次に、図面を参照して、本発明の第1〜第10の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
又、以下に示す第1〜第10の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る表面処理装置は、図1及び図2に示すように、誘電体からなる管状の被処理物21の一端から導入された処理ガスを排気し、被処理物21の内部のガス流の圧力を処理圧力に設定するために、被処理物21の他端に設けられた真空ポンプ32と、被処理物21の一端側に配置され、放電開始初期にガス流に初期プラズマを供給する励起粒子供給系(16,17,18)と、被処理物21を挟むように互いに対峙して配置され、平行平板電極を構成する第1主電極(陽極)11及び第2主電極(陰極)12と、初期プラズマを維持し、被処理物21の内部にプラズマ流を形成する電気パルス(主パルス)を第1主電極11及び第2主電極12間に印加するパルス電源14とを備える。
図1及び図2では、下側に記載した第2主電極(陰極)12を接地して陰極とし、上側に記載した第1主電極(陽極)11を陽極として高圧を印加した状態として例示している。但し、図面は模式的なものであり、図の上下関係、左右関係は任意に選択して表現することが可能である。例えば、下側に記載した第2主電極12を陽極、上側に記載した第1主電極11を陰極とするような表示も理論上可能である。第2主電極12を接地したまま、単純に電源の出力パルスの極性を反転すれば、第1主電極11を陰極にすることができる。 又、電源の出力パルスを反転せずに,第1主電極11を接地し、 第2主電極12に高圧を印加すれば,第1主電極11を陰極とすることができる。
第1の実施の形態に係る表面処理装置において、管状の被処理物21としては、長さ4〜7m以上の長尺、且つ内径7〜5mm以下の細管でも処理可能であるが、長さ4m以下、内径7mm以上であっても処理可能であることは、以下の説明から理解できるであろう。特に、非特許文献1に記載されているマイクロプラズマジェットの長さは、高々数cmであるので、長さ10cm程度でも、第1の実施の形態に係る表面処理装置は非特許文献1に記載されている方法に比して十分有利な効果を奏することが可能である。即ち、非特許文献1に記載されている技術を鑑みれば、プラズマの分野では、内径7〜5mm以下であれば、10cm程度以上の長さの被処理物21を「長尺細管」と定義できる。尚、被処理物21の断面形状は円形に限定されるものではなく、矩形を含む多角形等でも構わないが、長尺細管の場合には、工業的には、円形断面の場合が多いであろう。尚、「長尺細管」の代表的なものとしては内視鏡(ファイバースコープ)のような医療機器があるが、他にも自動販売機等に用いられている飲料水を通す細管等、種々の細管が含まれる。
被処理物21が内径数mm程度以下,長さ数m程度以上のフレキシブルな長尺細管であり、しかも被処理物21の長さが既知(一定)である場合は、図3に示すように、陰極として用いている第2主電極12の上に、高純度石英ガラス等の第2主電極被覆絶縁膜23を設け、この第2主電極被覆絶縁膜23の上面に図3(a)に示すような蛇行した被処理物ガイド溝22を設けておいても良い。即ち、図3(b)に示すように、この蛇行した被処理物ガイド溝22に、フレキシブルな被処理物21を1カ所若しくは長さに応じて複数箇所で折り曲げて埋め込むように収納すれば良い。図3(a)に示す蛇行した被処理物ガイド溝22は、被処理物21の長さに応じて設計すれば良いので、医療器具等の場合のように、被処理物21の長さが複数規定されていれば、それぞれの長さに合わせて、被処理物ガイド溝22を有する第2主電極被覆絶縁膜23を用意すれば良い。もっとも、図3に示す被処理物ガイド溝22は一例であり、平坦な第2主電極被覆絶縁膜23の上面に被処理物21を複数箇所で固定するフック構造等の凸部を設けた構造やねじ止め構造等、種々の構造が採用可能である。
被処理物21がフレキシブルな長尺細管であれば、図3に示す構造ではなく、被処理物21の一端及び他端に、被処理物21を巻き込む第1及び第2のリールを設け、第1のリールから被処理物21を巻き戻し、第2のリールで被処理物21を巻き上げて順次、部分的に被処理物21の内部の表面処理をするようにしても良い。したがって、図1では、あたかも被処理物21の全長と第1主電極11及び第2主電極12の長さがほぼ等しいかのように図示しているが、被処理物21の可とう性、屈曲性や伸縮性等の材料的な性質に応じて、被処理物21の全長と第1主電極11及び第2主電極12の長さとの関係は任意に設計可能である。
励起粒子供給系(16,17,18)は、被処理物21の上流側を挟むように互いに対峙して配置され、平行平板電極を構成する第1補助電極17及び第2補助電極18と、初期プラズマを引き起こす電気パルス(補助パルス)を第1補助電極17及び第2補助電極18間に印加する補助パルス電源16とを備える。励起粒子供給系(16,17,18)は、放電開始電圧を低下させ,被処理物21内でのプラズマ生成を容易にするために初期プラズマを供給するものである。励起粒子供給系(16,17,18)で生成されたプラズマや荷電粒子等が,拡散及び処理ガスの流れにより被処理物21内に到達するだけではなく,励起粒子供給系(16,17,18)で生成されたプラズマからの放射が被処理物21内の中性粒子を光電離することも期待できる。一旦,被処理物21内でプラズマが生成され,荷電粒子の密度が十分大きければ,被処理物21内の電界だけで放電が実現され、プラズマを維持できる。この状況では,励起粒子供給系(16,17,18)は、もはや必要とされない。したがって,励起粒子供給系(16,17,18)はプラズマ生成開始時にだけ使用すれば良い。
尚、励起粒子供給系は、放電開始初期にガス流に初期プラズマを供給することができれば良いので、必ずしも、図1に例示したような平行平板電極構造に限定されるものではなく、インダクティブなプラズマ源等他の構造で初期プラズマを励起しても構わない。
初期プラズマの励起後、図1に示す表面処理装置は、放電で発生したプラズマに含まれるラジカルにより、被処理物21の内面を処理する。第1の実施の形態に係る表面処理装置においては、被処理物21には上流から処理ガスとして高純度窒素ガスが供給されるが、「処理ガス」は必ずしも窒素ガスに限定されるものではない。例えば、被処理物21の内面の殺菌、滅菌等の目的のためには、塩素(Cl2)若しくは塩素を含む化合物のガス、より一般的にはハロゲン系の化合物ガス等の種々の活性なガス若しくは、これらの活性なガスのいずれかと窒素ガスの混合ガス等他のガスでも構わない。この他のガスには、その表面処理の目的に応じて、酸素(O2)若しくは酸素を含む化合物のガス等でも良い。処理ガスの純度や露点等は、表面処理の目的に応じて適宜選択すれば良い。
第1の実施の形態に係る表面処理装置においては、図1に示すように、被処理物21には上流から処理ガスが供給され,下流に設けられた真空ポンプ32により,処理ガスが被処理物21内を流れると共に,被処理物21内は大気圧以下の処理圧力に保たれる。このため、図1では図示を省略しているが、詳細には圧力計及び排気コンダクタンスを調整するバリアブルコンダクタンスバルブ等を設ければ良いことは、当業者に容易に理解できるであろう。例えば、圧力計及び流量を制御するマスフローコントローラを図2に示す吸気アダプタ24に設け、排気コンダクタンスを調整するバリアブルコンダクタンスバルブを図2に示す排気アダプタ28に設けるようにしても良い。又、圧力計を排気アダプタ28側に設けても良い。
尚、図2に示す吸気アダプタ24は、図示を省略したガスボンベ等の処理ガスの供給源と被処理物21の一端とを真空機密性を維持して接続する接続継ぎ手等の配管である。又、排気アダプタ28は、図1に示す真空ポンプ32と被処理物21の他端とを真空機密性を維持して接続する接続継ぎ手等の配管である。吸気アダプタ24及び排気アダプタ28は、周知のガス配管継ぎ手や真空部品等を被処理物21の材質、形状や寸法に応じて、適宜変更を加えて、設計すれば良い。
第1主電極11b及び第2主電極12間には、図4に示すような高繰り返しの高電圧パルスが印加される。図4(a)には、電気パルス(主パルス)のパルス幅として半値幅で300nsの場合を例示したが、主パルスのパルス幅としては、半値幅で50〜300ns程度が好適である。第1の実施の形態に係る表面処理装置においては、平行平板電極を構成する第1主電極11と第2主電極12間の距離を15mmとした場合、高電圧パルスの繰り返し周波数2kHz,電圧波高値24kV程度が、好適である。又,被処理物21内の圧力は約30kPa程度,窒素ガス流量は1SLM程度が好適である。高電圧パルスの繰り返し周波数2kHzの場合は、図4に示すように繰り返し周期が500μsであり、デューティ比は0.3/500=0.006となるので、高周波放電の場合のように、熱プラズマが生成されることなく、非熱平衡低温プラズマが安定且つ効率良く生成される。本発明の第1の実施の形態に係る表面処理装置においては、デューティ比を〜程度に設定できる。デューティ比が0.001以下では放電が不安定になり、デューティ比が0.02以上では、熱プラズマの影響が見えてくるので好ましくない。好ましくはデューティ比を0.003〜0.01程度にすれば良い。尚、被処理物21内に低温プラズマを生成するためには、低周波交流電界によるバリヤ放電でも可能であるが,大きな入力が期待できない。
第1の実施の形態に係る表面処理装置によれば、デューティ比を〜程度に設定できるので、非常に微細な加工をした光学系や金属を含む内視鏡のような医療器具であっても、金属部分が相当の高温に上昇し、それによって光学系に狂いが生じるなどの問題も回避できる。
平行平板電極を構成する第1主電極11と第2主電極12内に,電極面に平行に誘電体からなる被処理物21を入れた場合,誘電体の誘電率ε2が気体の誘電率ε1(比誘電率1)よりも大きければ,おおよその電界分布は図5のようになる。図5の第1主電極11と第2主電極12の中央を通る中心線の近傍(中心部)の電界強度は,図5に示すほぼ平行な直線で示すことが可能で、誘電体からなる被処理物21の内部,外部で同じになる。絶縁破壊電界は空間の大きさにも依存するので,若しくは被処理物21内外の気圧が同じであれば,被処理物21内では絶縁破壊電界が大きくなる。したがって,誘電体からなる被処理物21の内部で放電を起こさせるためには,被処理物21内部の絶縁破壊電圧を何らかの方法で下げておく必要がある。その一つの方法は,パッシェンカーブの右側領域での放電の場合に,被処理物21内部の気体圧力を下げることである。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る表面処理装置は、図6に示すように、誘電体からなる管状の被処理物21を挟むように互いに対峙して配置され、全体として平行平板電極を構成する第1主電極11b及び第2主電極12と、被処理物21の外面を含む密閉空間にファインストリーマ放電を引き起こす電気パルス(主パルス)を第1主電極11b及び第2主電極12間に印加するパルス電源14とを備える。「全体として平行平板電極を構成する」と記載したのは、図6に示すように、第1主電極11bが平板構造ではなく、T型の凸部が周期的に配列され、それぞれのT型の先端を放電箇所としているからである。この場合は、第1主電極11bは複数の棒状(線状)の電極を並列に周期配置した梯子型の電極に等価であるが、第1主電極11bと第2主電極12とのなす全体の構造は、おおよそ「平行平板電極」と近似することができるという意味である。
