JP4604246B2 - 高濃度に半導体ナノ粒子が分散した蛍光体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体ナノ粒子が分散した蛍光体、その製造方法、該蛍光体を用いた発光デバイス(照明装置、表示装置等)に関する。
蛍光体は今日、照明や表示材料として広く用いられて日常生活を支えている。この蛍光体としては、古くから色素や遷移元素イオン(遷移金属イオンや希土類イオン)を分散させた無機マトリックスが用いられてきた。
近年、作製法を工夫した半導体ナノ粒子が高効率の発光を示すことが見出されている。この半導体ナノ粒子としては、テルル化カドミウム等のII-VI族化合物が代表的なもので
あり、直径は2から5ナノメートル程度である。この半導体ナノ粒子は、発光寿命が短く、粒径によって発光波長が制御できるため、新しい発光材料として注目されている。
このような半導体ナノ粒子は、粒径が小さいために表面の割合が大きい。このため、無輻射失活を抑え、さらに凝集を防いで発光効率を上げるために、通常、表面処理を施して欠陥を減らすという不活性化の処理が行われる。この表面処理には、例えば、チオールなどの硫黄を含む有機界面活性剤や硫化亜鉛が用いられる。
この様な半導体ナノ粒子の作製法として、水溶液中で界面活性剤を用いる方法が良く知られている(非特許文献1)。しかし、水溶液法で作製された半導体ナノ粒子は、水溶液のままでは不安定で工業的応用には不向きであった。
このため、半導体ナノ粒子を有機物からなる高分子に固定する方法が報告されている(非特許文献2)。しかしながら、マトリックスとして用いる高分子は、耐光性、耐熱性、耐薬品性などが不十分であり、しかも水や酸素を少しずつ透過させるので、固定化されたナノ粒子が徐々に劣化するという問題点があった。
このような高分子の欠点を克服するために、ゾルゲル法を用いてガラスマトリックス中に半導体ナノ粒子を分散させる方法が報告されている。例えば、特許文献1には、オルガノアルコキシシランを用いたゾルゲル法により、ケイ素を含む固体マトリックス中に蛍光発光効率3%以上の半導体ナノ粒子が5×10-4〜1×10-2モル/リットルの濃度で分散して
なる蛍光体が製造できることが記載されている。また、特許文献2には、ゾルゲル法により形成されたマトリックス中に、発光効率が20%以上の半導体ナノ粒子が2×10-6〜2×10-4モル/リットルの濃度で分散してなる蛍光体が記載されている。これらの蛍光体は、半
導体ナノ粒子、界面活性剤、オルガノアルコキシシラン等を混合することにより、ゾルゲル反応にてガラスマトリックス中に半導体ナノ粒子を分散させて、半導体ナノ粒子の劣化を防止して、経時安定性を高めることが可能となる。
しかし、上記の単純混合により製造される蛍光体では、必ずしも要求されるレベルの高輝度には達していないのが実情であった。より高輝度の発光デバイスを得るためには、より発光効率の高い半導体ナノ粒子がより高濃度でマトリックス中に凝集することなく均一に分散している必要がある。この点において、上記の特許文献1及び2の発光体については、さらなる改善の余地があった。
ところで、近年、化学的な吸着を利用するレイヤーバイレイヤー法を用いて、充填密度の高い半導体ナノ粒子を含む薄膜を形成する方法が報告されている。レイヤーバイレイヤ
ー法とは、表面処理をした基板を少なくとも2種類の溶液に一定時間、交互に浸漬することで、その表面に半導体ナノ粒子とマトリックスを順に積層する方法である。たいていの場合、単分子層に近い厚さ毎にコートされるのでナノ粒子の充填密度の高い薄膜が形成される。
この方法を用いて半導体ナノ粒子を含む薄膜を形成するものとしては、例えば、非特許文献3〜8が挙げられる。
非特許文献3には、カルバゾールの共重合体とポリアクリルアミドとをマトリックスとして、テルル化カドミウムナノ粒子(直径3ナノメートル弱)を分散してなる蛍光体が記載されている。ナノ粒子の濃度は0.05モル/リットルである。但し、蛍光は大きくブルー
シフトし可視領域からはずれており、マトリックスからの発光も観察されている。
非特許文献4には、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドをマトリックスとして、硫化カドミウムナノ粒子(直径3−4ナノメートル)を分散してなる蛍光体が記載されている。ナノ粒子の濃度0.003モル/リットルであり、該蛍光体の発光は欠陥からの発光のため、非常に広いスペクトル幅を示している。
非特許文献5には、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドをマトリックスとして、テルル化カドミウムナノ粒子(直径4ナノメートル)を分散してなる蛍光体が記載されている。ナノ粒子の濃度0.01モル/リットルであるが、発光効率は、溶液の状態で20%
であったものが、マトリックス中では5%と大きく低下する。
非特許文献6には、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどを下地にしてセレン化カドミウムナノ粒子を一層のみ付着してなる蛍光体が記載されている。付着させる前のナノ粒子の発光効率が4.2%と低く、付着後はそれよりも低いことが推測される。
非特許文献7には、長鎖アルキルチオールをマトリックスにして硫化カドミウムナノ粒子(直径約6ナノメートル)を、濃度0.001Mで分散してなる蛍光体が記載されている。これには、発光についてのデータは記載されていない。
しかしながら、以上の公知文献では全て有機マトリックスを用いており、ナノ粒子をマトリックスに入れた後は、入れる前に比べて蛍光が大きくブルーシフトしたり、ナノ粒子の表面欠陥の影響で赤色側に大きく裾を引いている場合が多い。また、上記いずれの場合も、発光効率は高々数%と見積もることが出来る。しかも、有機マトリックスを採用するため、依然として耐光性、耐熱性、耐薬品性、水分透過性、ガス透過性等の問題点を有し、固定化された半導体ナノ粒子が徐々に劣化するため長期安定性という面からも問題がある。
現在のディジタル景気に牽引された表示材料の高輝度、高精細化に対する要求はまさに止まるところを知らず、極限までの明るさを実現するための方法が望まれている。このため、半導体ナノ粒子がマトリックス中で高い発光効率を保ちながら高濃度で保持されており高輝度発光を有する薄膜蛍光体を得ることが期待されているが、現状では必ずしも満足できるものではない。
国際公開第2004/000971号パンフレット 国際公開第2004/065296号パンフレット ガオら、ジャーナル オブ フィジカル ケミストリー、ビー、102巻、8360ページ、1998年 バベンディーら、アドバンスト マテリアル、12巻、1103ページ(2000) ヤングら、ジャーナル オブ マテリアルズケミストリー、13巻、1356ページ、2003年 ハラオウイ、ラングミュアー、17巻、7130、2001年 キルステンら、マテリアルズサイエンス アンド エンジニアリングC,8−9巻、159ページ、1999年 コトフら、ラングミュアー、18巻、7035ページ、2002年 赤松ら、ラングミュアー、20巻、11169ページ、2004年
