JP4598578B2 - 圧縮木材の製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、木材を木質繊維方向に直交する方向に圧縮してから、木質繊維方向に沿う方向に切断した板目の板材をブランク部材として切り出し、そのブランク部材を高圧容器内で100〜120℃の水蒸気を充填し、約1時間経過させて軟化させ、プレス機で圧縮する木質材の三次元加工方法が記載されている。
特許文献1に記載の技術では、高圧容器内でブランク部材を100〜120℃の水蒸気に約1時間曝すので、水蒸気が木材に浸透することにより木材が温度上昇するとともに、木材内部に高温の水分が浸潤される。そのため、木材内部の樹液成分が水分中に溶けだしたり、空中に揮発したりする。そして圧縮していくと木質繊維間の空隙が縮小することにより、木材内部に浸潤した水分とともに樹液成分が外部に流出する。その結果、圧縮木材に加工することによりブランク部材に含まれていた樹液成分が失われたり減少したりするという問題がある。
木材の樹液成分には、木材の種類に応じた香りなどのほかに、抗菌性や防虫性などを有する種々の有用な精油成分などが含まれている。そのため、圧縮されることによりそのような樹液成分が失われたり減少したりすると、そのような樹液成分に応じた木材の特質が損なわれるという問題がある。
前記圧縮成形を行うときに、少なくとも前記木材に含まれるのと同じ樹液成分を含む補充剤が前記高温高圧水蒸気中に添加されている方法とする。
この発明によれば、高温高圧水蒸気の雰囲気中にて圧縮されることにより木材から失われたり減少したりする成分を、少なくとも木材に含まれるのと同じ樹液成分を含む補充剤により補充しつつ圧縮成形することができるので、成形された圧縮木材に含まれる樹液成分などの成分量を調整することが可能となる。したがって、木材に本来含まれている樹液成分などの量を、例えば圧縮前と同等に保ったり、増量したりすることができる。
また、補充剤を高温高圧水蒸気中に添加するので、高温高圧水蒸気が浸透する範囲に補充剤の成分を効率的に浸透させることができる。そのため、高温高圧水蒸気により流出する樹液成分と浸透する補充剤内の樹液成分とが平衡し、木材内部からの樹液成分の流出量を低減することができる。
この発明によれば、圧縮する木材と同種類の木材から抽出された樹液成分を補充剤に含むようにするので、木材に含まれていた樹液成分の構成を容易に再現することができる。そのため、木材の種類に応じた木材の特質を容易に再現することができる。
この発明によれば、同種類の木材を圧縮成形する際に搾取された凝縮液から樹液成分を抽出するので、圧縮成形を行う木材に最も近い樹液成分を抽出することができる。そのため、圧縮前の木材の特質に最も近い特質を示す樹液成分を含有させることが可能となる。
なお、この樹液成分は、前もって同種類の別のブランク木材から抽出しておいたものを用いる。
ただし、圧縮成形を複数回に分けて行う場合には、1回目の圧縮工程でブランク木材から抽出された樹液成分を、同一のブランク木材の2回目以降の圧縮成形に利用することも可能である。また、圧縮成形を1回で行う場合でも、圧縮工程中に凝縮液を回収、樹液成分の抽出を併行して行い、高温高圧水蒸気中に添加することにより循環させてもよい。これらの場合、同種類の木材とは同一木材に他ならない。
この発明によれば、圧縮木材に残留する樹液成分の構成比を可変できるようにするので、樹液成分に応じた木材の特質、特性を可変することができる。
本発明の実施形態に係る圧縮木材の製造方法により製造される圧縮木材について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る圧縮木材について説明するための斜視説明図である。図2は、図1のA−A断面図である。
3次元形状は、一方向に沿って断面形状が変化する板状またはシェル状の3次元形状であれば、どのような形状であってもよいが、以下では、簡単のため図1に示すような函状の木材成形品1(圧縮木材)を例にとって説明する。
木質繊維は、側部1b、1dに平行な方向に延びている。
木材は、木質繊維の空隙に水分や樹液成分を含んでおり、それにより木材の種類に応じた種々の特質、例えば色、香り、抗菌性、防虫性などを備えるものである。
