JP4593816B2 - 電子放出素子、画像形成装置及び電子放出素子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子放出素子、電子源、画像形成装置及び電子放出素子の製造方法に関するものであり、本発明における画像形成装置は、テレビジョン放送の表示装置、テレビ会議システムやコンピューター等の表示装置の他、感光性ドラム等を用いて構成された光プリンターとしての画像形成装置等としても用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
金属に対し106V/cm以上の強電界をかけて金属表面から電子を放出させる電界放出型(FE型)電子放出素子が冷電子源の一つとして注目されている。
【0003】
縦型FE型の例としては図13に示すようにエミッター135が基板131から略鉛直方向に円錐あるいは四角錐の形状をなしたもの、例えばC.A.Spindt,”Physical Properties of thin−film field emission cathodes with molybdenum cones”,J.Appl.Phys.,47,5248(1976)等に開示されたもの(以下スピント型)が知られている。
【0004】
カーボンナノチューブを用いた電子デバイスは特開平11−194134号公報や特開平11−139815号公報に開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
カーボンナノチューブなどのカーボンファイバーを電子放出部材など電子デバイスとして用いる際には、電極上にカーボンファイバーを配置する必要がある。このように電極上にカーボンファイバーを形成した際に、カーボンファイバーと電極との接続を確実に、そして安定して確保する必要がある。カーボンファイバーと電極との電気的な結合にばらつきを生じた場合、例えば電子放出素子として用いる場合には、電子放出電流の変動や、駆動電圧のばらつきを生じる場合があった。
【0006】
また、そのような電子放出素子を多数配列形成した電子源や画像形成装置においては電子放出素子間の特性のばらつきを生じ、その結果、形成する画像にバラツキを生じる場合があった。
【0007】
さらには、基板表面と平行方向に、該基板上に一対の電極を配置し、そして該電極間に電圧を印加することで電子を放出する所謂横型の電子放出素子においては、放出された電子ビームが広がる傾向が大きい。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決し、カーボンファイバーと電極との接続が確実であり、電子放出効率が向上し、更には放出電子の散乱が抑制されてビーム形状の小さい電子放出素子、電子源、画像形成装置及び電子放出素子の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた本発明の電子放出素子は、以下の構成のものである。
【0010】
即ち、本発明の電子放出素子の第一は、カソード電極と、該カソード電極に接続されたカーボンファイバーとを有する電子放出素子であって、前記カソード電極と、前記カーボンファイバーとが、Ti,Zr,Ta,Nbの中から選択された少なくとも1種の窒化物(但し、窒化タンタルを除く)を介して接続されてなることを特徴とする。
また、本発明の電子放出素子の第二は、カソード電極と、該カソード電極に接続されたカーボンファイバーとを有する電子放出素子であって、前記カソード電極と、前記カーボンファイバーとが、Ti,Zr,Ta,Nbの中から選択された少なくとも1種の窒化物とTi,Zr,Ta,Nbの中から選択された少なくとも1種の酸化物との混合物を介して接続されてなることを特徴とする。
【0011】
本発明の電子放出素子においては、前記カーボンファイバーは、触媒を用いて炭化水素ガスを熱分解することにより形成されたものであることが好ましい。
【0012】
また、前記触媒は、Pd,Ni,FeまたはCoを含むことが好ましい。
【0013】
また、前記カーボンファイバーは、グラファイトナノファイバー,カーボンナノチューブ、アモルファスカーボン、ダイアモンドファイバー、またはこれらの混合物であることが好ましい。
【0018】
また、前記カソード電極は、ゲート電極と共に基板の表面に配置されており、前記基板の表面から前記ゲート電極の表面までの高さよりも、前記基板の表面から前記カーボンファイバーの先端までの高さの方が高いことが好ましい。
また、本発明の電子放出素子の第三は、カソード電極と、該カソード電極に接続されたカーボンファイバーとを有する電子放出素子であって、前記カソード電極と、前記カーボンファイバーとが、Ti,Zr,Ta,Nbの中から選択された少なくとも1種の窒化物を介して接続されてなり、前記カソード電極は、ゲート電極と共に基板の表面に配置されており、前記基板の表面から前記ゲート電極の表面までの高さよりも、前記基板の表面から前記カーボンファイバーの先端までの高さの方が高いことを特徴とする。
【0022】
本発明の画像形成装置は、前記電子放出素子と、該電子放出素子と対向して設けた画像形成部材とを有することを特徴とする。
【0023】
本発明の電子放出素子の製造方法は、電極と該電極に接続されたカーボンファイバーを有する電子放出素子の製造方法であって、電極上に、Ti,Zr,Ta,Nbの中から選択された少なくとも1種の窒化物(但し、窒化タンタルを除く)、あるいは、Ti,Zr,Ta,Nbの中から選択された少なくとも1種の酸化物とTi,Zr,Ta,Nbの中から選択された少なくとも1種の窒化物との混合物を、設ける工程と、触媒を用いて炭化水素ガスを熱分解することにより、前記窒化物あるいは前記混合物を介して前記電極と接続したカーボンファイバーを形成する工程と、を有することを特徴とし、前記触媒は、Ni,FeまたはCoの中から選択された金属とPdとを含み、前記触媒中に含まれる前記金属の比率が10atm%以上50atm%以下であることが好ましい。
