ここで、ロータリ式流体機械の効率向上策としては、回転軸(c)を細径化するという方策がある。つまり、回転軸(c)を細径化すると、回転軸(c)と軸受の摺動抵抗などの機械的なロスを削減することができ、それによってロータリ式流体機械の効率を高めることが可能となる。
ところが、回転軸(c)を細径化すると、回転軸(c)の剛性が低下する。一方、ロータリ式流体機械の運転中には、流体室(g)内の流体圧等によって回転軸(c)に荷重が作用し、回転軸(c)が弾性変形する。このため、回転軸(c)を細径化すると、運転中における回転軸(c)の変形量が増大し、回転軸(c)と軸受面(f)とが直接に接触してしまうおそれがある(図26参照)。そして、回転軸(c)と軸受面(f)とが直接に接触すると、回転軸(c)や軸受メタル(e)の“焼け”や“焼き付き”を招き、ロータリ式流体機械の信頼性が低下するという問題があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、効率を向上させるために回転軸を細径化した場合であっても高い信頼性を確保できるロータリ式流体機械を提供することにある。
請求項1の発明は、シリンダ(31)と、主軸部(21,22)と該主軸部(21,22)に対して偏心した偏心部(23)とを有する回転軸(20)と、上記主軸部(21,22)を支持するための滑り軸受を構成して上記シリンダ(31)に隣接する軸受部材(50,70)と、上記偏心部(23)に係合すると共に上記シリンダ(31)内に配置されて流体室(40)を形成するピストン(33)と、上記流体室(40)を高圧側と低圧側に仕切るためのブレード(34)とを備えるロータリ式流体機械を対象としている。そして、上記軸受部材(50,70)は、内周面が軸受面(90)になる軸受メタル(60,80)を備え、上記軸受メタル(60,80)の外周面に接する上記軸受部材(50,70)の保持面(53,73)には、該保持面(53,73)の周方向へ延びる溝状の凹溝部(91)が上記シリンダ(31)寄りの位置に形成されており、上記軸受部材(50,70)の保持面(53,73)は、上記凹溝部(91)に対して上記シリンダ(31)の反対側に位置する部分と、上記凹溝部(91)に対して上記シリンダ(31)側に位置する部分の両方が上記軸受メタル(60,80)の外周面に接しているものである。
請求項2の発明は、請求項1に記載のロータリ式流体機械において、凹溝部(91)は、軸受部材(50,70)の保持面(53,73)の全周に亘って形成されるものである。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のロータリ式流体機械において、軸受メタル(60,80)には、主軸部(21,22)からの荷重を受ける支持部分(63,83)と、該支持部分(63,83)のシリンダ(31)側の末端に連続して形成されて上記主軸部(21,22)からの荷重を受けない非支持部分(64,84)とが設けられる一方、凹溝部(91)は、その一部が上記軸受メタル(60,80)の非支持部分(64,84)とオーバーラップする位置に形成されるものである。
請求項4の発明は、請求項1又は2に記載のロータリ式流体機械において、軸受メタル(60,80)には、内周面が軸受面(90)になる本体部分(61,81)と、該本体部分(61,81)のシリンダ(31)側の末端に連続して形成されて上記本体部分(61,81)よりも内径の大きい末端部分(62,82)とが設けられる一方、凹溝部(91)は、その一部が上記軸受メタル(60,80)の末端部分(62,82)とオーバーラップする位置に形成されるものである。
請求項5の発明は、請求項1又は2に記載のロータリ式流体機械において、主軸部(21,22)における偏心部(23)側の端部には、軸受部材(50,70)により構成された滑り軸受へ潤滑油を供給するための給油溝(24,25)が形成される一方、凹溝部(91)は、その一部が上記主軸部(21,22)の給油溝(24,25)とオーバーラップする位置に形成されるものである。
−作用−
請求項1の発明では、シリンダ(31)内にピストン(33)を配置することで流体室(40)が形成される。ピストン(33)は、回転軸(20)の偏心部(23)と係合し、シリンダ(31)内を移動する。流体室(40)は、ブレード(34)によって高圧側と低圧側に仕切られている。シリンダ(31)内でピストン(33)が移動すると、流体室(40)における高圧側の容積と低圧側の容積が変化する。軸受部材(50,70)は滑り軸受を構成し、この滑り軸受が回転軸(20)の主軸部(21,22)を回転自在に支持する。
また、請求項1の発明では、軸受部材(50,70)に軸受メタル(60,80)が設けられる。軸受メタル(60,80)は、その内周面が軸受面(90)となって主軸部(21,22)の外周面と向き合い、その外周面が軸受部材(50,70)の保持面(53,73)に接している。上記軸受部材(50,70)の保持面(53,73)には、凹溝部(91)が形成されている。
この発明において、軸受メタル(60,80)のうち凹溝部(91)に隣接する部分は、その外周面が軸受部材(50,70)と接触しない状態になっており、外周面が軸受部材(50,70)に接する部分に比べて剛性の低い低剛性部分(96)となっている。そして、ロータリ式流体機械(10)の運転中に回転軸(20)の主軸部(21,22)が弾性変形すると、主軸部(21,22)からの荷重を受けて軸受メタル(60,80)の低剛性部分(96)が弾性変形し、変形した主軸部(21,22)の外周面に沿うように軸受面(90)が変形する。
請求項2の発明では、軸受部材(50,70)における保持面(53,73)の全周に亘って凹溝部(91)が形成される。つまり、軸受部材(50,70)に形成された凹溝部(91)は、リング状の溝となっている。
請求項3の発明では、軸受メタル(60,80)に支持部分(63,83)と非支持部分(64,84)とが形成される。主軸部(21,22)からの荷重は、軸受メタル(60,80)の支持部分(63,83)には作用するが、軸受メタル(60,80)の非支持部分(64,84)には作用しない。
この発明の軸受部材(50,70)において、凹溝部(91)は、その一部が軸受メタル(60,80)の非支持部分(64,84)とオーバーラップする位置に形成される。このため、軸受メタル(60,80)では、支持部分(63,83)の外周面の一部と非支持部分(64,84)の外周面の一部とが軸受部材(50,70)と接触しない状態になっている。そして、軸受メタル(60,80)では、支持部分(63,83)と非支持部分(64,84)の両方に跨る部位が低剛性部分(96)となる。
請求項4の発明では、軸受メタル(60,80)に本体部分(61,81)と末端部分(62,82)とが形成される。軸受メタル(60,80)の本体部分(61,81)は、その内周面が軸受面(90)となっており、主軸部(21,22)からの荷重を受ける。軸受メタル(60,80)の末端部分(62,82)は、本体部分(61,81)よりも内径が大きい。つまり、末端部分(62,82)と主軸部(21,22)のクリアランスは、本体部分(61,81)と主軸部(21,22)のクリアランスよりも広い。従って、軸受メタル(60,80)の末端部分(62,82)は、主軸部(21,22)からの荷重を受けない。
この発明の軸受部材(50,70)において、凹溝部(91)は、その一部が軸受メタル(60,80)の末端部分(62,82)とオーバーラップする位置に形成される。このため、軸受メタル(60,80)は、本体部分(61,81)の外周面の一部と末端部分(62,82)の外周面の一部とが軸受部材(50,70)と接触しない状態になっている。そして、この軸受メタル(60,80)では、本体部分(61,81)と末端部分(62,82)の両方に跨る部位が低剛性部分(96)となる。
請求項5の発明では、回転軸(20)の主軸部(21,22)に給油溝(24,25)が形成される。潤滑油は、給油溝(24,25)へ一旦流入し、その後に軸受面(90)と主軸部(21,22)の外周面との間の隙間へ供給される。また、軸受メタル(60,80)において、給油溝(24,25)に臨む部分は主軸部(21,22)からの荷重を受けず、それ以外の部分が主軸部(21,22)からの荷重を受ける。
この発明の軸受部材(50,70)において、凹溝部(91)は、その一部が主軸部(21,22)の給油溝(24,25)とオーバーラップする位置に形成されている。このため、軸受メタル(60,80)において、主軸部(21,22)からの荷重を受ける部分と、主軸部(21,22)からの荷重を受けない部分とは、それぞれの外周面の一部が軸受部材(50,70)と接触しない状態になっている。そして、この軸受メタル(60,80)では、主軸部(21,22)からの荷重を受ける部分と受けない部分の両方に跨る部位が低剛性部分(96)となる。