本発明の主な目的は、ガラスマトリックス中において半導体ナノ粒子が安定的に高い発光効率を保持しかつ高濃度状態を保持できる薄膜蛍光体を提供することである。本発明の他の目的は、該薄膜蛍光体を用いた高輝度の表示装置や照明装置などの光デバイスを提供することである。
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ガラス基板上に、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APS)又は3−メルカプトプロピルトリメトキシシ
ラン(MPS)、チオグリコール酸(TGA)及び半導体ナノ粒子を、この順で一層ずつ繰り返して積層することにより(レイヤーバイレイヤー法)、高い発光効率を保持しかつ高濃度状態を保持できる薄膜蛍光体を作製できることを見出した。この薄膜蛍光体は、ガラスマトリックス中に半導体ナノ粒子が均一に分散しており、透明性、耐光性、耐候性等に優れるなど、ガラスマトリックスに由来する優れた特徴を有していることも明らかとなった。かかる知見に基づきさらに研究を行った結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の蛍光体及びその製造方法を提供する。
項1.ガラスマトリックス中に発光効率15%以上の直径2〜5ナノメートルの半導体ナノ粒子が濃度5×10−4モル/リットル以上で分散してなる蛍光体。
項2.膜厚10μm以下の薄膜である項1に記載の蛍光体。
項3.ガラスマトリックスと半導体ナノ粒子とが積層された構造を有する項1又は2に記載の蛍光体。
項4.基体上にレイヤーバイレイヤー法で形成されてなる項1、2又は3に記載の蛍光体。
項5.基体上にオルガノアルコキシシランと界面活性剤を含む半導体ナノ粒子の水溶液とを用いてレイヤーバイレイヤー法で形成されてなる項4に記載の蛍光体。
項6.半導体ナノ粒子がII-VI族の化合物半導体である項1〜5のいずれかに記載の蛍
光体。
項7.半導体ナノ粒子がテルル化カドミウム又はセレン化亜鉛である項6に記載の蛍光体。
項8.半導体ナノ粒子の発光効率が20%以上である項1〜7のいずれかに記載の蛍光体。
項9.項1〜8のいずれかに記載の薄膜蛍光体と励起光源を備えた発光デバイス。
項10.さらに薄膜蛍光体の温度を50℃以下に保持するための冷却装置又は熱放散材料を備えた項9の発光デバイス。
項11.基体上に蛍光体を形成する方法であって、下記の工程を含むことを特徴とする蛍光体の形成方法:
(1)オルガノアルコキシシランで表面処理した基体を、界面活性剤を含む半導体ナノ粒子の水溶液で処理する工程、及び
(2)上記(1)で得られる半導体ナノ粒子で処理した基体を、オルガノアルコキシシランで処理する工程。
項12.前記(2)で得られる基体を、前記(1)の工程に供し、(1)及び(2)の一連の工程を1回行うか又は2回以上繰り返すことを特徴とする項11に記載の蛍光体の形成方法。
項13.基体上に蛍光体を形成する方法であって、下記の工程を含むことを特徴とする蛍光体の形成方法:
(1)オルガノアルコキシシランで表面処理した基体を、界面活性剤を含む水溶液で処理する工程、
(2)上記(1)で得られる界面活性剤で処理した基体を、界面活性剤を含む半導体ナノ粒子の水溶液で処理する工程、及び
(3)上記(2)で得られる半導体ナノ粒子で処理した基体を、オルガノアルコキシシランで処理する工程。
項14.前記(3)で得られる基体を前記(1)の工程に供し、(1)〜(3)の一連の工程を1回行うか又は2回以上繰り返すことを特徴とする項13に記載の蛍光体の形成方法。
項15.マトリックス中に、発光効率が15%以上であり発光ピーク波長が400〜500ナノメートルの範囲にある直径2〜5ナノメートルの半導体ナノ粒子が濃度5×10−4モル/リッ
トル以上で分散してなる蛍光体であって、該蛍光体の膜厚が10μm以下の薄膜である蛍光体。
尚、本願明細書における「溶液中の半導体ナノ粒子の発光効率」とは、吸収された光子(フォトン)数(ΦA)に対するフォトルミネッセンスとして発光される光子(フォトン
)数(ΦPL)の割合(ΦPL/ΦA)として定義される。この発光効率は、当該技術分野に
おいて標準的に用いられる値であり、「内部量子収率」と同義である。発光効率は、発光効率が既知の色素分子を用いて、該色素分子溶液と測定対象物における励起光波長での吸光度と発光強度とを比較することにより算出される。測定時には、通常は色素分子溶液と測定対象物の励起波長での吸光度を一致させて比較する。(例えば、既報の方法、ドーソンら、ジャーナル オブ フィジカル ケミストリー、72巻、3251ページ(1968年)を参照)。
また、本願明細書において、「蛍光体中の半導体ナノ粒子の発光効率」は、蛍光体中の半導体ナノ粒子に吸収された励起光の光子(フォトン)数(Φ)に対する蛍光体中の該ナノ粒子からフォトルミネッセンスとして放出される光子(フォトン)数(ΦPL)の割合(ΦPL/Φ)として定義される。具体的には、吸光度と発光効率とが既知の色素分子溶液を入れたガラスセル、及び同一の厚さを有する測定対象物となるガラスを用意し、該色素分子溶液と測定対象物における吸光度と発光強度とを比較することにより算出され
る値である。
さらに具体的には、本発明においては、発光効率既知の色素としてキニーネの0.5M硫
酸水溶液(発光効率54.6%)を用いた。数種類の濃度のキニーネ溶液を厚さの異なる数個のセルにつめて蛍光強度を測定し、その結果から任意の濃度でナノ粒子が分散した複数の厚みのガラス板の発光効率を導き出す方法を取った。
なお、発光効率を求める際には、さらに厳密には屈折率が発光効率に与える影響を考慮して、上記の発光効率を補正することもできる。この補正を行った発光効率は、通常、上記した補正を行わない発光効率の値よりも大きくなる。しかしながら、背景技術で挙げた先行の文献の中でこの補正を行っているものはなく、先行技術との比較を容易にするためにも屈折率による補正を加えない発光効率を、本願の発光効率として定義する。
以下、本発明を詳述する。
I.半導体ナノ粒子
本発明の半導体ナノ粒子としては、水分散性を有する蛍光性半導体ナノ粒子が好適に用いられる。具体的には直接遷移を示すII-VI族の化合物半導体であって、可視領域で発光
するものが挙げられる。例えば、硫化カドミウム、セレン化亜鉛、セレン化カドミウム、テルル化亜鉛、テルル化カドミウムなどを例示することができ、好ましくはテルル化カドミウム又はセレン化亜鉛である。なお、本発明の半導体ナノ粒子は、界面活性剤を含む水溶液中で安定化されて存在する。
半導体ナノ粒子は、例えば、特許文献1及び2に従って製造することができる。
具体的には、II族元素を含む水溶性化合物及び界面活性剤を溶解したアルカリ性水溶液中に、不活性雰囲気下において、VI族元素化合物を導入することによって、II-VI族半導
体を得ることができる。VI族元素化合物は、気体状のものを用いることもできる。
