この発明は車両用発電制御装置に係り、発電機(「オルタネータ」ともいう。)の発電電圧を調整することにより、バッテリと協調して、車両の燃費効果を得る技術に関し、特に高速巡航時の惰行時にオルタネータの電圧を下げてエンジンの負荷を低減し、燃費効果を得る車両用発電制御装置に関するものである。
通常、オルタネータは、エンジンとギヤないしベルトからなる駆動伝達部材で連結され、エンジンの回転によって発電される。
バッテリを含む負荷側の要求を吸収するために、フィールドコイルに流す電流を、内蔵するレギュレータ回路で調整している。
前記オルタネータの主な役割は、ライトやエアコンディショナ等への給電を行うことであるが、これにはその電気負荷に応じてエンジンへ発電のためのトルクを要求することになる。
特許文献10に記載される特開平9−327199号公報は、加速状態においてエンジン回転数の変化率が所定の上昇基準値以上であると、通常の目標出力電圧値よりも低い低電圧値を指示する。この指示された低電圧値を実現するためのデューティ比でフィールドコイルに流す励磁電流を制御する方法を述べている。
特許文献4に記載される特開昭61−129433号公報は、スロットル開度が所定スロットル開度値よりも大きい場合やエンジン回転数が所定エンジン回転数よりも低い場合に、オルタネータの発電を完全に停止することにより、エンジン出力のロスを低減して加速性能やアイドリング時の安定性の向上を図っている。
また、例えば、特許文献2に記載される特開昭58−131342号公報は、エンジン回転数が所定エンジン回転数よりも低くなった場合には、オルタネータの発電を停止、または抑制することにより、アイドリング時の運転状態の安定化を図っている。
更に、例えば、特許文献7に記載される特開平5−64498号公報は、スロットル開度と吸入空気量との変化に基づいて加速の状態を3段階に分け、各段階に適切な発電量を設定することにより、過度な発電抑制を防止しつつ、加速性能の向上を図っている。
オイルネータの負荷情報を取り込んで、電気負荷応答をISC(「アイドル・スピード・コントロール」ともいう。)制御を行う特許文献8に記載される特開平7−160713号公報等も見られる。
一方、例えば、特許文献5に記載される特開平2−16343号公報等では、通常運転時にはオルタネータの発電を抑制し、減速時回生について述べている。
特開昭57−131840号公報
特開昭58−131342号公報
特開昭61−104129号公報
特開昭61−129433号公報
特開平2−16343号公報
特開平2−206301号公報
特開平5−64498号公報
特開平7−160713号公報
特開平7−264708号公報
特開平9−327199号公報
特開2000−204995号公報
ところで、回生の技術に関しては、減速時のエネルギを運動エネルギとして回収する方法や、減速時の運動エネルギを電力として回収する方法等が提案されている。
前者としては、特許文献1に記載される特開昭57−131840号公報のオルタネータ、フライホイール、エアコンコンプレッサ等を駆動することによりエネルギを回収する技術や、特許文献3に記載される特開昭61−104129号公報に開示されているように、エンジンの減速時に発生するエネルギをスロット開度調整のためのポンピングトルクと発電機トルクとに分担して配分し、発電機側でバッテリの充電目標電圧を定常値より高く設定して負荷分担を増加させ、エネルギを回収する技術がある。
また、後者としては、特許文献6に記載される特開平2−206301号公報のように、インバータ制御手段により内燃機関の主軸に接続された交流発電機を動作させ、その発電電力を、第1の充電制御回路により第1の二次電池に回生充電するとともに、この第1の二次電池に蓄えられた電力を、第2の充電制御回路により第2の二次電池に充電することにより、減速時の運動エネルギを回収する技術や、特許文献9に記載される特開平7−264708号公報のように、その回生電力をコンデンサに蓄える技術が開示されている。
これらの文献は、オルタネータの効率の悪いオルタネータの低回転部分はバッテリで放電し、高回転時にバッテリへ充電して収支を「0(ゼロ)」にし、トータルとして燃料消費量を少なくしようとするものである。
しかし、車両が高速、エンジンが高回転の状態では、単純に電力を回収する方法が取られているため、この方法では、高速巡航時の燃費改善が望めないという不都合がある。