請求項1の発明によれば、ロータリ式流体機械(10)の運転中に回転軸(20)の主軸部(21,22)が弾性変形した場合であっても、変形した主軸部(21,22)の外周面に沿うように軸受面(90)を変形させることができる。
ここで、ロータリ式流体機械(10)を高効率化するために回転軸(20)の主軸部(21,22)を細径化すると、ロータリ式流体機械(10)の運転中における主軸部(21,22)の弾性変形量が増大する。これに対し、請求項1の発明によれば、弾性変形した主軸部(21,22)に沿って軸受面(90)を変形させることができ、軸受面(90)と主軸部(21,22)が直接に接触するのを防ぐことができる。
従って、請求項1の発明によれば、回転軸(20)の主軸部(21,22)を細径化した場合であっても、主軸部(21,22)と軸受面(90)の直接接触を回避して主軸部(21,22)の“焼け”や“焼き付き”を防止することができる。この結果、ロータリ式流体機械(10)の信頼性を確保しながら、主軸部(21,22)の細径化によるロータリ式流体機械(10)の高効率化を図ることが可能となる。
請求項2の発明では、軸受部材(50,70)における保持面(53,73)の全周に亘って凹溝部(91)を形成している。従って、軸受部材(50,70)の保持面(53,73)や軸受メタル(60,80)の外周面における周方向の一部に凹溝部(91,92)を形成する場合に比べ、凹溝部(91,92)を形成するための加工が容易になり、ロータリ式流体機械(10)の製造コストが上昇するのを抑制できる。
請求項3の発明では、軸受メタル(60,80)のうち支持部分(63,83)と非支持部分(64,84)とに亘る部分の剛性が比較的低くなるように、軸受部材(50,70)に凹溝部(91)を形成している。
ここで、ロータリ式流体機械(10)の運転中には、主軸部(21,22)からの荷重を受ける支持部分(56,63,76,83)と主軸部(21,22)からの荷重を受けない非支持部分(57,64,77,84)との境界付近において、主軸部(21,22)と軸受面(90)の直接接触が生じ易い。これに対し、請求項3の発明では、上述したように、軸受メタル(60,80)のうち支持部分(63,83)と非支持部分(64,84)とに亘る部分の剛性が比較的低くなっている。従って、請求項3の発明によれば、主軸部(21,22)と軸受面(90)が直接に接触するのを確実に回避でき、主軸部(21,22)の“焼け”や“焼き付き”を一層確実に防止できる。
請求項4の発明では、軸受メタル(60,80)のうち本体部分(61,81)と末端部分(62,82)とに亘る部分の剛性が比較的低くなるように、軸受部材(50,70)に凹溝部(91)を形成している。
ここで、ロータリ式流体機械(10)の運転中には、主軸部(21,22)からの荷重を受ける本体部分(54,61,74,81)と主軸部(21,22)からの荷重を受けない末端部分(55,62,75,82)との境界付近において、主軸部(21,22)と軸受面(90)の直接接触が生じ易い。これに対し、請求項4の発明では、上述したように、軸受メタル(60,80)のうち本体部分(61,81)と末端部分(62,82)とに亘る部分の剛性が比較的低くなっている。従って、請求項4の発明によれば、主軸部(21,22)と軸受面(90)が直接に接触するのを確実に回避でき、主軸部(21,22)の“焼け”や“焼き付き”を一層確実に防止できる。
請求項5の発明では、軸受メタル(60,80)のうち主軸部(21,22)からの荷重を受ける部分と受けない部分とに亘る部分の剛性が比較的低くなるように、軸受部材(50,70)に凹溝部(91)を形成している。
ここで、ロータリ式流体機械(10)の運転中には、主軸部(21,22)からの荷重を受ける部分と受けない部分との境界付近において、主軸部(21,22)と軸受面(90)の直接接触が生じ易い。これに対し、請求項5の発明では、上述したように、軸受メタル(60,80)のうち荷重を受ける箇所と受けない箇所とに亘る部分の剛性が比較的低くなっている。従って、請求項5の発明によれば、主軸部(21,22)と軸受面(90)が直接に接触するのを確実に回避でき、主軸部(21,22)の“焼け”や“焼き付き”を一層確実に防止できる。
《発明の実施形態》
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態は、本発明に係るロータリ式流体機械により構成された圧縮機(10)である。この圧縮機(10)は、冷凍装置の冷媒回路に設けられて冷媒を圧縮するために用いられる。
〈圧縮機の全体構成〉
図1に示すように、本実施形態の圧縮機(10)は、いわゆる全密閉型に構成されている。この圧縮機(10)は、上下に長い円筒形の密閉容器状に形成されたケーシング(11)を備えている。ケーシング(11)の内部には、圧縮機構(30)と、駆動軸(20)と、電動機(15)とが収納されている。このケーシング(11)内では、電動機(15)の下方に圧縮機構(30)が配置されている。
上記ケーシング(11)の頂部には、ターミナル(12)と吐出管(13)とが取り付けられている。ターミナル(12)は、電動機(15)へ電力を供給するためのものである。一方、吐出管(13)は、ケーシング(11)を貫通しており、その一端がケーシング(11)内の空間に開口している。
上記電動機(15)は、固定子(16)と回転子(17)とを備えている。固定子(16)は、焼嵌め等によってケーシング(11)の胴部に固定されている。図示しないが、この固定子(16)は、図外のリード線を介してターミナル(12)の端子と電気的に接続されている。一方、回転子(17)は、駆動軸(20)に固定されている。
回転軸である上記駆動軸(20)には、上から下へ向かって順に、第1主軸部(21)と偏心部(23)と第2主軸部(22)とが形成されている。第1主軸部(21)と第2主軸部(22)とは、同径に形成されて同軸上に配置されている。第1主軸部(21)の上部には、電動機(15)の固定子(16)が取り付けられている。一方、偏心部(23)は、第1及び第2主軸部(21,22)よりも大径に形成され、その軸心が第1及び第2主軸部(21,22)の軸心に対して偏心している。
上記駆動軸(20)において、第1主軸部(21)の偏心部(23)側の端部、即ち第1主軸部(21)の下端部には、第1給油溝(24)が形成されている。一方、第2主軸部(22)の偏心部(23)側の端部、即ち第2主軸部(22)の上端部には、第2給油溝(25)が形成されている。第1,第2給油溝(24,25)は、第1,第2主軸部(21,22)の全周に亘って形成されている。また、図示しないが、偏心部(23)の側面には、上下に延びる第3給油溝が形成されている。そして、図示しないが、この駆動軸(20)には、その下端に遠心ポンプが形成されると共に、この遠心ポンプと第1〜第3の各給油溝(24,25)を連通させる給油通路が形成されている。
〈圧縮機構の構成〉
上記圧縮機構(30)は、いわゆる揺動ピストン型に構成されている。
図2及び図3に示すように、圧縮機構(30)は、シリンダ(31)と、主軸受部材(50)と、副軸受部材(70)と、ピストン(33)とを備えている。主軸受部材(50)はシリンダ(31)の上側に配置され、副軸受部材(70)はシリンダ(31)の下側に配置されている。そして、シリンダ(31)は、主軸受部材(50)と副軸受部材(70)とによって上下から挟み込まれている。
上記シリンダ(31)は、肉厚で短い円筒状に形成されている。一方、上記ピストン(33)は、シリンダ(31)とほぼ同じ高さの円筒状に形成されている。ピストン(33)の内径は、駆動軸(20)における偏心部(23)の外径と概ね等しくなっている。このピストン(33)は、駆動軸(20)の偏心部(23)に係合している。具体的には、円筒状のピストン(33)を貫通するように偏心部(23)が設けられ、ピストン(33)の内周面と偏心部(23)の外周面が摺接する。また、ピストン(33)の外周面は、シリンダ(31)の内周面と摺接する。そして、シリンダ(31)にピストン(33)を収納することで、シリンダ(31)内に流体室である圧縮室(40)が形成される。
また、上記ピストン(33)には、ブレード(34)が一体に設けられている。このブレード(34)は、板状に形成されており、ピストン(33)の外周面から外側へ突出している。シリンダ(31)の内周面とピストン(33)の外周面に挟まれた圧縮室(40)は、このブレード(34)によって高圧側(41)と低圧側(42)に仕切られる。図3では、ブレード(34)の右側が圧縮室(40)の低圧側(42)となり、ブレード(34)の左側が圧縮室(40)の高圧側(41)となっている。
