しかしながら、上記特許文献1に記載のナビシート用荷物保持装置では、単にナビシートのシートクッションの全面を荷物載置領域として利用するだけなので、荷物載置領域が大幅に拡大されるわけではなく未だ不十分なものであった。しかも、乗員が複数いる場合には、運転者以外の乗員はまずナビシートに着座することが多く、この場合には荷物載置領域が実質的に拡大されないことになる。
このような場合を想定して、前後2列以上のシートを有する車両において、上記荷物保持装置を後列シートに適用することも考えられるが、この場合も後列シートのシートクッションにおける荷物載置領域が後部だけから全面になるにとどまり未だ不十分であり、利便性を向上する上で車室内における荷物載置領域のさらなる拡大が望まれる。
本発明は、このような事情のもとになされたものであり、車両の制動動作時等におけるフロアへの荷物の落下を効果的に防止しつつ、荷物載置領域のさらなる拡大が可能な車室内荷物載置装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、この発明に係る車室内荷物用載置装置は、キックアップ部により後部が段上げされたフロア部の下段に配置された基準列シートと、この基準列シートの後方であって上記フロア部の上段に配設され、上記キックアップ部の前面にクッション部材が配設された後列シートとを有する車両において、上記基準列シートと後列シートとの間に略水平に延びることによりその間の空間を上下に仕切って上面に荷物を載置可能な載置部材を備え、この載置部材は、所定のシート側に格納された格納状態とこの格納状態から引き出された引出状態とに切換可能に構成されるとともに、引出状態においてその引出部分の前後両端縁がそれぞれ上記基準列シートの背面および後列シートの所定部位に対して連続ないしは略連続した状態で上記基準列シートと後列シートとの間に横架され、一方、上記格納状態において上記クッション部材によって隠蔽されることを特徴とするものである。
なお、「略水平に」とは、水平面上にある車両において載置部材の略中央部分に荷物が載置可能な程度に水平であれば足り、また上記水平面に完全に水平な場合も含む概念である。
この発明によれば、上記基準列シートと後列シートとの間に略水平に延びることによりその間の空間を上下に仕切って上面に荷物を載置可能な載置部材を備えるので、乗員が着座していないシート上だけでなく、この載置部材上にも荷物を載置することができ、これにより車室内における荷物載置領域のさらなる拡大を図ることができる。しかも、この載置部材は引出状態と格納状態とに切換可能に構成されるので、乗員が着座する場合には載置部材を所定のシート内側に格納することによりその邪魔になることもない。また、この載置部材によって基準列シートと後列シートとの間の空間を仕切っているので、この載置部材の材質等によってはその下方のフロア上に載置している靴等を隠すことができ、見栄えを向上させることができる。
ここで、この載置部材は基準列シートと後列シートとの間に略水平に延びるため、車両の制動動作時、特に急制動動作時に、後列シート上や載置部材上に載置された荷物のフロアへの落下が懸念されるが、この発明によれば、載置部材は、引出状態においてその前後両端縁がそれぞれ上記基準列シートの背面および後列シート側の所定の部位に連続ないしは略連続状態で上記基準列シートと後列シートとの間に横架されるので、後列シート上に載置されている荷物は当該シートから滑り落ちた場合でも載置部材によって支承されるとともに、載置部材上に載置されている荷物は基準列シートの背面で前方向への移動が阻止され、フロアへの落下を確実に防止することができる。
上記基準列シートおよび後列シートは、キックアップ部により後部が段上げされたフロア部の上段に配置されているとともに、上記基準列シートは当該フロア部の下段に配置されている。
すなわち、フロア部上にも例えば靴や多少汚れてもよい荷物等を載置することができるが、上記のように構成すれば、キックアップ部を有効に利用してフロアから高い位置に載置部材を配置することができ、これによりフロア部上であってこの載置部材の下方の空間を拡大させてフロア部上の荷物載置空間を拡大させることができる。しかも、荷物も高い位置でこの載置部材に支承されることになり、基準列シートからこの荷物にアクセスし易くなる。
しかも、上記後列シートは、キックアップ部の前面に配設されるクッション部材を有し、このクッション部材によって格納状態にある上記載置部材が隠蔽されるように構成されるので、クッション部材によって質感および乗員の快適性を向上させることができるとともに、このクッション部材を有効に利用して格納状態にある載置部材を隠蔽することができるので、車室内空間に与える影響を抑制しつつクッション部材を有効に利用して見栄えを向上させることができる。
