JP4592200B2 - 横断支援用検出装置及びこれを用いた横断支援システム - Google Patents

横断支援用検出装置及びこれを用いた横断支援システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、視覚障害者が横断歩道を横断するのを支援するために用いられる横断支援用検出装置、及びこれを用いた視覚障害者の横断を支援する横断支援システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、視覚障害者が横断歩道を横断するのを支援する種々の横断支援システムが提案されている。
【0003】
例えば、特開平8−191854号公報には、横断歩道に対する交通信号機の近くに、視覚障害者用の押しボタンスイッチを設け、視覚障害者がこの押しボタンスイッチを押すことによって横断歩道を横断する意思表示を行い、これに応答して交通信号機を青に切り替える信号機制御を行う、第1の横断支援システムが、開示されている。
【0004】
また、前記公報には、視覚障害者が携帯する送信機と、交通信号機側に設けた受信機とを備え、視覚障害者が横断歩道に近づくと前記受信機が前記送信機からの電波を受信し、これに応答して交通信号機を青に切り替える信号機制御を行う、第2の横断支援システムが、開示されている。
【0005】
さらに、前記公報には、横断歩道に対する横断待ち位置付近の点字ブロック内に、視覚障害者が持つ杖の先端に予め設けた磁石の磁気に感応するセンサを埋設し、前記センサにより杖が感知されたことに応答して交通信号機を青に切り替える信号機制御を行う、第3の横断支援システムが、開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかながら、前記第1の横断支援システムでは、押しボタンスイッチの位置が見つからなかったり、放置自転車等が邪魔となって押しボタンスイッチを押せなかったりする不都合が生じていた。また、視覚障害者にとって、いちいち押しボタンスイッチを押さなければならないことは、非常に煩わしい。
【0007】
前記第2及び第3の横断支援システムでは、視覚障害者が横断歩道に近づいたことが電波又は磁気により自動的に検出されるので、前記第1の横断支援システムのような不都合は生じない。しかし、前記第2及び第3の横断支援システムでは、視覚障害者の横断の意思の有無に関わらずに、視覚障害者が横断歩道に近づいたことを単純に検出するのみであるため、横断歩道を横断する意思がなくて横断歩道に近づいた視覚障害者、例えば、横断歩道を反対側からこちら側に渡り終えて来た視覚障害者も、検出してしまう。このため、不要な時にも視覚障害者の横断の支援動作が行われてしまい、交通の円滑化を損なうなどの不都合が生ずる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、視覚障害者の杖を適切に検出することにより、横断歩道の近くにいて横断歩道を横断しようとする視覚障害者の横断の意思を、精度良く自動的に検出することができる横断支援用検出装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、このような横断支援用検出装置を用いることによって、横断歩道を横断しようとする視覚障害者に対して、視覚障害者の特別な横断の意思表示や操作を要することなく、自動的により適切に横断歩道の横断の支援を行うことができ、ひいては視覚障害者の横断の際の安全性を高めることができる、横断支援システムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明の第1の態様による横断支援用検出装置は、横断歩道を横断しようとする視覚障害者が点字ブロックに沿って前記横断歩道に対する横断待ち位置に移動して来る際に、前記横断待ち位置の手前において前記視覚障害者が持つ前記杖あるいは前記杖に設けられた再帰反射材又はその他の部材が通過することになる位置付近の、所定の監視領域内に、前記杖あるいは前記再帰反射材又は前記その他の部材が存在し、かつ、前記杖あるいは前記再帰反射材又は前記その他の部材の移動方向又は向きが前記視覚障害者が前記横断歩道側へ向かう場合に対応したものであることを条件として、感知信号を出力するものである。
【0011】
この第1の態様によれば、前記所定の監視領域内に前記杖あるいは前記再帰反射材又は前記その他の部材が存在したことを条件とするのみならず、前記杖あるいは前記再帰反射材又は前記その他の部材の移動方向又は向きが前記視覚障害者が前記横断歩道側へ向かう場合に対応したものであることも条件として、感知信号を出力している。したがって、横断歩道の近くにいて横断歩道を横断しようとする視覚障害者の横断の意思を、精度良く自動的に検出することができる。
【0012】
本発明の第2の態様による横断支援用検出装置は、前記第1の態様において、前記監視領域を撮像する撮像手段と、該撮像手段により撮像された画像に基づいて前記条件を満たすか否かを判定する手段と、を備えたものである。
【0013】
この第2の態様は、前記第1の態様の一例として、撮像手段を用いた横断支援用検出装置の例を挙げたものである。
【0014】
本発明の第3の態様による横断支援用検出装置は、所定の監視領域内の個々の複数の個別領域にそれぞれ複数本のビームを照射する照射手段と、視覚障害者が持つ杖に予め設けられた再帰反射材であって前記ビームを再帰反射する再帰反射材からの、反射光を受光する受光手段と、前記受光手段からの信号に基づいて前記再帰反射材が前記監視領域内に存在するか否かを判定し、存在すると判定した場合に感知信号を出力する判定手段と、を備えたものである。そして、横断歩道を横断しようとする視覚障害者が点字ブロックに沿って前記横断歩道に対する横断待ち位置に移動して来る際に、前記横断待ち位置の手前において前記視覚障害者が持つ前記杖に予め設けられた前記再帰反射材が通過することになる位置付近に、前記監視領域が略水平面内において視覚障害者の進行方向に対して交差する方向に帯状に延びるように、かつ、前記複数本のビームが当該視覚障害者の前方又は斜め前の方からでかつ斜め上方から照射されるように、前記照射手段が設置される。
【0015】
この第3の態様は、前記第1の態様の一例として、撮像手段を用いることなくビームを利用した横断支援用検出装置の例を挙げたものである。この第3の態様によれば、撮像手段を用いる場合に比べて大幅にコストダウンを図ることができるという利点も得られる。
【0016】
この第3の態様によれば、複数本のビームによって帯状の監視領域を形成するので、監視領域を所望の領域に限定的に形成することができ、それにより誤検出の可能性を低減することができる。そして、横断歩道を横断しようとする視覚障害者が点字ブロックに沿って前記横断歩道に対する横断待ち位置に移動して来る際に、前記横断待ち位置の手前において前記視覚障害者が持つ前記杖に予め設けられた前記再帰反射材が通過することになる位置付近に、前記監視領域が略水平面内において視覚障害者の進行方向に対して交差する方向に帯状に延びるように、照射手段が設置される。したがって、横断歩道を横断しようとする視覚障害者の杖の再帰反射材を、精度良く検出することができる。
【0017】
