以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
本発明の熱交換器は、タンクとコアプレートとの間をシールするための構成に特徴があり、チューブの内部を流れる熱交換媒体としての内部流体とチューブの周囲を通過する外部流体との間で熱交換が行われる機器に適用され、例えば、ラジエータ、インタークーラー等に適用することができる。本実施形態ではエンジン(図示せず)を冷却する冷却水(内部流体)がチューブ内部を流れ、この冷却水が外部流体の空気と熱交換されるラジエータ1に用いた好適例を説明する。本発明の一実施形態である第1実施形態について図1〜図20を用いて説明する。
図1は本実施形態のラジエータ1の概要を示す正面図である。図2は図1のラジエータ1をII方向に見たときの側面図である。図3は、図1の切断面III−IIIにおけるラジエータ1を矢印方向に見たときの部分断面図である。図4は、図2の切断面IV−IVにおけるラジエータ1を矢印方向に見たときの部分断面図である。図1および図4に示すX方向はタンク部およびコアプレートの幅寸法の長い長手方向、チューブもしくはフィンの積層方向、または左右方向である。図2および図3に示すY方向はタンク部およびコアプレートの幅寸法の短い短幅方向、または外部流体の流通方向である。
ラジエータ1は、上部タンク2、コア部アッシィおよび下部タンク3からなっている。コア部アッシィは、上部コアプレート4、コア部8および下部コアプレート5からなっている。各構成部材は例えばアルミニウム、アルミニウム合金等の金属でできており、ろうつけによって接合されている。各構成部材は表面にろう材が塗布されたクラッド材であってもよい。コア部8は、複数のチューブ8aおよび複数の放熱用のフィン8bからなり、各部はろうつけによって接合されている。コア部8は、各チューブ8a内を流通する冷却水の熱を複数のチューブ8aおよびフィン8bを介して大気中に放出する熱交換部である。
チューブ8aはその長手方向を上下方向にして所定間隔を設けて多数個並列されており、隣り合うチューブ8a間には波状に形成されたフィン8bがチューブ8aの長手方向に沿って配置されている。チューブ8aとフィン8bとが交互に積層するように配置されている。チューブ8aは、それぞれ所定の形状に成形された板状部材同士を組み合わせることによって形成される扁平状の管である。フィン8bは、平板を波形状に成形して形成されており、チューブ8aの長手方向に延設されている。フィン8bには、外部流体の流通方向(図のY方向)に対して所定の角度をなすように切り起こされた多数のルーバ(図示せず)が設けられており、多数のルーバはフィン8bの熱伝達率を向上させている。
上部タンク2および下部タンク3は、ともに樹脂またはアルミニウム、アルミニウム合金等の金属からなる略同等の形状の部品である。上部タンク2は設置状態でその下部が開口し、上部が閉じている細長い椀状体である。下部タンク3は設置状態でその上部が開口し、下部が閉じている細長い椀状体である。上部タンク2は長手方向(図のX方向)の両端のうち一端側に冷却水の流入口を形成する流入管21を備え、下部タンク3は長手方向(図のX方向)の両端のうち他端側に冷却水の流出口を形成する流出管31を備えている。
この流入管21および流出管31は、それぞれ略同等の円筒状のパイプ部材である。流入管21は上部タンク2の側面の一端側に開口された穴にろうつけ接合され、流出管31は、下部タンク3の側面の他端側に開口された穴にろうつけ接合されることにより、冷却水が上部タンク2、複数のチューブ8a、および下部タンク3のそれぞれの内部に流通するようになっている。
上部コアプレート4は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金等の金属からなる平板を矩形状(この矩形状は完全な矩形および略矩形を含むものとする)に成形して形成された部材である。上部コアプレート4は、上部タンク2の下部に蓋をするように上部タンク2下端の開口された部分と接合されて一体になる。上部コアプレート4には複数のチューブ8aの上端部が挿入される挿通穴4cがチューブ8aの個数だけ開口されている。複数のチューブ8aはその上端部が上部コアプレート4の挿通穴4cに嵌合された状態で、当該上端部の全外周がろうつけ接合されて、上部コアプレート4に接続固定される。
上部コアプレート4は、所定の間隔をあけて長手方向(図のX方向)に並ぶ複数の挿通穴4cを取り囲むように環状に形成された溝部4aを備えている。溝部4aは、上部コアプレート4の外周縁部近傍の全周に設けられ、上方に起立する外側壁4e、外側壁4eから溝幅分離れて起立する内側壁4d、および外側壁4eと内側壁4dとをつなぐ底壁4fによって形成された凹部である。環状の溝部4aは、その外形が略矩形状(外周縁部が長方形を形作る形状)を呈しており、平行に向かい合う一対の長手方向に延設された長手側部分41(以下、上部コアプレートの長手側部分41ともいう)の溝部と、この長手側部分41の溝部と交差するように短幅方向に延設され、平行に向かい合う一対の短幅側部分42(以下、コアプレートの短幅側部分42ともいう)の溝部と、から形成されている。また、一対の長手側部分41と一対の短幅側部分42とが交差する部分は、溝部4aにおける4箇所の角部分43である。