上記載置部材の具体的構成は特に限定するものではなく、例えば板状、トレイ状のものを用いるものであってもよいが、上記載置部材は、ネット状部材またはシート状部材からなるとともに、格納状態で上記後列シートに巻取収納されているのが好ましい(請求項2)。
このように構成すれば、載置部材をコンパクトかつ容易に格納することができる。しかも、載置部材がネット状部材またはシート状部材からなるので、その撓みに基づいて載置部材上の荷物の移動を抑制することができ、これにより車両旋回時等に上記荷物が車幅方向に移動してフロアへ落下することを効果的に抑制することができる。
この場合、基準列シート側と後列シート側とのいずれの側から載置部材が引き出されるものであってもよいが、基準列シートの着座者における使い勝手の観点から後列シート側から引き出されるのが好ましく、この場合、例えば上記載置部材の前端部には係止部が設けられ、この係止部は上記載置部材の引出状態で上記基準列シートの背面に設けられた被係止部に着脱可能に係止されるように構成することができる(請求項3)。
上記基準列シートは、シートクッションのみから構成されるものであってもよく、この場合シートクッションの後面が上記基準列シートの背面に相当することになるが、上記基準列シートは、シートクッションとこのシートクッションの後端部から上方に立ち上がるシートバックとを有し、上記載置部材は、その引出状態で、その前端縁が上記シートバックの背面に当接しているのが好ましい(請求項4)。
このように構成すれば、引出状態において載置部材の前端縁がシートバックの背面に当接することにより当該背面に連続するように設けられるので、載置部材上に載置されている荷物のストッパとしての役目を基準列シートのシートバックが確実に果たし、当該荷物のフロアへの落下をより確実に防止することができる。
また、この発明において、上記基準列シートは車体の前後方向にスライド可能に構成され、この基準列シートのスライド移動に伴って上記載置部材の引出長さを調整する長さ調整手段が設けられているのが好ましい(請求項5)。
このように構成すれば、載置部材を引出状態にしつつ、基準列シートのスライド移動が可能となり、その利便性が向上される。
ここで、上記基準列シートおよび後列シートが車幅方向に複数個並設されている場合に、その一のシート組についてのみ載置部材が設けられているものや、隣接するシートに跨って載置部材が設けられるものであってもよいが、上記基準列シートおよび後列シートは車幅方向に複数個並設され、各シートに対応して上記載置部材が設けられているのが好ましい(請求項6)。
このように構成すれば、基準列シートおよび後列シートの組について効率的に載置部材を設けることができるとともに、基準列シートから載置部材上への荷物のアクセスがより容易になり、利便性を向上させることができる。
上記構成の車室内荷物用載置装置によれば、乗員が着座していないシート上或いはフロア上だけでなく、この載置部材上にも荷物を載置することができ、これにより車室内の荷物載置領域をさらに拡大することができるという利点がある。しかも、載置部材に対応する後列シートに乗員が着座する場合でも、当該載置部材が邪魔になることもない。また、シート上に載置されている荷物は載置部材によって支承されるとともに、載置部材上に載置されている荷物は後列シートの背面で前方向への移動が阻止され、これらの荷物のフロアへの落下を確実に防止することができる。
本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は当実施形態に係る車室内荷物用載置装置が適用される車両の概略側面図であり、図2は同装置の概略斜視図である。図3は同装置を拡大して示す側面図であり、図4は図3の中の要部を拡大して示す側面図であり、図5は同装置の平面図である。なお、当実施形態では、前後2列のそれぞれに複数のシートを有する車両において、前列の各シートと後列の各シートとの間の空間に当実施形態に係る車室内荷物用載置装置を適用した場合について説明するが、本発明の車室内荷物の載置装置は、3列以上のシートを有する車両についても適用が可能であり、要は少なくとも2列以上のシートを有する車両について、所定の基準となる列のシート(基準列シートに相当する。)と、このシートの後方に配設されているシート(後列シートに相当する)との間の空間に適用することができる。
すなわち、当実施形態の荷物載置装置1が適用される車両Sは、図1および図2に示すように、車体前後方向に延びるフロア部3と、このフロア部3の上面に配設された前後2列のシート4,5とを備える。フロア部3は、車体の前後方向に延びるフロアパネル31と、このフロアパネル31上に積層されたフロアトリム32とを備え、後部が前部に対して段上げされた状態に形成されている。
