JP4609746B2 - インクジェットヘッドの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットヘッドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタにおけるインクジェットヘッドは、シングルノズル構成では、振動子の長手方向の変形(変位)を利用してその変位方向にある振動板を変位させ、この振動板に接する圧力室の内部のインクを加圧することにより、この振動板の反対側に位置するインク吐出口からインク滴を吐出する構成である。多数のインク吐出口を並設するマルチノズルヘッドは、前述したようなシングルノズル構成のユニットを多数集合させた構成である。
【0003】
その製造方法および材料は、様々であるが、近年、ヘッドの小形化,高密度化が進む中で、マイクロマシーニング技術、すなわち、超微細加工技術や超精密接合あるいは超精密接着技術が取入れられる傾向にある。
【0004】
インクジェットヘッドの製造技術において最も留意すべき点は、各ノズルから吐出するインク滴の速度や重量にバラツキが発生せぬように、各ユニットの寸法のバラツキや接着層厚のバラツキを極力抑えることにある。特に、振動子と振動板の接着技術は、接着バラツキとインク滴速度,インク量が強い相関関係にあるため最も重要である。すなわち、接着層厚等のバラツキのために振動板にかかる予圧も各々バラツキを持ち、従って、振動板にかかる応力,たわみ量もバラツクためにヘッドの吐出性能に影響を与えることになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況下において、近年、ヘッドの小型化と高密度化が進み、振動子形状は微細化して接着剤塗布面が小さくなり、振動子の集合体である振動子ユニット中の振動子の本数も増えるために、振動子と振動板を接合する際に、接着層の厚みのバラツキを抑えることが困難となってきている。更に、各振動子の間隔も非常に狭くなっているために、接着作業工程において、接着剤が隣合う振動子と接触または結合して相互に干渉する事態が発生すること、吐出性能に影響を与えることになる。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、接着剤を用いた振動子と振動板との接着を容易、且つ、高精度のものとし、ヘッドのノズル集合密度を高くしても安定でバラツキが少なく信頼性の高い振動子と振動板の接着を実現することができるインクジェットヘッドの製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、積層型圧電素子を加工して得られた短冊状振動子の長手方向の変位を利用して該短冊状振動子の変位方向に位置するインク流路の一部を構成する振動板を変位させて内部のインクをインク滴として吐出させるようにしたインクジェットヘッドの製造方法において、吐出に寄与する前記短冊状振動子を該短冊状振動子以外の部分に該短冊状振動子を位置決めするための少なくとも2個以上のダミー振動子を設けた振動子ユニットとして構成し、接着剤を収容した容器に前記短冊状振動子の先端部を前記容器と接触しないように漬け入れて前記ダミー振動子を前記容器に突き当てることにより前記短冊状振動子の先端を結ぶ線と各短冊状振動子に付着させる接着剤の喫水線を結ぶ線とが平行となるように前記振動子ユニットを位置決めし、前記振動子ユニットを前記容器から引き抜くことにより前記短冊状振動子の先端部に接着剤を付着させ、引き抜いた前記振動子ユニットを前記ダミー振動子を利用して前記振動板上に位置決めすることにより前記短冊状振動子の先端部に付着した接着剤によって該短冊状振動子を前記振動板に接着することを特徴とすることを特徴とする。
【0008】
そして、前記振動子ユニットは、前記ダミー振動子によって前記振動板上に位置決めされたときに、各短冊状振動子の先端と前記振動板の間に均一な厚さの接着剤層を形成することを特徴とする。
【0009】
また、前記接着剤の喫水線が吐出に寄与する前記短冊状振動子の先端の不活性部の範囲内とすることを特徴とする。
【0010】
また、前記接着剤は、前記短冊状振動子に対応した溝を設けたプレートの各溝に均一に溜め、前記短冊状振動子の各先端部を同時に漬け入れて引き抜くことにより接着剤を該短冊状振動子の先端部に均一に付着させることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施の形態を示すインクジェットヘッドの縦断側面図であり、図2は、その縦断正面図である。
【0012】
