JP4609745B2 - Frpの真空成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、FRPの真空成形方法に関し、とくに、片面型の表面側をバギング、シールしてFRPを真空成形する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、片面型のキャビティ内に少なくとも強化繊維基材を配置し、型の表面側にバッグ材を配置してキャビティ内をバギング、シールし、キャビティ内を減圧するとともにキャビティ内に樹脂を注入するようにした、いわゆるFRPの真空成形方法が知られている。この方法においてバッグ材としては、たとえば1枚のフイルムやゴム材からなるシート材が用いられ、キャビティ内をシールするために、バッグ材の周縁部と型面との間に、たとえば粘着性を有するゴム製シール材が介装される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが上記のような従来のFRPの真空成形方法には、以下のような問題が残されている。
まず、上記のような真空成形の利点の一つは、キャビティ内の減圧によってシート材からなるバッグ材が自然に内部充填基材の表面の形状に沿い、その状態で樹脂を注入できるので、成形物の表面形状を容易に所望の形状に成形できることにある。しかし、樹脂は大気圧や低圧で注入されるが、その樹脂注入による加圧力によって、キャビティ内に注入された樹脂が該樹脂の有する静圧力によって強化繊維基材とともに膨れ気味になり、それをバッグ材による加圧力と該樹脂の静圧力との圧力差が小さくなり、該加圧力で外側から樹脂注入前の圧力で完全に押さえることは難しい。そのため、成形物における強化繊維の体積含有率をあるレベル以上に上げることが難しいという問題がある。強化繊維の体積含有率が低いと、その分FRPとしての機械的な物性が低くなる。
【0004】
また、キャビティ内の減圧状態(つまり、真空吸引状態)が良好な程、注入樹脂を迅速かつ均一に強化繊維基材に含浸させることが可能になるが、そのためには、バッグ材がその周縁部で確実にシールされている必要がある。シールが不完全であると、キャビティ内へのエア洩れ等が生じ、成形品にボイド等が発生する原因となる。また、所定の減圧度に到達するための時間が長くなり、成形サイクルが長くなって、結果的に成形のコストアップを招く。従来の成形方法におけるシール部には、前述の如く単に粘着性を有するゴム製シール材が配置されているだけであり、バッグ材との密着不足によるシール不良が生じるおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、とくに、バッグ材によるキャビティ内のシール性能を向上し、それによって成形されるFRPの品質の向上(ボイドの発生の抑制等)をはかるとともに、成形サイクルの時間を短縮して成形コストの低減をはかることができるFRPの真空成形方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係るFRPの真空成形方法は、型のキャビティ内に少なくとも強化繊維基材を配置し、型の表面側にバッグ材を配置してキャビティ内をバギング、シールし、キャビティ内を減圧するとともにキャビティ内に樹脂を注入するFRPの真空成形方法において、前記バギングとして、バッグ材の周縁部と型との間にシール材を二重に配置し、両シール材間も減圧することを特徴とする方法からなる。
【0010】
シール材としては、弾力性を有するシール材、たとえばOリングを用いることが好ましい。また、バッグ材としては、たとえば伸縮自在のゴムシートや、剛体からなるプレート状のバッグ材でその周縁部、つまりシール材への当接部位が弾力性を有するもの(たとえば、少なくとも周縁部がゴム製シートで形成されたもの)等を用いることができる。
【0011】
型のキャビティ内には、少なくとも強化繊維基材が配置されるが、それとともにコア材を配置する場合、本発明に係る方法の適用による効果が大きい。すなわち、コア材の存在によって、成形すべきFRPの基本形状が定められるので、コア材上に配置された強化繊維基材、およびそれを覆うバッグ材を、容易に所定の形状に沿わせることができる。
【0013】
