JP4598289B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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  • Output Control And Ontrol Of Special Type Engine (AREA)
  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車などに用いられる内燃機関の制御装置に係り、特に、排気還流(Exhaust Gas Recirculation、以下「EGR」という)および可変バルブタイミング機構(Variable Timing Control、以下「VTC」という)に関する制御を行う内燃機関の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、NOxの低減やポンピングロスの減少による燃料効率の増大の観点から、排気ガスの一部を吸気系に還流するいわゆる内燃機関のEGR装置がある。このEGR装置としては、たとえば特開平11−125126号公報に開示されたものがある。
【0003】
従来のEGR装置は、吸気通路と排気通路とを互いに連通するEGR通路と、このEGR通路を開閉する弁(以下、「EGR弁」という)とから構成されていて、EGR弁は、EGR通路の上流端と排気通路との連通点に配置されている。EGR弁は、EGR通路を全開から全閉の間で開閉し、排気通路から吸気通路への排気ガスの還流量を制御する弁であり、エンジン負荷、エンジン回転数、冷却水温などに基づいて開閉ないしは開度調節され、エンジンの燃焼室に運転状態に対応した流量の排気ガスを還流するというものである。
【0004】
EGR通路によって排気ガスの一部をエンジンの燃焼室に還流することにより、燃料室での混合気の燃焼速度および燃焼熱の急激な上昇が抑制される。その結果NOxが低減されるという効果を奏するものである。また、ポンピングロスが減少するため、燃料効率の増大に寄与することもできる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記従来のEGR装置で還流できる最大の量は、EGR弁が全開となったときの量である。このため、エンジンの燃焼室の運転状態に対応する排気ガスの還流要求量が最大値を超える場合には、還流要求量どおりに排気ガスを還流できないという問題があった。
【0006】
一方、排気ガスを還流させるためには、いわゆる内部EGRを利用することもある。この内部EGRは、VTCを利用してエンジンにおける吸気弁と排気弁が同時に開くことにより排気ガスの一部がエンジンの燃焼室に還流するものである。
【0007】
ところが、エンジンの吸気弁と排気弁の開閉タイミングを決めるVTCでは、エンジンの出力特性をトルクベストとなるように制御することが望まれる。したがって、排気ガスの還流量を制御するためにVTCの制御量を多くするのは好ましいことではないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、排気ガスの還流要求量が大きくなった場合でも、その要求量に対応する排気ガスを還流できるようにすることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る発明は、内燃機関における排気系と吸気系を連通するEGR通路に設けられ、前記EGR通路の開度を調整するEGR制御弁を制御するEGR制御部と、前記内燃機関における吸気弁と排気弁との開閉タイミングを調整する可変バルブタイミング機構を制御するバルブタイミング制御部を備え、還流排気ガス要求量に応じて、前記EGR制御部および前記バルブタイミング制御部によって、前記EGR制御弁および前記可変バルブタイミング機構をそれぞれ制御し、前記EGR制御部によって制御する前記EGR制御弁により制御される排気ガスの還流量を、前記バルブタイミング制御部によって制御する前記可変バルブタイミング機構により制御される排気ガスの還流量よりも優先して前記還流要求量に充てることにより、前記EGR制御弁により制御される排気ガスの還流量が前記還流要求量に対して足りない分を、前記可変バルブタイミング機構により制御される排気ガスの還流量で対応するように、前記EGR制御部による前記EGR制御弁の制御を、前記バルブタイミング制御部による前記可変バルブタイミング機構の制御よりも優先させることを特徴とする内燃機関の制御装置である。
