JP4594601B2 - 結晶シリコン系薄膜太陽電池の製造方法及びそれを用いて形成した太陽電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶シリコン系薄膜太陽電池の製造方法及びそれを用いて形成した太陽電池に係り、特に、基板上に結晶性シリコン層を有する結晶シリコン系薄膜太陽電池の製造方法及びそれを用いて形成した太陽電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、非導電性の異種基板、例えばガラス基板等の上に、シリコン結晶薄膜を形成する研究が盛んに行なわれている。このガラス基板上に形成したシリコン結晶薄膜の用途は広く、液晶デバイス用TFT(Thin Film Transistor)や薄膜光電変換素子などに用いられている。
【0003】
薄膜太陽光発電素子は、安価な基板上に、低温プロセスによる良好な結晶性をもつ結晶シリコン薄膜を形成し、これを光電変換素子に用いて、低コスト化と高性能化を図ったものである。この結晶シリコン薄膜を光電変換素子に用いた結晶シリコン光電変換素子は、非晶質シリコン光電変換素子の問題点である光劣化が生じることはなく、また、非晶質シリコン光電変換素子では感度のない(変換不能な)長波長光をも、電気的エネルギーに変換することができる。この技術は、光電変換素子だけではなく、光センサ等の光電変換装置への応用も可能であると期待されている。
【0004】
この結晶シリコン光電変換素子の一般的な製造方法として、基板上に、プラズマCVD法により結晶シリコン薄膜を直接堆積させる手法が用いられている。これによって、基板上に、結晶シリコン薄膜を比較的低温で形成することができ、低コストで結晶シリコン薄膜を成膜することができる。プラズマCVD法による成膜条件は、水素でシラン系原料ガスを約15倍以上に希釈し、プラズマ反応室内圧力を1.33〜1.33×103Pa(10mTorr〜10Torr)、基板温度を150〜550℃、望ましくは150〜400℃の範囲内に制御するものであり、これによって、基板上に結晶性のシリコン薄膜を形成することができる。
【0005】
しかし、このプラズマCVD法による成膜方法では、結晶粒径の大きなポリシリコンを形成することは困難であった。また、発電機能の根幹を担うi層(真性半導体の薄膜)は、素子構造最適化のためにドーピングを行なうと品質が急激に低下するという問題があった。これらのことから、低コスト化に有利なシングルセルで、10%を大きく上回る高い変換効率を達成することは困難であった。
【0006】
一方、レーザの照射によって非晶質シリコンを結晶シリコンに結晶化させる試みも種々検討されている。一般的には、エキシマレーザの照射による結晶化が知られており、現在、TFTの量産レベル等で用いられている。この結晶化方法は、50〜100nm程度の層厚の非晶質シリコンにエキシマレーザを照射し、結晶シリコン層を形成するものである。
【0007】
ところで、エキシマレーザの照射による結晶化方法においては、以下に示す問題があった。
【0008】
▲1▼ 太陽電池においては層厚が数μm程度の活性層(結晶シリコン層)を必要とするが、エキシマレーザは中心波長が300nm程度のレーザであるため、形成可能な非晶質シリコン層の層厚は数十nm程度である。
【0009】
▲2▼ エキシマレーザはパルス発振レーザであるため、このレーザを用いて結晶化させた結晶シリコンの粒径は500nm〜1μm程度となり、多結晶シリコン太陽電池として用いるには小さすぎる。
【0010】
ここで、▲1▼,▲2▼の問題を解決するための方法として、例えば、絶縁性基板上に、直接、非晶質シリコン層を形成し、この非晶質シリコン層に帯状の連続波光源を走査させながら照射することで、非晶質シリコン層が溶融・結晶化され、走査方向における結晶粒サイズが大きな多結晶シリコン層が得られる(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
また、裏面電極構造を有するシリコン基体として、セラミック基板上に、先ずバッファ層を形成し、そのバッファ層上に導電膜を形成することで、裏面側に電極構造を有するシリコン基体がある(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
【特許文献1】
特開平2001−351863号公報(第7頁、図1,図2)
【特許文献2】