【0024】
上記した本発明の電子放出素子の構成によれば、カーボンファイバーと電極との接続をより確実にすることができる。また、カーボンファイバーから放出した電子は、引き出し電極(ゲート電極)に衝突することを抑制することができる。その結果、電子放出効率を向上することができる。またゲート電極での放出電子の散乱が抑制されるためアノード上で得られるビーム形状を小さくすることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態の一例を説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0026】
本発明においては、電極上にカーボンの成長を促進する材料(触媒)からなる微小な核を配置し、この核からカーボンファイバー(カーボンを主成分とするファイバー)を成長させるものであるが、特に、前記電極と、前記カーボンの成長を促進する材料との間に、Ti,Zr,Ta,Nbの中から選択された少なくとも1種の窒化物、あるいはTi,Zr,Ta,Nbの中から選択された少なくとも1種の酸化物、あるいは前記窒化物と前記酸化物の混合物を配置することに、その特徴を有する。
【0027】
Ti,Zr,Ta,Nbの中から選択された少なくとも1種の窒化物、あるいはTi,Zr,Ta,Nbの中から選択された少なくとも1種の酸化物、あるいは前記窒化物と前記酸化物の混合物は、電極の表面に層状に配置されていてもよく、また、電極の表面に上記材料が含有された形態であってもよい。
【0028】
Ti,Zr,Ta,Nbの中から選択された少なくとも1種の窒化物、あるいはTi,Zr,Ta,Nbの中から選択された少なくとも1種の酸化物、あるいは前記窒化物と前記酸化物の混合物は、導電性であることが好ましい。特に、電極の表面を覆う形態で配置する場合には導電性でなくてはならない。
【0029】
本発明において、「カーボンファイバー」あるいは「カーボンを主成分とするファイバー」とは、グラファイトナノファイバー、カーボンナノチューブ、アモルファスカーボンファイバー、ダイアモンドファイバーを含む。また、本発明におけるカーボンファイバーは、「炭素を主成分とする柱状物質」あるいは、「炭素を主成分とする線状物質」をも包含する。また、カーボンファイバーを構成する材料としては、TiC、ZrC、HfC、TaC、SiC、WC等の炭化物、アモルファスカーボン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンド等の炭素化合物をも含む。
【0030】
また、本発明において、「触媒」とは炭素(カーボン)の成長(堆積)を促進する材料である。
【0031】
例えば炭化水素ガスの熱分解により上記触媒作用を有する核から成長したカーボンファイバーは、Ti,Zr,Ta,もしくはNbの窒化物あるいはTi,Zr,Ta,もしくはNbの酸化物と非常に安定な電気的接合を形成する。
【0032】
ここで炭化水素ガスとしては例えばアセチレン、エチレン、メタン、プロパン、プロピレンなどの炭化水素ガス、あるいはエタノールやアセトンなどの有機溶剤の蒸気を用いることもある。特に炭化水素ガスを窒素あるいはAr等の不活性ガスにて、希釈した混合ガスを成長ガスとして用いることにより、特別な防爆設備を不要とした簡易な設備で製造することが可能である。
【0033】
次に、前記窒化物あるいは前記酸化物あるいは前記窒化物と酸化物との混合物と触媒材料とのいくつかの組み合わせについて述べる。
【0034】
特に、前記電極の表面が前述した窒化物であり、かつ触媒材料が金属状態の触媒(例えばPdを主成分とする触媒)である場合は、触媒材料を酸化させるプロセスを用いずとも、金属状態の触媒からカーボンファイバーを成長させることが可能である。このため、酸化や加熱プロセスに弱い材料をデバイスの一部に使用することが可能となり、製造プロセスに幅を持たせることが可能となった。
【0035】
前記電極の表面が窒化物であり、かつ触媒材料が酸化物状態の触媒(例えば酸化パラジウムを主成分とする触媒)である場合は、酸化物触媒に対し減圧下での熱分解還元あるいは水素による還元を行った後では、安定に触媒を介してカーボンファイバーが成長することが可能である。
【0036】
また、上述した材料(前記窒化物あるいは前記酸化物あるいは前記窒化物と酸化物との混合物)を用いたカーボンファイバーの形成は、積層構成においても成り立つ。例えば、基板上にCr膜(電極に相当する)を全面に形成し、さらにCr膜の上にTiN(前記窒化物あるいは前記酸化物あるいは前記窒化物と酸化物との混合物に相当する)の微小領域を形成し、さらに、基板全面に酸化パラジウム(前記触媒に相当する)を被覆した基板を用いると、カーボンファイバーをTiNを配置した領域上だけに選択的に成長させることが出来、しかも、Crとカーボンファイバーとの安定な電気的接続を実現できる。
【0037】
以上述べた構成を適用した本発明の電子放出素子の構成の一例について、更に好ましい実施態様を挙げて詳述する。
【0038】
図1Aは本発明による電子放出素子の一例を示す模式図、図1Bは図1AのA−A間断面図である。
【0039】
図1において1は絶縁性の基板、2は引き出し電極(ゲート電極)、3は陰極電極(カソード電極)、4は陰極材料(エミッター材料)であり、具体的には前述のカーボンファイバーの集合体である。5はカーボンファイバーが成長する導電性材料(前記窒化物あるいは前記酸化物あるいは前記窒化物と酸化物との混合物の層と前記触媒からなる)を示している。
【0040】
前記絶縁性の基板1としては、その表面を十分に洗浄した、石英ガラス、などの絶縁性基板が挙げられる。
【0041】