【0010】
請求項1に係る発明によれば排気ガスの還流要求量に応じてEGR制御弁の制御を行うとともに、可変バルブタイミング機構によるバルブタイミング制御も行っている。このため、EGR制御弁が最高開度となって還流排気ガス要求量に到達しない場合であっても、バルブタイミング制御による内部EGR量を増加させることによって、さらに多くの排気ガスの還流要求量に応えることができる。
【0012】
また、EGR制御部によるEGR制御弁の制御をバルブタイミング制御部による可変バルブタイミング機構の制御よりも優先させて行っている。このため、排気ガスの還流量を制御するためにバルブタイミング制御の制御量が大きくなりすぎることを抑制し、もってエンジンの出力特性に与える影響を低減することができる。
【0013】
請求項に係る発明は、前記EGR制御部によって制御する前記EGR制御弁の開度が最高開度となった後に、前記可変バルブタイミング機構により制御される排気ガスの還流量を制御するように、前記バルブタイミング制御部によって前記可変バルブタイミング機構を制御することを特徴とする請求項に記載の内燃機関の制御装置である。
【0014】
前記のように排気ガスの還流量を制御するために、可変バルブタイミング機構を制御するのは望ましいことではない。そこで、請求項に係る発明では、EGR制御弁が最高開度になるまでは、EGR制御部で排気ガスの還流量を制御して、還流要求量に応えるようにし、EGR制御弁が最高開度となってEGR制御部での制御の許容範囲を超えた場合に、可変バルブタイミング機構による排気ガスの還流量の制御を行う。このため、排気ガスの還流量を達成するためのバルブタイミングの制御を極力行わないようにすることができるので、バルブタイミングの制御ではたとえばトルクベストとなるような制御を行うことができる。
請求項3に係る発明は、前記EGR制御弁の開度が前記最高開度となった後に、前記還流要求量が満たされる前に前記可変バルブタイミング機構により制御される排気ガスの還流量の増加を制限するように、前記バルブタイミング制御部によって前記可変バルブタイミング機構を制御することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置である。
【0015】
請求項4に係る発明は、前記還流要求量が、前記EGR制御弁の不感帯領域にあるときには、前記可変バルブタイミング機構により制御される排気ガスの還流量で前記還流要求量が満たされるように、前記バルブタイミング制御部によって前記可変バルブタイミング機構を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置である。
【0016】
EGRの制御で用いられているEGR制御弁は、閉じた状態から開く際に、いわゆる不感帯領域では極めて微小な開度とすることができず、開く量がある程度の大きさをもっていなければならない。このため、排気ガスの還流要求量が微小である場合には、EGRの制御では対応できないものであった。これに対して、バルブタイミング制御部による制御は、極めて微小な量であっても行うことができる。そこで、請求項に係る発明では、排気ガスの還流要求量が少なく、EGR制御弁の不感帯領域では、バルブタイミングによる制御を行い、内部EGRによる排気ガスの還流で還流要求量を満たすこととしている。したがって、還流要求量が微小である場合でも、この還流要求量に見合った量の排気ガスをエンジンの燃焼室に還流することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明に係る内燃機関制御装置を備える4サイクルエンジンのシステムを示す構成図、図2はその駆動系および動弁系の構造を示す斜視図である。
【0018】
図1に示すエンジン1は、図2に示すように、シリンダブロック2およびシリンダヘッド3を備えている。また、エンジン1には、図1に示すように、吸気通路4(吸気ポートを含む)および排気通路5(排気ポートを含む)が連通している。吸気通路4には開閉自在に吸気弁6(図2)が取り付けられており、排気通路5には開閉自在に排気弁7(図2)が取り付けられている。吸気通路4と排気通路5とは排気還流のための排気還流路8によって互いに連通されており、排気還流路8に排気還流量を調節するための本発明のEGR制御弁であるEGR弁9が配置されて、排気還流機構10が形成されている。
【0019】
