JP4603165B2 - ポリオキシアルキレングリコール−カルボキシレートをベースとする安定化された水溶性ポリマー粉末及びそれを製造する方法 - Google Patents

ポリオキシアルキレングリコール−カルボキシレートをベースとする安定化された水溶性ポリマー粉末及びそれを製造する方法 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、ポリオキシアルキレングリコール−カルボキシレートをベースとする、安定化された、即ち自然発火及び酸化性分解に対して保護された水溶性ポリマー粉末及びその製法に関する。
【0002】
ポリオキシアルキレングリコール及びカルボン酸誘導体をベースとする水溶性ポリマーには、近年、一連の用途が見つけられている。水溶性コポリマーの製造の際の分散安定剤としてのその使用(WO97/30094)と並んで、これは、特に耐ベーキング性(Verbackungsresistent)分散粉末の調製の際の安定化剤(保護コロイド)としても使用される。
【0003】
しかしながら、有利に、かつ大量で、水硬性結合剤、例えばセメント、チョーク及び硫酸カルシウム結合性建材用の流動化剤として(EP−A 838444)、ラッカー及び塗料の分野での顔料分散剤として、セラミック及び耐火材料の分野での粘土及び磁器スリッカー用の加工助剤として(DE−OS 4300239)、並びに石油取得の際にそれは使用される。この際、このような製品の構造的変形範囲は、オキシアルキレングリコール含有構造単位及びカルボン酸モノマー(例えばアクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等)からのランダム、交互、ブロック又は櫛形構造のコポリマーから前記カルボン酸モノマーのポリオキシアルキレングリコール又はそれらの誘導体(エーテル、エステル)上へのグラフトコポリマーにまで及ぶ。以後これらのポリアルキレングリコール−カルボキシレートと称されるポリマーは、遊離酸としてもその塩の形でも存在することができる。
【0004】
例えば、建築工業での流動化剤用途分野におけるこのようなコポリマーの利点は、一方で、極めて僅かな使用量で、セメント様建材混合物の長時間持続的加工性を達成できる可能性にある(輸送コンクリート工業)。
【0005】
他方、この混合物の水分要求量は、高強度のコンクリートが製造可能である程度に著しく減少できる(完成部分品製造)。これら製品そのものは、毒物学的に有害な成分、例えばホルムアルデヒドを含有せず、従って、これは例えばEP−A 214412又はDE−PS 1671017による慣用のセメント流動化剤とは異なっている。一連の用途のためには、前記の水溶性ポリマーをその水性組成物の形で提供することが有意義かつ望ましい。しかしながら、そうなると、ポリマーが工場側で予め完成された乾燥混合物中の添加剤として使用されるべき場合には、この製品は、固体の、できるだけ微細に粉砕された形で、即ち粉末形で存在しなければならない。
【0006】
粉末が溶液に比べて優れている論理的かつ経済学的利点と並んで、粉末の工業的長所は、特に改善された貯蔵性及び耐凍結性にある。
【0007】
しかしながら、ポリオキシアルキレングリコール−カルボキシレートをベースとする粉末状ポリマーは、殊に、高い粉末微細性により限定された非常に大きい粉末の比表面積又は例えばサイロ中での多量の貯蔵量の場合に、自然発熱又は自然発火する傾向すらある。この傾向は高い安全性リスクである。更に、生じる高温及び空中酸素の存在が、オキシアルキレングリコール構造単位の熱酸化性分解プロセスにより製品の作用効果を低減させる。
【0008】
刊行物US−PS 4070304、US−PS 4444676、DE−OS 2557619及びEP−PS 38876から公知の安定剤又は酸化防止剤には、立体障害されたフェノール、ビスフェノール、ジアルキルジフェニルアミン、フェノチアジン及び置換されたホスファイト又はこれら物質群の混合物が包含される。
【0009】
安定剤の作用効果は、一方で、個々の代表がいかなる物質群に属するかに依存するが、他方では、これは著しく、安定化すべき基質との相容性により決められる。
【0010】
前記群からの公知の安定剤の大部分は、水に不溶性であり、従って疎水性基質、例えば酢酸ビニル、ベルサチック酸ビニル、エチレン及び2−エチルヘキシルアクリレートをベースとする分散粉末の安定化のために極めて好適である(EP−A 751175)。ポリオキシアルキレングリコールの群からの純粋な基質に対しても、前記の水に不溶な安定剤は、例えばDE−OS 4226288及びDE−OS 4300892に記載のように、優れた相容性を有する。従って、これは、これら物質群の熱酸化性安定化のために有効に使用される。
【0011】
しかしながら、安定化すべき基質が、記載のポリオキシアルキレングリコール−カルボキシレートの場合のように、極端な親水性により限定されて、疎水性安定剤とは相容性ではない場合には問題が起こる。
【0012】
従って、本発明は、慣用の安定剤の使用下に自然発熱及び熱酸化性分解に対して安定化されている、ポリオキシアルキレングリコール−カルボキシレートをベースとする水溶性ポリマー粉末を開発することを課題としている。