具体的には、フロアパネル31は、車体前部に配設されたフロントパネル311と、このフロントパネル311の後端縁から若干後傾状態で立ち上がるキックアップ部312と、このキックアップ部312の上端縁から後方に延びるリヤパネル313とを備える。フロントパネル311は、その前端縁が車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネル6に連設されるとともに、その前後方向略中央部の上方に前列シート4(基準列シートに相当する)が各々独立した状態で車幅方向に二つ並設されている。これらの前列シート4の後方であって、リヤパネル313の上面には、後述するシートクッション51の前端部がキックアップ部312から前方に突出した状態で後列シート5が各々独立した状態で車幅方向に二つ並設されている。このように後列シート5をキックアップ部312の上面に配設することにより、フロア部3のキックアップ部312を有効に利用して後列シート5の配設高さを確保するようになされている。また、後列シート5のシートクッション51の前端部をキックアップ部312から突出させることにより、この後列シート5に着座する乗員の脚部がキックアップ部312に接触しないようになされている。
フロアトリム32は、見栄えを向上させることを主たる目的の一つとするものであり、当実施形態ではフロアカーペットが用いられている。そして、このフロアトリム32がフロアパネル31上に積層されて接着により接合されている。なお、このフロアトリム32は、フロアカーペットだけでなく、ラバーマットや塩化ビニールマットなどのフロアマットを用いるものであってもよく、また、フェルトなどのパッド材や制振材などを積層させた複合構造とするものであってもよい。
ここで、前後列の各シート4,5について具体的に説明すると、前列シート4は、各々車幅方向に離間した状態で配設され、それぞれ、シートクッション41と、このシートクッション41の後端部から後傾状態で上方に立ち上がるシートバック42と、ヘッドレスト43とが設けられ、これらのシートクッション41、シートバック42およびヘッドレスト43はいずれも弾性芯材とこの弾性芯材を被覆するシートトリムとを有して構成されている。
また、前列シート4は、図1および図5に示すように、フロアパネル31上に固定されたシートレール部材7に沿って前後スライド移動可能に構成されている。シートレール部材7は、シートに適用される公知のレール部材であり、例えば上面が開口した断面視略C字状の溝型鋼等からなり、その内部にスライドプレート8の下端部が挿入されるとともに、このスライドプレート8の下端部に設けられ水平軸回りに回転自在に支持された左右一対のスライドローラ(図示せず)が、シートレール部材7の底部に沿って転動すること等により、スライドプレート8およびこのスライドプレート8の上端部に取り付けられた前列シート4が車体の前後方向にスライド変位されるように構成される。そして、車幅方向内方側に位置するスライドプレート8には前列シート4を所望の前後位置に係止する係止機構(図示せず)が設けられ、一方、シートレール部材7には前列シート4の前後移動を所定の位置で規制するストッパー機構71が設けられる。
一方、後列シート5は、図2および図5に明示するように、各々車幅方向に密着した状態で配設され、それぞれ、シートクッション51と、このシートクッション51の後端部から後傾状態で上方に立ち上がるシートバック52と、シートバック52の上端に取り付けられたヘッドレスト53とが設けられるとともに、このシートクッション51の前端部からキックアップ部312に沿って垂下するクッション部材54が設けられ、このクッション部材54により後列シート5の質感を向上させている。これらのシートクッション51、シートバック52、ヘッドレスト53およびクッション部材54は、図4に例示するように、柔軟な弾性芯材55と、この弾性芯材55の表面を被覆するシートトリム56とを備える。弾性芯材55は、いわゆるクッションパッドであり、柔軟でありながら一定の保形性を有するもの、例えば軟質ウレタンフォーム等の軟質合成樹脂フォーム、ゴムなどが用いられる。また、シートトリム56は、少なくとも弾性芯材55の露出表面を被覆するように設けられ、ファブリック材、皮革材、ビニールシート、フェルト材等が用いられる。
なお、当実施形態では、前後列いずれのシート4,5についてもシートクッション41,51に対するシートバック42,52の傾斜角度を倒伏状態を含めて複数段階に切換可能なリクライニング機構が設けられている。