特開平10−4061号公報(第3頁段落0020〜第4頁段落0024)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載された方法は、主にTFTなどの薄膜を作成するためのものである。このため、絶縁性基板上に、直接、多結晶シリコン層を形成しており、基板と多結晶シリコン層との間に裏面電極構造を有していないことから、高効率な太陽電池を形成するには適していなかった。
【0014】
また、特許文献2に記載されたシリコン基体は、セラミック基板上に、バッファ層として厚さ100nm以上のシリコン窒化物系絶縁層を形成する必要がある。このため、この方法を用いて結晶シリコン薄膜を成膜すると、低コスト化及び高スループットが実用化に向けての重要課題である太陽電池においては、コスト上昇及びスループットの低下を招く原因となってしまう。また、裏面における光反射を有効に利用できないため、10%を大きく上回る高い変換効率を得ることが困難であった。
【0015】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、高い変換効率を有し、高スループットの結晶シリコン系薄膜太陽電池の製造方法及びそれを用いて形成した太陽電池を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく本発明に係る結晶シリコン系薄膜太陽電池の製造方法は、基板上に結晶性シリコン層を有する結晶シリコン系薄膜太陽電池を製造する際に、上記結晶性シリコン層とは異なる材料からなる異種基板上に、順に、導電性を有する電極層、CVD法により多結晶シリコンからなる結晶性シリコン前駆体層を1μm以上形成する工程と、複数個の半導体レーザを並べて配置した半導体レーザ発振源から連続的に発振された基本波の中心波長が750nm〜850nmの半導体レーザ光を走査し上記前駆体層に照射し、上記前駆体層を溶融・結晶化して上記結晶性シリコン層を形成する結晶化工程とを有し、上記複数個の半導体レーザはそれぞれ楕円状のレーザ光を出射し、上記楕円状の各レーザ光が楕円長軸方向にそれぞれ重複して上記前駆体層に照射されるよう上記複数個の半導体レーザを並べて配置することを特徴とする。
【0018】
上記多結晶シリコンからなる結晶性シリコン前駆体層は2μm以上形成することが好ましい。
【0019】
また、上記前駆体層に、AlGaAs系、InP/InGaAsP系、InGaAlP系、又はInGaAsP系半導体レーザのレーザ光を照射することが好ましい。
【0022】
また、上記前駆体層の、上記レーザ光に対する吸収係数が、1〜24μm-1であることが好ましい。
【0023】
また、上記結晶性シリコン層の上面の全面又は一部に、結晶性シリコン層とは逆導電型のポリシリコンからなる半導体層を形成し、その半導体層の上面の全面又は一部に、導電性を有する上部電極層を形成してもよい。
【0025】
また、上記上部電極層の上面の一部に、取出し用電極を形成してもよい。
【0028】
これによって、高いスループットで結晶シリコン系薄膜太陽電池を製造することができ、その結果、非常に低コストで結晶シリコン系薄膜太陽電池を製造することができる。
【0029】
一方、本発明に係る結晶シリコン系薄膜太陽電池は、上述した製造方法を用いて形成したものである。
【0030】
これによって、高い変換効率を有する結晶シリコン系薄膜太陽電池を、安価に得ることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適一実施の形態を添付図面に基いて説明する。
【0032】
従来の連続波光源を用いた方法で、太陽電池を量産するに際しては、製造コストが安価であることが非常に重要となってくる。TFT用の多結晶シリコンの形成に用いる連続波光源として現在検討されているものにCWレーザがある。このCWレーザとして、Ar+レーザ、Kr+レーザ等の気体レーザと、Nd:YAGレーザ、Nd:YVO4レーザ等の固体レーザとが知られており、特に固体レーザを、多結晶シリコンの結晶化に利用する試みが現在なされている。ところが、固体レーザは、レーザ発振源の大きさに対して、照射可能な面積が非常に小さく、例えば、波長が532nmの光第2高調波を用いる場合、非晶質シリコンを融解することができる強度のレーザ光を出力するためには、照射面積が数百〜数千μm2程度と非常に小さくなる。この時、照射面積を大きくするために、複数個のレーザ光源からレーザ光を同時に照射すると共に各レーザ光の一部を重複させる方法が考えられるが、レーザ光源の大きさは数十cm程度と大きいことから、レーザ光源を複数個並べて配置することは物理的に困難である。