第2の実施の形態に係る表面処理装置は、管状の被処理物21の外面を囲む密閉空間を構成する処理室(23,53,54,62)と、陽極としての第1主電極11b側から処理ガスを、処理室(23,53,54,62)の内部から、陰極としての第2主電極12側に向かってシャワー状に給気し、被処理物21の他端(下流側)側近傍の処理室(23,53,54,62)から処理ガスを排気する雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)を更に備える点で、第1の実施の形態に係る表面処理装置とは異なる。尚、処理室(23,53,54,62)の排気側配管63は、図6に示す被処理物21の他端(下流側)側近傍に限定されるものではなく、処理室(23,53,54,62)の他の箇所でも構わない。雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)は、図6に示すように吸気側調整室62、吸気側調整室62に接したガス供給層65、ガス供給層65の表面に設けられ、複数のガス供給穴66bを有する第1電極(第1主電極)保護層25bを備える。ガス供給層65は、吸気側調整室62からの処理ガスを均一に分布させて透過させるように、多孔質セラミックからなる。吸気側調整室62は、扁平な直方体をなし、直方体の6面中の5面が金属で構成され、残る1面(図6の断面図において左側の面)をガス供給層65が閉じている。複数のガス供給穴66は、第1電極(第1主電極)保護層25bを貫通するテーパ状の貫通穴であり、図7に示すように、一定ピッチで2次元マトリクス状に配置されている。一方、第2電極(第2主電極)12の上に、高純度石英ガラス等の第2電極(第2主電極)被覆絶縁膜23が設けられている。
処理室(23,53,54,62)は、第2電極(第2主電極)被覆絶縁膜23と、処理室底蓋53と、処理室上蓋54と、吸気側調整室62とで直方体の4面を構成し、図6の紙面の手前と奥にそれぞれ対向配置された側板(図示省略)が直方体の残る2面を構成している。即ち、処理室上蓋54及び処理室底蓋53が、それぞれ第2電極(第2主電極)被覆絶縁膜23と吸気側調整室62と図6の紙面の手前と奥にそれぞれ対向配置された2枚の側板(図示省略)が構成する箱形の空間の上端と下端とに密着し、密閉空間を構成している。 処理室上蓋54には、被処理物21の一端(上流側)を密閉状態で保持する上部被処理物保持具52が接続され、処理室底蓋53には、被処理物21の他端(下流側)を密閉状態で保持する底部被処理物保持具51が接続されている。上部被処理物保持具52及び底部被処理物保持具51は、周知のガス配管継ぎ手や真空部品等に用いられている構造を、被処理物21の材質、形状や寸法に応じて、適宜変更を加えて、設計すれば良い。
更に、第2の実施の形態に係る表面処理装置は、図6に示すように処理ガスを収納するガスボンベ等のガス源33と、このガス源33に接続された吸気側配管61と、吸気側配管61に接続された吸気側バルブ41とを備える。吸気側バルブ41には、ガスの流量調整が容易なニードルバルブ等を採用することが好ましい。尚、図示を省略しているが、上部被処理物保持具52及び底部被処理物保持具51の少なくとも一方にガス導入用のバルブを設けても良い。
処理室(23,53,54,62)には、ガス源33から吸気側配管61、吸気側バルブ41及び吸気側調整室62を介して、雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)から処理ガスがシャワー状に均一化されて供給される。雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)から処理室(23,53,54,62)の内部に供給された処理ガスは、処理室(23,53,54,62)の排気側配管63から排気される。このため、図6に示すように、第2の実施の形態に係る表面処理装置では、管状の被処理物21の他端(下流側)側の処理室(23,53,54,62)の排気側配管63に処理室(23,53,54,62)を減圧する真空ポンプ31を備える。真空ポンプ31は、排気側配管63及び排気側バルブ42を介して、処理室(23,53,54,62)に接続されている。排気側バルブ42は、排気コンダクタンスが調整可能なバリアブルコンダクタンスバルブを用いるのが好ましい。
図6では、第2主電極12が接地され陰極として機能し、対応して第1主電極11bに高圧が印加され陽極として機能している場合を例示している。パルス電源14の極性を逆にして、第2主電極12を陽極、第1主電極11bを陰極としても良い。第1主電極11bを陰極とした場合は、第1主電極11bを板状電極として接地され、第2主電極12を梯子型電極として高圧が印加され、雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)は第2主電極12側に設けられる。
第1の実施の形態と同様に、第2の実施の形態に係る表面処理装置において、管状の被処理物21としては、長さ4〜7m以上の長尺、且つ内径7〜5mm以下の細管でも処理可能であるが、長さ4m以下、内径7mm以上であっても処理可能である。又、被処理物21の断面形状は円形に限定されるものではないことは、第1の実施の形態で説明した通りである。図示を省略しているが、被処理物21がフレキシブルな長尺細管であれば、被処理物21の一端(上流側)及び他端(下流側)に、被処理物21を巻き込む第1及び第2のリールを設け、第1のリールから被処理物21を巻き戻し、第2のリールで被処理物21を巻き上げて順次、部分的に被処理物21の外面の表面処理をするようにしても良いが、この場合は、第1及び第2のリールを処理室(23,53,54,62)の内部に収納する構造が好ましい。
第2の実施の形態に係る表面処理装置においては、雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)を介してシャワー状に供給する処理ガスとして高純度窒素ガスが供給されるが、「処理ガス」は必ずしも窒素ガスに限定されるものではない。例えば、被処理物21の外面の殺菌、滅菌等の目的のためには、ハロゲン系の化合物ガス等の種々の活性なガス若しくは、これらの活性なガスのいずれかと窒素ガスの混合ガス等、種々の他のガスが採用可能である。
第1主電極11b及び第2主電極12間には、図4に示すような高繰り返しの高電圧パルスが印加される。図4(a)には、電気パルス(主パルス)のパルス幅として半値幅で300nsの場合を例示したが、主パルスのパルス幅としては、10〜500ns程度が好適である。第2の実施の形態に係る表面処理装置においては、全体として平行平板電極を構成する第1主電極11bと第2主電極12間の距離を15mmとした場合、高電圧パルスの繰り返し周波数2kHz,電圧波高値24kV程度が、好適である。高電圧パルスの繰り返し周波数2kHzの場合は、図4に示すように繰り返し周期が500μsであり、デューティ比は0.3/500=0.006となるので、高周波放電の場合のように、熱プラズマが生成されることなく、非熱平衡低温プラズマが安定且つ効率良く生成される。パルス幅は陽極・陰極間の間隔と密接な適正関係を有する。放電電極間に電圧印加開始され、放電開始から電圧印加時間経過とともに放電はグロー放電からストリーマー放電、更にファインストリーマ放電を経てアーク放電に至る。電流と熱損失、電極磨耗を伴うアーク放電に至らずプラズマ入力パワーを最大にする放電はファインストリーマ放電と考える。そのためには適切なパルス幅が存在する。アーク放電に至る前にパルス電圧印加がなくなるよう、陽極・陰極間間隔、放電状態に合わせ設定されるのが理想的である。
被処理物21の外面を囲む密閉空間で放電を起こさせるためには,処理室(23,53,54,62)の内部の気体圧力P2を、大気圧P3=101kPaと等しいか80〜90kPa程度に大気圧P3よりも極く僅か低い値に下げるように、吸気側バルブ41及び排気側バルブ42を調整すれば良い。そして、処理室(23,53,54,62)には、ガス源33から吸気側配管61及び吸気側バルブ41を介して、雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)から処理ガスがシャワー状に供給された状態で、第1主電極11b及び第2主電極12間には、図4に示すような高繰り返しの高電圧パルスが印加すれば、ファインストリーマ放電により、非熱平衡低温プラズマが、処理室(23,53,54,62)の内部に形成され、被処理物21の外面の表面処理が達成される。
<第2の実施の形態の第1変形例>
本発明の第2の実施の形態の第1変形例に係る表面処理装置は、図8に示すように、誘電体からなる管状の被処理物21を挟むように互いに対峙して配置され、全体として平行平板電極を構成する第1主電極11c及び第2主電極12と、処理室(23,53,54,62)にファインストリーマ放電を引き起こす電気パルス(主パルス)を第1主電極11c及び第2主電極12間に印加するパルス電源14とを備える点では、図6に示す構造と同様である。「全体として平行平板電極を構成する」と記載したのは、図8に示すように、第1主電極11cが、複数の棒状(線状)の電極を並列に周期配置した梯子型構造をなしているが、第1主電極11cと第2主電極12とのなす全体の構造は、おおよそ「平行平板電極」と近似することができるという意味である。図6と同様に、処理室(23,53,54,62)は、第2電極(第2主電極)被覆絶縁膜23と、処理室底蓋53と、処理室上蓋54と、吸気側調整室62とで直方体の4面を構成し、図8の紙面の手前と奥にそれぞれ対向配置された側板(図示省略)が直方体の残る2面を構成している。
第2の実施の形態の第1変形例に係る表面処理装置は、陽極としての第1主電極11c側から処理ガスを、陰極としての第2主電極12側に向かってシャワー状に給気し、処理室(23,53,54,62)の排気側配管63から処理ガスを排気する雰囲気調整手段(62,27、66c)の構造が、図6に示す構造とは異なる。雰囲気調整手段(62,27、66c)は、図8に示すように吸気側調整室62、吸気側調整室62からの処理ガスを複数のガス供給穴66cを介して供給する処理室側壁27を備えるが、タングステン(W)、インコネル等の金属からなる棒状(線状)の第1主電極11cが複数本、放電空間に露出している点で、金属による汚染が問題となるが、金属による汚染を問題としない用途であれば、図6に示す構造よりも簡便で安価に製造できる利点がある。複数のガス供給穴66cは、処理室側壁27を貫通する貫通穴であり、図7に示したのと同様に、ファインストリーマ放電の分布に合わせて、一定ピッチで2次元マトリクス状に配置されるが、実際には、第1主電極11cの配置のピッチに合わせれば良い。一方、第2電極(第2主電極)12の上に、高純度石英ガラス等の第2電極(第2主電極)被覆絶縁膜23が設けられている。
更に、第2の実施の形態の第1変形例に係る表面処理装置は図8に示すように、処理ガスを収納するガスボンベ等のガス源33と、このガス源33に接続された吸気側配管61と、吸気側配管61に接続された吸気側バルブ41とを備える。吸気側バルブ41には、ガスの流量調整が容易なニードルバルブ等を採用することが好ましい。
処理室(23,53,54,62)には、ガス源33から吸気側配管61及び吸気側バルブ41を介して、雰囲気調整手段(62,27、66c)から処理ガスがシャワー状に均一化されて供給される。雰囲気調整手段(62,27、66c)から供給された処理ガスは、処理室(23,53,54,62)の排気側配管63から排気される。このため、図8に示すように、第2の実施の形態の第1変形例に係る表面処理装置では、管状の被処理物21の他端(下流側)側に処理室(23,53,54,62)の内部を減圧する真空ポンプ31を備える。真空ポンプ31は、排気側配管63及び排気側バルブ42を介して、処理室(23,53,54,62)に接続されている。排気側バルブ42は、排気コンダクタンスが調整可能なバリアブルコンダクタンスバルブを用いるのが好ましい。
処理室上蓋54には、管状の被処理物21の一端(上流側)を密閉状態で保持する上部被処理物保持具52が接続され、処理室底蓋53には、被処理物21の他端(下流側)を密閉状態で保持する底部被処理物保持具51が接続されている。上部被処理物保持具52及び底部被処理物保持具51は、周知のガス配管継ぎ手や真空部品等に用いられている構造を、被処理物21の材質、形状や寸法に応じて、適宜変更を加えて、設計すれば良い。
図8では、第2主電極12を接地して陰極として用い、第1主電極11cに高圧を印加して陽極として用いる場合を例示しているが、パルス電源14の極性を反転させ、第2主電極12を陽極、第1主電極11cを陰極としても良い。第1主電極11cを陰極とした場合は、第1主電極11cを板状電極として接地され、第2主電極12を梯子型電極として高圧が印加され、雰囲気調整手段(62,27、66c)は第2主電極12側に設けられる。