抗菌性を有する他の木材として、例えば、ヒバ、ネズコ、タイヒ(タイワンヒノキの通称)、ユーカリなどを挙げることができる。
また、ヒバの場合、ツヨプセン、セスキテルペン、ヒノキチオール、βドラブリンなどを含んでおり、このうちヒノキチオールとβドラブリンとにより強力な抗菌性をもたらすと言われている。
これらヒノキ、ヒバは、特に、種々の古建築物などにおいて十分耐食性を有することが確認されており、非常に優れた抗菌作用を有することが知られている。
また、防虫作用(特定の昆虫を近寄らせない作用)と抗菌作用とは異なる作用であるが、一般に防虫作用を有する木材は、何らかの抗菌作用を有する場合が多い。
図3(a)、(b)、(c)は、本発明の実施形態に係る圧縮木材の製造方法について説明するための、図1のA−A線に沿う断面視の模式的な工程説明図である。
木材成形品1の製造方法は、ブランク製造工程、圧縮成形工程、および整形工程からなる。
ブランク平板5は、木材成形品1の展開形状よりやや大きい略矩形状に切り出された厚さTの平板である。木質繊維の方向は、板厚方向と略直交方向に延びるようにとる。
厚さTは、例えば、T=3・tのような厚さを採用することができる。
コア金型30A、キャビティ金型30Bには、それぞれ木材成形品1を成形するために3次元形状を転写するための形状に加工された金型面30a、金型面30bが形成されている。
そして、コア金型30A、キャビティ金型30Bは、内部の雰囲気を高温高圧に保持するための圧力容器31内に納められている。
そして、ブランク平板5がコア金型30A、キャビティ金型30Bとの間にセットされる。
蒸気射出口37は、蒸気供給管36により蒸気発生器32と接続されており、蒸気発生器32が発生する高温高圧水蒸気4をコア金型30A、キャビティ金型30Bで挟まれる空間内に噴射するためのものである。
蒸気発生器32は、給水管34から供給される水3と、補充剤供給管35から供給される補充剤2とを混合し、それらの混合液から高温高圧水蒸気4を形成し、蒸気射出口37を通して噴射するものである。
例えば、ヒノキの抗菌作用を補ったり補強したりするには、ヒノキに含まれるカンフェン、αーピネンなどのモノテルペン、あるいはカジノール、ヒノキオールなどのセスキテルペンなどのテルペン類を含むようにする。
このような樹液成分は、それが関係する木材の特質によっては、単に生物分類上の同じ種に属する木材(同種類の木材)から適宜手段により抽出することができる。
一方、例えば木材の産地、生育環境、生育状態などの違いにより左右されることが多い木材の特質に関しては、同種類の木材として、同産地、同環境、同時期の伐採材などから抽出することが好ましい。特にブランク平板5から失われる樹液成分そのものを補うためには、ブランク平板5を切り出した母材から抽出することが好ましい。
また、可能であれば、樹液成分を抽出する木材を、木材チップ、端材、間伐材、廃材などから抽出すると経済的であり、環境保護上も好ましい。
抽出方法は、抽出する成分の特性に応じて適宜の手段を採用することができる。例えば、溶出、圧搾、遠心分離、乾留などの手段を採用することができる。
凝縮液6の分別手段は、例えば、不要な水分を蒸発させて濃縮したり、溶解していない成分については比重差などにより分別したりする手段が挙げられる。
処理液排出管38から取り出された処理液7は、補充剤2として再利用することができる。
このとき、ブランク平板5を軟化させるために、高温高圧水蒸気4を噴射しつつ圧縮を行う。
高温高圧水蒸気4は、蒸気発生器32において、給水管34から供給される水3と、補充剤供給管35から供給される補充剤2とを混合して、例えば、180℃〜200℃程度とされた、補充剤2を含む水蒸気として形成する。そして、蒸気射出口37を通してコア金型30Aとキャビティ金型30Bとの間のブランク平板5に向けて噴射する。
その際、コア金型30A、キャビティ金型30Bも同等の温度に加温することが好ましい。
このようにして、図3(c)に示す成形部材20が得られる。
すなわち、成形部材20を、例えばフライス盤などにセットし、外表面1Bからの高さH以上の範囲に延びる切除整形部20aを切削加工により切除する。
このようにして、図1に示すような木材成形品1が形成される。