外側壁4eの上端は部分的に突出するように形成されている。外側壁4eの上端は、上部コアプレート4を側方から見ると、所定幅の爪部4bが凹部を間において並ぶように複数個形成されている。この複数の爪部4bは上部タンク2と上部コアプレート4とを組みつけたときに内側に折り曲げられて、上部タンク2を上部コアプレート4に固定する機能を果たす。
下部コアプレート5も上部コアプレート4と略同等の形状、構成および材質である。すなわち、下部コアプレート5は、下部タンク3の上部に蓋をするように下部タンク3上端の開口された部分と接合されて一体になる。下部コアプレート5には複数のチューブ8aの下端部が挿入される挿通穴がチューブ8aの個数だけ開口されている。複数のチューブ8aはその下端部が下部コアプレート5の挿通穴に嵌合された状態で、当該下端部の全外周がろうつけ接合されて、下部コアプレート5に接続固定される。下部コアプレート5は、上部コアプレート4と同様に、所定の間隔をあけて長手方向(図のX方向)に並ぶ複数の挿通穴を取り囲むように形成された前述の溝部と、内側に折り曲げられて下部タンク3を下部コアプレート5に固定する外側壁に形成された前述の爪部と、を備えている。
このように、上部コアプレート4と下部コアプレート5は、複数のチューブ8aの上下両側を挟むようにして一体になっている。さらにコア部8は、隣り合うチューブ8a間にフィン8bが装着され、チューブ8aおよびフィン8bが積層される方向(X方向)の最外側にチューブ8aおよびフィン8bを補強するように保持するサイドプレート6,7が装着されることにより形成される。
図3および図4に示すように、上部タンク2下部の外周縁部2aと、上部コアプレート4の溝部4aとの間には、シール部材であるパッキン10が介在している。上部タンクの外周縁部2aおよび上部コアプレート4の溝部4aは、上部タンク2と上部コアプレート4との接合部でもある。パッキン10は、当該外周縁部2aの端面と溝部4aの底壁4fとによって挟まれることによって弾性変形することにより上部タンク2と上部コアプレート4の間の隙間を埋めるように上部タンク2および上部コアプレート4に密着し、上部タンク2内の冷却水が外部に漏れないようにシールしている。上部タンク2下部には、外周縁部2aと一体となって外方に張り出している鍔部2cが全周に設けられている。
上部タンクの外周縁部2aの端面には、この端面からパッキン10に向けて突出する凸条部2bが全周に設けられている。凸条部2bは所定の幅を有する筋状の突出部分であり、パッキン10の上面に対する押しつけ圧力を局所的に高め、パッキン10のシール性を高めている。図4に示すように、上部タンク2が上部コアプレート4に固定されている固定されている状態において、凸条部2bはパッキン10の帯状部(ゴム材)の幅方向略中央(略中央は中央も含む)を押える位置にある。凸条部2bはその先端が湾曲面で形成されており、断面形状が略半円形状であることが好ましい。
また、パッキン10は、その短幅側部分12において、溝部4aの外側壁4eよりも内側壁4d寄りに位置するように配置されている。換言すれば、パッキン10は、その短幅側部分12の断面の中心が溝部4aの短幅側部分42における溝幅の中心よりも内側(内側壁4d寄り)になるように設けられている。
図5はパッキン10を上部コアプレート4に取りつけた状態を示す平面図である。図5に示すように、パッキン10は、上部コアプレート4の外側壁4eの内側に環状に形成された溝部4aの全周に設置されている。パッキン10は、長手側部分11における内周壁面11aまたは短幅側部分12における内周壁面12aが上部コアプレート4の内側壁4dに接触するように配置されて、その位置が移動しないように保持されている。
パッキン10は、所定の圧縮率を有して環状に形成された弾性部材であり、溝部4aの溝幅寸法Bよりも細い寸法Aの幅を有するゴム材が一続きとなって形成された環状体である。パッキン10は、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコン系ゴム等でできている。ここでいう環状のパッキン10とは、円形の環状に限定するものではなく、途切れることなく一続きで形成される様々の形状を広く含んだパッキンである。パッキン10は、好ましくは、組み合わされる上部コアプレート4、下部コアプレート5のそれぞれに形成された溝部の形状に合わせて形成される。また、例えば、組み合わされるコアプレートの溝部が矩形の環状である場合には、当該溝部に装着可能な矩形の環状(図12参照)、または矩形以外の環状(例えば、円形状、楕円形状)のパッキン10を採用する。
パッキン10は、その外形が組み合わされるコアプレートの溝部の大きさよりも小さい形状である。例えば、パッキン10の断面の中心を通る軸線の全長(以下、パッキン10の軸線の周長ともいう)が、外力を受けていない自然状態(自然長の状態)で、組み合わされるコアプレートにおける溝部の軸線の全長(以下、溝部の軸線の周長ともいう)よりも短いパッキン10を採用する。パッキン10の軸線とはパッキン10の断面の中心を通る線であり、溝部の軸線とは溝部を構成する底壁の幅の中心を通る線である。また、換言すれば、パッキン10の軸線の周長は、環状のパッキン10の軸線の全長でもあり、溝部の軸線の周長は、環状の溝部の軸線の全長でもある。この場合には、パッキン10は弾性を有するため、溝部よりも軸線の周長が短いパッキン10を引き伸ばした状態で溝部に設置することができる。そして、パッキン10を引き伸ばして設置した後、引き伸ばし力を取り除くと、パッキン10は元の状態に収縮しようとする復元力によってコアプレートの内側壁に密着するようになり、位置決めされてコアプレートに保持される。