単にそれのみでは、横断歩道を反対側からこちら側に渡り終えてきた視覚障害者の杖の再帰反射材も、検出してしまう可能性が高くなる。しかし、前記第3の態様によれば、前記複数本のビームが当該視覚障害者の前方又は斜め前の方からでかつ斜め上方から照射されるように、照射手段が設置される。このため、横断歩道を反対側からこちら側に渡り終えてきた視覚障害者の杖の再帰反射材は、照射手段に対して当該視覚障害者の体の影になり易く、しかも、たとえ影にならなかったとしても、杖の先端が視覚障害者が進行する方向に斜め下方に差し出されることから、当該再帰反射材で反射される光量が小さくなるため、横断歩道を渡り終えてきた視覚障害者の杖の再帰反射材は、ほとんど検出されない。
【0018】
前記第3の態様によれば、以上のように再帰反射材を設けた杖を適切に検出することにより、横断歩道の近くにいて横断歩道を横断しようとする視覚障害者の横断の意思を、精度良く自動的に検出することができる。
【0019】
なお、前記複数本のビームの主光線の鉛直方向に対する傾き角は、20゜以上40゜以下であってもよい。このように前記傾き角を設定すると、杖に設けた再帰反射材を他の人の影に隠れ難くすることができるとともに、再帰反射材を設けた杖を前述したように適切に検出する上で、より好ましい。前記傾き角は、25゜以上35゜以下であることが、より一層好ましい。
【0020】
また、前記第3の態様において、前記照射手段は、前記複数本のビームのうちの2つ以上のビームを、互いに異なるタイミングで、あるいは、互いに異なる変調光として、あるいは、互いに異なるタイミングでかつ互いに異なる変調光として、照射することが、S/Nを向上させて検出精度を高める上で、好ましい。
【0021】
本発明の第4の態様による横断支援用検出装置は、前記第3の態様において、前記監視領域の前記交差する方向の長さが、ちょうど前記点字ブロック上の領域をカバーする程度に設定されたものである。
【0022】
この第4の態様によれば、検出漏れを防止しつつ、ビームの本数を低減させてコストダウンを図ることができる。
【0023】
本発明の第5の態様による横断支援システムは、前記第1乃至第4のいずれかの態様による横断支援用検出装置と、該横断支援用検出装置からの前記感知信号に応答して、前記横断歩道を横断しようとする前記視覚障害者の横断を支援するための動作を行う支援手段と、を備えたものである。
【0024】
この第5の態様によれば、前記第1乃至第4のいずれかの態様による横断支援用検出装置からの感知信号に応答して、支援動作が行われるので、横断歩道を横断しようとする視覚障害者に対して、視覚障害者の特別な横断の意思表示や操作を要することなく、自動的により適切に横断歩道の横断の支援を行うことができ、ひいては視覚障害者の横断の際の安全性を高めることができる。また、感知信号に応答して支援動作が行われるので、いわばオンデマンドで支援動作が行われることから、不要な時には支援動作が行われず、好ましい。
【0025】
本発明の第6の態様による横断支援システムは、前記第5の態様において、前記支援手段は、前記感知信号に応答して、前記横断歩道を横断可能な期間に、前記横断歩道内に向けて当該横断歩道内の視覚障害者を誘導するための所定の音響を出力する視覚障害者用交通信号付加手段を、含むものである。
【0026】
この第6の態様によれば、前記音響の出力により横断歩道内の視覚障害者を適切に誘導することができ、しかも、音響は前記感知信号に応答して出力されるので、いわばオンデマンドで音響が出力されることから、不要な時には音響が出力されず、近隣に対する騒音を低減することができる。
【0027】
本発明の第7の態様による横断支援システムは、前記第5又は第6の態様において、前記支援手段は、前記感知信号を、前記横断歩道に対する交通信号機を青に切り替える要求を示す青要求信号として受信して、この信号に基づいて交通信号機制御を行うことを特徴とする交通信号機制御手段を、含むものである。
【0028】
この第7の態様によれば、視覚障害者は、特別な横断の意思表示や操作を行うことなく、優先的に横断歩道を横断することが可能となる。
【0029】
本発明の第8の態様による横断支援システムは、前記第5又は第6の態様において、前記支援手段は、前記感知信号を、前記横断歩道に対する交通信号機を青に切り替える要求及びその青時間の延長の要求を示す青延長要求信号として受信して、この信号に基づいて交通信号機制御を行うことを特徴とする交通信号機制御手段を、含むものである。
【0030】
この第8の態様によれば、視覚障害者は、特別な横断の意思表示や操作を要することなく、自動的に長い横断時間を得ることが可能となる。
【0031】
本発明の第9の態様による横断支援システムは、前記第8の態様において、(a)前記交通信号機制御手段は、前記感知信号による青時間の延長の要求を許可するか否かを判定し、許可する場合には青時間を延長する交通信号機制御を行う一方、許可しない場合には青時間を延長しない交通信号機制御を行い、(b)前記支援手段は、前記感知信号に応答して、前記横断待ち位置付近に所定の1種類以上の音声を提供する音声情報提供手段を含み、(c)前記音声情報提供手段は、前記所定の音声として、前記交通信号機制御手段により青時間の延長の要求が許可された場合にはその旨の音声、前記信号制御手段により青時間の延長の要求が許可されない場合にはその旨の音声を提供するものである。
【0032】
この第9の態様によれば、所定の条件を満たさない場合には青時間の延長の要求が拒否されるが、その拒否の情報が音声として視覚障害者に供給されるので、視覚障害者は適切に対応することが可能となる。
【0033】
本発明の第10の態様による横断支援システムは、前記第5乃至第8のいずれかの態様において、前記支援手段は、前記感知信号に応答して、前記横断待ち位置付近に所定の1種類以上の音声を提供する音声情報提供手段を、含むものである。
【0034】
この第10の態様によれば、視覚障害者は、視覚障害者の特別な横断の意思表示や操作を要することなく、自動的に横断に関する各種の情報を音声として受けることができる。また、この音声は、前記感知信号に応答して供給されるので、いわばオンデマンドで供給されることから、不要な時には音声の供給が行われず、好ましい。
【0035】
本発明の第11の態様による横断支援システムは、前記第9又は第10の態様において、前記音声情報提供手段は、前記所定の音声として、前記横断待ち位置に関連する地点情報を示す音声を提供するものである。前記地点情報としては、当該地点の名や当該横断歩道の距離などを挙げることができる。
【0036】
本発明の第12の態様による横断支援システムは、前記第9乃至第11のいずれかの態様において、前記音声情報提供手段は、前記所定の音声として、前記横断歩道に対する交通信号機の発光状態に応じた案内を示す音声を提供するものである。このような案内は、視覚障害者の交通安全を高める上で、好ましい。
【0037】
本発明の第13の態様による横断支援システムは、前記第9乃至第12のいずれかの態様において、前記音声情報提供手段は、前記所定の音声として、前記感知信号が得られた旨を示す音声を提供するものである。この第13の態様によれば、視覚障害者は、自動的に横断支援サービスを受け得るか否かを知ることができる。
【0038】
前記第11乃至第13の態様は、音声として供給する情報の例を挙げたものであるが、これらの例に限定されるものではない。また、前記第6乃至第13の態様は、支援手段の例を挙げたものであるが、支援手段はこれらの例に限定されるものではない。
