JP4599597B2 - 磁性細菌内でのタンパク質の効率的な発現方法 - Google Patents

磁性細菌内でのタンパク質の効率的な発現方法 Download PDF

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本発明は、磁性細菌の磁気微粒子膜、細胞膜または細胞質におけるタンパク質の発現方法に関する。
磁性細菌の菌体内において産生される磁気微粒子またはその菌体自体は、磁石を用いることにより溶液から容易に分離することが可能であるため、タンパク質の製造および単離、また様々な物質の回収、探索、検出および定量に有用である。この磁気微粒子は、磁気微粒子膜と称されるリン脂質を主成分とする有機膜で被覆されており、この膜には種々の膜タンパク質が存在する。AMB−1株の磁気微粒子膜上に存在する膜タンパク質としては、MagAタンパク質、MpsAタンパク質、Mms16タンパク質等が同定されている(特許文献1、2及び3等)。また、これらの膜タンパク質をアンカータンパク質として利用して、ルシフェラーゼ(非特許文献1)、プロテインA(非特許文献2)、Gタンパク質共役受容体 (非特許文献3) 等の有用タンパク質を発現させる方法が開発されている。当該技術分野においては、このような系を用いて、タンパク質をさらに効率よく大量に発現させるシステムの構築が求められている。
特開平8−228782号公報 WO97/35964号パンフレット 特開2002−176989号公報 Nakamura, T., et al., J. Biochem., 118, 23-7 (1995) Tanaka, T., et al., Anal. Chem., 72, 3518-22 (2000) Yoshino, T., et al., Appl. Environ. Microbiol., 70, 2880-5 (2004)
本発明は、磁性細菌の磁気微粒子膜、細胞膜または細胞質において融合タンパク質を効率的に発現させるためのシステムを提供することを目的とする。
本発明者らは、磁性細菌内で多量に存在するタンパク質を同定し、その発現を推進するプロモーター配列を同定することにより、磁性細菌におけるタンパク質の効率的発現法を開発することに成功した。
すなわち、本発明は、配列番号1、2または3のいずれかにより表される塩基配列を有するDNA断片を提供する。これらのDNA断片はいずれも、磁性細菌内で高いプロモーター活性を示す。本発明はまた、配列番号1、2および3のいずれかにより表される塩基配列において1またはそれ以上の塩基が置換、欠失、付加されている塩基配列を有し、かつ細菌においてプロモーター活性を有するDNA断片を提供する。本発明はまた、配列番号1、2および3のいずれかにより表される塩基配列と80%以上の同一性を有する塩基配列を有し、かつ細菌においてプロモーター活性を有するDNA断片を提供する。
別の観点においては、本発明は、プロモーターとして上述の本発明のいずれかのDNA断片を含む発現ベクターを提供する。本発明はまた、本発明の発現ベクターのプロモーターの下流にタンパク質をコードするDNAが挿入されているDNAコンストラクト、ならびにこのDNAコンストラクトにより形質転換された細菌を提供する。
また別の態様においては、本発明は、細菌においてタンパク質を発現させる方法であって、上述の本発明のDNAコンストラクトを細菌に導入し、前記細菌を培養し、発現されたタンパク質を回収する、の各工程を含む方法を提供する。好ましくは細菌は磁性細菌であり、また好ましくは、タンパク質は磁気微粒子膜上で発現される。
本発明の1つの好ましい態様においては、タンパク質はアンカータンパク質と目的タンパク質との融合タンパク質である。特に好ましくは、アンカータンパク質はMms13である。
本発明の1つの好ましい態様においては、前記融合タンパク質は、アンカータンパク質の領域と目的タンパク質の領域との間にプロテアーゼによる切断部位を有する。
別の観点においては、本発明は、磁気微粒子膜上にアンカータンパク質と目的タンパク質との融合タンパク質が発現されており、前記アンカータンパク質がMms13であることを特徴とする磁気微粒子を提供する。また別の態様においては、本発明は、配列番号4に示されるアミノ酸配列のアミノ酸1−87を有するタンパク質を含む融合タンパク質を提供する。
本発明にしたがえば、本発明のプロモーターの下流に機能性のペプチドまたはタンパク質をコードする構造遺伝子を連結して細菌に導入することにより、磁性細菌の磁気微粒子膜、細胞膜または細胞質において目的ペプチドまたはタンパク質を効率良く、かつ多量に発現させることが可能である。