前記引き出し電極2および陰極電極3は導電性を有しており、蒸着法、スパッタ法等の一般的真空成膜技術、フォトリソグラフィー技術などにより形成される。電極の材料は、好ましくは炭素、金属、金属の窒化物、金属の炭化物の耐熱性材料が望ましい。
【0042】
この図1に示した電子放出素子は、例えば、図6に示すような真空雰囲気中で駆動される。図6において、図1と同じ符号を用いている部材は同じ部材を指し、60は真空容器、61は対向基板であり、62はアノード電極、63はアノード電極62と電子放出素子間で形成される等電位面、64は陰極材料4の中で最も電界が集中すると想定される部位、65は真空ポンプである。アノード電極62は、電子放出素子から放出された電子を加速したり、収集するためのものである。アノード電極62上に蛍光体などの画像形成部材を配置することにより、画像形成装置を構成することができる。
【0043】
引き出し電極2と陰極電極3の間隔は、カーボンファイバー(陰極材料4)から電子が放出される際の電界(横方向電界または引き出し電極2と陰極電極3との間の電界)と、電子放出素子から放出された電子がアノード電極62に到達するのに必要な縦方向電界(基板1とアノード電極62との間の電界)とを比較した時に、電子放出電界が縦方向電界よりも1倍から50倍程度の値になるように、駆動電圧と間隔を決めればよい。
【0044】
陽極(アノード電極62)上に蛍光体を用いる場合は、必要な縦方向電界は10-1V/μmから10V/μmの範囲に限定される。例えば、陽極(アノード電極62)と陰極(引き出し電極2あるいは陰極電極3)との間に10KVを2mmの間隔で印加する場合、この時の縦方向電界は5V/μmとなる。この場合、用いるべき陰極材料4の電子放出電界は5V/μmよりも大きな電子放出電界を持つ材料であり、選択した電子放出電界に相当するように、その間隔と、駆動電圧を決めればよい。
【0045】
カーボンファイバーの構造を図11、12に模式的に示す。各図では一番左側に光学顕微鏡レベル(〜1000倍)で見える形態、真中は走査電子顕微鏡(SEM)レベル(〜3万倍)で見える形態、右側は透過電子顕微鏡(TEM)レベル(〜100万倍)で見えるカーボンの形態を模式的に示している。
【0046】
図11に示す様に、グラフェンが円筒形状(円筒形が多重構造になっているものはマルチウォールナノチューブと呼ばれる)の形態をとるものはカーボンナノチューブと呼ばれ、特にチューブ先端を開放させた構造の時に、最もその閾値が下がる。
【0047】
あるいは、カーボンナノチューブと同様に触媒を用い、比較的低温で生成されるカーボンファイバーを図12に示す。この形態のカーボンファイバーはグラフェンの積層体(このためグラファイトナノファイバーと呼ばれることがあるが、温度によりアモルファス構造の割合が増加する)で構成されている。
【0048】
カーボンナノチューブとグラファイトナノファイバーは触媒の種類、及び分解の温度によって異なり、同一の触媒で、両方の構造を持つ物を温度によって選択可能である場合もあるし、どちらかの構造しか出来ない場合もある。
【0049】
どちらのカーボンファイバーも電子放出の閾値が低く、本発明の陰極材料4として好ましい。
【0050】
触媒材料としてはPd、Ni、Fe、Coをカーボンファイバー形成用の触媒(核)として用いることが出来る。
【0051】
特に、Pd、Niにおいては低温(450℃以上の温度)でグラファイトナノファイバーを生成することが可能である。Fe、Coを用いたカーボンナノチューブの生成温度は800℃以上必要なことから、Pd、Niを用いてのグラファイトナノファイバー材料の作成は、低温で可能なため、他の部材への影響や、製造コストの観点からも好ましい。
【0052】
特に1nm以下の超微粒子状態において、他の触媒では大気に金属触媒をさらすと、大気中の水や酸素と化学反応を生じ酸化物となってしまうが、金属Pd触媒は他の触媒と異なり金属結合状態を保ち、安定である。
【0053】
特に、Fe系の金属触媒粒子は大気にさらすと、急激に化学反応を起こし、粉塵爆発の危険性があるが、金属Pd触媒ではこのような危険性がない。さらにPdを主成分としてCo、Ni、Feなどを含んだ金属触媒であっても酸化反応が遅く進行するため、安全に触媒を取り扱うことが可能である。
【0054】
一方、金属触媒Pdは水素を容易に触媒内に取り込む性質と関連して、特異な挙動がある。Pdを水素、有機ガス等の還元雰囲気にさらすと、水素を含んだ超微粒子が、比較的低温度(約450℃以上)で超微粒子同士が結びついて、初期状態よりも大きな形状を持つ微粒子となる。この現象により、Pd粒子が大きい形状に変化すると、グラファイトナノファイバーの成長温度が高くなるだけでなく、電子放出の閾値が高くなる等の不都合があった。
【0055】
このような不都合を避ける方法として、成長に必要な温度に達するまで、触媒に水素、あるいは炭化水素に可能な限り暴露しない方法もあるが、より有効な方法としてPd中にFe、Co、Ni等の金属を添加することで、形状変化を防ぐことが可能なことを見出した。Pdと添加する材料の原子比は添加材料が10atm%程度から有効であり、50atm%を超えるとグラファイトナノファイバーの成長が遅くなったり、積極的な水素添加等による還元プロセスが必要となる。そのため、Pd中に添加する金属(特にはFe、Co、Ni)の量は10atm%以上50atm%以下が好ましいを。
【0056】
図1に示したように、電子放出の如何に係わらず、カーボンファイバー(陰極材料4)が形成された領域を以後エミッター領域と呼ぶ。
【0057】
エミッター領域における電子放出点位置とその動作について図6、7を用いて説明する。
【0058】