排気還流機構10の排気還流路8は、一端8aが排気通路5に設けられた三元触媒11の上流側に連通し、他端8bが吸気通路4のスロットル弁12の下流側に連通している。排気還流路8の途中には排気還流量を制御するEGR弁9および容積室8cが介設されている。このEGR弁9はソレノイド9aを有する電磁弁であり、ソレノイド9aはECU13に接続され、その弁開度がECU13からの制御信号によってリニアに変化させることができるように構成されている。EGR弁9には、その弁開度を検出するリフトセンサ14が設けられており、その検出信号はECU13に供給される。
【0020】
ECU13は、図示しないスロットル開度センサなどの各種センサからのエンジンパラメータ信号等に基づいてエンジン運転状態を判別する。この運転状態に基づいて、吸気圧センサ15で検出される吸気管内絶対圧PBAとエンジン回転数センサ16で検出されるエンジン回転数NEとに応じて設定されるEGR弁9の弁開度指令値とリフトセンサ(EGR弁開度センサ)14によって検出されたEGR弁9の実弁開度値との偏差を零にするようにソレノイド9aに制御信号を供給する。
【0021】
また、図2に詳細に示されるように、シリンダヘッド3には吸気カムシャフト17および排気カムシャフト18が回動自在に軸支されている。両カムシャフト17,18の従動スプロケット19,20とクランクシャフト21の駆動スプロケット22は、エンドレスのタイミングチェーン23により連結されている。そして、クランクシャフト21の2回転あたり両カムシャフト17,18が1回転の割合で回転駆動される。
【0022】
吸気カムシャフト17には吸気弁6,6を開閉するための吸気カム24が一体的に形成されており、排気カムシャフト18には排気弁7,7を開閉するための排気カム25が一体的に形成されている。また、従動スプロケット19に対して吸気カムシャフト17を相対的に回動させ、クランクシャフト21に対する吸気カム24の位相角の変更を可能とするために、吸気カムシャフト17の一端部にVTC27が取り付けられる。
【0023】
図3はVTC27の内部を示し、図4は図3のIV−IV線断面を示す。図3および図4に示すように、ハウジング27a内には、吸気カムシャフト17の位相角を調節するためのベーン(回転子)29が収容されている。ハウジング27aはボルトB1により従動スプロケット19に固定され、ベーン29はボルトB2により吸気カムシャフト17の一端部に固定されている。
【0024】
図4に示すように、ベーン29のボス部29aには外周面から外側に突出させて複数のベーン部29bが形成される。ハウジング27aの内周壁27bにはハウジング27a内を周方向に区分して複数の油圧室を形成するための区画壁27cが形成されていて、吸気カムシャフト17およびベーン29のボス部29aにはベーン部29bを介してベーン29を進角方向と遅角方向とに切り換えて回動させるための2つの油路が形成される。
【0025】
一方の油路はベーン29を進角側に回動させる進角用油路29cとして、他方の油路はベーンを遅角方向に回動させる遅角用油路29dとしてそれぞれ後に説明する油圧制御弁28を介して図示しないオイルポンプに接続される。このため、ベーン29を中心として進角側の油圧室(以下、「進角室」という)30に作動油を供給しながら遅角側の油圧室(以下、「遅角室」)31より同量の作動油を排出すると、隣接する区画壁27c,27cの範囲内で吸気カムシャフト17が進角方向に回動される。逆に、遅角室31に作動油を供給しながら進角室30より同量の油を排出すると、隣接する区画壁27c,27cの範囲内で吸気カムシャフト17が遅角側に回動される。従って、吸気カム24を図5に点線aで示す遅角位置から実線bで示す進角位置に進角させることも、また、進角位置から遅角位置に遅角させることもできる。
【0026】
なお、図3中、符号STはベーン29の回動を規制するためのストッパーであり、図示しない油路を通じて供給された作動油の圧力によって解除される。
【0027】
図6はECU13、エンジンの運転状態を検出するための各種センサおよび油圧制御弁28を示す。油圧制御弁28は駆動コイルと、この駆動コイルにより駆動されるスプール等を備えるリニアソレノイド弁で構成されており、ECU13から駆動コイルに供給される電流の出力デューティ比(制御値)に対応してスプールの位置を変化させる。このECU13が本発明のEGR制御部およびVTC制御部を構成する。
【0028】
