得た。このシードラテックスを窒素置換した5リットルオートクレーブに仕込み、10%SSL水溶液 306g、Bd 630g、MMA 720g、St 396g、AA 18g、t−DMP 1.8gを添加し、攪拌しながら60℃にて15時間反応を行った。得られた反応混合物を30℃まで冷却し、20%AM水溶液を用い、pH8.5に調製した。ついで、反応混合物に水蒸気を吹き込み、未反応単量体を除去し、さらに、エマルジョンの固形分濃度を50%まで濃縮して、共重合体エマルジョンAを得た。
【0023】
実施例2 (共重合体エマルジョンBの製造)
2リットル還流冷却器付重合容器内にDIW 1528.2g、F−25 7.2gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら60℃に昇温した。昇温後、MMA36gを添加し、10分間攪拌後、2%KPS水溶液 180gを添加し、シードラテックスを得た。このシードラテックスを窒素置換した5リットルオートクレーブに仕込み、10%SSL水溶液 306g、Bd 450g、MMA 918g、EA 360g、MAA 36g、t−DMP 1.8gを添加し、攪拌しながら60℃にて15時間反応を行った。得られた反応混合物を30℃まで冷却し、20%AM水溶液を用い、pH8.5に調製した。ついで、反応混合物に水蒸気を吹き込み、未反応単量体を除去し、さらに、エマルジョンの固形分濃度を50%まで濃縮して、共重合体エマルジョンBを得た。
【0024】
実施例3 (共重合体エマルジョンCの製造)
2リットル還流冷却器付重合容器内にDIW 1528.2g、F−25 7.2gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら60℃に昇温した。昇温後、MMA36gを添加し、10分間攪拌後、2%KPS水溶液 180gを添加し、シードラテックスを得た。このシードラテックスを窒素置換した5リットルオートクレーブに仕込み、10%SSL水溶液 306g、Bd 576g、MMA846g、St 180g、EA 144g、NaSS 18g、2EH−TG 9gを添加し、攪拌しながら60℃にて15時間反応を行った。得られた反応混合物を30℃まで冷却し、20%AM水溶液を用い、pH8.5に調製した。ついで、反応混合物に水蒸気を吹き込み、未反応単量体を除去し、さらに、エマルジョンの固形分濃度を50%まで濃縮して、共重合体エマルジョンCを得た。
【0025】
実施例4 (共重合体エマルジョンDの製造)
2リットル還流冷却器付重合容器内にDIW 1528.2g、F−25 7.2gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら60℃に昇温した。昇温後、MMA36gを添加し、10分間攪拌後、2%KPS水溶液 180gを添加し、シードラテックスを得た。このシードラテックスを窒素置換した5リットルオートクレーブに仕込み、10%SSL水溶液 306g、Bd 504g、MMA396g、St 396g、EA 450g、MAA 18g、2EH−TG1.8gを添加し、攪拌しながら60℃にて15時間反応を行った。得られた反応混合物を30℃まで冷却し、20%AM水溶液を用い、pH8.5に調製した。ついで、反応混合物に水蒸気を吹き込み、未反応単量体を除去し、さらに、エマルジョンの固形分濃度を50%まで濃縮して、共重合体エマルジョンDを得た。
【0026】
実施例5 (共重合体エマルジョンEの製造)
2リットル還流冷却器付重合容器内にDIW 1528.2g、F−25 7.2gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら60℃に昇温した。昇温後、MMA36gを添加し、10分間攪拌後、2%KPS水溶液 180gを添加し、シードラテックスを得た。このシードラテックスを窒素置換した5リットルオートクレーブに仕込み、10%SSL水溶液 306g、Bd 774g、MMA990g、MAA 18g、AA 18g、t−DMP 5.4gを添加し、攪拌しながら60℃にて15時間反応を行った。得られた反応混合物を30℃まで冷却し、20%AM水溶液を用い、pH8.5に調製した。ついで、反応混合物に水蒸気を吹き込み、未反応単量体を除去し、さらに、エマルジョンの固形分濃度を50%まで濃縮して、共重合体エマルジョンEを得た。