本発明においては、磁性細菌から細胞膜画分を単離し、この画分に含まれるタンパク質のうち発現量の多いタンパク質を同定し、このタンパク質をコードする遺伝子の上流領域のプロモーター活性を調べることにより、磁性細菌で働く高発現プロモーターを同定した。
本発明のプロモーターは、配列番号1、2または3により表される塩基配列を有する。配列番号1、2および3により表される塩基配列は、それぞれ、磁性細菌の細胞膜、および磁気微粒子膜上で発現されるタンパク質Msp1(mm10)、Msp2(mm24)およびMsp3(mm1)をコードする遺伝子の推定プロモーター領域の配列に対応する。後述の実施例において示されるように、これらのDNA断片はいずれも、磁性細菌内で高いプロモーター活性を示すことが見いだされた。図3に、これらのプロモーター領域の−35位および−10位付近の配列ならびにリボソーム結合部位の配列を示す。
本発明のDNA断片は、本明細書に開示される配列情報に基づいて、磁性細菌のゲノムからPCR法などの慣用の方法を用いて直接クローニングすることにより得ることができる。あるいは、本発明のDNA断片は化学合成してもよい。
また、配列番号1、2または3で表される塩基配列において1またはそれ以上の塩基が置換、欠失、付加されており、かつ細菌においてプロモーター活性を有するDNA断片も本発明の範囲内である。本明細書に開示される天然の遺伝子の塩基配列に基づいて、その配列の一部のヌクレオチドを欠失させたり、他のヌクレオチドを付加または置換することにより遺伝子を改変する方法は当該技術分野においてよく知られている。このような方法の例としては、例えば、制限酵素による切断、エキソヌクレアーゼによる消化、他のDNA断片の挿入、部分特異的変異誘発、変異導入プライマーを用いるPCR法等が挙げられる。
配列番号1、2および3により表される塩基配列は、それぞれ開始コドン位置から上流500塩基の長さの配列を示すが、所望のプロモーター活性を有する限り、これらの塩基配列のうち5’側の配列はさらに短くてもよい。好ましくは、本発明のDNA断片は、配列番号1,2または3に示される配列において、それぞれ3’末端側の300塩基、好ましくは200塩基、より好ましくは170塩基、さらに好ましくは150塩基の配列を有する。
さらに、配列番号1、2または3で表される塩基配列と80%以上の同一性を有する塩基配列を有し、かつ細菌においてプロモーター活性を有するDNA断片も本発明の範囲内である。好ましくは、このようなDNA断片は、配列番号1、2または3で表される塩基配列と85%以上の同一性、より好ましくは90%以上の同一性、さらに好ましくは95%の同一性を有する。このようなDNA断片は、上述のような遺伝子の改変法を用いて作製してもよく、様々な種または株の磁性細菌から単離してもよい。塩基配列の同一性は、当該技術分野において知られる相同性検索アルゴリズムを利用して決定することができる。このようなアルゴリズムの1つの例はBLASTであり、その使用方法は当業者にはよく知られている。
本発明のDNA断片のプロモーター活性は、DNA断片の下流(3’末端側)にレポーター遺伝子を連結し、これを細菌細胞に導入してレポーター遺伝子の発現を測定することにより評価することができる。そのようなレポーター遺伝子の例としては、例えば、ルシフェラーゼ,CAT,ベータ−ガラクトシダーゼ,アルカリホスファターゼ、GFP等が挙げられる。
別の観点においては、本発明は、本発明のプロモーターを含む発現ベクターを提供する。発現ベクターとは、細菌において複製可能であり、本発明のプロモーターの制御下に目的タンパク質の発現を指示することができるベクターである。本発明のプロモーターを組み込むことができるベクターとしては、細菌内で複製可能な既知のベクターのいずれをも用いることができる。特に、細菌として磁性細菌を用いる場合には、例えば、特開平8−228782に記載されるpRK415、特開平11−285387に記載されるpMS−T1またはその誘導体を好適に用いることができる。発現ベクターは、本発明のプロモーター、複製起点、およびベクターを導入した細菌の選択を容易にするための選択マーカーを有し、好ましくは、プロモーターの下流に、遺伝子の挿入を容易にするための制限酵素部位を有する。さらに、挿入された遺伝子の発現を増強および安定化させるための3’非翻訳領域を有していてもよい。