油圧制御弁28は、ECU13より出力される出力デューティ比(出力制御値)が保持デューティ比(例えば50%)よりも大きいときはスプールを中立位置より一方側へ移動させて進角室30を開放する。また、出力デューティ比が保持デューティ比よりも小さいときは前記スプールを中立位置から他方側に移動させて遅角室31を開放するように構成される。
【0029】
このため、出力デューティ比(出力制御値)が保持デューティ比(例えば50%)よりも大きいときは、進角室30に供給される作動油の圧力により吸気カムシャフト17は進角側に回動されて図7に示すように、排気カム25に対する吸気カム24の位相角は進角される。逆に、出力デューティ比(出力制御値)が保持デューティ比(例えば50%)よりも小さいときは遅角室31に供給される作動油の圧力により吸気カムシャフト17が遅角側に回動され、排気カム25に対する吸気カム24の位相角は遅角される。また、出力デューティ比が保持デューティ比のときは、スプールが進角室30および遅角室31の両方を開放する中立位置に移動され、進角室30および遅角室31の両方が閉鎖されて進角室30および遅角室31に対する作動油の供給が遮断されるため、吸気カムシャフト17と従動スプロケット19とが一体化され、吸気カム24の位相角はそれまでに制御された位相角に保持される。
【0030】
図6に示すように、制御手段としてのECU13は、I/O(Input/Output)ポート、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)を中心とするマイクロコンピュータから構成されている。また、ECU13には油圧制御弁28の駆動コイルに流れている実電流値を検出するための電流検出回路と、各種センサの信号をA/D変換するためのA/D変換器、波形整形のための整形器が備えられる。
【0031】
また、ECU13には、先に説明したEGR弁9のリフト量を検出するリフトセンサ14、吸気圧センサ15、およびエンジン回転数センサ16のほか、ノッキングセンサ32、スロットル開度センサ35、水温センサ40等が接続されている。また、エンジン回転数センサ16は、カム角センサ33およびクランク角センサ34によって構成されている。
【0032】
カム角センサ33は、たとえば吸気カム24の位相角を検出するためのセンサであり、例えば、マグネットセンサとMREピックアップ(磁気式ピックアップ)とで構成されている。そして、吸気カムシャフト17の回転に伴って所定のクランク角(例えば180゜)毎にカムパルスをECU13に出力する。
【0033】
クランク角センサ34はカム角センサ33と同様に構成されていて、クランクシャフト21の回転に伴って所定のクランク角(たとえば30゜)毎にクランクパルスをECU13に出力する。また、クランク角センサ34は基準用としての追い歯を検知してクランクシャフト21が1回転するごとに1回、基準パルスをECU13に出力する。スロットル開度センサ35はスロットル弁36のスロットル開度を検出してそれぞれECU13に出力する。
【0034】
水温センサ40は、ラジエータとエンジン1のウォータジャケット(図示せず)とを循環する配管に設けられている。この配管内を通流する冷却水の水温を検出してECU13に出力している。
【0035】
ECU13は、エンジン回転数センサで検出されたエンジン回転数NEおよび吸気圧力から求められた吸入空気量のそれぞれの値に基づいてエンジン1の運転状態を良好とする制御を実行する。
【0036】
たとえば、エンジン回転数、エンジン負荷、吸入空気量に基づいてインジェクタ37の燃料噴射時間(燃料噴射量)を制御し、ノッキングセンサ32からの信号に基づいて点火時期を補正する。また、点火時期の補正量に基づいてアイドリング時などの低負荷状態のときは油圧制御弁28の制御によって出力ディーティ比を下げて遅角室31に作動油を供給し、吸気弁6の位相角を遅角させる。さらに、高速走行時など高負荷のときには油圧制御弁28の制御によって出力ディーティ比を上げて遅角室31に作動油を供給し、吸気弁6の位相角を進角させる。こうして、VTCにおける進角量の基準となる基準進角量を決定しておく。
【0037】
そして、ECU13は排気還流時に、エンジン1の負荷、回転数、冷却水温等、エンジン1の運転状態に対応する各種パラメータに対応して最適化されたマップ(図示せず)から、運転状態に最適な排気還流量を決定する。排気還流量を決定したら、後に説明する工程を経て、バルブリフト量およびVTC27の進角量を決定する。バルブリフト量が求められたら、EGR弁9のリフト値と排気ガスの還流量とに基づくマップを検索して得られたリフト値となるようにソレノイド9aを制御する。