【0033】
このため、1個のレーザ光源からレーザ光を照射し、かつ、30〜50cm/secという非常に速い速度で走査を行ったとしても、約1m角の太陽電池全面を結晶化するには多大な時間を要してしまい、スループットが良好でなかった。例えば、レーザ光を長軸方向長さが約500μmの楕円状に形成すると共に、楕円の短軸方向に向かって移動させ、太陽電池全面の走査を行うと、少なくとも約2000回の走査が必要となってしまい、太陽電池全面を結晶化するのに少なくとも約1時間かかってしまう。
【0034】
そこで、本発明者らが鋭意研究した結果、結晶化のためのレーザ光源として半導体レーザを用いるということを見出した。
【0035】
異種基板上に電極層及び結晶性シリコン前駆体層を形成した状態を示す断面図を図1に示す。
【0036】
本実施の形態に係る結晶シリコン系薄膜太陽電池の製造方法は、図1に示すように、先ず、基板、具体的には目的とする結晶性シリコン層とは異なる材料からなる異種基板11上に、順に、導電性を有する電極層(金属電極膜12)、非晶質シリコンからなる結晶性シリコン前駆体層(プレカーサー膜)14を形成する。金属電極膜12は、プレカーサー膜14よりも融点が高い物質で構成されるものであり、例えばW、Mo、Co、Cr、C、Ti、Fe、Ni、Pt、Pd、Ir及びこれらを含む化合物で構成される。金属電極膜12の基板11への接合性(付着性)を重視する場合は、金属電極膜12自体を複層構造とすることも有効である。ここで言うプレカーサー膜14とは、レーザ照射を行うことで溶融・結晶化する膜のことである。
【0037】
次に、図2に示すように、その前駆体層14の表面に、半導体レーザ発振源から連続的に発振されたレーザ光21を照射する。具体的には、レーザ光21は、前駆体層14の表面を走査するように(図2中では左から右に向って)照射される。また、このレーザ光21による走査を、図2の図面に垂直な方向に順次繰り返し行う。前駆体層14の表面全面を走査するようにレーザ光21を照射することで、前駆体層14におけるレーザ光照射部分が、局部的に溶融(溶融領域22)すると共に瞬時に冷却されて結晶化し、結晶性シリコン層(第1半導体層)24が形成される。
【0038】
次に、図3に示すように、結晶性シリコン層24の表面全面(又はその一部)に、結晶性シリコン層24とは逆導電型で、ポリシリコンからなる第2半導体層31を形成する。この第2半導体層31は、太陽電池素子における窓層として作用する。この第2半導体層31により、結晶性シリコンが吸収する波長域の光が、より多く第1半導体層24に導入されるようになり、その結果、発生電流を大きくすることができる。
【0039】
この第2半導体層31の表面全面(又はその一部)に、上部電極層を形成する。この時、第1半導体層24に対して第2半導体層31の横方向抵抗が大きい場合、上部電極層として、第2半導体層31の表面全面に透明導電膜32を形成すると共に、その透明導電膜32の表面の一部に取出し用金属電極部33を形成する。また、第1半導体層24に対して第2半導体層31の横方向抵抗が小さい場合、上部電極層として、バスバー、フィンガーと呼ばれる周知の構造の金属電極部を形成してもよい。
【0040】
このようにして形成した第1半導体層24、第2半導体層31、及び透明導電膜32の一部(図3中の一点鎖線領域A)を、レーザ加工機などを用いて除去することで、図4に示すように、この部分を裏面側取出し用電極部43に形成し、これによって、結晶シリコン系薄膜太陽電池40が得られる。
【0041】
結晶性シリコン前駆体層14の照射に用いるレーザ光21の発振源である半導体レーザの一例として、AlGaAsを活性層に用いた半導体レーザを用いることができる。このレーザは、基本波として、波長800nm付近に中心波長を持つレーザ光を発生する。この波長域は、非晶質シリコン中への侵入長が1μm前後であり、層厚が数μm程度の前駆体層14を結晶化するのに最適である。また、このレーザは、レーザ強度が高い基本波を結晶化に用いることができ、レーザ強度の高いレーザ光21を出力する点で有利である。また、半導体レーザは、前駆体層14の結晶化に好ましい形状、具体的には略長方形形状を呈した楕円状のレーザ光を発振することができることから、レーザ光21を大きく整形する必要がなく、このため、レーザ光21を直線的に走査するのに都合がよい。さらに、半導体レーザは、エネルギーの使用効率が、Nd:YAGレーザ、Nd:YVO4レーザ等の固体レーザの10倍程度と良好である。