上記シリンダ(31)には、一対のブッシュ(35)が設けられている。各ブッシュ(35)は、それぞれが半月状に形成されている。このブッシュ(35)は、ブレード(34)を挟み込んだ状態で設置され、ブレード(34)と摺動する。また、ブッシュ(35)は、ブレード(34)を挟んだ状態でシリンダ(31)に対して回動自在となっている。
更に、上記シリンダ(31)には、吸入ポート(32)が形成されている。この吸入ポート(32)は、その一端がシリンダ(31)の内周面に開口し、圧縮室(40)の低圧側(42)に連通している。また、吸入ポート(32)の他端には、吸入管(14)が挿入されている。この吸入管(14)は、ケーシング(11)の胴部を貫通してケーシング(11)の外部へ延びている(図2参照)。
図2に示すように、上記主軸受部材(50)には、円板状の円板部(51)と、円筒状の筒状部(52)とが形成されている。この主軸受部材(50)は、駆動軸(20)の第1主軸部(21)を支持するための滑り軸受を構成している。
上記円板部(51)は、筒状部(52)の下端部に連続して形成されている。円板部(51)の下面は、シリンダ(31)の上面に密着している。円板部(51)の下面や筒状部(52)の下端面は、フェイス面となってピストン(33)の上端面と摺接する。また、円板部(51)は、その周側面がケーシング(11)の胴部の内面に密着している。そして、円板部(51)とケーシング(11)をスポット溶接することにより、主軸受部材(50)がケーシング(11)に固定される。
上記円板部(51)には、圧縮室(40)の高圧側(41)に連通する吐出ポート(45)が形成されると共に、吐出ポート(45)を覆うようにリード弁である吐出弁(46)が設けられている(図3参照)。また、この円板部(51)には、その上面を覆うようにマフラ(47)が取り付けられている(図2参照)。
図4に示すように、上記主軸受部材(50)の筒状部(52)には、円筒状の軸受メタル(60)が圧入されている。この軸受メタル(60)は、軸方向の上端から長さL1に亘る部分が本体部分(61)となり、残りの長さL2に亘る部分が末端部分(62)となっている。つまり、末端部分(62)は、本体部分(61)におけるシリンダ(31)側の末端、即ち本体部分(61)の下端に連続して形成されている。
本体部分(61)は、その内周面が第1主軸部(21)の外周面と向かい合う軸受面(90)を構成している。一方、末端部分(62)は、その内径が本体部分(61)の内径よりも僅かに大きくなっている。また、末端部分(62)の上端は、第1給油溝(24)の上端よりも上方に位置している。
上記圧縮機(10)の運転中には、本体部分(61)と第1主軸部(21)の間に油膜が形成され、軸受メタル(60)の本体部分(61)が第1主軸部(21)からの荷重を受ける。つまり、この本体部分(61)は、支持部分(63)となっている。一方、末端部分(62)と第1主軸部(21)のクリアランスは、本体部分(61)と第1主軸部(21)のクリアランスよりも広くなっている。従って、末端部分(62)と第1主軸部(21)の隙間は潤滑油で満たされるものの、軸受メタル(60)の末端部分(62)は第1主軸部(21)からの荷重を受けない。つまり、この末端部分(62)は、非支持部分(64)となっている。
上記主軸受部材(50)の筒状部(52)は、その内周面が保持面(53)となっており、この保持面(53)が軸受メタル(60)の外周面と密着している。筒状部(52)の保持面(53)には、シリンダ(31)寄りの位置に凹溝部(91)が形成されている。
具体的に、この凹溝部(91)は、筒状部(52)を保持面(53)から掘り下げることにより、その保持面(53)の周方向へ延びる溝状に形成されている。また、この凹溝部(91)は、筒状部(52)における保持面(53)の全周に亘って形成されると共に、その上下の縁部がテーパ状に形成されている。更に、凹溝部(91)は、その下部が軸受メタル(60)の末端部分(62)と僅かにオーバーラップする位置に形成されている。つまり、この凹溝部(91)の下端は、末端部分(62)の上端よりも下方に位置している。
上記主軸受部材(50)に設けられた軸受メタル(60)において、凹溝部(91)に隣接する部分は、その外周面が筒状部(52)と接触しない状態になっている。そして、この軸受メタル(60)のうち凹溝部(91)に隣接する部分は、外周面が筒状部(52)と接している部分に比べて剛性の低い低剛性部分(96)となっている。また、上述のように、凹溝部(91)は、軸受メタル(60)の末端部分(62)とオーバーラップする位置に形成されている。従って、この軸受メタル(60)において、低剛性部分(96)は、本体部分(61)と末端部分(62)の両方に跨る部位に形成されている。
図2に示すように、副軸受部材(70)には、円板状の円板部(71)と、円筒状の筒状部(72)とが形成されている。この副軸受部材(70)は、駆動軸(20)の第2主軸部(22)を支持するための滑り軸受を構成している。また、副軸受部材(70)は、図外のボルトによって、シリンダ(31)と共に主軸受部材(50)に固定されている。
上記円板部(71)は、筒状部(72)の上端部に連続して形成されている。円板部(71)の上面は、シリンダ(31)の下面に密着している。また、円板部(71)の上面や筒状部(72)の上端面は、フェイス面となってピストン(33)の下端面と摺接する。
図4に示すように、上記副軸受部材(70)の筒状部(72)には、円筒状の軸受メタル(80)が圧入されている。この軸受メタル(80)は、軸方向の下端から長さL3に亘る部分が本体部分(81)となり、残りの長さL4に亘る部分が末端部分(82)となっている。つまり、末端部分(82)は、本体部分(81)におけるシリンダ(31)側の末端、即ち本体部分(81)の上端に連続して形成されている。
本体部分(81)は、その内周面が第2主軸部(22)の外周面と向かい合う軸受面(90)を構成している。一方、末端部分(82)は、その内径が本体部分(81)の内径よりも僅かに大きくなっている。また、末端部分(82)の下端は、第2給油溝(25)の下端よりも下方に位置している。
上記圧縮機(10)の運転中には、本体部分(81)と第2主軸部(22)の間に油膜が形成され、軸受メタル(80)の本体部分(81)が第2主軸部(22)からの荷重を受ける。つまり、この本体部分(81)は、支持部分(83)となっている。一方、末端部分(82)と第2主軸部(22)のクリアランスは、本体部分(81)と第2主軸部(22)のクリアランスよりも広くなっている。従って、末端部分(82)と第2主軸部(22)の隙間は潤滑油で満たされるものの、軸受メタル(80)の末端部分(82)は第2主軸部(22)からの荷重を受けない。つまり、この末端部分(82)は、非支持部分(84)となっている。
上記副軸受部材(70)の筒状部(72)は、その内周面が保持面(73)となっており、この保持面(73)が軸受メタル(80)の外周面と密着している。筒状部(72)の保持面(73)には、シリンダ(31)寄りの位置に凹溝部(91)が形成されている。
具体的に、この凹溝部(91)は、筒状部(72)を保持面(73)から掘り下げることにより、その保持面(73)の周方向へ延びる溝状に形成されている。また、この凹溝部(91)は、筒状部(72)における保持面(73)の全周に亘って形成されると共に、その上下の縁部がテーパ状に形成されている。更に、凹溝部(91)は、その上部が軸受メタル(80)の末端部分(82)と僅かにオーバーラップする位置に形成されている。つまり、この凹溝部(91)の上端は、末端部分(82)の下端よりも上方に位置している。
上記副軸受部材(70)に設けられた軸受メタル(80)において、凹溝部(91)に隣接する部分は、その外周面が筒状部(72)と接触しない状態になっている。そして、この軸受メタル(80)のうち凹溝部(91)に隣接する部分は、外周面が筒状部(72)と接している部分に比べて剛性の低い低剛性部分(96)となっている。また、上述のように、凹溝部(91)は、軸受メタル(80)の末端部分(82)とオーバーラップする位置に形成されている。従って、この軸受メタル(80)において、低剛性部分(96)は、本体部分(81)と末端部分(82)の両方に跨る部位に形成されている。
−運転動作−
上記圧縮機(10)の運転動作について説明する。
ターミナル(12)を介して電動機(15)へ電力を供給すると、電動機(15)によって駆動軸(20)が回転駆動される。図3において、駆動軸(20)が時計方向へ回転すると、駆動軸(20)の偏心部(23)に係合するピストン(33)は、その外周面がシリンダ(31)の内周面と摺接する状態で移動する。その際、ブレード(34)が一体に形成されたピストン(33)は、シリンダ(31)と摺接しながら揺動するような動きをする。