【0039】
なお、本明細書において、音声は音響を含んでいてもよいし、音響は音声を含んでいてもよい。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による横断支援用検出装置及びこれを用いた横断支援システムについて、図面を参照して説明する。
【0041】
[第1の実施の形態]
【0042】
図1は、本発明の第1の実施の形態による横断支援システムを示す概略構成図である。
【0043】
本実施の形態による横断支援システムは、図1に示すように、横断支援用検出装置21と、交通信号機制御機51と、音声情報提供装置52とを備えている。
【0044】
まず、図2乃至図10を参照して、横断支援用検出装置21について説明する。図2は、横断支援用検出装置21を示す概略構成図である。図3は、図1及び図2に示す横断支援用検出装置21の配置例を模式的に示す概略正面図である。図4は、図3中のG−H矢視図である。なお、説明の便宜上、東西南北を図4に示すように定義する。この点は、後述する図12乃至図14についても同様である。図5は、横断支援用検出装置21と地上との関係のみを示し他を省略して模式的に示す概略断面図であり、図3中のJ−K矢視図に相当している。図6は、第1グループのLED1〜6及びこれらに対応する第1のレンズ31のみを示す図5中のA−B矢視図である。図7は、第2グループのLED7〜12及びこれらに対応する第2のレンズ32のみを示す図5中のA−B矢視図である。図8は、LED1〜12及びレンズ31,32を示す図5中のA−B矢視図である。図9は、図5中のC−D矢視図である。図10は、図5中のE−F矢視図である。
【0045】
横断支援用検出装置21は、図5乃至図10に示すように、それぞれ複数本のビームB1〜B12の光源となる複数の発光素子としての、第1グループのLED1〜6及び第2のグループのLED7〜12と、第1グループのLED1〜6に対応してそれらの前部に設けられた第1のレンズ31と、第2のグループのLED7〜12に対応してそれらの前部に設けられた第2のレンズ32と、検出すべき物体としての視覚障害者が持つ杖41に予め設けられた再帰反射材42で再帰反射された反射光を受光する受光素子としての、単一のPINフォトダイオード13と、PINフォトダイオード13の前部に配置された第3のレンズ33と、制御部22と、駆動回路23と、増幅回路24と、バンドパスフィルタ25と、判定部26と、を備えている。なお、本発明では、各グループのLEDの数や、発光素子の種類や、受光素子の種類などは、特に限定されるものではない。
【0046】
本実施の形態では、LED1〜12として、近赤外波長領域の光を発する赤外線LEDが用いられている。レンズ31〜33としては、凸レンズが用いられ、集光レンズとして作用するようになっている。装置の小型化を図るため、レンズ31〜33としてフレネルレンズを用いることが好ましい。例えば、レンズ31〜33が一体化されたレンズアレイを使用することもできる。
【0047】
図9に示すように、第1グループのLED1〜6は、PINフォトダイオード13の一方の側において、直線状に一列に配置されている。また、第2グループのLED7〜12は、PINフォトダイオード13の他方の側において、第1グループのLED1〜6の列と平行に直線状に一列に配置されている。個々のLED1〜12の向きや、レンズ31,32の焦点距離や、LED1〜6とレンズ31との位置関係や、LED7〜12とレンズ32との位置関係などが適宜調整・設定されることによって、第1グループのLED1〜6からそれぞれ発してレンズ31を通過したビームB1〜B6、及び、第2グループのLED7〜12からそれぞれ発してレンズ32を通過したビームB7〜B12は、図5乃至図8及び図10に示すように、照射されるようになっている。
【0048】
すなわち、ビームB1〜B12は、図5に示すように、上方から鉛直方向に対して斜めに照射される。ビームB1〜B12の鉛直方向に対する傾き角は、略々30゜となっている。なお、図5では、ビームB1〜B12を平行光束として示しているが、ビームB1〜B12は、拡散光束であってもよいことは言うまでもない。また、杖41の再帰反射材42の高さhと同じ高さの水平面P(図5参照)内における、ビームB1〜B12の各照射領域は、図6乃至図8中の右側の円形で示すとともに、図10中の円形で示すように、直線状に隙間をあけることなく一部重複して並んでいる。なお、図10では、ビームB1〜B12については、水平面P内での各照射領域のみを示している。水平面P内のビームB1〜B6の各照射領域は図6に示すように隙間をあけて並び、水平面P内のビームB7〜B12の各照射領域は図7に示すように隙間をあけて並ぶが、図8及び図10に示すように、これらの照射領域が交互に並ぶことによって、全体として直線状に隙間をあけることなく一部重複して並んでいる。もっとも、水平面P内のビームB1〜B12の各照射領域は、隙間をあけることなくかつ重複することなく並んでもよいし、若干隙間をあけて並んでもよい。
【0049】
本実施の形態では、前述したように、図9に示すように、第1グループのLED1〜6と第2グループのLED7〜12とがPINフォトダイオード13を挟んでその両側に配置されていることから、各LED1〜12とPINフォトダイオード13との間隔が狭まっている。このため、再帰反射材42は照射光の方向と略同一方向にのみ高輝度光を反射(再帰反射)する特性を有していることから、PINフォトダイオード13が、各LED1〜12から発して再帰反射材42で再帰反射した反射光を効率良く受光することができ、好ましい。
【0050】
本実施の形態では、水平面P内のビームB1〜B12の照射領域が全体として、監視領域(検出エリア)100を構成している。すなわち、本実施の形態では、監視領域100は直線状の帯状領域となっており、水平面P内のビームB1〜B12の各照射領域は、監視領域内の個々の個別領域となっている。
【0051】
図2中の制御部22は、例えば十数kHzの基準パルスを発生する。この基準パルスは、ビームB1〜B12の変調信号として用いられる。制御部22は、この基準パルスに基づいて、LED1〜12をそれぞれ点灯制御するための点灯制御信号を生成し、これらの点灯制御信号を駆動回路23及び判定部26に供給する。本実施の形態では、各LED1〜12の点灯制御信号は、基準パルスの8パルスずつを順次巡回的に振り分けたものとなっている。駆動回路23は、制御部22から供給された各LED1〜12用の点灯制御信号に従って、各LED1〜12を点灯駆動する。したがって、各点灯制御信号が「ハイ」の時に当該点灯制御信号に対応するLEDが点灯し、当該LEDに対応するビームが照射されることになる。このため、本実施の形態では、基準パルスの8パルス分の期間が各ビーム発生期間となっており、各ビームB1〜B12は、当該ビーム発生期間において8回パルス状に照射され、前記基準パルスで変調された変調光として照射される。また、ビームB1〜B12は、1つずつ順次照射され、互いに異なるタイミングで照射される。このように、本実施の形態では、全てのビームB1〜B12が互いに異なるタイミングで同じ変調光として照射されるが、本発明では、ビームB1〜B12のうちの2つ以上のビームが、互いに異なるタイミングで、あるいは、互いに異なる変調光として、あるいは、互いに異なるタイミングでかつ互いに異なる変調光として、照射すればよい。