数μmの引き出し電極2、陰極電極3間ギャップを持つ本素子を図6に示すような真空装置60に設置し、真空排気装置65によって10-4Pa程度に到達するまで十分に排気した。図6に示したように高電圧電源を用いて、基板から数ミリの高さHの位置に陽極(アノード電極)62を設け、数キロボルトからなる高電圧Vaを印加した。
【0059】
なお、アノード電極62には導電性フィルムを被覆した蛍光体が設置されている。
【0060】
素子の駆動電圧Vfには数十V程度からなるパルス電圧を印加して流れる素子電流Ifと電子放出電流Ieを計測した。
【0061】
この時、等電位線63は図6のように形成され、最も電界の集中すると想定される点は64で示される陰極材料4の最もアノードより、かつギャップの内側の場所である。
【0062】
この電界集中点近傍に位置する陰極材料4の中で最も電界集中する場所から電子が放出されると考えられる。
【0063】
素子のIe特性は図7に示すような特性であった。すなわち印加電圧の約半分からIeが急激に立ち上がり、不図示のIfはIeの特性に類似していたが、その値はIeと比較して十分に小さな値であった。
【0064】
以下この原理に基づき、本発明を適用可能な電子放出素子を複数配して得られる電子源について、図8を用いて説明する。図8において、81は電子源基体、82はX方向配線、83はY方向配線である。84は本発明の電子放出素子、85は結線である。
【0065】
m本のX方向配線82は,DX1,DX2,..DXmからなり,真空蒸着法,印刷法,スパッタ法等を用いて形成された導電性金属等で構成することができる。配線の材料、膜厚、巾は、適宜設計される。Y方向配線83は,DY1,DY2..DYnのn本の配線よりなり,X方向配線82と同様に形成される。これらm本のX方向配線82とn本のY方向配線83との間には、不図示の層間絶縁層が設けられており、両者を電気的に分離している(m,nは,共に正の整数)。
【0066】
不図示の層間絶縁層は,真空蒸着法,印刷法,スパッタ法等を用いて形成されたSiO2等で構成される。例えば、X方向配線82を形成した電子源基体81の全面或は一部に所望の形状で形成され,特に,X方向配線82とY方向配線83の交差部の電位差に耐え得るように,膜厚,材料,製法が,適宜設定される。X方向配線82とY方向配線83は,それぞれ外部端子として引き出されている。
【0067】
電子放出素子84を構成する一対の電極(不図示)は、m本のX方向配線82とn本のY方向配線83と導電性金属等からなる結線85によって電気的に接続されている。
【0068】
X方向配線82とY方向配線83を構成する材料、結線85を構成する材料及び一対の素子電極を構成する材料は、その構成元素の一部あるいは全部が同一であっても、またそれぞれ異なってもよい。これら材料は、例えば前述の素子電極の材料より適宜選択される。素子電極を構成する材料と配線材料が同一である場合には、素子電極に接続した配線は素子電極ということもできる。
【0069】
X方向配線82には、X方向に配列した電子放出素子84の行を、選択するための走査信号を印加する不図示の走査信号印加手段が接続される。一方、Y方向配線83には、Y方向に配列した電子放出素子84の各列を入力信号に応じて、変調するための不図示の変調信号発生手段が接続される。各電子放出素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加される走査信号と変調信号の差電圧として供給される。
【0070】
上記構成においては、単純なマトリクス配線を用いて、個別の素子を選択し、独立に駆動可能とすることができる。
【0071】
このような単純マトリクス配置の電子源を用いて構成した画像形成装置について、図9を用いて説明する。図9は、画像形成装置の表示パネルの一例を示す模式図であり、図9において、81は電子放出素子を複数配した電子源基体、91は電子源基体81を固定したリアプレート、96はガラス基体93の内面に蛍光膜94とメタルバック95等が形成されたフェースプレートである。92は、支持枠であり該支持枠92には、リアプレート91、フェースプレート96がフリットガラス等を用いて接続されている。外囲器97は、例えば大気中、真空中あるいは、窒素中で、400〜500度の温度範囲で10分以上焼成することで、封着して構成される。
【0072】
外囲器97は、上述の如く、フェースプレート96、支持枠92、リアプレート91で構成される。リアプレート91は主に電子源基体81の強度を補強する目的で設けられるため、電子源基体81自体で十分な強度を持つ場合は別体のリアプレート91は不要とすることができる。即ち、電子源基体81に直接支持枠92を封着し、フェースプレート96、支持枠92及び電子源基体81で外囲器97を構成しても良い。一方、フェースプレート96、リアプレート91間に、スペーサーとよばれる不図示の支持体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度をもつ外囲器97を構成することもできる。
【0073】
【実施例】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0074】
<実施例1>
図1Aに本実施例により作製した電子放出素子を素子上部から見た様子を示し、図1Bは図1AのA−A間断面図を示す。
【0075】
以下に、図5を用いて本実施例の電子放出素子の製造工程を詳細に説明する。
【0076】
(工程1)
基板1に石英基板を用い、十分洗浄を行った後、引き出し電極2及び陰極電極3としてスパッタ法により厚さ5nm(不図示)のTi及び厚さ30nmのPtを連続的に蒸着を行った。
【0077】
次に、フォトリソグラフィー工程で、ポジ型フォトレジスト(AZ1500/クラリアント社製)を用いてレジストパターンを形成した。
【0078】
次に、パターニングした前記フォトレジストをマスクとしてPt層、Ti層はArガスを用いてドライエッチングを行い、電極間ギャップが5μmからなる引き出し電極2、および陰極電極3を形成した(図5A)。