この発明は、高速巡航時の惰行状態を検知し、その惰行状態においてオルタネータを通常の調整電圧を基準設定電圧よりも低い電圧値である第1固定値に設定し、電気負荷の一部ないし全部をバッテリに肩代わりさせることにより、エンジンの負荷を低減させ、惰行距離を伸ばすことを目的としている。
このとき、高速時の惰行状態は、スロットル・オフで、車速が所定値である設定された値より高く、燃料カット中、つまり燃料カット状態である等の諸条件を満足するものとする。
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、車両に、エンジンと前記エンジンによって駆動される発電機とこの発電機により充電可能なバッテリとを搭載し、前記発電機の発電状態を制御する車両用発電制御装置において、前記車両の減速状態を検出する減速状態検出手段を備え、車両速度を検出可能な車速検出手段を備え、前記減速検出手段により減速状態であると検出され、燃料カット状態で、かつ前記車速検出手段により検出された車速が設定された値より高い場合には、前記発電機の調整電圧を基準設定電圧より低い第1固定値に設定する高車速制御手段を備え、前記減速検出手段により減速状態であると検出され、燃料カット状態で、かつ前記車速検出手段により検出された車速が、設定された値より低い値である第2の値よりも低い場合には、前記発電機の調整電圧を基準設定電圧より高い第2固定値に設定することを特徴とする。
以上詳細に説明した如くこの本発明によれば、発電機がエンジンの負荷となっている時間を短縮し、燃料カット時間を延ばすことができ、燃料消費量を低減することが可能である。
上述の如く発明したことにより、減速検出手段により減速状態であると検出され、燃料カット状態で、かつ車速検出手段により検出された車速が設定された値より高い場合には、高車速制御手段によって発電機の調整電圧を基準設定電圧より低い第1固定値に設定し、発電機がエンジンの負荷となっている時間を短縮し、燃料カット時間を延ばして燃料消費量の低減を可能としている。
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
図1〜図4はこの発明の第1実施例を示すものである。図2において、2は図示しない車両に搭載されるエンジン、4は発電機(「オルタネータ」ともいう。)、6は発電機4の発電状態を制御する車両用発電制御装置である。
前記車両用発電制御装置6は、駆動用エンジン2と、このエンジン2にベルトやギヤ等の駆動伝達部材8で連結された発電機4と、バッテリ(図示せず)とを基本構成としている。
そして、前記発電機4の代わりとしては、ベルトやギヤ等の駆動伝達部材8で連結、または図示しないクランク軸に直結されたモータジェネレータ(「MG」ともいう。)が考えられる。
また、前記発電機4は、電気負荷となるライト(図示せず)やエアコンコンディショナ(図示せず)等に電気を供給している。
前記発電機4は、調整電圧を段階的、あるいは無段階に調整できる機能を有し、信号によりエンジン制御装置10から指令を受ける構成を有している。
つまり、図2に示す如く、前記エンジン制御装置10は、前記エンジン2に接続され、エンジン2側からエンジン回転数検出センサ(図示せず)により検出されたエンジン回転数信号を入力するとともに、エンジン2側に燃料噴射量等の各種制御信号を出力する。
更に、前記エンジン制御装置10は、前記発電機4に接続され、発電機4側からフィールド電流、オルタネータ温度である発電機温度の信号を入力するとともに、発電機4側に調整電圧指示信号を出力する。
前記エンジン制御装置10には、エンジン冷却水温度である水温を検出する水温センサ12と、吸気管内温度である吸気温を検出する吸気温センサ14と、車両速度である車速を検出する車速センサ16と、ブースト圧を検出するブースト圧センサ18と、スロットルバルブ(図示せず)のスロットルポジションを検出するスロツトルポジションセンサ20と、燃料噴射量を検出する燃料噴射量検出センサ(図示せず)と、バッテリ充放電電流を検出するバッテリ充放電電流検出センサ22と、電気負荷電流を検出する電気負荷電流検出センサ24と、車両の傾斜角を検出する傾斜角検出センサ26とが夫々接続される。
そして、前記エンジン制御装置10への入力関数として、エンジン冷却水温度である水温、吸気管内温度である吸気温、車速、エンジン回転数、燃料噴射量、スロットルポジション、ブースト圧、バッテリ電圧、バッテリ温度、オルタネータ温度である発電機温度、オルタネータ発電電流であるフィールド電流、電気負荷電流、バッテリ充放電電流、傾斜角等の1つ以上を持つ構成を有する。
