本発明は、ラット由来、ヒト由来およびマウス由来のNPC1L1ポリペプチドを、それぞれのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとともに包含する。ラットNPC1L1ポリペプチドは配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み、ヒトNPC1L1は配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、マウスNPC1L1ポリペプチドは配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むことが好ましい。配列番号1または配列番号10のラットNPC1L1ポリヌクレオチドはラットNPC1L1ポリペプチドをコードする。配列番号3のヒトNPC1L1ポリヌクレオチドはヒトNPC1L1ポリペプチドをコードする。配列番号11または配列番号13のマウスNPC1L1ポリヌクレオチドはマウスNPC1L1ポリペプチドをコードする。
本発明は、以下の表1において言及されるヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を含む、全ての単離ポリヌクレオチドまたは単離ポリペプチドを包含する。
ヒトNPC1L1はまた、Genbank受託番号AF192522の下で開示されている。以下で論じるように、配列番号1に示されるラットNPC1L1のヌクレオチド配列は、ラット空腸細胞cDNAライブラリー由来の発現配列タグ(EST)から得た。配列番号5から7は、3つの独立したcDNAクローンの部分的ヌクレオチド配列を含む。配列番号5の下流配列EST(603662080F1)を決定した。これらの試験から得た配列決定データは、配列番号8に記載している。上流配列もまた決定され、これらのデータは、配列番号9に記載している。
配列番号43および配列番号44は、それぞれ、Genbank登録番号AF192522の下で開示されているヒトNPC1L1のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列である(Daviesら、(2000)Genomics 65 (2):137から45頁参照)。
配列番号45は、Genbank登録番号AK078947の下で開示されているマウスNPC1L1のヌクレオチド配列である。
NPC1L1は、ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの腸管吸収を媒介する。患者においてNPC1L1を阻害することが、患者においてステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの腸管吸収や血清ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールを減少させるのに有用な方法である。患者においてステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの腸管吸収レベルや血清ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールのレベルを低下させることが、アテローム性動脈硬化症、特に食事性アテローム性動脈硬化症の発生を治療または予防する有用な方法である。
ここで、用語「ステロール」として、これに限らないが、コレステロールおよびフィトステロール(これに限らないが、シトステロール、カンペステロール、スチグマステロールおよびアベノステロール(avenosterol)を含む)が挙げられる。
ここで、用語「5α−スタノール」として、これに限らないが、コレスタノール、5α−カンペスタノールおよび5α−シトスタノールが挙げられる。
現在の仮説に限定されることなく、実施例によりNPC1L1とコレステロールとの間の推定分子間相互作用をよりよく理解する。この点に関して、NPC1L1のより興味深い特徴の1つが、NPC1L1がSCAP(SREBP切断−活性化タンパク質)において最初に観察されたステロール感受性ドメイン(SSD)を含むことである。SCAPは、脂質およびコレステロールホメオスタシスに関連する35を超える遺伝子を制御する転写因子であるステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)の活性化を制御する(Brown,M.S.& Goldstein,J.L.A proteolytic pathway that controls the cholesterol content of membranes,cells,and blood.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96,11041から11048頁 (1999))。SSDは、5本の推定膜貫通ヘリックスの束にある約180個のアミノ酸からなり、コレステロール生合成経路における2つの重要な酵素の調節的機能の役目も果たし、受容体パッチドに存在している。最近、コレステロールとSCAPのSSDとの高親和性結合が証明され(Radhakrishnan,A.,Sun,L.,Kwon,H.J.,Brown,M.S.& Goldstein,J.L.,「Direct binding of cholesterol to the purified membrane region of SCAP:Mechanism for a sterol−sensing domain」 Mol.Cell 15,259から268頁 (2004))、これにより、コレステロールが同様にNPC1L1のSSDとも結合できることが示唆され、エゼチミブがこの部位での結合に関してコレステロールと競争し得る可能性が高まった。
分子生物学
本発明に従って、当分野の技量の範囲内にある従来の分子生物学、微生物学、および組換えDNA技術が使用され得る。このような技術については、文献において十分に説明されている。例えば、Sambrook,Fritsch & Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition (1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York (ここでは「Sambrookら、1989」);DNA Cloning :A Practical Approach,Volumes I and II (D.N.Glover編 1985);Oligonucleotide Synthesis (M.J.Gait編 1984);Nucleic Acid Hybridization (B.D.Hames & S.J.Higgins編 (1985));Transcription And Translation (B.D.Hames & S.J.Higgins編 (1984));Animal Cell Culture (R.I.Freshney編 (1986));Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press,(1986));B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning (1984);F.M.Ausubelら(編),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.(1994)参照。
配列番号10および配列番号13の逆翻訳配列では、特許審査手続マニュアルのPCT実施細則の付属書2付録Cの表1に示される1文字表記を使用する。
「ポリヌクレオチド」、「核酸」または「核酸分子」とは、一本鎖型、二本鎖型、または他の型の、リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジンもしくはシチジン;「RNA分子」)またはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジンもしくはデオキシシチジン;「DNA分子」)のリン酸エステル多量体型、またはこれらのいずれかのホスホエステル類似体、例えばホスホロチオエートおよびチオエステルを指す。
「ポリヌクレオチド配列」、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」は、核酸、例えばDNAまたはRNA中の一連のヌクレオチド塩基(「ヌクレオチド」とも呼ばれる)であり、2個以上のヌクレオチドの任意の鎖を意味する。
「コード配列」または発現生成物、例えばRNA、ポリペプチド、タンパク質もしくは酵素を「コードする」配列は、発現された場合にこの生成物の生産をもたらすヌクレオチド配列である。
用語「遺伝子」とは、1種またはそれ以上のRNA分子、タンパク質もしくは酵素の全てもしくは一部を含むリボヌクレオチドもしくはアミノ酸の特定の配列をコードするか、またはこの特定の配列に対応するDNA配列を意味する。このDNA配列は、例えば、この遺伝子が発現される条件を決定する調節DNA配列、例えばプロモーター配列を含む場合も含まない場合もある。遺伝子は、DNAからRNAへと転写され得るが、このRNAは、アミノ酸配列に翻訳される場合も翻訳されない場合もある。
本発明は、配列番号1、配列番号5から11または配列番号13のうちのいずれかの核酸断片を包含する。核酸「断片」とは、配列番号1、配列番号5から11または配列番号13のうちのいずれか由来の少なくとも約30個(例えば、31、32、33、34個)、好ましくは少なくとも約35個(例えば、25、26、27、28、29、30、31、32、33または34個)、より好ましくは少なくとも約45個(35、36、37、38、39、40、41、42、43または44個)、および最も好ましくは少なくとも約126個以上の連続するヌクレオチド(130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、150、160、170、180、190、200、300、400、500、1000または1200個)を含む。
本発明はまた、配列番号1、配列番号5から11または配列番号13のうちのいずれか由来の少なくとも7個(例えば、9、12、17、19個)、好ましくは少なくとも約20個(例えば、30、40、50、60個)、より好ましくは約70個(例えば、80、90、95個)、さらに好ましくは少なくとも約100個(例えば、105、110、114個)さらに好ましくは少なくとも約115個(117、119、120、122、124、125、126個)の連続するヌクレオチドからなる核酸断片も包含する。
ここで、用語「オリゴヌクレオチド」とは、注目する遺伝子、mRNA、cDNAまたは他の核酸をコードするゲノムDNA分子、cDNA分子またはmRNA分子とハイブリダイズ可能であり得る、一般にせいぜい約100個のヌクレオチド(例えば、30、40、50、60、70、80または90個)の核酸を指す。オリゴヌクレオチドは、例えば、32P−ヌクレオチド、3H−ヌクレオチド、14C−ヌクレオチド、35S−ヌクレオチドまたはビオチンなどの標識が共有結合されているヌクレオチドを組み込むことによって標識できる。一実施態様では、標識したオリゴヌクレオチドを、核酸の存在を検出するためのプローブとして使用できる。もう1つの実施態様では、全長遺伝子または遺伝子断片をクローニングするために、または核酸の存在を検出するために、オリゴヌクレオチド(この一方または両方が標識されている場合がある)をPCRプライマーとして使用できる。一般に、オリゴヌクレオチドは、合成により、好ましくは核酸合成装置において調製する。
「タンパク質配列」、「ペプチド配列」もしくは「ポリペプチド配列」または「アミノ酸配列」とは、タンパク質、ペプチド、またはポリペプチド中にある連続した2個以上のアミノ酸を指す。
「タンパク質」、「ペプチド」または「ポリペプチド」は、2個以上のアミノ酸の連続した鎖を含む。本発明の好ましいペプチドには、配列番号2または配列番号12のいずれかに示されるペプチド、ならびにこれらの変異体および断片が含まれる。このような断片は、配列番号2または配列番号12のうちのいずれか由来の少なくとも約10個(11、12、13、14、15、16、17、18または19個)、より好ましくは少なくとも約20個(21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40個)、およびさらに好ましくは少なくとも約42個(43、44、45、46、47、48、49、50、60、70、80、90、100、110、120または130個)以上の連続するアミノ酸残基を含むことが好ましい。
本発明はまた、配列番号2または配列番号12のうちのいずれか由来の少なくとも約7個(例えば、9、10、13、15、17、19個)、好ましくは少なくとも約20個(例えば、22、24、26、28個)、より好ましくは少なくとも約30個(例えば、32、34、36、38個)、およびさらに好ましくは少なくとも約40個(例えば、41、42個)の連続するアミノ酸からなるポリペプチド、好ましくは抗原ポリペプチドも包含する。
本発明のポリペプチドは、無傷のペプチドのタンパク質分解的切断により、化学合成により、または組換えDNA技術の適用によって作製することができ、タンパク質分解による切断部位によって線引きされたポリペプチドに限定されない。これらのポリペプチドは、単独で、またはこのポリペプチドの免疫原性を高めるために架橋するか、もしくは担体分子と複合体化して、抗体およびこのフラグメントの生産を惹起するための抗原として有用である。この抗体は、例えば、免疫親和性精製のため、またはNPC1L1の阻害などのためにイムノアッセイにおいて使用できる。
用語「単離ポリヌクレオチド」または「単離ポリペプチド」とは、それぞれ、細胞中にまたは組換えDNA発現系に通常見られる他の成分から部分的にもしくは完全に分離されているポリヌクレオチド(例えば、RNA分子もしくはDNA分子、または混合ポリマー)またはポリペプチドを包含する。これらの成分として、これに限らないが、細胞膜、細胞壁、リボソーム、ポリメラーゼ、血清成分および外来ゲノム配列が挙げられる。
単離ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、本質的に同種の分子組成であるが、いくらかの異成分を含み得ることが好ましい。
ここで、DNAの「増幅」とは、DNA配列の混合物内の特定のDNA配列の濃度を高めるためにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用することを示し得る。PCRの説明については、Saikiら、Science (1988)239:487頁参照。
用語「宿主細胞」とは、この細胞による物質の生産、例えば、この細胞による遺伝子、DNA配列もしくはRNA配列またはタンパク質の発現または複製のために、何らかの方法によって選択され、改変され、トランスフェクトされ、形質転換され、増殖され、または使用され、もしくは操作される、いずれかの生物のいずれかの細胞を包含する。好ましい宿主細胞として、HEK−293細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ネズミマクロファージJ774細胞、または他のいずれかのマクロファージ細胞株、およびヒト腸上皮Caco2細胞が挙げられる。
核酸のヌクレオチド配列は、当分野で公知のいずれかの方法(例えば、化学的配列決定または酵素的配列決定)によって決定できる。DNAの「化学的配列決定法」として、Maxam and Gilbert(1977)(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:560頁)の方法などが挙げられ、この方法では、個々の塩基特異的反応を利用してDNAがランダムに切断される。DNAの「酵素的配列決定法」として、Sanger(Sangerら、(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463頁)の方法などが挙げられる。
本明細書における核酸には、天然の調節(発現制御)配列をフランキングすることができ、またはプロモーター、内部リボソーム侵入部位(IRES)、および他のリボソーム結合部位配列、エンハンサー、応答エレメント、サプレッサー、シグナル配列、ポリアデニル化配列、イントロン、5’非コード領域および3’非コード領域などをはじめとする異種配列を結合することもできる。
一般に、「プロモーター」または「プロモーター配列」は、細胞においてRNAポリメラーゼと(例えば、直接または他のプロモーター結合タンパク質もしくはプロモーター結合物質を介して)結合し、コード配列の転写を開始することが可能なDNA調節領域である。プロモーター配列は、一般に、この3’末端において転写開始部位に隣接し、上流(5’方向)に延びて、任意のレベルにおいて転写を開始するために必要な最小限の数の塩基またはエレメントを含む。このプロモーター配列内には、転写開始部位(好都合なことに、例えば、ヌクレアーゼS1を用いたマッピングによって定義される)、ならびにRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が、見られる場合がある。このプロモーターは、エンハンサー配列およびレプレッサー配列をはじめとする他の発現制御配列に、または本発明の核酸に、機能し得る形態で結合できる。遺伝子発現を制御するために使用できるプロモーターとして、これに限らないが、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(米国特許第5,385,839号および同第5,168,062号)、SV40初期プロモーター領域(Benoistら、(1981)Nature 290:304から310頁)、ラウス肉腫ウイルスの3’長い末端反復配列に含まれるプロモーター(Yamamotoら、(1980)Cell 22:787から797頁)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら、(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1441から1445頁)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら、(1982)Nature 296:39から42頁);原核生物発現ベクター(β−ラクタマーゼプロモーター(Villa−Komaroffら、(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:3727から3731頁)またはtacプロモーター(DeBoerら、(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:21から25頁)など);「Useful proteins from recombinant bacteria」 Scientific American (1980)242:74から94頁もまた参照;ならびに酵母もしくは他の真菌由来のプロモーターエレメント、例えばGal4プロモーター、ADC(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーターまたはアルカリホスファターゼプロモーターが挙げられる。