環状のパッキン10の全体形状を矩形状とした場合には、自然長のパッキン10における一対の長手側部分11の長さ(パッキン10の長手方向長さともいう)を溝部4aの長手側部分41の長さ(溝部4aの長手方向長さともいう)よりも短くなるようにパッキン10を形成する。この構成を採用することによってパッキン10の軸線の周長を溝部4aの軸線の周長よりも短くしてもよい。
図6は、パッキン10の短幅側部分12の長さDpを溝部の短幅側部分42の長さDよりも短くしたパッキン10の平面図である。図6において二点差線で示したパッキン10は、溝部の短幅側部分42の長さDに相当する長さに引き伸ばされた状態である。図6に示すように、自然長のパッキン10における一対の短幅側部分12の長さ(パッキン10の短幅方向長さともいう)を溝部4aの短幅側部分42の長さ(溝部4aの短幅方向長さともいう)よりも短くなるようにパッキン10を形成する。この構成を採用することによってパッキン10の軸線の周長を溝部4aの軸線の周長よりも短くしてもよい。
また、パッキンは図7に示すパッキン10Aのような形状であってもよい。図7は、パッキン10Aの長手側部分11の長さLpを溝部の長手側部分41の長さLよりも短くしたパッキン10Aの平面図である。図7において二点差線で示したパッキン10Aは、溝部の長手側部分41の長さLに相当する長さに引き伸ばされた状態である。図7に示すように、パッキン10Aは、自然長のパッキン10Aにおける一対の長手側部分11の長さ(パッキン10の長手方向長さともいう)を溝部4aの長手側部分41の長さ(溝部4aの長手方向長さともいう)よりも短くなるように形成されている。この構成を採用することによってパッキン10の軸線の周長を溝部4aの軸線の周長よりも短くしてもよい。
パッキンとして図6に示す形態のものを用いた場合には、パッキン10は、弾性力により内側に向けて(図8(a)に示す矢印の方向)収縮し、その長手側部分11における内周壁面11aが溝部4aの内側壁4dに当接するように保持される。そして、パッキン10は、内周壁面11aと内側壁4dが接触した状態で上部タンクの外周縁部2aによって溝部4aに押しつけられて固定される。図8(a)は図5の切断面VIII−VIIIを矢印方向に見たときの部分断面図である。このときパッキン10は、その長手側部分11において、溝部4aの外側壁4eよりも内側壁4d寄りに位置するように配置されている。換言すれば、パッキン10は、その長手側部分11における断面の中心(一点鎖線14上のパッキン10の中心)が溝部4aの長手側部分41における中心よりも内側(内側壁4d寄り)になるように設けられている。そして、パッキン10に対する凸条部2bの位置はパッキン10の帯状部の幅方向略中央部分を押える位置に設定されている。
パッキンとして図7に示す形態のものを用いた場合には、パッキン10Aは、弾性力により内側に向けて(図9(a)に示す矢印の方向)収縮し、その短幅側部分12における内周壁面12aが溝部4aの内側壁4dに当接するように保持される。そして、パッキン10Aは、内周壁面12aと内側壁4dが接触した状態で上部タンクの外周縁部2aによって溝部4aに押しつけられて固定される。図9(a)は図5の切断面IX−IXを矢印方向に見たときの部分断面図である。このときパッキン10Aは、その短幅側部分12において、溝部4aの外側壁4eよりも内側壁4d寄りに位置するように配置されている。換言すれば、パッキン10Aは、その短幅側部分12における断面の中心(一点鎖線14上のパッキン10の中心)が溝部4aの長手側部分41における中心よりも内側(内側壁4d寄り)になるように設けられている。上記と同様に、パッキン10Aに対する凸条部2bの位置はパッキン10Aの帯状部の幅方向略中央部分を押える位置に設定されている。
パッキンは、溝部に対して図8(a)や図9(a)に示す位置に配置される他、図8(b)や図9(b)に示す位置に配置するようにしてもよい。図8(b)および図9(b)のそれぞれはパッキンが溝部の外側壁4eに当接して装着されている場合を示した部分断面図である。このときパッキン10は、その長手側部分11の内周壁面11aまたは短幅側部分12の内周壁面12aが溝部4aの内側壁4dに当接するように保持される。そして、パッキン10は、内周壁面11aまたは内周壁面12aと内側壁4dが接触した状態で上部タンクの外周縁部2aによって溝部4aに押しつけられて固定される。このときパッキン10は、溝部4aの内側壁4dよりも外側壁4e寄りに位置するように配置されている。換言すれば、パッキン10の断面の中心(一点鎖線14上のパッキン10の中心)は、溝部4aの中心よりも外側(外側壁4e寄り)になるように設けられている。この場合でも、パッキン10に対する凸条部2bの位置はパッキン10の帯状部の幅方向略中央部分を押える位置に設定されている。