シリンダ(31)内でピストン(33)が移動すると、圧縮室(40)では、低圧側(42)の容積が次第に大きくなる。このため、圧縮機(10)の吸入管(14)へ送り込まれたガス冷媒は、吸入ポート(32)を通って圧縮室(40)の低圧側(42)へ吸い込まれる。それと同時に、圧縮室(40)の高圧側(41)の容積が次第に小さくなり、圧縮室(40)の高圧側(41)に閉じ込められたガス冷媒が圧縮される。圧縮室(40)の高圧側(41)の内圧が次第に上昇すると、やがて吐出弁(46)がガス冷媒によって押し上げられる。そして、圧縮されたガス冷媒は、吐出ポート(45)を通って圧縮室(40)の高圧側(41)からマフラ(47)の内側へ吐出される(図2参照)。その後、圧縮されたガス冷媒は、吐出管(13)を通ってケーシング(11)の外部へ送り出される。
駆動軸(20)が回転すると、駆動軸(20)の下端に設けられた遠心ポンプは、ケーシング(11)の底部に溜まった潤滑油を吸い上げ、吸い上げた潤滑油を第1及び第2給油溝(24,25)へ送り込む。第1給油溝(24)の潤滑油は、主軸受部材(50)の軸受メタル(60)と第1主軸部(21)との隙間へ流入して油膜を形成する。一方、第2給油溝(25)の潤滑油は、副軸受部材(70)の軸受メタル(80)と第2主軸部(22)との隙間へ流入して油膜を形成する。そして、圧縮機(10)の運転中に荷重が作用する駆動軸(20)は、主軸受部材(50)及び副軸受部材(70)が構成する滑り軸受によって回転自在に支持される。
上述のように、上記ピストン(33)は、その上端面が全面に亘って主軸受部材(50)の下面と摺接し、その下端面が全面に亘って副軸受部材(70)の上面と摺接している。ピストン(33)の上端面と主軸受部材(50)との間の隙間、及びピストン(33)の下端面と副軸受部材(70)との間の隙間には、偏心部(23)の第3給油溝(図示せず)から潤滑油がそれぞれ供給され、供給された潤滑油によって油膜が形成される。そして、主軸受部材(50)や副軸受部材(70)とピストン(33)との間に形成された油膜によって、圧縮室(40)の気密が確保される。
圧縮機(10)の運転中には、圧縮室(40)のガス圧などの荷重が駆動軸(20)に作用し、第1主軸部(21)や第2主軸部(22)が弾性変形する。このため、図26に示すように、何の対策も講じなければ、圧縮機の停止中に回転軸(c)と軸受面(f)の間のクリアランスが確保されていたとしても、圧縮機の運転中は変形した回転軸(c)が軸受面(f)に接触するおそれがある。
これに対し、本実施形態の圧縮機(10)では、主軸受部材(50)や副軸受部材(70)に凹溝部(91)が形成されており、軸受メタル(60,80)のうち凹溝部(91)に隣接する部分が低剛性部分(96)となっている。そして、図5に示すように、圧縮機(10)の運転中に第1及び第2主軸部(21,22)が変形した場合には、この変形した主軸部(21,22)からの荷重を受けて軸受メタル(60,80)の低剛性部分(96)が変形する。具体的に、軸受メタル(60,80)の低剛性部分(96)は、主軸受部材(50)や副軸受部材(70)の凹溝部(91)へ膨出するように変形する。このため、軸受メタル(60,80)の内周面である軸受面(90)が主軸部(21,22)の外周面に沿うように変形し、主軸部(21,22)と軸受メタル(60,80)の接触が回避される。尚、図5では、主軸部(21,22)や軸受メタル(60,80)の変形量を誇張して示している。
−実施形態の効果−
本実施形態では、圧縮機(10)の運転中に回転軸の主軸部(21,22)が弾性変形した場合であっても、変形した主軸部(21,22)の外周面に沿うように軸受メタル(60,80)の軸受面(90)が変形する。
ここで、圧縮機(10)を高効率化するために回転軸の主軸部(21,22)を細径化すると、圧縮機(10)の運転中における主軸部(21,22)の弾性変形量が増大する。これに対し、本実施形態によれば、弾性変形した主軸部(21,22)に沿って軸受面(90)を変形させることができ、軸受面(90)を構成する軸受メタル(60,80)と主軸部(21,22)が直接に接触するのを防ぐことができる。従って、本実施形態によれば、回転軸の主軸部(21,22)を細径化した場合であっても、主軸部(21,22)と軸受メタル(60,80)の直接接触を回避でき、主軸部(21,22)の“焼け”や“焼き付き”を防止することができる。この結果、圧縮機(10)の信頼性を確保しながら、主軸部(21,22)の細径化による圧縮機(10)の高効率化を図ることが可能となる。
ここで、上記圧縮機(10)の運転中に主軸部(21,22)からの荷重を受ける軸受メタル(60,80)の支持部分(63,83)において、主軸部(21,22)と接触する可能性が最も高いのは、主軸部(21,22)からの荷重を受けない非支持部分(64,84)側の端部近傍である。具体的に、主軸受部材(50)の軸受メタル(60)では、支持部分(63)としての本体部分(61)の下端近傍が第1主軸部(21)と接触し易い。一方、副軸受部材(70)に設けられた軸受メタル(80)では、支持部分(83)としての本体部分(81)の上端近傍が第2主軸部(22)と接触し易い。
これに対し、本実施形態では、軸受メタル(60,80)のうち支持部分(63,83)と非支持部分(64,84)とに亘る部位が低剛性部分(96)となっている。そして、主軸部(21,22)が弾性変形すると、変形した主軸部(21,22)に沿うように軸受メタル(60,80)の低剛性部分(96)も弾性変形する。従って、本実施形態によれば、主軸部(21,22)と軸受メタル(60,80)の軸受面(90)とが直接に接触するのを確実に回避でき、主軸部(21,22)の“焼け”や“焼き付き”を一層確実に防止できる。
−実施形態の変形例1−
本実施形態では、図6に示すように、筒状部(52,72)の保持面(53,73)における周方向の一部に凹溝部(91)を形成してもよい。ここで、圧縮機(10)の運転中において、駆動軸(20)に対しては、ある程度決まった方向だけに荷重が作用する。このため、駆動軸(20)の主軸部(21,22)は、概ね同図における右斜め下方向へ撓んだ状態で回転する。そこで、この主軸部(21,22)が撓む方向を考慮し、筒状部(52,72)の保持面(53,73)には、同図における真下から右へ約120°に亘る領域だけに凹溝部(91)を形成してもよい。
−実施形態の変形例2−
本実施形態では、図7に示すように、軸受メタル(60,80)を全長に亘って肉厚が一定の円筒状に形成してもよい。
この場合、主軸受部材(50)の筒状部(52)において、凹溝部(91)は、その下部が第1主軸部(21)の第1給油溝(24)と僅かにオーバーラップする位置に形成される。つまり、この筒状部(52)における凹溝部(91)の下端は、第1給油溝(24)の上端よりも下方に位置している。また、副軸受部材(70)の筒状部(72)において、凹溝部(91)は、その上部が第2主軸部(22)の第2給油溝(25)と僅かにオーバーラップする位置に形成される。つまり、この筒状部(72)における凹溝部(91)の上端は、第2給油溝(25)の下端よりも上方に位置している。
上記圧縮機(10)の運転中において、第1主軸部(21)のうち第1給油溝(24)よりも上の軸部分と軸受メタル(60)の間には油膜が形成される。そして、軸受メタル(60)のうち第1主軸部(21)の軸部分に隣接する部分、即ち軸受メタル(60)における軸方向の上端から長さL5に亘る部分は、第1主軸部(21)からの荷重を受ける支持部分(63)となっている。一方、第1主軸部(21)の第1給油溝(24)は潤滑油で満たされるものの、軸受メタル(60)のうち第1給油溝(24)に臨む部分には、第1主軸部(21)からの荷重が作用しない。つまり、軸受メタル(60)のうち第1給油溝(24)に臨む部分、即ち、軸受メタル(60)の支持部分(63)の下端から長さL6に亘る部分は、第1主軸部(21)からの荷重を受けない非支持部分(64)となっている。
また、上記圧縮機(10)の運転中において、第2主軸部(22)のうち第2給油溝(25)よりも下の軸部分と軸受メタル(80)の間には油膜が形成される。そして、軸受メタル(80)のうち第2主軸部(22)の軸部分に隣接する部分、即ち軸受メタル(80)における軸方向の下端から長さL7に亘る部分は、第2主軸部(22)からの荷重を受ける支持部分(83)となっている。一方、第2主軸部(22)の第2給油溝(25)は潤滑油で満たされるものの、軸受メタル(80)のうち第2給油溝(25)に臨む部分には、第2主軸部(22)からの荷重が作用しない。つまり、軸受メタル(80)のうち第2給油溝(25)に臨む部分、即ち軸受メタル(80)の支持部分(83)の上端から長さL8に亘る部分は、第2主軸部(22)からの荷重を受けない非支持部分(84)となっている。
