JP4598626B2 - 流し台のシーム溶接方法 - Google Patents
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Description
この発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、未溶接部の切削除去作業を軽減すると共に衛生・環境条件を改善することができる流し台のシーム溶接方法を提供することを目的とする。
これに対し、請求項4にかかる溶接方法によれば、上部電極輪を一定の溶接回数または溶接長に応じて上部電極輪の先端断面幅方向にシフトさせることによって、電極消耗量を上部電極輪の先端断面幅方向へ分散させることで、過剰な電極研削や整形処理回数を削減し、上部電極輪の寿命延長を図ると共に、軌跡位置ズレを防止し、滑らかな表面ビードを形成することで溶接軌跡の安定化を図ることができる。
実施の形態1
図1にこの発明の実施の形態1に係る流し台のシーム溶接方法を示す。上部電極輪1と下部電極輪2はそれぞれ銅又は銅合金からなり、上部電極輪1は略12〜15mm程度の先端断面幅E1を有し、下部電極輪2は上部電極輪1の先端断面幅E1と同等かまたはそれより広幅の先端断面幅E2を有している。下部電極輪2の先端面に、断面が平面状の平面部3が形成されると共に、先端面の一端側には、シンクAのフランジ部Bの表面を傷つけないようにフランジ部Bの縁折りされた湾曲面と略同等の曲率を有する曲面部4が形成されている。
実施の形態1の方法により接合された天板Cの開口端角部GとシンクAのフランジ部Bとの継ぎ手溶接部を光学顕微鏡で撮影した断面写真を図2に示す。天板Cの開口端角部Gの近傍にナゲットNが形成されている様子が示されている。上部電極輪1と下部電極輪2との間を通過するときに開口端角部Gが抵抗加熱と高い加圧力によって塑性流動して板厚が所望の厚さまで薄くなると同時にナゲットがフランジ部Bの曲がり際に沿って連続的に形成される。このようにして、開口端角部Gをフランジ部Bに平滑に接合することができる。
図3に実施の形態2に係る流し台のシーム溶接方法を示す。この実施の形態2においては、上述した実施の形態1の上部電極輪1の傾斜踏み面5に代わって下部電極輪2の曲面部4と略同等の曲率半径に適合する湾曲踏み面6が形成された上部電極輪1が用いられる。下部電極輪2は実施の形態1で用いられたものと同じく、上部電極輪1の先端断面幅E1と同等かまたはそれより広幅の先端断面幅E2を有し、その先端面に平面部3と曲面部4とを有している。
図4に実施の形態3に係る流し台のシーム溶接方法を示す。シンクAと天板Cは0.6mm程度の薄板プレス品であるため、シーム溶接機にセットするときに継ぎ手が安定しないおそれがある。そこで、この実施の形態3は、溶接線のアライメントをよくするため、継ぎ手の近くを押えるガイドブロック7を使用した方法である。ガイドブロック7は、上部電極輪1の加圧方向のガイドと回転方向へのガイドを兼ねるもので、絶縁性の合成樹脂材又はウレタンゴムや絶縁被覆された金属から形成されている。
図6に実施の形態4に係る流し台のシーム溶接方法を示す。上部電極輪1の傾斜踏み面5には常時天板Cの開口端角部Gが当たるため、マッシュ溶接に必要な強大な加圧力と加熱によりこの傾斜踏み面5の消耗が無視できなくなる。そこで、この実施の形態4は、上部電極輪1による加圧線Wが傾斜踏み面5の特定の箇所に固定されないように、上部電極輪1を有するシームヘッドを図示しないシフト機構に取り付けて、上部電極輪1を電極先端断面幅方向(図6の矢印方向又は逆方向)へ移動させるようにした方法である。シフト機構により、所定の溶接回数又は溶接毎に毎回少しずつ上部電極輪1を電極先端断面幅方向にシフトさせるか、もしくはシーム溶接長に応じて上部電極輪1の傾斜踏み面5を溶接過程中に電極先端断面幅方向に移動させる。これにより、上部電極輪1の消耗量を傾斜踏み面5の電極先端断面幅方向へ分散させることができる。したがって、過剰な電極研削や整形処理回数を削減して電極輪の寿命延長を図ると共に、軌跡位置ズレを防止して滑らかな表面ビードを形成することで溶接軌跡の安定化を図ることができる。
本発明の溶接方法を次の溶接条件に基づき溶接試験を行い、溶接品質を確認した。
1.上部電極輪の傾斜条件
傾斜角度が6度未満では、天板の開口端角部又はこれに近いところに溶接部を生成することができなかった。また10度を越えると、天板の加圧力が開口端角部に掛かりすぎて溶接時に中散りが生じ、不規則表面ビートを発生した。研削工程は従来同様に必要であった。内部欠陥のない良好なナゲットを開口端角部またはその近傍に生成するためには、傾斜角度の最適値を6〜10度に限定することが好ましい条件であることが判明した。