なお、オートマチック車両(「AT車両」ともいう。)である場合には、ATF温度、シフトポジション等の情報が追加入力され、マニュアルトランスミッション車両(「MT車両」ともいう。)である場合には、クラッチポジション、あるいはスイッチ情報、ニュートラルスイッチ情報が追加されてもよい。
このとき、前記車両の減速状態を検出する減速状態検出手段28を備え、車両速度を検出可能な車速検出手段である前記車速センサ16を備え、前記減速検出手段28により減速状態であると検出され、燃料カット状態で、かつ前記車速検出手段である前記車速センサ16により検出された車速が設定された値Vsphhより高い場合には、前記発電機4の調整電圧を基準設定電圧より低い第1固定値に設定する高車速制御手段30を備える構成とする。
詳述すれば、前記車両用発電制御装置6は、エンジン低回転、低車速においてアイドル時や加速時の発電機4の調整電圧を低減させ、エンジン2の負荷を低減し、惰行時や減速時に回生発電を行う制御を基本としているシステムである。
そして、前記エンジン制御装置10に、図2に示す如く、減速状態検出手段28及び高車速制御手段30を内蔵して設ける。なお、減速状態検出手段28及び高車速制御手段30の配置状態としては、上述した内蔵以外にも、前記エンジン制御装置10とは別体状態とすることも可能である。
前記高車速制御手段30は、減速時の燃料カット開始時、つまり燃料カット状態で、車速が設定された値Vsphhより高い場合に、随行時カットを実施し、前記発電機4の調整電圧を基準設定電圧(「通常の調整電圧」ともいう。)より低い調整電圧である第1固定値に設定するものである。
また、この第1固定値が、前記バッテリの開放電圧以上であるかどうかにより、調整電圧を第1固定値から基準設定電圧に戻す条件を変える機能をも有している。
電圧の設定は、前記エンジン制御装置10から発電機4のレギュレータ(図示せず)に伝えられ、伝達方法は、デューティ信号、アナログ信号、CAN(自動車内のLAN(Local Area Network)規格)等の通信方法が考えられる。通常は、安価で信頼性の高いデューティ信号で伝達される。この場合この制御系において、デューティで与えられた指示は、バッテリのコンディショナ等の情報をフィードバックすることによって、任意の調整電圧を得る方法を有している。
次に作用を説明する。
前記車両の高速惰行時において、車両情報により所定の条件を満足した場合には、前記発電機4の調整電圧を通常の調整電圧である基準設定電圧より低い調整電圧である第1固定値に設定される。これは、低回転、低車速であれば、通常の回生制御が行われる条件である。
このとき、基準設定電圧から第1固定値に至る方法は、直ちにでもよい。ただし、負荷が急激に軽くなることによりエンジン回転数の吹け上がりは、車両運転者に不快感を与える恐れがあるため、移行時間が任意に設定され、エンジン2の回転変動がないように考慮される。
また、高速惰行開始から切り替えまでの遅延時間を設ける。これはショック低減のための処置であり、上述した徐変動作と組み合わせてもよい。同時に、エンジン2のISC(「アイドル・スピード・コントロール」ともいう。)制御と同期させてもよい。
前記第1固定値に設定されると、バッテリの電圧が第1固定値に落ちるまでの間、エンジン2の電気負荷がバッテリにより一部あるいは全部が肩代わりされる。
この第1固定値が、バッテリの開放電圧より高ければ、図4に示す如く、バッテリはそのコンデンサ成分容量に応じた放電時間を示し、設定初期に負荷が大きく低減し、やがて発電機4の電気負荷は、通常の調整電圧である基準設定電圧でバッテリへ充電を行っていた電流を一部あるいは全部を除く分となる。
前記第1固定値におけるバッテリへの充電量は、第1固定値とバッテリ開放電圧との差、バッテリ温度、エンジン回転数等によって変化するが、基本的にはバッテリがこの場合は放電しない電圧であればよい。
この方法のメリットは、長時間の惰行でも特別な制御を特に必要としないことである。
また、別の方法としては、前記第1固定値をバッテリ開放電圧より低い値に設定する方法である。
この場合には、図4に示す如く、バッテリの放電は継続され、バッテリの放電量に応じてエンジンの負荷は低減される。
このとき、所定時間以上、惰行運転が継続した場合には、第1固定値から、バッテリ開放電圧より高い第2固定値、または通常の調整電圧である基準設定電圧に切り替えられる。このような場合も、切り替える際の移行速度を任意に設定できる。同時に、エンジン2のISC(「アイドル・スピード・コントロール」ともいう。)制御との同期も可能である。