II族元素を含む水溶性化合物としては、過塩素酸塩が好ましく、例えば、II族元素がカドミウムである場合には、過塩素酸カドミウムを用いることができる。水溶液中のII族元素を含む水溶性化合物の濃度は、通常、0.001〜0.05モル/リットル程度、さらに0.01〜0.02モル/リットル程度、特に0.013〜0.018モル/リットル程度のとすることが好ましい。
界面活性剤としては、疎水基であるチオール基と親水基を有するものが好ましい。親水基としては、カルボキシル基などのアニオン性基、アミノ基などのカチオン性基、水酸基などを例示できるが、特に、カルボキシル基などのアニオン性基が好ましい。この界面活性剤の具体例としては、チオグリコール酸、チオグリセロール、メルカプトエチルアミン等を例示できる。界面活性剤の使用量は、水溶液中に含まれるII族元素イオン1モルに対して、1〜2.5モル程度、好ましくは1〜1.5モル程度とする。界面活性剤の使用量が上記範囲を上回ると、得られるナノ粒子の発光効率が低下する傾向がある。
VI族元素化合物としては、例えば、VI族元素の水素化物などを用いることができ、VI族元素がテルルである場合には、テルル化水素を用いることができる。その他、テルル化水素を水酸化ナトリウムと反応させて得られるテルル化水素ナトリウムを水溶液として導入することも可能である。VI族元素化合物の使用量は、通常、II族イオン1モルに対して、VI族イオンを0.3〜1.5モル程度であればよく、さらに0.4〜0.9モル程度とすることが好ましい。
半導体ナノ粒子の製造に用いる水は高純度の水を用いることが好ましい。特に、比抵抗
18MΩ・cm以上、且つ水中の有機系化合物の総量(TOC)が5ppb以下、好ましくは3ppb以下の超純水を用いることがより好適である。この様な高純度の水で反応容器等を十分に洗浄し、更に、反応溶媒としても高純度の水を用いることよって、優れた発光性能を有する半導体ナノ粒子を得ることが可能となる。
上記反応は、通常、不活性雰囲気下において、II族元素を含む水溶性化合物及び界面活性剤を溶解した水溶液中に、気体状のVI族元素化合物をバブリングさせるか、気体状のVI族化合物を水酸化ナトリウム溶液と反応させて水溶液とした後、注射器等でII族元素を含む水溶性化合物及び界面活性剤を溶解した水溶液中に注入することよって行うことができる。
不活性雰囲気としては、反応に関与しない気体の雰囲気であればよく、例えば、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス等の不活性ガス雰囲気を好適に利用できる。
上記反応は、通常、室温(例えば、10〜30℃程度)において行うことができる。水溶液のpHは、10〜12程度、特に10.5〜11.5であることが好ましい。反応は、通常、VI族化合物を導入後、10分程度以内に終了する。
その後、大気中で還流することにより、所望のサイズの半導体ナノ粒子を分散した水溶液を得る。該水溶液中の該ナノ粒子の濃度は反応条件によって適宜選択されるが、通常、1×10-7モル/リットルから3×10-6モル/リットルであり、典型的には3×10-7モル/リットルから2×10-6モル/リットル程度、特に1×10-6モル/リットル程度である。
製造される半導体ナノ粒子の粒径は、通常、2〜5 nm程度である。還流時間を長くする
と、粒径を大きくすることができる。該半導体ナノ粒子の発光色は粒径によって決まり、粒径が小さいほど短波長の発光を示す。半導体ナノ粒子の粒径を揃えれば単色の発光が得られるし、いろいろな粒径のものを混ぜればそれに応じた色調の発光が得られる。
単色で発光するナノ粒子を得るためには、還流時間を一定に制御し、その粒径分布の分散の標準偏差が、粒径の平均値に対して20%以下、好ましくは15%以下となる様に調整すればよい。
この様にして得られる半導体ナノ粒子の水溶液には、通常、原料として用いたII族元素のイオン、界面活性剤、1ナノメートルを下回る微細なクラスターなどが含まれる。この半導体ナノ粒子の水溶液を用いて、後述する方法によって、そのまま半導体ナノ粒子をガラスマトリックス中に分散させて蛍光体とすることができる。
さらに、該水溶液に含まれるナノ粒子を、粒子径のそろったナノ粒子毎に分離することができる。例えば、ナノ粒子の粒径が大きくなるほど溶解度が低くなることを利用して、該ナノ粒子の水溶液にイソプロパノールなどの貧溶媒を添加することで、サイズ別にナノ粒子を沈殿させ、これを遠心分離器にかけて分離する。
この様にして精製したナノ粒子を水に再分散させて水溶液とすることもでき、この場合も該ナノ粒子は高い発光効率を示す。該水溶液はそのままでもある程度は安定であるが、該水溶液に、さらにII族元素を含む水溶性化合物、及び界面活性剤を添加することによって、水溶液の安定性を向上させて、凝集を防ぎ発光効率を保つことができる。II族元素化合物の種類、該化合物の濃度、界面活性剤の量、水溶液のpH等は、上述したII-VI族半
導体ナノ粒子を作製するために用いる水溶液と同様の範囲に調製すればよい。
具体的には、II-VI族半導体ナノ粒子(1×10-7〜3×10-6モル/リットル程度、好まし
くは、3×10-7〜2×10-6モル/リットル程度)、II-VI族半導体ナノ粒子の原料であるII
族元素を含む水溶性化合物(II族元素イオン)(0.001〜0.05モル/リットル程度、好ましくは0.01〜0.02モル/リットル程度、より好ましくは0.013〜0.018モル/リットル程度)、及び界面活性剤(水溶液中に含まれるII族元素イオン1モルに対し0.5〜5モル程度、好ましくは1〜1.5モル程度)を含むpH10〜12程度(好ましくは、10.5〜11.5程度)の水溶液が好適である。
その他に、セレン化カドミウム等の半導体ナノ粒子は、有機金属の熱分解を利用して有機溶媒中で作製することもできる。この半導体ナノ粒子表面を、TGA等のチオール系の界
面活性剤で置換したものも水分散性を有するので、半導体ナノ粒子の水溶液として用いることができる。
以上の方法で得られる半導体ナノ粒子は、水分散性が良好であって高い発光効率を有している。この水溶液中の半導体ナノ粒子の発光効率は、20〜70%程度である。特に、赤色発光の半導体ナノ粒子では、調整後の光照射などの後処理をすることなく70%程度の発光効率が得られる。ここで水分散液中でのナノ粒子の発光効率は、完成した蛍光体の発光効率に大きく影響を及ぼす。
この半導体ナノ粒子の水溶液を用いて、後述するレイヤーバイレイヤー法でガラスマトリックス中に該ナノ粒子を分散させる。これによって、該ナノ粒子はマトリックス中で良好な分散性を有し高濃度で存在できるとともに、高い発光効率を維持することができ、優れた性能を有する蛍光体を得ることが可能となる。精製したナノ粒子を水に再分散させた水溶液を用いる場合は、特に優れている。
II.蛍光体の製造方法
本発明の蛍光体は、基体上にレイヤーバイレイヤー法を用いて形成される。ここで、レイヤーバイレイヤー法とは、界面活性剤を含む半導体ナノ粒子の水溶液、オルガノアルコキシシラン等の2種以上の液体(溶液)で基体を交互に処理することで、その基体の表面に半導体ナノ粒子とマトリックスとを順に積層する方法である。この方法によれば、各成分が単分子層又は単粒子層に近い厚さ毎にコートされるので、半導体ナノ粒子の充填密度の高い薄膜蛍光体が形成される。