【0052】
以上の説明からわかるように、本実施の形態では、LED1〜12、レンズ31,32、制御部22及び駆動回路23が、所定の監視領域内の個々の複数の個別領域にそれぞれ複数本のビームB1〜B12を、互いに異なるタイミングで照射する照射手段を、構成している。また、本実施の形態では、PINフォトダイオード13及びレンズ33が、検出すべき物体としての杖41に予め設けられた再帰反射材42であって前記ビームB1〜B12を再帰反射する再帰反射材42からの、反射光を受光する受光手段を、構成している。
【0053】
図2中の増幅回路24は、PINフォトダイオード13からの受光信号を増幅する。バンドパスフィルタ25は、増幅回路24により増幅された受光信号に対して、前記基準パルスの周波数の信号のみを濾波する。これにより、太陽光等のノイズ成分は除去される。バンドパスフィルタ25により濾波された受光信号は、判定部26に供給される。
【0054】
判定部26は、バンドパスフィルタ25により濾波された受光信号と、制御部22からの各LED1〜12用の点灯制御信号(すなわち、各LED1〜12の発光タイミング信号)とに基づいて、再帰反射材42が前記監視領域内に存在するか否かを判定し、存在する場合は感知信号(検出信号)を出力する。
【0055】
なお、前述した動作を行う制御部22及び判定部26は、例えば、PLD(Programmable Logic Device)やマイクロコンピュータ等を用いて構成することができる。
【0056】
本実施の形態によれば、撮像手段ではなく、PINフォトダイオード13及びレンズ33からなる受光手段が用いられているので、コストダウンを図ることができる。
【0057】
本実施の形態によれば、監視領域内の個々の複数の個別領域にそれぞれ複数本のビームB1〜B12が照射されるので、図5に示すように、杖41を持った視覚障害者が矢印X1方向に進行し、監視領域100内に再帰反射材42が存在するようになれば、PINフォトダイオード13は、再帰反射材42からの高輝度の反射光を受光することになる。
【0058】
そして、本実施の形態では、監視領域100の全体に一括して同じ光を照射するのではなく、複数の個別領域にそれぞれ複数のビームB1〜B12を、互いに異なるタイミングで照射する。したがって、本実施の形態は、互いに同一タイミングでかつ互いに同一の変調光として照射される領域は、監視領域のごく一部に限定される。このため、本実施の形態によれば、PINフォトダイオード13によって、再帰反射材42から反射される反射光(信号光)と一緒に、当該信号光と識別不能に受光されるノイズ光(地面、壁面その他の反射物からの反射光)が大幅に低減される。その結果、S/Nが向上し、検出精度が高まる。
【0059】
このように、本実施の形態によれば、撮像手段を用いずにコストダウンを図ることができ、しかも検出精度を高めることができる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、前述したように監視領域100が帯状領域であるので、この帯状領域を通過しようとした杖41を検出することができるとともに、照射するビームB1〜B12の本数を減らすことができ、照射手段をより安価に構成することができる。しかも、複数のビームB1〜B12がそれぞれ照射する個別領域が当該帯状の領域の延びる方向に沿って実質的に隙間をあけることなく並ぶように、複数のビームB1〜B12が照射されるので、杖41の検出漏れを防止することができる。
【0061】
さらにまた、本実施の形態によれば、ビームB1〜B12を上方から鉛直方向に対して斜めに照射するので、当該杖の先端が視覚障害者が進行する方向に斜め下方に差し出されることから、所定方向X1に進行する場合にのみ当該杖41を検出することができる。したがって、進行方向に応じた案内等を行う際に、適している。
【0062】
この点について、図11を参照して説明する。図11(a)は、図5に示す状態から杖41を持った人が矢印X1の方向に進行して、監視領域100内に到達した状況を示している。この場合、再帰反射材42とビームB1〜B12との傾きの関係から、再帰反射材42はLED1〜12に対して視覚障害者の体の影にならないとともに、ビームB1〜B12のうち再帰反射材42を照射する光束の断面積が大きくなり、再帰反射材42で反射されてPINフォトダイオード13により受光される光量が大きくなるため、再帰反射材42が検出される。図11(b)は、杖41を持った人が逆方向(矢印X2)の方向に進行して、監視領域100内に到達した状況を示している。この場合、再帰反射材42とビームB1〜B12との傾きの関係から、再帰反射材42はLED1〜12に対して視覚障害者の体の影になり易く、しかも、たとえ影にならなかったとしても、図11(b)に示すように、ビームB1〜B12のうち再帰反射材42を照射する光束の断面積が小さくなり、再帰反射材42で反射されてPINフォトダイオード13により受光される光量が小さくなるため、再帰反射材42が検出されない。
【0063】
特に、本実施の形態では、ビームB1〜B12の鉛直方向に対する傾き角が、略々30゜となっているので、所定方向X1に進行する場合にのみ当該杖41を検出する上で好ましいとともに、再帰反射材42が他の人の影に隠れ難くすることができる。この傾き角は、20゜以上40゜以下であってもよいが、25゜以上35゜以下であることがより一層好ましい。
【0064】
以上の説明では、地上に対する横断支援用検出装置21の位置関係について説明した。本実施の形態では、この地上に対する位置関係を保ちながら、横断歩道60の付近の点字ブロック(視覚障害者誘導用ブロック)61,62を基準にして図3及び図4に示すように横断支援用検出装置21が設置されている。
【0065】
図4は、十字路の交差点付近の歩道のコーナー付近の例を示している。図4において、60aは横断歩道60を示す白線、63は車道、64は歩道である。また、61は、表面に点状の突起が形成された点状の点字ブロックであり、主に注意すべき位置や誘導対象施設等の位置を示すものである。さらに、62は、表面に誘導方向に沿って延びた平行な線状の突起が形成された線状の点字ブロックである。図4に示す例では、横断歩道60側(北側)の2列の点状の点字ブロック61が横断歩道60に対する横断待ち位置を示している。また、2列に南北方向に延びるように配置された線状の点字ブロック62が、視覚障害者を前記横断待ち位置に誘導するようになっている。
【0066】
このため、横断歩道60を横断しようとする視覚障害者は、線状の点字ブロック62に沿って南から北へ移動して、点状の点字ブロック61の横断待ち位置に来る。図3及び図4に示すように、本実施の形態では、この移動の際に前記横断待ち位置の手前において視覚障害者が持つ杖41に設けられた再帰反射材42が通過することになる位置付近に、監視領域100が水平面P内において、視覚障害者の進行方向(南北方向)に対して交差する方向(本実施の形態では、直交する方向(東西方向))に帯状に延びるように、かつ、前記ビームB1〜B12が当該視覚障害者の前方から(本例では北から)でかつ斜め上方から照射されるように、横断支援用検出装置21(特にそのLED1〜12)が設置されている。また、監視領域100の前記交差する方向(東西方向)の長さが、ちょうど点字ブロック62上をカバーする程度に設定されている。このため、再帰反射材42の検出漏れを防止しつつ、ビームB1〜B12の本数を低減させてコストダウンを図ることができる。