この変形例2においても、軸受メタル(60,80)のうち支持部分(63,83)と非支持部分(64,84)とに亘る部位が低剛性部分(96)となっている。そして、主軸部(21,22)が弾性変形すると、変形した主軸部(21,22)に沿うように軸受メタル(60,80)の低剛性部分(96)も弾性変形する。従って、この変形例2によっても、主軸部(21,22)と軸受メタル(60,80)の軸受面(90)とが直接に接触するのを確実に回避でき、主軸部(21,22)の“焼け”や“焼き付き”を一層確実に防止できる。
−実施形態の変形例3−
本実施形態では、主軸受部材(50)又は副軸受部材(70)の何れか一方だけに凹溝部(91)を形成してもよい。例えば、組立公差や寸法精度の設定次第では、主軸受部材(50)の軸受メタル(60)と第1主軸部(21)が直接接触する可能性は高いが、副軸受部材(70)の軸受メタル(80)と第2主軸部(22)が直接接触する可能性は殆ど無いという場合もあり得る。従って、このような場合には、主軸受部材(50)の筒状部(52)だけに凹溝部(91)を形成すれば、軸受メタル(60)と第1主軸部(21)の直接接触を回避でき、第1主軸部(21)の“焼け”や“焼き付き”を防止できる。
《参考技術1》
参考技術1は、上記実施形態が主軸受部材(50)や副軸受部材(70)に凹溝部(91)を形成しているのに代えて、軸受メタル(60,80)に凹溝部(92)を形成するものである。ここでは、本参考技術の圧縮機(10)について、上記実施形態と異なる点を説明する。
図8及び図9に示すように、主軸受部材(50)の筒状部(52)に圧入された軸受メタル(60)は、その上端から長さL1に亘る部分が支持部分(63)である本体部分(61)となり、残りの長さL2に亘る部分が非支持部分(64)である末端部分(62)となっている。また、副軸受部材(70)の筒状部(72)に圧入された軸受メタル(80)は、その下端から長さL3に亘る部分が支持部分(83)である本体部分(81)となり、残りの長さL4に亘る部分が非支持部分(84)である末端部分(82)となっている。これらの点は、上記実施形態と同様である。
先ず、主軸受部材(50)の軸受メタル(60)には、その外周面におけるシリンダ(31)寄りの位置に凹溝部(92)が形成されている。具体的に、この凹溝部(92)は、軸受メタル(60)を外周面から掘り下げることにより、その外周面の周方向へ延びる溝状に形成されている。また、凹溝部(92)は、軸受メタル(60)における外周面の全周に亘って形成され、リング状の溝となっている。更に、凹溝部(92)は、本体部分(61)と末端部分(62)の両方に跨って形成されている。つまり、この凹溝部(92)の下端は、末端部分(62)の上端よりも下方に位置している。
主軸受部材(50)の軸受メタル(60)のうち凹溝部(92)が形成された部分は、他の部分よりも肉厚が薄くて剛性の低い低剛性部分(97)となっている。また、上述のように、凹溝部(92)は、本体部分(61)と末端部分(62)の両方に亘って形成されている。従って、この軸受メタル(60)において、低剛性部分(97)は、本体部分(61)と末端部分(62)の両方に跨る部位に形成されている。
次に、副軸受部材(70)の軸受メタル(80)には、その外周面におけるシリンダ(31)寄りの位置に凹溝部(92)が形成されている。具体的に、この凹溝部(92)は、軸受メタル(80)を外周面から掘り下げることにより、その外周面の周方向へ延びる溝状に形成されている。また、凹溝部(92)は、軸受メタル(80)における外周面の全周に亘って形成され、リング状の溝となっている。更に、凹溝部(92)は、本体部分(81)と末端部分(82)の両方に跨って形成されている。つまり、この凹溝部(92)の上端は、末端部分(82)の下端よりも上方に位置している。
副軸受部材(70)の軸受メタル(80)のうち凹溝部(92)が形成された部分は、他の部分よりも肉厚が薄くて剛性の低い低剛性部分(97)となっている。また、上述のように、凹溝部(92)は、本体部分(81)と末端部分(82)の両方に亘って形成されている。従って、この軸受メタル(80)において、低剛性部分(97)は、本体部分(81)と末端部分(82)の両方に跨る部位に形成されている。
上記実施形態の説明で述べたように、圧縮機(10)の運転中には、駆動軸(20)の第1主軸部(21)や第2主軸部(22)が弾性変形する。これに対し、本参考技術の圧縮機(10)では、軸受メタル(60,80)のうち凹溝部(92)の形成された部分が低剛性部分(97)となっている。そして、図10に示すように、圧縮機(10)の運転中に第1及び第2主軸部(21,22)が変形した場合には、この変形した主軸部(21,22)からの荷重を受けて軸受メタル(60,80)の低剛性部分(97)が変形する。具体的に、軸受メタル(60,80)の低剛性部分(97)は、外側へ向けて膨出するように変形する。このため、軸受メタル(60,80)の内周面である軸受面(90)が主軸部(21,22)の外周面に沿うように変形し、主軸部(21,22)と軸受メタル(60,80)の接触が回避される。尚、図10では、主軸部(21,22)や軸受メタル(60,80)の変形量を誇張して示している。
−参考技術1の変形例1−
本参考技術では、図11に示すように、軸受メタル(60,80)の外周面における周方向の一部に凹溝部(92)を形成してもよい。ここで、圧縮機(10)の運転中において、駆動軸(20)に対しては、ある程度決まった方向だけに荷重が作用する。このため、駆動軸(20)の主軸部(21,22)は、概ね同図における右斜め下方向へ撓んだ状態で回転する。そこで、この主軸部(21,22)が撓む方向を考慮し、軸受メタル(60,80)の外周面には、同図における真下から右へ約120°に亘る領域だけに凹溝部(92)を形成してもよい。
−参考技術1の変形例2−
本参考技術では、図12に示すように、一つの軸受メタル(60,80)を二つの部分(65,66)で構成してもよい。同図には、主軸受部材(50)に設けられた軸受メタル(60)だけが示されている。そして、この軸受メタル(60)は、第1部分(65)と、第1部分(65)の下方に配置された第2部分(66)とによって構成されている。第1部分(65)と第2部分(66)とは、何れも円筒状に形成されている。凹溝部(92)は、第2部分(66)を外周側から掘り下げることにより形成されている。そして、第2部分(66)は、その上部の肉厚が下部の肉厚よりも薄くなっており、この部分が低剛性部分(97)となっている。
−参考技術1の変形例3−
本参考技術では、図13に示すように、軸受メタル(60,80)を全長に亘って肉厚が一定の円筒状に形成してもよい。
この場合、主軸受部材(50)の軸受メタル(60)において、凹溝部(92)は、その下部が第1主軸部(21)の第1給油溝(24)と僅かにオーバーラップする位置に形成される。つまり、この軸受メタル(60)における凹溝部(92)の下端は、第1給油溝(24)の上端よりも下方に位置している。また、副軸受部材(70)の軸受メタル(80)において、凹溝部(92)は、その上部が第2主軸部(22)の第2給油溝(25)と僅かにオーバーラップする位置に形成される。つまり、この軸受メタル(80)における凹溝部(92)の上端は、第2給油溝(25)の下端よりも上方に位置している。
上記圧縮機(10)の運転中において、第1主軸部(21)のうち第1給油溝(24)よりも上の軸部分と軸受メタル(60)の間には油膜が形成される。そして、軸受メタル(60)のうち第1主軸部(21)の軸部分に隣接する部分、即ち軸受メタル(60)における軸方向の上端から長さL5に亘る部分は、第1主軸部(21)からの荷重を受ける支持部分(63)となっている。一方、第1主軸部(21)の第1給油溝(24)は潤滑油で満たされるものの、軸受メタル(60)のうち第1給油溝(24)に臨む部分には、第1主軸部(21)からの荷重が作用しない。つまり、軸受メタル(60)のうち第1給油溝(24)に臨む部分、即ち、軸受メタル(60)の支持部分(63)の下端から長さL6に亘る部分は、第1主軸部(21)からの荷重を受けない非支持部分(64)となっている。