【0042】
また、半導体レーザとしては、AlGaAsを活性層に用いた半導体レーザに限定するものではなく、全ての半導体レーザが適用可能であるが、好ましくは発振されるレーザ光21の中心波長が540〜1500nm、特に好ましくは750〜850nmの範囲のものであり、例えば、InP/InGaAsP、InGaAlP、又はInGaAsPを活性層に用いた半導体レーザが挙げられる。ここで、使用するレーザ光の波長が様々であるということは、結晶化が可能な前駆体層14の吸収係数及び膜厚の自由度が増すということであり、その結果、太陽電池の作製プロセスの自由度(設計の自由度)が増す。
【0043】
また、結晶化に用いる半導体レーザの数は1個に限定するものではない。半導体レーザはそれ自体の大きさが小さいことから、半導体レーザを複数個並べて配置、例えば、楕円状の各レーザ光が楕円長軸方向にそれぞれ重複するように半導体レーザを複数個並べて配置することが可能である。例えば、10個の半導体レーザからレーザ光21を同時照射して前駆体層14の結晶化を行う場合と、1個のNd:YAGレーザ等の固体レーザからレーザ光を照射して前駆体層14の結晶化を行う場合とを比較すると、照射面積が同じ場合、単純に、前者のスループットが後者のそれの10倍となる。ここで、半導体レーザのエネルギーの使用効率は、Nd:YAGレーザ等の固体レーザのそれの約10倍であることから、10個の半導体レーザを用いた結晶化工程に要するエネルギーの総和と、1個の固体レーザを用いた結晶化工程に要するエネルギーとは略同じとなる。
【0044】
また、半導体レーザを用いた前駆体層14の結晶化においては、レーザ光21の状態が結晶化に影響を及ぼす。具体的には、半導体レーザは、活性層の温度が変化すると、出力されるレーザ光21の波長が僅かに変化する。このため、半導体レーザ装置(図示せず)に温度調節機構(又は冷却機構)を設け、レーザ光21の照射中、活性層の温度を一定に保持している。これによって、より安定した状態で前駆体層14の結晶化を行うことができる。
【0045】
このように、前駆体層14の結晶化に、半導体レーザから連続発振するレーザ光21を用いることで、高いスループットで結晶性シリコン層24を形成することができ、その結果、非常に低コストで太陽電池40を作製することができる。つまり、これまで太陽電池の量産化・普及化の上で大きな障害となっていた低コスト化及び高いスループットの両者を達成することができる。
【0046】
ここで、本実施の形態においては、金属電極膜12上に形成する結晶性シリコン前駆体層14として、非晶質シリコン層を用いた場合について説明を行ったが、特にこれに限定するものではなく、他の非単結晶シリコンを用いてもよい。ここで言う非単結晶シリコンとは、非晶質シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、結晶成分を含んだ非晶質系シリコン、非晶質シリコンと結晶シリコンとの混合物質など、単結晶シリコンではないシリコン系物質を示している。非単結晶シリコンは、その組成を制御することにより、レーザ光21に対する吸収係数を制御することができる。この場合においても、本実施の形態と同様(又は略同様)の効果が得られる。
【0047】
異種基板11としては、薄膜太陽電池40を保持できるものであれば、既存の基板が全て適用可能であるが、太陽電池のコストを考慮すると、安価なガラス基板を用いることが好ましい。また、石英基板等を用いることで、より高品質な太陽電池を作製することが可能である。また、フレキシブルなフィルム状基板を用いることで、曲面にも取り付け可能なフレキシブル太陽電池を作製することができる。さらに、異種基板11を導電性を有する材料で形成してもよい。
【0048】
結晶性シリコン前駆体層14であるプレカーサー膜は、レーザ光21を照射することによって、結晶性シリコン層24となり、太陽電池40の活性層として作用する。このため、発生電流を多くするには、少なくとも1μm以上、好ましくは2μm以上の膜厚に形成する。このプレカーサー膜の構成材料としては、非晶質シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、結晶成分を含んだ非晶質系シリコン、非晶質シリコンと結晶シリコンとの混合物質などの非単結晶シリコンが挙げられ、プレカーサー膜の膜厚や、レーザ光21の強度などの条件に応じて、適宜選択される。例えば、膜厚が3μm程度の厚いプレカーサー膜をレーザ光21によって結晶化する場合は、結晶成分を膜中に構成したりする等により、レーザ光21に対する吸収係数を小さくすることで、成膜のコントロール性を向上させることができる。具体的には、レーザ光21に対する前駆体層14の吸収係数は、1〜24μm-1であることが好ましい。