【0038】
それでは、本実施形態における制御工程について説明する。
図8は、本実施形態において行われる制御工程を示すフローチャートである。
【0039】
まず、制御が開始されると(S1)、VTC27における基準となる進角量(以下「BASEVTC」という)が算出される(S2)。BASEVTCを算出するために、エンジン回転数センサ16によってエンジンの回転数を検出する。検出されたエンジン回転数NEから、たとえばその状態におけるトルクベストとなるVTC角をマップを参照して求めるものである。一般に、アイドリング時や低速走行時などは進角量が小さくなり、高速走行時には、進角量が大きくなる。進角量が大きくなることで、図7に示すように、排気カム25に対する吸気カム24の位相角は進角される。そして、速度に対するトルクベストとなる進角量に設定される。
【0040】
基準進角量が算出されたら、排気ガスの一部をエンジンの燃焼室に戻す際の排気ガスの還流要求量を算出する。排気ガスの還流要求量は、エンジン1の負荷、回転数、冷却水温等、エンジン1の運転状態に対応する各種パラメータに対応して最適化されたマップ(図示せず)から求められる。マップには、エンジン負荷に対してNOX低減効果があり、かつ燃費効率が向上する各種パラメータに対応する排気還流量が記憶されている。
【0041】
排気ガスの還流要求量が算出されたら、排気ガスの還流要求量に対応するEGR弁9の要求リフト量をマップから検索する(S3)。ここで検索される要求リフト量は、排気ガスの還流要求量に対応する排気ガスをすべてEGR弁9を介して燃焼室に戻すときの値である。このように、排気ガスの還流要求量に応えるために、EGR弁9の制御を可変バルブタイミング機構の制御よりも優先させて行っている。このため、排気ガスの還流量を制御するためにバルブタイミング制御の制御量が大きくなりすぎることを抑制し、もってエンジンの出力特性に与える影響を低減することができる。
【0042】
続いて、検索された要求リフト量が不感帯領域にあるか否かを判断する(S4)。EGR弁9は、閉じた状態にあるときには、微小なリフト量の制御ができず、ある一定値以上のリフト量からではないと、開くことができない。そこで、要求リフト量が微小であって不感帯領域にあるときには、EGR弁9の開放は行わず、VTC27を進角させる。VTC27の進角に伴い、図7に示す吸気弁と排気弁が重なる部分が生じて、わずかな量の排気ガスがエンジンの燃焼室に還流されることになる。このように、バルブタイミング制御部による制御は、極めて微小な量であっても行うことができる。そのため、排気ガスの還流要求量が少なく、EGR制御弁の不感帯領域では、バルブタイミングによる制御を行い、内部EGRによる排気ガスの還流で還流要求量を満たすこととしている。したがって、還流要求量が微小である場合でも、この還流要求量に見合った量の排気ガスをエンジンの燃焼室に還流することができるため、EGRの効果を得ることができる。
【0043】
このため、要求リフト量が不感帯領域にあるときにはEGR弁のリフト量を0に設定し(S5)、後に説明するステップS10に進む。また、EGR弁9の要求リフト量が不感領域にない場合には、EGR弁9の要求リフト量がフルリフトとなっているか否かを判断する(S6)。EGR弁9のフルリフト量はEGR弁9の性能等により予め定められている。
【0044】
要求リフト量がフルリフトとはなっていない場合には、EGR弁9を開くだけで、還流要求量に対応する量の排気ガスを燃焼室に戻すことができるので、EGR弁9のリフト量を検索された要求リフト量に設定する(S7)。そして、VTC角はBSEVTCに設定する(S8)。このように、EGR弁9が最高開度になるまでは、EGR弁9に開度によって排気ガスの還流量を制御して、還流要求量に応えるようにし、EGR弁9が最高開度となってその許容範囲を超えた場合に、バルブタイミング機構による排気ガスの還流量の制御を行う。このように、EGR弁9により制御される排気ガスの還流量は、VTC27により制御される排気ガスの還流量よりも優先して還流要求量に充てられる。このため、排気ガスの還流量を達成するためのバルブタイミングの制御を極力行わないようにすることができるので、バルブタイミングの制御ではたとえばトルクベストとなるような制御を行うことができる。