第1の実施の形態と同様に、第2の実施の形態の第1変形例に係る表面処理装置において、管状の被処理物21としては、長さ4〜7m以上の長尺、且つ内径7〜5mm以下の細管でも処理可能であるが、長さ4m以下、内径7mm以上であっても処理可能である。又、被処理物21の断面形状は円形に限定されるものではないことは、第1の実施の形態で説明した通りである。図示を省略しているが、被処理物21がフレキシブルな長尺細管であれば、被処理物21の一端(上流側)及び他端(下流側)に、被処理物21を巻き込む第1及び第2のリールを設け、第1のリールから被処理物21を巻き戻し、第2のリールで被処理物21を巻き上げて順次、部分的に被処理物21の外面の表面処理をするようにしても良いが、この場合は、第1及び第2のリールを処理室(23,53,54,62)の内部に収納する構造が好ましい。
第2の実施の形態の第1変形例に係る表面処理装置においては、雰囲気調整手段(62,27、66c)を介してシャワー状に供給する処理ガスとして高純度窒素ガスが供給されるが、「処理ガス」は必ずしも窒素ガスに限定されるものではない。例えば、管状の被処理物21の内面及び外面の殺菌、滅菌等の目的のためには、ハロゲン系の化合物ガス等の種々の活性なガス若しくは、これらの活性なガスのいずれかと窒素ガスの混合ガス等、種々の他のガスが採用可能である。
第1主電極11c及び第2主電極12間には、図4に示すような高繰り返しの高電圧パルスが印加される。図4(a)には、電気パルス(主パルス)のパルス幅として半値幅で300nsの場合を例示したが、主パルスのパルス幅としては、半値幅で10〜500n程度が好適である。第2の実施の形態の第1変形例に係る表面処理装置においては、全体として平行平板電極を構成する第1主電極11cと第2主電極12間の距離を15mmとした場合、高電圧パルスの繰り返し周波数2kHz,電圧波高値24kV程度が、好適である。高電圧パルスの繰り返し周波数2kHzの場合は、図4に示すように繰り返し周期が500μsであり、デューティ比は0.3/500=0.006となるので、高周波放電の場合のように、熱プラズマが生成されることなく、非熱平衡低温プラズマが安定且つ効率良く生成される。
処理室(23,53,54,62)の内部で放電を起こさせるためには,処理室(23,53,54,62)の内部の気体圧力P2を、大気圧P3=101kPaと等しいか80〜90kPa程度に大気圧P3よりも極く僅か低い値に下げるように、吸気側バルブ41及び排気側バルブ42を調整すれば良い。そして、処理室(23,53,54,62)には、ガス源33から吸気側配管61及び吸気側バルブ41を介して、雰囲気調整手段(62,27、66c)から処理ガスがシャワー状に供給された状態で、第1主電極11c及び第2主電極12間には、図4に示すような高繰り返しの高電圧パルスが印加すれば、ファインストリーマ放電により、非熱平衡低温プラズマが、処理室(23,53,54,62)の内部に形成され、被処理物21の外面の表面処理が達成される。
<第2の実施の形態の第2変形例>
本発明の第2の実施の形態の第2変形例に係る表面処理装置は、図9に示すように、誘電体からなる管状の被処理物21を挟むように互いに対峙して配置され、全体として平行平板電極を構成する第1主電極(陽極)11d及び第2主電極12と、処理室(23,53,54,62)にファインストリーマ放電を引き起こす電気パルス(主パルス)を第1主電極11d及び第2主電極12間に印加するパルス電源14とを備える点では、図6に示す構造と同様である。「全体として平行平板電極を構成する」と記載したのは、図9に示すように、第1主電極11dが平板構造ではなく、T型の凸部が周期的に配列され、それぞれのT型の先端を放電箇所としているからである。この場合は、第1主電極11dは複数の棒状(線状)の電極を並列に周期配置した梯子型の電極に等価であるが、第1主電極11dと第2主電極12とのなす全体の構造は、おおよそ「平行平板電極」と近似することができるという意味である。
第2の実施の形態の第2変形例に係る表面処理装置は、陽極としての第1主電極11d側から処理ガスを、陰極としての第2主電極12側に向かってシャワー状に給気し、処理室(23,53,54,62)の排気側配管63から処理ガスを排気する雰囲気調整手段(62,25d、66d)の構造が、図6に示す構造とは異なる。図8に示した第1変形例では、W等の金属からなる棒状(線状)の第1主電極11cが複数本、放電空間に露出している点で、金属による汚染が問題となったが、本発明の第2の実施の形態の第2変形例に係る表面処理装置では、第1主電極11cの表面をアルミナ等の第1電極(第1主電極)保護層25dが被覆しているので、金属による汚染は抑制される。このため、雰囲気調整手段(62,25d、66d)は、図9に示すように吸気側調整室62、第1電極(第1主電極)保護層25d、吸気側調整室62からの処理ガスを第1電極(第1主電極)保護層25dに設けられた複数のガス供給穴66dから構成される。複数のガス供給穴66dは、図7に示したのと同様に、ファインストリーマ放電の分布に合わせて、一定ピッチで2次元マトリクス状に配置されるが、第1主電極11cの配置のピッチに合わせれば良い。第2電極(第2主電極)12の上に、高純度石英ガラス等の第2電極(第2主電極)被覆絶縁膜23が設けられている。
他は、第2の実施の形態に係る表面処理装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る表面処理装置は、図10に示すように、誘電体からなる管状の被処理物21の一端(上流側)から導入された処理ガスを排気し、被処理物21の内部のガス流の圧力を処理圧力に設定するために、被処理物21の他端(下流側)に設けられた真空ポンプ(第1ポンプ)32と、被処理物21の一端(上流側)側に配置され、放電開始初期にガス流に初期プラズマを供給する励起粒子供給系(17,18)と、被処理物21を挟むように互いに対峙して配置され、全体として平行平板電極を構成する第1主電極11b及び第2主電極12と、初期プラズマを維持し、被処理物21の内部にプラズマ流を引き起こす電気パルス(主パルス)を第1主電極11b及び第2主電極12間に印加するパルス電源14とを備える。ここで、「全体として平行平板電極を構成する」と記載したのは、図10に示すように、第1主電極11bが平板構造ではなく、T型の凸部が周期的に配列され、それぞれのT型の先端を放電箇所としているからである。この場合は、第2の実施の形態で説明したように、第1主電極11bは複数の棒状(線状)の電極を並列に周期配置した梯子型の電極に等価とみなせるが、第1主電極11bと第2主電極12とのなす全体の構造は、おおよそ「平行平板電極」と近似することができるという意味である。
第3の実施の形態に係る表面処理装置は、第2の実施の形態に係る表面処理装置と同様に、陽極としての第1主電極11b側から処理ガスを、陰極としての第2主電極12側に向かってシャワー状に給気し、処理室(23,53,54,62)の第2排気側配管63から処理ガスを排気する雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)を更に備える点で、第1の実施の形態に係る表面処理装置とは異なる。処理室(23,53,54,62)は、第2電極(第2主電極)被覆絶縁膜23と、処理室底蓋53と、処理室上蓋54と、吸気側調整室62とで直方体の4面を構成し、図10の紙面の手前と奥にそれぞれ対向配置された側板(図示省略)が直方体の残る2面を構成している。吸気側調整室62は、扁平な直方体をなし、直方体の6面中の5面が金属で構成され、残る1面(図10の断面図において左側の面)をガス供給層65が閉じている。
雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)は、図10に示すように吸気側調整室62、吸気側調整室62からの処理ガスを均一に分布させて透過させる多孔質セラミックからなるガス供給層65、ガス供給層65の表面に設けられ、複数のガス供給穴66bを有する第1電極(第1主電極)保護層25bを備える。複数のガス供給穴66は、第1電極(第1主電極)保護層25bを貫通するテーパ状の貫通穴であり、図7に示すように、一定ピッチで2次元マトリクス状に配置されている。一方、第2電極(第2主電極)12の上に、高純度石英ガラス等の第2電極(第2主電極)被覆絶縁膜23が設けられている。
更に、第3の実施の形態に係る表面処理装置は図10に示すように、処理ガスを収納するガスボンベ等のガス源33と、このガス源33に接続された第1吸気側配管67及び第2吸気側配管61と、第1吸気側配管67に接続された第1吸気側バルブ43と、第2吸気側配管61に接続された第2吸気側バルブ41とを備える。第1吸気側バルブ43、第2吸気側バルブ41には、ガスの流量調整が容易なニードルバルブ等を採用することが好ましい。
管状の被処理物21の内部にはガス源33から第1吸気側配管67及び第1吸気側バルブ43を介して、上流側から処理ガスが供給され,下流に設けられた真空ポンプ(第2ポンプ)31により,処理ガスが被処理物21内を流れ、被処理物21内は20〜30kPa程度の大気圧に近いが、大気圧以下の処理圧力に保たれる。
一方、処理室(23,53,54,62)には、ガス源33から第2吸気側配管61及び第2吸気側バルブ41を介して、雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)から処理ガスがシャワー状に均一化されて供給される。雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)から供給された処理ガスは、処理室(23,53,54,62)の第2排気側配管63から排気される。このため、図10に示すように、第3の実施の形態に係る表面処理装置では、管状の被処理物21の他端(下流側)側に被処理物21の外面を囲む空間を減圧する第2の真空ポンプ(第2ポンプ)31を備える。第2の真空ポンプ(第2ポンプ)31は、第2排気側配管63及び第2排気側バルブ42を介して、処理室(23,53,54,62)に接続されている。一方、第1の真空ポンプ(第1ポンプ)32は、第1排気側配管68及び第1排気側バルブ44を介して、被処理物21の他端(下流側)に接続されている。第1排気側バルブ44、及び第2排気側バルブ42は、排気コンダクタンスが調整可能なバリアブルコンダクタンスバルブを用いるのが好ましい。
処理室上蓋54には、管状の被処理物21の一端(上流側)を密閉状態で保持する上部被処理物保持具52が接続され、処理室底蓋53には、被処理物21の他端(下流側)を密閉状態で保持する底部被処理物保持具51が接続されている。上部被処理物保持具52及び底部被処理物保持具51は、周知のガス配管継ぎ手や真空部品等に用いられている構造を、被処理物21の材質、形状や寸法に応じて、適宜変更を加えて、設計すれば良い。
図10では、第2主電極12を接地して陰極として用い、第1主電極11bに高圧を印加して陽極として用いた場合を例示しているが、パルス電源14の極性を反転して、第2主電極12を陽極、第1主電極11bを陰極としても良い。第1主電極11bを陰極とした場合は、第1主電極11bを板状電極の形状にして接地され、第2主電極12を梯子型電極として高圧が印加され、雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)は第2主電極12側に設けられる。
第1の実施の形態と同様に、第3の実施の形態に係る表面処理装置において、管状の被処理物21としては、長さ4〜7m以上の長尺、且つ内径7〜5mm以下の細管でも処理可能であるが、長さ4m以下、内径7mm以上であっても処理可能である。又、被処理物21の断面形状は円形に限定されるものではないことは、第1の実施の形態で説明した通りである。図示を省略しているが、被処理物21がフレキシブルな長尺細管であれば、被処理物21の一端(上流側)及び他端(下流側)に、被処理物21を巻き込む第1及び第2のリールを設け、第1のリールから被処理物21を巻き戻し、第2のリールで被処理物21を巻き上げて順次、部分的に被処理物21の内部の表面処理をするようにしても良いが、この場合は、第1及び第2のリールを処理室(23,53,54,62)の内部に収納する構造が好ましい。
励起粒子供給系(17,18)は、図10では、第1の実施の形態で説明したと同様に、被処理物21の上流側の導入配管60を挟んで平行平板電極を構成する第1補助電極17及び第2補助電極18と、初期プラズマを引き起こす電気パルス(補助パルス)を第1補助電極17及び第2補助電極18間に印加する補助パルス電源(図示省略)とを備える。導入配管60は誘電体からなる配管である。励起粒子供給系は、放電開始初期にガス流に初期プラズマを供給することができれば良いので、必ずしも、図10に例示したような平行平板電極構造に限定されるものではなく、インダクティブなプラズマ源等他の構造で初期プラズマを励起しても構わないのは、第1の実施の形態に係る表面処理装置の場合と同様である。