以上のようにパッキン10,10Aは、コアプレートの溝部に対して所定の位置に位置決めされて配置された状態で、凸条部2bによってその帯状部における幅方向中央部分を押圧されて一定以上の反発力を発揮する。これにより、パッキンがラジエータ1の組立工程中に移動することなく、内側壁4dおよび底壁4fと上部タンクの外周縁部2aとの隙間を確実に埋めることができ、安定したシール性を発揮することができる。
図10は、パッキン10が溝部の内側壁4dおよび外側壁4eのいずれにも当接しないで装着されている場合を示した部分断面図である。図10に示すように、パッキン10は、その長手側部分11の内周壁面11aが溝部4aの内側壁4dに当接するように保持されている場合には、その短幅側部分12の内周壁面12aは溝部4aの内側壁4dに当接していなくてもよい。逆に、パッキン10の短幅側部分12の内周壁面12aが溝部4aの内側壁4dに当接するように保持されている場合には、長手側部分11の内周壁面11aは溝部4aの内側壁4dに当接していなくてもよい。このときも上記と同様に、パッキン10に対する凸条部2bの位置はパッキン10の帯状部の幅方向略中央部分(一点鎖線14が通るパッキン10の上端部)を押える位置に設定されている。
以上のように、パッキン10は、長手側部分11および短幅側部分12の少なくともいずれか一方で、溝部4aの内側壁4dおよび外側壁4eの少なくともいずれか一方に当接することにより位置決めされて、コアプレートに装着されるものである。
以上の構成を有するラジエータ1を流通する冷却水の流れを説明する。エンジンから流出し、流入管21内を通って流入した冷却水は、上部タンク2内に入った後、上部コアプレート4に接続された複数個のチューブ8a内に分配されてコア部8を流れ、コア部8を流れる間に外部流体(空気)と熱交換されて放熱し冷却される。そして冷却された冷却水は、下部タンク3内から流出管31内を通って流出し、エンジンに向けて流れる。
以下、熱交換器の一例である本実施形態のラジエータ1について作用効果を述べる。ラジエータ1は、上部タンク2からの押しつけ力を受けて弾性変形して上部タンク2と上部コアプレート4との接合部を封止するパッキン10を備えている。パッキン10は、上部コアプレート4の溝部4aの溝幅寸法Bよりも細い寸法Aの幅を有する帯状部(ゴム材)が一続きとなる環状である。このパッキン10は、溝部4aの内側壁4dおよび外側壁4eの少なくともいずれか一方に当接してコアプレートに取り付けられ、位置決めされている。さらに、上部タンク2が上部コアプレート4に組みつけられた状態では、凸条部2bはパッキン10の当該位置決めされている部分の帯状部における幅方向略中央部分を押えている。
この構成によれば、パッキンが溝部4aにおける上記所定の位置に位置決めされ、パッキンの幅方向略中央がタンクの凸条部2bで押されているため、タンクの押しつける力がパッキンに十分に伝わってパッキンが確実かつ十分に圧縮されることになり、コアプレートおよびタンクに対するパッキンの十分な反発力を生じさせることができる。これにより、所望のシール性能を確保する製品が得られる。
また、環状の溝部4aは、向かい合う一対の長手方向に延設された長手側部分41の溝部と、長手側部分41の溝部と交差するように延設された向かい合う一対の短幅側部分42の溝部と、を含む略矩形状である。そして、パッキン10は、長手側部分41の溝部または短幅側部分42の溝部のいずれかにおいて、溝部4aの内側壁4dまたは外側壁4eのいずれかに弾性によって当接した状態でコアプレートに装着されている。
この構成を採用した場合には、パッキンの長手側部分11または短幅側部分12のいずれか片方が溝部4aに対して所定の位置で固定されるので、パッキンの片方側部分の復元力を考慮したパッキンの位置決めや取り付け作業を行えばよい。したがって、一層、製品の生産性を向上させることができる。
また、パッキン10は、弾性変形していない自然長の状態でその断面の中心を通る軸線の全長が環状の溝部4aの溝幅の中心を通る軸線の全長よりも短くなるように形成されている。
この構成によれば、上部コアプレート4の溝部4aに対して予め上記所定の寸法に設計したパッキンを準備し、このパッキンの伸ばした状態からの復元力を利用して溝部4aに取り付けるため、復元力に応じた固定力でパッキンをコアプレートに取り付けることができ、コアプレートに対して製造工程において容易に動かないパッキンを提供できる。したがって、タンクとコアプレートとの間をシールするパッキンを簡単な構成により所定の位置で取りつけできるラジエータ(熱交換器)が得られる。また、製造工程におけるラジエータ(熱交換器)の向きが制限されない。さらに、パッキンを溝部に取り付ける作業性および確保すべきパッキンの圧縮率を考慮に入れて、パッキンの上記寸法を適切に設定すれば、パッキンのシール性および生産性の両面を向上することができる。
また、パッキン10を、短幅側部分42の溝部において、その復元力により溝部4aの内側壁4dに当接させて取りつけた状態でタンクによって押さえた場合には、パッキン10が内側壁4dに当接する部分の面積が小さくなり、パッキン10に作用する面圧を高くすることができる。これにより、パッキンの固定力が確保され、パッキンを所定の位置により安定して取りつけることができる。