また、上記圧縮機(10)の運転中において、第2主軸部(22)のうち第2給油溝(25)よりも下の軸部分と軸受メタル(80)の間には油膜が形成される。そして、軸受メタル(80)のうち第2主軸部(22)の軸部分に隣接する部分、即ち軸受メタル(80)における軸方向の下端から長さL7に亘る部分は、第2主軸部(22)からの荷重を受ける支持部分(83)となっている。一方、第2主軸部(22)の第2給油溝(25)は潤滑油で満たされるものの、軸受メタル(80)のうち第2給油溝(25)に臨む部分には、第2主軸部(22)からの荷重が作用しない。つまり、軸受メタル(80)のうち第2給油溝(25)に臨む部分、即ち軸受メタル(80)の支持部分(83)の上端から長さL8に亘る部分は、第2主軸部(22)からの荷重を受けない非支持部分(84)となっている。
この変形例3においても、軸受メタル(60,80)のうち支持部分(63,83)と非支持部分(64,84)とに亘る部位が低剛性部分(97)となっている。そして、主軸部(21,22)が弾性変形すると、変形した主軸部(21,22)に沿うように軸受メタル(60,80)の低剛性部分(97)も弾性変形する。従って、この変形例3によっても、主軸部(21,22)と軸受メタル(60,80)の軸受面(90)とが直接に接触するのを確実に回避でき、主軸部(21,22)の“焼け”や“焼き付き”を一層確実に防止できる。
−参考技術1の変形例4−
本参考技術では、主軸受部材(50)又は副軸受部材(70)の何れか一方の軸受メタル(60,80)だけに凹溝部(92)を形成してもよい。例えば、組立公差や寸法精度の設定次第では、主軸受部材(50)の軸受メタル(60)と第1主軸部(21)が直接接触する可能性は高いが、副軸受部材(70)の軸受メタル(80)と第2主軸部(22)が直接接触する可能性は殆ど無いという場合もあり得る。従って、このような場合には、主軸受部材(50)の軸受メタル(60)だけに凹溝部(92)を形成すれば、軸受メタル(60)と第1主軸部(21)の直接接触を回避でき、第1主軸部(21)の“焼け”や“焼き付き”を防止できる。
《参考技術2》
参考技術2は、上記実施形態が主軸受部材(50)や副軸受部材(70)における筒状部(52,72)の内周面に凹溝部(91)を形成しているのに代えて、筒状部(52,72)の外周面に凹溝部(93)を形成するものである。ここでは、本参考技術の圧縮機(10)について、上記実施形態と異なる点を説明する。
図14及び図15に示すように、本参考技術の主軸受部材(50)では、その筒状部(52)に軸受メタル(60)が設けられていない。この筒状部(52)は、軸方向の上端から長さL1に亘る部分が本体部分(54)となり、残りの長さL2に亘る部分が末端部分(55)となっている。つまり、末端部分(55)は、本体部分(54)におけるシリンダ(31)側の末端、即ち本体部分(54)の下端に連続して形成されている。
本体部分(54)は、その内周面が第1主軸部(21)の外周面と向かい合う軸受面(90)を構成している。一方、末端部分(55)は、その内径が本体部分(54)の内径よりも僅かに大きくなっている。また、末端部分(55)の上端は、第1給油溝(24)の上端よりも上方に位置している。
上記圧縮機(10)の運転中には、本体部分(54)と第1主軸部(21)の間に油膜が形成され、筒状部(52)の本体部分(54)が第1主軸部(21)からの荷重を受ける。つまり、この本体部分(54)は、支持部分(56)となっている。一方、末端部分(55)と第1主軸部(21)のクリアランスは、本体部分(54)と第1主軸部(21)のクリアランスよりも広くなっている。従って、末端部分(55)と第1主軸部(21)の隙間は潤滑油で満たされるものの、筒状部(52)の末端部分(55)は第1主軸部(21)からの荷重を受けない。つまり、この末端部分(55)は、非支持部分(57)となっている。
本参考技術の主軸受部材(50)において、筒状部(52)には、その外周面におけるシリンダ(31)寄りの位置に凹溝部(93)が形成されている。具体的に、この凹溝部(93)は、筒状部(52)を外周面から掘り下げることにより、その外周面の周方向へ延びる溝状に形成されている。更に、凹溝部(93)は、本体部分(54)と末端部分(55)の両方に跨って形成されている。つまり、この凹溝部(93)の下端は、末端部分(55)の上端よりも下方に位置している。
ここで、圧縮機(10)の運転中において、駆動軸(20)に対しては、ある程度決まった方向だけに荷重が作用する。このため、駆動軸(20)の主軸部(21,22)は、概ね図16における右斜め下方向へ撓んだ状態で回転する。そこで、この主軸部(21,22)が撓む方向を考慮し、筒状部(52)の外周面には、同図における真下から右へ約120°に亘る領域だけに凹溝部(93)が形成されている。そして、筒状部(52)のうち凹溝部(93)が形成された部分は、他の部分よりも肉厚が薄くて剛性の低い低剛性部分(98)となっている。
本参考技術の副軸受部材(70)、その筒状部(72)に軸受メタル(80)が設けられていない。この筒状部(72)は、軸方向の下端から長さL3に亘る部分が本体部分(74)となり、残りの長さL4に亘る部分が末端部分(75)となっている。つまり、末端部分(75)は、本体部分(74)におけるシリンダ(31)側の末端、即ち本体部分(74)の上端に連続して形成されている。
本体部分(74)は、その内周面が第2主軸部(22)の外周面と向かい合う軸受面(90)を構成している。一方、末端部分(75)は、その内径が本体部分(74)の内径よりも僅かに大きくなっている。また、末端部分(75)の下端は、第2給油溝(25)の下端よりも下方に位置している。
上記圧縮機(10)の運転中には、本体部分(74)と第2主軸部(22)の間に油膜が形成され、筒状部(72)の本体部分(74)が第2主軸部(22)からの荷重を受ける。つまり、この本体部分(74)は、支持部分(76)となっている。一方、末端部分(75)と第2主軸部(22)のクリアランスは、本体部分(74)と第2主軸部(22)のクリアランスよりも広くなっている。従って、末端部分(75)と第2主軸部(22)の隙間は潤滑油で満たされるものの、筒状部(72)の末端部分(75)は第2主軸部(22)からの荷重を受けない。つまり、この末端部分(75)は、非支持部分(77)となっている。
本参考技術の副軸受部材(70)において、筒状部(72)には、その外周面におけるシリンダ(31)寄りの位置に凹溝部(93)が形成されている。具体的に、この凹溝部(93)は、筒状部(72)を外周面から掘り下げることにより、その外周面の周方向へ延びる溝状に形成されている。更に、凹溝部(93)は、本体部分(74)と末端部分(75)の両方に跨って形成されている。つまり、この凹溝部(93)の上端は、末端部分(75)の下端よりも上方に位置している。更に、主軸受部材(50)の筒状部(52)の凹溝部(93)と同様に、副軸受部材(70)の筒状部(72)の凹溝部(93)は、図16における真下から右へ約120°に亘る領域だけに形成されている。そして、筒状部(72)のうち凹溝部(93)が形成された部分は、他の部分よりも肉厚が薄くて剛性の低い低剛性部分(98)となっている。
上記実施形態の説明で述べたように、圧縮機(10)の運転中には、駆動軸(20)の第1主軸部(21)や第2主軸部(22)が弾性変形する。これに対し、本参考技術の圧縮機(10)では、筒状部(52,72)のうち凹溝部(93)の形成された部分が低剛性部分(98)となっている。そして、図17に示すように、圧縮機(10)の運転中に第1及び第2主軸部(21,22)が変形した場合には、この変形した主軸部(21,22)からの荷重を受けて筒状部(52,72)の低剛性部分(98)が変形する。具体的に、筒状部(52,72)の低剛性部分(98)は、外側へ向けて膨出するように変形する。このため、筒状部(52,72)の内周面である軸受面(90)が主軸部(21,22)の外周面に沿うように変形し、主軸部(21,22)と筒状部(52,72)の接触が回避される。尚、図17では、主軸部(21,22)や筒状部(52,72)の変形量を誇張して示している。
−参考技術2の変形例1−
本参考技術では、図18に示すように、主軸受部材(50)や副軸受部材(70)において、筒状部(52,72)は、その全長に亘って内径が一定となっていてもよい。
この場合、主軸受部材(50)の筒状部(52)において、凹溝部(93)は、その下部が第1主軸部(21)の第1給油溝(24)と僅かにオーバーラップする位置に形成される。つまり、この筒状部(52)における凹溝部(93)の下端は、第1給油溝(24)の上端よりも下方に位置している。また、副軸受部材(70)の筒状部(72)において、凹溝部(93)は、その上部が第2主軸部(22)の第2給油溝(25)と僅かにオーバーラップする位置に形成される。つまり、この筒状部(72)における凹溝部(93)の上端は、第2給油溝(25)の下端よりも上方に位置している。