初期プラズマの励起後、図10に示す表面処理装置は、プラズマに含まれるラジカルにより、管状の被処理物21の内面及び外面を処理する。第3の実施の形態に係る表面処理装置においては、被処理物21には上流から処理ガスとして高純度窒素ガスが供給されるが、「処理ガス」は必ずしも窒素ガスに限定されるものではない。例えば、被処理物21の内面及び外面の殺菌、滅菌等の目的のためには、ハロゲン系の化合物ガス等の種々の活性なガス若しくは、これらの活性なガスのいずれかと窒素ガスの混合ガス等、種々の他のガスが採用可能である。
第1主電極11b及び第2主電極12間には、図4に示すような高繰り返しの高電圧パルスが印加される。図4(a)には、電気パルス(主パルス)のパルス幅として半値幅で300nsの場合を例示したが、主パルスのパルス幅としては、半値幅で10〜500ns程度が好適である。第3の実施の形態に係る表面処理装置においては、全体として平行平板電極を構成する第1主電極11bと第2主電極12間の距離を15mmとした場合、高電圧パルスの繰り返し周波数2kHz,電圧波高値24kV程度が、好適である。高電圧パルスの繰り返し周波数2kHzの場合は、図4に示すように繰り返し周期が500μsであり、デューティ比は0.3/500=0.006となるので、高周波放電の場合のように、熱プラズマが生成されることなく、非熱平衡低温プラズマが安定且つ効率良く生成される。
<3つの動作モード>
第3の実施の形態に係る表面処理装置には、3つの動作モードがある。即ち、管状の被処理物21の内部のみで放電を起こさせるモード、被処理物21の外部のみで放電を起こさせるモード、被処理物21の内部と外部の両方で放電を起こさせるモードである。
(a)被処理物21の内部のみで放電を起こさせるモード:
第1の実施の形態に係る表面処理装置において説明したように、平行平板電極を構成する第1主電極11bと第2主電極12内に,電極面に平行に誘電体からなる被処理物21を入れた場合,誘電体の誘電率ε2が気体の誘電率ε1よりも大きければ,おおよその電界分布は図5のようになり、被処理物21内では絶縁破壊電界が大きくなる。したがって,誘電体からなる被処理物21の内部で放電を起こさせるためには,被処理物21内部の気体圧力P1を10〜40kPa程度にして、被処理物21の外部の気体圧力P2よりも下げておくことが好ましい。そして、被処理物21の外部の気体圧力P2は、大気圧P3=101kPaと等しいか80〜90kPa程度に大気圧P3よりも極く僅か下げておくことが好ましい。即ち、
P1 < P2 ≦ P3 ……(1)
となるように、第1吸気側バルブ43、第2吸気側バルブ41、第1排気側バルブ44、及び第2排気側バルブ42を調整すれば良い。或いは、被処理物21内部の気体圧力P1を10〜40kPa程度にして、被処理物21の外部の気体圧力P2を10-3Pa〜10-5Pa以下の圧力として:
P2 ≪ P1 < P3 ……(2)
となるように、第1吸気側バルブ43、第2吸気側バルブ41、第1排気側バルブ44、及び第2排気側バルブ42を調整しても良い。このため、例えば、圧力計を第1排気側配管68及び第2排気側配管63に設け、帰還制御で第1吸気側バルブ43、第2吸気側バルブ41、第1排気側バルブ44、及び第2排気側バルブ42を調整するようにしても良い。或いは、第1吸気側配管67及び第2吸気側配管61に流量を制御するマスフローコントローラを設けても良い。圧力計は、第1吸気側バルブ43及び第2吸気側バルブ41のそれぞれの下流側に設けても良い。
(1)式又は(2)式で示す圧力条件に設定した後、第2吸気側バルブ41と第2排気側バルブ42を閉じ、被処理物21の外部のガス流を止め、被処理物21の内部のみにガス流を形成する。そして、励起粒子供給系(17,18)を起動して、ガス流に初期プラズマを供給し、更に、第1主電極11b及び第2主電極12間に、図4に示すような高繰り返しの高電圧パルスを印加すれば、非熱平衡低温プラズマ流が、被処理物21の内部を輸送され、被処理物21の内面の表面処理が達成される。
(b)被処理物21の外部のみで放電を起こさせるモード:
被処理物21の外部のみで放電を起こさせるためには,被処理物21内部の気体圧力P1を70〜90kPa程度の比較的高めの値に設定し、被処理物21の外部の気体圧力P2よりも極く僅か低いか、ほぼ同じ程度にしておく。そして、被処理物21の外部の気体圧力P2を、大気圧P3=101kPaと等しいか80〜90kPa程度に大気圧P3よりも極く僅か下げるようにすれば良い。即ち、
P1 ≦ P2 ≦ P3 ……(3)
となるように、第1吸気側バルブ43、第2吸気側バルブ41、第1排気側バルブ44、及び第2排気側バルブ42を調整すれば良い。但し、被処理物21内部の気体圧力P1は、必ずしも、被処理物21の外部の気体圧力P2よりも低い必要はなく、被処理物21内部の気体圧力P1を大気圧P3=101kPaとほぼ等しいか大気圧P3以上にし、且つ被処理物21の外部の気体圧力P2も大気圧P3と等しいか80〜90kPa程度に大気圧P3よりも極く僅か下げるように:
P2 ≦ P1 ≒ P3 ……(4)
P2 ≦ P3 < P1 ……(5)
としても良い。或いは、被処理物21内部の気体圧力P1を10-3Pa〜10-5Pa以下の圧力にして、被処理物21の外部の気体圧力P2を大気圧P3=101kPaと等しいか80〜90kPa程度の圧力として:
P1 ≪ P2 ≦ P3 ……(6)
となるように、第1吸気側バルブ43、第2吸気側バルブ41、第1排気側バルブ44、及び第2排気側バルブ42を調整しても良い。(3)式、(4)式、(5)式又は(6)式で示す圧力条件に設定した後、第1吸気側バルブ43及び第1排気側バルブ44を閉じ、被処理物21の内部のガス流を止める。そして、処理室(23,53,54,62)には、ガス源33から第2吸気側配管61及び第2吸気側バルブ41を介して、雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)から処理ガスがシャワー状に供給された状態で、第1主電極11b及び第2主電極12間には、図4に示すような高繰り返しの高電圧パルスを印加すれば、ファインストリーマ放電により、非熱平衡低温プラズマが、被処理物21の外部に形成され、被処理物21の外面の表面処理が達成される。被処理物21の外部のみで放電を起こさせるモードでは、励起粒子供給系(17,18)を起動しないことは勿論である。
(c)被処理物21の内部と外部の両方で放電を起こさせるモード:
被処理物21の内部と外部の両方で放電を起こさせるためには,被処理物21内部の気体圧力P1を10〜40kPa程度にして、被処理物21の外部の気体圧力P2よりも下げておくことが好ましい。そして、被処理物21の外部の気体圧力P2は、大気圧P3=101kPaと等しいか80〜90kPa程度に大気圧P3よりも極く僅か下げて、上記の(1)式で示す圧力条件になるように、第1吸気側バルブ43、第2吸気側バルブ41、第1排気側バルブ44、及び第2排気側バルブ42を調整する。
(1)式で示す圧力条件に設定した後、励起粒子供給系(17,18)を起動して、ガス流に初期プラズマを供給し、更に、第1主電極11b及び第2主電極12間には、図4に示すような高繰り返しの高電圧パルスが印加すれば、非熱平衡低温プラズマ流が、被処理物21の内部を輸送され、被処理物21の内面の表面処理が達成されると同時に、処理室(23,53,54,62)には、雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)から処理ガスがシャワー状に供給されているので、ファインストリーマ放電が生じ、非熱平衡低温プラズマが、被処理物21の外部に形成され、被処理物21の外面の表面処理も同時に達成される。
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態に係る表面処理装置は、図11に示すように、長尺細管である管状の被処理物21を収納する収納チューブ71を用意し、被処理物21の内部及び外部の両方にプラズマ流を流し、被処理物21の内面と外面とを同時に処理するようにしても良い。即ち、その他の実施の形態に係る表面処理装置は、図11に示すように、処理ガスを収納するガスボンベ等のガス源33と、このガス源33に第1吸気側配管を介して接続された第1吸気側バルブ43と、第2吸気側配管を介して接続された第2吸気側バルブ41とを備える。管状の被処理物21の内部にはガス源33から第1吸気側バルブ43を介して、上流側から処理ガスが供給され,下流に設けられた真空ポンプ(第1ポンプ)32により,処理ガスが被処理物21内を流れ、被処理物21内は20〜30kPa程度の、大気圧に近いが、大気圧以下の処理圧力に保たれる。一方、収納チューブ71により構成された処理室(23,53,54,62)には、ガス源33から第2吸気側バルブ41を介して、上流側から処理ガスが供給され,下流に設けられた真空ポンプ(第2ポンプ)31により,処理ガスが収納チューブ71内を流れ、収納チューブ71内は80〜90kPa程度の大気圧に近いが、大気圧以下の処理圧力に保たれる。
収納チューブ71と管状の被処理物21の外面との間の密閉空間を真空排気するために、収納チューブ上キャップ73及び収納チューブ底キャップ72が、それぞれ収納チューブ71の上端と下端とに密着し、2重管構造の密閉空間を構成している。
更に、管状の被処理物21を収納した収納チューブ71を挟むように互いに対峙して配置され、平行平板電極を構成する第1主電極11b及び第2主電極12と、収納チューブ71の上流側を挟んで平行平板電極を構成する第1補助電極17及び第2補助電極18とを備える。
管状の被処理物21の内部と外部の両方で放電を起こさせるためには,被処理物21内部の気体圧力P1を10〜40kPa程度にして、収納チューブ71と被処理物21の間の気体圧力P2よりも下げておくことが好ましい。そして、収納チューブ71と被処理物21の間の気体圧力P2は、大気圧P3=101kPaと等しいか80〜90kPa程度に大気圧P3よりも極く僅か下げるように、第1吸気側バルブ43、第2吸気側バルブ41、第1排気側バルブ44、及び第2排気側バルブ42を調整すれば良い。所定の圧力条件に設定した後、励起粒子供給系(17,18)を起動して、被処理物21内及び収納チューブ71と被処理物21の外面との間の密閉空間の両方のガス流に、それぞれ初期プラズマを供給し、更に、第1主電極11b及び第2主電極12間には、図4に示すような高繰り返しの高電圧パルスを印加すれば、非熱平衡低温プラズマ流が、被処理物21の内部及び外部をそれぞれ輸送され、被処理物21の内面及び外面の表面処理が同時に達成される。
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態に係る表面処理装置は、図12に示すように、誘電体からなる壺状の被処理物21の首部に首部アダプタ19が設けられ、この首部アダプタ19には首部アダプタ19を貫通する導入配管60と排気側配管68がほぼ平行に設けられている。導入配管60は誘電体からなる配管である。導入配管60から壺状の被処理物21の内部に処理ガスが導入され、排気側配管68から処理ガスが排出される。被処理物21を挟むように、平行平板電極を構成する第1主電極11及び第2主電極12とが、互いに対峙して配置されている。導入配管60の一部には、放電開始初期に、導入配管60から導入されるガス流に初期プラズマを供給する励起粒子供給系(16,17,18)が設けられている。励起粒子供給系(16,17,18)は、導入配管60の一部を挟んで平行平板電極を構成する第1補助電極17及び第2補助電極18と、初期プラズマを引き起こす電気パルス(補助パルス)を第1補助電極17及び第2補助電極18間に印加する補助パルス電源16とを備える。一方、第1主電極11及び第2主電極12のそれぞれには、励起粒子供給系(16,17,18)が生成した初期プラズマを維持し、被処理物21の内部にプラズマ流を引き起こす電気パルス(主パルス)を第1主電極11及び第2主電極12間に印加するパルス電源14が接続されている。