【0067】
このような横断支援用検出装置21の設置は、横断歩道60付近の歩道64に立設した支柱65に固定したアーム66により支持することによって、実現されている。アーム66には、図1中の音声情報提供装置52の後述するスピーカー56も取り付けられている。支柱66には、横断歩道60に対する歩行者用交通信号機67(横断歩道60を北側から横断する人が見るためのもの)、及び、音声情報提供装置52の残りの部分53〜55を収容したボックス68も、取り付けられている。
【0068】
この横断支援用検出装置21によれば、複数本のビームB1〜B12によって帯状の監視領域100を形成するので、監視領域100を所望の領域に限定的に形成することができ、それにより誤検出の可能性を低減することができる。そして、横断歩道60を横断しようとする視覚障害者が点字ブロック62に沿って横断歩道60に対する横断待ち位置に移動して来る際に、前記横断待ち位置の手前において視覚障害者が持つ杖41の再帰反射材42が通過することになる位置付近に、監視領域100が水平面P内において視覚障害者の進行方向(南北方向)に対して直交する方向に帯状に延びるように、横断支援用検出装置21(特に、そのLED1〜12)が設置されている。したがって、横断歩道60を横断しようとする視覚障害者の杖41の再帰反射材42を、精度良く検出することができる。
【0069】
単にそれのみでは、ビームB1〜B12の鉛直方向に対して傾く向き等によっては、横断歩道60を北側から南側に渡り終えてきた視覚障害者の杖41の再帰反射材42も、検出してしまう可能性が高くなる。しかし、本実施の形態によれば、ビームB1〜B12が当該視覚障害者の前方からでかつ斜め上方から照射されるように、横断支援用検出装置21が設置されている。このため、横断歩道60を北側から南側に渡り終えてきた視覚障害者の杖41の再帰反射材42は、LED1〜12に対して当該視覚障害者の体の影になり易く、しかも、たとえ影にならなかったとしても、図11を参照して既に説明したように、杖41の先端が視覚障害者が進行する方向に斜め下方に差し出されることから、当該再帰反射材42で反射される光量が小さくなるため、横断歩道60を渡り終えてきた視覚障害者の杖の再帰反射材42は、ほとんど検出されない。
【0070】
本実施の形態によれば、以上のように再帰反射材42を設けた杖41を適切に検出することにより、横断歩道60の近くにいて横断歩道60を横断しようとする視覚障害者の横断の意思を、精度良く自動的に検出することができる。
【0071】
図12乃至図14はそれぞれ、横断支援用検出装置21の他の配置例を示す概略平面図であり、図4に対応している。図12乃至図14において、図4中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0072】
図3及び図4に示す配置例は、監視領域100が水平面P内において視覚障害者の進行方向(南北方向)に対して直交する方向に延びており、検出漏れを生ずることなく監視領域100の長さを最上限に抑えることができるので、理想的なものである。
【0073】
しかしながら、例えば、図12に示すように、歩道64が狭い場合には、図12に示すように点字ブロック61,62が配置される。この場合、横断歩道60を横断しようとする視覚障害者は、線状の点字ブロック62に沿って西から東へ移動し、経路のコーナーとなる点状の点字ブロック61で方向を北に変えて線状の点字ブロック62を経て横断待ち位置の点状の点字ブロック61まで移動する。
【0074】
この場合、視覚障害者がコーナーの点状の点字ブロック61で北へ方向を変えてから横断待ち位置の点状のブロックへ至るまでの距離が短いので、図4に示す配置を実現することができない。そこで、図12に示す例では、水平面P内において東西方向に対して傾くように、横断支援用検出装置21を設置する。この場合、ビームB1〜B12が当該視覚障害者の斜め前の方からでかつ斜め上方から照射されるようになっている。この場合も、監視領域100の長さがちょうど点字ブロック61,62上の領域をカバーする程度に設定しているが、監視領域100が水平面P内において傾いているので、監視領域100の長さは図4の場合に比べて長くなっている。しかしながら、図12に示す場合も図4の場合と同様の利点が得られる。
【0075】
図13の例も図12の例と同様に歩道が狭い場合の配置例を示している。図13の場合には、図12では経路のコーナーとなっていた点状の点字ブロック61の南側に南北方向へ視覚障害者を誘導する線状の点字ブロック62が追加されている。これに伴い、図13の例では、監視領域100が水平面P内において東西方向に対して図12の場合と逆に傾けられている。
【0076】
図13の場合にも図12の場合と同様の利点が得られるのみならず、次の利点も得られる。図13の例では、線状の点字ブロック62に沿って西から東へ移動し、交差部となる点状の点字ブロック61で南へ方向を変えて線状の点字ブロック62に沿って移動する視覚障害者は、横断歩道60を横断する意思がない。この視覚障害者は、線状の点字ブロック62に沿って西から東へ移動する際に、点字ブロック62のもっとも北寄りの縁に沿って移動すると、図13中のA点を通過することが考えられる。このとき、監視領域100が水平面P内において図12と同じ側に傾斜していたとすれば、当該視覚障害者の杖の再帰反射材42は、誤検出される可能性がある。これに対し、図13の例では、図11に関連して説明した原理に従い、当該視覚障害者の杖41の再帰反射材42は、誤検出される可能性がほとんどなくなる。
【0077】
図14に示す配置例は、図4に示す例と図13に示す例とを複合させた例である。この場合、図13の例の利点をより具体的に述べることができる。つまり、北から南へ移動して北側の横断歩道60を横断して来た後に、東側の横断歩道を渡ろうとする視覚障害者の杖41の再帰反射材42は、北側に設置した横断支援用検出装置21により誤検出される可能性はほとんどない。また、東から西へ移動して東側の横断歩道60を横断してきた後に、交差部を示す点状の点字ブロック61を経て、線状の点字ブロック62に沿って西へ向かう視覚障害者は、交差部を示す点状の点字ブロック61を行き過ぎてから、線状の点字ブロック62に沿って西へ向かわない限り、北側に設置した横断支援用検出装置21により誤検出される可能性はほとんどない。
【0078】
以上、横断支援用検出装置21とその配置の変形例について、詳細に述べた。
【0079】
再び図1を参照して、本実施の形態による横断支援システムの他の要素について説明する。
【0080】
本実施の形態では、交通信号機制御51は、一定の制御パターンを定周期で絶えず繰り返す信号制御を行うものであり、当該交差点付近の各歩行者用交通信号機(そのうちの1つのみを、図3中に符号67を付して示している。)及び各車両用交通信号機(図示せず)に交通信号機制御信号を与えて、それらの発光状態を制御する。
【0081】