上記圧縮機(10)の運転中において、第1主軸部(21)のうち第1給油溝(24)よりも上の軸部分と筒状部(52)の間には油膜が形成される。そして、筒状部(52)のうち第1主軸部(21)の軸部分に隣接する部分、即ち筒状部(52)における軸方向の上端から長さL5に亘る部分は、第1主軸部(21)からの荷重を受ける支持部分(56)となっている。一方、第1主軸部(21)の第1給油溝(24)は潤滑油で満たされるものの、筒状部(52)のうち第1給油溝(24)に臨む部分には、第1主軸部(21)からの荷重が作用しない。つまり、筒状部(52)のうち第1給油溝(24)に臨む部分、即ち、筒状部(52)の支持部分(56)の下端から長さL6に亘る部分は、第1主軸部(21)からの荷重を受けない非支持部分(57)となっている。
また、上記圧縮機(10)の運転中において、第2主軸部(22)のうち第2給油溝(25)よりも下の軸部分と筒状部(72)の間には油膜が形成される。そして、筒状部(72)のうち第2主軸部(22)の軸部分に隣接する部分、即ち筒状部(72)における軸方向の下端から長さL7に亘る部分は、第2主軸部(22)からの荷重を受ける支持部分(76)となっている。一方、第2主軸部(22)の第2給油溝(25)は潤滑油で満たされるものの、筒状部(72)のうち第2給油溝(25)に臨む部分には、第2主軸部(22)からの荷重が作用しない。つまり、筒状部(72)のうち第2給油溝(25)に臨む部分、即ち筒状部(72)の支持部分(76)の上端から長さL8に亘る部分は、第2主軸部(22)からの荷重を受けない非支持部分(77)となっている。
この変形例1においても、筒状部(52,72)のうち支持部分(56,76)と非支持部分(57,77)とに亘る部位が低剛性部分(98)となっている。そして、主軸部(21,22)が弾性変形すると、変形した主軸部(21,22)に沿うように筒状部(52,72)の低剛性部分(98)も弾性変形する。従って、この変形例1によっても、主軸部(21,22)と筒状部(52,72)の軸受面(90)とが直接に接触するのを確実に回避でき、主軸部(21,22)の“焼け”や“焼き付き”を一層確実に防止できる。
−参考技術2の変形例2−
本参考技術では、主軸受部材(50)又は副軸受部材(70)の何れか一方の筒状部(52,72)だけに凹溝部(93)を形成してもよい。例えば、組立公差や寸法精度の設定次第では、主軸受部材(50)の筒状部(52)と第1主軸部(21)が直接接触する可能性は高いが、副軸受部材(70)の筒状部(72)と第2主軸部(22)が直接接触する可能性は殆ど無いという場合もあり得る。従って、このような場合には、主軸受部材(50)の筒状部(52)だけに凹溝部(93)を形成すれば、筒状部(52)と第1主軸部(21)の直接接触を回避でき、第1主軸部(21)の“焼け”や“焼き付き”を防止できる。
《参考技術3》
参考技術3は、上記実施形態が凹溝部(91)を主軸受部材(50)や副軸受部材(70)に形成しているのに代えて、段部(94)を主軸受部材(50)や副軸受部材(70)に形成し、併せて軸受メタル(60,80)に嵌合部(95)を形成したものである。ここでは、本参考技術の圧縮機(10)について、上記実施形態と異なる点を説明する。
図19及び図20に示すように、本参考技術の主軸受部材(50)では、筒状部(52)の内周面である保持面(53)を一段掘り下げることによって、段部(94)が形成されている。この主軸受部材(50)の段部(94)は、保持面(53)におけるシリンダ(31)側の末端から第1主軸部(21)の軸方向へ所定長さに亘って形成されている。具体的に、この段部(94)は、保持面(53)の下端から上方向へ長さW1に亘って形成されている。更に、この段部(94)は、保持面(53)の全周に亘って形成されている。つまり、主軸受部材(50)の筒状部(52)は、段部(94)における内径が段部(94)以外における内径よりも大きくなっている。
主軸受部材(50)の筒状部(52)に圧入された軸受メタル(60)は、その上端から長さL1に亘る部分が支持部分(63)である本体部分(61)となり、残りの長さL2に亘る部分が非支持部分(64)である末端部分(62)となっている。この点は、上記実施形態と同様である。
ただし、本参考技術の軸受メタル(60)では、その下端部(即ち、シリンダ(31)寄りの端部)に嵌合部(95)が形成されている。この嵌合部(95)は、軸受メタル(60)の外周側へ突出したフランジ状に形成されると共に、上下方向の厚み(即ち、第1主軸部(21)の軸方向における長さ)がW2となっている。また、この嵌合部(95)の外径は、段部(94)における筒状部(52)の内径とほぼ等しくなっている。そして、軸受メタル(60)が主軸受部材(50)に圧入された状態で、この嵌合部(95)は、筒状部(52)の段部(94)に嵌り込み、その外周部が筒状部(52)の内周面に密着する。
本参考技術において、軸受メタル(60)における嵌合部(95)の長さW2は、主軸受部材(50)における段部(94)の長さW1よりも短くなっている。このため、この軸受メタル(60)のうち、その下端から測った距離がW2以上W1以下の部分では、その外周面が主軸受部材(50)と接触しない状態になっている。この軸受メタル(60)のうち外周面が主軸受部材(50)に接触しない部分は、外周面が主軸受部材(50)に接する部分に比べて剛性の低い低剛性部分(99)となっている。更に、軸受メタル(60)における嵌合部(95)の長さW2は、軸受メタル(60)における非支持部分(64)の長さL2よりも短くなっている。このため、この軸受メタル(60)において、低剛性部分(99)は、支持部分(63)と非支持部分(64)の両方に跨る部位に形成されている。
一方、本参考技術の副軸受部材(70)では、筒状部(72)の内周面である保持面(73)を一段掘り下げることによって、段部(94)が形成されている。この副軸受部材(70)の段部(94)は、保持面(73)におけるシリンダ(31)側の末端から第2主軸部(22)の軸方向へ所定長さに亘って形成されている。具体的に、この段部(94)は、保持面(73)の上端から下方向へ長さW3に亘って形成されている。更に、この段部(94)は、保持面(73)の全周に亘って形成されている。つまり、副軸受部材(70)の筒状部(72)は、段部(94)における内径が段部(94)以外における内径よりも大きくなっている。
副軸受部材(70)の筒状部(72)に圧入された軸受メタル(80)は、その下端から長さL3に亘る部分が支持部分(83)である本体部分(81)となり、残りの長さL4に亘る部分が非支持部分(84)である末端部分(82)となっている。この点は、上記実施形態と同様である。
ただし、本参考技術の軸受メタル(80)では、その上端部(即ち、シリンダ(31)寄りの端部)に嵌合部(95)が形成されている。この嵌合部(95)は、軸受メタル(80)の外周側へ突出したフランジ状に形成されると共に、上下方向の厚み(即ち、第2主軸部(22)の軸方向における長さ)がW4となっている。また、この嵌合部(95)の外径は、段部(94)における筒状部(72)の内径とほぼ等しくなっている。そして、軸受メタル(80)が副軸受部材(70)に圧入された状態で、この嵌合部(95)は、筒状部(72)の段部(94)に嵌り込み、その外周面が筒状部(72)の内周面に密着する。
本参考技術において、軸受メタル(80)における嵌合部(95)の長さW4は、副軸受部材(70)における段部(94)の長さW3よりも短くなっている。このため、この軸受メタル(80)のうち、その下端から測った距離がW4以上W3以下の部分では、その外周面が副軸受部材(70)と接触しない状態になっている。この軸受メタル(80)のうち外周面が副軸受部材(70)に接触しない部分は、外周面が副軸受部材(70)に接する部分に比べて剛性の低い低剛性部分(99)となっている。更に、軸受メタル(80)における嵌合部(95)の長さW4は、軸受メタル(80)における非支持部分(84)の長さL4よりも短くなっている。このため、この軸受メタル(80)において、低剛性部分(99)は、支持部分(83)と非支持部分(84)の両方に跨る部位に形成されている。
上記実施形態の説明で述べたように、圧縮機(10)の運転中には、駆動軸(20)の第1主軸部(21)や第2主軸部(22)が弾性変形する。これに対し、本参考技術の圧縮機(10)では、軸受メタル(60,80)のうち段部(94)に隣接する部分であって嵌合部(95)以外の箇所が低剛性部分(99)となっている。そして、図21に示すように、圧縮機(10)の運転中に第1及び第2主軸部(21,22)が変形した場合には、この変形した主軸部(21,22)からの荷重を受けて軸受メタル(60,80)の低剛性部分(99)が変形する。具体的に、軸受メタル(60,80)の低剛性部分(99)は、外側へ向けて膨出するように変形する。このため、軸受メタル(60,80)の内周面である軸受面(90)が主軸部(21,22)の外周面に沿うように変形し、主軸部(21,22)と軸受メタル(60,80)の接触が回避される。尚、図21では、主軸部(21,22)や軸受メタル(60,80)の変形量を誇張して示している。