パルス電源14からは、第1主電極11及び第2主電極12間に、第1の実施の形態で説明したような(図4参照。)高繰り返しの高電圧パルスが印加される。図4(a)には、電気パルス(主パルス)のパルス幅として半値幅で300nsの場合を例示したが、主パルスのパルス幅としては、半値幅で10〜500ns程度が好適である。図12では、第2主電極12を接地して陰極として用い、第1主電極11に高圧を印加して陽極として用いた場合を例示しているが、パルス電源14の極性を反転して、第2主電極12を陽極、第1主電極11を陰極としても良い。
更に、第5の実施の形態に係る表面処理装置においては、導入配管60には吸気側バルブ43が接続され、この吸気側バルブ43には吸気側配管67が接続され、この吸気側配管67には、処理ガスを収納するガスボンベ等のガス源33が接続されている。吸気側バルブ43には、ガスの流量調整が容易なニードルバルブ等を採用することが好ましい。
一方、導入配管60から導入された処理ガスを排気し、被処理物21の内部のガス流の圧力を処理圧力に設定するために、排気側配管68には、排気側バルブ44を介して、真空ポンプ32が接続されている。排気側バルブ44は、排気コンダクタンスが調整可能なバリアブルコンダクタンスバルブを用いるのが好ましい。このように構成することにより、壺状の被処理物21の内部にはガス源33から吸気側配管67及び吸気側バルブ43を介して、首部に設けられた導入配管60から処理ガスが供給され,首部に設けられた排気側配管68から真空ポンプ32により,処理ガスを排気することにより、被処理物21内を20〜30kPa程度の大気圧に近いが、大気圧以下の処理圧力に保たれる。
第5の実施の形態に係る表面処理装置においては、平行平板電極を構成する第1主電極11と第2主電極12間の距離を15mmとした場合、高電圧パルスの繰り返し周波数2kHz,電圧波高値24kV程度が、好適である。高電圧パルスの繰り返し周波数2kHzの場合は、図4に示すように繰り返し周期が500μsであり、デューティ比は0.3/500=0.006となるので、高周波放電の場合のように、熱プラズマが生成されることなく、非熱平衡低温プラズマが安定且つ効率良く生成される。
第5の実施の形態に係る表面処理装置においては、被処理物21には首部から処理ガスとして高純度窒素ガスが供給されるが、「処理ガス」は必ずしも窒素ガスに限定されるものではない。例えば、被処理物21の内面の殺菌、滅菌等の目的のためには、ハロゲン系の化合物ガス等の種々の活性なガス若しくは、これらの活性なガスのいずれかと窒素ガスの混合ガス等、種々の他のガスが採用可能である。又、被処理物21の断面形状は円形に限定されるものではなく、矩形等でも良いことは、第1の実施の形態で説明した通りである。尚、第5の実施の形態における「壺状の被処理物」の概念には、図12に示すような瓶形状だけでなく、長尺細管の一方の端部を閉じた構造も含まれる。
図12においては、励起粒子供給系(16,17,18)を構成する第1補助電極17及び第2補助電極18を、排気側配管68に重ならない位置に設けた例を示したが、図13に示すように、排気側配管68と導入配管60の両方を挟む位置に第1補助電極17及び第2補助電極18を配置しても良い。更に、図14に示すように首部アダプタ19を挟む位置に第1補助電極17及び第2補助電極18を配置しても良い。更に、励起粒子供給系は、放電開始初期にガス流に初期プラズマを供給することができれば良いので、必ずしも、図12〜図14に例示したような平行平板電極構造に限定されるものではなく、インダクティブなプラズマ源等他の構造で初期プラズマを励起しても構わないのは、第1及び第3の実施の形態に係る表面処理装置の場合と同様である。
(第6の実施の形態)
本発明の第6の実施の形態に係る表面処理装置は、図15に示すように、誘電体からなり、一端(図15において上端)を封じた管状の被処理物21の他端(図15において下端)に、被処理物21の内部に処理ガスを所定の処理圧力で封入する真空マニホールド・ユニット(43,44,45,60,64,69,70)を備える。
真空マニホールド・ユニット(43,44,45,60,64,69,70)は、被処理物21の他端に接続された導入配管60と、導入配管60に接続されたマニホールドバルブ45と、マニホールドバルブ45に接続されたT型配管64と、T型配管64に接続された第1吸気側バルブ43及び第1排気側バルブ44と、第1吸気側バルブ43に接続された吸気側配管70と、第1排気側バルブ44に接続された排気側配管69とを備える。導入配管60は誘電体からなる配管である。吸気側配管70には、ガス源33が接続され、排気側配管69には、真空ポンプ30が接続されている。ガス源33は、処理ガスを収納するガスボンベ等である。第1吸気側バルブ43には、ガスの流量調整が容易なニードルバルブ等が採用可能である。
処理室(23,53,54,62)は、第2吸気側バルブ41を介して、吸気側配管70に接続され、処理室(23,53,54,62)の内部にガス源33から処理ガスが供給可能なように構成されている。ここで、処理室(23,53,54,62)は、第3の実施の形態と同様に、第2電極(第2主電極)被覆絶縁膜23と、処理室底蓋53と、処理室上蓋54と、吸気側調整室62とで直方体の4面を構成し、図15の紙面の手前と奥にそれぞれ対向配置された側板(図示省略)が直方体の残る2面を構成している。吸気側調整室62は、扁平な直方体をなし、直方体の6面中の5面が金属で構成され、残る1面(図15の断面図において左側の面)をガス供給層65が閉じている。処理室(23,53,54,62)には、第2排気側配管63が接続され、第2排気側配管63には第2排気側バルブ42が接続され、第2排気側バルブ42には、排気側配管69を介して真空ポンプ30が接続されている。第1排気側バルブ44及び第2排気側バルブ42は、排気コンダクタンスが調整可能なバリアブルコンダクタンスバルブを用いるのが好ましい。
先ず、第1吸気側バルブ43を閉じた状態で、マニホールドバルブ45と第1排気側バルブ44を開け、真空ポンプ30により被処理物21の内部を10-1Pa〜10-6Pa程度の到達圧力(バックグランド圧力)に真空排気する。到達圧力に到達後、第1排気側バルブ44を閉じ、第1吸気側バルブ43を開けることにより、管状の被処理物21の内部に、ガス源33から第1吸気側バルブ43、T型配管64、マニホールドバルブ45及び導入配管60を介して、他端側から処理ガスが供給される。被処理物21内が、20〜30kPa程度の大気圧に近いが、大気圧以下の処理圧力に到達した段階で、マニホールドバルブ45を閉じ、被処理物21の内部を処理圧力に維持する。
一方、処理室(23,53,54,62)には、ガス源33から吸気側配管70及び第2吸気側バルブ41を介して、雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)に処理ガスが一定の流量で供給される。第3の実施の形態と同様に、雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)は、図15に示すように吸気側調整室62、吸気側調整室62からの処理ガスを均一に分布させて透過させる多孔質セラミックからなるガス供給層65、ガス供給層65の表面に設けられ、複数のガス供給穴66bを有する第1電極(第1主電極)保護層25bを備える。複数のガス供給穴66は、第1電極(第1主電極)保護層25bを貫通するテーパ状の貫通穴であり、図7に示すように、一定ピッチで2次元マトリクス状に配置されている。一方、第2電極(第2主電極)12の上に、高純度石英ガラス等の第2電極(第2主電極)被覆絶縁膜23が設けられている。
このため、雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)から処理ガスがシャワー状に均一化されて処理室(23,53,54,62)の内部の被処理物21の外面を囲む空間に供給される。雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)から供給された処理ガスは、処理室(23,53,54,62)から第2排気側配管63を介して排気される。
第6の実施の形態に係る表面処理装置は、更に、被処理物21の他端側に配置され、放電開始初期に封入された処理ガスに活性粒子を注入し、プラズマを励起する励起粒子供給系(16,17,18)と、被処理物21を挟むように互いに対峙して配置され、全体として平行平板電極を構成する第1主電極11b及び第2主電極12と、活性粒子の注入より励起された初期プラズマを維持し、被処理物21の内部にプラズマ状態を引き起こす電気パルス(主パルス)を第1主電極11b及び第2主電極12間に印加するパルス電源14とを備える。ここで、「全体として平行平板電極を構成する」と記載したのは、第2及び第3の実施の形態と同様に、第1主電極11bが平板構造ではなく、T型の凸部が周期的に配列され、それぞれのT型の先端を放電箇所としているからである。この場合は、第2の実施の形態で説明したように、第1主電極11bは複数の棒状(線状)の電極を並列に周期配置した梯子型の電極に等価とみなせるが、第1主電極11bと第2主電極12とのなす全体の構造は、おおよそ「平行平板電極」と近似することができるという意味である。
処理室上蓋54には、管状の被処理物21の一端(図15において上端)側を保持する上部被処理物保持具52が接続され、処理室底蓋53には、被処理物21の他端(図15において下端)を密閉状態で保持する底部被処理物保持具51が接続されている。底部被処理物保持具51は、周知のガス配管継ぎ手や真空部品等に用いられている構造を、被処理物21の材質、形状や寸法に応じて、適宜変更を加えて、設計すれば良い。
図15では、第2主電極12を接地して陰極として用い、第1主電極11bに高圧を印加して陽極として用いた場合を例示しているが、パルス電源14の極性を反転して、第2主電極12を陽極、第1主電極11bを陰極としても良い。第1主電極11bを陰極とした場合は、第1主電極11bを板状電極の形状にして接地され、第2主電極12を梯子型電極として高圧が印加され、雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)は第2主電極12側に設けられる。被処理物21の断面形状は円形に限定されるものではないことは、第1及び第3の実施の形態で説明した通りである
励起粒子供給系(16,17,18)は、図15では、第1の実施の形態で説明したと同様に、被処理物21の導入配管60を挟んで平行平板電極を構成する第1補助電極17及び第2補助電極18と、活性粒子を励起する電気パルス(補助パルス)を第1補助電極17及び第2補助電極18間に印加する補助パルス電源(図示省略)とを備える。励起粒子供給系は、放電開始初期に封入された処理ガスに活性粒子を注入することができれば良いので、必ずしも、図15に例示したような平行平板電極構造に限定されるものではなく、インダクティブなプラズマ源等他の構造で活性粒子を励起しても構わないのは、第1の実施の形態に係る表面処理装置の場合と同様である。
活性粒子の注入による初期プラズマの励起後、図15に示す表面処理装置は、プラズマに含まれるラジカルにより、一端を封じた管状の被処理物21の内面及び外面を処理する。第6の実施の形態に係る表面処理装置においては、処理ガスとして高純度窒素ガスが供給されるが、「処理ガス」は必ずしも窒素ガスに限定されるものではない。例えば、被処理物21の内面及び外面の殺菌、滅菌等の目的のためには、ハロゲン系の化合物ガス等の種々の活性なガス若しくは、これらの活性なガスのいずれかと窒素ガスの混合ガス等、種々の他のガスが採用可能である。
第1主電極11b及び第2主電極12間には、第1の実施の形態で説明したような高繰り返しの高電圧パルスが印加される(図4参照。)。図4(a)には、電気パルス(主パルス)のパルス幅として半値幅で300nsの場合を例示したが、主パルスのパルス幅としては、半値幅で50〜300ns程度が好適である。第6の実施の形態に係る表面処理装置においては、全体として平行平板電極を構成する第1主電極11bと第2主電極12間の距離を15mmとした場合、高電圧パルスの繰り返し周波数2kHz,電圧波高値24kV程度が、好適である。高電圧パルスの繰り返し周波数2kHzの場合は、図4に示すように繰り返し周期が500μsであり、デューティ比は0.3/500=0.006となるので、高周波放電の場合のように、熱プラズマが生成されることなく、非熱平衡低温プラズマが安定且つ効率良く生成される。