【0049】
プレカーサー膜の成膜方法としては、スパッタリング法、cat-CVD法、プラズマCVD法などが望ましいが、特にこれに限定するものではなく、熱CVD法やMBE法など、求める膜質の結晶性シリコン層24を形成できるものであれば、どの様な方法であってもよい。
【0050】
また、一般的に、太陽電池においては、p+n、n+p等のpn接合構造が採用されている。p+n構造の場合はn層を、n+p構造の場合はp層を活性層として用いるが、n型又はp型のドーパントを混入させて導電性を持たせたプレカーサー膜に、半導体レーザのレーザ光21の照射を行なうことで、n型又はp型の結晶性シリコン層24を溶融・結晶化することができる。また、その他にpin接合構造も採用されている。
【0051】
太陽電池40の特性を向上させるためには、p+n型ではp+nn+、n+p型ではn+pp+のBSF構造とすることが効果的である。具体的には、図4に示した太陽電池40の金属電極膜12の全体(又はその一部)に、第1半導体層24がn型の場合はV族の元素(例えば、P(燐))を、第1半導体層24がp型の場合はIII族の元素(例えば、B(ボロン))を、イオン注入法により混入(注入)させる。また、金属電極膜12の表面全面(又は表面の一部)に、第1半導体層24がn型の場合は燐ガラス層などを、第1半導体層24がp型の場合はボロンガラス層などを極薄く形成する。太陽電池40をBSF構造とすることによって、第1半導体層24の裏面側の再結合速度を大きく低減させることができる。
【0052】
ポリシリコンからなる第2半導体層31の形成方法は、プラズマCVD法、cat-CVD法などが挙げられる。また、熱CVD法、MBE法などを用いて、第1半導体層24上に、第2半導体層31をエピタキシャル成長させてもよい。さらに、プラズマCVD法やcat-CVD法を用いて形成した非晶質シリコンを用いてもよい。また、この第2半導体層31中にC(炭素)を導入することも有効である。第2半導体層31中にCを導入することによって、第2半導体層31の吸収係数を低下させることができる。
【0053】
透明導電膜32の構成材は、第1半導体層24が吸収する波長域の光に対して透明性を有し、かつ、導電性を有するものであれば特に限定するものではない。例えば、ドーピングを施して導電性を持たせた酸化亜鉛、酸化錫、ITO(Indium Tin Oxide)、又はこれらの化合物などが挙げられる。また、第1半導体層24に対して第2半導体層31の横方向抵抗が小さい場合の上部電極層である金属電極部は、例えば、Al、Ag等の十分に低抵抗な金属材で構成される。
【0054】
取出し用金属電極部33の構成材は、特に限定するものではなく、金属電極膜12と同じものを用いてもよい。
【0055】
以上、本実施の形態に係る結晶シリコン系薄膜太陽電池40の製造方法によれば、異種基板11上に、結晶性シリコン前駆体層14よりも高融点の材料で構成される金属電極膜12、結晶性シリコン前駆体層14を形成している。これによって、その前駆体層14の表面に、半導体レーザから発振されたレーザ光21を走査するように照射することで、金属電極膜12は融解させることなく、短時間で前駆体層14のみを溶融・結晶化することができ、結晶性シリコン層24を形成することができる。その結果、電極膜12の耐熱性が良好で、高品質な結晶シリコン系薄膜を有する太陽電池(縦方向デバイス)を、高スループットで、かつ、安価に得ることができる。
【0056】
また、異種基板11と結晶性シリコン層24との間に裏面電極構造を形成すると共に、その裏面電極構造の構成材を適宜選択することで、光反射を有効に利用することができ、高い変換効率を有する太陽電池を得ることができる。さらに、裏面電極構造を複層構造に形成することで、裏面反射をより有効に利用することができるため、10%を大きく上回る高い変換効率を有する太陽電池を得ることができる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、他にも種々のものが想定されることは言うまでもない。