また、パッキン10は、向かい合う一対の長手方向に延設された長手側部分11と、長手側部分11と交差するように延設された向かい合う一対の短幅側部分12と、を含み、外形が略矩形状である。さらにパッキン10は、一対の長手側部分11または一対の短幅側部分12のいずれかの長さが環状の溝部4aにおける一対の長手側部分41または一対の短幅側部分42の長さに対して短くなるように形成されている。
この構成を採用した場合には、溝部4aの長さに対して短くなっているパッキン10の長手側部分11または短幅側部分12のいずれかを引き伸ばした状態で溝部に配置することによって、略矩形状のパッキン10における一軸方向の復元力を利用することができる。これにより、溝部4aに対するシール部材の位置決めが行いやすく、パッキンの取りつけ作業性も良好になる。
また、環状の溝部4aは、底壁4fと、底壁4fに対して垂直に起立する外側壁4eと、外側壁4eに対して平行で底壁4fに対して垂直に起立する内側壁4dとによって囲まれて形成されている。この構成を採用した場合には、溝部を形成する略U字状の各壁面とパッキンとが接触しやすくなり、パッキンを溝部に対して安定して設置できる。
また、断面形状が矩形状であるパッキン10を採用した場合には、パッキンの溝部4aと接触する部分の面積が大きくなり、パッキンはタンクによってコアプレートに押しつけられる前の取りつけ状態がより安定し、所定の位置に配置しやすくなる。
また、タンクの凸条部2bはその先端が湾曲面で形成されている。この構成により、パッキンが略球面等の湾曲面によって直接押圧されるため、パッキンに対する局所的圧力を軽減できる。これにより、パッキンの損傷を抑制することができるとともに、損傷に心配がないためパッキンに対して十分な押しつけ力を与えることができる。
次に、本実施形態のラジエータ1の製造方法について図11〜図20にしたがって説明する。熱交換器(ラジエータ1)の製造工程は、以下に説明するコアプレート成形工程、コア部アッシィ組立工程、ろうつけ工程、シール部材装着工程、およびタンク装着工程からなる。さらにシール部材装着工程は、シール部材引き伸ばし工程およびシール部材配置工程を含んでいる。図11は上部コアプレート4の構成を示す斜視図である。図12はパッキン10の構成を示す斜視図である。なお、理解を容易にするため、図14〜図20の各図は、コア部8を削除した図面としている。
まず、上部コアプレート4および下部コアプレート5のそれぞれを前述の所定の形状に成形するコアプレート成形工程を行う(図11および図12参照)。このコアプレート成形工程では、板材をプレス機械や圧延機械により成形加工することによって上部コアプレート4と下部コアプレート5を作成する。この上部コアプレート4および下部コアプレート5のそれぞれに形成された溝部は、その長手方向長さがパッキン10の長手方向長さよりも長くなるように形成するものとする。
次に、コア部アッシィを仮組みするコア部アッシィ組立工程を行う。コア部アッシィ組立工程では、まず、前述の複数個のチューブ8aとフィン8bとを交互に積層して組み立て、さらに、各チューブ8aの上端部を上部コアプレート4に、下端部を下部コアプレート5にそれぞれ挿入固定するとともに、左右方向(X方向)からサイドプレート6,7で支持することにより、仮組みする。次に、仮組みしたコア部アッシィをろうつけ接合するろうつけ工程を行う。この工程では、コア部アッシィに対して仮組みした状態でフラックスを塗布し、炉中にて各部をろうつけ接合する。これにより、コア部アッシィが作成される。
ろうつけ工程では、前の工程で仮組みしたコア部アッシィを治具により保持したまま、ろうつけ用の炉内に入れる。炉内は窒素ガス、不活性ガス等の雰囲気となっている。炉内ろうつけでは、雰囲気をろう材が溶融可能なろうつけ温度に加熱することにより、塗布されたろう材が溶融し、各部材間にろう材が行き渡ることになる。そして、コア部アッシィを炉内から取り出すと、ろう材が凝固し、ろう材によって各部材間が一体に接合される。さらに、コア部アッシィを常温になるまで冷却すると、所望の強度を有するコア部アッシィが得られる。
次に、パッキン装着工程(シール部材装着工程)を行う。パッキン装着工程は、溝部を形成する内側壁4dおよび外側壁4eの少なくともいずれか一方にパッキン10を当接させて位置決めし、パッキン10を溝部4aに装着する工程である。ここでは、パッキン装着工程の一例として、以下に、パッキン引き伸ばし工程(シール部材引き伸ばし工程)と、パッキン配置工程(シール部材配置工程)とを経て、パッキン10を溝部4aの内側壁4dに当接させて装着する方法を説明する。
まず、前述の所定の形状に形成されたパッキン10(例えば、図12参照)を所定の大きさに引き伸ばすパッキン引き伸ばし工程を行う。このパッキン10は、その軸線の周長がコアプレート形成された溝部の軸線の周長よりも短く、さらに長手方向長さLpが溝部の長手方向長さ(約Lの寸法)よりも短くなるように構成されている。図13はパッキン引き伸ばし工程を示す斜視図である。このパッキン引き伸ばし工程では、まず、所定位置に置かれた自然長のパッキン10に対して、4個の治具を降下させ、パッキン10の4隅である4個の角部分13の内側面に内接するように各治具を配置する。各角部分13の内側面に内接される4個の治具は、パッキン10の長手方向一方端側に設けられる2個の治具50と、長手方向他方端側に設けられる2個の治具51と、からなる。治具50,51は、パッキン10を引き伸ばす伸長用治具であり、パッキン10に対して挿入する方向に伸長する略短冊状であり、それぞれの外側面が角部分13の内側面に沿う形状、例えば湾曲面状となっている。また、治具50と治具51は同形状または同一部材であることが好ましい。