【0027】
実施例6 (共重合体エマルジョンFの製造)
2リットル還流冷却器付重合容器内にDIW 1528.2g、F−25 7.2gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら60℃に昇温した。昇温後、MMA36gを添加し、10分間攪拌後、2%KPS水溶液 180gを添加し、シードラテックスを得た。このシードラテックスを窒素置換した5リットルオートクレーブに仕込み、10%SSL水溶液 306g、Bd 450g、MMA810g、BA 360g、HEMA 144g、t−DMP 1.8gを添加し、攪拌しながら60℃にて15時間反応を行った。得られた反応混合物を30℃まで冷却し、20%AM水溶液を用い、pH8.5に調製した。ついで、反応混合物に水蒸気を吹き込み、未反応単量体を除去し、さらに、エマルジョンの固形分濃度を50%まで濃縮して、共重合体エマルジョンFを得た。
【0028】
実施例7 (共重合体エマルジョンGの製造)
2リットル還流冷却器付重合容器内にDIW 1528.2g、F−25 7.2gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら60℃に昇温した。昇温後、MMA36gを添加し、10分間攪拌後、2%KPS水溶液 180gを添加し、シードラテックスを得た。このシードラテックスを窒素置換した5リットルオートクレーブに仕込み、10%SSL水溶液 183 .6g、Bd 450g、MMA 495g、EA 90g、AA 9g、t−DMP 1.08gを添加し、攪拌しながら60℃にて10時間反応を行った。一段目の重合添加率が95%以上であることを確認したのち、二段目の仕込みとして10%SSL水溶液 122.4g、Bd 180g、MMA 378g、EA 144g、AA 18g、t−DMP 0.72gを添加し、5分後に2%KPS水溶液 72gを添加し、攪拌しながら60℃にて10時間反応を行った。得られた反応混合物を30℃まで冷却し、20%AM水溶液を用い、pH8.5に調製した。ついで、反応混合物に水蒸気を吹き込み、未反応単量体を除去し、さらに、エマルジョンの固形分濃度を50%まで濃縮して、共重合体エマルジョンGを得た。
【0029】
比較例1 (共重合体エマルジョンHの製造)
5リットル還流冷却器付重合容器内にDIW 1528.2g、F−25 7.2gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら60℃に昇温した。昇温後、MMA36gを添加し、10分間攪拌後、2%KPS水溶液 180gを添加し、シードラテックスを得た。引き続き70℃においてMMA 936g、BA 810g、AA 18g、5%SSL水溶液 612g、1%SBC水溶液 306gからなる単量体乳化液を300分かけて滴下した。滴下後、80℃に昇温し、さらに60分間攪拌を行い、熟成反応を行った。得られた反応混合物を30℃まで冷却し、20%AM水溶液を用い、pH8.5に調製した。ついで、反応混合物に水蒸気を吹き込み、未反応単量体を除去し、さらに、エマルジョンの固形分濃度を50%まで濃縮して、共重合体エマルジョンHを得た。
【0030】
比較例2 (共重合体エマルジョンIの製造)
5リットル還流冷却器付重合容器内にDIW 1528.2g、F−25 7.2gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら60℃に昇温した。昇温後、MMA36gを添加し、10分間攪拌後、2%KPS水溶液 180gを添加し、シードラテックスを得た。引き続き70℃においてMMA 567g、EA 1152g、AA 36g、BGA 9g、5%SSL水溶液 612g、1%SBC水溶液 306gからなる単量体乳化液を300分かけて滴下した。滴下後、80℃に昇温し、さらに60分間攪拌を行い、熟成反応を行った。得られた反応混合物を30℃まで冷却し、20%AM水溶液を用い、pH8.5に調製した。ついで、反応混合物に水蒸気を吹き込み、未反応単量体を除去し、さらに、エマルジョンの固形分濃度を50%まで濃縮して、共重合体エマルジョンIを得た。