この実施の形態におけるインクジェットヘッドにおいて、積層型圧電素子である振動子1は、例えば図3に示すように、1/75インチのピッチで短冊状に並べて形成する。この各振動子1は、多数の圧電素子と内部電極を積層した構造であり、電気信号を受けたときにその長手方向に変形(変位)を発生する。各振動子1の先端部には内部電極がなく、振動子1の変位を伝えるだけの不活性部を形成する。振動子1の列の両端には信号を受けても変位しない基準位置を設定するためのダミー振動子9を設け、これらにより振動子ユニット5を構成する。両ダミー振動子9は、接着剤の付着と振動板2との接合深さの位置決めに用いるために、高さは同一で、各振動子1の先端を結ぶ面と平行にする。この実施の形態では、ダミー振動子9の先端位置は、各振動子1の高さ位置に各振動子1の先端と脚部11の間に介在させる接着剤層6の厚さと前記脚部11の高さを加えた位置に一致させている。
【0013】
振動板2は、振動子1の変位を反応よく伝達するために、長方形状の脚部11を備え、また、流路ユニット12と結合して圧力室3の壁面を形成する。
【0014】
流路ユニット12は、圧力室3と同数のインク吐出口4を備える。インク吐出口4のピッチは、振動子1のピッチと一致させ、この吐出口4の反対面に前記振動板2を位置させる。圧力室3は、振動子1と同数だけ設け、ダミー振動子9の部分には設けない。
【0015】
振動子1は、流路ユニット12と接合された振動板2に接着剤で接合する。各接合部位は、振動子1の先端と振動板2の脚部11およびダミー振動子9の先端と振動板2である。
【0016】
図4は、振動子ユニット5と振動板2を接合する接着剤層6の接合状態を示している。接合後の接着剤層6の横方向へのはみ出し量をt、長手方向へのはみ出し量をhとすると、横方向へのはみ出し量をtは、隣合う振動子1の距離Tとすると、接触による相互干渉を避けるために、t<T/2でなければならない。また、長手方向へのはみ出し量hは、振動子1の先端から内部電極までの不活性部分の距離Hとすると、電気信号による振動子1の変位動作への干渉を避けるために、h<Hでなければならない。また、接着剤が固化したあとの接着剤層6の厚さmは、規定値Mより薄くなければならない。規定値Mは、振動子1の先端と脚部11の面粗度よりも大きくなければならず、しかも、大きすぎると吐出に悪影響を及ぼすので適切な薄さであることが望まれる。
【0017】
次に、このような接合を実現するための接着剤塗布方法について説明する。
【0018】
図5は、接着剤を溜める溝を備えたディッピングプレート8の斜視図である。このディツピングプレート8は、各振動子1に対応して、接着剤を溜めた状態で前記各振動子1の先端の不活性部分を一定深さに漬け入れる振動子溝7を振動子ユニット5の各振動子1の配列と同様に並べた状態に備える。各振動子溝7の深さと形状は、接着剤の成分と各振動子1の不活性部分の形状により決まり、必ず、ディッピングプレート8と各振動子1が接触しないように構成する。振動子溝7への振動子1の先端部の挿入深さは、両端のダミー振動子9をそれぞれのダミー振動子溝10に突き当てて位置決めすることにより決めるように構成する。従って、ダミー振動子溝10の深さが各振動子1の先端部に付着する接着剤の付着範囲と量を決定する。この実施の形態においては、図6に示すように、ダミー振動子溝10の深さは、振動子溝7の深さより浅くしている。接着剤をディツピングプレート8から剥れ易くするために、ディツピングプレート8の全体に撥水処理を施す。このようなディッピングプレート8の作成は、ここでは、ワイヤー加工を用いて櫛歯状に加工した板を平らな板で挟むことにより溝を形成するようにして実現している。
【0019】
次に、実際の接着工程について説明する。まず、図7に示すように、エポキシ系接着剤13をディッピングプレート8の各振動子溝7内に均一に溜める。ディッピングプレート8は、水平場所に置いて傾かないように調整する。はみ出た接着剤13は冶具を用いて掃き出し、各振動子溝7内の接着剤13の面が同一平面状になるように調整する。
【0020】
ここで、位置合わせ装置(図示省略)に振動子ユニット5を取り付け、図8に示すように、振動子ユニット5の各振動子1の先端部をディッピングプレート8の振動子溝7に漬け入れるために、ダミー振動子9をダミー振動子溝10の底に突き当たるまで該ダミー振動子溝10に挿入する。これにより、各振動子溝7と各振動子1のクリアランスは、どの振動子1の先端でも同一になり、各振動子1の先端を結ぶ線と接着剤13に漬け入った各振動子1の喫水線を結ぶ線が平行になる。これは、両端の基準位置となるダミー振動子9の先端を結ぶ線と接着剤13に漬け入った各振動子1の喫水線を結ぶ線が平行であることも意味する。この喫水線は、各振動子1の先端部の不活性部の範囲内に位置するようにする。漬け入れている時間は、接着剤13の種類に応じて設定し、常温で硬化する接着剤13の場合には素早く引き抜くようにする。
【0021】
各振動子1を各振動子溝7から引き抜くことにより、各振動子溝7内の接着剤13は、各振動子1の先端部に均一に付着する。このようにして先端部に接着剤13を均一に付着させた各振動子1の先端を、位置合わせ冶具(図示省略)を用いて、図2に示すように、振動板2の各脚部11に近接させて接合する。ここでも、ダミー振動子9の先端を振動板2に突き当てることにより、各振動子1の先端が同一平面で脚部11の先端と均一な厚さの接着剤層6を介在させて対向するように接合することができる。