【0079】
(工程2)
次に、基板温度を300℃に保ちAr中に窒素を混合させたエッチングガスでTiをスッパタする反応性スパッタ法にてTiNを厚さ500nmの厚さに蒸着を行い、導電層51を形成した(図5B)。
【0080】
(工程3)
次に、基板1を十分に室温に冷却した後、工程2と同一の真空装置を用いてArガスを用いたスパッタ法にてPdを島状になる程度の量だけ蒸着した。この段階で素子表面には粒子の直径が約3〜10nmの触媒51が形成された。この時の触媒52粒子の密度は約1011〜1012個/cm2と見積もられた(図5C)。
【0081】
(工程4)
次に、フォトリソグラフィー工程で、ポジ型フォトレジスト(AZ1500/クラリアント社製)を用いてレジストパターンを形成した。
【0082】
パターニングした前記フォトレジストをマスクとして島状Pd層(触媒52)、TiN層(導電層51)はCl2ガスを用いてドライエッチングを行い、一方の電極(陰極電極3)上にのみ金属触媒52が形成されるようにした(図5D)。
【0083】
(工程5)
続いて、窒素希釈した0.1%エチレン気流中で500℃、10分間加熱処理をした。これを走査電子顕微鏡で観察すると、触媒52塗布領域に直径5nm〜25nm程度で、屈曲しながら繊維状に伸びた多数のカーボンファイバー(陰極材料4)が形成されているのがわかった。このときカーボンファイバーの厚さは約1000nmとなっていた(図5E)。
【0084】
本素子を図6に示すような真空装置60に設置し、真空排気装置65によって2×10-5Paに到達するまで十分に排気した。図6に示したように素子からH=2mm離れた陽極(アノード電極62)に、陽極(アノード)電圧としてVa=10KV印加した。このとき素子には駆動電圧Vf=20Vからなるパルス電圧を印加して流れる素子電流Ifと電子放出電流Ieを計測した。
【0085】
素子のIf、Ie特性は図7に示すような特性であった。すなわち印加電圧の約半分からIeが急激に増加し、Vfが15Vでは約1μAの電子放出電流Ieが測定された。一方IfはIeの特性に類似していたが、その値はIeと比較して一桁以上小さな値であった。
【0086】
陰極電極3の上に導電層51を用いたことでカーボンファイバー(陰極材料4)を一定の密度で成長させることが可能となった。
【0087】
また導電層51をカーボンファイバー(陰極材料4)の電気的接続層として用いたことにより、陰極電極3の上においても安定に電子放出させることが可能となった。
【0088】
得られたビームはY方向に細長く、X方向に短い、略矩形形状であった。
【0089】
駆動電圧Vfを15V、アノード間距離Hを2mmと一定に保ち、アノード電圧Vaを5KV、10KV、ギャップdを1μm、5μmにした時のビーム幅を測定したところ表1のようになった。
【0090】
【表1】
【0091】
駆動に必要な電界は成長条件を変えることで変化させることが可能であった。特にPd(触媒52)の平均粒径が、その後の成長で出来るカーボンファイバー(陰極材料4)の直径と関連している。
【0092】
Pd(触媒52)の平均直径はスパッタPdの蒸着を行うときの蒸着量および基板温度、投入電力で制御が可能であった。
【0093】
この素子のカーボンファイバー(陰極材料4)を透過電顕で観察したところ、グラフェンが図12の右に示すように積層された構造であった。グラフェンの積層間隔(C軸方向)は温度が低い500℃程度では不鮮明であり、その間隔が0.4nmであったが、温度が高くなればなるほど、格子間隔が鮮明となり、700℃では0.34nmとなりグラファイト0.335nmに近い値となった。
【0094】
<実施例2>
第二の実施例を図2に示す。
【0095】
本実施例では第一の実施例における陰極電極3の厚さを500nm、引き出し電極2の厚さを30nmに形成し、実施例1の工程2において用いる導電層としてZrNを用いた。また工程3で用いる触媒には金属PdにCoを約20atm%添加した触媒を用いた。このZrNでもカーボンファイバーの成長前後でシート抵抗に変化がないことから安定にコンタクト層が形成されていることが確認された。また合金化した触媒により安定してカーボンファイバーの成長が可能となった。
【0096】
素子作製後に本素子のIf、Ieの計測を行った。
【0097】
本素子構成により、陰極電極3を厚くすることで、電子放出位置を引き出し電極2から見て、確実に高い位置(アノード側)にすることが出来た。この構成によって、電子が引き出し電極2に衝突する軌道が減少し、効率の低下や、ビーム径の増大を招く現象を防ぐことが出来た。
【0098】
この結果、本素子構成においても、Vfが20Vでは約1μAの電子放出電流Ieが測定された。一方IfはIeの特性に類似していたが、その値はIeと比較して二桁小さな値であった。この時のビーム径もほぼ表1と同じであった。
【0099】
<実施例3>
第三の実施例を図3に示す。
【0100】
本実施例では第一の実施例における工程2において用いる導電層51および触媒52をギャップと陰極電極3にまたがって、ギャップのほぼ中間位置(ギャップ間距離を約半分)に形成した場合を示す。
【0101】
以降の工程3乃至5は同じである。但し、工程2において用いる導電層としてニオブの窒化物を用いた。また工程3で用いる触媒には金属PdにFeを約10atm%添加した触媒を用いた。さらに工程5で用いるカーボンファイバーの成長ガスとして窒素希釈した0.1%アセチレンを用いた。
【0102】
このNbNでもカーボンファイバーの成長前後でシート抵抗に変化がないことから安定にコンタクト層が形成されていることが確認された。また合金化した触媒により安定してカーボンファイバーの成長が可能となった。
【0103】