本発明の発現ベクターを用いて、プロモーターの下流に目的タンパク質をコードするDNAを挿入してDNAコンストラクトを作製し、これを細菌に導入することにより、細菌において本発明のプロモーターの制御下に目的タンパク質を発現させることができる。目的タンパク質とは、本発明にしたがって細菌中で大量に製造することが望まれる任意のタンパク質であり、例えば、各種の酵素、サイトカイン、細胞増殖因子、レセプター、シグナル伝達因子、転写因子、輸送タンパク質等が挙げられる。あるいは、本発明の発現ベクターは、機能が未知であるタンパク質を発現させて、その機能を解明するために利用することができる。また、所望の機能を有するタンパク質をスクリーニングすることを目的として、目的タンパク質をコードするDNAとしてcDNA等のライブラリを用いてもよい。
別の観点においては、本発明は、細菌においてタンパク質を発現させる方法を提供する。この方法は、上述の本発明のDNAコンストラクトを細菌に導入し、前記細菌を培養し、発現されたタンパク質を回収する、の各工程を含む。好ましくは、細菌は磁性細菌である。磁性細菌とは、体内に磁気微粒子を蓄積する能力を有する細菌である。磁性細菌としては、例えば、Magnetospirillum 種の微生物(例えば、Magnetospirillum magneticum AMB-1 (FERM BP-5458), MS-1 (IFO 15272, ATCC31632, DSM3856), SR-1 (IFO 15272 DSM 6361)、およびDesulfovibrio 種の微生物(例えば、Desulfovibrio sp. RS-1 (FERM P-13283))等が挙げられる。磁性細菌の菌体内においては、粒径約50−150nmのマグネタイトからなる微粒子が産生され、これは磁気微粒子と称される。
細菌中にDNAコンストラクトを導入することにより細菌を形質転換させるためには、当該技術分野において知られるいずれの方法を用いてもよく、例えば、接合伝達、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、遺伝子銃などの公知の方法を用いることができる。形質転換した細菌を培養して、発現されたタンパク質を回収する方法は、当該技術分野においてよく知られており、また、後述の実施例において例示されている。
本発明の1つの好ましい態様においては、目的タンパク質はアンカータンパク質と目的タンパク質との融合タンパク質として発現させる。本発明において融合タンパク質とは、2以上のタンパク質またはその断片が連結されている、天然には見いだされないタンパク質をいう。融合タンパク質は、それぞれのタンパク質またはその断片をコードする遺伝子をインフレームで連結させて、組換え的に発現させることにより製造することができる。アンカータンパク質とは、細胞膜上または磁気微粒子膜上にその一部または全部が結合して発現されるタンパク質であって、これを含む融合タンパク質を膜にアンカリングさせる役割を果たす。磁気微粒子膜とは、磁性細菌の磁気微粒子の外表面を覆う脂質二重膜である。磁性細菌において、細胞膜上または磁気微粒子膜上に存在する種々のタンパク質がこれまでに同定されており、そのいずれも本発明のアンカータンパク質として用いることができる。例えば、Magnetospirillum種の磁性細菌に由来する、MagA、MpsA、Mms16、Mms13等が好適に用いられる。さらに、これらの膜タンパク質のフラグメントであって、磁気微粒子膜への局在化を指示する機能を有するフラグメントも、本発明において目的タンパク質との融合タンパク質を生成するために用いることができる。本発明においては、融合タンパク質を細胞膜上または磁気微粒子膜上に効率的にアンカリングさせるためには、Mms13が特に好適であることが見いだされた。Mms13のアミノ酸配列は知られている(Arakaki, A., et al., J. Biol. Chem., 278, 8745-50 (2003))。Mms13は124アミノ酸からなる膜2回貫通型タンパク質であり、NおよびC末端が細胞膜表面に局在していると考えられている。したがって、Mms13の全領域を用いて生成した融合タンパク質は、細胞膜上または磁気微粒子膜上へのアンカリングが可能である。また、Mms13のC末端領域、すなわち膜貫通部位でない領域はなくてもよい。したがって、本発明の1つの好ましい態様においては、配列番号4に示されるアミノ酸配列の1−87のアミノ酸配列を有するタンパク質を含む融合タンパク質が提供される。