更に、バッテリ情報を利用できる場合、つまりバッテリの充放電電流を電流センサからなる前記バッテリ充放電電流検出センサ22等で検知し、このSOCや残容量を把握している場合では、SOCや残容量の下限閾値まで第1固定値を維持することができる。
この下限閾値は、1回の制御(「惰行時制御」ともいう。)での操作量でもよく、バッテリの絶対下限値でもよい。
この惰行時制御は、車速により回生と切り分けられる。その速度の設定値にはヒステリシスが設けられ、境界速度でハンチング現象が起きないようにしている。また、どちらにも属さない緩衝速度域を設けてもよい。
マニュアルトランスミッション車両の場合には、クラッチ操作の有無と関係なく、ニュートラルが検出されると回転が急激に低下し、燃料カット(「F/C」ともいう。)からの復帰とともに移行すると、エンジン回転数のアンダシュートの恐れがあるため、ニュートラル検出から所定時間後に通常の調整電圧である基準設定電圧、あるいは第2固定値に移行する。
復帰ショックを低減するための復帰時にも、遅延時間を設ける。この手法は設定時にも適用できる。
また、オートマチック車両の場合には、エンジン回転数が所定値以下となり、燃料カット復帰に準じて調整電圧、つまり通常の調整電圧である基準設定電圧や第1、第2固定値の移行を行う。ギヤダウンして再度燃料カットに戻ると、惰行時制御を再開する。車速条件にて移行動作をした場合には、アクセル操作に変化がなくても再開しない。それ以降は回生制御となる場合があるためである。
これらの作用により、燃料噴射のカット、つまり燃料カット時間が伸び、高速走行時の燃費向上が期待できる。
図1の前記車両用発電制御装置6の制御用フローチャートに沿って説明する。
制御用プログラムが開始(100)されると、減速時燃料カット開始か否かの判断(102)を行い、この判断(102)がYESの場合には、車速が設定された値Vsphhより高い、例えば以上であるか否かの判断(104)に移行する。
そして、車速が設定された値Vsphhより高い、例えば以上であるか否かの判断(104)において、この判断(104)がNOの場合には、車速が設定された第2の値Vsplhより低いか否かの判断(106)に移行し、判断(104)がYESの場合には、惰行時カットの処理(108)に移行する。
このとき、前記設定された値Vsphhと設定された第2の値Vsplhとは、
Vsphh>Vsphl>Vsplh
の関係を満足させるものとする。
また、上述の車速が設定された第2の値Vsplhより低いか否かの判断(106)において、この判断(106)がYESの場合には、回生制御の処理(110)に移行し、前記発電機4の調整電圧を通常の調整電圧である基準設定電圧より高い調整電圧である第2固定値に設定する処理(112)に移行するとともに、判断(106)がNOの場合には、通常制御の処理(114)に移行し、前記発電機4の調整電圧を通常の調整電圧である基準設定電圧に設定する処理(116)に移行する。
上述した惰行時カットの処理(108)の後には、前記発電機4の調整電圧を通常の調整電圧である基準設定電圧より低い調整電圧である第1固定値に設定する処理(118)に移行し、発電機4の調整電圧である第1固定値がバッテリ開放電圧以上であるか否かの判断(120)に移行する。
この判断(120)がYESの場合には、大きな容量のバッテリに向いた設定方法で、電圧降下速度が小さく、効果が期待できるヴァリエーションAに移行し、判断(120)がNOの場合には、バッテリの容量や各種情報を監視する必要があるヴァリエーションBに移行する。
つまり、判断(120)がYESの場合に、ヴァリエーションAに移行した際には、バッテリ電圧が発電機4の調整電圧である第1固定値まで下降しても放電しないため、解除指示があるまで制御を継続する処理(122)に移行し、以下のいずれかの条件が成立するか否かの判断(124)に移行する。
(1)所定時間経過
(2)ニュートラル検出
(3)燃料カット終了
(4)車速<Vsphlとなった。
そして、判断(124)において、いずれの条件も成立せず、判断(124)がNOの場合には、バッテリ電圧が発電機4の調整電圧である第1固定値まで下降しても放電しないため、解除指示があるまで制御を継続する処理(122)に戻り、いずれかの条件が成立し、判断(124)がYESとなった場合には、発電機4の調整電圧を、第1固定値から通常の調整電圧である基準設定電圧に移行させる処理(126)に移行し、その後に制御用プログラムの終了(132)に移行する。