クッション部材54は、図3および図4に示すように、所定の厚みを有し、シートクッション51に一体的に形成され、キックアップ部312から前方に突出するシートクッション51前端部の下方に配設される。このシートクッション51とクッション部材54との境界部分には、対応する弾性芯材55およびシートトリム56が切り欠かれて前後に開口するユニット収納部58が設けられている。このユニット収納部58は、載置装置1の後述するロールユニット12を収納するための空間であり、その前側の開口が後述する載置ネット11を引き出すためのネット引出口57として構成されるとともに、その後側の開口が後述するロールユニット12をキックアップ部312の前面に取り付けるためのユニット取付口59として構成されている。具体的には、シートクッション51とクッション部材54との境界部分を貫通する貫通孔が設けられることによりユニット収納部58が形成され、この貫通孔はその後方側開口部が拡開して形成され、この拡開空間にロールユニット12が収納されるように構成されている。従って、このユニット収納部58は、収納されるロールユニット12の大きさに応じて形成されるとともに、ネット引出口57は少なくとも載置ネット11の幅および厚みに応じて形成されている。なお、図例ではこのネット引出口57を強調するために通常の比率よりも大きく開口させている。
このユニット収納部58に収納されるロールユニット12を含む荷物載置用の載置装置1は、次のように構成されている。すなわち、載置装置1は、前列シート4と後列シート5との間に略水平に延びることによりその間の空間を上下に仕切って上面に荷物を載置可能な載置ネット11と、この載置ネット11の後端縁に接続されこの載置ネット11を巻き取るロールユニット12と、載置ネット11の先端縁に接続された係止バー13(係止部の一例)と、前列シート4のシートバック42の背面に設けられ係止バー13が着脱自在に係止される被係止フック14(被係止部の一例)とを備え、車幅方向に並設されたシート4,5のそれぞれに装着されている。そして、載置装置1は、そのロールユニット12が後列シート5のユニット収納部58内に収納されるので、このロールユニット12に載置ネット11が巻き取られた状態で当該載置ネット11がユニット収納部58内に格納隠蔽されるように構成されている。
具体的には、載置ネット11は、図6に実線で示すように、係止バー13がネット引出口57の開口縁に当接し載置ネット11の大部分がロールユニット12に巻き取られることにより、後列シート5のユニット収納部58に格納された格納状態と、図6に二点鎖線で示すように、この格納状態から引き出されて係止バー13が被係止フック14に引っ掛けられた引出状態とに切換可能に構成されている。この引出状態においては、載置ネット11は、当該引出部分の前端縁が係止バー13を介して前列シート4のシートバック42の背面に当接ないしは略当接した状態にあるとともに、引出部分の後端縁が後列シート5の前面に連続した状態となっている。一方、格納状態においては、載置ネット11は、ロールユニット12に巻き取られてユニット収納部58内に格納されることにより、クッション部材54によって隠蔽されることになる。
より具体的には、載置ネット11は、図2に示すように、車体前後方向に延びる帯状に形成されたネット部材であり、ナイロン等の比較的柔軟でかつ強靱な素材により構成され、上面に手荷物等を載置し得る強度に設定されている。つまり、この載置ネット11は、巻取可能に構成されるとともに、上面に手荷物等を載置可能に構成され、上面に荷物を載置した場合にはその重みによって若干撓むものとなされている。この載置ネット11は、その幅が前列シート4のシートバック42の幅に対して同等ないしは若干狭く形成されるとともに、前列シート4を最も前側にスライド移動させ、かつ、前列シート4のシートバック42を前側に倒伏させた状態で、この前列シート4のシートバック42の背面に設けられた被係止フック14に、ロールユニット12から引き出された載置ネット11先端の係止バー13が掛止し得るようにその長さが設定されている。なお、載置ネット11の長さは、これに限定されるものではないが、載置ネット11による荷物載置領域を最大限拡大するには、その長さが上記のように設定されるのが好ましい。
ロールユニット12は、図4に明示するように、載置ネット11を巻き取る巻取軸部121と、この巻取軸部121を車幅方向に延びる水平軸回りに回転自在に支持する支持ブラケット122と、載置ネット11を巻き取る方向に巻取軸部121を付勢する渦巻きばね等の巻取付勢部(図示せず)とを備え、この巻取付勢部が載置ネット11を巻き取る方向に巻取軸部121を付勢することにより、載置ネット11の引出長さが調整されるように構成されている。すなわち、このロールユニット12が請求項にいう長さ調整手段の一例に相当する。