【0058】
【実施例】
次に、本発明について、実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
(参考例1)
先ず、石英基板上に、金属電極膜として膜厚が200nmのW電極膜を形成した。
【0060】
次に、プラズマCVD法を用いて、これらの裏面電極(W電極膜)上に、膜厚が1μmで、n型のドーパントを含んだ非晶質シリコン膜を形成した。このプラズマCVD法による形成条件は、原料ガスとして10ccmのSiH4と0.01ccmのPH4との混合ガスを用い、基板温度は500℃とした。また、プラズマ電源としてRF周波数を用いた。
【0061】
次に、非晶質シリコン膜(プレカーサー膜)に連続的に発振する半導体レーザのレーザ光を照射して、非晶質シリコンを溶融すると共に、短時間で結晶化し、結晶性シリコン膜を形成する。半導体レーザとしては、基本発振波長が795nmで、AlGaAsを活性層に用いたAlGaAs系半導体レーザを、5個並べて配置したものを用いた。また、これらの半導体レーザは、それぞれ水冷系の温度調節機構を有しており、レーザ光の中心波長の変動なく、安定して結晶化を行うことができた。
【0062】
次に、プラズマCVD法を用いて、この結晶性シリコン膜上に、p型の導電型を有したポリシリコン膜(p型微結晶シリコン膜(第2半導体層))を形成した。つまり、結晶性シリコン膜とポリシリコン膜とはpn接合となる。このプラズマCVD法による形成条件は、原料ガスとして1ccmのSiH4、50ccmのH2、及び1ccmのB2H6の混合ガスを用いた。
【0063】
次に、このポリシリコン膜上に、透明導電膜としてITO透明導電膜を形成し、そのITO透明導電膜の表面の一部に、エミッタ側取出し用電極としてAl電極を形成した。
【0064】
最後に、ITO透明導電膜、ポリシリコン膜、及び結晶性シリコン膜の一部を、レーザ加工機を用いて除去することでW電極膜を露出させ、裏面側の取り出し用電極部を形成し、薄膜太陽電池を作製した。
【0065】
この太陽電池を、25℃、1sunの模擬太陽光下においてI−V測定を行った結果、単結晶シリコン基板太陽電池に匹敵する0.60Vの開放電圧を示した。
【0066】
一方、異種基板を安価なガラス基板で形成した太陽電池においても、同様の結果が得られた。また、AlGaAsを活性層に用いた半導体レーザの代わりに、InP/InGaAsP、InGaAlP、又はInGaAsPを活性層に用いた半導体レーザを用いて形成した太陽電池においても、同様の結果が得られた。
【0067】
(参考例2)
本例は、構造は参考例1と同じであるが、参考例1とは異なる方法でプレカーサー膜及び/又は第2半導体層を形成した。
【0068】
スパッタリング法を用いて、膜厚が1μmで、n型のドーパントを含んだ非晶質シリコン膜(プレカーサー膜)を形成する以外は、参考例1と同様にして薄膜太陽電池を作製した。
【0069】
この太陽電池を、25℃、1sunの模擬太陽光下においてI−V測定を行った結果、開放電圧が0.61Vを示した。
【0070】
一方、非晶質シリコン膜をcat-CVD法、MBE法などを用いて形成した太陽電池においても、同様の結果が得られた。
【0071】
また、熱CVD法を用いて、結晶シリコン膜(第1半導体層)上に、結晶シリコン膜とは逆導電型のポリシリコン膜(第2半導体層)をエピタキシャル成長させてなる太陽電池を作製した。この太陽電池についても、25℃、1sunの模擬太陽光下においてI−V測定を行った結果、開放電圧が0.601Vを示し、高品質な太陽電池が得られることが確認できた。
【0072】
また、プラズマCVD法を用いて、結晶シリコン膜(第1半導体層)上に、非晶質p型のSiC膜を形成し、太陽電池を作製した。この太陽電池においても、良好な特性が得られ、第2半導体層をポリシリコン膜で形成した太陽電池に比べて、短絡電流密度が1.1〜1.5倍となった。
【0073】
(参考例3)
本例は、構造は参考例1と同じであるが、プレカーサー膜の膜厚を厚く形成した。
【0074】
プラズマCVD法を用いて、膜厚が1.5μmで、n型のドーパントを含んだ非晶質系シリコン膜(プレカーサー膜)を形成する以外は、参考例1と同様にして薄膜太陽電池を作製した。この非晶質系シリコン膜には、プラズマCVD法による成膜中、水素希釈によって微細な結晶成分を混入させている。
【0075】
この太陽電池を、25℃、1sunの模擬太陽光下においてI−V測定を行った結果、開放電圧が0.61Vを示し、高品質な太陽電池が得られることが確認できた。