また、上述の発電機4の調整電圧である第1固定値がバッテリ開放電圧以上であるか否かの判断(120)において、この判断(120)がNOの場合に、ヴァリエーションBに移行した際には、以下のいずれかの条件が成立するか否かの判断(128)に移行する。
(1)所定時間経過
(2)SOC下限閾値以下となった。
(3)当該カット放電許容値を超えた。
(4)ニュートラル検出
(5)燃料カット終了
(6)車速<Vsphlとなった。
そして、判断(128)において、いずれの条件も成立せず、判断(128)がNOの場合には、この判断(128)をYESとなるまで、判断(128)を継続して行い、いずれかの条件が成立し、判断(128)がYESとなった場合には、発電機4の調整電圧を、バッテリ放電電圧以上の発電機4の調整電圧である第2固定値、あるいは通常の調整電圧である基準設定電圧に移行させる処理(130)に移行し、その後に制御用プログラムの終了(132)に移行する。
これにより、前記車両の減速状態を検出する減速状態検出手段28を備え、車両速度を検出可能な車速検出手段である前記車速センサ16を備え、前記減速検出手段28により減速状態であると検出され、燃料カット状態で、かつ前記車速検出手段である前記車速センサ16により検出された車速が設定された値Vsphhより高い場合には、前記発電機4の調整電圧を基準設定電圧より低い第1固定値に設定する高車速制御手段30を備えることによって、前記発電機4がエンジン2の負荷となっている時間を短縮し、燃料カット時間を延ばすことができ、燃料消費量を低減することが可能である。
また、前記第1固定値が、前記バッテリの開放電圧以上であるかどうかにより、調整電圧を第1固定値から基準設定電圧に戻す条件を変える機能をも有していることにより、バッテリ開放電圧以上かどうかによって、通常制御へ戻す条件を変更しており、バッテリが過放電することなく、燃料消費量を低減することができる。
図5はこの発明の第2実施例を示すものである。この第2実施例において、上述第1実施例のものと同一機能を果たす箇所には、同一符号を付して説明する。
この第2実施例の特徴とするところは、登坂走行時を考慮するために、登坂走行しているかどうかを検出可能な登坂走行検出手段を備えた点にある。
すなわち、図1を参照すれば、車両に、エンジン2と前記エンジン2によって駆動される発電機4とこの発電機4により充電可能なバッテリとを搭載し、前記発電機4の発電状態を制御する車両用発電制御装置6において、前記車両の減速状態を検出する減速状態検出手段28を備え、車両速度を検出可能な車速検出手段である車速センサ16を備え、登坂走行しているかどうかを検出可能な登坂走行検出手段として機能させる傾斜角検出センサ26を備え、前記減速検出手段28により減速状態であると検出され、燃料カット状態で、かつ前記車速検出手段である車速センサ16により検出された車速が設定された値より高い場合に、前記発電機4の調整電圧を基準設定電圧より低い第1固定値に設定する高車速制御手段30を備え、前記登坂走行検出手段である傾斜角検出センサ26により登坂走行時であると検出され、回生発電制御領域に入っている場合でも回生発電を禁止し、前記高車速制御手段30を実施する構成を有している。
詳述すれば、登坂時、傾斜角検出センサ26等の入力、あるいはエンジン回転数と車速から登坂と推測された場合も、減速度が大きくならないように、スロットル・オフにおいて回生を禁止し、上述第1実施例のような惰行時制御を選択できるものである。
パラメータとしては、バッテリ温度やバッテリSOC(あるいは残容量)、加速時燃料カットの有無等がある。
また、バッテリ温度が低い場合には、バッテリの充電受け入れ性が低下するために、過度の放電は避けなければいけない。このような理由から、所定温度以下では、加速時燃料カットと同様に、バッテリ低温化では禁止される。
バッテリ温度が正常でも、バッテリSOC、あるいは残容量が低い場合も禁止となる。
バッテリSOCの正常範囲にあって、加速時燃料カットが頻繁に使用されている状況下では、バッテリSOCの低下率が上がり、所定の低下速度を越える状況では、回生制御を禁止することができないため、登坂においても、以上の惰行時制御を選択できない。
図5の前記車両用発電制御装置6の制御用フローチャートに沿って説明する。
制御用プログラムが開始され、燃料カット開始の処理(200)に移行すると、車速が設定された値Vsplhの回生領域未満であるか否かの判断(202)を行い、この判断(202)がYESの場合には、以下の条件が成立するか否かの判断(204)に移行し、
(1)直前に加速カットを行ったか?
(2)バッテリSOCは適正範囲か?
(3)バッテリ温度は適正か?