このロールユニット12は、支持ブラケット122がボルトやビス等の固着具或いは溶接によってキックアップ部312の前面上部に固定されることにより後列シート5に設けられたユニット収納部58に収納されている。
具体的には、巻取軸部121は、略円形ホイール状に形成され周面に載置ネット11を巻き付けるように構成される。支持ブラケット122はキックアップ部に重合される取付プレート122aと、この取付プレート122aの車幅方向両端部から前方に突出して巻取軸部121を回転自在に支持する支持アーム122bとを有し、この取付プレート122aで、上記したようにキックアップ部312に取り付けられている。巻取付勢部は、巻取軸部121と支持ブラケット122との間、詳しくは巻取軸部121と支持アーム122bとの間に介在し、例えば渦巻きばねの一端が巻取軸部121に接続され、一方、他端部が支持ブラケット122に接続され、これにより巻取軸部121が、載置ネット11を略全て巻き取った初期状態から回転することにより蓄積される蓄勢力により巻取軸部121を載置ネット11の巻取方向に付勢するように構成される。
当実施形態では、このロールユニット12は、その渦巻きばねによる付勢力が比較的大きいものとなされ、載置ネット11の引出状態において当該載置ネット11上に手荷物等比較的軽量の荷物が載置された場合でも載置ネット11が容易に引き出されないように構成されている。従って、比較的軽量の手荷物等を載置ネット11上に載置させる場合には何らの手段を講じることなく上記構成で載置装置1を利用して手荷物等を載置させることができる。一方、このロールユニット12には、上記巻取軸部121に係合して載置ネット11の引き出しを規制するロック機構(図示せず)が設けられている。従って、このロック機構をONにして載置ネット11の引き出しを規制することにより、載置ネット11上に比較的重量のある荷物を載置することができる。
係止バー13は、図7に明示するように、載置ネット11の幅よりも長尺な円柱状部材であり、載置ネット11の前端部に車幅方向に沿って取り付けられている。この係止バー13の載置ネット11への取付構造は特に限定されるものではないが、当実施形態では、載置ネット11の前端部が係止バー13を巻き込んで折り返し縫着されることにより取り付けられている。なお、係止バー13には径方向に貫通する挿通口が設けられ、この挿通口に糸が通されて当該糸が載置ネット11に縫着されることにより、載置ネット11に対する係止バー13の回りおよび抜脱が防止されるものとなされている。
また、当実施形態では、係止バー13は、図示していないが、合成樹脂や金属等からなる芯材と、この芯材を被覆する被覆材とからなり、この被覆材について後列シート5のシートクッション51のシートトリム56と同一の素材(例えば、ファブリック素材)が用いられている。このように、被覆材についてシートトリム56と同一の素材を用いれば、見栄えを向上させることができるとともに、載置ネット11が格納状態にある場合にこの載置ネット11を含む載置装置1が装備された後列シート5に着座する乗員の違和感を軽減させることができる。
被係止フック14は、図7に明示するように、係止バー13を着脱自在に係止させるものであり、前列シート4のシートバック42背面に取り付けられている。すなわち、被係止フック14は、前列シート4のシートバック42の背面に車幅方向に沿って取り付けられたプレート部材141と、このプレート部材141の左右両端部に後方に向かって突設された左右一対のフック本体142とを備え、このフック本体142に係止バー13の左右両端部が引っ掛けられることにより係止バー13を着脱自在に係止するものとなされている。
次に、上記構成の載置装置1の作用について説明する。載置装置1は、初期状態では、図6に実線で示すように、載置ネット11がロールユニット12に略全て巻き取られ、後列シート5の内部に格納された格納状態となっている。この載置ネット11の格納状態においては、後列シート5に乗員Cが着座することができ、通常の後列シート5として利用することができる。この場合に、当該乗員Cの脚部をクッション部材54に沿わせることもでき、このときネット引出口57の開口縁に係止された係止バー13が乗員Cの脚部に接触する場合もあるが、この場合でも係止バー13はクッション部材54のシートトリム56と同一の素材によって形成された被覆材によって被覆されているので、当該乗員Cが感じる違和感を軽減することができる。