第6の実施の形態に係る表面処理装置においても、第3の実施の形態で説明した3つの動作モードがある。即ち、一端を封じた管状の被処理物21の内部のみで放電を起こさせるモード、被処理物21の外部のみで放電を起こさせるモード、被処理物21の内部と外部の両方で放電を起こさせるモードであるが、第3の実施の形態と同様に、(1)式〜(6)式で示す圧力条件により、それらのモードが制御できる。その内容は、第3の実施の形態での説明と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
(第7の実施の形態)
図16及び図17は、互いに直交する方向から見た断面図である。本発明の第7の実施の形態に係る表面処理装置は、図16及び図17に示すように、誘電体からなり、下流側の分岐部10において分岐を有する管状の被処理物21の一端(上流側)から供給された処理ガスを排気し、被処理物21の内部のガス流の圧力を処理圧力に設定するために、被処理物21の他端(下流側)に設けられた真空ポンプ(第1ポンプ)32と、被処理物21の一端(上流側)側に配置され、放電開始初期にガス流に初期プラズマを供給する励起粒子供給系(17,18)と、被処理物21を挟むように互いに対峙して配置され、全体として平行平板電極を構成する第1主電極11b及び第2主電極12と、初期プラズマを維持し、被処理物21の内部にプラズマ流を引き起こす電気パルス(主パルス)を第1主電極11b及び第2主電極12間に印加するパルス電源14とを備える。「分岐を有する管状の被処理物」の例としては、内視鏡が挙げられる。ここで、「全体として平行平板電極を構成する」と記載したのは、第2、第3、第6の実施の形態と同様に、第1主電極11bが平板構造ではなく、T型の凸部が周期的に配列され、それぞれのT型の先端を放電箇所としているが、全体の構造は、おおよそ「平行平板電極」と近似することができるという意味である。
第7の実施の形態に係る表面処理装置は、第2、第3、第6の実施の形態に係る表面処理装置と同様に、陽極としての第1主電極11b側から処理ガスを、陰極としての第2主電極12側に向かってシャワー状に給気し、処理室(23,53,54,62)の第2排気側配管63から処理ガスを排気する雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)を更に備える。処理室(23,53,54,62)は、第2電極(第2主電極)被覆絶縁膜23と、処理室底蓋53と、処理室上蓋54と、吸気側調整室62とで直方体の4面を構成し、図16の紙面の手前と奥にそれぞれ対向配置された側板(図示省略)が直方体の残る2面を構成している。吸気側調整室62は、扁平な直方体をなし、直方体の6面中の5面が金属で構成され、残る1面(図16の断面図において左側の面)をガス供給層65が閉じている。
処理室上蓋54には、分岐を有する管状の被処理物21の一端(上流側)を密閉状態で保持する上部被処理物保持具52が設けられている。一方、処理室底蓋53には、図17に示すように被処理物21の他端(下流側)を密閉状態で保持する底部被処理物保持具81と、被処理物21の分岐部10において分岐した分岐管21bの端部を密閉状態で保持する分岐管端部保持具82が設けられている。上部被処理物保持具52、底部被処理物保持具81及び分岐管端部保持具82は、周知のガス配管継ぎ手や真空部品等に用いられている構造を、被処理物21の材質、形状や寸法に応じて、適宜変更を加えて、設計すれば良い。底部被処理物保持具81には第1排気側配管68が接続され、分岐管端部保持具82には第1排気側配管68から分岐した分岐排気配管68bが接続されている。そして第1排気側配管68の下流側に、第1排気側バルブ44を介して、第1の真空ポンプ(第1ポンプ)32が接続されている。このような構成により、第1の真空ポンプ(第1ポンプ)32は、第1排気側配管68、分岐排気配管68b及び第1排気側バルブ44を介して、被処理物21の内部を真空排気することが可能である。
雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)は、図16に示すように吸気側調整室62、吸気側調整室62からの処理ガスを均一に分布させて透過させる多孔質セラミックからなるガス供給層65、ガス供給層65の表面に設けられ、複数のガス供給穴66bを有する第1電極(第1主電極)保護層25bを備える。複数のガス供給穴66は、第1電極(第1主電極)保護層25bを貫通するテーパ状の貫通穴であり、第2の実施の形態と同様に、一定ピッチで2次元マトリクス状に配置されている(図7参照。)。一方、第2電極(第2主電極)12の上に、高純度石英ガラス等の第2電極(第2主電極)被覆絶縁膜23が設けられている。
更に、第7の実施の形態に係る表面処理装置は図16に示すように、処理ガスを収納するガスボンベ等のガス源33と、このガス源33に接続された第1吸気側配管67及び第2吸気側配管61と、第1吸気側配管67に接続された第1吸気側バルブ43と、第2吸気側配管61に接続された第2吸気側バルブ41とを備える。第1吸気側バルブ43、第2吸気側バルブ41には、ガスの流量調整が容易なニードルバルブ等を採用することが好ましい。
分岐を有する管状の被処理物21の内部にはガス源33から第1吸気側配管67及び第1吸気側バルブ43を介して、上流側から処理ガスが供給され,下流に設けられた真空ポンプ(第2ポンプ)31により,処理ガスが被処理物21内を流れ、被処理物21内は20〜30kPa程度の大気圧に近いが、大気圧以下の処理圧力に保たれる。
一方、処理室(23,53,54,62)には、ガス源33から第2吸気側配管61及び第2吸気側バルブ41を介して、雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)から処理ガスがシャワー状に均一化されて供給される。雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)から供給された処理ガスは、処理室(23,53,54,62)の第2排気側配管63から排気される。このため、図16及び図17に示すように、第7の実施の形態に係る表面処理装置では、第2排気側配管63に被処理物21の外面を囲む空間を減圧する第2の真空ポンプ(第2ポンプ)31が接続されている。第2の真空ポンプ(第2ポンプ)31は、第2排気側配管63及び第2排気側バルブ42を介して、処理室(23,53,54,62)に接続されている。第1排気側バルブ44、及び第2排気側バルブ42は、排気コンダクタンスが調整可能なバリアブルコンダクタンスバルブを用いるのが好ましい。
図16では、第2主電極12を接地して陰極として用い、第1主電極11bに高圧を印加して陽極として用いた場合を例示しているが、パルス電源14の極性を反転して、第2主電極12を陽極、第1主電極11bを陰極としても良い。第1主電極11bを陰極とした場合は、第1主電極11bを板状電極の形状にして接地され、第2主電極12を梯子型電極として高圧が印加され、雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)は第2主電極12側に設けられる。
第1の実施の形態と同様に、第7の実施の形態に係る表面処理装置において、分岐を有する管状の被処理物21としては、分岐以外の管状部分(幹部)の長さが4〜7m以上の長尺、且つ内径7〜5mm以下の細管でも処理可能であるが、幹部の長さが4m以下、内径7mm以上であっても処理可能である。又、被処理物21の断面形状は、分岐をなす管部及び幹部のいずれも、円形に限定されるものではないことは、第1の実施の形態で説明した通りである。
励起粒子供給系(17,18)は、図16及び図17では、第1の実施の形態で説明したと同様に、被処理物21の上流側の導入配管60を挟んで平行平板電極を構成する第1補助電極17及び第2補助電極18と、初期プラズマを引き起こす電気パルス(補助パルス)を第1補助電極17及び第2補助電極18間に印加する補助パルス電源(図示省略)とを備える。導入配管60は誘電体からなる配管である。励起粒子供給系は、放電開始初期にガス流に初期プラズマを供給することができれば良いので、必ずしも、図16及び図17に例示したような平行平板電極構造に限定されるものではなく、インダクティブなプラズマ源等他の構造で初期プラズマを励起しても構わないのは、第1の実施の形態に係る表面処理装置の場合と同様である。
初期プラズマの励起後、図16及び図17に示す表面処理装置は、プラズマに含まれるラジカルにより、分岐を有する管状の被処理物21の内面及び外面を処理する。第7の実施の形態に係る表面処理装置においては、被処理物21には上流から処理ガスとして高純度窒素ガスが供給されるが、「処理ガス」は必ずしも窒素ガスに限定されるものではない。例えば、被処理物21の内面及び外面の殺菌、滅菌等の目的のためには、ハロゲン系の化合物ガス等の種々の活性なガス若しくは、これらの活性なガスのいずれかと窒素ガスの混合ガス等、種々の他のガスが採用可能である。
第1主電極11b及び第2主電極12間には、第1の実施の形態で説明したような高繰り返しの高電圧パルスが印加される(図4参照。)。第7の実施の形態に係る表面処理装置においては、全体として平行平板電極を構成する第1主電極11bと第2主電極12間の距離を15mmとした場合、高電圧パルスの繰り返し周波数2kHz,電圧波高値24kV程度が、好適である。高電圧パルスの繰り返し周波数2kHzの場合は、繰り返し周期が500μsであり、デューティ比は0.3/500=0.006となる。このため、高周波放電の場合のように、熱プラズマが生成されることなく、非熱平衡低温プラズマが安定且つ効率良く生成される。
第7の実施の形態に係る表面処理装置においても、第3の実施の形態で説明した3つの動作モードがある。即ち、分岐を有する管状の被処理物21の内部のみで放電を起こさせるモード、被処理物21の外部のみで放電を起こさせるモード、被処理物21の内部と外部の両方で放電を起こさせるモードであるが、第3の実施の形態と同様に、(1)式〜(6)式で示す圧力条件により、それらのモードが制御できる。その内容は、第3の実施の形態での説明と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
(第8の実施の形態)
図18及び図19は、互いに直交する方向から見た断面図である。本発明の第8の実施の形態に係る表面処理装置は、図18及び図19に示すように、誘電体からなり、上流側の分岐部9においてほぼ直線状の幹部と分岐管とが合流する管状の被処理物21の上流側から供給された処理ガスを排気し、被処理物21の内部のガス流の圧力を処理圧力に設定するために、被処理物21の下流側に設けられた真空ポンプ(第1ポンプ)32と、被処理物21の上流側側に配置され、放電開始初期にガス流に励起粒子を供給する励起粒子供給系(85,91,92,93)と、被処理物21を挟むように互いに対峙して配置され、全体として平行平板電極を構成する第1主電極11b及び第2主電極12と、励起粒子により生成された初期プラズマを維持し、被処理物21の内部にプラズマ流を引き起こす電気パルス(主パルス)を第1主電極11b及び第2主電極12間に印加するパルス電源14とを備える。「分岐を有する管状の被処理物」の例としては、第7の実施の形態で述べた内視鏡が該当するが、丁度、第7の実施の形態の内視鏡の上流側と下流側を逆にしたトポロジーに対応する。ここで、「全体として平行平板電極を構成する」と記載したのは、第2、第3、第6、第7の実施の形態と同様に、第1主電極11bが平板構造ではなく、T型の凸部が周期的に配列され、それぞれのT型の先端を放電箇所としているが、全体の構造は、おおよそ「平行平板電極」と近似することができるという意味である。