(4)バッテリSOC低下率が許容範囲か? 等
判断(202)がNOの場合には、傾斜角検出センサ26による登坂判定、つまり登坂走行であるか否かの判断(206)に移行する。
そして、この傾斜角検出センサ26による登坂判定、つまり登坂走行であるか否かの判断(206)において、判断(206)がYESの場合には、上述の条件が成立するか否かの判断(204)に移行し、判断(206)がNOの場合には、オートマチック車両(「AT車両」ともいう。)による登坂判定情報であるか否かの判断(208)に移行する。
このオートマチック車両(「AT車両」ともいう。)による登坂判定情報であるか否かの判断(208)において、判断(208)がYESの場合には、上述の条件が成立するか否かの判断(204)に移行し、判断(208)がNOの場合には、車速、エンジン回転数による登坂判定、つまり登坂走行であるか否かの判断(210)に移行する。
また、車速、エンジン回転数による登坂判定、つまり登坂走行であるか否かの判断(210)において、この判断(210)がYESの場合には、上述の条件が成立するか否かの判断(204)に移行し、この判断(204)がYESの場合には、回生条件でも惰行時カットを行う、つまり前記高車速制御手段30を実施する処理(212)に移行する。
さすれば、車両に、エンジン2と前記エンジン2によって駆動される発電機4とこの発電機4により充電可能なバッテリとを搭載し、前記発電機4の発電状態を制御する車両用発電制御装置6において、前記車両の減速状態を検出する減速状態検出手段28を備え、車両速度を検出可能な車速検出手段である車速センサ16を備え、登坂走行しているかどうかを検出可能な登坂走行検出手段として機能させる傾斜角検出センサ26を備え、前記減速検出手段28により減速状態であると検出され、燃料カット状態で、かつ前記車速検出手段である車速センサ16により検出された車速が設定された値より高い場合に、前記発電機4の調整電圧を基準設定電圧より低い第1固定値に設定する高車速制御手段30を備え、前記登坂走行検出手段である傾斜角検出センサ26により登坂走行時であると検出され、回生発電制御領域に入っている場合でも回生発電を禁止し、前記高車速制御手段30を実施する構成を有していることにより、登坂走行時において、アクセルを一瞬戻すような状況でも、必要以上に減速感を運転者に与えることがなく、スムーズな走行を実現可能である。
図6はこの発明の第3実施例を示すものである。
この第3実施例の特徴とするところは、降坂走行時を考慮するために、降坂走行しているかどうかを検出可能な降坂走行検出手段を備えした点にある。
すなわち、図1を参照すれば、車両に、エンジン2と前記エンジン2によって駆動される発電機4とこの発電機4により充電可能なバッテリとを搭載し、前記発電機4の発電状態を制御する車両用発電制御装置6において、前記車両の減速状態を検出する減速状態検出手段28を備え、車両速度を検出可能な車速検出手段である車速センサ16を備え、降坂走行しているかどうかを検出可能な降坂走行検出手段として機能させる傾斜角検出センサ26を備え、前記減速検出手段28により減速状態であると検出され、燃料カット状態で、かつ前記車速検出手段である車速センサ16により検出された車速が設定された値より高い場合に、前記発電機4の調整電圧を基準設定電圧より低い第1固定値に設定する高車速制御手段30を備え、前記降坂走行検出手段である傾斜角検出センサ26により降坂走行時であると検出されたときには、前記高車速制御手段30を実施する構成を有している。
詳述すれば、降坂時、傾斜角検出センサ26等の入力、あるいはエンジン回転数と車速から降坂と推測された場合は、空走時の加速感を抑制するために、惰行時制御は禁止される。
また、登降坂状態を繰り返す状況では、登坂までの判定が間に合わない場合もあるため、降坂判定をした場合に、一定時間の惰行時制御を禁止する制約を設ける。
図6の前記車両用発電制御装置6の制御用フローチャートに沿って説明する。
制御用プログラムが開始され、燃料カット開始の処理(300)に移行すると、車速が設定された値Vsphhの惰行時カット領域以上であるか否かの判断(302)を行い、この判断(302)がYESの場合には、一定時間の惰行時カットを禁止する処理(304)に移行し、判断(302)がNOの場合には、傾斜角検出センサ26による降坂判定、つまり降坂走行であるか否かの判断(306)に移行する。
そして、この傾斜角検出センサ26による降坂判定、つまり降坂走行であるか否かの判断(306)において、判断(306)がYESの場合には、上述の一定時間の惰行時カットを禁止する処理(304)に移行し、判断(306)がNOの場合には、オートマチック車両(「AT車両」ともいう。)による降坂判定情報であるか否かの判断(308)に移行する。