そして、2個の治具50と2個の治具51とを互いに長手方向(X方向)に所定寸法(約寸法L)離れるように移動させ、パッキン10の長手側部分11が伸長させた状態で治具50および治具51を維持する。この引き伸ばし工程により、パッキン10は短幅側部分12の軸線(図13の一点鎖線で示す)同士の間隔が、移動前の寸法Lpから移動後の寸法Lに大きくなり、長手方向に所定寸法(L−Lp)分引き伸ばされることになる(以上、図13参照)。
次に、パッキン10を溝部4aに置くパッキン配置工程を行う。図14は引き伸ばされた状態のパッキン10を溝部4aに置くパッキン配置工程を示す斜視図である。図15は図14の切断面XV−XVを矢印方向に見たときの断面図である。図14に示すように、パッキン配置工程では、まず、上方から溝部4aが見える状態で所定位置に置かれた上部コアプレート4に対して、上記の状態に伸ばされたパッキン10を降下させ、溝部4aに納めるように配置する。この状態のパッキン10は、図15に示すように、パッキン10は、それ自体が内側に収縮しようとする力に反発する外側向きの作用力を治具50および治具51から受けており、さらに溝部4aの底壁4fと接触していない状態またはわずかに接触している状態であるため、溝部4aからの拘束を受けていない。
次に、このように配置されたパッキン10を溝部4aに取りつけてパッキン装着工程(シール部材装着工程)を終了する。図16はパッキン10の引き伸ばしを解除してパッキン10を溝部4aに装着するパッキン装着工程を示す斜視図である。図17は、図16の切断面XVII−XVIIを矢印方向に見たときの断面図である。
図16および図17に示すように、パッキン装着工程では、治具50および治具51によって伸ばされた状態にあるパッキン10に対して、押し込み用治具である押し込みピン52,53を上方から当てて、パッキン10を下方に押し込み、パッキン10を溝部4aの底壁4fに確実に当接させる。さらに、押し込みピン52,53の押し込みによりパッキン10に溝部4aの底壁4fに押しつけた状態で、治具50および治具51を上方に向けて引き抜くことにより、治具50および治具51によるパッキン10の引き伸ばしを解除し、パッキン10が収縮できる状態にする。そうすると、パッキン10は底壁4fに接触しながら、内側壁4dに向かって縮むように元の自然状態に戻ろうとする途中でその内周壁面12aが内側壁4dに当接してさらには密着するようになり、コアプレートに対して所定の位置に位置決めされる。このようにしてパッキン10は上部コアプレート4に保持されることになる。また、押し込み用治具を使用することにより、パッキン10を溝部4aに対して所定の位置で復元させることができ、コアプレートに対してパッキン10を所望とする位置にセッティングできる。
次に、パッキン10が装着された上部コアプレート4に上部タンク2を装着するタンク装着工程を行う。図18は、上部コアプレート4の上方から上部タンク2を装着しようとする様子を示した斜視図である。図19は上部コアプレート4に上部タンク2を設置した状態を示す斜視図である。図20は上部タンク2の装着完了状態を示す斜視図である。
図18および図19に示すように、タンク装着工程では、パッキン10が装着された上部コアプレート4に対して、開口した外周縁部2aを下にした状態で上部タンク2を下降させ、外周縁部2aに形成された凸条部2bを溝部4a内のパッキン10の幅方向略中央部分に当接させる。さらに、パッキン10が所定の圧縮率で変形するように上部タンク2に所定の押しつけ力を加える。そして、上部タンクの凸条部2bの押しつけにより、パッキン10が十分な反発力を有して変形し、外周縁部2aと溝部4aの底壁4fとの隙間を埋めるため、内部流体が漏れないようにシールされる。
さらに、上部タンク2を上部コアプレート4に固定し、タンクの装着を完了する。この固定工程は、図20に示すように、上部タンク2に加えた押しつけ力を解除しないでこの状態を維持したまま、上部コアプレート4の外側壁4eの端部に設けられた複数の爪部4bを内側に折り曲げる加工を行う(かしめによる固定)。複数の爪部4bは、内側に折り曲げられることで、上部タンク2の下部全周に設けられ外周縁部2aと一体となって外方に張り出している鍔部2cを外側から押さえる。これにより、上部タンク2は上部コアプレート4に固定され一体となる。
次に、上部タンク2と同一構成である下部タンク3と下部コアプレート5とを組み立てる。この組み立てにおいても、以上のパッキン装着工程およびタンク装着工程の各工程を実施する。以上の各工程を経ることによってラジエータ1を製造することができる。