【0013】
この課題は、本発明により、安定化のために充分な量、殊にポリマー粉末の質量に対して0.01〜10質量%のフェノール、アミン、ホスファイト、チオエーテル及びチオ酸の群から選択された安定剤を含有する、安定化されたポリオキシアルキレングリコール−カルボキシレート−粉末を提供することにより解決された。この安定化された粉末は、安定剤を液状で又は溶解された形で、ポリマー水溶液にそれが粉末形に移行する前に添加する方法で得られている。この際、意外にも、親水性ポリオキシアルキレングリコール−カルボキシレートが疎水性安定剤を用いても、優れて安定化することができて、このポリマー粉末の試料を空気に触れて140℃に24時間加熱する際に、試料の内部の温度は200℃を越えないことが判明した。
【0014】
ポリオキシアルキレングリコール−カルボキシレートをベースとする安定化すべき水溶性ポリマー粉末とは、主鎖及び/又は側鎖中にオキシアルキレングリコール基及びカルボキシル基を有する製品である。ここで、このポリマーは、不飽和カルボン酸(−誘導体)及びオキシアルキレングリコール−アルケニルエーテルをベースとするモノマーから構成することができる。
【0015】
更に、このポリマーは、主鎖としての不飽和カルボン酸及びエステル基を介して結合しているポリアルキレンオキサイド側鎖を含有することが可能である。不飽和カルボン酸又はカルボン酸誘導体としては、殊に、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及び無水イタコン酸が好適である。ここで、このポリマーは、線状の、短鎖分枝、長鎖分枝又は軽く架橋していてよく、櫛形、星形、亜鈴形及び他の形態で存在していてよい。
【0016】
本発明の範囲内で、直ちに、安定化すべきポリマー粉末が、基本骨格又は側鎖の構成のために必要であるビニル−及び/又はアクリレートをベースとする更なる1及び/又は多不飽和モノマーを含有することも可能である。
【0017】
この例は、次のものである:スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、イソブテン、ジイソブテン、シクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、2−エチルヘキシルアクリレート、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、アリルスルホン酸、ブタジエン、アクリルニトリル及びその他類似物。
【0018】
本発明により安定化されたポリマーの例は次のものである:メタクリル酸−主鎖及びエステル基を介して結合されたポリアルキレンオキサイド−側鎖からの櫛形構造のポリマー、メチルポリエチレングリコールで(部分)エステル化された無水マレイン酸/スチレン−コポリマー、アリルポリエチレングリコール/マレイン酸−コポリマー、ビニルポリエチレングリコール/マレイン酸モノエステル−コポリマー、ポリエチレン−又はポリプロピレングリコール−基本骨格及び無水マレイン酸−又はアクリル酸−側鎖(これらは、そのものの側でエステル化又は部分エステル化されていてもよい)からなるグラフトコポリマー及びメタクリル酸及びエチレングリコールからのブロックコポリマー。
【0019】
粉末形で存在するポリマーの自然発火性及び熱酸化性分解に対する安定化のために、次の化合物群に分けることのできるフェノールをベースとする化合物を使用することができる:
1. C−原子1〜18のアルキル基1個以上を有するアルキル化されたモノフェノール、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−i−ブチルフェノール、2,6−ジ−シクロペンチル−4−メチルフェノール、2−(β−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−オクタデシル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−シクロヘキシルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシメチルフェノール、o−t−ブチルフェノール。
【0020】
2. C−原子1〜18のアルキル基1個以上を有するアルキル化されたヒドロキノン、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−t−ブチル−ヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミル−ヒドロキノン、2,6−ジ−フェニル−4−オクタデシルオキシフェノール。
【0021】