励起粒子供給系(85,91,92,93)は、例えば、図18及び図19に示すように、励起粒子生成室85と、この励起粒子生成室85に設けられた第1反射鏡92及び第2反射鏡93と紫外線照射手段91とを備える。第1反射鏡92は一部に紫外線を照射するための貫通孔を有する穴あきの凹面鏡である。第2反射鏡93も凹面鏡であり、第1反射鏡92と第2反射鏡93とを対向配置することにより、第1反射鏡92の貫通孔から導入された紫外線が、第1反射鏡92と第2反射鏡93との間で多重反射して、励起粒子生成室85に供給された処理ガスを励起し、励起粒子を生成する。紫外線照射手段91としては、GaN系化合物半導体、ZnSe系化合物半導体、ZnO系化合物半導体、SiC系化合物半導体等のワイドバンドギャップ半導体を用いた半導体レーザや発光ダイオード等の半導体発光素子が小型化のためには好ましい。しかし、エキシマレーザ等の紫外線を発光するガスレーザでも良く、その他固体レーザでも良い。エキシマレーザ等のガスレーザ等の大型の紫外線照射手段91を用いる場合は、紫外線照射手段91を、励起粒子生成室85の外部に配置し、サファイア等の紫外線を透過する窓材を介して、励起粒子生成室85の内部に紫外線を導入するようにすれば良い。このようにしても、励起粒子生成室85の外部に配置された紫外線照射手段91からの紫外線が第1反射鏡92の貫通孔から、第1反射鏡92と第2反射鏡93との間に導入され、第1反射鏡92と第2反射鏡93との間で多重反射して、処理ガスを励起することができる。
第8の実施の形態に係る表面処理装置は、第2、第3、第6、第7の実施の形態に係る表面処理装置と同様に、陽極としての第1主電極11b側から処理ガスを、陰極としての第2主電極12側に向かってシャワー状に給気し、処理室(23,53,54,62)の第2排気側配管63から処理ガスを排気する雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)を更に備える。処理室(23,53,54,62)は、第2電極(第2主電極)被覆絶縁膜23と、処理室底蓋53と、処理室上蓋54と、吸気側調整室62とで直方体の4面を構成し、図18の紙面の手前と奥にそれぞれ対向配置された側板(図示省略)が直方体の残る2面を構成している。吸気側調整室62は、扁平な直方体をなし、直方体の6面中の5面が金属で構成され、残る1面(図18の断面図において左側の面)をガス供給層65が閉じている。
図19に示すように、処理室上蓋54には、被処理物21の幹部の一端(上流側)を密閉状態で保持する上部被処理物保持具83と、分岐部9において幹部から分岐した分岐管21bの端部を密閉状態で保持する分岐管端部保持具84が設けられている。上部被処理物保持具83と分岐管端部保持具84とは、励起粒子供給系(85,91,92,93)を構成する励起粒子生成室85の底部に開口を設けるようにして、励起粒子生成室85に接続されている。一方、処理室底蓋53には、図19に示すように被処理物21の他端(下流側)を密閉状態で保持する底部被処理物保持具51が設けられている。上部被処理物保持具83、分岐管端部保持具84及び底部被処理物保持具51は、周知のガス配管継ぎ手や真空部品等に用いられている構造を、被処理物21の材質、形状や寸法に応じて、適宜変更を加えて、設計すれば良い。底部被処理物保持具51には第1排気側配管68が接続されている。
そして第1排気側配管68の下流側に、第1排気側バルブ44を介して第1の真空ポンプ(第1ポンプ)32が接続されている。このような構成により、第1の真空ポンプ(第1ポンプ)32は、第1排気側配管68及び第1排気側バルブ44を介して、被処理物21の内部を真空排気することが可能である。
雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)は、図18に示すように吸気側調整室62、吸気側調整室62からの処理ガスを均一に分布させて透過させる多孔質セラミックからなるガス供給層65、ガス供給層65の表面に設けられ、複数のガス供給穴66bを有する第1電極(第1主電極)保護層25bを備える。複数のガス供給穴66は、第1電極(第1主電極)保護層25bを貫通するテーパ状の貫通穴であり、第2の実施の形態と同様に、一定ピッチで2次元マトリクス状に配置されている(図7参照。)。一方、第2電極(第2主電極)12の上に、高純度石英ガラス等の第2電極(第2主電極)被覆絶縁膜23が設けられている。
更に、第8の実施の形態に係る表面処理装置は図18に示すように、処理ガスを収納するガスボンベ等のガス源33と、このガス源33に接続された第1吸気側配管67及び第2吸気側配管61と、第1吸気側配管67に接続された第1吸気側バルブ43と、第2吸気側配管61に接続された第2吸気側バルブ41とを備える。第1吸気側バルブ43、第2吸気側バルブ41には、ガスの流量調整が容易なニードルバルブ等を採用することが好ましい。第1吸気側バルブ43は、導入配管60に接続され、導入配管60は励起粒子生成室85の天井部に接続されている。第8の実施の形態に係る表面処理装置においては、導入配管60は必ずしも誘電体からなる配管である必要はない。
励起粒子生成室85の内部には、ガス源33から第1吸気側配管67、第1吸気側バルブ43及び導入配管60を介して、上流側から処理ガスが供給される。励起粒子生成室85の内部に供給された処理ガスは、励起粒子生成室85の底部に設けられた上部被処理物保持具83と分岐管端部保持具84の開口を介して、それぞれ被処理物21の幹部及び分岐管21bに供給される。この際、励起粒子生成室85の内部では、励起粒子が生成され、生成された励起粒子は、処理ガスとともに励起粒子生成室85の底部の上部被処理物保持具83と分岐管端部保持具84とを介して、それぞれ被処理物21の幹部及び分岐管21bに注入され、被処理物21の幹部の内部及び分岐管21bの内部に初期プラズマを生成する。被処理物21の幹部及び分岐管21bに供給された処理ガスは、分岐部9において合流後、被処理物21の下流に設けられた真空ポンプ(第2ポンプ)31により排気され、被処理物21内は20〜30kPa程度の大気圧に近いが、大気圧以下の処理圧力に保たれる。
一方、処理室(23,53,54,62)には、ガス源33から第2吸気側配管61及び第2吸気側バルブ41を介して、雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)から処理ガスがシャワー状に均一化されて供給される。雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)から供給された処理ガスは、処理室(23,53,54,62)の第2排気側配管63から排気される。このため、図18及び図19に示すように、第8の実施の形態に係る表面処理装置では、第2排気側配管63に被処理物21の外面を囲む空間を減圧する第2の真空ポンプ(第2ポンプ)31が接続されている。第2の真空ポンプ(第2ポンプ)31は、第2排気側配管63及び第2排気側バルブ42を介して、処理室(23,53,54,62)に接続されている。第1排気側バルブ44、及び第2排気側バルブ42は、排気コンダクタンスが調整可能なバリアブルコンダクタンスバルブを用いるのが好ましい。
図18では、第2主電極12を接地して陰極として用い、第1主電極11bに高圧を印加して陽極として用いた場合を例示しているが、パルス電源14の極性を反転して、第2主電極12を陽極、第1主電極11bを陰極としても良い。第1主電極11bを陰極とした場合は、第1主電極11bを板状電極の形状にして接地され、第2主電極12を梯子型電極として高圧が印加され、雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)は第2主電極12側に設けられる。
第1の実施の形態と同様に、第8の実施の形態に係る表面処理装置において、分岐を有する管状の被処理物21としては、分岐以外の管状部分(幹部)の長さが4〜7m以上の長尺、且つ内径7〜5mm以下の細管でも処理可能であるが、幹部の長さが4m以下、内径7mm以上であっても処理可能である。又、被処理物21の断面形状は、分岐をなす管部及び幹部のいずれも、円形に限定されるものではないことは、第1の実施の形態で説明した通りである。
初期プラズマの励起後、図18及び図19に示す表面処理装置は、分岐を有する管状の被処理物21の内部を一定流量で流れるプラズマに含まれるラジカルにより、その内面が処理される。又、被処理物の外部で生成されたプラズマに含まれるラジカルにより、分岐を有する管状の被処理物21の外面も処理される。第8の実施の形態に係る表面処理装置においては、被処理物21の内部及び外部には処理ガスとして高純度窒素ガスが供給されるが、「処理ガス」は必ずしも窒素ガスに限定されるものではない。例えば、被処理物21の内面及び外面の殺菌、滅菌等の目的のためには、ハロゲン系の化合物ガス等の種々の活性なガス若しくは、これらの活性なガスのいずれかと窒素ガスの混合ガス等、種々の他のガスが採用可能である。
第1主電極11b及び第2主電極12間には、第1の実施の形態で説明したような高繰り返しの高電圧パルスが印加される(図4参照。)。第8の実施の形態に係る表面処理装置においては、全体として平行平板電極を構成する第1主電極11bと第2主電極12間の距離を15mmとした場合、高電圧パルスの繰り返し周波数2kHz,電圧波高値24kV程度が、好適である。高電圧パルスの繰り返し周波数2kHzの場合は、繰り返し周期が500μsであり、デューティ比は0.3/500=0.006となる。このため、高周波放電の場合のように、熱プラズマが生成されることなく、非熱平衡低温プラズマが安定且つ効率良く生成される。
第8の実施の形態に係る表面処理装置においても、第3の実施の形態で説明した3つの動作モードがある。即ち、分岐を有する管状の被処理物21の内部のみで放電を起こさせるモード、被処理物21の外部のみで放電を起こさせるモード、被処理物21の内部と外部の両方で放電を起こさせるモードであるが、第3の実施の形態と同様に、(1)式〜(6)式で示す圧力条件により、それらのモードが制御できる。その内容は、第3の実施の形態での説明と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
(第9の実施の形態)
第3、第6〜第8の実施の形態に係る表面処理装置においては、(1)式〜(6)式で示す圧力条件により、3つの動作モードを制御する例を示した。即ち、(1)式〜(6)式で示す圧力条件を選択することにより、被処理物21の内部のみで放電を起こさせるモード、被処理物21の外部のみで放電を起こさせるモード、被処理物21の内部と外部の両方で放電を起こさせるモードを決定したが、3つの動作モードの制御は、処理ガスの圧力以外のパラメータを用いても制御できる。他のパラメータの一つの例が、本発明の第9の実施の形態に係る表面処理装置において説明する処理ガスの温度である。
図20に示すように、本発明の第9の実施の形態に係る表面処理装置は、誘電体からなる管状の被処理物21の一端(上流側)から導入された処理ガスを排気し、被処理物21の内部のガス流の圧力を処理圧力に設定するために、被処理物21の他端(下流側)に設けられた真空ポンプ(第1ポンプ)32と、被処理物21の一端(上流側)側に配置され、放電開始初期にガス流に初期プラズマを供給する励起粒子供給系(17,18)と、被処理物21を挟むように互いに対峙して配置され、全体として平行平板電極を構成する第1主電極11b及び第2主電極12と、初期プラズマを維持し、被処理物21の内部にプラズマ流を引き起こす電気パルス(主パルス)を第1主電極11b及び第2主電極12間に印加するパルス電源14とを備える点では、第3の実施の形態に係る表面処理装置と同様である。又、処理ガスを収納するガスボンベ等のガス源33と、このガス源33に接続された第1吸気側配管67及び第2吸気側配管61と、第1吸気側配管67に接続された第1吸気側バルブ43と、第2吸気側配管61に接続された第2吸気側バルブ41とを備える点でも、第3の実施の形態に係る表面処理装置と同様である。
しかしながら、本発明の第9の実施の形態に係る表面処理装置は、第1吸気側バルブ43に接続される導入配管86が、図20に示すようにプレヒータ87を備える点で、第3の実施の形態に係る表面処理装置とは異なる。処理ガスの加熱効率を高めるためには、導入配管86は、図20に示すようにメアンダライン状に蛇行する等のトポロジーにより、一定の加熱距離を稼ぐようにするのが好ましい。導入配管86は、プレヒータ87が配置されている部分は、必ずしも誘電体からなる配管である必要はないが、励起粒子供給系(17,18)が配置されている箇所は、誘電体で構成される。