木材成形品1によれば、従来の圧縮木材の製造方法では失われてしまう樹液成分などを圧縮成形工程において補充剤2として添加するので、樹液成分などに由来する木材の特質が圧縮後であっても損なわれないようにすることができる。
例えば、木材成形品1がヒノキである場合に、ヒノキに含まれる抗菌作用を有する精油成分を補充剤2として添加するので、圧縮成形されても抗菌作用が損なわれないようにすることができる。したがって、工業製品として必要な強度を備えつつ、自然素材に由来する抗菌性を有する部材、例えば、函、筐体、容器、カバー、外装体などが得られる。
本変形例では、処理液排出管38から回収した処理液7を補充剤供給管35に戻すことにより、補充剤2およびブランク平板5に含まれていた樹液成分を循環利用するようにする。
このようにすれば、ブランク平板5に含まれる樹液成分をブランク平板5の圧縮成形工程で再利用できるので、ブランク平板5の圧縮前の樹液成分の構成比に近い樹液成分を木材成形品1中に残すことができるという利点がある。
本変形例では、圧縮成形工程が、ブランク平板5を、例えば、1次圧縮、2次圧縮などのように複数回に分けて圧縮することにより、最終的に成形部材20を形成する場合であって、先行する圧縮成形工程により排液処理器33により回収された樹液成分などを含む凝縮液6を、後続の圧縮成形工程で再利用するようにする。
このようにすれば、排液処理器33による処理時間が比較的長い場合であっても、複数の圧縮成形工程の間で処理することができるので、より効率のよい処理を行うことができる。例えば、時間をかけて、不純物を除去したり、処理後の処理液7中の樹液成分の構成比を計測したり、濃縮度合を調整したり、といった処理を行うことにより、次の圧縮成形工程で再利用する凝縮液6の構成比などを最適化することができる。
また、木材は、ムクの木材だけではなく、廃材チップや木粉等を集めて固めた圧縮加工材料のような木質材を使用することも可能である。
また、補充液を含む高温高圧水蒸気をブランク平板に向けて噴射したが、これに限らず、圧力容器内の任意の空間に噴射することにより、圧力容器内が補充剤を含む高温高圧水蒸気雰囲気になっていればよい。
例えば、高温高圧水蒸気により失われない成分であっても、必要に応じて配合してもよいし、もともと含まれるよりも多い比率で配合してもよい。また、失われる成分であっても必要がなければ、配合しなくてもよい。また、凝縮液から抽出して補充剤を形成する場合に、不要な成分、例えば臭い成分などを除去するようにしてもよい。
このようにすれば、少なくとも樹液成分を含むので、木材の特質が失われず、必要に応じて木材の特質を強調したり、抑制したりすることができる。したがって、用途に合わせた木材の特質を備える圧縮木材を容易に製造することができるという利点がある。
2 補充剤
4 高温高圧水蒸気
5 ブランク平板(木材)
6 凝縮液
7 処理液
20 成形部材
30A コア金型(金型)
30B キャビティ金型(金型)
31 圧力容器
32 蒸気発生器
33 排液処理器
35 補充剤供給管
36 蒸気供給管
37 蒸気射出口
38 処理液排出管
39 排液回収管
40 排液口
Claims (4)
- 木材を高温高圧水蒸気の雰囲気中にて軟化させた状態で、前記木材の圧縮成形を行う圧縮木材の製造方法であって、
前記圧縮成形を行うときに、少なくとも前記木材に含まれるのと同じ樹液成分を含む補充剤が前記高温高圧水蒸気中に添加されていることを特徴とする圧縮木材の製造方法。 - 前記補充剤に含まれる前記樹液成分が、前記木材と同種類の木材から抽出されてなることを特徴とする請求項1に記載の圧縮木材の製造方法。
- 前記樹液成分は、前記同種類の木材を圧縮成形する際に搾取された凝縮液から抽出されてなることを特徴とする請求項2に記載の圧縮木材の製造方法。
- 前記添加される補充剤に含まれる前記樹液成分の量を変えることにより、圧縮木材に残留する樹液成分の構成比を可変できるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧縮木材の製造方法。
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