3. 置換又は非置換のC1〜4−アルキリデン基を有するアルキリデン−ビスフェノール及び/又は立体障害された多核フェノール、例えば2,2’−メチレン−ビス−(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−t−ブチル−4−エチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−t−メチル−6−(α−メチルシクロヘキシル)−フェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−ノニル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデン−ビス−(6−t−ブチル−4−又は5−イソブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−α−メチルベンジル−4−ノニルフェノール、2,2’−メチレン−ビス−(6−(α,α−ジメチルベンジル)−4−ノニルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス−(6−t−ブチル−2−メチルフェノール)、1,1−ビス−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−ブタン、2,6−ジ−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−n−ドデシル−メルカプタン、エチレングリコール−ビス−[3,3−ビス−(3’−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−ブチレート]、3,8−ビス−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−ジシクロペンタジエン、ビス−[2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチル−ベンジル)−6−t−ブチル−4−メチル−フェニル]−テレフタレート、2,2’−イソブチリデン−ビス−(4,6−ジメチル−フェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−ブタン。
【0022】
4. フェノール系ベンジル化合物、例えば1,3,5−トリ−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチル−ベンゾール、ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル)−スルファイド、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−メルカプト酢酸−イソオクチルエステル、ビス−(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)ジチオ−テレフタレート、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、1,3,5−トリス−(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−イソシアヌレート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−ホスホン酸−ジオクタデシルエステル、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−ホスホン酸−モノエチルエステル−カルシウム塩。
【0023】
5. フェノール−チオジフェニルエーテル−化合物、例えば2,2’−チオ−ビス−(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−チオ−ビス−(4−オクチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス−(6−t−ブチル−2−メチルフェノール)。
【0024】
6. アシルアミノフェノール、例えば4−ヒドロキシ−ラウリン酸アニリド、4−ヒドロキシステアリン酸アニリド、2,4−ビス−オクチルメルカプト−6−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−s−トリアジン、N−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−カルバミン酸−オクチルエステル。
【0025】
7. フェノール系エステル、例えばβ−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオン酸又はβ−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロピオン酸と1価又は多価のアルコール、例えばメタノール、ジエチレングリコール、オクタデカノール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリスリット、ネオペンチルグリコール、トリス−ヒドロキシエチル−イソシアヌレート、チオジエチレングリコール、ジ−ヒドロキシエチル−蓚酸ジアミドとのエステル。
【0026】