コード配列は、細胞における転写制御配列および翻訳制御配列がこのコード配列の、RNAポリメラーゼが媒介するRNA、好ましくはmRNAへの転写を命令し、次いでこれが(イントロンを含む場合には)RNAスプライシングを受け、場合により、このコード配列によりコードされるタンパク質へと翻訳され得る場合に、転写制御配列よび翻訳制御配列「の制御下にある」、「と機能的に結合している」、または「に機能し得る形態で結合されている」。
用語「発現する」および「発現」とは、遺伝子、RNA配列もしくはDNA配列中の情報が現れるのを可能にすることまたはこれを引き起こすこと、例えば、対応する遺伝子の転写および翻訳に関与する細胞機能を活性化することにより、タンパク質を生産することを意味する。DNA配列は、「発現生成物」、例えばRNA(例えば、mRNA)またはタンパク質を形成するために細胞においてまたは細胞によって発現される。この発現生成物自体もまた、この細胞によって「発現される」といえる。
用語「形質転換」とは、核酸の細胞への導入を意味する。導入される遺伝子または配列は、「クローン」と呼ばれ得る。導入されるDNAまたはRNAを受け入れている宿主細胞は、「形質転換され」ており、これは、「形質転換体」または「クローン」である。宿主細胞に導入されるDNAまたはRNAは、宿主細胞と同じ属または同じ種の細胞を含む任意の供給源に由来することができ、異なる属または異なる種の細胞に由来することができる。
用語「ベクター」は、媒体(例えば、プラスミド)を包含する。これにより、宿主を形質転換し、場合によって導入された配列の発現および/または複製を促進するために、宿主細胞にDNA配列またはRNA配列を導入できる。
本発明において使用できるベクターとして、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、組込み可能なDNA断片、および宿主ゲノムへの核酸の導入を容易にできる他の媒体が挙げられる。プラスミドは、最も一般的に使用される形態のベクターであるが、同様の機能を提供し、当分野で公知であるかまたは公知となる他の全ての形態のベクターが本明細書における使用に適している。例えば、Pouwelsら、Cloning Vectors:A Laboratory Manual,1985 and Supplements,Elsevier,N.Y.,and Rodriguezら(編),Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses,1988,Buttersworth,Boston,MA参照。
用語「発現系」とは、適切な条件下で、ベクターにより保有され、宿主細胞に導入されるタンパク質または核酸を発現できる、宿主細胞および適合ベクターを意味する。一般的な発現系として、大腸菌(E.coli)宿主細胞およびプラスミドベクター、昆虫宿主細胞およびバキュロウイルスベクター、ならびに哺乳動物宿主細胞およびベクターが挙げられる。
本発明のNPC1L1ポリペプチドをコードする核酸の発現は、原核細胞または真核細胞のいずれかにおいて従来の方法により実施できる。大腸菌宿主細胞は、原核生物系において最も頻繁に使用されるが、他の多くの細菌、例えばシュードモナス属(Pseudomonas)やバチルス属(Bacillus)の種々の株が当分野で知られており、これらのものも同様に使用できる。NPC1L1ポリペプチドをコードする核酸を発現させるのに適した宿主細胞として、原核生物および高等真核生物が挙げられる。原核生物には、グラム陰性生物およびグラム陽性生物、例えば、大腸菌および枯草菌(B.subtilis)の両方が含まれる。高等真核生物には、非哺乳動物起源、例えば、昆虫細胞および鳥類と、哺乳動物起源、例えば、ヒト、霊長類および齧歯類の両方の動物細胞由来の確立された組織培養細胞系が含まれる。
原核生物宿主−ベクター系には、多くの異なる種に対する幅広い種類のベクターが含まれる。DNAを増幅するための代表的なベクターとして、pBR322または多数のこの誘導体(例えば、pUC18もしくはpUC19)がある。NPC1L1ポリペプチドを発現させるために使用できるベクターとして、これに限らないが、lacプロモーターを含むベクター(pUCシリーズ);trpプロモーターを含むベクター(pBR322−trp);Ippプロモーターを含むベクター(pINシリーズ);λ−pPプロモーターもしくはλ−pRプロモーターを含むベクター(pOTS);またはptacなどのハイブリッドプロモーターを含むベクター(pDR540)が挙げられる。Brosiusら、「Expression Vectors Employing Lambda−,trp−,lac−,and Ipp−derived Promoters」,Rodriguez and Denhardt (編)Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses,1988,Buttersworth,Boston,205から236頁参照。多くのポリペプチドは、米国特許第4,952,496号、同第5,693,489号および同第5,869,320号、ならびにDavanloo,P.ら、(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:2035から2039頁;Studier,F.W.ら、(1986)J.Mol.Biol.189:113から130頁;Rosenberg,A.H.ら、(1987)Gene 56:125から135頁およびDunn,J.J.ら、(1988)Gene 68:259頁に開示されているような、大腸菌/T7発現系において、高レベルで発現され得る。
高等真核生物組織培養細胞もまた、本発明のNPC1L1ポリペプチドの組換え生産に使用できる。昆虫バキュロウイルス発現系をはじめ、あらゆる高等真核生物組織培養細胞系を使用できるが、哺乳動物細胞が好ましい。このような細胞の形質転換またはトランスフェクションおよび増殖は通常の手順となっている。有用な細胞株の例として、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、J774細胞、HEK−293細胞、Caco2細胞、ラット乳児腎臓(BRK)細胞株、昆虫細胞株、鳥類細胞株およびサル(COS)細胞株が挙げられる。このような細胞株に対する発現ベクターは、通常、複製起点、プロモーター、翻訳開始部位、RNAスプライス部位(ゲノムDNAを使用する場合)、ポリアデニル化部位および転写終結部位を含む。これらのベクターはまた、通常、選択遺伝子または増幅遺伝子も含む。適した発現ベクターは、例えば、アデノウイルス、SV40、パルボウイルス、ワクシニアウイルスまたはサイトメガロウイルスのような供給源に由来するプロモーターを保有する、プラスミド、ウイルスまたはレトロウイルスであり得る。発現ベクターの例として、pCR(登録商標)3.1、pCDNA1、pCD(Okayamaら、(1985)Mol.Cell Biol.5:1136頁)、pMC1neo Poly−A(Thomasら、(1987)Cell 51:503頁)、pREP8、pSVSPORTおよびこれらの誘導体、ならびにpAC373またはpAC610などのバキュロウイルスベクターが挙げられる。本発明の一実施態様は、膜結合型NPC1L1を包含する。この実施態様では、NPC1L1は、真核細胞の細胞膜において発現され得、この膜結合型タンパク質は、当分野で公知の従来の方法により、この細胞から単離できる。
本発明はまた、本発明のNPC1L1ポリペプチドおよびNPC1L1ポリヌクレオチドと、第2ポリペプチド部分もしくは第2ポリヌクレオチド部分(「タグ」と呼ばれ得る)とを含む融合物を包含する。本発明の融合物は、表1に示されるポリヌクレオチドもしくはポリペプチドのいずれか、またはこれらのいずれかの部分配列もしくは断片(上記)を含み得る。本発明の融合ポリペプチドは、例えば、本発明のポリヌクレオチドまたはこの断片を発現ベクターに挿入することによって構築できることが好都合である。本発明の融合物は、精製または検出を容易するタグを含み得る。このようなタグとして、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ヘキサヒスチジン(His6)タグ、マルトース結合タンパク質(MBP)タグ、赤血球凝集素(HA)タグ、セルロース結合タンパク質(CBP)タグおよびmycタグが挙げられる。検出可能なタグ、例えば、32P、35S、3H、99mTc、123I、111In、68Ga、18F、125I、131I、113mIn、76Br、67Ga、99mTc、123I、111Inおよび68Gaもまた、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを標識するために使用できる。このような融合物の構築法および使用法は、極めて従来的であり、当分野では周知である。
ポリペプチドにおいて生じる修飾(例えば、翻訳後修飾)は、このポリペプチドがどのように作製されるかということの関数であることが多い。遺伝子クローンを宿主において発現させることによって作製されるポリペプチドについては、例えば、この修飾の性質および程度は、主に、宿主細胞の翻訳後修飾能力およびこのポリペプチドのアミノ酸配列中に存在する修飾シグナルによって決定される。例えば、周知であるように、グリコシル化は、大腸菌などの細菌宿主では起こらないことが多い。従って、グリコシル化が望まれる場合には、ポリペプチドを、グリコシル化宿主、通常、真核細胞において発現させることができる。昆虫細胞は、哺乳動物細胞のものと同様の翻訳後グリコシル化を行うことが多い。こういう理由で、昆虫細胞発現系は、グリコシル化の天然パターンを有する哺乳動物タンパク質を効率的に発現させるために開発されてきた。本発明において使用できる昆虫細胞は、昆虫綱(Insecta)分類の生物に由来するあらゆる細胞である。昆虫は、スポドプテラ・フルイギペルダ(Spodoptera fruigiperda)(Sf9もしくはSf21)またはイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)(High 5)であることが好ましい。本発明に関して、例えば、NPC1L1ポリペプチドを製造するために使用できる昆虫発現系の例として、Bac−To−Bac(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)またはGateway(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)が挙げられる。必要に応じて、脱グリコシル化酵素を用いて、真核生物発現系での生産の間に結合した糖質を除去できる。
また、他の修飾として、ポリペプチドカルボキシル末端への脂肪族エステルまたはアミドの付加も挙げられる。本発明はまた、修飾、例えば、非天然アミノ酸残基またはリン酸化アミノ酸残基(例えば、ホスホチロシン残基、ホスホセリン残基もしくはホスホトレオニン残基)の組込みを含むNPC1L1ポリペプチド類似体も包含する。可能性ある他の修飾として、スルホン化、ビオチン化または他の部分の付加が挙げられる。例えば、本発明のNPC1L1ポリペプチドには、被験体の体内でのペプチドの半減期を延長するポリマーが結合できる。好ましいポリマーとして、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、分子量が2kDa、5kDa、10kDa、12kDa、20kDa、30kDaおよび40kDaであるPEG)、デキストランおよびモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)が挙げられる。
本発明のペプチドはまた、環化してもよい。具体的には、NPC1L1ポリペプチドのアミノ末端残基もしくはカルボキシ末端残基、または本発明のNPC1L1ポリペプチドの2つの内部残基を融合して、環化ペプチドを作製できる。ペプチドを環化する方法は、従来法であり、当分野では極めて周知である。例えば、Gurrathら、(1992)Eur.J.Biochem.210:911から921頁参照。
本発明は、本発明のポリペプチドに対応するアミノ酸配列またはヌクレオチド配列へのあらゆる表面的な修飾またはわずかな修飾も意図する。特に、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする核酸の配列保存的変異体を意図する。ポリヌクレオチド配列の「配列保存的変異体」は、所与のコドンの1個またはそれ以上のヌクレオチドが変化しても、この位置においてコードされるアミノ酸には変化が起こらない変異体である。本発明のポリペプチドの機能保存的変異体もまた、本発明によって意図される。「機能保存的変異体」は、タンパク質または酵素中の1個またはそれ以上のアミノ酸残基が、このポリペプチドの全体的な立体構造および機能を変えずに、変化している変異体であり、アミノ酸の類似特性を有するアミノ酸での置換を含むが、これに限らない。類似特性を有するアミノ酸は当分野で周知である。例えば、交換可能であり得る極性/親水性アミノ酸として、アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、トレオニン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられ、交換可能であり得る非極性/疎水性アミノ酸として、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが挙げられ、交換可能であり得る酸性アミノ酸として、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられ、交換可能であり得る塩基性アミノ酸として、ヒスチジン、リジンおよびアルギニンが挙げられる。
本発明は、ラットNPC1L1、ヒトNPC1L1もしくはマウスNPC1L1をコードするポリヌクレオチドおよびこの断片、ならびにこれらのポリヌクレオチドとハイブリダイズする核酸を包含する。好ましくは、これらの核酸は、低ストリンジェンシー条件下で、より好ましくは中ストリンジェシー条件下で、最も好ましくは高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。核酸分子は、一本鎖形態のこの核酸分子が適切な状態の温度および溶液イオン強度下で別の核酸分子にアニーリングできる場合に(Sambrookら、前掲、参照)、この別の核酸分子、例えばcDNA、ゲノムDNAまたはRNAと「ハイブリダイズ可能である」。温度およびイオン強度の条件により、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」が決まる。典型的な低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、55℃、5X SSC、0.1%SDS、0.25%ミルク、ホルムアミドは含まない、42℃にて;または30%ホルムアミド、5X SSC、0.5%SDS、42℃にて、である。典型的な中ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーションを40%ホルムアミド中、5X SSCもしくは6X SSCを用いて42℃にて実施することを除き、低ストリンジェンシー条件と同じである。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーション条件を50%ホルムアミド、5X SSCもしくは6X SSC中、場合により、高温(例えば、42℃:57℃、59℃、60℃、62℃、63℃、65℃または68℃より高い温度)にて実施することを除き、低ストリンジェンシー条件と同じである。通常、SSCは、0.15M NaClおよび0.015Mクエン酸Naである。ハイブリダイゼーションには、2つの核酸が相補的な配列を含むことが必要であるが、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに応じて、塩基間のミスマッチが起こり得る。核酸をハイブリダイズするのに適切なストリンジェンシーは、当分野においては周知の変数である、核酸の長さや相補性の程度に応じて変わる。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が高まる程、これらの核酸がハイブリダイズできるストリンジェンシーが高くなる。100ヌクレオチド長より長いハイブリッドについては、この融解温度を算出するための式が導かれている(Sambrookら、前掲、9.50−9.51参照)。より短い核酸(すなわち、オリゴヌクレオチド)を用いるハイブリダイゼーションについては、ミスマッチの位置がより重要になり、このオリゴヌクレオチドの長さによりこの特異性が決まる(Sambrookら、前掲参照)。