上記のような本発明に係るFRPの真空成形方法においては、バッグ材の周縁部を二重に配置したシール材でシールし、両シール材間を減圧することにより、この部分でバッグ材の周縁部が吸引されて両シール材に良好に密着する。とくに内側のシール材にあっては、両シール材間の減圧吸引力と、キャビティ内を減圧することによる吸引力との両方が作用することになるので、内側のシール材とバッグ材とはとくに強力に密着し、いわゆるセルフシールが極めて良好に行われることになる。その結果、バッグ材の周縁部におけるシール性能が大幅に向上され、外部からのエア洩れ等による成形FRPのボイド発生等の問題が解消され、FRPの品質が向上されるとともに、キャビティ内を所定の減圧度にするための時間が短縮され、FRPの成形サイクルが短縮される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の参考形態に係るFRPの真空成形方法の実施の様子を示している。図1において、片面型1のキャビティ2内には、発泡材等の軽量材からなり、所定形状に形成されたコア材3と、コア材3の外表面上に配置された強化繊維基材4とが収容される。この型1の表面側に、2枚の可撓性シート材からなるバッグ材5a、5bが設けられ、キャビティ2内が二重にバギングされる。バッグ材5a、5bは、その周縁部がそれぞれ独立に、シール材6a、6bによって型1の表面との間がシールされている。
【0015】
上記参考形態では、両バッグ材5a、5b間にスペーサ7が介在されている。スペーサ7としては、両バッグ材5a、5b間を所定の間隔に保つことができる、多孔質状のシート材やネット材、あるいは粉体や粒体を使用することができる。両バッグ材5a、5b間は、吸引口8を介してのエア吸引により、減圧できるようになっている。
【0016】
型1のキャビティ2内は、コア材3と強化繊維基材4を配置し、上記の二重バギングを行った後、吸引口9を介してのエア吸引により、所定の減圧度(真空度)まで減圧される。この減圧と実質的に同時に、あるいは減圧後に、樹脂槽10に貯留されている樹脂11が、注入口12を介してキャビティ2内に注入される。この注入は、基本的には、樹脂槽10の貯留樹脂面に加わる大気圧と、減圧されたキャビティ2内の圧力との差によって樹脂11が自然にキャビティ2内に流入することを利用すればよいが、必要に応じて若干の樹脂注入圧を加えてもよい。
【0017】
上記のようなFRPの真空成形方法における作用を、図2を参照しながら説明する。図2は、図1に示したようなFRPの真空成形方法における、樹脂注入による成形時のバギング、シール状態を原理的に示したものである。2枚のバッグ材5a、5b間は、エア吸引によりたとえばVa’の減圧度に減圧され、型1のキャビティ2内も、エア吸引によりたとえばVaの減圧度に減圧される。Va’とVaは、同じ値でも異なる値であってもよい。両減圧により、強化繊維基材にスペーサ7が介在されたバッグ材5a、5bは、両バッグ材5a、5b間を所定の間隔に保たれながら、キャビティ2内の充填物の表面形状に沿うように、本実施態様では外側の強化繊維基材4の表面形状に沿うように、キャビティ2側に向かって変形される。
【0018】
この状態にて、樹脂11がキャビティ2内に注入されるが、この注入に伴い、キャビティ2内に流入してきた樹脂11により、キャビティ2内に樹脂圧が加わる。この樹脂圧により、キャビティ2内の充填物、とくに強化繊維基材4が外側に膨らもうとする。しかし、上記二重バギングのバッグ材5a、5bは、両者間がシール材6a、6bでシールされて所望の減圧度に保たれているので、あたかも一枚の剛体板の如くに挙動し、外部側から加わる大気圧とキャビティ2内の減圧圧力との差圧により、キャビティ2内方向に向けて十分に高い加圧力を及ぼす。この加圧力は、両バッグ材5a、5bが、キャビティ2内充填物の表面形状に沿った状態にて発揮されることになる。したがって、キャビティ2内への樹脂注入に伴いキャビティ2内側から外側に向けて膨張圧が加わりそれによって強化繊維基材4が外側に膨らもうとする際、その樹脂および強化繊維基材部分は、所定形状に保持されたバッグ材5a、5bによって、十分に高い外部側からの加圧力をもって押さえ込まれる。その結果、成形されるFRPの繊維体積含有率が大幅に増大されることになり、FRPの物性が向上される。
【0019】
図3は、本発明の一実施態様に係るFRPの真空成形方法の実施の様子を示している。図3において、型21のキャビティ22内には、コア材23と強化繊維基材24が配置され、それらが、型21の表面側に配置されたバッグ材25によってバギング、シールされる。キャビティ22内から吸引口26を介してエア吸引され、キャビティ22内が所定の圧力まで減圧され、その状態で前述の参考形態同様、樹脂が注入される。
【0020】
型21の表面側で、バッグ材25の周縁部に対向する部位には、環状に延びるシール材用の溝27a、27bが内側、外側の二重に設けられており、各溝27a、27bには、それぞれシール材28a、28bが装着されている。シール材28a、28bは、たとえば弾力性を有するOリングからなり、各溝27a、27bより、たとえば2〜4mm程度突出させた状態で装着されている。
【0021】