8. フェノール系アミド、例えばβ−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸のアミド、例えばN,N’−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)−ヘキサンメチレンジアミン、N,N−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)−トリメチレンジアミン、N,N’−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヒドラジン。
【0027】
アミンベースの安定剤として、殊に脂肪族、芳香脂肪族、芳香族、環状基を有する2級又は3級のアミン又はN−ヘテロ環化合物(例えば置換又は非置換のフェノチアジン、ベンゾチアジン又はキノリン)が使用される。この例は次のものである:N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチル−ペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチル−ペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジシクロヘキシル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−(ナフチル−2−)−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1−メチル−ヘプチル)−N’−フェニル−β−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、4−(p−トルオール−スルホンアミド)−ジフェニルアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、N−アリルジフェニルアミン、4−イソプロポキシ−ジフェニルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、オクチル化されたジフェニルアミン、例えばp,p’−ジ−t−オクチルジフェニルアミン、4−n−ブチルアミノフェノール、4−ブチルアミノ−フェノール、4−ノナノイルアミノ−フェノール、4−ドデカノイルアミノ−フェノール、4−オクタデカノイルアミノ−フェノール、ジ−(4−メトキシ−フェニル)−アミン、2,6−ジ−t−ブチル−4−ジメチルアミノ−メチル−フェノール、2,4−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−ジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,2−ジ−(フェニルアミノ)−エタン、1,2−ジ−[2−メチル−フェニル)−アミノ]−エタン、1,3−ジ−(フェニルアミノ)−プロパン、(o−トリル)−ビグアニド、ジ−[4−(1’,3’−ジメチルブチル)−フェニル]アミン、t−オクチル化されたN−フェニル−1−ナフチルアミン、モノ−及びジアルキル化されたt−ブチル−/t−オクチルジフェニルアミンの混合物、2,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−4H−1,4−ベンゾチアジン、フェノチアジン、n−アリルフェノチアジン、スチリル化されたジフェニルアミン、重合された2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン。
【0028】
ホスファイトの系(亜リン酸のエステル)から、脂肪族、芳香脂肪族及び/又は芳香族基を有する化合物を安定剤として使用することができる。その例は、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリイソブチルホスファイト、トリフェニルホスファイト及びトリス[4−ノニルフェニル]−ホスファイトである。
【0029】
チオエーテルとして、チオジ酢酸又はチオジプロピオン酸のエステル、例えばジ−ラウリル−3,3’−チオジプロピオネート又はジステアリール−3,3’−チオジプロピオネートが特に好適であることが立証された。
【0030】
チオ酸の系から、ジチオカルバミン酸−及び/又はジチオ燐酸又はそれらの塩が有利に使用される。
【0031】
安定剤は、単独でも組み合わせても使用できる。立体障害されたフェノール及びアミン並びにフェノチアジンが特に有利に使用される。
【0032】
本発明による添加量は、安定剤の作用効果に依存し、通常、有利に10〜100μmの粒度を有するポリマー粉末に対して0.01〜10質量%、殊に0.1〜1質量%の間にある。有利な1実施形によれば、水溶性ポリマー粉末と安定剤からの本発明による混合物は、付加的になお5質量%までの水溶性アミノスルホン酸化合物、例えばアミドスルホン酸及び/又はタウリンを遊離酸又は塩の形で含有する。
【0033】
安定剤を液状で又は溶解された形で、ポリマー水溶液に、それが粉末形に移行する前に添加することが発明的に重要であると見なされる。それというのも、熱酸化安定効果がこうして初めて有効にされるからである。
【0034】
ポリマー水溶液中での安定剤の乳化のために、この安定剤は液状で又は溶解された形(例えば適当な有機溶剤中に)で相応するポリマー水溶液に添加され、この際、安定剤とポリマー化合物からマイクロエマルジヨンが生じ、この安定剤の微細粒状油滴は、<100nmの粒度を有する。