また、本発明には、BLASTアルゴリズム(このアルゴリズムのパラメーターは、それぞれの参照配列の全長にわたって、それぞれの配列間で最大のマッチが得られるように選択される)により比較を実行した場合に、参照ラットNPC1L1ヌクレオチド(例えば、配列番号1または配列番号5から10のうちのいずれか)およびアミノ酸配列(例えば、配列番号2)、参照ヒトNPC1L1ヌクレオチド(例えば、配列番号3)およびアミノ酸配列(例えば、配列番号4)または参照マウスNPC1L1ヌクレオチド(例えば、配列番号11または配列番号13のうちのいずれか)およびアミノ酸配列(例えば、配列番号12)に対して、少なくとも約70%同一、好ましくは少なくとも約80%同一、より好ましくは少なくとも約90%同一、および最も好ましくは少なくとも約95%同一(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、100%)である、ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドおよびこのようなアミノ酸配列を含むポリペプチドも含まれる。BLASTアルゴリズム(このアルゴリズムのパラメーターは、それぞれの参照配列の全長にわたって、それぞれの配列間で最大のマッチが得られるように選択される)により比較を実行した場合に、配列番号2の参照ラットNPC1L1アミノ酸配列、配列番号4の参照ヒトNPC1L1アミノ酸配列または配列番号12の参照マウスNPC1L1アミノ酸配列に対して、少なくとも約70%類似、好ましくは少なくとも約80%類似、より好ましくは少なくとも約90%類似、および最も好ましくは少なくとも約95%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、100%)類似しているアミノ酸配列を含むポリペプチドもまた、本発明に包含される。
配列同一性とは、比較されている2配列のヌクレオチド間またはアミノ酸間での正確なマッチを指す。配列類似性とは、比較されている2つのポリペプチドのアミノ酸間での正確な一致、および同一でない、生化学的に関連するアミノ酸間のマッチの両方を指す。類似特性を共有し、交換可能であり得る生化学的に関連するアミノ酸については、上記で論じている。
BLASTアルゴリズムに関する以下の参考文献は参照により本明細書に組み込まれる:BLASTアルゴリズム:Altschul,S.F.ら、(1990)J.Mol.Biol.215:403から410頁;Gish,W.ら、(1993)Nature Genet.3:266から272頁;Madden,T.L.ら、(1996)Meth.Enzymol.266:131から141頁;Altschul,S.F.ら、(1997)Nucleic Acids Res.25:3389から3402頁;Zhang,J.ら、(1997)Genome Res.7:649から656頁;Wootton,J.C.ら、(1993)Comput.Chem.17:149から163頁;Hancock,J.M.ら、(1994)Comput.Appl.Biosci.10:67から70頁;アライメントスコアリングシステム:Dayhoff,M.O.ら、「A model of evolutionary change in proteins」 Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)第5巻、付録3.M.O.Dayhoff (編)、345から352頁,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Schwartz,R.M.ら、「Matrices for detecting distant relationships」 Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)第5巻、付録3.M.O.Dayhoff (編)、353から358頁,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Altschul,S.F.,(1991)J.Mol.Biol.219:555から565頁;States,D.J.ら、(1991)Methods 3:66から70頁;Henikoff,S.ら、(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915から10919頁;Altschul,S.F.ら、(1993)J.Mol.Evol.36:290から300頁;アライメント統計学:Karlin,S.ら、(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264から2268頁;Karlin,S.ら、(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873から5877頁;Dembo,A.ら、(1994)Ann.Prob.22:2022から2039頁およびAltschul,S.F.「Evaluating the statistical significance of multiple distinct local alignments」 Theoretical and Computational Methods in Genome Research (S.Suhai編),(1997)1から14頁,Plenum,New York。
タンパク質精製
本発明のタンパク質、ポリペプチドおよび抗原フラグメントは、標準的な方法によって精製でき、このような方法として、これに限らないが、塩析沈殿もしくはアルコール沈殿、アフィニティクロマトグラフィー(例えば、上記で論じたような精製タグ付NPC1L1ポリペプチドとともに使用する)、分取ディスクゲル電気泳動、等電点電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相HPLC、ゲル濾過、陽イオン交換クロマトグラフィーおよび陰イオン交換クロマトグラフィーおよび分配クロマトグラフィー、ならびに向流分配が挙げられる。このような精製方法は、当分野で周知であり、例えば、「Guide to Protein Purification」 Methods in Enzymology,第182巻,M.Deutscher編,1990,Academic Press,New York,NYに開示されている。
精製段階の後には、以下に記載されるような受容体結合活性についてのアッセイを実施することができる。特に、NPC1L1ポリペプチドが細胞供給源もしくは組織供給源から単離されている場合には、アッセイ系に1種またはそれ以上のタンパク質分解酵素の阻害剤、例えばフェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)、Pefabloc SC、ペプスタチン、ロイペプチン、キモスタチンおよびEDTAを含めることが好ましい。
抗体分子
本発明のNPC1L1ポリペプチドの抗原フラグメント(免疫原性を有するものを含む)(例えば、配列番号2、4または12由来の42個以上の連続するアミノ酸)は、本発明の範囲内にある。抗原ペプチドは、とりわけ、NPC1L1を認識する単離抗体分子を調製するのに有用であり得る。単離抗NPC1L1抗体分子は、有用なNPC1L1リガンドである。
抗原は、抗体と特異的に結合し得る分子である。いくつかの抗原は、単独では抗体生成を惹起し得ない。抗体生成を誘導できるものは免疫原である。
単離抗NPC1L1抗体は、配列番号39から42から選択されるアミノ酸配列を含む抗原性ペプチド(例えば、ラットNPC1L1由来の抗原)を認識することが好ましい。この抗体は、A0715、A0716、A0717、A0718、A0867、A0868、A1801またはA1802であることがより好ましい。
用語「抗体分子」は、これに限らないが、抗体およびこのフラグメント(好ましくは、抗原結合フラグメント)を包含する。この用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、Fab抗体フラグメント、F(ab)2抗体フラグメント、Fv抗体フラグメント(例えば、VHまたはVL)、単鎖Fv抗体フラグメントおよびdsFv抗体フラグメントを包含する。さらに、本発明の抗体分子は、完全ヒト抗体、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、ニワトリ抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であり得る。
必ずしも必要ではないが、NPC1L1ポリペプチドが、免疫適格宿主において抗体生成を惹起するための抗原として使用される場合には、より小さい抗原フラグメントは、まず、架橋もしくはコンカテネーションにより、または免疫原性担体分子(すなわち、宿主動物において免疫学的応答を独立して惹起する特性を有する高分子、例えばジフテリア毒素または破傷風毒素)とのカップリングにより、免疫原性が高められることが好ましい。小さいポリペプチドフラグメントは、ハプテン(抗体と特異的に結合できるが、抗体生成を惹起することはできない(すなわち、免疫原性ではない)分子)として作用することがあるため、架橋または担体分子との複合体化が必要である場合がある。このようなフラグメントを免疫原性担体分子と複合体化することで、一般的には「担体効果」として知られるものにより、このようなフラグメントの免疫原性が高められる。
担体分子として、例えば、タンパク質および天然高分子化合物または合成高分子化合物、例えば、ポリペプチド、多糖、リポ多糖などが挙げられる。タンパク質担体分子が特に好ましく、このようなものとして、これに限らないが、キーホールリンペットヘモシアニンおよび哺乳動物血清タンパク質、例えば、ヒトガンマグロブリンもしくはウシガンマグロブリン、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミンもしくはウサギ血清アルブミン、またはこのようなタンパク質のメチル化誘導体もしくは他の誘導体が挙げられる。他のタンパク質担体については、当業者には明らかである。このタンパク質担体は、このフラグメントに対する抗体が惹起される宿主動物に対して外来のものであることが好ましい。
担体分子との共有結合は、当分野で周知の方法を使用して達成でき、この正確な選択は、使用される担体分子の性質によって決定される。この免疫原性担体分子がタンパク質である場合、本発明のフラグメントは、例えば、水溶性カルボジイミド、例えばジシクロヘキシルカルボジイミドまたはグルタルアルデヒドを使用して結合することができる。
これらのようなカップリング剤はまた、別の担体分子を使用することなく、このフラグメントをこれら自体に架橋するためにも使用できる。このような凝集体への架橋もまた、免疫原性を高め得る。免疫原性はまた、既知のアジュバントを単独で使用することによって高めることができるし、カップリングもしくは凝集と組み合わせて使用することによっても高めることができる。
動物のワクチン接種のためのアジュバントとして、これに限らないが、アジュバント65(ピーナッツオイル、モノオレイン酸マンニド(mannide monooleate)およびモノステアリン酸アルミニウムを含有);フロイント完全アジュバントもしくはフロイント不完全アジュバント;鉱物ゲル、例えば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、およびミョウバン;界面活性剤、例えば、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、リゾレシチン、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、N,N−ジオクタデシル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシメチル)プロパンジアミン、メトキシヘキサデシルグリセロールおよびプルロニックポリオールなど;ポリアニオン、例えば、ピラン、硫酸デキストラン、ポリIC、ポリアクリル酸およびカルボポールなど;ペプチド、例えば、ムラミルジペプチド、ジメチルグリシンおよびタフトシンなど;ならびに油性乳剤が挙げられる。本ポリペプチドはまた、リポソームまたは他の微小担体に組み込んだ後に投与してもよい。
アジュバントおよびイムノアッセイの種々の側面に関する情報は、例えば、P.Tijssenによるシリーズ,Practice and Theory of Enzyme Immunoassays,第3版,1987,Elsevier,New Yorkに開示されている。ポリクローナル抗血清を調製するための方法を包含する他の有用な参考文献として、Microbiology,1969,Hoeber Medical Division,Harper and Row;Landsteiner,Specificity of Serological Reactions,1962,Dover Publications,New York,ならびにWilliamsら、Methods in Immunology and Immunochemistry,第1巻,1967,Academic Press,New Yorkが挙げられる。
本発明の抗NPC1L1抗体分子は、ヒトNPC1L1、マウスNPC1L1またはラットNPC1L1を認識することが好ましいが、本発明は、あらゆる種、好ましくは、哺乳動物(例えば、ネコ、ヒツジまたはウマ)に由来するNPC1L1を認識する抗体分子を包含する。本発明はまた、本発明のNPC1L1ポリペプチドと抗NPC1L1抗体分子とを含む複合体も包含する。このような複合体は、抗体分子をこの同種ポリペプチドと接触させるだけで生成し得る。
本発明の抗体分子の作製には、種々の方法が使用できる。ヒト抗体は、例えば、米国特許第5,625,126号;同第5,877,397号;同第6,255,458号;同第6,023,010号および同第5,874,299号に開示されている方法と同様の方法によって作製できる。
モノクローナル抗NPC1L1抗体を生産するハイブリドーマ細胞は、当分野で一般的に知られている方法によって作製できる。これらの方法として、これに限らないが、最初にKohlerら、(1975)(Nature 256:495から497頁)によって開発されたハイブリドーマ技術、ならびにトリオーマ技術(Heringら、(1988)Biomed.Biochim.Acta.47:211から216頁およびHagiwaraら、(1993)Hum.Antibod.Hybridomas 4:15)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、(1983)Immunology Today 4:72およびCoteら、(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 80:2026から2030頁)、およびEBV−ハイブリドーマ技術(Coleら、in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,77から96頁,1985)が挙げられる。ハイブリドーマ細胞が抗NPC1L1抗体を発現しているか否かを調べるためには、ELISAを使用できる。
本発明の抗NPC1L1抗体分子はまた、組換えによっても(例えば、上記で論じたような大腸菌/T7発現系において)製造できる。この実施態様では、本発明の抗体分子(例えば、VHまたはVL)をコードする核酸を、pet系プラスミドに挿入し、大腸菌/T7系において発現させることができる。当分野で公知である、組換え抗体を製造するための方法がいくつかある。抗体の組換え製造のための方法の一例が、米国特許第4,816,567号に開示されている。また、Skerra,A.ら、(1988)Science 240:1038から1041頁;Better,M.ら、(1988)Science 240:1041から1043頁およびBird,R.E.ら、(1988)Science 242:423から426頁も参照のこと。
用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体(すなわち、この集団を構成する個々の抗体は、天然に存在する突然変異が少量で存在し得る可能性を除いて同一である)を包含する。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に向けられる。モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって本質的に汚染されていないハイブリドーマ培養物によって合成され得るという点において有利である。修飾語「モノクローナル」とは、この抗体の特徴を、実質的に均質な抗体集団から得られたものであるとして示し、いずれかの特定の方法によるこの抗体の製造を必要とすることと解釈されるべきではない。本発明に従って使用されるべきモノクローナル抗体は、Kohlerら、(1975)Nature 256:495頁によって記載されているようなハイブリドーマ方法によって製造できる。
用語「ポリクローナル抗体」は、他の1種またはそれ以上の同一でない抗体の中で、またはこのような抗体の存在下で製造される抗体を包含する。一般に、ポリクローナル抗体は、同一でない抗体を生成した他のいくつかのBリンパ球の存在下で、あるBリンパ球から生成される。一般に、ポリクローナル抗体は、免疫化した動物(例えば、ウサギ)から直接得られる。
「二重特異性抗体」は、別個の抗原と結合する2つの異なる抗原結合領域を含む。二重特異性抗体、ならびにこの抗体の作製法および使用法は、従来的であり、当分野で極めて周知である。