図1中の音声情報提供装置52は、横断支援用検出装置21からの感知信号に応答して、横断歩道60に対する横断待ち位置付近に、所定の音声を提供する。音声情報提供装置52は、横断支援用検出装置21からの感知信号と当該横断歩道60に対する歩行者用交通信号機67に供給される交通信号機制御信号(当該歩行者用交通信号機67の発光状態を示す信号に相当)とに基づいて、音声の発生・停止を示すとともに発生すべき音声を選択する制御を行う制御部53と、制御部53による制御に従って音声信号を発生させる音声発生処理部54と、音声発生処理部54で発生された音声信号を増幅するアンプ55と、増幅された音声信号を音声に変換するスピーカー56と、を備えている。スピーカー56から出力される音声の音量は、正常な聴力を有するものが、該当する点状の点字ブロック61上において聴取できる程度のなるべく小さな音が望ましい。また、交差点の場合は、横断歩道60の幅員内で、かつ、その中央から交差点に対して外側寄りとすることが好ましい。これは、交差点内の他の箇所の音声情報提供装置52同士が混同しないようにするためである。
【0082】
例えば、音声情報提供装置52は、音声情報提供装置52から感知信号が得られたときに、その旨を示す「ピピ」という音声を提供し、さらに、「ここは、○○交差点です」や「この横断歩道は○メートルです」(横断歩道60の距離)などの当該横断歩道60の位置に関連する地点情報を示す音声を出力する。また、音声情報提供装置52は、音声情報提供装置52から感知信号に応答して、音声情報提供装置52から感知信号に応答して、当該横断歩道60に対する歩行者用交通信号機が青になった初頭に、「ピンポン、信号が青になりました」などの横断開始メッセージの音声を提供し、信号機の青が点滅しているときに「信号が赤に変わります」などの横断注意メッセージの音声を提供し、信号機が赤であれば「信号は赤です」などの横断禁止メッセージや「青になるまでしばらくお待ちください。」の音声を提供する。これらは、歩行者用交通信号機の発光状態に応じた案内の例である。
【0083】
音声情報提供装置52は、前述した一連の音声を提供した後、横断支援用検出装置21から感知信号が引き続き得られなければ、次回に感知信号が得られるまで、音声を提供しない。
【0084】
本実施の形態によれば、横断支援用検出装置からの感知信号に応答して、横断歩道60を横断しようとする前記視覚障害者の横断を支援するための動作として、前述した音声が提供されるので、横断歩道を横断しようとする視覚障害者に対して、視覚障害者の特別な横断の意思表示や操作を要することなく、自動的により適切に横断歩道の横断の案内等を行うことができ、ひいては視覚障害者の横断の際の安全性を高めることができる。また、感知信号に応答して音声情報の提供が行われるので、いわばオンデマンドでその提供が行われることから、不要な時には音声が提供されず、好ましい。
【0085】
なお、本発明では、本実施の形態を次のように変形してもよい。すなわち、図1に示す構成において、音声情報提供装置52を、歩行者用交通信号機の発光状態に応じた案内を行わずに、例えば地点情報に関する音声のみ提供するように、構成してもよい。この場合の横断支援システムは、交通信号機制御制御機51を含んでいなくてもよい。
【0086】
このように変形した横断支援システムと同じ構成を有するシステムを、監視領域100が点字ブロック付近の所望の場所(例えば、歩道橋の手前の位置等の分岐点や、線状の点字ブロックが真っ直ぐ続くが何らかの情報を提供することが好ましい場所など)となるように、設置し、提供すべき音声の内容を当該地点に関連した内容に設定してもよい。このシステムによれば、視覚障害者の特別な横断の意思表示や操作を要することなく、視覚障害者が対して当該場所に関連した音声情報を提供することができる。そして、例えば、歩道橋の出入り口付近に設置すれば、歩道橋をこれから利用する可能性がある視覚障害者に対してのみ歩道橋に関する案内の音声情報を提供し、歩道橋から降りてきた視覚障害者に対してはそのような案内を行わないというような、運用が可能となる。
【0087】
[第2の実施の形態]
【0088】
図15は、本発明の第2の実施の形態による横断支援システムを示す概略構成図である。図15において、図1中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0089】
本実施の形態による横断支援システムが前記第1の実施の形態と異なる所は、以下に説明する点のみである。
【0090】
すなわち、本実施の形態では、交通信号機制御51は、いわゆる定周期のものではなく、後述するような弱者感応機能を有している。また、本実施の形態では、弱者用押しボタン箱72及び視覚障害者用交通信号付加装置71が追加されている。図面には示していないが、弱者用押しボタン箱72は前記支柱65に取り付けられ、視覚障害者用交通信号付加装置71のスピーカー76は前記アーム66に取り付けられ、視覚障害者用交通信号付加装置71の残りの部分73〜75を収容したボックスが前記支柱に取り付けられる。
【0091】
視覚障害者用交通信号付加装置71は、横断支援用検出装置21からの感知信号に応答して、当該横断歩道60を横断可能な期間(当該横断歩道60に対する歩行者用交通信号機が青の期間)に、横断歩道60内に向けて横断歩道60内の視覚障害者を誘導するための所定の音響(例えば、「ピヨピヨ」や「カッコー」など)を出力する。
【0092】
本実施の形態では、視覚障害者用交通信号付加装置71は、横断支援用検出装置21からの感知信号と当該横断歩道60に対する歩行者用交通信号機67に供給される交通信号機制御信号(当該歩行者用交通信号機67の発光状態を示す信号に相当)とに基づいて、音響の発生・停止を示すとともに発生すべき音響を選択する制御を行う制御部73と、制御部73による制御に従って音響信号を発生させる音響発生処理部74と、音響発生処理部74で発生された音声信号を増幅するアンプ75と、増幅された音声信号を音声に変換するスピーカー76と、を備えている。スピーカー76から出力される音声の音量は、正常な聴力を有するものが横断歩道60内において十分に聴取できる程度に設定される。横断歩道60の両端で1対のスピーカー76が設けられ、これらが1つの制御部73により制御されるが、図15では、要素74〜76は1組しか示していない。
【0093】
視覚障害者用交通信号付加装置71は、横断支援用検出装置21からの感知信号に応答して、横断可能期間に前記音響を出力した後、横断支援用検出装置21から感知信号が引き続き得られなければ、次回に感知信号が得られるまで、音響を発しない。
【0094】
弱者用押しボタン箱72には、視覚障害者や車椅子利用者や高齢者などの交通弱者が押す押しボタンスイッチ81の他、要求・許可処理部77、音響発生処理部78、アンプ79及びスピーカー80が収容されている。
【0095】
要求・許可処理部77は、押しボタンスイッチ81が押されたときに、当該横断歩道60に対する歩行者用交通信号機を青に切り替える要求及びその青時間の延長の要求を示す青延長要求信号を、交通信号機制御機51に供給する。また、要求・許可処理部77は、横断支援用検出装置21から感知信号が得られたときにも前記青延長要求信号を、交通信号機制御機51に出力する。すなわち、本実施の形態では、交通信号機制御機51は、要求・許可処理部77を介して、横断支援用検出装置21から感知信号を前記青延長要求信号として受信する。
【0096】