本素子では実施例1と比較してギャップ間距離が小さい分、電界が約2倍程度強い。このため駆動の電圧は8V程度まで低下させることが可能となった。また導電層をカーボンファイバーの電気的接続層として用いたことによりギャップ内のカーボンファイバーから安定に電子放出させることが可能となった。
【0104】
<実施例4>
第四の実施例を図4にしめす。本実施例では実施例1で述べた工程1、2、3が以下に示すように変更した。
【0105】
(工程1)
基板1に石英基板を用い、十分洗浄を行った後、陰極電極3としてスパッタ法により厚さ5nmのCr及び厚さ30nmのPtを連続的に蒸着を行った。
【0106】
(工程2)
次に、基板温度を300℃に保ちAr中に窒素を混合させたエッチングガスでTaをスッパタする反応性スパッタ法にてTaNを厚さ500nmの厚さに蒸着し、導電層を形成した。
【0107】
(工程3)
次に、基板を十分に室温に冷却した後、工程2と同一の真空装置を用いてArガスを用いたスパッタ法にてPdにNiを50atm%を含む合金(触媒)を島状になる程度の量だけ蒸着した。
【0108】
次に、フォトリソグラフィー工程で、ポジ型フォトレジスト(AZ1500/クラリアント社製)を用いてレジストパターンを形成した。
【0109】
次に、パターニングした前記フォトレジストをマスクとして導電性材料5はCF4を用いてドライエッチングを行い、続いて、Pt層、Ti層をArにてドライエッチングを行い陰極電極3を形成した。
【0110】
次に、陰極電極3をマスクとして用い、フッ酸とフッ化アンモニウムからなる混酸を用いて、約500nmの深さ、石英基板をエッチングした。
【0111】
続いて、引き出し電極2として再びスパッタ法により厚さ5nmのTi及び厚さ30nmのPtを連続的に蒸着を行った。陰極電極3のフォトレジストを剥離後、再びポジ型フォトレジスト(AZ1500/クラリアント社製)を用いて引き出し電極2形状を形成するためのレジストパターンを形成した。
【0112】
次に、パターニングした前記フォトレジストをマスクとしてPt層、Ti層をArを用いてドライエッチングを行い、段局間に形成された段差がギャップとして作用するように引き出し電極2を形成した。
【0113】
本素子構成により、より微細なギャップを作ることが可能となり、約6V程度から電子放出させることが出来るようになった。
【0114】
また陰極材料4の高さ(膜厚)が厚いことに起因して、膜の上部からだけでなく中間位置から電子が出ることで、引き出し電極2に電子が衝突し、効率が低下したり、ビーム径が増大するのを防ぐことが出来た。
【0115】
<実施例5>
本発明を適用可能な電子放出素子を複数配して得られる画像形成装置について、図8、9、10を用いて説明する。
【0116】
図8において、81は電子源基体、82はX方向配線、83はY方向配線である。84は本発明の電子放出素子、85は結線である。
【0117】
図8においてm本のX方向配線82はDX1,DX2,..DXmからなり,蒸着法にて形成された厚さ約1μm、幅300μmのアルミニウム系配線材料で構成されている。配線の材料、膜厚、巾は、適宜設計される。Y方向配線83は厚さ0.5μm、幅100μm,DY1,DY2..DYnのn本の配線よりなり,X方向配線82と同様に形成される。これらm本のX方向配線82とn本のY方向配線83との間には、不図示の層間絶縁層が設けられており、両者を電気的に分離している(m,nは,共に正の整数)。
【0118】
不図示の層間絶縁層は,スパッタ法等を用いて厚さ約0.8μmのSiO2で構成された。X方向配線82を形成した電子源基体81の全面或は一部に所望の形状で形成され,特に,X方向配線82とY方向配線83の交差部の電位差に耐え得るように,本実施例では1素子当たりの素子容量が1pF以下、素子耐圧30Vになるように層間絶縁層の厚さが決められた。X方向配線82とY方向配線83は,それぞれ外部端子として引き出されている。
【0119】
本発明の放出素子84を構成する一対の電極(不図示)は、m本のX方向配線82とn本のY方向配線83と導電性金属等からなる結線85によって電気的に接続されている。
【0120】
X方向配線82には、X方向に配列した本発明の電子放出素子84の行を選択するための走査信号を印加する不図示の走査信号印加手段が接続される。一方、Y方向配線83には、Y方向に配列した本発明の電子放出素子84の各列を入力信号に応じて変調するための不図示の変調信号発生手段が接続される。各電子放出素子84に印加される駆動電圧は、当該素子に印加される走査信号と変調信号の差電圧として供給される。本発明においてはY方向配線83は高電位、X方向配線82は低電位になるように接続された。このように接続することで、本発明の特徴である、ビームの収束効果が得られた。
【0121】
上記構成においては、単純なマトリクス配線を用いて、個別の素子を選択し、独立に駆動可能とすることができる。
【0122】
このような単純マトリクス配置の電子源を用いて構成した画像形成装置について、図9を用いて説明する。本実施例では、ガラス基板材料としてソーダライムガラスを用いた画像形成装置の表示パネルについて説明する。
【0123】
図9において、81は電子放出素子を複数配した電子源基体、91は電子源基体81を固定したリアプレート、96はガラス基体93の内面に蛍光膜94とメタルバック95等が形成されたフェースプレートである。92は、支持枠であり該支持枠92には、リアプレート91、フェースプレート96がフリットガラス等を用いて接続されている。97は外囲器であり、真空中で、450度の温度範囲で10分焼成することで、封着して構成される。
【0124】
84は、図9における電子放出部に相当する。82、83は、本発明の電子放出素子の一対の素子電極と接続されたX方向配線及びY方向配線である。
【0125】