抗イディオタイプ抗体または抗イディオタイプとは、別の抗体分子の抗原結合領域または可変領域(イディオタイプと呼ばれる)に対して向けられる抗体である。Jerne(Jerne,N.K.,(1974)Ann.Immunol.(Paris)125c:373頁およびJerne,N.K.ら、(1982)EMBO 1:234頁)により開示されているように、所与の抗原(例えば、NPC1L1)に対するパラトープ(抗原結合部位)を発現する抗体分子による免疫化で、抗抗体群が生成し、この抗抗体のいくつかは、この抗原と、このパラトープに対する相補的構造を共有する。抗イディオタイプ抗体の部分集団による免疫化で、次いで最初の抗原に対して反応性である抗体部分集団または免疫細胞サブセットが生成する。
用語「完全ヒト抗体」とは、ヒト免疫グロブリン配列だけを含む抗体を指す。同様に、「マウス抗体」とは、マウス免疫グロブリン配列だけを含む抗体を指す。
「ヒト/マウスキメラ抗体」とは、ヒト定常領域と融合されたマウス可変領域(VHおよびVL)を含む抗体を指す。
「ヒト化」抗NPC1L1抗体もまた、本発明の範囲内にある。ヒト化型非ヒト(例えば、ネズミ)抗体は、キメラ免疫グロブリンであり、このキメラ免疫グロブリンは、非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列しか含まない。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域由来の残基が、望ましい特異性、親和性および能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラットまたはウサギの相補性決定領域由来の残基で置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基もまた、対応する非ヒト残基によって置換されている。
「単鎖Fv」抗体フラグメントまたは「sFv」抗体フラグメントは、抗体のVHドメインおよび/またはVLドメインを含み、これらのドメインは、単一ポリペプチド鎖に存在する。一般に、sFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、このポリペプチドリンカーによってこのsFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能となる。単鎖抗体の製造について記載されている技術(米国特許第5,476,786号;同第5,132,405号および同第4,946,778号)を、抗NPC1L1特異的単鎖抗体の製造に適応させることができる。sFvの総説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,第113巻,Rosenburg and Moore編,Springer−Verlag,N.Y.,269から315頁 (1994)参照。
「ジスルフィドによって安定化されたFvフラグメント」および「dsFv」は、ジスルフィド結合によって連結された可変重鎖(VH)および/または可変軽鎖(VL)を有する分子を包含する。
本発明の範囲内にある抗体フラグメントはまた、IgGの酵素的切断により(例えば、ペプシンにより)生じ得るF(ab)2フラグメントを包含する。Fabフラグメントは、例えば、ジチオトレイトールまたはメルカプトエチルアミンを用いたF(ab)2の還元によっても生じ得る。
Fvフラグメントは、VL領域またはVH領域である。
免疫グロブリンは、重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に従って、種々のクラスへ割り当てることができる。免疫グロブリンについては、少なくとも5つの主要なクラスが存在する:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM。これらのうちのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG−1、IgG−2、IgG−3およびIgG−4;IgA−1およびIgA−2)に分けることができる。
本発明の抗NPC1L1抗体分子はまた、化学的部分とも結合させることができる。この化学部分は、とりわけ、ポリマー、放射性核種または細胞傷害性因子であり得る。この化学部分は、被験体の体内でのこの抗体分子の半減期を延長するポリマーであることが好ましい。適したポリマーとして、これに限らないが、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、分子量が2kDa、5kDa、10kDa、12kDa、20kDa、30kDaまたは40kDaであるPEG)、デキストランおよびモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)が挙げられる。米国特許第6,133,426号に記載されているPEG化抗IL−8抗体を製造する方法を、本発明のPEG化抗NPC1L1抗体の製造に適応させることができる。Leeら、(1999)(Bioconj.Chem.10:973から981頁)は、PEG結合単鎖抗体について開示している。Wenら、(2001)(Bioconj.Chem.12:545から553頁)は、抗体と、放射性金属キレート剤(ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA))と結合したPEGとの複合体形成について開示している。
本発明の抗体分子はまた、標識、例えば、99Tc、90Y、111In、32P、14C、125I、3H、131I、11C、15O、13N、18F、35S、51Cr、57To、226Ra、60Co、59Fe、57Se、152Eu、67CU、217Ci、211At、212Pb、47Sc、109Pd、234Th、40K、157Gd、55Mn、52Trまたは56Feとも結合させることができる。
本発明の抗体分子はまた、フルオロフォア、例えば、希土類キレート、フルオレセインおよびこの誘導体、ローダミンおよびこの誘導体、イソチオシアネート、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアデヒド(o−phthaladehyde)、フルオレスカミン、152Eu、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェリン、ルミナール標識、イソルミナール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、シュウ酸エステル標識、エクオリン標識、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、ビオチン/アビジン、スピン標識および安定フリーラジカルをはじめとする、蛍光標識または化学発光標識とも結合させることができる。
この抗体分子はまた、細胞傷害性因子、例えば、ジフテリア毒素、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、α−サルシン(alpha−sarcin)、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質および化合物(例えば、脂肪酸)、ジアンシン(dianthin)タンパク質、フィトイアッカ・アメリカナ(Phytoiacca americana)タンパク質PAPI、PAPIIおよびPAP−S、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サポナリア・オフィシナリス(saponaria officinalis)阻害剤、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)およびエノマイシン(enomycin)とも結合させることができる。
本発明の抗体分子を種々の部分と結合するための当分野で公知の方法であればいずれを使用してもよく、これらの方法として、Hunterら、(1962)Nature 144:945頁;Davidら、(1974)Biochemistry 13:1014頁;Painら、(1981)J.Immunol.Meth.40:219頁およびNygren,J.,(1982)Histochem.and Cytochem.30:407頁が挙げられる。
抗体を複合体化する方法は、従来的であり、当分野で極めて周知である。
スクリーニングアッセイ
本発明は、血清ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの上昇をはじめとする、種々の医学的状態の処置および管理において有用であり得る、NPC1L1(例えば、配列番号2、4または12)の選択的リガンドの同定を可能にする。従って、本発明のNPC1L1は、リガンドを同定するためにスクリーニング系において使用できる。これらのリガンドは、NPC1L1のアゴニストまたはアンタゴニストであり得る。本質的には、これらのアッセイは、(1)NPC1L1、(2)適切な既知のNPC1L1リガンド、アゴニストまたはアンタゴニスト、例えば、ステロール(コレステロール、フィトステロール(これに限らないが、シトステロール、カンペステロール、スチグマステロールおよびアベノステロール(avenosterol)が挙げられる)など)、コレステロール酸化生成物、5α−スタノール(これに限らないが、コレスタノール、5α−カンペスタノールおよび5α−シトスタノールが挙げられる)、置換アゼチジノン(例えば、エゼチミブ)、BODIPY−エゼチミブ(Altmannら、(2002)Biochim.Biophys.Acta 1580(1):77から93頁)またはDeNinnoら、(1997)(J.Med.Chem.40 (16):2547から54頁)に記載されているような11−ケトチゴゲニンの4”,6”−ビス[(2−フルオロフェニル)カルバモイル]−β−D−セロビオシル誘導体または任意の置換アゼチジノン、ならびに(3)候補NPC1L1リガンドの存在について調べようとする試料を用いることにより、NPC1L1のリガンドを同定する方法を提供する。
用語「特異的」とは、例えば、スクリーニングアッセイにおけるNPC1L1とリガンドの結合を説明するために用いられる場合には、リガンドまたはアンタゴニスト(例えば、置換アゼチジノン、エゼチミブ、ステロール(コレステロールなど)もしくは5α−スタノール)が、アッセイ系にある他のタンパク質と比べて、NPC1L1と優先的に結合する程度を指す、専門用語である。例えば、NPC1L1と特異的に結合するNPC1L1のリガンドの特異的結合の検出は、このような結合を示すアッセイによって生じたシグナルが、例えば、NPC1L1またはリガンドが不在である陰性対照で生じたシグナルよりも少しでも強い場合に顕在化される。さらに、「特異的結合」は、NPC1L1を一部分とする複合体における、リガンドのNPC1L1との直接結合または間接的な結合(例えば、別の部分を介した結合)を包含する。NPC1L1リガンドが結合する部分は、別のタンパク質またはNPC1L1の翻訳後修飾(例えば、脂質鎖または炭水化物鎖)であり得る。
スクリーニングアッセイにおける使用に適した置換アゼチジノンの非限定的な例として、米国特許第RE37,721号;同第5,631,365号;同第5,767,115号;同第5,846,966号;同第5,688,990号;同第5,656,624号;同第5,624,920号;同第5,698,548号;同第5,756,470号;同第5,688,787号;同第5,306,817号;同第5,633,246号;同第5,627,176号;同第5,688,785号;同第5,744,467号;同第5,846,966号;同第5,728,827号;同第6,632,933号および米国特許出願公開番号2003/0105028(これら各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているものが挙げられる。
本発明は、試料が、既知のリガンド(例えば、エゼチミブ、エゼチミブ−グルクロニド、化合物2など)とNPC1L1との結合について競合する候補化合物を含むか否かを判定することにより、この試料がNPC1L1リガンドを含むか否かを評価する方法を提供する。このリガンドはアゴニストまたはアンタゴニストであり得る。本発明の一実施態様では、既知のリガンド(例えば、エゼチミブ、エゼチミブ−グルクロニド、化合物2など)とNPC1L1の結合が混乱をきたす。用語「既知のリガンド」とは、NPC1L1と結合することが知られている化合物で、本明細書に記載されるスクリーニングアッセイおよび方法に用いるために、検出可能なように標識することができる化合物を指す。「既知のリガンド」には、本明細書に記載されるようなスクリーニングアッセイに用いるために、検出可能なように標識できる置換2−アゼチジノングルクロニドが含まれる。
エゼチミブは、当業者に周知の種々の方法(例えば、米国特許第5,631,365号、同5,767,115号、同5,846,966号、同6,207,822号、米国特許出願公開番号2002/0193607およびPCT特許出願WO93/02048(これら各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている方法など)によって調製できる。
「試料」、「候補化合物」または「候補物質」とは、例えば、NPC1L1(例えば、配列番号2、配列番号4もしくは配列番号12)またはこの機能的断片と結合する能力について、試験またはアッセイにおいて評価される化合物または組成物を指す。この組成物は、候補化合物、例えば、小分子、ペプチド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、素粒子(例えば、α粒子、β粒子)または抗体を含み得る。
本発明は、NPC1L1と結合する化合物のリガンドを同定する方法を提供し、この方法は、NPC1L1を、検出可能なように標識した置換2−アゼチジノン、好ましくは置換2−アゼチジノン−グルクロニドと候補化合物とに接触させること、およびこの候補化合物がNPC1L1と結合するか否かを判定することを含み、前記候補化合物とNPC1L1との結合が検出可能なように標識した置換2−アゼチジノンとNPC1L1との結合を調節する。候補化合物をNPC1L1に結合させることによる置換2−アゼチジノンとNPC1L1との結合の調節は、この候補化合物がNPC1L1と結合するリガンドであることを示す。この調節はまた、この候補化合物がin vivoでのステロールと5α−スタノールの吸収阻害薬であり得るという良い指標である。
本発明はまた、NPC1L1のリガンドを同定する方法を提供し、この方法は、NPC1L1を、検出可能なように標識した置換2−アゼチジノン、好ましくは置換2−アゼチジノングルクロニドと接触させること、および候補化合物の存在下および不在下で、NPC1L1と検出可能なように標識した置換2−アゼチジノンとの結合を測定することを含み、候補化合物の存在下での、検出可能なように標識した置換2−アゼチジノンとNPC1L1との結合の減少が、前記候補化合物がNPC1L1のリガンドであり、ステロールと5α−スタノールの吸収阻害薬であることを示す。
置換2−アゼチジノンは、3H、35S、125Iで検出可能なように標識されるか、または蛍光標識された置換2−アゼチジノンである。置換2−アゼチジノンは、35Sまたは125I、特に35Sで標識されることが好ましい。
置換2−アゼチジノンは置換2−アゼチジノングルクロニドであることが好ましい。置換2−アゼチジノングルクロニドである化合物は、以下の構造(I)を有する化合物である:
(式中、X
1はグルクロニドと4−フェニル環を連結する基、例えば、これに限らないが、−O−または−C
1−3アルキル−を表し、X
2は場合によって置換されていてもよい−アルカンジイル−を表し、フェニル基はいずれも場合によって置換されていてよい)。構造(I)中のフェニル−X
2−部分の例として、以下の構造(II)において示される2−アゼチジノン構造の4位に表されているものが挙げられる。置換2−アゼチジノングルクロニドのさらなる例として、これに限らないが、米国特許第5,756,470号、WO02/066464およびUS2002/0137689に記載されているものが挙げられる。置換2−アゼチジノングルクロニド化合物のさらなる例として、以下のような構造(II)を有するものならびにこの医薬として許容される塩およびこのエステルが挙げられる:
(式中、
Ar
1はアリールおよびR
4−置換アリールからなる群から選択され、
X、YおよびZは独立して−CH
2−、−CH(C
1−6アルキル)−および−C(C
1−6アルキル)
2−からなる群から選択され、
Rは−OR
6、−O(CO)R
6、−O(CO)OR
9、−O(CO)NR
6R
7、糖残基、二糖残基、三糖残基および四糖残基からなる群から選択され、
R
1は−H、−C
1−6アルキルおよびアリールからなる群から選択されるか、またはRおよびR
1は一緒になってオキソであり、
R
2は−OR
6、−O(CO)R
6、−O(CO)OR
9および−O(CO)NR
6R
7からなる群から選択され、
R
3は−H、−C
1−6アルキルおよびアリールからなる群から選択されるか、またはR
2およびR
3は一緒になってオキソであり、
q、rおよびtは各々独立して0および1から選択され、
m、nおよびpは各々独立して0、1、2、3および4から選択され、
R
4は、独立して各々存在するごとに:
−OR
5、−O(CO)R
5、−O(CO)OR
8、−O−C
1−5アルキル−OR
5、−O(CO)NR
5R
6、−NR
5R
6、−NR
5(CO)R
6、−NR
5(CO)OR
8、−NR
5(CO)NR
6R
7、−NR
5SO
2R
8、−COOR
5、−CONR
5R
6、−COR
5、−SO
2NR
5R
6、−S(O)
tR
8、−O−C
1−10アルキル−COOR
5、−O−C
1−10アルキル−CONR
5R