このオートマチック車両(「AT車両」ともいう。)による降坂判定情報であるか否かの判断(308)において、判断(308)がYESの場合には、上述の一定時間の惰行時カットを禁止する処理(304)に移行し、判断(308)がNOの場合には、車速、エンジン回転数による降坂判定、つまり降坂走行であるか否かの判断(310)に移行する。
また、車速、エンジン回転数による降坂判定、つまり降坂走行であるか否かの判断(310)において、この判断(310)がYESの場合には、上述の一定時間の惰行時カットを禁止する処理(304)に移行する。
さすれば、車両に、エンジン2と前記エンジン2によって駆動される発電機4とこの発電機4により充電可能なバッテリとを搭載し、前記発電機4の発電状態を制御する車両用発電制御装置6において、前記車両の減速状態を検出する減速状態検出手段28を備え、車両速度を検出可能な車速検出手段である車速センサ16を備え、降坂走行しているかどうかを検出可能な降坂走行検出手段として機能させる傾斜角検出センサ26を備え、前記減速検出手段28により減速状態であると検出され、燃料カット状態で、かつ前記車速検出手段である車速センサ16により検出された車速が設定された値より高い場合に、前記発電機4の調整電圧を基準設定電圧より低い第1固定値に設定する高車速制御手段30を備え、前記降坂走行検出手段である傾斜角検出センサ26により降坂走行時であると検出されたときには、前記高車速制御手段30を実施する構成を有することにより、降坂走行時において、アクセルを一瞬戻すような状況でも、必要以上に加速感を運転者に与えることがなく、スムーズな走行を実現可能である。
図7はこの発明の第4実施例を示すものである。
この第4実施例の特徴とするところは、アイドル・ストップ(「IS」ともいう。)装置を有する車両とした点にある。
すなわち、アイドル・ストップ装置は、このアイドル・ストップ装置を持つ車両において、惰行時にニュートラルやクラッチを踏み込んだりして動力を遮断した際に、車速に応じてアイドル・ストップを行うものである。
そして、低車速で再始動するための強制的な伝達手段を持つ場合(特開2004−44800号公報参照)に有効である。
つまり、このような車両では、動力が遮断されない状況下で、上述の惰行時制御が適用である。
強制的な動力伝達、遮断方法を持たない通常のアイドル・ストップ車両においては、同様にアイドル・ストップの高く、バッテリSOCや残容量の低下速度、あるいは絶対量による閾値で、上述した惰行時制御の許可・禁止を選択することができる。
図7の車両用発電制御装置の制御用フローチャートに沿って説明する。
制御用プログラムが開始(400)されると、減速時燃料カット開始か否かの判断(402)を行い、この判断(402)がYESの場合には、車速が設定された値Vsphhより高い、例えば以上であるか否かの判断(404)に移行する。
そして、車速が設定された値Vsphhより高い、例えば以上であるか否かの判断(404)において、この判断(404)がNOの場合には、車速が設定された第2の値Vsplhより低いか否かの判断(406)に移行し、判断(404)がYESの場合には、惰行時カットの処理(408)に移行する。
このとき、前記設定された値Vsphhと設定された第2の値Vsplhとは、
Vsphh>Vsphl>Vsplh
の関係を満足させるものとする。
また、上述の車速が設定された第2の値Vsplhより低いか否かの判断(406)において、この判断(406)がYESの場合には、回生制御の処理(410)に移行し、発電機の調整電圧を通常の調整電圧である基準設定電圧より高い調整電圧である第2固定値に設定する処理(412)に移行するとともに、判断(406)がNOの場合には、通常制御の処理(414)に移行し、前記発電機の調整電圧を通常の調整電圧である基準設定電圧に設定する処理(416)に移行する。
上述した惰行時カットの処理(408)の後には、前記発電機の調整電圧を通常の調整電圧である基準設定電圧より低い調整電圧である第1固定値に設定する処理(418)に移行し、発電機の調整電圧である第1固定値がバッテリ開放電圧以上であるか否かの判断(420)に移行する。
この判断(420)がYESの場合には、大きな容量のバッテリに向いた設定方法で、電圧降下速度が小さく、効果が期待できるヴァリエーションAに移行し、判断(420)がNOの場合には、バッテリの容量や各種情報を監視する必要があるヴァリエーションBに移行する。