一方、要求リフト量がEGR弁9のフルリフトを超えている場合では、EGR弁9を介して排気ガスを還流するのみでは、還流要求量に応えることができない。そこで、要求リフト量がEGR弁9のフルリフトを超える場合、すなわちEGR弁9の開度が最高開度となった場合には、EGR弁9をフルリフトに設定する(S9)。そして、EGR弁9をフルリフトにしてもまだ足りない分の還流要求量に対しては、VTC27で対応する。そのため、EGR弁9をフルリフトにしたときに不足する還流要求量に対応するVTC27の進角量(以下「VTCEGR」という)をマップを参照して検索する。このVTCEGRの検索は、ステップS5を経た後にも同様に行われる。
【0045】
こうして、VTCEGRを求めて、BASEVTCに加算することにより、還流要求量に対応する排気ガスを燃焼室に還流することができる。このように、EGR弁9が最高開度となって還流排気ガス要求量に到達しない場合であっても、バルブタイミング制御による内部EGR量を増加させることによって、さらに多くの排気ガスの還流要求量に応えることができる。
ところが、VTC角はトルクベストとして定められているため、その変更値を大きくしてまで還流要求に応えるメリットは少ない。そこで、VTC角に所定の限界値(以下「VTCLIM」という)を加えておく。このVTCLIMは、トルクベストから外れても許容できる範囲などとして適宜設定することができる。
【0046】
そして、検索されたVTCEGRをBASEVTCに加算した値がVTCLIMに到達しているか否かを判断する(S11)。その結果、VTCLIMに到達していれば、VTC角をリミット値VTCLIMに設定する(S12)。このため、このVTCLIMにより、還流要求量が満たされる前に、内部EGR量の増加が制限される。また、VTCLIMに到達していない場合には、VTC指令値はBASEVTCにVTCEGRを加算したものとすることができる(S13)。
【0047】
こうして、EGR弁9のリフト量とVTC27のVTC角が設定されて、それぞれEGR9およびVTC27に対して信号が出力されて、制御が終了する(S14)。
【0048】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。たとえば、前記実施形態では、EGR弁9として電動式の電磁弁を用いているが、これに代えて負圧で作動するダイヤフラム式のものを用いることもできる。
【0049】
また、前記実施形態では、EGR弁の開度が最高開度となった場合にバルブタイミング制御部によって可変バルブタイミング機構を制御するようにしているが、EGR弁の開度が最高開度になる前の時点(たとえば1/2開度)からバルブタイミング制御部による制御を行ってもよい。EGR弁が最高開度になる前にバルブタイミング制御部による制御を行う場合でも、EGR制御部による制御をバルブタイミング制御部による制御よりも優先させることにより、EGR弁により制御される排気ガスの還流量を可変バルブタイミング機構により制御される排気ガスの還流量よりも優先して還流要求量に充てることができて、排気ガス還流量を制御するために、バルブタイミング制御部の制御量が大きくなりすぎることを抑制できる。この結果、エンジンの出力特性に与える影響を低減することができる。
【0050】
さらに、前記実施形態においては、排気カム25に対して吸気カム24の位相角を調節するVTC27(位相角調節手段)の進角により補う説明をしたが、他の可変バルブタイミング機構を利用してもよい。
たとえば、吸気弁6に対して排気弁7の位相角を変更する形式の可変バルブタイミング機構、あるいは、流体圧や電磁ソレノイド等により吸気カム24を高速用カムまたは低速用カムに切り換えながらVTC27により排気カム25に対する吸気カム24の位相角を変えるものを適用することができる。
【0051】
なお、本実施形態において「位相角を調節する」という表現は、同じ吸気カム24でも位相を変えることができる場合と、吸気カム24のリフト量が違う場合との双方を含んでいる。
【0052】
従って、前記実施形態のように、吸気カム24を回転させてもよいし、また、吸気カム24に対して排気カム25の位相角を変えるようにしてもよく(VTE)、さらには、カム山を変えることで位相を変えるようにしてもよい。
【0053】
【発明の効果】
以上の説明のとおり、本発明の請求項1に係る発明によれば、EGR弁が最高開度となって排気ガスの還流要求量に到達しない場合であっても、バルブタイミング制御による内部EGR量を増加させることによって、さらに多くの排気ガスの還流要求量に応えることができる。