6およびフルオロからなる群から選択される1から5個の置換基であり、
R
5、R
6およびR
7は独立して各々存在するごとに−H、C
1−6アルキル、アリールおよびアリール置換C
1−6アルキルからなる群から選択され、
R
8は独立してC
1−6アルキル、アリールおよびアリール置換C
1−6アルキルからなる群から選択され、
R
9は−C≡C−CH
2−NR
10R
11、−C≡C−C(O)R
13および−(CH
2)
3−NR
10R
14からなる群から選択され、
R
10は独立して各々存在するごとに−Hおよび−C
1−3アルキルから選択され、
R
11は−H、−C
1−3アルキル、−C(O)−C
1−3アルキル、−C(O)−NR
10R
10、−SO
2−C
1−3アルキルおよび−SO
2−フェニルからなる群から選択され、
R
12は
から選択され、
R
13は−OHおよび−NR
10R
11からなる群から選択され、
R
14は−C(O)−C
1−3アルキル、−C(O)−NR
10R
10、−SO
2−C
1−3アルキルおよび−SO
2−フェニルからなる群から選択される)。
式IIの一実施態様では、qおよびrの少なくとも一方が1であり、m、n、p、qおよびrの合計が1、2、3、4、5または6であるという条件で、ならびにpが0であり、rが1である場合に、m、qおよびnの合計が1、2、3、4または5であるという条件で、q、rおよびtが各々独立して0および1から選択され、m、nおよびpが各々独立して0、1、2、3および4から選択される化合物がある。式IIの第2の実施態様では、次式IIaの化合物がある。
こうした各実施態様の種類として、R9が−C≡C−CH2−NR10R11である化合物がある。こうした各実施態様のもう1つの種類として、R9が−SO2−基を含む、すなわち、R9が−C≡C−CH2−NR10R11、−C≡C−C(O)NR10R11、−(CH2)3−NR10−SO2−C1−3アルキルおよび−(CH2)3−NR10−SO2−フェニルからなる群から選択され、R11が−SO2−C1−3アルキルおよび−SO2−フェニルから選択される化合物がある。
用語「アルキル」とは、指定数の炭素原子を有する、分枝鎖飽和脂肪族一価炭化水素基および直鎖飽和脂肪族一価炭化水素基の両方を包含するよう意図されている。アルキル基の例として、これに限らないが、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル(Pr)、n−ブチル(Bu)、n−ペンチル、n−ヘキシルおよびこれらの異性体、例えば、イソプロピル(i−Pr)、イソブチル(i−Bu)、secブチル(s−Bu)、tertブチル(t−Bu)、イソペンチル、イソヘキシルなどが挙げられる。名づけられたアルキル基に指定の接頭語(normalの場合には「n−」、secの場合には「s−」、tertの場合には「t−」、イソの場合には「i−」など)が付いていなければ、この名づけられたアルキル基がn−アルキル基(すなわち、「プロピル」は「n−プロピル」である)であるよう意図されている。用語「アリール」とは、フェニル(Ph)、ナフチル、インデニル、テトラヒドロナフチルまたはインダニルを包含するよう意図されている。フェニルが好ましい。
R12がグルクロニドまたはメチルエステルグルクロニドである場合のR12のヒドロキシル基の適した保護基(本明細書中では「PG」と表される)として、これに限らないが、炭水化物保護基として有用であることが知られているもの、例えばベンジル、アセチル、ベンゾイル、tert−ブチルジフェニルシリル、トリメチルシリル、パラ−メトキシベンジル、ベンジリジンおよびメトキシメチルなどが挙げられる。このような保護基を選択的に加え、除去するのに必要な条件は、Greene,T,and Wuts,P.G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,Inc.,New York,NY,1999のような標準的な教本に見られる。
式IIの化合物は、1またはそれ以上の不斉中心を含み得るため、ラセミ化合物およびラセミ混合物、単一種のエナンチオマー、エナンチオマー混合物、ジアステレオマー混合物および単一種のジアステレオマーとして生じる場合があり、このような全ての異性体は式IIの範囲内にある。
式IIの化合物の放射性同位元素は、例えば、硫黄が「ホット」−35S−で置き換えられている、特に放射性硫黄同位元素がR9部分に組み込まれている式IIの化合物のようなアッセイにおいて特に有用である。NPC1L1リガンドを同定するアッセイにおける式IIの化合物のこのような全ての放射性同位元素の使用は、本発明の範囲内に含まれる。
用語「医薬として許容される塩」とは、一般に、遊離酸を適した有機塩基または無機塩基と反応させることによって調製される式IIの化合物の毒性のない塩、特に、陽イオン(ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛およびテトラメチルアンモニウムなど)から形成されるもの、ならびにアミン(アンモニア、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、リシン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、1−p−クロロベンジル−2−ピロリジン−1’−イル−メチルベンゾイミダゾール、ジエチルアミン、ピペラジン、モルホリン、2,4,4−トリメチル−2−ペンタミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなど)から形成される塩を意味する。
式IIの化合物が塩基性である場合には、塩は医薬として許容される毒性のない酸(無機酸および有機酸を含む)から調製できる。このような酸として、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられる。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸および酒石酸が特に好ましい。
医薬として許容されるエステルの例として、これに限らないが、−C1−4アルキルならびにフェニル、ジメチルアミノおよびアセチルアミノで置換された−C1−4アルキルが挙げられる。本明細書において、「C1−4アルキル」とは、1から4個の炭素原子を含有する直線脂肪族鎖または分枝脂肪族鎖、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソプロピル、sec−ブチルおよびtert−ブチルを包含する。
構造式IIの化合物は、適切な材料を用い、以下のスキームの手順に従って調製でき、以下の具体例によってさらに例示される。種々のクロマトグラフィー技術が式IIの化合物の調製に使用できる。これらの技術として、これに限らないが、高速液体クロマトグラフィー(順相、逆相およびキラル相を含む);超臨界流体クロマトグラフィー;分取薄層クロマトグラフィー;シリカゲルまたは逆相シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー;イオン交換クロマトグラフィー;およびラジアルクロマトグラフィーが挙げられる。特に断りのない限り、温度は全て摂氏温度である。
本明細書において使用されるいくつかの略語を示す:
Ac アシル(CH3C(O)−)
Bn ベンジル
calc. 理論値
セライト セライト(商標)珪藻土
デス・マーチン・ペルヨージナン 1,1,1−トリス(アセチルオキシ)−1,1−ジヒドロ−1,2−ベンゾドキソール−3−(1H)−オン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
equiv. 当量
ES−MS 電子スプレーイオン−質量分析
EtOAc 酢酸エチル
h 時間
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
min 分
m.p. 融点
MS 質量スペクトル
r.t.(またはrt) 室温
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
Tlc 薄層クロマトグラフィー
以下の一般スキームにより、構造式II−4の化合物の合成法を説明する。全ての置換基は、特に断りのない限り、式IIにおいて定義したとおりである。この方法では、II−1を適したパラジウム触媒、例えば、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)または[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)など、およびヨウ化銅(I)の存在下でII−2タイプの末端アルキンで処理する。この反応は通常、不活性有機溶媒、例えば、DMF中、室温から100℃の間で6から48時間行われ、この生成物は構造式II−3の内部アルキンである。アルキンII−2は、II−1との反応において対応する放射性標識付加物を提供するよう放射性原子、例えば、35Sを含み得る。II−3のII−4への変換は、有機合成分野の当業者には公知の種々の加水分解法を用いて達成できる。例えば、特に緩和加水分解プロトコールでは、メタノールと水を含む混合溶媒系でのII−3の第3級アミン塩基、例えば、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンなどでの処理を必要とする。この反応の生成物は構造式II−4の化合物である。本明細書に記載される手順を利用することにより、当業者ならば、式IIのさらなる化合物を容易に調製することができる。
使用できる、さらなる2つのタイプのスクリーニング系として、標識したリガンド結合アッセイ(例えば、直接結合アッセイまたはシンチレーション近接アッセイ(SPA))および「ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノール取込み」アッセイがある。この結合アッセイに用いる標識リガンドは、ステロール(例えば、コレステロール)もしくは5α−スタノールまたは既知のNPC1L1アゴニストもしくは既知のNPC1L1アンタゴニストを、測定可能な基(例えば、35S、125Iまたは3H)で標識することによって得ることができる。種々の標識形態のステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールが市販されているが、標準的な技術を使用して作製することもできる(例えば、コレステロール−[1,2−3H(N)]、コレステロール−[1,2,6,7−3H(N)]またはコレステロール−[7−3H(N)];American Radiolabeled Chemicals,Inc;St.Louis,MO)。好ましい実施態様では、エゼチミブを、BODIPY基で蛍光標識する(Altmannら、(2002)Biochim.Biophys.Acta 1580(1):77から93頁)か、または検出可能な基、例えば35S、125Iまたは3H、好ましくは35Sで標識する。
(直接結合アッセイ) 一般に、本発明のNPC1L1(例えば、配列番号2、配列番号4もしくは配列番号12)またはNPC1L1を含む複合体の所定量を、漸増量の標識リガンドまたは標識既知アンタゴニストもしくはアゴニスト(上記で論じたもの)と接触させ、結合していない標識リガンドまたは標識既知アンタゴニストもしくはアゴニストを洗浄により除去した後、標識リガンドまたは標識既知アンタゴニストもしくはアゴニストの結合量を測定する。標識リガンドまたは標識既知アゴニストもしくはアンタゴニストの量が増加するので、最終的には全ての受容体結合部位が占有されるか、または飽和状態になる点に到達する。大過剰の非標識リガンドまたは非標識既知アゴニストもしくはアンタゴニストにより、標識リガンドまたは標識既知アゴニストもしくはアンタゴニストの特異的受容体結合が無効にされる。
標識リガンドまたは標識既知アンタゴニストもしくはアゴニストと受容体との非特異的結合が最小限に抑えられるアッセイ系を使用することが好ましい。非特異的結合は、一般に、標識リガンドまたは標識既知アンタゴニストもしくはアゴニストの全結合の、50%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは10%未満、および最も好ましくは5%未満である。
基本的な結合アッセイでは、NPC1L1リガンド、アゴニストまたはアンタゴニストを同定する方法は、
(a)NPC1Ll(例えば、配列番号2もしくは4もしくは12)、この断片またはNPC1L1を含む複合体を、既知量の標識ステロール(例えば、コレステロール)もしくは5α−スタノールまたは標識既知アンタゴニストもしくはアゴニスト(例えば、標識エゼチミブ)の存在下で、NPC1L1リガンド、アゴニストまたはアンタゴニストの存在について調べようとする試料と接触させること、および
(b)NPC1L1と直接または間接的に結合した標識ステロール(例えば、コレステロール)もしくは5α−スタノールまたは標識既知アンタゴニストもしくはアゴニストの量を測定することを含む。
試料中のNPC1L1リガンドは、このようなリガンドの不在下で測定される結合と比較した、標識ステロール(例えば、コレステロール)もしくは5α−スタノールまたは標識既知アンタゴニストもしくはアゴニストとNPC1L1との直接または間接的結合の実質的な減少を測定することによって同定される。例えば、試料の存在下での[3H]−コレステロールとNPC1L1との直接または間接的結合の減少は、この試料が、NPC1L1結合について[3H]−コレステロールと競合している物質を含むことを示唆する。
このアッセイには、NPC1L1依存的リガンド(例えば、ステロール(コレステロールなど)または5α−スタノール)結合はいずれも起こらない対照実験を含めることができる。このアッセイでは、例えば、いずれの機能的NPC1L1も欠く全細胞または細胞膜、例えば、本発明のトランスジェニック突然変異型npc1l1−マウスから単離されたか、または誘導された細胞もしくは膜を、リガンド結合ついてアッセイする。試料をNPC1L1アンタゴニストの存在についてスクリーニングする場合には、調べられている試料の存在下で観察された結合のレベルを、本明細書に記載されるような、NPC1L1依存的結合完全に起こらない対照実験でのレベルと比較することが有用である。理想的には、アンタゴニストを含む試料の存在下で観察される結合のレベルが対照実験のレベルと同じくらいになることであるが、必ずしもそうではない。
また、試料を、NPC1L1(例えば、配列番号2、4または12)との結合について直接試験できる。このタイプの基本的アッセイには、以下の段階が含まれ得る:
(a)NPC1L1(例えば、配列番号2もしくは配列番号4もしくは配列番号12)、この断片またはNPC1L1を含む複合体を、標識候補化合物(例えば、[3H−エゼチミブ]と接触させる段階と、
(b)この標識候補化合物とNPC1L1との直接または間接的結合を検出する段階。
また、これらの試験はNPC1L1依存的結合が完全に起こらない対照実験とともに実施され得る。例えば、このアッセイは、いずれの機能的NPC1L1も欠く全細胞または細胞膜(例えば、本明細書に記載されるような、トランスジェニック突然変異型npc1l1−マウスから誘導された細胞または細胞膜)を用いて実施できる。
NPC1L1と結合することが分かった候補化合物は、(例えば、ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの取込みを阻害することにより)NPC1L1のリガンド、アゴニストまたはアンタゴニストとして機能し得る。
本発明の一実施態様では、結合した候補化合物を、ガラス繊維フィルターを用いて濾過した後に定量する。この実施態様の一側面では、結合した候補化合物は、GF/Cガラス繊維フィルター(Whatmanより入手)でのシングルチューブ真空濾過後に検出される。フィルターは、非特異的結合を減少させるために、0.5%ポリエチレンイミンに浸漬することによって前処理してもよい。濾過は、氷冷バッファーをアッセイチューブに加え、フィルターを通じて混合物に注ぎ、次いでこのチューブとフィルターをさらなるバッファーで2回以上リンスすることにより達成される。このバッファーは、TrisバッファーまたはMESバッファー(120mM NaCl、0.1%コール酸ナトリウムおよび20mM MES、pH 6.70)であり得る。フィルターは、シンチレーション液(例えば、Packard DM liquidまたはPackard Ultima Gold MV)を用いてカウントできる。
また、試料のMilliore 96−ウェルプレート(Whatman GF/C)での真空濾過を用いることによっても、当業者に周知の方法で十分な精度を達成できる。
(SPAアッセイ) NPC1L1リガンドはまた、シンチレーション近接アッセイ(SPA)を使用しても測定できる。SPAアッセイは、従来的であり、当分野で極めて周知である。例えば、米国特許第4,568,649号参照。SPAでは、注目する標的を、直径約5ミクロンの小さなミクロスフェアに固定化する。ミクロスフェアは、通常、ポリヒドロキシフィルムでコーティングされた固体シンチラントコアを含み、さらにこれには、カップリング分子が含まれ、このカップリング分子がアッセイ設計のための遺伝子的連結を可能にする。放射性同位元素により標識された分子がミクロスフェアに結合すると、この放射性同位元素はシンチラントに近接することとなり、同位元素によって放出される電子からの有効なエネルギーの転移が起こり、この結果として光の放出がもたらされる。放射性同位元素は、自由溶液中に残存するが、シンチラントからは離れすぎており、電子は水性媒体にエネルギーを消散させるために、検出されないままである。シンチレーションは、シンチレーションカウンターを用いて検出できる。一般に、SPAには3H、125Iおよび35S標識が適している。