この蛍光体の膜厚は、レイヤーバイレイヤー法の積層回数、繰り返し回数により可変であるが、通常10μm以下の薄膜が形成され、更に0.03〜2μm程度、特に、0.05〜0.5μm程度の薄膜が形成される。
本発明の蛍光体の製法で用いられる基体としては、例えば、ガラス、プラスチック、セラミックスなどの材質が例示されるが特に限定はなく、このうちガラスが好ましい。本発明において基体そのものを用いることもできるが、基体表面に適切な官能基をつけたものを用いることが好ましい。例えば、あらかじめガラス基体の表面の全部或いは一部をオルガノアルコキシシラン(例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)、3−メ
ルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS)等)で処理したものが挙げられる。
また、基体の形状としては、例えば、平板状、チューブ状、球体、棒状、粉末状、円板状、凸レンズ状、凹レンズ状などが挙げられ、使用する用途に応じて適宜選択することができる。
本発明の蛍光体の製法で用いられる界面活性剤としては、分子内に疎水基であるチオール基と親水基を有するものが好ましい。親水基としては、例えば、カルボキシル基、アミノ基、水酸基などを例示できるが、特に、カルボキシル基が好ましい。界面活性剤の具体例としては、チオグリコール酸(TGA)、チオグリセロール(TG)、メルカプトエチルア
ミン等を例示でき、特にチオグリコール酸が好適である。
界面活性剤は、通常水溶液の形態で用いられる。水溶液中の界面活性剤の濃度は、通常、0.05〜1モル/リットル程度、特に0.1〜0.2モル/リットル程度が好適である。
本発明の蛍光体の製法で用いられる界面活性剤を含む半導体ナノ粒子の水溶液としては、上記の「I.半導体ナノ粒子」の項で製造される水溶液をそのまま用いることができる。中でも、精製したナノ粒子を水に再分散させた水溶液を用いることが好ましい。この水溶液における半導体ナノ粒子の濃度は、通常、1×10-7〜3×10-6モル/リットルであり、
好適には3×10-7〜2×10-6モル/リットル程度である。また、該水溶液におけるII族元素
を含む水溶性化合物(II族元素イオン)の濃度は、0.001〜0.05モル/リットル程度であり、好適には0.01〜0.02モル/リットル程度であり、該水溶液における界面活性剤の濃度は、0.005〜0.2モル/リットル程度であり、好適には0.01〜0.1モル/
リットル程度である。また、該水溶液のpHは、通常10〜12程度、好適には10.5〜11.5程度である。
本発明の蛍光体の製法で用いられるオルガノアルコキシシランとは、ケイ素を含む骨格構造をもち、そのケイ素が有する4つの結合手のうち少なくとも1つが炭素原子と結合している化合物であり、一般式(I):
SiX(OR)4−n (I)
(式中、n=1,2又は3、Rはアルキル基、Xはアミノアルキル基、メルカプトアルキル基、ハロアルキル基又はフェニル基を示す)
で表される化合物である。
nは1又は2が好ましく、特にnは1が好ましい。
Rで示されるアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基が例示される。好ましくは、メチル、エチルである。
Xで示されるアミノアルキル基としては、例えば、NH2m−(mは1〜6の整数)で示される基が挙げられ、特に直鎖のHN(CH−(mが2〜4の整数)で示される基が好ましい。mは2〜4が好ましく、特に3が好ましい。
Xで示されるメルカプトアルキル基としては、例えば、HSC2q−(qは1〜10の整数)で示される基が挙げられ、特に直鎖のHS(CH−(qが2〜4の整数)で示される基が好ましい。qは2〜4が好ましく、特に3が好ましい。
Xで示されるハロアルキル基としては、YC2r−(rは1〜10の整数、Yはハロゲン原子)で示される基が挙げられ、特に直鎖のY(CH−(qが2〜4の整数、Yはフッ素原子、塩素原子又は臭素原子)で示される基が好ましい。qは2〜4が好ましく、特に3が好ましい。Yは塩素原子が好ましい。
上記の一般式(I)で示される化合物のうち、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APS)、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS)、クロロプロピルトリメトキシシランが好ましく、特にAPS、MPSが好ましい。
これらのオルガノアルコキシシランでは、アルコキシ基の加水分解、縮重合という通常のゾル‐ゲル反応によってガラス網目構造((−O−Si−):p>1)を形成する一方で、上記一般式(I)のXで示される官能基が半導体ナノ粒子表面に結合した界面活性剤
と結合を作り安定化するものと考えられる。
チオグリコール酸などのチオール基及びカルボキシル基を有する界面活性剤で安定化されている半導体ナノ粒子の水溶液を用いる場合には、オルガノアルコキシシランとしては、官能基としてアミノアルキル基を有するトリアルコキシシランを用いることが好ましい。具体的には、HN(CH−(mが2〜4の整数)で示される基が挙げられる。この場合には、半導体ナノ粒子の表面に吸着した界面活性剤のカルボキシル基と、該アミノ基の親和性が良いために、ナノ粒子の分散性を高くすることができる。
レイヤーバイレイヤー法で用いるオルガノアルコキシシランは、通常のゾルゲル法で用いる形態、即ちオルガノアルコキシシランを含む溶液の形態で使用される。その一例を挙げると、上記オルガノアルコキシシランとトルエン、キシレン等の炭化水素溶剤等とを含む溶液が挙げられる。この場合、オルガノアルコキシシランと炭化水素溶剤の体積比は1:0.5〜1:5程度であればよい。或いは、上記オルガノアルコキシシラン;エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール化合物;及び水(例えば、それぞれ1:1〜60:1〜20程度の体積比)が挙げられる。必要に応じ塩酸、酢酸、硝酸、アンモニア等の触媒を少量加えて溶液を調製してもよい。但し、オルガノアルコキシシランがAPS等のアミノ基を含むオルガノアルコキシシランの場合には、触媒を加えなく
ても反応が進む。該ゾル溶液に、上記した半導体ナノ粒子の水溶液を添加し、室温〜100℃程度で加水分解、縮重合反応を生じさせることによってガラスマトリックスを形成することができる。
更に、ゾル溶液中に塩酸1-エチル−3−(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC)等の水溶性カルボジイミドを添加することも有用である。該カルボジイミドは
、アミンとカルボキシル基とを脱水縮合させる働きを有し、これを用いることによってナノ粒子の表面の界面活性剤とガラスマトリックスとを化学結合させて分散性をより一層向上させることができる。カルボジイミドの使用量は、精製後のナノ粒子を水に再分散させた水溶液に加えた界面活性剤中のカルボキシル基のモル数に対し、0.5〜8倍程度のモル数が好ましく、さらに2〜4倍程度がより好ましい。