【0054】
請求項に係る発明によれば、排気ガスの還流量を制御するためにバルブタイミング制御の制御量が大きくなりすぎることを抑制し、もってエンジンの出力特性に与える影響を低減することができる。
【0055】
請求項に係る発明によれば、排気ガスの還流量を達成するためのバルブタイミングの制御を極力行わないようにすることができるので、バルブタイミングの制御ではトルクベストとなるような制御を行うことができる。
【0056】
請求項4に係る発明によれば、EGRにおける排気ガスの還流要求量が微小である場合でも、この還流要求量に見合った量の排気ガスをエンジンの燃焼室に還流することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る内燃機関の制御装置を備える4サイクルエンジンのシステムを示す構成図である。
【図2】本発明に係る内燃機関の制御装置を備える4サイクルエンジンの駆動系と動弁系を示す解説図である。
【図3】本発明に係るVTCの内部を示す要部詳細断面図である。
【図4】本発明に係るVTCを示し、図3のIV−IV線断面図である。
【図5】本発明に係る吸気カムシャフトの位相角の調節状態を示す解説図である。
【図6】本発明に係る制御系および検出系を示すブロック図である。
【図7】本発明に係る可変バルブタイミングエンジンの吸気弁および排気弁のバルブタイミング、位相角および、弁のリフト状態を示す図である。
【図8】本実施形態において行われる制御工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
4 吸気通路
5 排気通路
6 吸気弁
7 排気弁
8 排気還流路
9 EGR弁(EGR制御弁)
13 ECU
27 VTC(可変バルブタイミング機構)
28 油圧制御弁
30 進角室
31 遅角室
33 カム角センサ
34 クランク角センサ

Claims (4)

  1. 内燃機関における排気系と吸気系を連通するEGR通路に設けられ、前記EGR通路の開度を調整するEGR制御弁を制御するEGR制御部と、前記内燃機関における吸気弁と排気弁との開閉タイミングを調整する可変バルブタイミング機構を制御するバルブタイミング制御部を備え、
    排気ガスの還流要求量に応じて、前記EGR制御部および前記バルブタイミング制御部によって、前記EGR制御弁および前記可変バルブタイミング機構をそれぞれ制御し、
    前記EGR制御部によって制御する前記EGR制御弁により制御される排気ガスの還流量を、前記バルブタイミング制御部によって制御する前記可変バルブタイミング機構により制御される排気ガスの還流量よりも優先して前記還流要求量に充てることにより、前記EGR制御弁により制御される排気ガスの還流量が前記還流要求量に対して足りない分を、前記可変バルブタイミング機構により制御される排気ガスの還流量で対応するように、前記EGR制御部による前記EGR制御弁の制御を、前記バルブタイミング制御部による前記可変バルブタイミング機構の制御よりも優先させることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記EGR制御部によって制御する前記EGR制御弁の開度が最高開度となった後に、前記可変バルブタイミング機構により制御される排気ガスの還流量を制御するように、前記バルブタイミング制御部によって前記可変バルブタイミング機構を制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記EGR制御弁の開度が前記最高開度となった後に、前記還流要求量が満たされる前に前記可変バルブタイミング機構により制御される排気ガスの還流量の増加を制限するように、前記バルブタイミング制御部によって前記可変バルブタイミング機構を制御することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記還流要求量が、前記EGR制御弁の不感帯領域にあるときには、前記可変バルブタイミング機構により制御される排気ガスの還流量で前記還流要求量が満たされるように、前記バルブタイミング制御部によって前記可変バルブタイミング機構を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
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