受容体介在性結合事象についてのアッセイには、レクチンコムギ胚芽凝集素(WGA)を、SPAビーズカップリング分子(Amersham Biosciences;Piscataway,NJ)として使用できる。このWGAがカップリングしているビーズは、グリコシル化された細胞膜および糖タンパク質を捕捉し、これは幅広い種類の受容体供給源および培養細胞膜に使用されてきた。受容体は、WGA−SPAビーズ上に固定され、同位元素により標識されたリガンドが結合するとシグナルが生成される。受容体結合SPAアッセイに有用であり得る他のカップリング分子として、ポリ−L−リジンおよびWGA/ポリエチレンイミン(Amersham Biosciences;Piscataway,NJ)が挙げられる。例えば、Berry,J.A.ら、(1991)Cardiovascular Pharmacol.17 (付録7):S143からS145;Hoffman,R.ら、(1992)Anal.Biochem.203:70から75頁;Kienhusら、(1992)J.Receptor Research 12:389から399頁;Jing,S.ら、(1992)Neuron 9:1067から1079頁参照。
SPAビーズ中に含まれるシンチラントとして、例えば、ジフェニルアントラシン(DPA)の固体溶媒として作用する、ケイ酸イットリウム(YSi)、酸化イットリウム(YOx)、ジフェニルオキサゾールまたはポリビニルトルエン(PVT)が挙げられる。
SPAアッセイは、試料がNPC1L1リガンドを含むか否かを分析するために使用できる。これらのアッセイでは、細胞表面上にNPC1L1(例えば、配列番号2もしくは配列番号4もしくは配列番号12)を発現する宿主細胞またはこの膜画分が、SPAビーズ(例えば、WGAコーティングYOxビーズまたはWGAコーティングYSiビーズ)とともにインキュベートされるか、またはこのビーズにより捕捉される。NPC1L1を有するビーズを、標識された既知リガンドまたはアゴニストもしくはアンタゴニスト(例えば、3H−コレステロール、3H−エゼチミブ、125I−エゼチミブまたは35S−エゼチミブ類似体)とともにインキュベートする。このアッセイ混合物は、調べようとする試料またはブランク(例えば、水)のいずれかをさらに含む。任意のインキュベーション後、シンチレーションカウンターを使用してシンチレーションを測定する。試料において、NPC1L1リガンド、アゴニストまたはアンタゴニストは、このようなリガンド、アゴニストまたはアンタゴニストの不在下で測定される蛍光(ブランク)と比較して、蛍光の実質的な減少が測定されることによって同定できる。蛍光の実質的な減少が測定されることにより、この試料が、直接または間接的NPC1L1結合について既知リガンド、アゴニストまたはアンタゴニストと競合する物質を含むことが示唆され得る。
また、試料は、SPAアッセイにおいて結合を直接検出することにより、NPC1L1のリガンドとして同定できる。このアッセイでは、調べようとする候補化合物の標識したものを、SPAビーズに結合された、NPC1L1を発現する宿主細胞またはこの膜画分と接触させることができる。次いで、標識候補化合物と、NPC1L1またはNPC1L1を含む複合体を発現する宿主細胞または膜画分との複合体の存在を検出するために、蛍光をアッセイできる。NPC1L1と直接または間接的に結合する候補化合物は、NPC1L1アゴニスト活性またはNPC1L1アンタゴニスト活性を保有し得る。
SPAアッセイはまた、NPC1L1依存的結合が全く起こらない対照実験とともに実施できる。対照実験は、例えば、いずれの機能的NPC1L1も欠く細胞または細胞膜(例えば、本明細書に記載されるような、トランスジェニック突然変異型npc1l1−マウスから誘導された細胞または細胞膜)を用いて実施できる。対照実験を実施すると、アンタゴニストの存在について調べている試料の存在下で観察される結合のレベルを、対照実験で観察されるレベルと比較することができる。
(ステロール/5α−スタノール取込みアッセイ) アッセイは、試料が、ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールのNPC1L1介在性取込みをアゴナイズまたはアンタゴナイズし得るか否かを決定するために実施できる。これらのアッセイでは、細胞表面上にNPC1L1(例えば、配列番号2もしくは配列番号4もしくは配列番号12)を発現する宿主細胞(上記で論じたもの)を、検出可能なように標識したステロール(例えば、3H−コレステロールもしくは125I−コレステロール)または5α−スタノールとともに、試料またはブランクのいずれかと接触させることができる。任意のインキュベーション後に、吸収されていないステロールまたは5α−スタノールを除去するため、この細胞を洗浄できる。ステロールまたは5α−スタノールの取込みは、宿主細胞における標識ステロールまたは5α−スタノールの存在を検出することによって決定できる。例えば、アッセイされる細胞またはこの溶解物もしくは画分(例えば、薄層クロマトグラフィーにより分離された画分)を、液体シンチラントと接触させ、シンチレーションカウンターを使用してシンチレーションを測定できる。
これらのアッセイでは、試料中のNPC1L1アンタゴニストは、このようなアンタゴニストの不在下で測定される取込みと比較して、標識ステロール(例えば、3H−コレステロール)または5α−スタノールの取込みの実質的な減少を測定することによって同定でき、アゴニストは、このようなアゴニストの不在下で測定される取込みと比較して、標識ステロール(例えば、3H−コレステロール)または5α−スタノールの取込みの実質的な増加を測定することによって同定できる。
取込みアッセイはまた、NPC1L1依存的取込みが全く起こらない対照実験とともに実施できる。対照実験は、例えば、いずれの機能的NPC1L1も欠く細胞(例えば、本明細書に記載されるような、トランスジェニック突然変異型npc1l1−マウスから誘導された細胞)を用いて実施できる。対照実験を実施すると、アンタゴニストの存在について調べている試料の存在下で観察される取込みのレベルを、対照実験で観察されるレベルと比較することができる。
(NPC1L1の供給源) 原理的には、本発明の結合アッセイは、本発明の可溶性NPC1L1ポリペプチドを、例えば、大腸菌発現系または他の原核生物もしくは真核生物発現系からの標準的な方法による生成およびリフォールディング後に使用して、実施できる。生じた受容体−標識リガンド複合体は、例えば、この受容体に対する抗体を使用して沈殿させることができる。次いで、この沈殿物を洗浄し、結合した標識リガンドまたはアンタゴニストもしくはアゴニストの量が測定できる。
また、NPC1L1は膜結合型である。本発明のNPC1L1ポリペプチド(例えば、配列番号2、4または12)をコードする核酸を、適切な宿主細胞にトランスフェクトでき、これにより、NPC1L1は、この細胞の膜に組み込まれる。次いで、この細胞から膜画分を単離し、アッセイのためのNPC1L1の供給源として使用できる。また、細胞表面においてNPC1L1を発現する全細胞をアッセイに使用してもよい。標識リガンドまたは標識既知アンタゴニストもしくはアゴニストと、非トランスフェクト宿主細胞/非形質転換宿主細胞との特異的結合または非トランスフェクト宿主細胞/非形質転換宿主細胞由来の膜画分との特異的結合は無視してよいものであることが好ましい。
上記スクリーニング系、例えば、直接結合、シンチレーション近接アッセイ、ステロール/5αスタノール取込みアッセイのためのNPC1L1の供給源として、種々の膜が直接使用できる。実施例5、6、7、8、9、17、27および29に記載されるように、NPC1L1は特定の組織、特に腸組織の刷子縁細胞において高度に発現される。従って、NPC1L1の供給源として刷子縁膜(BBM)小胞調製物を利用できる。膜はアカゲザル、ラット、マウスまたはヒト組織由来の哺乳動物腸組織から導かれ得る。
膜は、腸組織の刷子縁細胞から導かれ得る。このような膜は、新たに屠殺した動物から腸組織を採取することにより、従来どおり調製される。組織の粘膜を擦り取り、緩衝液に集め、ホモジナイズする。細胞残屑を除去し、遠心分離により膜画分を集める。刷子縁膜小胞の調製には、当業者には公知である従来の技術が使用できる。Hauser,H.,Howell,K.,Dawson,R.M.C.,Bowyer,D.E.Biochim.Biophys.Acta 602,567から577頁 (1980);Kramer,W.,Girbig,F.,Gutjahr,U.,Kowalewski,S.,Jouvenal,K.,Muller,G.,Tripier,D.,Wess,G.J.Biol.Chem.268,18035から18046頁 (1993);Rigtrup,K.M.,Ong,D.E.Biochemistry 31,2920から2926頁 (1992)参照。
膜調製物は、小胞であっても非小胞形態形態であってもよい。
また、NPC1L1を含むリポソームおよびリポソーム調製物もまた、特許請求される方法のスクリーニングアッセイのための有望なNPC1L1供給源であり得る。
NPC1L1を発現する、in vitroで培養した細胞もまた使用できる。宿主細胞は、本発明のNPC1L1をコードする核酸を適切な宿主細胞に形質転換するか、またはトランスフェクトすることにより調製でき、これにより、受容体が、この細胞の膜に組み込まれる。次いで、この細胞から膜画分を単離し、アッセイのための受容体の供給源として使用できる。また、細胞表面において受容体を発現する全細胞を、アッセイに使用してもよい。標識リガンドまたは標識既知アンタゴニストもしくはアゴニストと非トランスフェクト宿主細胞/非形質転換宿主細胞との特異的結合または非トランスフェクト宿主細胞/非形質転換宿主細胞由来の膜画分との特異的結合は無視してよいものであることが好ましい。
好ましい宿主細胞として、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ネズミマクロファージJ774細胞、HEK−293細胞、または他の任意のマクロファージ細胞系、およびヒト腸上皮Caco2細胞が挙げられる。
本発明は、これらの膜調製物を用いて、例えば、NPC1L1を含む膜、例えば刷子縁膜小胞調製物を、検出可能なように標識した置換アゼチジノン化合物(既知NPC1L1リガンド、アゴニストまたはアンタゴニストである)と候補化合物とに接触させること、およびこの候補化合物がNPC1L1と結合できるか否かを判定することにより、NPC1L1のリガンドを同定する方法を提供する。候補化合物をNPC1L1に結合させることにより、検出可能なように標識したNPC1L1リガンド、アゴニストまたはアンタゴニストとNPC1L1との結合が調整され得る。さらに、NPC1L1リガンドは、候補化合物の存在下および不在下で、検出可能なように標識したNPC1L1リガンド、アゴニストまたはアンタゴニストとNPC1L1との結合を測定することにより同定でき、検出可能なように標識したNPC1L1リガンド、アゴニストまたはアンタゴニストとNPC1L1との結合の減少が、この候補化合物がNPC1L1のリガンドであることを示す。
NPC1L1はまた、NPC1L1を含む膜画分の可溶化によっても得ることができる。膜は、例えば、哺乳動物組織またはin vitroで培養した細胞から、上記で論じたように得ることができる。
(NPC1L1リガンドの結合親和性) スクリーニングアッセイにおいてNPC1L1と結合するリガンドを同定するには、NPC1L1の既知リガンド(例えば、検出可能なように標識した置換2−アゼチジノングルクロニド)の親和性および特異性が重要である。当然のことながら、既知リガンドはスクリーニングアッセイにおいて使用するために標識する。本発明の一実施態様では、ヒトNPC1L1の既知リガンドの結合親和性のKD値は、ヒトNPC1L1のエゼチミブグルクロニド1のKD値以下である。この実施態様の一側面では、ヒトNPC1L1の既知リガンドの結合親和性のKD値は、約200nM以下であり、詳しくはKD値は約100nM以下であり、より詳しくはKD値は約50nM以下であり、さらに詳しくはKD値は約20nM以下であり、最も詳しくはKD値は約10nM以下である。アッセイにおける有用性のためには、既知リガンドのKD値において下限値は本質的になく、例えば、pM範囲に下がり得る。KD値が小さくなるにつれて、ヒトNPC1L1のリガンドの結合親和性が高まり、スクリーニングアッセイにとっては望ましい。
本発明のもう1つの実施態様では、ラットNPC1L1の既知リガンドの結合親和性のKD値は、ラットNPC1L1のエゼチミブグルクロニド1のKD値以下である。この実施態様の一側面では、ラットNPC1L1の既知リガンドの結合親和性のKD値は、約200nM以下であり、詳しくは約100nM以下であり、より詳しくは約50nM以下であり、さらに詳しくは約20nM以下であり、最も詳しくは約10nM以下である。
本発明のもう1つの実施態様では、ヒトNPC1L1の既知リガンドは、(a)35Sで標識された硫黄含有置換2−アゼチジノングルクロニド(特に、R9が−SO2−基を含む式IIの化合物)および(b)125Iで標識された置換2−アゼチジノングルクロニドから選択される。
この実施態様の一側面では、ヒトNPC1L1の既知リガンドは、(a)35Sで標識された硫黄含有置換2−アゼチジノングルクロニド(特に、R9が−SO2−基を含む式IIの化合物)および(b)KD値が、エゼチミブグルクロニド1のKD値以下である、125Iで標識された置換2−アゼチジノングルクロニドから選択される。
この実施態様のもう1つの側面では、ヒトNPC1L1の既知リガンドは、(a)35Sで標識された硫黄含有置換2−アゼチジノングルクロニド(特に、R9が−SO2−基を含む式IIの化合物)および(b)KD値が約200nM以下である、詳しくは約100nM以下である、より詳しくは約50nM以下である、さらに詳しくは約20nM以下である、最も詳しくは約10nM以下である、125Iで標識された置換2−アゼチジノングルクロニドから選択される。
マウス由来の膜を使用した、候補化合物の中からNPC1L1リガンドを同定するスクリーニングに3H−標識エゼチミブグルクロニドを使用する場合、NPC1L1リガンドとして同定される候補化合物が、KD値、約12000nM以下、好ましくは約1000nM以下、より好ましくは約100nM以下、最も好ましくは約10nM以下を有する結合親和性を示す候補であることが好ましい。ラット由来の膜またはヒト由来の膜を使用した、NPC1L1リガンドを同定するためのスクリーニングに3H−標識エゼチミブグルクロニドを使用する場合、NPC1L1リガンドとして同定される候補化合物が、KD値、約1000nM以下、好ましくは約100nM以下、およびより好ましくは約10nM以下を有する結合親和性を示す候補であることが好ましい。アカゲザル由来の膜を使用した、NPC1L1リガンドを同定するためのスクリーニングに3H−標識エゼチミブグルクロニドを使用する場合、NPC1L1リガンドとして同定される候補化合物が、KD値、約50nM以下、および好ましくは約10nM以下を有する結合親和性を示す候補であることが好ましい。
ラットまたはヒト由来の膜を使用した、候補化合物の中からNPC1L1リガンドを同定するためのスクリーニングに35S−標識化合物2を使用する場合、NPC1L1リガンドとして同定される候補化合物が、約10μMから約1nMの範囲のKD値を有する結合親和性を示す候補であることが好ましい。ラットまたはヒト膜を使用するアッセイに125I−標識置換2−アゼチジノングルクロニド化合物を使用する場合、NPC1L1リガンドとして同定される候補化合物が、約10nMから約10pM、および好ましくは約100pMから約10pMの範囲のKD値を有する結合親和性を示す候補であることが好ましい。
(マウスアッセイ) 本発明は、いずれの機能的NPC1L1も欠く突然変異型トランスジェニックマウスを包含する。このマウスは、ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの腸管吸収阻害薬、好ましくはNPC1L1の阻害薬を同定するためのスクリーニングアッセイにおける好都合な対照実験として使用できる。本発明のマウスアッセイは、以下の段階を含むことが好ましい:
(a)機能的NPC1L1遺伝子を有する第1マウスおよび第2マウスと、機能的NPC1L1を欠く突然変異型の第3マウスとに、ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノール含有物質(例えば、放射性標識コレステロール、例えば14C−コレステロールまたは3H−コレステロールを含む)を給餌すること;
このステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノール含有物質は、放射性標識コレステロールなどの標識コレステロール、例えば、3Hまたは14C標識コレステロールを含むことが好ましい。ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノール含有物質はまた、例えば、トウモロコシ油中にコールド非標識ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールも含み得る。
これらのアッセイでは、npc1l1−突然変異型の第3マウスは、低レベルのステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの腸管吸収を示す(+)−対照実験として使われ、第2マウスが、阻害を受けていない正常なレベルのステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの腸管吸収を示す(−)−対照実験として使われる。第2マウスには、NPC1L1アンタゴニストについて調べようとする試料は投与されない。第1マウスが、本実験である。
(b)機能的NPC1L1を有する第1マウスに試料を投与し、第2マウスには投与しないこと;