板厚が0.5mm以下では、薄すぎてナゲットの形成が難しく、電極輪の踏み面にピックアップされやすくなる。一方、板厚が1.0mm以上では、溶接加圧時に天板が湾曲し難く、表散りによる内部欠陥が発生しやすくなった。板厚の最適値は、0.6〜0.9mmに限定することが好ましい。
天板出し代を1mm以下に設定すると、天板の開口端角部とフランジ部の縁折り際に溶接部を生成することができなかった。一方、天板出し代が4mm以上では、天板が湾曲し難く、表散りによる内部欠陥が発生しやすくなった。天板の開口端角部をフランジ部の湾曲状の縁折り際に圧下し、所望の継ぎ手厚さまで平滑に減少する効果を得るためには、最適値2〜3mmが好ましい。
溶接電流が6.0kA以下では、溶接部の連続ナゲットを得ることができなかった。また、溶接電流が10kA以上では、表散り、中散り、不規則ビードが顕著に発生してナゲットに内部欠陥が生じてしまった。溶接速度を3m/minとした場合では、溶接品質上、7.0〜9.0kAが適正電流値であることを確認した。
上部電極輪及び下部電極輪による加圧力を2.0kN以下にすると、溶接部の圧力が不足して表散り、中散り、不規則ビードが発生してナゲットに内部欠陥が残留した。また、加圧力の上限値を6.0kA以上にすると、溶接部の加圧力が強すぎて安定した溶接軌跡が得られないので、不規則ビードや不完全ナゲットが発生した。天板の継ぎ手表面に圧痕を発生させないで健全なナゲットを形成するためには、加圧力の適正値は3.0〜8.0kNであることがわかった。
Claims (5)
- シンクの底部から垂直方向に立ち上がる側板の開口縁を外方に向かって湾曲状に縁折りして水平面内に形成されたフランジ部に開口端を有する天板を重ね合わせ、その重ね合わせて形成された継ぎ手に上下から一対のシーム溶接用電極輪を当接してこれら電極間に溶接に必要とする加圧力と溶接電流を供給し、前記電極輪を回転駆動しつつ前記継ぎ手を全周にわたって気密に溶接する方法であって、
上部電極輪の先端に、シンクの内側から外方に向かって次第にシンクのフランジ部から離れるように水平面に対して6度〜10度の角度で傾斜する踏み面が形成され、
下部電極輪は、上部電極輪の先端断面幅と同等かまたはそれより広い先端断面幅を有し、下部電極輪の先端面に断面が平面状の平面部が形成されると共に、先端面の一端側にはシンクのフランジ部の縁折りされた湾曲面と略同等の曲率を有する曲面部が形成され、
上部電極輪の踏み面が、天板に対して、下部電極輪の平面部から曲面部への曲がり際またはその近傍位置からフランジ部の曲がり際から突き出る天板の開口端角部を加圧するようにして、前記継ぎ手の全周にわたりマッシュシーム溶接を施すことにより、天板の開口端角部をシンクのフランジ部の縁折り際又はその近傍に沿って密着させ且つ天板の開口端角部の厚さを薄くして天板の開口端角部をシンクのフランジ部に接合することを特徴とする流し台のシーム溶接方法。 - 上部電極輪の先端の踏み面にシンクのフランジ部の縁折りされた湾曲面と略同等の曲率をもつ曲面が形成され、その曲面に沿って天板の開口端角部をシンクのフランジ部の縁折り際又はその近傍に密着させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の流し台のシーム溶接方法。
- シンクの底部から垂直に立ち上がる側板の内側にガイドブロックを当接させてこの側板に外方に向かう張力を付勢することによりシンクのフランジ部の縁折り際またはその近傍を外方に押圧してフランジ部の下側に下部電極輪を当接させて誘導されるフランジ部の溶接線のアライメントを安定化させ、ガイドブロックの側面に形成された逃げ溝により上部電極輪の側面を垂直方向にガイドすると共に上部電極輪を圧下させたときに上部電極輪の傾斜踏み面の先端を逃がすようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の流し台のシーム溶接方法。
- 上部電極輪を一定の溶接回数または溶接長に応じて上部電極輪の先端断面幅方向にシフトさせるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の流し台のシーム溶接方法。
- 下記の溶接条件により溶接を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の流し台のシーム溶接方法。
シンクと天板の材質:ステンレス材
板厚:0.6〜0.9mm
天板出し代:2〜3mm
溶接電流:7.0〜8.0kA
上部電極輪と下部電極輪による加圧力:3.0〜8.0kN
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