次に、本発明の蛍光体のレイヤーバイレイヤー法を用いた製造方法を、以下に示す。
本発明の蛍光体は、典型的には、例えば下記の工程を含む形成方法を用いて形成することができる。具体的には、図5及び図1に示す模式図を参照することができる。
形成方法1
まず、(1)オルガノアルコキシシランで表面処理した基体を、界面活性剤を含む半導体ナノ粒子の水溶液で処理する。基体としては上記したものが挙げられ、好ましくはガラス基体である。オルガノアルコキシシランで表面処理した基体とは、基体の表面の全部或いは一部をオルガノアルコキシシラン(例えば、APS、MPS等)で処理したものが挙げられる。これにより、基体上に蛍光体の積層構造の足がかりを形成することができる。
基体表面をオルガノアルコキシシランで処理する方法は、公知の方法を用いればよい。例えば、ガラス基体の表面を洗浄し、過酸化水素水と硫酸で処理して表面に水酸基を形成し、これをAPS又はMPSのトルエン溶液に浸漬した後、純水で洗浄し乾燥すればよい(図5の工程(a)及び(b))。或いは、あらかじめオルガノアルコキシシランで処理された市販の基体を用いても良く、例えば、松浪硝子社製のAPSがコートされたスライドガラス
(No.S8111)等が例示される。
また、基体表面に任意の範囲に撥水性の層を設けることで、撥水層以外の部分にオルガ
ノアルコキシシランを処理することもできる。これにより任意の形状の蛍光体を積層することが出来る。
この基体は、例えば、上記した界面活性剤を含む半導体ナノ粒子の水溶液に浸漬するなどして処理される(図5の工程(c))。処理は通常10〜30℃の温度で、1〜20分程度浸漬すればよい。浸漬時間が長すぎると、半導体ナノ粒子の凝集が起きやすくなり発光効率の低下に繋がる場合がある。そのため、上記の条件を採用することが好ましい。処理後の基体を水洗して表面が半導体ナノ粒子でコートされた基体を得る。半導体ナノ粒子が付いているかどうかは、基体の可視−紫外吸収スペクトルを取ったり、紫外線を照射して発光を観察することで確認することができる。
次いで、(2)上記(1)で得られる半導体ナノ粒子で処理した基体を、オルガノアルコキシシランで処理する。基体表面をオルガノアルコキシシランで処理する方法は、公知の方法を用いればよい。例えば、基体を、上記したオルガノアルコキシシランゾル溶液、例えば、APS又はMPS等のトルエン溶液に浸漬した後、純水で洗浄すればよい(図5の工程(d)及び(e))。処理は通常10〜30℃の温度で、5〜15分程度であればよい。処理後
の基体を水洗して表面がガラスマトリックスでコートされた基体を得る。
本蛍光体の形成方法1においては、半導体ナノ粒子が直接オルガノアルコキシシランの官能基と相互作用すると考えられるため、オルガノアルコキシシランとして半導体ナノ粒子と親和性の高い硫黄原子を含むMPSを用いることが好ましい(図5)。
形成方法1の(1)及び(2)の工程により、基体上に半導体ナノ粒子とガラスマトリックスとが積層された薄膜蛍光体を製造することができる。さらに、積層するために、上記の(1)及び(2)の一連の工程を1回行うか又は2回以上繰り返すのが好ましい。これにより、ガラスマトリックス中において半導体ナノ粒子の安定的が向上し高い発光効率が保持されるとともに、半導体ナノ粒子が高濃度状態を保持できる。通常、(1)及び(2)の一連の工程を、2〜500回程度、好ましくは10〜100回程度繰り返すのが好ましい。
積層された薄膜の厚さは、上記の繰り返し回数(積層回数)に応じて可変であるが、通常、10μm以下程度、更に0.05〜0.5μm程度である。
形成方法2
或いは、形成方法1において、オルガノアルコキシシランで処理した後、その後の操作でコーティングが剥がれないようにするために、さらに界面活性剤で処理する工程を追加することが有効な場合もある。その場合における蛍光体の形成方法の典型例としては、例えば次のようなものが挙げられる。具体的には、図1に示す模式図を参照することができる。
まず、(1)オルガノアルコキシシランで表面処理した基体を、界面活性剤を含む水溶液で処理する。オルガノアルコキシシランで表面処理した基体は、上記形成方法1のものと同様である。オルガノアルコキシシランとしては、APSが好適である。この基体は、例
えば、上記した界面活性剤を含む水溶液に浸漬するなどして処理される(図1の工程(a))。処理は通常10〜30℃の温度で、1〜20分程度浸漬すればよい。この界面活性剤処理
により、基体表面のオルガノアルコキシシランの加水分解と脱水縮合が進行するとともに、界面活性剤との相互作用によりコーティングが強固になる。具体的には、図1に示すように、基体表面のオルガノアルコキシシランがAPSであり、界面活性剤がチオグリコール
酸(TGA)の場合、APSのアミノ基がTGAのカルボキシル基と静電的結合により(或いは脱
水してアミド結合を形成して)強固な表面処理が可能となる。
なお、界面活性剤を含む水溶液には、II族元素イオンを含んでいてもよい。該水溶液中
のII族元素イオンのモル濃度は、界面活性剤のモル濃度の0.5〜30倍、好ましくは1〜5倍とすることができる。
次いで、(2)上記(1)で得られる界面活性剤で処理した基体を、界面活性剤を含む半導体ナノ粒子の水溶液で処理する。本工程は、形成方法1の(1)と同様にして処理することができる。具体的には、図1の工程(b)を参照すればよい。
(3)上記(2)で得られる半導体ナノ粒子で処理した基体を、オルガノアルコキシシランで処理する。本工程は、形成方法1の(2)と同様にして処理することができる。具体的には、図1の工程(c)を参照すればよい。
本蛍光体の形成方法2においては、半導体ナノ粒子が界面活性剤を介してオルガノアルコキシシランの官能基と相互作用すると考えられるため、オルガノアルコキシシランとしてAPSを、界面活性剤としてTGAを用いることが好ましい(図1)。
形成方法2の(1)〜(3)の工程により、基体上に半導体ナノ粒子とガラスマトリックスとが積層された薄膜蛍光体を製造することができる。さらに、積層するために、上記の(1)〜(3)の一連の工程を1回行うか又は2回以上繰り返すのが好ましい。これにより、ガラスマトリックス中において半導体ナノ粒子の安定的が向上し高い発光効率が保持されるとともに、半導体ナノ粒子が高濃度状態を保持できる。通常、(1)〜(3)の一連の工程を、2〜500回程度、好ましくは10〜100回程度繰り返すのが好ましい。積層さ
れた薄膜の厚さは、上記の繰り返し回数(積層回数)に応じて可変であるが、通常、10μm以下程度、更に0.05〜0.5μm程度である。
上記のレイヤーバイレイヤー法で形成される蛍光体は、ガラスマトリックス中において半導体ナノ粒子が高い濃度で存在している。蛍光体中の半導体ナノ粒子の濃度は、5×10
−4モル/リットル以上であり、さらに6×10−4〜2×10−2モル/リットル程度、特に1×10−3〜1×10−2モル/リットル程度と高濃度となる。特に、凝集が起きず、著しい発光効率の低下も見られない領域として3×10−3から1×10−2モル/リットルの範囲が最も好ましい。