(c)前記第1マウス、第2マウスおよび第3マウスの腸におけるステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの吸収量を測定すること;
ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの腸管吸収は、当分野で公知のいずれかの方法によって測定できる。例えば、腸管吸収レベルは、血清ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールのレベルを測定することによりアッセイできる。
(d)各マウスでステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの腸管吸収レベルを比較すること;
ここで、第1マウスと第3マウスにおけるステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの腸管吸収レベルが第2マウスにおけるステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの腸管吸収量よりも少ない場合に、この試料がステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの腸管吸収アンタゴニストを含有していると判定される。
試料がステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの腸管吸収阻害薬(例えば、NPC1L1阻害薬)を含有している場合、第1マウスにおけるステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの吸収レベルは、npc1l1突然変異型の第3マウスのレベルと同じくらいになることが好ましい。
これらのスクリーニングアッセイに使用できる、代替(+)−対照実験として、NPC1L1の既知アンタゴニスト、例えば、エゼチミブが投与される機能的NPC1L1を有するマウスがある。
医薬組成物
例えば、上記のスクリーニング法によって発見されたNPC1L1リガンドを治療的に用いて(例えば、医薬組成物において)、NPC1L1の活性を刺激し、またはブロックし、これにより、NPC1L1により引き起こされ、または媒介されるいずれかの医学的状態を治療することができる。さらに、本発明の抗体分子もまた治療的に用いて(例えば、医薬組成物において)、NPC1L1と結合し、これによりNPC1L1がステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールと結合する能力をブロックことができる。ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの結合をブロックすることにより、(例えば、腸細胞などの腸管細胞による)この分子の吸収が阻止され得る。ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの吸収をブロックすることは、被験体における血清コレステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールレベルを低下させる有用な方法であり、これにより、例えば、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、冠動脈性心臓病、卒中または動脈硬化症の発生率が低下する。
用語「被験体」または「患者」とは、任意の生物、好ましくは動物、より好ましくは哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ウマ、霊長類、ネコ)、最も好ましくはヒトを包含する。
用語「医薬組成物」とは、有効成分と医薬として許容される担体および/またはアジュバントとを含む組成物を指す。
本発明の組成物は、単純溶液で投与できるが、より一般には、この組成物は、担体、好ましくは医薬として許容される担体などの他の物質と組み合わせて使用する。有用な医薬として許容される担体は、本発明の組成物を被験体に送達するのに適した、いずれかの適合する、毒性のない物質であり得る。医薬として許容される担体には、滅菌水、アルコール、脂肪、蝋および不活性固体が含まれ得る。医薬として許容されるアジュバント(緩衝剤、分散剤)もまた、医薬組成物中に組み込むことができる。
本発明の医薬組成物は、丸剤またはカプセル剤の形態であることが好ましい。丸剤およびカプセル剤を製剤するための方法は、当分野では極めて周知である。例えば、錠剤またはカプセル剤の形態での経口投与には、活性薬物成分を、経口用、無毒の、任意の医薬として許容される不活性担体、例えば、ラクトース、デンプン、スクロース、セルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、マンニトール、エチルアルコール(液体形態)と組み合わせることができる。さらに、所望によりまたは必要に応じて、この混合物に、適した結合剤、滑沢剤、崩壊剤および着色剤もまた組み込むことができる。適した結合剤として、デンプン、ゼラチン、天然糖、トウモロコシ甘味料、天然ガムおよび合成ガム、例えばアラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコールおよび蝋が挙げられる。滑沢剤のうち、これらの投与形に用いられるものとして、ホウ酸、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤として、デンプン、メチルセルロース、グアーガムなどが挙げられる。甘味剤および香味剤および防腐剤もまた、適切な場合には含めることができる。
本発明の医薬組成物は、第2の医薬組成物または物質と組み合わせて投与できる。好ましい実施態様では、第2の組成物としてコレステロール降下剤が挙げられる。併用治療が使用される場合、両方の組成物を、同時送達用の単一組成物に製剤してもよいし、または2つ以上の組成物に別々に製剤してもよい(例えば、キット)。
この製剤は、単位投与形態で与えることができることが好都合であり、これは製薬分野で周知の任意の方法によって調製できる。例えば、Gilmanら(編)(1990),The Pharmacological Bases of Therapeutics、第8版、Pergamon Press;およびRemington’s Pharmaceutical Sciences、前掲、Easton,Penn.;Avisら(編)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications Dekker,New York;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets Dekker,New York;およびLiebermanら(編)(1990),Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems Dekker,New York参照。
治療適用に関する投与計画は、治療用物質の作用を改変し得る種々の因子、例えば、患者の状態、体重、性別および食事、いずれかの感染の重篤度、投与時間、および他の臨床学的因子を考慮して、医師によって決定され得る。治療投与量は、安全性と有効性が最適となるように、低レベルから漸増されることが多い。投与量は、小さい分子サイズおよび投与後に減少する可能性のある半減期(クリアランス時間)を考慮するように調整できる。
本発明のリガンドの「有効量」は、ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの腸管吸収レベルを検出可能なように低下させるか、またはこの組成物が投与された被験体の血清ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールレベルを検出可能なように低下させる量であり得る。
このような物質の治療的投与に用いられる一般的なプロトコールは、当分野では周知である。本発明の医薬組成物は、例えば、いずれかの腸管外経路または非腸管外経路によって投与できる。
本発明の丸剤およびカプセル剤は、経口投与できる。注射可能な組成物は、当分野で公知の医療用具を用いて、例えば、皮下注射針を用いる注射によって投与できる。
本発明の注射可能な医薬組成物はまた、無針皮下注射器具、例えば、米国特許第5,399,163号;同第5,383,851号;同第5,312,335号;同第5,064,413号;同第4,941,880号;同第4,790,824号または同第4,596,556号に開示されている装置を用いて投与してもよい。
アンチセンス
本発明はまた、例えば、配列番号2もしくは配列番号4もしくは配列番号12により定義されるアミノ酸配列またはこの部分配列を有するNPC1L1をコードするmRNA(例えば、配列番号1、配列番号3、配列番号5から11または配列番号13のうちのいずれか)と特異的にハイブリダイズして、このmRNAの翻訳を阻止することが可能なアンチセンスオリゴヌクレオチドも包含する。さらに、本発明は、例えば、配列番号2もしくは配列番号4もしくは配列番号12より定義されるアミノ酸配列またはこの部分配列を有するNPC1L1をコードするゲノムDNA分子と特異的にハイブリダイズすることが可能なアンチセンスオリゴヌクレオチドも意図する。
本発明は、さらに、(a)細胞膜を通過し、この細胞内のNPC1L1をコードするmRNAと特異的に結合して、このmRNAの翻訳を阻止することにより、ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールのNPC1L1介在性吸収を減少させるのに有効なある量のオリゴヌクレオチドと、(b)細胞膜を通過することが可能な医薬として許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。一実施態様では、このオリゴヌクレオチドは、mRNAを不活化する物質と結合されている。もう1つの実施態様では、mRNAを不活化する物質がリボザイムである。
アンチセンスNPC1L1 RNAを患者の細胞に導入することによってNPC1L1の発現レベルを低下させることは、ステロール(例えば、コレステロール)または5□−スタノールの腸管吸収および患者の血清コレステロールを低下させるのに有用な方法である。
キット
本発明のキットは、医薬製剤中、より好ましくは薬剤投与形態、例えば、丸剤、散剤、注射液、錠剤、水和性顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤または坐剤中に、好ましくは医薬として許容される担体と合わせてエゼチミブを含む。例えば、Gilmanら(編)(1990),The Pharmacological Bases of Therapeutics、第8版、Pergamon Press;およびRemington’s Pharmaceutical Sciences、前掲、Easton,Penn.;Avisら(編)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications Dekker,New York;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets Dekker,New York;およびLiebermanら(編)(1990),Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems Dekker,New York参照。好ましくは投与形態はゼチア(Zetia)(登録商標)錠剤(Merck/Schering−Plough Corp.)である。エゼチミブは、いずれかの好都合な形態で供給できる。例えば、エゼチミブを含む錠剤は、30錠入、90錠入または500錠入の瓶で供給できる。
本発明のキットはまた、エゼチミブの標的がNPC1L1(NPC3)であることを示す、例えば、パッケージ挿入物の形の情報も含む。用語「エゼチミブの標的」とは、エゼチミブがステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの腸管吸収を直接減少させるか、またはNPC1L1をアンタゴナイズすることによって間接的に減少させることを示す。挿入物の形態は、紙または磁気記録媒体などの電子媒体(例えば、フロッピーディスク)またはCD−ROMなど、いずれの形態でもよい。
パッケージ挿入物はまた、キット内の医薬組成物および投与形に関する他の情報も含み得る。一般に、このような情報は、患者および医師が封入された医薬組成物および投与形を効果的で安全に使用するのを手助けする。例えば、エゼチミブ(例えば、ゼチア(Zetia)(登録商標))および/またはシンバスタチン(例えば、Zocor(登録商標))に関する以下の情報は、挿入物で供給できる:薬物動態学、薬理学、臨床研究結果、有効性評価基準、適応症および用法、禁忌、警告、使用上の注意、副作用、過量投与、適切な用量および投与、供給形態、適切な保存状態、照会先および特許情報。
本発明のキットはまた、医薬製剤中、より好ましくは薬剤投与形態、例えば丸剤、散剤、注射液、錠剤、水和性顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤または坐剤中に、好ましくは医薬として許容される担体と合わせて、シンバスタチン(
)も含む。シンバスタチンの投与形態は、Zocor(登録商標)錠剤(Merck & Co.;Whitehouse Station,NJ)であることが好ましい。
シンバスタチンを含む錠剤または丸剤は、いずれかの好都合な形態で供給できる。例えば、シンバスタチン5mgを含む丸剤または錠剤は、以下のように供給できる:30錠入、60錠入、90錠入、100錠入または1000錠入の瓶。シンバスタチン10mgを含む丸剤または錠剤は、以下のように供給できる:30錠入、60錠入、90錠入、100錠入、1000錠入または10000錠入の瓶。シンバスタチン20mgを含む丸剤または錠剤は、以下のように供給できる:30錠入、60錠入、90錠入、100錠入、1000錠入または10000錠入の瓶。シンバスタチン40mgを含む丸剤または錠剤は、以下のように供給できる:30錠入、60錠入、90錠入、100錠入または1000錠入の瓶。シンバスタチン80mgを含む丸剤または錠剤は、以下のように供給できる:30錠入、60錠入、90錠入、100錠入、1000錠入または10000錠入の瓶。
エゼチミブおよびシンバスタチンは、キットにおいて、別個の組成物として供給してもよいし、または単一組成物に合わせることができる。例えば、エゼチミブおよびシンバスタチンは、別個の薬剤投与形態(例えば、2つの別々の丸剤または錠剤)においてと同様の、単一の、共通の薬剤投与形態(例えば、丸剤または錠剤)に入れて供給できる。
npc1l1−細胞
本発明は、機能的NPC1L1タンパク質をコードするか生産できるNPC1L1遺伝子が欠失している、いずれかの単離哺乳動物細胞(例えば、単離マウス細胞、単離ラット細胞または単離ヒト細胞)を提供する。この実施態様には、遺伝子コード領域またはいずれかの調節エレメント(例えば、プロモーター)の点突然変異、末端切断または欠失を含む突然変異型npc1l1遺伝子が含まれる。
例えば、このような細胞は、機能的NPC1L1タンパク質を全く生産しない、内因性染色体NPC1L1のホモ接合突然変異を含む突然変異型マウス(例えば、下記、実施例22のマウス)から単離できる。さらに、本発明は、このような突然変異型マウス、特に機能的NPC1L1を全く生産しない突然変異型トランスジェニックマウス(マウスにおける内因性染色体NPC1L1の欠失領域が、配列番号45に示される核酸配列のヌクレオチド790から998に相当する)から誘導されたか、または単離されたいかなる細胞、組織、器官、体液、核酸、ペプチドまたは他の生物学的物質も含む。
単離細胞は、例えば、突然変異型マウスの十二指腸、胆嚢、肝臓、小腸または胃から単離するか、または誘導することができる。さらに、この細胞は、腸細胞であり得る。
npc1l1−突然変異型細胞は、ステロール、5α−スタノールまたはエゼチミブのNPC1L1依存的取込みまたは結合が起こらないことから、例えば、スクリーニングアッセイにおける対照実験において使用するのに有用である(例えば、前掲、参照)。スクリーニングアッセイにおいて特定の試料によってもたらされる阻害のレベルは、突然変異型細胞を用いて実施したアッセイのレベルと比較することができる。理想的には、例えば、本明細書に記載されるスクリーニングアッセイにおいて、アンタゴニストの存在下で、非突然変異型細胞または細胞膜で観察される結合の量が、突然変異型npc1l1細胞または細胞膜単独を用いて観察される結合の量と同じくらいになることであるが、必ずしもそうではない。
以下の実施例は、本発明をより明確に記載するために提供されており、本発明の範囲を限定するとは決して解釈されるべきではない。
(実施例1)
ラットNPC1L1、マウスNPC1L1およびヒトNPC1L1のクローニングおよび発現
ラットNPC1L1、マウスNPC1L1またはヒトNPC1L1は、全て、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して都合よく増幅することができる。このアプローチでは、ラットcDNAライブラリー、マウスcDNAライブラリーまたはヒトcDNAライブラリーのDNAを、適切なプライマーと標準的なPCR条件を使用して増幅することができる。プライマーの設計および最適な増幅条件は、当分野で一般的に公知である標準的な技術である。
増幅したNPC1L1遺伝子は、これもまた当分野で一般的に公知である方法を使用して、都合よく発現させることができる。例えば、NPC1L1を、pET系プラスミドベクター(Stratagene;La Joola,CA)のT7 RNAポリメラーゼプロモーターの下流に挿入できる。次いで、このプラスミドを、T7発現系(例えば、BL21DE3大腸菌細胞)に形質転換し得、液体培養により増殖させ、(例えば、IPTGをこの細菌培養物に加えることによって)誘導できる。