つまり、判断(420)がYESの場合に、ヴァリエーションAに移行した際には、バッテリ電圧が発電機の調整電圧である第1固定値まで下降しても放電しないため、解除指示があるまで制御を継続する処理(422)に移行し、以下のいずれかの条件が成立するか否かの判断(424)に移行する。
(1)所定時間経過
(2)燃料カット終了
(3)車速<Vsphlとなった。
そして、判断(424)において、いずれかの条件が成立し、判断(424)がYESの場合には、発電機の調整電圧を、第1固定値から通常の調整電圧である基準設定電圧に移行させる処理(426)に移行し、その後に後述する制御用プログラムの終了(436)に移行するとともに、いずれの条件も成立せず、判断(424)がNOの場合には、以下のいずれかの条件が成立するか否かの判断(428)に移行する。
(1)ニュートラルかつクラッチ踏み込みを検出(MT)
(2)Nレンジとなった。(AT)
(3)アイドル・ストップ車両条件範囲になる。
この判断(428)において、いずれかの条件が成立し、判断(428)がYESの場合には、アイドル・ストップ制御に移行する処理(430)に移行し、いずれの条件も成立せず、判断(428)がNOの場合には、発電機の調整電圧である第1固定値がバッテリ開放電圧以上であるか否かの判断(420)に戻る。
また、上述の発電機の調整電圧である第1固定値がバッテリ開放電圧以上であるか否かの判断(420)において、この判断(420)がNOの場合に、ヴァリエーションBに移行した際には、以下のいずれかの条件が成立するか否かの判断(432)に移行する。
(1)所定時間経過
(2)SOC下限閾値以下となった。
(3)当該カット放電許容値を超えた。
(4)燃料カット終了
(5)車速<Vsphlとなった。
そして、判断(432)において、いずれの条件も成立せず、判断(432)がNOの場合には、以下の
(1)ニュートラルかつクラッチ踏み込みを検出(MT)
(2)Nレンジとなった。(AT)
(3)アイドル・ストップ車両条件範囲になる。
のいずれかの条件が成立するか否かの判断(428)に移行し、これらのいずれかの条件が成立し、判断(432)がYESとなった場合には、発電機の調整電圧を、バッテリ放電電圧以上の発電機の調整電圧である第2固定値、あるいは通常の調整電圧である基準設定電圧に移行させる処理(434)に移行し、その後に制御用プログラムの終了(436)に移行する。
さすれば、減速検出手段により減速状態であると検出され、燃料カット状態で、かつ前記車速検出手段である車速センサにより検出された車速が設定された値Vsphhより高い場合には、発電機の調整電圧を基準設定電圧より低い第1固定値に設定する高車速制御手段を備えることによって、アイドル・ストップ装置を有する車両においても、前記発電機がエンジンの負荷となっている時間を短縮し、燃料カット時間を延ばすことができ、燃料消費量を低減することが可能となるものである。
なお、この発明は上述第1〜第4実施例に限定されるものではなく、種々の応用改変が可能である。
例えば、燃料電池を搭載する車両においても、搭載する始動用バッテリへの回生を行う制御を持つ車両では、この発明の第1実施例に記載したような惰行時運転を同様に適用できるものである。
さすれば、車速によって切り分けられた制御は、高速では燃料電池の燃料消費を低減することができる。
また、純電気自動車においても、回生と惰行時運転とを切り替えることにおいて効果がある。なお、回生等の電力は、12Vや42V系の電装品用バッテリではなく、駆動用バッテリに回収される。
さすれば、高速時に回生を行うことにより、再加速と回生とを繰り返すことがなく、一充電走行距離を伸ばすことが可能となる。
更に、ハイブリッド車両でもバッテリの管理に関しては同様であり、上述の純電気自動車に準ずるものである。
そして、燃料消費に関しては、通常のエンジン車両に対する効果に準ずるものである。
この発明の第1実施例を示す車両用発電制御装置の制御用フローチャートである。
車両用発電制御装置のシステム図である。
車両用発電制御装置の基本動作説明図である。
車両用発電制御装置の第1固定値位置による動作の違いについて説明した図である。
この発明の第2実施例を示す車両用発電制御装置の制御用フローチャートである。
この発明の第3実施例を示す車両用発電制御装置の制御用フローチャートである。
この発明の第4実施例を示す車両用発電制御装置の制御用フローチャートである。
2 エンジン
4 発電機(「オルタネータ」ともいう。)
6 車両用発電制御装置
8 駆動伝達部材
10 エンジン制御装置
12 水温センサ
14 吸気温センサ
16 車速センサ
18 ブースト圧センサ
20 スロツトルポジションセンサ
22 バッテリ充放電電流検出センサ
24 電気負荷電流検出センサ
26 傾斜角検出センサ
28 減速状態検出手段
30 高車速制御手段