特許文献1及び2のようなバルク体作製の過程では、どうしても攪拌する必要があり、そのときに一定以上の濃度ではナノ粒子どうしの凝集が起きてしまう。マトリックスに固定した時に凝集が生じた場合には、実効的にナノ粒子のサイズが大きくなったことと同じになり、発光波長が赤色側にシフトする。また、このような実効的なサイズの増大の程度が様々であるために、発光スペクトルの幅が広がる。さらに、凝集によって不完全な化学結合が生じ、それが欠陥準位となってスペクトル幅が増大し、発光効率が低下する。
それに対して、吸着を利用した本方法では、吸着時間を制御しながら静かに薄膜を成長させることで、凝集を防ぎつつ高濃度でほぼ均一に分散した状態を実現できる。本発明によるレイヤーバイレイヤー法で作製した薄膜の場合は、発光ピークがわずかに赤色側にシフトし、発光スペクトルの幅がほぼ一定であるかもしくは狭くなる。これは、ナノ粒子の濃度が高いために、粒径の小さい粒子からの発光が、すぐ近傍にある粒径の大きな粒子に再吸収されてから再発光したためである。このように、均一分散しているかどうかは、電子顕微鏡で観察する他に、発光スペクトル幅の増大の有無で判定することが出来る。
本発明の蛍光体では、ナノ粒子の分散濃度を10−2モル/リットル程度と極限まで高めることができるので、その分、薄膜の厚みを比較的薄くして基体への密着性をあげることが出来る。実用上、膜厚の下限は、10ナノメートル以上、更に50ナノメートル以上が好ましく、また膜厚の上限は、密着性や光の透過性から10μm以下、更に2μm以下であること
が望まれる。さらに強い発光を得るために特に好ましい膜厚は、40ナノメートル以上、1μm以下である。
また、本発明のレイヤーバイレイヤー法で形成される蛍光体は、蛍光体中の半導体ナノ粒子の発光効率が高いという特徴も有している。蛍光体中の半導体ナノ粒子の発光効率は、15%以上、更に17〜50%程度、特に20〜40%程度となる。
また、本発明の蛍光体における半導体ナノ粒子は、可視光領域、即ち、波長400〜800ナノメートルの範囲に発光ピークを有している。人間の目に感じることができる範囲である波長400ナノメートル以上に発光ピークを有しているため、高い輝度を達成することがで
きる。
本発明の蛍光体では、その形成工程において違う発光色の半導体ナノ粒子を上塗り積層することで、バリエーションを有する望みの色調が得られる。
さらに、本発明の薄膜蛍光体では、基体の全面又は一部に薄膜蛍光体を形成することができる。基体の一部に薄膜蛍光体を形成する場合は、所望のパターンに形成することも可能である。具体的には、基体上に所定のパターンでオルガノアルコキシシランを作用させて、基体上に官能基(例えば、アミノ基、−SH基等)を有するパターン面を形成し、これに本発明のレイヤーバイレイヤー法で薄膜蛍光体を積層することにより、基体上に蛍光体のパターンを形成することができる。基体上に官能基を有するパターン面を形成する方法としては、例えば、官能基(例えば、アミノ基)を付けたくないところに高撥水性のインクを印刷し、これに官能基を有するオルガノアルコキシシランを作用させると、濡れ性の残る所にだけオルガノアルコキシシランが反応し基体上に官能基を有するパターン面が形成される。特別なパターンを作りたい時は、任意に作製してもよいし、一般的な繰り返しのパターンのものであれば、市販の基板として入手可能である。
上記した方法によって形成される本発明の蛍光体は、全体としては基本的にガラスの性質を示すものであり、機械的特性、耐熱性、化学的安定性などの諸特性に優れたものである。基体としては、特にガラス基体上に密着性良く取り付けることが出来る。さらに、該蛍光体に内包された半導体ナノ粒子は、外部雰囲気から遮断されているため、良好な安定性を示す。
III.蛍光体の用途
以上の方法で得られる蛍光体は、輝度が高く、単一波長の光照射で様々な発色光を示すものであり、従来の蛍光体に替えて以下に示すような発光デバイス(照明装置や表示素子など)の蛍光体として有効に利用できる。
照明装置
特に波長365 nm の水銀灯や紫外LEDによる励起にあわせて、適当な粒径の半導体ナノ粒子を組み合わせることで白色照明光が得られる。他に冷陰極蛍光ランプなどのように液晶のバックライトとしての照明、水銀灯を用いるプレゼンテーション用の液晶プロジェクター用の光源などとして利用できる。
表示素子(ディスプレイなど)
平板に微細なパターンとして蛍光体を塗布したものを用いる。RGBの3色の発光を示すナノ粒子を、例えば直径0.1ミリ程度の多数のドットに交互に塗りわけ、紫外光を情報信号
に応じて強度変調して照射することで、所望の表示が得られる。この場合の励起光源については、マトリックスの吸収のない範囲の波長を選択する必要がある。波長320nm未満
では多くの場合マトリックスの吸収が出てくるので、例えば、水銀ランプ、LED、固体レーザーなどの波長320nm〜600nm程度の光源を利用することが好ましい。
特に、強い励起光を照射した場合には、蛍光体の温度が上昇して劣化が早まる。劣化の活性化エネルギーとしては、およそ300meVという値となる。このため、長持ちさせるには、出来るだけ使用温度が低いほど望ましく、出来る限り50℃以下、出来れば40℃以下が望ましい。そのためには励起光源の配置を工夫し、冷却装置、熱放散材料等を備えていることが好ましい。冷却装置としては、例えば強力な冷却ファン、水冷等が、熱放散材料としては金属やセラミックスが挙げられる。
他の用途
本発明により作製される薄膜蛍光体は、透明性が高くて均一であるために、例えば、太陽電池の変換効率上昇のためにも用いることが出来る。現行の太陽電池は、アモルファスシリコンや単一結晶シリコンを用いたものが主流である。この際、紫外領域には感度がなく、また、保護に使われている樹脂膜の吸収によってエネルギーが失われることもある。このため、太陽光の受光面前面にこのナノ粒子分散ガラス薄膜を設けることで、効率よく紫外線を可視光に変換してより変換効率を上げることが出来る。
本発明の蛍光体は、ガラスマトリックス中において半導体ナノ粒子が安定的に存在し、また該半導体ナノ粒子は高い発光効率を保持しかつ高濃度状態を保持している。そのため、本発明の蛍光体は、従来にはない高輝度の薄膜蛍光体となる。
上記の優れた特性を有する本発明の蛍光体は、従来の蛍光体に替えて高輝度の表示装置や照明装置などの光デバイスを提供することができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
アミノプロピルトリメトキシシラン(APS)を用いて、レイヤーバイレイヤー法により
赤色発光のテルル化カドミウムナノ粒子分散ガラス薄膜の作製を行った。
既報の方法(李、村瀬、ケミストリー レターズ、34巻、92ページ、2005年)に従い、テルル化カドミウムナノ粒子を作製した。すなわち、過塩素酸カドミウム(6水和物、1.095g)を水200ミリリットルに溶かし、これに界面活性剤のチオグリコール酸(TGA)を過塩素酸カドミウムに対し、1.5倍モル加えた。これに、水酸化ナトリウムの1規定水溶液を加えて、pHが11.4になるように調整した。30分脱気した後、不活性雰囲気下、激しく攪拌しながらテルル化水素ガスを導入した。さらに10分間の攪拌後、コンデンサーをつけて約100℃で還流した。還流とともにテルル化カドミウム粒子が成長し、発光波長が緑色か