そして、乗員Cが着座しておらず載置装置1を使用する場合には、まず初期状態から係止バー13を前方に引っ張り、載置ネット11を付勢力に抗してロールユニット12から引き出す。続いて、この係止バー13を、図6に二点鎖線で示すように、被係止フック14に引っ掛けることにより、載置ネット11が引き出された引出状態となる。この引出状態では、引き出された部分の前端縁が係止バー13を介して前列シート4のシートバック42の背面に略当接された状態となり、一方、引き出された部分の後端縁はネット引出口57に引き込まれて後列シート5のシートクッション51の前面に連続したような状態となっており、載置ネット11は前後列シート4,5の間を横架された状態となっている。
この状態でも、載置ネット11上に比較的軽量の手荷物等を載置することができるが、比較的重量のある荷物を載置ネット11上にこのまま載置させると、載置ネット11が付勢力に抗してロールユニット12から引き出されることになる。従って、このような場合には、ロールユニット12のロック機構をONにして当該ロールユニット12から載置ネット11が引き出されることを規制してから荷物を載置させると、比較的重量のある荷物でも当該載置ネット11上に載置させることができる。
このように、この載置装置1では、引出状態でその上面に荷物を載置可能な載置ネット11が設けられているので、図2に示すように、乗員が着座していない後列シート5(シートクッション51)上やフロア部3上だけでなく、この載置ネット11上にも荷物B1、B2等を載置することができ、これにより車室内における荷物載置領域を更に拡大することができる。しかも、この載置ネット11によって前後列シート4,5間の空間を上下に仕切るので、フロア部3上に靴Shなどが載置させている場合であってもこの載置ネット11によってフロア部3上の靴Shを隠蔽ないしはその存在をごまかすことができ、見栄えを向上させることができる。
また、この載置ネット11は、引出状態において引き出された部分の前後両端縁が、それぞれ上記前列シート4のシートバック42の背面および後列シート5のシートクッション51の前面に連続ないしは略連続状態で横架されているので、後列シート5のシートクッション51上に載置されている荷物B1が、車両の制動動作に伴って後列シート5のシートクッション51から滑り落ちた場合でも載置ネット11によって支承されるとともに、載置ネット11上に載置されている荷物B2が前列シート4のシートバック42の背面で前方向への移動が阻止され、フロア部3への落下を確実に防止することができる。
さらには、載置ネット11がネット状の部材によって構成されているので、コンパクトに巻き込むことができるとともに、そのたるみや撓みに基づいて載置ネット11上に載置した荷物B2が沈み込み、これにより当該荷物B2の移動が抑制される。従って、車両旋回時等に荷物B2が車幅方向に移動してフロア部3へ落下することを効果的に抑制することができる。
一方、載置ネット11が引出状態にあるときに、図3および図5に示すように、前列シート4を前方にスライド移動させる場合には、ロールユニット12のロック機構を解除してから、前列シート4の係止機構を解除しつつ、当該前列シート4をシートレール部材7に沿って前方に移動させる。このとき、ロールユニット12から載置ネット11が前列シート4の移動量に応じて引き出される。逆に、前列シート4をシートレール部材7に沿って後方にスライド移動させると、載置ネット11が巻き込み方向に付勢されているので、載置ネット11がロールユニット12に前列シート4の移動量に応じて巻き込まれる。
すなわち、前列シート4のスライド移動に伴って、載置ネット11の引出長さが調整されつつ、載置ネット11がロールユニット12から引き出されることになる。従って、載置ネット11を引出状態としながらも、前列シート4のスライド移動が可能となり、その利便性が向上される。
そして、載置装置1を使用しない場合には、被係止フック14に対する係止バー13の係止状態を解除して、載置ネット11を付勢力によってロールユニット12に巻き込ませるとともに、係止バー13をネット引出口57の開口周縁に当接係止させることにより、載置装置1を初期状態に復帰させることができる。
なお、本発明の車室内荷物用載置装置の具体的構成は、上記実施形態に限定されず、種々変更可能である。他の実施形態を以下に説明する。
(1)上記実施形態では、前列シート4だけが前後スライド移動可能に構成されているが、後列シート5も前後スライド移動可能に構成するものであってもよい。
すなわち、図8に示すように、後列シート5が、リヤパネル313上に固定されたシートレール部材70に沿って前後移動可能に構成されるものとしてもよい。この場合のスライド機構およびロールユニット12は上記実施形態における前列シート4のスライド機構およびロールユニット12と同様なのでここではその説明を省略する。従って、この変形例においても、ロールユニット12は、載置ネット11の引出長さを調整する長さ調整手段の一例に相当することになる。