【0031】
比較例3 (共重合体エマルジョンJの製造)
5リットル還流冷却器付重合容器内にDIW 1528.2g、F−25 7.2gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら60℃に昇温した。昇温後、MMA36gを添加し、10分間攪拌後、2%KPS水溶液 180gを添加し、シードラテックスを得た。引き続き70℃においてMMA 162g、EA 1566g、MAA 36g、5%SSL水溶液 612g、1%SBC水溶液 306gからなる単量体乳化液を300分かけて滴下した。滴下後、80℃に昇温し、さらに60分間攪拌を行い、熟成反応を行った。得られた反応混合物を30℃まで冷却し、20%AM水溶液を用い、pH8.5に調製した。ついで、反応混合物に水蒸気を吹き込み、未反応単量体を除去し、さらに、エマルジョンの固形分濃度を50%まで濃縮して、共重合体エマルジョンJを得た。
【0032】
比較例4 (共重合体エマルジョンKの製造)
2リットル還流冷却器付重合容器内にDIW 1528.2g、F−25 7.2gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら60℃に昇温した。昇温後、MMA36gを添加し、10分間攪拌後、2%KPS水溶液 180gを添加し、シードラテックスを得た。このシードラテックスを窒素置換した5リットルオートクレーブに仕込み、10%SSL水溶液 306g、Bd 1170g、MMA 576g、MAA 18g、t−DMP 1.8gを添加し、攪拌しながら60℃にて15時間反応を行った。得られた反応混合物を30℃まで冷却し、20%AM水溶液を用い、pH8.5に調製した。ついで、反応混合物に水蒸気を吹き込み、未反応単量体を除去し、さらに、エマルジョンの固形分濃度を50%まで濃縮して、共重合体エマルジョンKを得た。
【0033】
前記実施例1〜7、比較例1〜4で得られた共重合体エマルジョンA〜Kを用い、以下に記述する機械的安定性、剥離性、破断強度、破断伸びに関しての試験を行い、その結果を〔表1〕にまとめた。
〔機械的安定性〕
マロン式測定装置を用いて、JIS K 6387に記載の機械的安定度測定法に準じて測定を行った。すなわち共重合体エマルジョンA〜Kそれぞれ50gを試料とし、荷重10kgで10分間回転した後、80メッシュ金網で濾過し、金網上に残った凝集物の割合を調べて、機械的安定性の評価を行った。
◎ :金網上に何も残らない(0.01%以下)
○ :金網上に極少量の凝集物が残る(1.0%以下)
×:金網上に大量の凝集物が残る(1.0%以上)
【0034】
〔剥離性〕
電着鋼鈑にアクリルメラミン系クリア塗料を塗装し、150℃、30分間焼付けを行い、塗装試験板とした。この塗装試験板にドクターブレードを用い、乾燥塗膜が50μmになるように実施例、および比較例のエマルジョンを塗布し、50℃の送風乾燥機により10分間乾燥を行った。その後、25℃、相対湿度50%の恒温恒湿機で3日間放置した塗膜を剥離性、破断強度、破断伸びの試験に用いた。
上記の塗膜をカッターで25mm幅の切り込みを入れ、−20℃、25℃、70℃それぞれの温度下で、200mm/分の速度で、塗膜を剥離した。評価は、以下のような基準にて行った。
◎:容易に剥離できる
○:少し抵抗感があるが問題なく剥離できる
△:抵抗感があるがなんとか剥離できる
×(*1):塗膜が割れてシート状に剥離できない
×(*2):塗膜が伸びてちぎれてしまい剥離できない
×(*3):付着力が強すぎて剥離できない
上記の塗膜からカッターで25mm幅の試験片を切り出し、オートグラフ((株)島津製作所製)を用いて引っ張り試験を行った。−20℃、25℃、70℃の各温度において、引張速度200mm/分で行い、破断強度と伸びを測定した。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例8〜12および比較例5、6