【0035】
意外にも、このマイクロエマルジヨンの形成は、界面活性剤又は保護コロイドの形の更なる添加物なしでも、強い剪断力の分散装置を用いないでも成功する。
【0036】
安定剤及びポリマー化合物から成るマイクロエマルジヨンを粉末形に移行するためには、水及び場合によっては有機溶剤からなる液相を除去することが必要であり、これは慣用法で、例えばスプレー乾燥を用いて直ちに行うことができる。
【0037】
この場合に、粉末形に移行する前のポリマー水溶液のpH−値を6〜10、有利に7〜9に調節することが特に有利であることが立証された。この際、このポリマー水溶液は、10〜50質量%の固体含分を有するのが有利である。この乳化工程を用いて、ポリオキシアルキレングリコール−カルボキシレートをベースとする水溶性ポリマー粉末を疎水性化合物を用いても安定化することができ、この際、ポリマー粉末及び安定剤は吸着性交換作用によって極めて微細粒状のコロイド系に移行される。この際、多電解質−分子で被覆されたコロイド粒子は、静電気的(カルボキシル基)にも、立体的(ポリオキシアルキレングリコール基)にも、熱動力学的に優れた状態が達成されるように安定化される。
【0038】
この安定剤の微細性により生じる高い表面積は、更に、安定化すべき基質の各々の分子を達成させ、それにより優れた作用効果が生じる。
【0039】
従って、自然発火及び酸化性分解に対して本発明により保護されたポリマー粉末は、それが高い温度及び酸化性影響(空気、酸素)に曝される際でも予想外に高い熱酸化安定性を有する。
【0040】
次の実施例につき本発明を詳述する。
【0041】
例1
ビーカー中に、メタクリル酸75モル%及び平均分子量1100g/モルのメタクリル酸とメチルポリエチレングリコールとからのエステル25モル%からのランダムに構成されたカルシウム塩として存在するコポリマーの36質量%溶液200gを室温で予め装入した。7.2のpH値を有するこの溶液に、引き続き撹拌下に、商品名ADDITIN RC 7135を有する、スチレン化されたジフェニルアミンをベースとする安定剤0.36gを加えた。安定なエマルジヨンが得られたので、これを水200gで希釈し、NIRO−アトマイザー社の実験室用スプレー乾燥器中で粉末に移行させた(流入温度180℃、流出温度105℃)。得られた粉末を、それを流動性の形に変じるために、高分散性珪酸0.30gで処理した。80μm−篩を通す凝集した粒子の篩別の後に、平均粒径28μm(空気流篩分析)を有する白色粉末が得られた。
【0042】
比較例1
例1を繰り返すが、安定剤ADDITIN RC 7135添加せずにスプレー乾燥を行った。得られた白色粉末の平均粒径は32μmであった。
【0043】
比較例2
比較例1で得られた粉末に、後にADDINTIN RC 7135 0.35gを加え、引き続きローラミル上で36時間混合した。残る粉末の平均粒径は25μmであった。
【0044】
その引火性に関するこの粉末の特徴付けを、”Testkriterien und Testverfahren zur Einstufung von gefaehrlichen Stoffen der Gefahrgutklassen 4.1,4.2,4.3 und 5.1”(K.O.Storck Verlag、Hamburg)に従って行った:
クラス4.1 発火性固体物質
クラス4.2 自然発火性物質
クラス4.3 水との接触時に発火性のガスを形成する
クラス5.1 発火(酸化性)作用する物質。
【0045】
クラス4.1の等級に達するためには、一辺の長さ10cmのサイコロ状ワイヤ網(Bowes-Cameron-Korb)中で、1リットルの粉末量(嵩容量、600〜700gに相当)の140℃(内部温度)で24時間にわたる長時間加熱の際に、自然発火は起こらず、24時間貯蔵の後の試料の内部の温度は、200℃を越えないことが確保されるべきである。この基準が満足しないと、クラス4.2、4.3又は5.1の等級に分類され、これは製造、貯蔵、流通及び取り扱いの際の安全技術的コストを、市場提供に問題が生じる程度に著しく高める。
【0046】
この試験の実施のために、試料容器を有するワイヤ籠に試験すべきポリマー粉末を充填する。この容器を数回軽く打ち、粉末の沈下の後に再び充填する。最後に盛り上がっている物質を掻き落とす。引き続き、試験物質で完全に充填されているこのワイヤ籠を、140℃まで予備加熱された乾燥箱中におき、この物質サイコロの中央にサーモエレメントを配置する。第2のサーモエレメントを、DEWAR−容器中に存在するグラファイト比較試料中に設置する。双方の温度を、24時間にわたり連続的に測定値検出系SIPCONを用いて連続的に測定し、グラフで評価する。
【0047】
例1により製造されたポリマー粉末では全24時間の試験時間にわたり、140℃の一定温度が測定されるが、比較例1による粉末は、既に3.7時間の後に200℃−限界値を超え、短時間以内に熱酸化性分解下に464℃まで温度上昇する。
【0048】
比較例2:6.8時間後に200℃−限界を超過