両シール材28a、28b間からは、型21に設けた吸引口29を介してエア吸引され、両シール材28a、28b間が減圧されてバッグ材25の周縁部が両シール材28a、28bに強力に密着される。また、キャビティ22内の減圧によっても、バッグ材25の周縁部がとくに内側のシール材28bに密着される。すなわち、エア吸引力によって各シール材28a、28bがセルフシールされる。両シール材28a、28b間の減圧度Va”とキャビティ22間の減圧度Vaは、同じ値でも異なる値であってもよい。
【0022】
本実施態様では、バッグ材25は、その中央部が弾力性の高い伸縮可能な、たとえばゴム製バッグ材からなり、その周縁部は、同じ材質でありながら比較的弾力性の低い肉厚部に形成されている。
【0023】
このような本実施態様に係るFRPの真空成形方法においては、両シール材28a、28bによって二重シールされるとともに、両シール材28a、28b間が減圧されて両シール材28a、28bが良好にセルフシールされるので、バッグ材25の周縁部は、キャビティ22内を、従来のシール方法に比べはるかに高いシール力をもって確実にシールできるようになる。その結果、外部からキャビティ22内へのエア洩れ等が確実に回避され、成形されるFRPのボイド発生等の問題が解消され、FRPの品質、物性が向上される。また、シール性能向上の結果、キャビティ22内を所定の減圧度にするための時間が短縮されるので、FR製品を連続的に生産していく際の成形サイクルが大幅に短縮されることになる。
【0024】
バッグ材の形態としては、図3に示したものに限られず、たとえば図4に変形例を示すように、バッグ材31の中央部を所定形状を有する剛体板32で構成し、周縁部を、弾力性を有するシート材33、たとえばゴム製シートで構成することもできる。このように構成すれば、弾力性を有するシート材33が、シール材28a、28b間の減圧により、より良好にシール材28a、28bに密着することができる。とくに内側のシール材28bに対しては、シール材28a、28b間の減圧とキャビティ22内の減圧の両方を介してより良好にセルフシールでき、バッグ材31の周縁部が確実にシールされる。その結果、成形されるFRPの品質、物性が向上され、成形サイクルが短縮される。
【0025】
なお、本発明に係る方法において適用される強化繊維基材は特に限定されず、あらゆる種類の強化繊維が使用でき、その形態も、織物、一方向引き揃え繊維、マット等あらゆる形態を採用でき、積層構成についても何ら限定されない。また、コア材を設けず、強化繊維基材のみをキャビティ内に配置する場合にも本発明を適用できる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るFRPの真空成形方法によれば、バッグ材の周縁部を二重シールして両シール材間を減圧することにより、キャビティ内に対するシール性能を大幅に向上でき、外部からのエア洩れ等を確実に防止して、成形されるFRPの品質、物性を向上することができるとともに、キャビティ内を所定の減圧度にするための時間を短縮して成形サイクルを短縮し、成形コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の参考形態に係るFRPの真空成形方法を実施するための装置の概略構成図である。
【図2】 図1の装置による真空成形方法の樹脂注入時の作用を説明するための概略構成図である。
【図3】 本発明の一実施態様に係るFRPの真空成形方法を実施するための装置の部分概略構成図である。
【図4】 図3の変形例に係る装置の部分概略構成図である。
【符号の説明】
1、21 型
2、22 キャビティ
3、23 コア材
4、24 強化繊維基材
5a、5b、25、31 バッグ材
6a、6b、28a、28b シール材
7 スペーサ
8、9、26、29 吸引口
10 樹脂槽
11 樹脂
27a、27b シール材用の溝
32 剛体板
33 弾力性を有するシート材
Claims (4)
- 型のキャビティ内に少なくとも強化繊維基材を配置し、型の表面側にバッグ材を配置してキャビティ内をバギング、シールし、キャビティ内を減圧するとともにキャビティ内に樹脂を注入するFRPの真空成形方法において、前記バギングとして、バッグ材の周縁部と型との間にシール材を二重に配置し、両シール材間も減圧することを特徴とする、FRPの真空成形方法。
- 弾力性を有するシール材を用いる、請求項1のFRPの真空成形方法。
- 少なくともシール材への当接部位が弾力性を有するバッグ材を用いる、請求項1または2のFRPの真空成形方法。
- キャビティ内に強化繊維基材とともにコア材を配置する、請求項1〜3のいずれかに記載のFRPの真空成形方法。
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