交通信号機制御機51は、この青延長要求信号を受信すると、これに応答して所定のタイミングで当該歩行者用交通信号機を青に切り替える。また、交通信号機制御機51は、受信した青延長要求信号に応答して、現在の制御状況及び所定の条件に基づいて、青時間の延長の要求を許可するか否かを判定する。交通信号機制御機51は、許可しない場合は青時間を延長することなく青時間を通常の時間のままとする。一方、許可した場合は、その旨を示す青延長許可信号を要求・許可処理部77及び音声情報提供装置52に供給するとともに、青時間を延長するように各交通信号機を制御する。このような交通信号機制御機51の機能が、弱者感応機能である。
【0097】
要求・許可処理部77は、青延長許可信号を受けると、音響発生処理部78を作動させる。これにより、音響発生処理部78から音響信号が発生され、この信号がアンプ79により増幅され、スピーカー80に供給される。これにより、スピーカー80から青時間の延長が許可された旨の音響、例えば「ピピピピピ」などが発せられる。また、音声情報提供装置52の制御部53は、青延長許可信号を受けると、音声発生処理部54を制御してスピーカー56から、例えば、「青時間が延長されます」などの音声を提供する。なお、音声情報提供装置52は、これ以外の動作については、前記第1の実施の形態の場合と同様である。なお、音声情報提供装置52の構成は、図1の場合と同様であるので、図15には示していない。
【0098】
本実施の形態によれば、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる他、次の利点が得られる。すなわち、本実施の形態によれば、視覚障害者用交通信号付加装置71からの音響の出力により横断歩道60内の視覚障害者を適切に誘導することができ、しかも、音響は横断支援用検出装置21からの感知信号に応答して出力されるので、いわばオンデマンドで音響が出力されることから、不要な時には音響が出力されず、近隣に対する騒音を低減することができる。
【0099】
また、本実施の形態による横断支援用検出装置21からの感知信号が青延長要求信号として取り扱われるので、視覚障害者は、特別な横断の意思表示や操作を要することなく、自動的に長い横断時間を得ることが可能となる。
【0100】
[第3の実施の形態]
【0101】
図16は、本発明の第3の実施の形態による横断支援システムにおいて用いられる横断支援用検出装置を示す概略構成図である。図17は、図16中のカメラの配置例を示す概略平面図であり、図4に対応している。図17において、図4中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0102】
本実施の形態による横断支援システムが前記第1の実施の形態と異なる所は、前述した横断支援用検出装置21に代えて、図16に示す横断支援用検出装置が用いられている点のみである。なお、本実施の形態では、杖41には、再帰反射材42を設けておく必要はない。
【0103】
図16に示す横断支援用検出装置は、撮像手段としてのカメラ91と、カメラ91から得られた画像信号をA/D変換するA/D変換器92と、A/D変換された画像信号を記憶する画像メモリ93と、マイクロコンピュータ等からなる処理部94とを備えている。
【0104】
カメラ91は、図17に示すように、横断支援用検出装置21に代えてアーム66に取り付けられ、監視領域200を撮像するように設置されている。図17の場合も、図4の場合と同じく、横断歩道60を横断しようとする視覚障害者は、線状の点字ブロック62に沿って南から北へ移動して、点状の点字ブロック61の横断待ち位置に来る。図17に示すように、本実施の形態では、監視領域200は、この移動の際に前記横断待ち位置の手前において視覚障害者が持つ杖41が通過することになる位置付近に、設定されている。本実施の形態では、監視領域200は、南北方向に杖41よりも長い長さを有し、これにより、撮像された画像に基づいて監視領域200内の杖41の存在と杖41の北方向への移動を認識することが可能となっている。
【0105】
カメラ91は、例えば、近赤外光に感度を有するものを用いることができる。カメラ91は所定周期で撮像を繰り返し、その画像がA/D変換器92を介して順次画像メモリ93に記憶されるようになっている。
【0106】
処理部94は、画像メモリ93に記憶された画像に基づいて、監視領域200内に杖41が存在し、かつ、杖41の移動方向が前記視覚障害者が横断歩道60側へ向かう場合に対応したものであるという条件を、満たすか否かを判定し、満たした場合に感知信号を出力する。
【0107】
具体的には、例えば、処理部94は、画像メモリ93に新たな画像が記憶される度に、最新の画像を処理して杖41をパターン認識する。この認識は、例えば、杖の形状に起因する特徴量に基づいて行うことができる。そして、処理部94は、最新の画像と前回の画像の両方について杖41を認識することができた場合、両方の画像について得た杖41の像の重心等の所定の位置を比較することにより移動方向を算出する。処理部94は、算出した移動方向が例えば北西の方向から北東の方向の間であれば、感知信号を出力する。
【0108】
本実施の形態によれば、LEDに比べて高価なカメラ91を使用してパターン認識等の複雑な画像処理を行うので、前記第1の実施の形態に比べればコストアップを免れないが、その点を除けば、本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。
【0109】
なお、前記第2の実施の形態において、横断支援用検出装置21に代えて、図16に示す横断支援用検出装置21を用いてもよいことは、言うまでもない。
【0110】
以上、本発明の各実施の形態とそれらの変形例について説明したが、本発明はこれらの実施の形態又は変形例に限定されるものではない。
【0111】
例えば、前記第2の実施の形態において、視覚障害者用交通信号付加装置71を取り除いてもよい。また、交通信号機制御機51は青時間の延長を常に認めないものとし、押しボタンスイッチ81の信号や横断支援用検出装置21からの感知信号を、青切り替え要求を示す青要求信号として受信し、切り替え制御のみを行ってもよい。
【0112】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、視覚障害者の杖を適切に検出することにより、横断歩道の近くにいて横断歩道を横断しようとする視覚障害者の横断の意思を、精度良く自動的に検出することができる横断支援用検出装置を提供することができる。
【0113】
また、本発明によれば、このような横断支援用検出装置を用いることによって、横断歩道を横断しようとする視覚障害者に対して、視覚障害者の特別な横断の意思表示や操作を要することなく、自動的により適切に横断歩道の横断の支援を行うことができ、ひいては視覚障害者の横断の際の安全性を高めることができる、横断支援システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による横断支援システムを示す概略構成図である。
【図2】図1中の横断支援用検出装置を示す概略構成図である。
【図3】図1及び図2に示す横断支援用検出装置の配置例を模式的に示す概略正面図である。
【図4】図3中のG−H矢視図である。
【図5】図1中の横断支援用検出装置と地上との関係のみを示し他を省略して模式的に示す概略断面図である。
【図6】第1グループのLED及びこれらに対応する第1のレンズのみを示す図5中のA−B矢視図である。
【図7】第2グループのLED及びこれらに対応する第2のレンズのみを示す図5中のA−B矢視図である。