ら赤色にシフトしていった。
まず、十分に長く還流して赤色発光のテルル化カドミウムナノ粒子(直径約4 nm)を取り出した。本分野で標準の方法であるキニーネの硫酸溶液を標準物質として発光効率を計算すると、47%であった。テルル化カドミウムは界面活性剤のTGAで覆われて水の中で安
定化している。これを「溶液1」とする。
次に、APSがコートされたスライドガラス(松浪硝子、No.S8111)を基体として用いて
、レイヤーバーレイヤー法で蛍光体を作製した。具体的には、図1を参照すればよい。
まず、このスライドガラスを十分な量の純水で洗い乾燥した。次に、このスライドガラ
スを、過塩素酸カドミウムを0.3M含むチオグリコール酸(TGA)の水溶液(0.15M, pH 10
、「溶液2」とする)に5分間浸漬した(図1の工程(a))。この操作により、ガラス
表面のAPSの加水分解が進むと共に、基体上のアミノ基がTGAのカルボキシル基と弱く結合した。次に、スライドガラス表面を水で洗った後、先に作製した「溶液1」に約10分間浸漬した(図1の工程(b))。スライドガラスを取り出して水洗後、APSのトルエン溶液
(APS:トルエン=1:2(体積比)、「溶液3」とする)に10分浸漬してAPSの層を作製し(図
1の工程(c))、再び取り出して水洗し乾燥した。なお、図1中、Rはメトキシ基(−OCH)を示す。
この「溶液1」〜「溶液3」に浸漬する過程を10サイクル繰り返した。この過程により作製される膜の模式図を、図1及び図2に示す。10サイクル繰り返すとナノ粒子の層が10層できる。
この薄膜蛍光体の蛍光スペクトルを測定したところ、図3(a)の(vi)のようになった。吸収波長位置から判断して、ナノ粒子の直径は3.9 nmと見積もられた。図3(a)中、(i)、(ii)、(iii)は、それぞれ、3、5、10回コートしたときの吸収スペクトルを示す。なお、測定は、市販の通常の蛍光分光光度計(日立F-4500)に付属の固体試料用アタッチ
メント(Part No.650-0161)を取り付けて行った。
積層のサイクル(回数)と、吸収スペクトルの第一吸収ピーク位置(波長630 nm 付近
)の吸光度との関係をプロットすると、図3(b)のようになった。これはゼロを通る直線になっているので、1サイクルごとにナノ粒子が同じだけコートされていることがわかる。この薄膜蛍光体の発光効率を求めたところ、24%と算出された。
次に、この試料の表面を軽く削って下地のガラスを出し、原子間力顕微鏡(ナノスコープIIIa、ディジタルインスツルメンツ社)を使って厚みを求めたところ、48 nmであった
。この厚みと、第一吸収ピーク位置の吸光度及びテルル化カドミウムナノ粒子のモル吸光係数から、この薄膜中のナノ粒子の濃度は、9×10-3モル/リットルと求められた。これから、ナノ粒子間の平均距離を算出すると、約5.7ナノメートルであることが分かった。
さらにこの試料を薄く削って観察グリッド上に載せて透過電子顕微鏡で観察すると、図4のようになった。黒い影のとして見えるのがナノ粒子である。予想通り粒径は約4nmであり、また、平均距離から考え、ナノ粒子は先に示した濃度で凝集せずに均一に分散していることが確かめられた。
図3(a)には、「溶液1」の吸収スペクトル及び蛍光スペクトルも示されている。この蛍光スペクトルをガラス薄膜中のもの(iv)と比べると、ガラスに入れることで発光が赤色側にシフトし、発光線幅が狭まっていることがわかる。これは、濃度が十分に高いために、一旦、ナノ粒子から出た発光をそのナノ粒子の近くにあるわずかに大きなナノ粒子が再吸収してから再び発光するためと考えられる。
実施例2
スライドガラスをチオグリコール酸(TGA)の水溶液「溶液2」へ浸漬する時間を7
分程度にすること以外は、実施例1と同様に処理することにより、薄膜中のナノ粒子の濃度が4×10-3モル/リットル、発光効率が25%のナノ粒子分散薄膜蛍光体が作製された。
このように、レイヤーバイレイヤー法により、濃度が10-3モル/リットルのオーダーで
しかも発光効率が20%を超えるガラス薄膜が作製できることが分かった。
実施例3
積層のサイクルを40回繰り返すこと以外は、実施例1と同様に処理することにより、薄膜中のナノ粒子の濃度が9×10-3モル/リットル、発光効率が21%のナノ粒子分散薄膜蛍光体が作製された。この場合蛍光体の膜厚は0.2μm近くになることが確かめられた。
実施例4
実施例1では、「溶液1」として作製直後のものを用いたが、公知の方法(例えばロガチュら、ベリヒテ デア ブンゼンゲゼルシャフト フィジカル ケミストリー、100巻
、1772ページ、1996年)により、ナノ粒子を沈殿させてから、再分散させたナノ粒子水溶液を「溶液1」として用いること以外は、実施例1と同様に処理した。この場合は、発光効率の良いナノ粒子だけを取り出せるので、出来上がった薄膜中のナノ粒子の発光効率も30%を超える程度に上昇した。
実施例5
実施例1で使った市販のAPSがコートされたスライドガラスに代えて、市販のコートし
ていないスライドガラス(松浪硝子、S1112)を用いてAPSのトルエン溶液で処理し、APS
がコートされたスライドガラスを作製した。
該スライドガラスの表面を洗浄して水酸基を付けるために、30%の過酸化水素水と98%の硫酸を体積比にして3:1で混合した溶液に、スライドガラスを漬けてガスが出なくなるまで放置した。処理後のスライドガラスを大量の純水で洗って乾燥した。このあと、実施例1と同様に処理して薄膜蛍光体を作製した。
このやり方を用いると、複雑な形状のものにも薄膜が形成できた。例えば、5 mL の円
筒状のガラスボトルを同様に表面処理することで、ガラスボトルの内側にも外側にも薄膜を作ることが出来た。
実施例6
実施例1では、赤色発光のテルル化カドミウムナノ粒子を用いたが、還流の初期の段階で還流を停止することにより、緑色発光のテルル化カドミウム(粒径約3 nm)が得られ
た。このナノ粒子を用いること以外は、実施例1と同様に処理した。
実施例1と同様に、予めAPSでコートされたスライドガラスを用いて、「溶液1」から
「溶液3」に浸漬する工程を5回繰り返した。このとき薄膜中のナノ粒子の発光効率は、16%であった。
実施例7
青色発光のセレン化亜鉛でも、同様に薄膜蛍光体の作製が可能であった。既報の方法(アレクセイ シャーベルら、ジャーナル オブ フィジカルケミストリー、108巻、5905
ページ、2004年)により、TGAを界面活性剤を含むセレン化亜鉛ナノ粒子の水溶液を作製
し、光照射により発光効率を上昇させた。この溶液を実施例1の「溶液1」の替わりに用いること以外は、実施例1と同様に処理することにより、薄膜蛍光体を作製した。得られた薄膜中のナノ粒子の発光効率は、16%であった。
実施例8
実施例1のAPSの替わりにMPSをトルエンに分散させたものを「溶液3」として用いること以外は、実施例1と同様にして処理することにより、薄膜蛍光体を製造した。