【0076】
(実施例1)
本実施例は、参考例3よりも更にプレカーサー膜の膜厚を厚く形成した。
【0077】
プラズマCVD法を用いて、膜厚が4μmで、n型のドーパントを含んだポリシリコン膜(プレカーサー膜)を形成する以外は、参考例1と同様にして薄膜太陽電池を作製した。このポリシリコンは、プラズマCVD法による結晶条件にて形成した。これによって、ポリシリコン膜の吸収係数が減少し、透過率測定の結果、波長795nmのレーザ光に対する吸収係数は1.4μm-1となり、光学的には結晶シリコンと考えられる薄膜であった。
【0078】
この太陽電池を、25℃、1sunの模擬太陽光下においてI−V測定を行った結果、開放電圧が0.61Vを示し、高品質な太陽電池が得られることが確認できた。
【0079】
一方、プレカーサー膜をp型、微結晶シリコン膜(第2半導体層)をn型として形成した太陽電池においても、同様の結果が得られた。
【0080】
【発明の効果】
以上要するに、本発明に係る結晶シリコン系薄膜太陽電池の製造方法によれば、基板上に結晶性シリコン層を有する結晶シリコン系薄膜太陽電池を製造する際に、結晶性シリコン層とは異なる材料からなる異種基板上に、結晶性シリコン前駆体層よりも高融点の材料で構成される金属電極膜、結晶性シリコン前駆体層を形成し、その前駆体層に半導体レーザのレーザ光を照射することで、前駆体層を溶融・結晶化して結晶性シリコン層を形成することができ、高いスループットで結晶シリコン系薄膜太陽電池を製造することができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】異種基板上に電極層及び結晶性シリコン前駆体層を形成した状態を示す断面図である。
【図2】結晶性シリコン前駆体層にレーザ光を走査させながら照射している状態を示す断面図である。
【図3】裏面側取出し用電極部を形成する前の状態を示す結晶シリコン系薄膜太陽電池の断面図である。
【図4】第1の実施の形態に係る結晶シリコン系薄膜太陽電池の断面図である。
【符号の説明】
11 異種基板
12 金属電極膜(電極層)
14 結晶性シリコン前駆体層(プレカーサー膜)
21 レーザ光
24 結晶性シリコン層(第1半導体層)
31 第2半導体層
32 透明導電膜(上部電極層)
33 取出し用金属電極部(取出し用電極)
40 結晶シリコン系薄膜太陽電池
Claims (7)
- 基板上に結晶性シリコン層を有する結晶シリコン系薄膜太陽電池を製造する際に、上記結晶性シリコン層とは異なる材料からなる異種基板上に、順に、導電性を有する電極層、CVD法により多結晶シリコンからなる結晶性シリコン前駆体層を1μm以上形成する工程と、複数個の半導体レーザを並べて配置した半導体レーザ発振源から連続的に発振された基本波の中心波長が750nm〜850nmの半導体レーザ光を走査し上記前駆体層に照射し、上記前駆体層を溶融・結晶化して上記結晶性シリコン層を形成する結晶化工程とを有し、上記複数個の半導体レーザはそれぞれ楕円状のレーザ光を出射し、上記楕円状の各レーザ光が楕円長軸方向にそれぞれ重複して上記前駆体層に照射されるよう上記複数個の半導体レーザを並べて配置することを特徴とする結晶シリコン系薄膜太陽電池の製造方法。
- 上記結晶性シリコン前駆体層を2μm以上形成する請求項1記載の結晶シリコン系薄膜太陽電池の製造方法。
- 上記前駆体層に、AlGaAs系、InP/InGaAsP系、InGaAlP系、又はInGaAsP系半導体レーザのレーザ光を照射する請求項1又は2に記載の結晶シリコン系薄膜太陽電池の製造方法。
- 上記前駆体層の、上記レーザ光に対する吸収係数が、1〜24μm -1 である請求項1から3いずれかに記載の結晶シリコン系薄膜太陽電池の製造方法。
- 上記結晶性シリコン層の上面の全面又は一部に、結晶性シリコン層とは逆導電型のポリシリコンからなる半導体層を形成し、その半導体層の上面の全面又は一部に、導電性を有する上部電極層を形成する請求項1から4いずれかに記載の結晶シリコン系薄膜太陽電池の製造方法。
- 上記上部電極層の上面の一部に、取出し用電極を形成する請求項5に記載の結晶シリコン系薄膜太陽電池の製造方法。
- 請求項1から6いずれかに記載の製造方法を用いて形成したことを特徴とする結晶シリコン系薄膜太陽電池。
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