管状の被処理物21の内部にはガス源33から第1吸気側配管67及び第1吸気側バルブ43を介して、上流側から処理ガスが供給され,下流に設けられた真空ポンプ(第2ポンプ)31により,処理ガスが被処理物21内を流れ、被処理物21内が所定の圧力に保たれるが、3つの動作モードの内、被処理物21の内部のみで放電を起こさせるモードを選択する場合は、プレヒータ87に通電することにより、被処理物21の内部を流れる処理ガスの温度を、雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)を介して被処理物21の外部に流れる処理ガスの温度より30℃〜50℃高くすることにより、被処理物21の内部のみで放電が起こり易くすることが可能である。勿論、被処理物21の内部で放電を起こさせるためには,被処理物21内部の気体圧力P1を10〜40kPa程度にして、被処理物21の外部の気体圧力P2よりも下げておくことが好ましい。又、(1)式が示すように被処理物21の外部の気体圧力P2を、大気圧P3=101kPaと等しいか80〜90kPa程度に大気圧P3よりも極く僅か下げておくことが好ましいが、被処理物21の内部を流れる処理ガスの温度を、被処理物21の外部に流れる処理ガスの温度より30℃〜50℃高くすることにより、より安定的に且つ確実に被処理物21の内部のみで放電を起こさせるモードが選択できる。又、被処理物21内部の気体圧力P1と、被処理物21の外部の気体圧力P2が近い場合においても、被処理物21の内部のみで放電を起こさせるモードが選択できる。
処理室(23,53,54,62)や雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)の構造は、第3の実施の形態に係る表面処理装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
尚、図示を省略しているが、雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)の内部に埋込ヒータを設けて、被処理物21の外部に流れる処理ガスの温度を、被処理物21の内部を流れる処理ガスの温度より高めて、被処理物21の外部のみで放電を起こさせるモードを選択するようにもできる。
又、雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)の内部にペルティエ冷却ユニットを設けて、電子冷却(ペルティエ効果)により、被処理物21の外部に流れる処理ガスの温度を、被処理物21の内部を流れる処理ガスの温度より低くして、被処理物21の外部のみで放電を抑制し、被処理物21の内部で放電を起こさせるようにもできる。ペルティエ冷却ユニットの代わりに、冷媒ガスの配管を雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)の内部に設けて、被処理物21の外部に流れる処理ガスの温度を、被処理物21の内部を流れる処理ガスの温度より低くして、被処理物21の外部のみで放電を抑制することも可能である。
他は、第3の実施の形態に係る表面処理装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
(第10の実施の形態)
第9の実施の形態において説明したとおり、3つの動作モードの制御は、処理ガスの圧力以外のパラメータを用いても制御できる。他のパラメータの一つの例が、本発明の第9の実施の形態に係る表面処理装置において説明する処理ガスの温度であるが、放電初期に希望の放電箇所のみに放電を容易にするトリガガスを導入する方法によっても、3つの動作モードを制御することも可能である。
図21に示すように、本発明の第10の実施の形態に係る表面処理装置は、誘電体からなる管状の被処理物21の一端(上流側)から導入された処理ガスを排気し、被処理物21の内部のガス流の圧力を処理圧力に設定するために、被処理物21の他端(下流側)に設けられた真空ポンプ(第1ポンプ)32と、被処理物21の一端(上流側)側に配置され、放電開始初期にガス流に初期プラズマを供給する励起粒子供給系(17,18)と、被処理物21を挟むように互いに対峙して配置され、全体として平行平板電極を構成する第1主電極11b及び第2主電極12と、初期プラズマを維持し、被処理物21の内部にプラズマ流を引き起こす電気パルス(主パルス)を第1主電極11b及び第2主電極12間に印加するパルス電源14とを備える点、或いは、処理ガスを収納するガスボンベ等のガス源33と、このガス源33に接続された第1吸気側配管67c及び第2吸気側配管61cと、第1吸気側配管67cに接続された第1吸気側バルブ43cと、第2吸気側配管61cに接続された第2吸気側バルブ41cとを備える点では、第3の実施の形態に係る表面処理装置と同様である。
しかしながら、本発明の第10の実施の形態に係る表面処理装置は、第1吸気側バルブ43cにトリガガスを導入するための第1T型配管67tが接続され、第2吸気側バルブ41cにトリガガスを導入するための第2T型配管61tが接続されている点で、第3の実施の形態に係る表面処理装置とは異なる。更に、第1T型配管67tの分岐部は、第1トリガガス導入バルブ43b及び第1トリガガス導入配管67bを介して第1トリガガス源88aに接続されている。又、第2T型配管61tの分岐部は、第2トリガガス導入バルブ41b及び第2トリガガス導入配管61bを介して第2トリガガス源88bに接続されている。第1トリガガス源88a及び第2トリガガス源88bは、図21では別個のガス源として例示しているが、共通のガス源でも構わない。第1トリガガス源88a及び第2トリガガス源88bは、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等の放電が容易なガスを充填したボンベ等である。第1トリガガス導入バルブ43b及び第2トリガガス導入バルブ41bは、電磁バルブ若しくは空気圧バルブ等の応答時間(レスポンス)の速いバルブが好ましい。
更に、第1T型配管67tの下流側は、第1マニホールドバルブ43aを介して導入配管60に接続されている。導入配管60は誘電体からなる配管である。一方、第2T型配管61tの下流側は、第2マニホールドバルブ41aを介して雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)に接続されている。
管状の被処理物21の内部にはガス源33から第1吸気側配管67c、第1吸気側バルブ43c、第1T型配管67t、第1マニホールドバルブ43a及び導入配管60を介して、上流側から処理ガスが供給され,下流に設けられた真空ポンプ(第2ポンプ)31により,処理ガスが被処理物21内を流れ、被処理物21内が所定の圧力に保たれる。この際、3つの動作モードの内、被処理物21の内部のみで放電を起こさせるモードを選択する場合は、放電の初期において短時間、第1トリガガス導入バルブ43bを開放し、第1トリガガス源88aからトリガガスを流入させ、このトリガガスを第1T型配管67t、第1マニホールドバルブ43a及び導入配管60を介して、被処理物21の内部に導入することにより、被処理物21の内部のみで放電が起こり易くすることが可能である。勿論、被処理物21の内部で放電を起こさせるためには,被処理物21内部の気体圧力P1を10〜40kPa程度にして、被処理物21の外部の気体圧力P2よりも下げておくことが好ましい。又、(1)式が示すように被処理物21の外部の気体圧力P2を、大気圧P3=101kPaと等しいか80〜90kPa程度に大気圧P3よりも極く僅か下げておくことが好ましいが、トリガガスを瞬時、パルス的に導入することにより、より安定的に且つ確実に被処理物21の内部のみで放電を起こさせるモードが選択できる。又、被処理物21内部の気体圧力P1と、被処理物21の外部の気体圧力P2が近い場合においても、トリガガスを導入することにより、被処理物21の内部のみで放電を起こさせるモードが選択できる。
一方、雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)にはガス源33から第2吸気側配管61c、第2吸気側バルブ41c、第2T型配管61t、第2マニホールドバルブ41aを介して、上流側から処理ガスが供給され,下流に設けられた真空ポンプ(第2ポンプ)31により,処理ガスが処理室(23,53,54,62)内を流れ、処理室(23,53,54,62)内が所定の圧力に保たれる。この際、3つの動作モードの内、被処理物21の外部のみで放電を起こさせるモードを選択する場合は、放電の初期において短時間、第2トリガガス導入バルブ41bを開放し、第2トリガガス源88bからトリガガスを流入させ、このトリガガスを第2T型配管61t、第2マニホールドバルブ41aを介して、処理室(23,53,54,62)の内部に導入することにより、被処理物21の外部のみで放電が起こり易くすることが可能である。勿論、被処理物21の外部でのみ放電を起こさせるためには,(3)式、(4)式、(5)式又は(6)式で示す圧力条件に設定しておくことが好ましいが、トリガガスを瞬時、パルス的に導入することにより、より安定的に且つ確実に被処理物21の内部のみで放電を起こさせるモードが選択できる。又、被処理物21内部の気体圧力P1と、被処理物21の外部の気体圧力P2が近い場合においても、トリガガスを導入することにより、被処理物21の外部のみで放電を起こさせるモードが選択できる。
被処理物21の内部と外部の両方で放電を起こさせるモードについては、両方にトリガガスを流入させても良く、両方にトリガガスを流入させないようにしても良い。又、一方を放電しにくい条件にして、そこにトリガガスを流入させても良い。
他の構成、例えば、処理室(23,53,54,62)や雰囲気調整手段(62,65、66b、25b)の構造は、第3の実施の形態に係る表面処理装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1〜第10の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
例えば、第1〜第10の実施の形態で説明したそれぞれの技術的思想を互いに組み合わせることも可能である。例えば、第2の実施の形態の第1変形例で説明した第1主電極11cの構造や雰囲気調整手段(62,27、66c)の構造を、第3、第6〜第10の実施の形態に適用しても良く、第2の実施の形態の第2変形例で説明した第1主電極11dの構造や、雰囲気調整手段(62,25d、66d)の構造を第3、第6〜第10の実施の形態に適用しても良い。
又、励起粒子供給系として第1〜第7、第9〜第10の実施の形態では平行平板型の電極によるプラズマ放電の励起を、第8の実施の形態では紫外線による励起を説明したが、これらは単なる例示であり、他にも種々の初期プラズマの励起手段がある。例えば、図22に示すように一方の電極(第1補助電極)17bを帯状(扁平なリング状)に導入配管60の外部を周回させ、他方の電極(第2補助電極)8をL字型の短針形状にして、導入配管60の中央部に設け、第1補助電極17bと第2補助電極8の間で放電させても良い。
或いは、図23に示すように一方の電極(第1補助電極)17aを帯状(扁平なリング状)に導入配管60の外部を周回させ、他方の電極(第2補助電極)18aを、帯状(扁平なリング状)にして導入配管60の内部を周回させ、第1補助電極17aと第2補助電極18aの間で放電させても良い。図23では電流導入端子(フィードスルー)7を用いて、補助パルス電源16からの電圧が、他方の電極(第2補助電極)18aに供給される場合を励磁しているが、電圧供給の方法は、図23の例示に限定されないことは勿論である。補助パルス電源16から電流導入端子(フィードスルー)7には外部配線67が接続され、電流導入端子(フィードスルー)7と他方の電極(第2補助電極)18aとは内部配線6cで接続されている。又、補助パルス電源16と一方の電極(第1補助電極)17aとは外部配線17aで接続されている。
又、第8の実施の形態では多重反射を用いた紫外線による励起を説明したが、必ずしも多重反射を用いる必要はなく、処理ガスの導入方向に1本の紫外線ビームを走行させる手段によっても、励起粒子を生成できる。
又、紫外線以外の放射線、例えばシンクロトロン放射による放射線を用いて励起粒子を生成しても良い。
又、第1〜第10の実施の形態では被処理物が1個の場合を例示したが、複数個の被処理物を全部挟むように、第1主電極11b及び第2主電極12を互いに対峙して配置すれば、複数の被処理物を同時に処理することも可能である。この場合、複数の被処理物の内面を処理するのであれば、それぞれの被処理物に対する処理ガスの吸気側配管(導入配管)及び排気側配管やそれに付随するバルブ類が必要なことは勿論である。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。