本発明の発現ベクターに融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んで磁性細菌を形質転換し、得られた形質転換体を適切な条件下で培養すると、菌体内に磁気微粒子が産生され、磁気微粒子を被覆している磁性微粒子膜にアンカリングした形で融合タンパク質が発現する。磁性細菌の菌体を破壊または溶解した後、磁気を利用して磁気微粒子を回収することにより、目的タンパク質とアンカータンパク質との融合タンパク質を容易に得ることができる。磁性細菌から磁気微粒子を単離する方法は当該技術分野においてよく知られており、また、後述の実施例において例示されている。磁性細菌の細胞質、細胞膜における融合タンパク質の単離方法は菌体を破壊または溶菌した後、遠心分離により分画することが可能であり、その方法は当該技術分野においてよく知られている。
本発明にしたがって得られる融合タンパク質は、目的タンパク質が磁気微粒子膜中にアンカリングされた形で発現されるため、目的タンパク質がその天然のコンフォメーションまたはそれに近いコンフォメーションをとることが可能である。したがって、本発明により製造される目的タンパク質は、その種々の機能、例えば酵素活性やリガンドとの結合特性を保持していると考えられる。
本発明の1つの好ましい態様においては、上述の融合タンパク質は、アンカータンパク質の領域と目的タンパク質の領域との間にプロテアーゼによる切断部位を有する。プロテアーゼとはタンパク質のペプチド結合を切断する酵素であり、当該技術分野においては、特定のアミノ酸またはアミノ酸配列を認識して切断する種々のプロテアーゼが知られている。アンカータンパク質領域と目的タンパク質領域との間にこのようなプロテアーゼに認識され切断される部位を有するように設計することにより、融合タンパク質を発現させた後に、アンカータンパク質から目的タンパク質を切断して単離することができる。このような特異的プロテアーゼとしては、例えば、トロンビン、トリプシン、キモトリプシン、エンテロキナーゼ、カテプシン等を用いることができる。
別の観点においては、本発明は、細胞膜上または磁気微粒子膜上に目的タンパク質が発現されていることを特徴とする磁気微粒子を提供する。好ましくは、目的タンパク質はMms13との融合タンパク質として細胞膜上または磁気微粒子膜上に発現される。
目的タンパク質が磁性細菌の磁気微粒子膜上に固定化された形で発現される場合には、この磁気微粒子を用いて、目的タンパク質の機能解析、リガンドの同定および定量、アゴニスト/アンタゴニストのスクリーニング等を容易に行うことができる。
例えば、本発明の磁気微粒子を試料と接触させ、そして、磁気微粒子に結合した物質の存在または量を測定することにより、試料中において、目的タンパク質と結合する物質を検出することができる。特に、この方法は、目的タンパク質のリガンドのアッセイに有用である。この方法は、磁石を用いて磁気微粒子を回収することにより、磁気微粒子上の目的タンパク質と結合した物質を未結合物質から容易に分離することができるという利点を有する。さらに、本発明の磁気微粒子は、有用物質のスクリーニングにおいて用いるのにも有用である。すなわち、本発明の磁気微粒子を試験物質を含む溶液と接触させ、そして、試験物質が磁気微粒子に結合するか否かを判定することにより、目的タンパク質に結合しうる物質を同定することができる。この方法は、目的タンパク質のアゴニスト/アンタゴニストのスクリーニングに有用である。この方法はまた、目的タンパク質のリガンドが不明である場合に、リガンドを同定して目的タンパク質の機能を解析するのに有用である。また、本発明の方法は、配列情報から特定の機能を有するタンパク質であることが予測されるが、対応するタンパク質が単離されていないかまたはその存在が確認されていない未知のタンパク質についても実施することができるため、ゲノム配列情報またはcDNA配列情報から機能が推定されているタンパク質について、その実際の機能を解析するのに特に有用である。
さらに、本発明の磁気微粒子を用いて、複数の試験物質を含む試料から目的タンパク質に結合する物質のみを単離することができる。例えば、磁気微粒子を複数の試験物質を含む試料と接触させ、磁石を用いて磁気微粒子を回収することにより、磁気微粒子上の目的タンパク質と結合した物質を容易に分離することができる。これらの物質を単離して分析することにより、目的タンパク質の機能の解明に有用な情報を得ることができる。また、この方法を用いて、アゴニスト/アンタゴニストのスクリーニングを容易に行うことができる。また、磁性細菌の細胞質、細胞膜上においても、融合タンパク質を発現させることが可能であり、他の宿主同様にタンパク質生産に利用することが可能である。