この場合は、図5に示すように、表面を洗浄してOH基を付着させたガラスを「溶液3」に5分間浸漬し(図5の工程(a))、さらに水に10分間浸漬した(図5の工程(b)
)。次に、実施例1の「溶液1」(赤色発光のテルル化カドミウムナノ粒子溶液)に10分
間浸漬したあと(図5の工程(c))、乾燥させた。次に、「溶液3」に再び5分間浸漬
し(図5の工程(d))、水に浸漬し乾燥させた。このようなレイヤーバイレイヤーのサイクルを10回繰り返した。
10サイクル後の薄膜蛍光体の吸収スペクトル及び蛍光スペクトルを図6に示す。また、「溶液1」の発光スペクトルも参考のために記した。これより、実施例1と同様に、恐らくは高い濃度のために、発光スペクトルがレッドシフトし、また、発光スペクトルが狭帯化していることが分かる。発光効率は、23%であった。
実施例9
レイヤーバイレイヤー法では、適切な状態を持った基体表面にマトリックスと半導体ナノ粒子が順次付着していく。このため、基体表面の状態を場所ごとに制御することで所望のパターンを作ることができる。
直径1ミリメートルの孔が縦横に並び、孔の内部にのみアミノ基が表面コートされ、孔
の外側の部分には撥水性のフッ素含有インクが印刷されているスライドガラス(松浪硝子、S3399F1)を用いること以外は、実施例1と同様にして処理した。このスライドガラス
を用いて、レイヤーバイレイヤー法を2サイクル繰り返したところ、該孔の所にのみきれ
いに赤色発光するテルル化カドミウムナノ粒子を含む薄膜蛍光体が形成された。
実施例1のレイヤーバイレイヤー法による薄膜蛍光体の形成過程の模式図を示す。 実施例1のレイヤーバイレイヤー法により形成された薄膜蛍光体の模式図を示す。 実施例1における薄膜蛍光体中及び水溶液中のテルル化カドミウムナノ粒子の吸収スペクトル及び蛍光スペクトル(a)、及び積層のサイクルと第一吸収ピーク(波長630 nm 付近)の吸光度との関係(b)を示す図である。 実施例1で得られた薄膜蛍光体の透過電子顕微鏡写真を示す。 実施例8のレイヤーバイレイヤー法による薄膜蛍光体の形成過程の模式図を示す。 実施例8の薄膜蛍光体中及びコロイド水溶液中のテルル化カドミウムナノ粒子の吸収スペクトル及び蛍光スペクトルを示す図である。

Claims (12)

  1. ガラスマトリックス中に発光効率15%以上の直径2〜5ナノメートルの半導体ナノ粒子が濃度5×10−4モル/リットル以上で分散してなる蛍光体であって、
    該蛍光体は、オルガノアルコキシシランで処理された基体を、界面活性剤を含む半導体ナノ粒子の水溶液及びオルガノアルコキシシランで交互に処理するレイヤーバイレイヤー法を用いて形成されてなり、
    該オルガノアルコキシシランが、一般式(I):
    SiX (OR) 4−n (I)
    (式中、n=1、Rはアルキル基、Xはアミノアルキル基又はメルカプトアルキル基を示す)で表される化合物であり、
    該界面活性剤が、疎水基としてチオール基、並びに親水基としてカルボキシル基、アミノ基及び水酸基からなる群より選ばれる基を有する界面活性剤であり、
    該半導体ナノ粒子が、II-VI族の化合物半導体である、
    蛍光体。
  2. 膜厚10μm以下の薄膜である請求項1に記載の蛍光体。
  3. 半導体ナノ粒子がテルル化カドミウム又はセレン化亜鉛である請求項1又は2に記載の蛍光体。
  4. 半導体ナノ粒子の発光効率が20%以上である請求項1、2又は3に記載の蛍光体。
  5. 界面活性剤が、チオグリコール酸、チオグリセロール、及びメルカプトエチルアミンからなる群より選ばれる請求項1〜4のいずれかに記載の蛍光体。
  6. 一般式(I)で表される化合物が、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APS)、又は
    メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS)である請求項1〜5のいずれかに記載の
    蛍光体。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の蛍光体と励起光源を備えた発光デバイス。
  8. さらに蛍光体の温度を50℃以下に保持するための冷却装置又は熱放散材料を備えた請求項7の発光デバイス。
  9. 基体上に蛍光体を形成する方法であって、下記の工程を含むことを特徴とする蛍光体の形成方法:
    (1)オルガノアルコキシシランで表面処理した基体を、界面活性剤を含む半導体ナノ粒子の水溶液で処理する工程、及び
    (2)上記(1)で得られる半導体ナノ粒子で処理した基体を、オルガノアルコキシシランで処理する工程
    ここで、該オルガノアルコキシシランが、一般式(I):
    SiX (OR) 4−n (I)
    (式中、n=1、Rはアルキル基、Xはアミノアルキル基又はメルカプトアルキル基を示す)で表される化合物であり、
    該界面活性剤が、疎水基としてチオール基、並びに親水基としてカルボキシル基、アミノ基及び水酸基からなる群より選ばれる基を有する界面活性剤であり、
    該半導体ナノ粒子が、II-VI族の化合物半導体である。
  10. さらに、(1’)オルガノアルコキシシランで処理した基体を、界面活性剤を含む半導体ナノ粒子の水溶液で処理する工程、及び
    (2’)半導体ナノ粒子で処理した基体を、オルガノアルコキシシランで処理する工程に供し、
    1’)及び(2’)の一連の工程を1回行うか又は2回以上繰り返すことを特徴とする請求項に記載の蛍光体の形成方法。
  11. 基体上に蛍光体を形成する方法であって、下記の工程を含むことを特徴とする蛍光体の形成方法:
    (1)オルガノアルコキシシランで表面処理した基体を、界面活性剤を含む水溶液で処理する工程、
    (2)上記(1)で得られる界面活性剤で処理した基体を、界面活性剤を含む半導体ナノ粒子の水溶液で処理する工程、及び
    (3)上記(2)で得られる半導体ナノ粒子で処理した基体を、オルガノアルコキシシランで処理する工程
    ここで、該オルガノアルコキシシランが、一般式(I):
    SiX (OR) 4−n (I)
    (式中、n=1、Rはアルキル基、Xはアミノアルキル基又はメルカプトアルキル基を示す)で表される化合物であり、
    該界面活性剤が、疎水基としてチオール基、並びに親水基としてカルボキシル基、アミノ基及び水酸基からなる群より選ばれる基を有する界面活性剤であり、
    該半導体ナノ粒子が、II-VI族の化合物半導体である。
  12. さらに、(1’)オルガノアルコキシシランで処理した基体を、界面活性剤を含む水溶液で処理する工程、
    (2’)界面活性剤で処理した基体を、界面活性剤を含む半導体ナノ粒子の水溶液で処理する工程、及び
    (3’)半導体ナノ粒子で処理した基体を、オルガノアルコキシシランで処理する工程に供し、
    (1)〜(3)の一連の工程を1回行うか又は2回以上繰り返すことを特徴とする請求項11に記載の蛍光体の形成方法。
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