前記実施例1および4で得られた共重合体エマルジョンAおよびDと、以下に示す顔料の水分散体、増粘剤、消泡剤、および、〔表2〕に示す耐候安定剤を混合攪拌して配合して、それぞれ水性一時保護塗料組成物を調製した。〔表2〕に示した耐候安定剤のうち、直接配合することができないものについては耐候安定剤100部に2部のジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(ネオコールP、第一工業製薬(株)製)とDIWを添加して20%の水分散体として使用した。
【0037】
顔料の水分散体の調製:
酸化チタン白(タイペ−クR−930、石原産業(株)製)180部に分散剤としてオロタン731DP(ローム アンド ハース(株)製)0.9部、DIW 72部にガラスビーズを加え、サンドミル分散機にて60分分散して顔料の水分散体とした。
塗料配合:
共重合体エマルジョン 100部
顔料の水分散体 10部
消泡剤 BYK−022(ビッグケミー(株)製) 1部
増粘剤 ASE−60(日本アクリル化学(株)製) 0.05部
【0038】
〔耐候性〕
得られた水性塗料を前記剥離性試験に用いた塗装試験板にドクターブレードで乾燥塗膜が50μmになるように塗布し、50℃の送風乾燥機にて、10分間乾燥を行った後、25℃、相対湿度50%の恒温恒湿機で3日間放置した。その後サンシャインウェザオメーターで耐候促進試験を行い、400時間照射後の塗膜の外観について目視により評価した。基準は次のとおりである。
○ :変化なし
×:塗膜表面にひび割れが見られる
〔剥離性〕
また、上記の塗膜をカッターで25mm幅の切り込みを入れ、−20℃、25℃、70℃それぞれの温度下で、200mm/分の速度で、塗膜を剥離した。評価は、以下の基準にて行った。
◎:容易に剥離できる
○:少し抵抗感があるが問題なく剥離できる
△:抵抗感があるがなんとか剥離できる
×:剥離できない
【0039】
【表2】
【0040】
【発明の効果】
本発明の水性一時保護塗料組成物は、自動車外装塗料の傷、汚れ、劣化からの保護、ガラス、木工製品の傷、汚れからの保護、あるいは、換気扇等の汚れからの保護等に使用することが可能であり、その塗膜は従来のものに比べ、▲1▼幅広い温度環境で容易に剥離が可能であり、▲2▼低温での密着性を維持し、▲3▼剥離時に破断しない塗膜強度を保持するなどの特長を有している。
Claims (7)
- 全単量体混合物100重量部中、共役ジエン系単量体(1)15〜50重量部および共役ジエン系単量体(1)と共重合可能な重合性単量体(2)50〜85重量部を含んでなる単量体混合物を反応させて得られる共重合体エマルジョンに、全単量体混合物100重量部に対して耐候安定剤を0.01〜5重量部を添加してなる水性一時保護塗料組成物。
- 共役ジエン系単量体(1)と共重合可能な重合性単量体(2)が炭素数1〜20のアルキル(メタ)アクリレートまたは芳香族ビニル化合物を含むものである請求項1記載の水性一時保護塗料組成物。
- 耐候安定剤がフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤またはヒンダードアミン系光安定剤である請求項1記載の水性一時保護塗料組成物。
- 共役ジエン系単量体(1)が1,3−ブタジエンである請求項1記載の水性一時保護塗料組成物。
- 炭素数1〜20のアルキル(メタ)アクリレートがメチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートまたはイソノニルアクリレートであり、芳香族ビニル化合物がスチレンである請求項2記載の水性一時保護塗料組成物。
- 自動車の塗装外板または外装部品の一時保護用である請求項1〜5のいずれかに記載の水性一時保護塗料組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の水性一時保護塗料組成物を被保護材表面に塗布、乾燥することにより得られる一時保護塗膜。
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