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
磁性細菌中で大量に発現されているタンパク質の同定
磁性細菌Magnetospirillum magneticum AMB−1(ATCC700264)はMSGM培地(pH6.75)を用いて培養を行った(Yang, C. D. et al., Enzyme Microb. Technol..,. 29, 13-19 (2001))。培養定常期の菌体を回収し、HEPESで洗浄した後、フレンチプレスに3回通して破砕した。次に、フレンチプレス破砕試料から磁石を用いて磁気微粒子を分離し、残りの試料を10000g、4℃で10分間遠心分離し、その上清をさらに160000g、4℃で1時間超遠心分離した。沈殿物をHEPES緩衝液に再懸濁し、160000gで4℃で1時間超遠心分離して、沈殿物を回収した。これをPBS緩衝液に再懸濁して、細胞膜画分とした。
この細胞膜画分を2Dゲル電気泳動により分離し、PVDF膜にエレクトロブロットによって転写した。メンブランをCoomassie brilliant blue により染色した結果を図1に示す。発現量が多いと考えられる濃いタンパク質スポットをメスにより切り出し、タンパク質サンプルをShimazu amino acid sequencing system PPSQ-1(SHIMAZU)を用いたエドマン分解法で解析し、N末端アミノ酸シークエンスを決定した。この配列をAMB-1株のゲノム情報から検索し、磁性細菌膜上で大量に発現されているタンパク質として、Msp1、Msp2およびMsp3が同定された(図2)。
プロモーター活性の測定
実施例1で同定された高発現タンパク質について、AMB−1のゲノムDNAの配列情報に基づいて、Msp1、Msp2およびMsp3のコーディング配列の上流領域の配列を調べ、細菌プロモーターのコンセンサス配列を比較することにより、プロモーター領域を探索した。これらのプロモーター領域を含むDNAの塩基配列をそれぞれ配列番号1,2および3に示す。また、これらのプロモーター領域の−35位および−10位付近の配列ならびにリボソーム結合部位の配列を図3に示す。このようにして、Pmsp1、Pmsp2およびPmsp3のプロモーター領域を同定した。
次に、ABM−1ゲノムDNAからこれらのプロモーター領域のDNAをPCRにより増幅し、レポーターとしてルシフェラーゼをコードする遺伝子を含み大腸菌および磁性細菌の両方で複製可能なベクターpUMGLC(図4)に挿入して、発現用コンストラクトを構築した。比較のために、PmagA、PlacおよびPmms16のプロモーター領域についても、同様して発現ベクター中に導入した。ネガティブ対照としてはプロモーターを挿入していないベクターを用いた。
このようにして作製した発現用コンストラクトをエレクトロポレーション法によりMagnetospirillum magneticum AMB−1に導入した。得られた形質転換体をアンピシリン(5 (g/ml)を含むMSGM培地で培養した(Matsunaga, T. et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. 35, 651-655 (1991))。菌体を回収し、HEPESバッファーで洗浄した後、PBSバッファーに再懸濁した。菌体懸濁液に細胞溶解液を含むルシフェラーゼ発光基質(プロメガ社製)を加え、1分後の発光強度を測定した。結果を図5に示す。
図から明らかなように、プロモーターとしてPmsp1およびPmsp3を用いたときに、既知のプロモーターPmagA、Pmms16より高いルシフェラーゼ活性が得られ、特にPmsp3を用いたときに最も高い活性が得られた。
アンカータンパク質との融合タンパク質の発現