外囲器97は、上述の如く、フェースプレート96、支持枠92、リアプレート91で構成される。一方、フェースプレート96、リアプレート91間に、スペーサーとよばれる不図示の支持体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度をもつ外囲器98を構成した。
【0126】
メタルバック95は、蛍光膜94作製後、蛍光膜94の内面側表面の平滑化処理(通常、「フィルミング」と呼ばれる。)を行い、その後Alを真空蒸着等を用いて堆積させることで作られた。
【0127】
フェースプレート96には、更に蛍光膜94の導電性を高めるため、蛍光膜94の外面側に透明電極(不図示)を設けた。
【0128】
前述の封着を行う際には、カラーの場合は各色蛍光体と電子放出素子とを対応させる必要があり、十分な位置合わせが不可欠となる。
【0129】
本実施例では電子源からの電子放出はゲート電極側に出射されるので、10KVのアノード電圧、アノード間距離2mmの時は、200μm、ゲート側に偏移して対応する蛍光体が配置された。
【0130】
図10は、画像形成パネルの回路例を示す図である。図10において、101は表示パネル、102は走査回路、103は制御回路、104はシフトレジスタ、105はラインメモリ、106は同期信号分離回路、107は変調信号発生器である。
【0131】
走査回路102について説明する。同回路は、内部にM個のスイッチング素子を備えたもので(図中,S1ないしSmで模式的に示している)ある。各スイッチング素子は、直流電圧源Vxの出力電圧もしくは0[V](グランドレベル)のいずれか一方を選択し、表示パネル101の端子Dox1ないしDoxmと電気的に接続される。S1乃至Smの各スイッチング素子は、制御回路103が出力する制御信号Tscanに基づいて動作するものであり、例えばFETのようなスイッチング素子を組み合せることにより構成することができる。
【0132】
直流電圧源Vxは、本例の場合には本発明の電子電子放出素子の特性(電子放出しきい値電圧)に基づき走査されていない素子に印加される駆動電圧が電子放出しきい値電圧以下となるような一定電圧を出力するよう設定されている。
【0133】
制御回路103は、外部より入力する画像信号に基づいて適切な表示が行なわれるように各部の動作を整合させる機能を有する。制御回路103は、同期信号分離回路106より送られる同期信号Tsyncに基づいて、各部に対してTscanおよびTsftおよびTmryの各制御信号を発生する。
【0134】
同期信号分離回路106は、外部から入力されるNTSC方式のテレビ信号から同期信号成分と輝度信号成分とを分離する為の回路で、一般的な周波数分離(フィルター)回路等を用いて構成できる。同期信号分離回路106により分離された同期信号は、垂直同期信号と水平同期信号より成るが、ここでは説明の便宜上Tsync信号として図示した。前記テレビ信号から分離された画像の輝度信号成分は便宜上DATA信号と表した。該DATA信号はシフトレジスタ104に入力される。
【0135】
シフトレジスタ104は、時系列的にシリアルに入力される前記DATA信号を、画像の1ライン毎にシリアル/パラレル変換するためのもので、前記制御回路103より送られる制御信号Tsftに基づいて動作する(即ち、制御信号Tsftは,シフトレジスタ104のシフトクロックであるということもできる。)。シリアル/パラレル変換された画像1ライン分(電子放出素子N素子分の駆動データに相当)のデータは、Id1乃至IdnのN個の並列信号として前記シフトレジスタ104より出力される。
【0136】
ラインメモリ105は、画像1ライン分のデータを必要時間の間だけ記憶する為の記憶装置であり、制御回路113より送られる制御信号Tmryに従って適宜Id1乃至Idnの内容を記憶する。記憶された内容は、I’d1乃至I’dnとして出力され、変調信号発生器107に入力される。
【0137】
変調信号発生器107は、画像データI’d1乃至I’dnの各々に応じて本発明の電子電子放出素子の各々を適切に駆動変調する為の信号源であり、その出力信号は、端子Doy1乃至Doynを通じて表示パネル101内の本発明の電子電子放出素子に印加される。
【0138】
前述したように、本発明を適用可能な電子放出素子は放出電流Ieに対して以下の基本特性を有している。即ち、電子放出には明確なしきい値電圧Vthがあり、Vth以上の電圧を印加された時のみ電子放出が生じる。電子放出しきい値以上の電圧に対しては、素子への印加電圧の変化に応じて放出電流も変化する。このことから、本素子にパルス状の電圧を印加する場合、例えば電子放出閾値以下の電圧を印加しても電子放出は生じないが、電子放出閾値以上の電圧を印加する場合には電子ビームが出力される。その際、パルスの波高値Vmを変化させる事により出力電子ビームの強度を制御することが可能である。また、パルスの幅Pwを変化させることにより出力される電子ビームの電荷の総量を制御する事が可能である。
【0139】
従って、入力信号に応じて、電子放出素子を変調する方式としては、電圧変調方式、パルス幅変調方式等が採用できる。電圧変調方式を実施するに際しては、変調信号発生器107として、一定長さの電圧パルスを発生し、入力されるデータに応じて適宜パルスの波高値を変調するような電圧変調方式の回路を用いることができる。
【0140】
パルス幅変調方式を実施するに際しては、変調信号発生器107として、一定の波高値の電圧パルスを発生し、入力されるデータに応じて適宜電圧パルスの幅を変調するようなパルス幅変調方式の回路を用いることができる。
【0141】
シフトレジスタ104やラインメモリ105は、デジタル信号式を用いた。
【0142】