【図8】第1及び第2のグループのLED及び第1及び第2のレンズを示す図5中のA−B矢視図である。
【図9】図5中のC−D矢視図である。
【図10】図5中のE−F矢視図である。
【図11】進行方向の相違による検出の有無の様子を示す説明図である。
【図12】横断支援用検出装置の他の配置例を示す概略平面図である。
【図13】横断支援用検出装置の更に他の配置例を示す概略平面図である。
【図14】横断支援用検出装置の更に他の配置例を示す概略平面図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態による横断支援システムを示す概略構成図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態による横断支援システムにおいて用いられる横断支援用検出装置を示す概略構成図である。
【図17】図16中のカメラの配置例を示す概略平面図である。
【符号の説明】
1〜6 第1グループのLED
7〜12 第2グループのLED
13 PINフォトダイオード
21 横断支援用検出装置
22 制御部
23 駆動回路
24 増幅回路
25 バンドパスフィルタ
26 判定部
31,32,33 レンズ
41 杖
42 再帰反射材
51 交通信号機制御機
52 音声情報提供装置
71 視覚障害者用交通信号付加装置
72 弱者用押しボタン箱

Claims (14)

  1. 所定の監視領域内の個々の複数の個別領域にそれぞれ複数本のビームを照射する照射手段と、
    視覚障害者が持つ杖に予め設けられた再帰反射材であって前記ビームを再帰反射する再帰反射材からの、反射光を受光する受光手段と、
    前記受光手段からの信号に基づいて前記再帰反射材が前記監視領域内に存在するか否かを判定し、存在すると判定した場合に感知信号を出力する判定手段と、
    を備え、
    横断歩道を横断しようとする視覚障害者が点字ブロックに沿って前記横断歩道に対する横断待ち位置に移動して来る際に、前記横断待ち位置の手前において前記視覚障害者が持つ前記杖に予め設けられた前記再帰反射材が通過することになる位置付近に、前記監視領域が略水平面内において視覚障害者の進行方向に対して交差する方向に帯状に延びるように、かつ、前記複数本のビームが当該視覚障害者の前方又は斜め前の方からでかつ斜め上方から照射されるように、前記照射手段が設置されたことを特徴とする横断支援用検出装置。
  2. 前記監視領域の前記交差する方向の長さが、ちょうど前記点字ブロック上の領域をカバーする程度に設定されたことを特徴とする請求項1記載の横断支援用検出装置。
  3. 請求項1又は2記載の横断支援用検出装置と、該横断支援用検出装置からの前記感知信号に応答して、前記横断歩道を横断しようとする前記視覚障害者の横断を支援するための動作を行う支援手段と、を備えたことを特徴とする横断支援システム。
  4. 前記支援手段は、前記感知信号に応答して、前記横断歩道を横断可能な期間に、前記横断歩道内に向けて当該横断歩道内の視覚障害者を誘導するための所定の音響を出力する視覚障害者用交通信号付加手段を、含むことを特徴とする請求項3記載の横断支援システム。
  5. 前記支援手段は、前記感知信号を、前記横断歩道に対する交通信号機を青に切り替える要求を示す青要求信号として受信して、この信号に基づいて交通信号機制御を行うことを特徴とする交通信号機制御手段を、含むことを特徴とする請求項3又は4記載の横断支援システム。
  6. 前記支援手段は、前記感知信号を、前記横断歩道に対する交通信号機を青に切り替える要求及びその青時間の延長の要求を示す青延長要求信号として受信して、この信号に基づいて交通信号機制御を行うことを特徴とする交通信号機制御手段を、含むことを特徴とする請求項3又は4記載の横断支援システム。
  7. 横断歩道を横断しようとする視覚障害者が点字ブロックに沿って前記横断歩道に対する横断待ち位置に移動して来る際に、前記横断待ち位置の手前において前記視覚障害者が持つ前記杖あるいは前記杖に設けられた再帰反射材又はその他の部材が通過することになる位置付近の、所定の監視領域内に、前記杖あるいは前記再帰反射材又は前記その他の部材が存在し、かつ、前記杖あるいは前記再帰反射材又は前記その他の部材の移動方向又は向きが前記視覚障害者が前記横断歩道側へ向かう場合に対応したものであることを条件として、感知信号を出力する横断支援用検出装置と、
    該横断支援用検出装置からの前記感知信号に応答して、前記横断歩道を横断しようとする前記視覚障害者の横断を支援するための動作を行う支援手段と、
    を備え、
    前記支援手段は、前記感知信号を、前記横断歩道に対する交通信号機を青に切り替える要求及びその青時間の延長の要求を示す青延長要求信号として受信して、この信号に基づいて交通信号機制御を行うことを特徴とする交通信号機制御手段を、含むことを特徴とする横断支援システム。
  8. 前記横断支援用検出装置は、前記監視領域を撮像する撮像手段と、該撮像手段により撮像された画像に基づいて前記条件を満たすか否かを判定する手段と、を備えたことを特徴とする請求項7記載の横断支援システム。
  9. 前記支援手段は、前記感知信号に応答して、前記横断歩道を横断可能な期間に、前記横断歩道内に向けて当該横断歩道内の視覚障害者を誘導するための所定の音響を出力する視覚障害者用交通信号付加手段を、含むことを特徴とする請求項8記載の横断支援システム。
  10. 前記交通信号機制御手段は、前記感知信号による青時間の延長の要求を許可するか否かを判定し、許可する場合には青時間を延長する交通信号機制御を行う一方、許可しない場合には青時間を延長しない交通信号機制御を行い、
    前記支援手段は、前記感知信号に応答して、前記横断待ち位置付近に所定の1種類以上の音声を提供する音声情報提供手段を含み、
    前記音声情報提供手段は、前記所定の音声として、前記交通信号機制御手段により青時間の延長の要求が許可された場合にはその旨の音声、前記信号制御手段により青時間の延長の要求が許可されない場合にはその旨の音声を提供することを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の横断支援システム。
  11. 前記支援手段は、前記感知信号に応答して、前記横断待ち位置付近に所定の1種類以上の音声を提供する音声情報提供手段を、含むことを特徴とする請求項3乃至9のいずれかに記載の横断支援システム。
  12. 前記音声情報提供手段は、前記所定の音声として、前記横断待ち位置に関連する地点情報を示す音声を提供することを特徴とする請求項10又は11記載の横断支援システム。
  13. 前記音声情報提供手段は、前記所定の音声として、前記横断歩道に対する交通信号機の発光状態に応じた案内を示す音声を提供することを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の横断支援システム。
  14. 前記音声情報提供手段は、前記所定の音声として、前記感知信号が得られた旨を示す音声を提供することを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載の横断支援システム。
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