(Tmax=430℃)
本発明方法で安定化されたポリエーテルカルボキシレートは、危険品規格のクラス4.1に分類されるが、比較例1及び2の製品は自然発火性物質の群(クラス4.2)に分類される。
【0049】
例2〜10
例1に記載の35質量%ポリマー溶液に対して、次の安定剤それぞれ0.60質量%(ポリマー固体に対して)を乳化させた(第1表)。
【0050】
【表1】
Figure 0004603165
【0051】
1)2,6−ジ−t−ブチル−4−メチル−フェノール(Great Lakes)
2)2,6−ジ−t−アミル−ヒドロキノン(Great Lakes)
3)2,2’−メチレン−ビス−(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)Rhein Chemie)
4)4,4’−チオ−ビス−(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)(Great Lakes)
5)ペンタエリスリチル−テトラキス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート(Ciba)
6)オクチル化されたジフェニルアミン(Bayer)
7)ジ−ステアリ−ル−3,3’−チオジプロピオネート (Ciba)
8)トリス−[2−t−ブチル−4−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチル)−フェニルメルカプト−5−メチルフェニル]−ホスファイト(Clariant)。
【0052】
本発明により安定化された混合物のいずれの場合にも、200℃の臨界温度閾を越えない。
【0053】
例11〜20
例1〜10で使用された安定剤を、例1に記載の方法により、次の例に記載のポリマーの安定化のために使用した(第2表):
【0054】
【表2】
Figure 0004603165
【0055】
1)ポリマー特質(製品はNa−塩として存在):
A:メチルポリエチレングリコール−1100で50モル%部分エステル化された、スチレンと無水マレイン酸とからの1:1−コポリマー(Mn=19000g/モル)
B:メチルポリエチレングリコール−1100−モノビニルエーテルと無水マレイン酸とからの1:1−コポリマー(Mn=23000g/モル)
C:アリルポリエチレングリコール−1100と無水マレイン酸とからの1:1−コポリマー(Mn=13000g/モル)
D:メチルポリエチレングリコール−500と無水マレイン酸(モル比1:1.8)とからの50モル%部分エステル化されたグラフトコポリマー
2)スチレン化されたジフェニルアミン(Rhein Chemie )
3)第1表参照
4)第1表参照
5)第1表参照
6)タウリン−Na−塩0.26%(ポリマー固体に対する質量)の付加的使用 安定剤の添加なしでは、ポリマーA〜Dに関して次の結果が得られた(第3表):
【0056】
【表3】
Figure 0004603165
【0057】
1)ポリマー特質:第2表参照。

Claims (25)

  1. ポリオキシアルキレングリコール−カルボキシレートをベースとする自然発火及び酸化性分解に対して保護された水溶性ポリマー粉末において、これは、ポリマー粉末に対して0.01〜10質量%の量のフェノール、芳香脂肪族、芳香族及び/又は環状基を有する2級又は3級アミン又はN−ヘテロ環化合物、ホスファイト、チオエーテル及びチオ酸の群から選択された安定剤を含有し、かつ、この安定剤を液状で又は溶解された形で、ポリマー水溶液に、それが粉末形に移行する前に添加することにより得られており、かつポリマーがメタクリル酸−主鎖及びエステル基を介して結合されたポリアルキレンオキサイド−側鎖からの櫛形構造のポリマー、メチルポリエチレングリコールで(部分)エステル化された無水マレイン酸/スチレン−コポリマー、アリルポリエチレングリコール/マレイン酸−コポリマー、ビニルポリエチレングリコール/マレイン酸モノエステル−コポリマー、ポリエチレン−又はポリプロピレングリコール−基本骨格及び無水マレイン酸−又はアクリル酸−側鎖からなるグラフトコポリマー及びメタクリル酸及びエチレングリコールからのブロックコポリマーであることを特徴とする、ポリオキシアルキレングリコール−カルボキシレートをベースとする安定化された水溶性ポリマー粉末。
  2. ポリマーは、不飽和カルボン酸及びオキシアルキレングリコールアルケニルエーテルをベースとするモノマーから構成されている、請求項1に記載のポリマー粉末。
  3. ポリマーは、主鎖としての不飽和カルボン酸及びエステル基を介して結合したポリアルキレンオキサイド−側鎖を有する、請求項1に記載のポリマー粉末。
  4. ポリマーは、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、イソブテン、ジイソブテン、シクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、2−エチルヘキシルアクリレート、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、アリルスルホン酸、ブタジエン又はアクリルニトリルを含有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載のポリマー粉末。