本実施例では、変調信号発生器107には、例えばD/A変換回路を用い、必要に応じて増幅回路などを付加する。パルス幅変調方式の場合、変調信号発生器107には、例えば高速の発振器および発振器の出力する波数を計数する計数器(カウンタ)及び計数器の出力値と前記メモリの出力値を比較する比較器(コンパレータ)を組み合せた回路を用いた。
【0143】
ここで述べた画像形成装置の構成は、本発明を適用可能な画像形成装置の一例であり、本発明の技術思想に基づいて種々の変形が可能である。入力信号については、NTSC方式を挙げたが入力信号はこれに限られるものではなく、PAL,SECAM方式などの他、これよりも、多数の走査線からなるTV信号(例えば、MUSE方式をはじめとする高品位TV)方式をも採用できる。
【0144】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明による電子放出素子を用いると、効率が高く、ビーム径の小さい電子源が実現できる。
【0145】
また、画像形成装置においては、前記電子源より構成され、入力信号に基づいて画像を形成するため、より高精細な画像形成装置例えば、カラーフラットテレビが、実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による基本的な電子放出素子の一例を示す図である。
【図2】本発明による第二の実施例を示す図である。
【図3】本発明による第三の実施例を示す図である。
【図4】本発明による第四の実施例を示す図である。
【図5】本発明による第1の実施例の製造工程を示す図である。
【図6】本発明による電子放出素子を動作させる時の構成例を示す図である。
【図7】本発明による基本的な電子放出素子の動作特性例を示す図である。
【図8】本発明による電子放出素子を複数用いた単純マトリクス回路の構成例を示す図である。
【図9】本発明による電子源を用いた画像形成パネルの構成例を示す図である。
【図10】本発明による電子源を用いた画像形成パネルの回路例を示す図である。
【図11】カーボンナノチューブの構造を示す概要図である。
【図12】グラファイトナノファイバーの構造を示す概要図である。
【図13】縦型FEの従来例を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 引き出し電極(ゲート電極)
3 陰極電極(カソード電極)
4 陰極材料(エミッター材料)
5 導電性材料
51 導電層
52 触媒
Claims (10)
- カソード電極と、該カソード電極に接続されたカーボンファイバーとを有する電子放出素子であって、
前記カソード電極と、前記カーボンファイバーとが、Ti,Zr,Ta,Nbの中から選択された少なくとも1種の窒化物(但し、窒化タンタルを除く)を介して接続されてなることを特徴とする電子放出素子。 - カソード電極と、該カソード電極に接続されたカーボンファイバーとを有する電子放出素子であって、
前記カソード電極と、前記カーボンファイバーとが、Ti,Zr,Ta,Nbの中から選択された少なくとも1種の窒化物とTi,Zr,Ta,Nbの中から選択された少なくとも1種の酸化物との混合物を介して接続されてなることを特徴とする電子放出素子。 - 前記カーボンファイバーは、触媒を用いて炭化水素ガスを熱分解することにより形成されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の電子放出素子。
- 前記触媒は、Pd,Ni,FeまたはCoを含むことを特徴とする請求項3に記載の電子放出素子。
- 前記カーボンファイバーは、グラファイトナノファイバー,カーボンナノチューブ、アモルファスカーボン、ダイアモンドファイバー、またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子放出素子。
- 前記カソード電極は、ゲート電極と共に基板の表面に配置されており、前記基板の表面から前記ゲート電極の表面までの高さよりも、前記基板の表面から前記カーボンファイバーの先端までの高さの方が高いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子放出素子。
- カソード電極と、該カソード電極に接続されたカーボンファイバーとを有する電子放出素子であって、
前記カソード電極と、前記カーボンファイバーとが、Ti,Zr,Ta,Nbの中から選択された少なくとも1種の窒化物を介して接続されてなり、
前記カソード電極は、ゲート電極と共に基板の表面に配置されており、前記基板の表面から前記ゲート電極の表面までの高さよりも、前記基板の表面から前記カーボンファイバーの先端までの高さの方が高いことを特徴とする電子放出素子。 - 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電子放出素子と、該電子放出素子と対向して設けた画像形成部材とを有することを特徴とする画像形成装置。
- 電極と該電極に接続されたカーボンファイバーを有する電子放出素子の製造方法であって、
電極上に、Ti,Zr,Ta,Nbの中から選択された少なくとも1種の窒化物(但し、窒化タンタルを除く)、あるいは、Ti,Zr,Ta,Nbの中から選択された少なくとも1種の酸化物とTi,Zr,Ta,Nbの中から選択された少なくとも1種の窒化物との混合物を、設ける工程と、
触媒を用いて炭化水素ガスを熱分解することにより、前記窒化物あるいは前記混合物を介して前記電極と接続したカーボンファイバーを形成する工程と、を有することを特徴とする電子放出素子の製造方法。 - 前記触媒は、Ni,FeまたはCoの中から選択された金属とPdとを含み、前記触媒中に含まれる前記金属の比率が10atm%以上50atm%以下であることを特徴とする請求項9に記載の電子放出素子の製造方法。
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