熱交換器の一例である本実施形態のラジエータ1の製造方法について作用効果を以下に述べる。この製造方法における工程は、コアプレート成形工程、コア部アッシィ組立工程、ろうつけ工程、パッキン装着工程、およびタンク装着工程からなる。コアプレート成形工程はパッキン10が配設される環状の溝部を備えるようにコアプレートを所定の形状に成形する工程である。コア部アッシィ組立工程は少なくともコア部8とコアプレートを組み立ててコア部アッシィを仮組みする工程である。ろうつけ工程はコア部アッシィ組立工程で仮組みされたコア部アッシィの各部をろうつけ接合する工程である。パッキン装着工程は、溝部の内側壁4dおよび外側壁4eの少なくともいずれか一方にパッキン10を当接させて位置決めし、パッキン10を溝部4aに装着する工程である。タンク装着工程は接合部をシールするとともに、パッキン10が装着されたコアプレートにタンクを取り付けて固定する工程である。タンク装着工程では、タンクの凸条部2bをパッキン10の幅方向略中央部分を押さえる位置に設定した状態で、所定の押しつけ力をパッキン10に与える。
この製造方法によれば、パッキンを溝部における所定の位置に位置決めし、パッキンの帯状部の幅方向略中央をタンクの凸条部2bで押して弾性変形させるため、タンクを押しつける力がパッキンに十分に伝わり、パッキンを確実かつ十分に圧縮されることができる。したがって、タンクとコアプレートとの間をシールするパッキンを所定の位置で取りつけできるとともに、優れたシール性を確保する製造方法が得られる。
また、上記コアプレート成形工程においては、環状の溝部4aを、向かい合う一対の長手方向に延設された長手側部分41の溝部と、長手側部分41の溝部と交差するように延設された向かい合う一対の短幅側部分42の溝部と、を含む略矩形状に形成する。さらに、パッキン装着工程においては、パッキン10を、長手側部分41の溝部または短幅側部分42の溝部のいずれかにおいて、溝部の内側壁4dに当接させて環状の溝部に装着する。
この製造方法によれば、パッキン10の長手側部分11または短幅側部分12のいずれか片方を溝部4aに固定するため、片方の復元力を考慮したパッキン10の位置決めや取り付け作業を行うことにより、生産性が向上する。換言すれば、環状のパッキン10はその弾性により、互いに反対側に位置する内側壁4dを締め付ける。このため、パッキン10はコアプレートから脱落しない程度の締め付け力を内側壁4dに与え、その結果、溝部4aの環の反対側に位置する少なくとも2つの内側壁4dに当接して配置されて、各コアプレートに取り付けられることになる。よって、タンクとコアプレートの間でパッキン10を所定の位置で確実に取りつけでき、シール性能を確保する製品を提供できる。
また、上記製造工程で使用されるパッキン10は、弾性変形していない自然長の状態でその断面の中心を通る軸線の全長が環状の溝部の溝幅の中心を通る軸線の全長よりも短くなるように形成されている。さらに、シール部材装着工程において、パッキン10は引き伸ばした状態から自然長の状態に戻ろうとする復元力により環状の溝部に装着されるものである。
この製造方法によれば、コアプレートの溝部に対して予め上記所定の寸法に設計したパッキン10を使用することにより、パッキン10の復元力に応じてパッキン10を溝部に固定するのに必要な固定力を確保することができる。また、パッキン10の上記寸法を設定することにより、コアプレートに対するパッキン10の安定した固定力を提供できるとともに、パッキン10を溝部に取り付ける工程をより短時間で行うことができる。また、タンクとコアプレートのシール性およびラジエータ(熱交換器)の生産性の両面に優れた製造方法を提供できる。
また、上記コアプレート成形工程においては、環状の溝部4aを、向かい合う一対の長手方向に延設された長手側部分41の溝部と、長手側部分41の溝部と交差するように延設された向かい合う一対の短幅側部分42の溝部と、を含む略矩形状に形成する。さらに、パッキン装着工程においては、パッキン10を、長手側部分41の溝部と短幅側部分42の溝部とが交差する角部分43における溝部の内側壁4dに当接させて環状の溝部に装着する。
この製造方法によれば、環状のパッキン10を復元力によって溝部の角部分43における内側壁4dに当接させるので、様々な環状形状のパッキンを確実に溝部4aに取りつけることができるとともに、タンクによって押しつけられる前のパッキンを安定させることができる。
タンク装着工程において、環状のパッキン10を所定の大きさに引き伸ばすパッキン引き伸ばし工程と、引き伸ばした状態のパッキン10を環状の溝部に配置するパッキン配置工程とを実施し、さらに、環状の溝部に配置された引き伸ばした状態のパッキン10に対して引き伸ばしに要していた力を取り除き、パッキン10が復元することによりパッキン10を溝部に装着する。
この製造方法によれば、所定の大きさから収縮するパッキン10の収縮度合いを利用してパッキン10を溝部4aの内側壁4dに装着することにより、パッキン10を装着するのに必要な固定力を簡単な工程で得ることができる。また、タンク装着工程の大幅な効率向上が期待できる。
(第2実施形態)
第2実施形態は、第1実施形態で説明したパッキン10の他の形態およびこれに伴うコアプレートの他の形態を図21から図23にしたがって説明するものであり、パッキンが溝部の外側壁4eに当接してコアプレートに装着される構成を説明している。図21は本実施形態のパッキン10Bの構成を示す平面図である。図22はパッキン10Bを上部コアプレート4Bに組みつけた状態を示す平面図である。図23は図22の切断面XXIII−XXIIIを矢印方向に見たときの部分断面図である。本実施形態は、第1実施形態に対してパッキン10Bおよび上部コアプレート4B(下部コアプレートは上部コアプレート4Bと同様の構成である)が異なっているが、その他の構成および作用効果については第1実施形態の説明と同様である。