  5. 安定剤の量は、ポリマー粉末に対して0.1〜1質量%である、請求項1から4までのいずれか1項に記載のポリマー粉末。
  6. 安定剤は、C−原子1〜18のアルキル基1個以上を有するアルキル化されたモノフェノールを包含する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリマー粉末。
  7. 安定剤は、C−原子1〜18のアルキル基1個以上を有するアルキル化されたヒドロキノンを包含する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリマー粉末。
  8. 安定剤は、C1〜4−アルキリデン基を有するアルキリデン−ビスフェノール及び/又は立体障害された多核フェノールを包含する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリマー粉末。
  9. 安定剤はフェノール系ベンジル化合物を包含する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリマー粉末。
  10. 安定剤は、フェノール−チオジフェニルエーテル−化合物を包含する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリマー粉末。
  11. 安定剤は、アシルアミノフェノールを包含する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリマー粉末。
  12. 安定剤は、β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオン酸又はβ−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロピオン酸のエステルを包含する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリマー粉末。
  13. 安定剤は、β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸のアミドを包含する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリマー粉末。
  14. N−ヘテロ環化合物は、フェノチアジン、ベンゾチアジン及び/又はキノリンから選択される、請求項1に記載のポリマー粉末。
  15. 安定剤は、脂肪族、芳香脂肪族及び/又は芳香族基を有するホスファイトを包含する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリマー粉末。
  16. チオエーテルをベースとする安定剤は、チオジ酢酸及び/又はチオジプロピオン酸のエステエルを包含する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリマー粉末。
  17. 安定剤は、ジチオカルバミン酸、ジチオ燐酸及び/又はそれらの塩の群から選択されたチオ酸を包含する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリマー粉末。
  18. 10〜100μmの粒度(空気流篩分析)を有する、請求項1から17までのいずれか1項に記載のポリマー粉末。
  19. 付加的に5質量%までの水溶性アミノスルホン酸−化合物を含有する、請求項1から18までのいずれか1項に記載のポリマー粉末。
  20. アミノスルホン酸−化合物は、遊離酸の形の又は塩としてのアミドスルホン酸及び/又はタウリンから選択されている、請求項19に記載のポリマー粉末。
  21. 粉末の試料を140℃まで24時間加熱する際に、試料の内部の温度は200℃を越えない、請求項1から20までのいずれか1項に記載のポリマー粉末。
  22. 請求項1から21までのいずれか1項に記載のポリマー粉末を製造するために、
    (a)フェノール、アミン、ホスファイト、チオエーテル並びにチオ酸の群から選択された安定剤を、安定化のために充分な量で、液状で又は溶解された形で、ポリオキシアルキレングリコール−カルボキシレートをベースとするポリマーの水溶液に添加して、マイクロエマルジヨンを形成させ、引き続き、
    (b)このポリマーを、液相の除去によりポリマー粉末に移行させる
    ことを特徴とする、請求項1から21までのいずれか1項に記載のポリマー粉末を製造する方法。
  23. ポリマー水溶液を、粉末形に移行する前に、6〜10、有利には7〜9のpH−値に調節する、請求項22に記載の方法。
  24. ポリマー水溶液は、10〜50質量%の固体含分を有する、請求項22又は23に記載の方法。
  25. 液相の除去を、乾燥により行う、請求項22から24のいずれか1項に記載の方法。
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