磁気微粒子膜上へ効率的に機能性タンパク質を局在させるために、アンカータンパク質の選定を行った。図6に示すように、Pmms16プロモーターの制御下にMagA、Mms16およびMms13とルシフェラーゼとの融合タンパク質が発現するよう、発現コンストラクトを構築した。実施例2と同様にしてこれらの発現ベクターを磁性細菌に導入し、細菌を培養した。菌体を回収し、フレンチプレスに3回通して菌体を破砕し、磁石を用いて磁気微粒子を単離した。得られた磁気微粒子をHEPESバッファーで洗浄後、PBSバッファーに懸濁し、ルシフェラーゼ発光基質(プロメガ社)を加えて発光強度を測定した。また、実施例1の方法により細胞破砕物、細胞質、細胞膜画分を調整し、各画分のルシフェラーゼ活性を測定した。その結果を図7に示す。図から明らかなように、アンカータンパク質としてMms13を用いたとき、細胞内でのルシフェラーゼ発現量が最も多く、また磁気微粒子膜上へのアンカリング効率がMagA、Mms16と比較して顕著に高いことが示された。これは、Mms13が膜2回貫通型の小さなタンパク質であるため、磁気微粒子膜に安定してアンカリングしていると考えられる。さらにPmms16プロモーターに代わり、Pmsp1またはPmsp3プロモーターの制御下におけるMms13−ルシフェラーゼ融合タンパク質の発現を評価したところ、Pmsp3プロモーターを用いることで3倍の発現量が得られた(図8)。
プロテアーゼ切断部位を有する融合タンパク質の発現
アンカータンパク質Mms13とレポーターであるルシフェラーゼとの間にトロンビン切断部位を含む融合タンパク質を設計した。トロンビン切断部位としては、LVPRGS配列を用いた。プロモーターPmms16の制御下にこの融合タンパク質を発現するベクターを構築し、磁性細菌に導入して培養した後に、実施例3と同様にして磁気微粒子を単離した。50 μgの磁気微粒子を100 μlのPBSバッファーに懸濁した後、示される量のトロンビンを加えて25 ℃で60 分インキュベートして、融合タンパク質を切断させた。磁石を用いて磁気微粒子と上清とに分離した後、それぞれのルシフェラーゼ活性を測定した。結果を図9に示す。図から明らかなように、加えたトロンビンの量に依存して、ルシフェラーゼ活性が磁気微粒子画分から上清画分に移行したことがわかった。
Mms13−Protein A融合タンパク質の発現
アンカータンパク質Mms13とProtein AのIgG結合部位を持つ融合タンパク質を設計した。この融合タンパク質を発現するよう、発現ベクターを構築し実施例2と同様にしてこれらの発現ベクターを磁性細菌に導入した。野生株および発現ベクターを導入した磁性細菌を培養後、実施例3と同様にして磁気微粒子を単離した。50 μgの磁気微粒子をアルカリフォスファターゼ標識したウサギ由来抗ヒツジ抗体と1時間反応後、洗浄を3回行った。アルカリフォスファターゼの発光基質を添加した後、1分後の発光強度を測定した。結果を図10に示す。図から明らかなように、発現ベクターを保持した磁性細菌から得られた磁気微粒子において、抗体濃度の増加に伴い抗体が導入されたことが確認された。
図1は、磁性細菌の細胞膜タンパク質画分の2Dゲル電気泳動の結果を示す。 図2は、本発明において同定された、磁性細菌細胞膜上で発現されているタンパク質を示す。 図3は、本発明により同定されたプロモーター領域の−35位および−10位付近の配列ならびにリボソーム結合部位の配列を示す。 図4は、本発明においてプロモーター活性の測定に用いたルシフェラーゼ発現用コンストラクトを示す。 図5は、本発明のプロモーターの活性の測定結果を示す。 図6は、磁性細菌由来のタンパク質とルシフェラーゼとの融合タンパク質を発現させるために用いた発現用コンストラクトを示す。 図7は、アンカー分子の違いによる融合タンパク質のAMB-1形質転換体内での局在評価を示す。 図8は、プロモーターの違いによるAMB-1形質転換体内でのMms13-ルシフェラーゼ融合タンパク質の発現結果を示す。 図9は、トロンビンによる融合タンパク質の切断の結果を示す。 図10は、Mms13-ProteinA融合タンパク質発現磁気微粒子上への抗体の導入結果を示す。

Claims (3)

  1. 磁性細菌由来磁気微粒子の磁気微粒子膜上にアンカータンパク質と目的タンパク質とを含む融合タンパク質が発現されており、前記アンカータンパク質がMms13又はそのフラグメントであり、前記フラグメントが配列番号4に示されるアミノ酸配列のアミノ酸1−87を有するタンパク質を含むことを特徴とする、磁気微粒子。
  2. アンカータンパク質がMms13であることを特徴とする、請求項1記載の磁気微粒子。
  3. 融合タンパク質が、アンカータンパク質の領域と目的タンパク質の領域との間にプロテアーゼによる切断部位を有する、請求項1又は2記載の磁気微粒子。
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