−参考技術3の変形例1−
本参考技術では、図22に示すように、軸受部材(50,70)の保持面(53,73)における周方向の一部に段部(94)を形成すると共に、この段部(94)に対応して、軸受メタル(60,80)における周方向の一部に嵌合部(95)を形成してもよい。
ここで、圧縮機(10)の運転中において、駆動軸(20)に対しては、ある程度決まった方向だけに荷重が作用する。このため、駆動軸(20)の主軸部(21,22)は、概ね同図における右斜め下方向へ撓んだ状態で回転する。そこで、この主軸部(21,22)が撓む方向を考慮し、軸受部材(50,70)の段部(94)や軸受メタル(60,80)の嵌合部(95)を、同図における真下から右へ約120°に亘る領域だけに形成してもよい。
−参考技術3の変形例2−
本参考技術では、図23に示すように、軸受メタル(60,80)の端部に末端部分(62,82)を形成せずに、軸受メタル(60,80)の内面を段差の無い円周面にしてもよい。
先ず、本変形例の圧縮機(10)において、その運転中には、第1主軸部(21)のうち第1給油溝(24)よりも上の軸部分と軸受メタル(60)の間に油膜が形成される。そして、軸受メタル(60)のうち第1主軸部(21)の軸部分に隣接する部分、即ち軸受メタル(60)における軸方向の上端から長さL5に亘る部分は、第1主軸部(21)からの荷重を受ける支持部分(63)となっている。一方、第1主軸部(21)の第1給油溝(24)は潤滑油で満たされるものの、軸受メタル(60)のうち第1給油溝(24)に臨む部分には、第1主軸部(21)からの荷重が作用しない。つまり、軸受メタル(60)のうち第1給油溝(24)に臨む部分、即ち、軸受メタル(60)の支持部分(63)の下端から長さL6に亘る部分は、第1主軸部(21)からの荷重を受けない非支持部分(64)となっている。
本変形例の主軸受部材(50)において、段部(94)は、保持面(53)の下端から上方向へ長さW5に亘って形成されている。一方、この主軸受部材(50)に設けられた軸受メタル(60)において、嵌合部(95)は、その下端から上方向へ長さW6に亘って形成されている。そして、この軸受メタル(60)のうち、その下端から測った距離がW6以上W5以下の部分は、その外周面が主軸受部材(50)と接触しない状態になっており、外周面が主軸受部材(50)に接する部分に比べて剛性の低い低剛性部分(99)となっている。
また、本変形例において、上下方向における第1給油溝(24)の長さL6は、軸受メタル(60)の嵌合部(95)の長さW6よりも長くて、主軸受部材(50)の段部(94)の長さW5よりも短くなっている。従って、この軸受メタル(60)では、低剛性部分(99)が支持部分(63)と非支持部分(64)の両方に跨る部位に形成される。
次に、上記圧縮機(10)の運転中において、第2主軸部(22)のうち第2給油溝(25)よりも下の軸部分と軸受メタル(80)の間には油膜が形成される。そして、軸受メタル(80)のうち第2主軸部(22)の軸部分に隣接する部分、即ち軸受メタル(80)における軸方向の下端から長さL7に亘る部分は、第2主軸部(22)からの荷重を受ける支持部分(83)となっている。一方、第2主軸部(22)の第2給油溝(25)は潤滑油で満たされるものの、軸受メタル(80)のうち第2給油溝(25)に臨む部分には、第2主軸部(22)からの荷重が作用しない。つまり、軸受メタル(80)のうち第2給油溝(25)に臨む部分、即ち軸受メタル(80)の支持部分(83)の上端から長さL8に亘る部分は、第2主軸部(22)からの荷重を受けない非支持部分(84)となっている。
本変形例の副軸受部材(70)において、段部(94)は、保持面(73)の上端から下方向へ長さW7に亘って形成されている。一方、この副軸受部材(70)に設けられた軸受メタル(80)において、嵌合部(95)は、その上端から下方向へ長さW8に亘って形成されている。そして、この軸受メタル(80)のうち、その上端から測った距離がW8以上W7以下の部分は、その外周面が副軸受部材(70)と接触しない状態になっており、外周面が副軸受部材(70)に接する部分に比べて剛性の低い低剛性部分(99)となっている。
また、本変形例において、上下方向における第2給油溝(25)の長さL8は、軸受メタル(80)の嵌合部(95)の長さW8よりも長くて、副軸受部材(70)の段部(94)の長さW7よりも短くなっている。従って、この軸受メタル(80)では、低剛性部分(99)が支持部分(83)と非支持部分(84)の両方に跨る部位に形成される。
以上説明したように、この変形例2においても、軸受メタル(60,80)のうち支持部分(63,83)と非支持部分(64,84)とに亘る部位が低剛性部分(99)となっている。そして、主軸部(21,22)が弾性変形すると、変形した主軸部(21,22)に沿うように軸受メタル(60,80)の低剛性部分(99)も弾性変形する。従って、この変形例2によっても、主軸部(21,22)と軸受メタル(60,80)の軸受面(90)とが直接に接触するのを確実に回避でき、主軸部(21,22)の“焼け”や“焼き付き”を一層確実に防止できる。
−参考技術3の変形例3−
本参考技術では、主軸受部材(50)だけに段部(94)を形成すると共に、この主軸受部材(50)に設けられる軸受メタル(60)だけに嵌合部(95)を形成してもよい。また、これとは逆に、副軸受部材(70)だけに段部(94)を形成すると共に、この副軸受部材(70)に設けられる軸受メタル(80)だけに嵌合部(95)を形成してもよい。
例えば、組立公差や寸法精度の設定次第では、主軸受部材(50)の軸受メタル(60)と第1主軸部(21)が直接接触する可能性は高いが、副軸受部材(70)の軸受メタル(80)と第2主軸部(22)が直接接触する可能性は殆ど無いという場合もあり得る。従って、このような場合には、主軸受部材(50)だけに段部(94)を形成してその軸受メタル(60)だけに嵌合部(95)を形成すれば、軸受メタル(60)と第1主軸部(21)の直接接触を回避でき、第1主軸部(21)の“焼け”や“焼き付き”を防止できる。
《その他の実施形態》
−第1変形例−
上記の実施形態及び各参考技術では圧縮機構(30)を揺動ピストン形に構成しているが、これに代えて、圧縮機構(30)をローリングピストン型に構成してもよい。ここでは、本変形例の圧縮機構(30)について、上記実施形態及び各参考技術と異なる点を説明する。
図24に示すように、本変形例において、ブレード(34)は、ピストン(33)と別体に形成されている。つまり、本変形例のピストン(33)は、単純な円環状あるいは円筒状に形成されている。また、本変形例のシリンダ(31)には、ブレード溝(36)が形成されている。
上記ブレード(34)は、シリンダ(31)のブレード溝(36)に、進退自在な状態で設けられている。また、ブレード(34)は、バネ(37)によって付勢され、その先端(図24における下端)がピストン(33)の外周面に押し付けられている。このブレード(34)は、シリンダ(31)内でのピストン(33)の移動に伴って同図の上下に移動し、その先端がピストン(33)と接した状態に保たれる。そして、ブレード(34)の先端をピストン(33)の外周面に押し付けることで、圧縮室(40)が高圧側(41)と低圧側(42)に仕切られる。
−第2変形例−
上記の実施形態及び各参考技術では圧縮機構(30)にシリンダ(31)とピストン(33)を一組だけ設けているが、図25に示すように、二組のシリンダ(31)とピストン(33)を一つの圧縮機構(30)に設けてもよい。尚、同図は、本変形例を上記実施形態に適用したものを示している。
本変形例の圧縮機構(30)において、2つのシリンダ(31)は、円板状のスペーサ(38)を挟んで上下に積み重ねられる。また、圧縮機構(30)に2つのピストン(33)が設けられるのに伴い、駆動軸(20)には、2つの偏心部(23)が上下に並んで形成される。
−第3変形例−
上記の実施形態及び各参考技術では本発明に係るロータリ式流体機械によって圧縮機を構成しているが、このロータリ式流体機械によって膨張機を構成するようにしてもよい。この場合、シリンダ(31)内の流体室(40)へ高圧流体を導入すると、この高圧流体によってピストン(33)が押し動かされ、高圧流体の内部エネルギが回転軸(20)の回転動力に変換される。