図21に示すように、パッキン10Bは、その外周壁面11b,12bから外方に突出する係止部15を備えている。係止部15はパッキン10Bの帯状部に沿う形状であり、所定長さを有する係止片でもある。係止部15は、パッキン10Bの外周壁面11b,12bから首部16を介して離間して複数個設けられている。ここでは、係止部15は、パッキン10Bの一対の長手側部分11に3個ずつ、および一対の短幅側部分12に1個ずつ設けられている。パッキン10Bの帯状部、係止部15および首部16は、同一材質(例えばEPDM、シリコン系ゴム)であり、金型を用いた一体成形により作成される。
図22および図23に示すように、上部コアプレート4には、その外側壁4eに所定幅寸法のスリット45が複数個形成されている。これらのスリット45は、パッキン10Bを溝部4aに設置するときに、首部16が差し込まれる位置に対応して設けられている。つまり、スリット45は首部16の幅寸法よりも大きな寸法の切り欠き部である。
本実施形態によれば、上記構成のパッキン10Bおよびコアプレートを用いて、各首部16を各スリット45に差し込んで係止部15を溝部の外側壁4eに掛け止めることにより、パッキン10Bはコアプレートに取りつけられる。このとき、パッキン10Bには外方に向けて張力がかかった状態になり、パッキン10Bは溝部の外側壁4eに当接した状態でコアプレートに装着される。さらに、凸条部2bがこのように所定の位置に装着されたパッキン10Bの幅方向略中央部分を押さえる位置に設定されている。これにより、上部タンク2はシール性能を確保できる所定の押しつけ力をパッキン10に与えることができる。
上記構成により、パッキン10Bの内周壁面11a,12aと溝部の内側壁4dとの間に隙間を形成できるため、パッキン10Bを溝部4aに取りつける作業がやりやすくなり、製品の生産性を向上することができる。また、パッキン10Bが溝部の外側壁4e寄りにあるため、タンクにかかる内圧に強いシール構造を提供できる。
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
上記実施形態で図11〜図20にしたがって説明したラジエータ1の製造工程では、溝部4aの長手方向長さよりも短い長手方向長さ(例えば寸法Lp)であるパッキン10を用いている。そして、このパッキン10を長手方向に所定寸法(例えば寸法L)になるように引き伸ばした状態で溝部4aに設置し、引き伸ばし力を取り除くことによるパッキン10の収縮力(復元力)を利用してパッキン10を上部コアプレート4に取りつけるようにしているが、以下のような方法であってもよい。
例えば、図6に示すように、溝部4aの短幅方向長さよりも短い短幅方向長さ(例えば寸法Dp)であるパッキンを用い、このパッキンを短幅方向に所定寸法(例えば寸法D)になるように引き伸ばした状態で溝部4aに設置し、引き伸ばし力を取り除くことによるパッキンの収縮力を利用してパッキンを上部コアプレート4に取りつけるようにしてもよい。この場合には、パッキンが上部コアプレート4に取りつけられた状態において、パッキンは長手側部分11における内周壁面11aが溝部4aの内側壁4dに当接し、容易に動いてしまうことなく位置決めされ、上部コアプレート4に保持されることになる。
また、溝部4aの軸線の周長よりも軸線の周長が短いパッキンを用い、このパッキンを短幅方向および長手方向の両方にそれぞれ所定寸法となるように引き伸ばした状態で溝部4aに設置し、引き伸ばし力を取り除くことによるパッキンの収縮力(復元力)を利用してパッキンを上部コアプレート4に取りつけるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、パッキンは、弾性力によりその長手側部分11と短幅側部分12とが交差する4箇所の角部分13において内側に向けて収縮し、角部分13における内周壁面が溝部4aの内側壁4dに密接して保持されるように構成してもよい。この場合には、パッキンは角部分13においてその内周壁面と溝部4aの内側壁が接触した状態で上部タンクの外周縁部2aによって溝部4aに押しつけられて固定される。このときパッキンは、その角部分13において、溝部4aの外側壁4eよりも内側壁4d寄りに位置するように配置されている。換言すれば、パッキンは、その角部分13における軸線が溝部4aの角部分43における軸線よりも内側(内側壁4d寄り)になるように設けられている。この構成を採用した場合には、環状のパッキン10を復元力によって溝部4aの角部分43に当接させるので、外形形状が略矩形状であるパッキン10に限らず、様々な環状形状のパッキン10を溝部4aに安定した状態で取りつけることができる。
そして、パッキンを角部分13において溝部4aの内側壁4dに密着させるには、例えば、パッキンの角部分13における内周壁面の曲率半径が溝部4aの内側壁4dの外周面の曲率半径よりも大きくなるようにパッキンを構成すればよい。このように形成したパッキンを引き伸ばして溝部4aに設置した後、引き伸ばし力を取り除くと、パッキンは元の状態に復元しようとする弾性力によって内側に向かって縮み、角部分13の内周壁面が他の部分よりも先に、上部コアプレート4の内側壁4dの角部分に密着するようになる。パッキンはこの角部分での密着によってコアプレートに保持される。