この変形例では、後列シート105は、そのシートクッション151とクッション部材154とが各々分離した状態で形成されて、シートクッション151、シートバック152およびヘッドレスト153がクッション部材154と分離して前後移動可能に構成されている。これに伴って、載置ネット11も後列シート105のシートクッション151の移動に追随させるために、この変形例では、上記実施形態と異なり、シートクッション151の前端部にユニット収納部158が形成され、このユニット収納部158内にロールユニット12を収納させるように構成されている。
このユニット収納部158内におけるロールユニット12の保持構造は、特に限定されるものではなく、公知の種々の保持構造が採用される。例えば、このユニット収納部158をロールユニット12よりも若干小さく形成して、ロールユニット12を当該ユニット収納部158に圧着させるように構成してもよい。
このように構成しても、上記実施形態と同様に車室内の荷物載置領域を拡大することができる。しかも、後列シート5が前後スライド移動可能に構成されているので、載置ネット11を引出状態にしながら、後列シート5のスライド移動が可能となり、その利便性が向上される。また、後列シート5のシートクッション51の前端部に格納状態にある載置ネット11を収納する収納空間であるユニット収納部158が形成されるので、車室内空間へ影響を与えずに見栄えを向上させることができるとともに、後列シート5の前後スライド移動に追随させて載置ネット11が引出或いは巻き取られるので、載置ネット11の引出部分の後端部と後列シート5のシートクッション51の前面との連続性を確実に確保することができる。
(2)上記実施形態では、係止部として断面円形の係止バー13が設けられているが、この係止バー13に代えて載置ネット11の先端に係止フックを設けるものとしてもよい。この場合には、被係止部として被係止フック14に代えて被係止リング等を設けるのがよい。また、係止バー113を用いる場合には、例えば、図9に示すように、後列シート5におけるネット引出口57の開口縁部を拡開、拡幅させて係止バー収納部571を設け、この係止バー収納部571に係止バー113を収納させるように構成してもよい。また、係止バー113を図9に示すように断面矩形状に形成するとともに、係止バー収納部571をこれに対応させて形成すれば、係止バー収納部571に対する係止バー113の収まりもよくなる。この場合には係止バー113に例えばファブリック製の把持部113cを設けることにより、バー収納部571からの係止バー113の取出が容易になる。さらに、係止バー113の芯材113aの表面を例えばシートトリムと同素材(ファブリック素材)の被覆材113bで被覆すれば、見栄えが向上するとともに、載置ネット11が格納状態にあって、後列シート5に着座する乗員の脚部に係止バー113が接触しても当該乗員において生じる違和感を軽減させることができる。
(3)上記実施形態では、載置部材として載置ネット11を用いているが、ファブリックや合成樹脂からなる載置シートを用いるものであってもよい。その他、載置部材として、パネル状、皿状のものを用いるものとしてもよい。載置部材として載置ネット11や載置シートを用いた場合には、上記実施形態で説明したように、載置部材をコンパクトかつ容易に格納することができるだけでなく、その撓みやたるみに基づいて載置部材上の荷物の移動を抑制することができ、これにより車両旋回時等に上記荷物が車幅方向に移動してフロア部3へ落下することを効果的に抑制することができる。
(4)上記実施形態では、格納状態にある載置ネット11をロールユニット12に巻き込み、このロールユニット12を後列シート5に設けられたユニット収納部58に収納させることにより、当該載置ネット11をシート内に格納するように構成されているが、後列シート5内部に収納させるものでなくても、別途収納部を設けて載置ネット11を収納させるように構成してもよい。ただし、この場合でも載置ネット11のうち引き出された部分の後端部が後列シート5のいずれかの部位と連続性をもつように構成する必要がある。
(5)上記実施形態では、載置ネット11は格納状態で後列シート5の内部(後列シート5側)に格納されるように構成されているが、例えば前列シート4のシートバック42の内部等、前列シート4側に格納されるように構成してもよい。ただし、後列シート5に着座する乗員と係止バー13の干渉を避ける点では前列シート4側に格納されるのが好ましいが、ドライバの使い勝手の観点からは上記実施形態のように載置ネット11は後列シート5の内部に格納されるのが好ましい。