【0022】
使用する接着剤13は、常温硬化型のエポキシ樹脂を用い、常温で高粘度状態のものを使用する。
【0023】
【発明の効果】
本発明により製造するインクジェットヘッドは、振動板を振動させる振動子ユニットの短冊状振動子と振動板の接合に際し、振動子ユニットに設けたダミー振動子を容器に突き当てて該振動子ユニットを位置決めすることにより短冊状振動子に対応して均一に溜めておいた所定量の接着剤を該短冊状振動子に付着させることができるので、短冊状振動子に付着する接着剤層の厚さのバラツキが減少し、接着剤付着区域も限定された範囲に収まり、しかも、接着剤が付着した前記振動子ユニットを前記ダミー振動子を利用して前記振動板上に位置決めすることにより前記短冊状振動子の先端部に付着した接着剤によって該短冊状振動子を前記振動板に正確に接着することができ、従って、信頼性のある均一な接合が可能となる。
【0024】
また、接着剤を溜めた振動子溝への短冊状振動子の挿入深さや振動板への接合時の接合深さも基準位置を設定するダミー振動子を使用した位置合わせによって行うようにしているために、位置合わせ作業が簡単となり、生産性が向上する。
【0025】
そして、短冊状振動子はプレート等の固定された物に接触しないために、短冊状振動子自体を傷付けることがなくなり、短冊状振動子の破損による吐出不良も低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示すインクジェットヘッドの縦断側面図である。
【図2】図1に示したインクジェットヘッドの縦断正面図である。
【図3】図1に示したインクジェットヘッドにおける振動子ユニットの斜視図である。
【図4】図1に示したインクジェットヘッドにおける振動子ユニットと振動板の接合状態を示す縦断正面図である。
【図5】本発明の製造方法で用いるディッピングプレートの斜視図である。
【図6】図5に示したディッピングプレートの縦断正面図である。
【図7】図5に示したディッピングプレートに接着剤を溜めた状態を示す斜視図である。
【図8】図7に示したディッピングプレートに振動子ユニットを漬け入れた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…振動子、2…振動板、3…圧力室、4…インク吐出口、5…振動子ユニット、6…接着層、7…振動子溝、8…ディッピングプレート、9…ダミー振動子、10…ダミー振動子溝、11…脚部、12…流路ユニット、13…接着剤。

Claims (4)

  1. 積層型圧電素子を加工して得られた短冊状振動子の長手方向の変位を利用して該短冊状振動子の変位方向に位置するインク流路の一部を構成する振動板を変位させて内部のインクをインク滴として吐出させるようにしたインクジェットヘッドの製造方法において、
    吐出に寄与する前記短冊状振動子を該短冊状振動子以外の部分に該短冊状振動子を位置決めするための少なくとも2個以上のダミー振動子を設けた振動子ユニットとして構成し、接着剤を収容した容器に前記短冊状振動子の先端部を前記容器と接触しないように漬け入れて前記ダミー振動子を前記容器に突き当てることにより前記短冊状振動子の先端を結ぶ線と各短冊状振動子に付着させる接着剤の喫水線を結ぶ線とが平行となるように前記振動子ユニットを位置決めし、前記振動子ユニットを前記容器から引き抜くことにより前記短冊状振動子の先端部に接着剤を付着させ、引き抜いた前記振動子ユニットを前記ダミー振動子を利用して前記振動板上に位置決めすることにより前記短冊状振動子の先端部に付着した接着剤によって該短冊状振動子を前記振動板に接着することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
  2. 請求項1において、前記振動子ユニットは、前記ダミー振動子によって前記振動板上に位置決めされたときに、各短冊状振動子の先端と前記振動板の間に均一な厚さの接着剤層を形成することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
  3. 請求項1において、前記接着剤の喫水線が吐出に寄与する前記短冊状振動子の先端の不活性部の範囲内とすることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
  4. 請求項1〜3の1項において、前記接着剤は、前記短冊状振動子に対応した溝を設けたプレートの各溝に均一に溜め、前記短冊状振動子の各先端部を同時に漬け入れて引き抜くことにより接着剤を該短冊状振動子の先端部に均一に付着させることを特徴としたインクジェットヘッドの製造方法。
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