(実施例2)
直接結合アッセイ
膜調製物:NPC1L1(例えば、配列番号2、4または12)をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターでトランスフェクトされたCaco2細胞を、5mM EDTA/リン酸緩衝生理食塩水中でインキュベートし、続いて、繰返しピペッティングすることにより、回収する。この細胞を1000×gにて5分間遠心分離する。EDTA/PBSをデカントし、等量の氷冷50mM Tris−HCl(pH7.5)を加え、細胞をPolytron(PT10チップ、設定5、30秒)で破砕する。核および未破壊の細胞を1000×gにて10分間沈降させ、この後、上清を50000×gにて10分間遠心分離する。この上清をデカントし、ペレットをPolytronにより再懸濁し、タンパク質アッセイ(ビシンコニン酸,Pierce)用に試料を取り、この組織を再度50000×gにて遠心分離する。ペレットを−20℃で凍結保存する。
結合アッセイ:飽和結合では、4種類の濃度の[3H]−エゼチミブ(15Ci/mmol)を、10−5Mエゼチミブを伴わずに10−5Mエゼチミブとともに、膜タンパク質50μgとともに、総量200μlの50mM Tris−HCl(pH7.5)中で30℃で30分間、3連でインキュベートする。試料をGF/Bフィルターで濾過し、冷Trisバッファー2mlで3回洗浄する。フィルターを電子レンジ中で乾燥させ、Meltilexワックスシンチラントに浸漬し、45%効率で計数する。競合結合アッセイでは、5種類の濃度の試料を、上記条件下で、18nM[3H]−エゼチミブおよび膜タンパク質70μgとともに3連でインキュベートする。Prism(GraphPad Software)非線形最小二乗曲線フィッティングプログラムを用いて曲線をこのデータにフィッティングし、Cheng and Prusoff(Cheng,Y.C.ら、(1973)Biochem.Pharmacol.22:3099から3108頁)に従ってIC50値からKi値を得る。
(実施例3A)
SPAアッセイ
96ウェルプレートの各ウェルに、ヒトNPC1L1−CHO過剰発現膜、マウスNPC1L1−CHO過剰発現膜またはラットNPC1L1−CHO過剰発現膜(Biosignal)10μgと200μg/ウェルのYsi−WGA−SPAビーズ(Amersham)との反応混合物100μlを、NPC1L1アッセイバッファー(25mM HEPES、pH7.8、2mM CaCl2、1mM MgCl2、125mM NaCl、0.1%BSA)で調製する。0.4nMのリガンド−[125I]−エゼチミブ−ストックをNPC1L1アッセイバッファーで調製する。上記の溶液を、以下のように96ウェルアッセイプレートに加える:NPC1L1アッセイバッファー50μl、反応混合物100μl、リガンドストック50μl(最終リガンド濃度は0.1nMである)。このアッセイプレートを、プレートシェーカーにて5分間振盪し、次いで、8時間インキュベートした後に、Microbeta Triluxカウンター(PerkinElmer)にてcpm/ウェルを測定する。
これらのアッセイでは、[125I]−エゼチミブが、ヒトNPC1L1を発現する細胞膜、マウスNPC1L1を発現する細胞膜またはラットNPC1L1を発現する細胞膜と結合することを示す。放射性標識コレステロール(例えば、125I−コレステロール)を用いて同じ実験を実施しても同様の結果が得られる。
(実施例3A)
代替SPAアッセイ
最終濃度は:1nM35S−2(Km〜2から5nM、〜50000dpm/アッセイ)でなければならない;
膜(約1から2nM受容体)1μg;0.007%から0.03%タウロコール酸塩(1%ストック0.140μl);0.010%から0.05%ジギトニン(1%ストック0.200μl);5%DMSO(阻害薬1.00μl)。
96ウェルプレートの各ウェルに、DMSO阻害薬溶液1μlを入れた後、放射性リガンドおよび界面活性剤をバッファーA 10μl中2×溶液として加える。1分間振盪して、阻害薬とリガンドを確実に混合した後、バッファーAで希釈した受容体溶液9μlを加えて開始する。再度、振盪した後、プレートを37℃で2時間インキュベートする。次いで、WGAビーズ(0.3mg)をバッファーA中懸濁液3μlとして加えた後、30分間振盪する。膜をビーズとともに30分間プレインキュベートした後にリガンドを加えても同様の結果が得られる。最後に、バッファーAで300μlに希釈し、これでプレートを埋め、3000rpm×5分で回転させ、「Microbeta」カウンターで各ウェルにつき2分読み取る。
ストック
リガンド:35S−2は、525.42nM、0616μCi/μl(アセトニトリル中)である;spec.act.=3.8916×10−4fmol/dpm;1168Ci/mmol)
膜:第3バッチ組換えヒト(HEK−293細胞で発現させたもの);20.2μg/μl ストック;〜20−40pmol NPC1L1/mg タンパク質
バッファーA:26mM NaHCO3;0.96mN NaH2PO4;5mM HEPES;5.5mMグルコース(任意選択で添加する);117mM NaCl;5.4mM KCl
(実施例4)
コレステロール取込みアッセイ
SR−B1を発現するCHO細胞またはラットNPC1L1の3種の異なるクローンもしくはマウスNPC1L1の1種のクローンを発現するCHO細胞のいずれかを、無コレステロール培地で一晩飢餓にし、次いで、10□Mエゼチミブの不在下または存在下で混合合成ミセルエマルジョン中の[3H]−コレステロールを、4分間、8分間、12分間または24分間投与した。この細胞を回収し、脂質を有機的に抽出した。抽出された脂質を薄層クロマトグラフィー(TLC)プレート上にスポットし、有機気相内で分離した。各アッセイについての遊離コレステロールのバンドを単離し、シンチレーションカウンターで計数した。
SR−B1発現細胞は、4分間程度の初期に[3H]−コレステロール取込みの増加を示した。この取込みはまた、エゼチミブによって阻害された。3種のラットクローンおよび1種のマウスクローンは、バックグラウンドレベルの[3H]−コレステロール取込みを生じるように見えた。この取込みは、非形質転換CHO細胞の取込みと同程度であった。
これらの実験において、より最適な実験条件が開発された場合には、CHO細胞が[3H]−コレステロールのマウスNPC1L1依存的取込み、ラットNPC1L1依存的取込みおよびヒトNPC1L1依存的取込みを行うことができることを示すデータが得られるであろう。
(実施例5)
Wistarラット組織におけるラットNPC1L1の発現
これらの実験では、いくつかのラット組織におけるラットNPC1L1 mRNAの発現を評価した。評価した組織は、食道、胃、十二指腸、空腸、回腸、近位結腸、遠位結腸、肝臓、膵臓、心臓、大動脈、脾臓、肺、腎臓、脳、筋肉、精巣、卵巣、子宮、副腎および甲状腺であった。全RNA試料を、少なくとも3種の雄動物および3種の雌動物から単離し、プールした。次いで、これらの試料を、標準的な二重標識蛍光オリゴヌクレオチドプローブを使用するTaqman解析によるリアルタイム定量PCRに付した。代表的なプローブの設計では、5’リポーター色素(例えば、6FAM(6−カルボキシフルオレセイン)またはVIC)および3’クエンチング色素(例えば、TAMRA(6−カルボキシテトラメチル−ローダミン))を組み込んだ。
ラットNPC1L1:
順方向:TCTTCACCCTTGCTCTTTGC(配列番号14)
逆方向:AATGATGGAGAGTAGGTTGAGGAT(配列番号15)
プローブ:[6FAM]TGCCCACCTTTGTTGTCTGCTACC[TAMRA](配列番号16)
ラットβ−アクチン:
順方向:ATCGCTGACAGGATGCAGAAG(配列番号17)
逆方向:TCAGGAGGAGCAATGATCTTGA(配列番号18)
プローブ:[VIC]AGATTACTGCCCTGGCTCCTAGCACCAT[TAMRA](配列番号19)
PCR反応を、96ウェル形式で、各ウェルに反応混合物25μlを用いて実行した。この反応混合物には、Platinum SuperMix(12.5μl)、ROX Reference Dye(0.5μl)、50mM塩化マグネシウム(2μl)、RT反応から得たcDNA(0.2μl)を含めた。多重反応には、各々200nMの遺伝子特異的プライマーおよび100nMのFAM標識プローブおよび各々100nMの遺伝子特異的プライマーおよび50nMのVIC標識プローブを含めた。反応は、標準的な2段階サイクリングプログラム(95℃で15秒間および60℃で1分間を40サイクル)を用いて実行した。
十二指腸、空腸および回腸組織において最高レベルの発現が観察された。これらのデータは、NPC1L1が腸におけるコレステロール吸収においてある役割を果たしていることを示す。
(実施例6)
マウス組織におけるマウスNPC1L1の発現
これらの実験では、いくつかのマウス組織におけるマウスNPC1L1 mRNAの発現を評価した。評価した組織は、副腎、BM、脳、心臓、ランゲルハンス島、LI、小腸、腎臓、肝臓、肺、MLN、PLN、筋肉、卵巣、下垂体、胎盤、パイエル板、皮膚、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、子宮および気管であった。全RNA試料を、少なくとも3種の雄動物および3種の雌動物から単離し、プールした。次いで、これらの試料を、以下のプライマーおよびプローブを使用するTaqman解析によるリアルタイム定量PCRに付した:
マウスNPC1L1:
順方向:ATCCTCATCCTGGGCTTTGC(配列番号20)
逆方向:GCAAGGTGATCAGGAGGTTGA(配列番号21)
プローブ:[6FAM]CCCAGCTTATCCAGATTTTCTTCTTCCGC[TAMRA](配列番号22)
パイエル板、小腸、胆嚢、および胃の組織において最高レベルの発現が観察された。これらのデータは、消化系において生じるNPC1L1のコレステロール吸収の役割と一致する。
(実施例7)
ヒト組織におけるヒトNPC1L1の発現
これらの実験では、46種の正常組織の2045の試料におけるヒトNPC1L1 mRNAの発現を評価した。マイクロアレイに基づく遺伝子発現解析を、Affymetrixの確立されたプロトコールに厳密に従って、塩基対4192から5117(配列番号43)に対応するcRNAプローブを使用して、Affymetrix HG−U95 GeneChipで実施した。GeneChipを、低光量増幅管(PMT)下でスキャンし、Affymetrix MAS 4.0アルゴリズムまたはMAS 5.0アルゴリズムのいずれかを用いてデータを正規化した。さらに、ほとんどの試料について「スパイクイン(spike ins)」を使用して、Gene Logicアルゴリズムおよび手順に従って、標準曲線を作成し、RNA濃度値を得た。これらの結果の概要を以下の表2に示す。
影を付けたデータは、最高レベルのNPC1L1 mRNAが検出された組織に該当する。「存在」の欄では、NPC1L1 mRNAが検出された評価された特定の組織試料の割合を示す。「不在」の欄では、NPC1L1 RNAが検出されなかった評価された特定の組織試料の割合を示す。「下位25%」の欄、「中央値」の欄および「上位75%」の欄では、評価された各組織セットで観察された相対的NPC1L1シグナル強度の統計的分布を示す。
(実施例8)
ラット小腸におけるラットNPC1L1 mRNA、ラットIBAT mRNA、ラットSR−B1 mRNAの分布
これらの実験では、ラット小腸の近位−遠位軸に沿ったラットNPC1L1 mRNAの分布を評価した。5匹の独立した動物から小腸を単離し、ほぼ等しい長さの10切片に分割した。全RNAを単離し、ラットNPC1L1 mRNA、ラットIBAT(回腸胆汁酸輸送体)mRNAまたはラットSR−B1 mRNAの局所発現レベルについて、Taqman解析によるリアルタイム定量PCRによって解析した。この解析に使用したプライマーおよびプローブは:
ラットNPC1L1:
順方向:TCTTCACCCTTGCTCTTTGC(配列番号23)
逆方向:AATGATGGAGAGTAGGTTGAGGAT(配列番号24)
プローブ:[6FAM]TGCCCACCTTTGTTGTCTGCTACC[TAMRA](配列番号25)
ラットビリン:
順方向:AGCACCTGTCCACTGAAGATTTC(配列番号26)
逆方向:TGGACGCTGAGCTTCAGTTCT(配列番号27)
プローブ:[VIC]CTTCTCTGCGCTGCCTCGATGGAA[TAMRA](配列番号28)
ラットSR−B1:
順方向:AGTAAAAAGGGCTCGCAGGAT(配列番号29)
逆方向:GGCAGCTGGTGACATCAGAGA(配列番号30)
プローブ:[6FAM]AGGAGGCCATGCAGGCCTACTCTGA[TAMRA](配列番号31)
ラットIBAT:
順方向:GAGTCCACGGTCAGTCCATGT(配列番号32)
逆方向:TTATGAACAACAATGCCAAGCAA(配列番号33)
プローブ:[6FAM]AGTCCTTAGGTAGTGGCTTAGTCCCTGGAAGC TC[TAMRA](配列番号34)
であった。
各動物の腸切片のmRNA発現レベルを別個に解析し、次いで、観察された発現レベルを、この腸切片において観察されたビリンmRNAレベルに対して正規化した。次に、各切片についての正規化観察RNA発現レベルの平均をとった。
NPC1L1およびSR−B1発現レベルは、より遠位の回腸切片と比較して、空腸(切片2から5)において最高であった。空腸は、コレステロール吸収部位であると考えられているため、これらのデータは、ラットNPC1L1のこのような役割を示唆している。回腸に有利なIBAT分布は十分に立証されており、この実験での対照として使われた。
(実施例9)
ラット空腸組織におけるラットNPC1L1 mRNAのin situ解析
ラットNPC1L1 mRNAの局在化を、ラット空腸連続切片のin situ ハイブリダイゼーション解析によって特性決定した。この解析に使用したプローブは:
T7−センスプローブ:GTAATACGACTCACTATAGGGCCCTGACGGTCCTTCCTGAGGGAATCTTCAC(配列番号35)
T7−アンチセンスプローブ:GTAATACGACTCACTATAGGGCCTGGGAAGTTGGTCATGGCCACTCCAGC(配列番号36)
であった。
これらのRNAプローブは、ラットNPC1L1ヌクレオチド3318から3672(配列番号1)に相当するPCR増幅DNA断片のT7 RNAポリメラーゼ増幅を使用して合成した。センスジゴキシゲニン−UTP標識cRNAプローブおよびアンチセンスジゴキシゲニン−UTP標識cRNAプローブは、DIG RNA Labeling Kitを製造業者の教示に従って使用して、T7プロモーターから作製した。ラット空腸の連続凍結切片をセンスプローブおよびアンチセンスプローブとハイブリダイズさせた。ジゴキシゲニン標識を、これまでの方法に基づいてDIG Nucleic Acid Detection Kitを用いて検出した。陽性シグナルは、ハイブリダイゼーション部位における赤色反応生成物の沈着によって確認される。
このアンチセンスプローブは、低倍率(40×)では、陰窩−繊毛軸に沿って、上皮の強い染色を示した。観察されたラットNPC1L1 mRNAの発現レベルは、繊毛先端よりも陰窩において多少強いように思われた。高倍率(200×)では、腸細胞において染色が観察されたが、杯細胞では観察されなかった。センスプローブ(対照)では染色が観察されなかったことにより、NPC1L1アンチセンスシグナルの高い特異性が確認された。これらのデータは、コレステロールの腸管吸収におけるラットNPC1L1の役割のさらなる証拠を提供した。
(実施例10)
蛍光標識エゼチミブと一過性にトランスフェクトされたCHO細胞との結合についてのFACS解析
これらの実験では、BODIPY標識エゼチミブ(Altmannら、(2002)Biochim.Biophys.Acta 1580(1):77−93)がNPC1L1およびSR−B1と結合する能力を評価した。「BODIPY」とは、BODIPY−エゼチミブを検出するために使用した蛍光基である。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞をラットNPC1L1 DNA(rNPC1L1/CHO)、マウスNPC1L1 DNA(mNPC1L1/CHO)、マウスSR−B1 DNA(mSRBI/CHO)またはEGFP DNA(EGFP/CHO)で一過性にトランスフェクトした。EGFPとは、陽性対照として使用した強化緑色蛍光タンパク質である。トランスフェクトされたCHO細胞または非トランスフェクトCHO細胞を、次いで、100nM BODIPY標識エゼチミブで染色し、FACSにより解析した。また、細胞をBODIPY−エゼチミブで標識しない対照実験および非トランスフェクトCHO細胞をBODIPY−エゼチミブで標識する対照実験も実施した。
非トランスフェクトCHO細胞、rNPC1L1/CHO細胞またはmNPC1L1/CHO細胞では、染色が観察されなかった。陽性対照EGFP/CHO細胞では、蛍光が検出された。また、マウスSR−B1/CHO細胞では、染色が検出された。これらのデータは、試験した条件下では、BODIPY−エゼチミブがSR−B1と結合可能であること、およびこのような結合が蛍光BODIPY基の存在によって除去されないことを示す。より最適な条件が決定されると、BODIPY−エゼチミブがrNPC1L1/CHO細胞およびmNPC1L1/CHO細胞を標識することが示される。
(実施例11)
抗FLAG抗体M2で標識した一過性トランスフェクトCHO細胞のFACS解析
これらの実験では、CHO細胞におけるFLAGタグ付NPC1L1の発現を評価した。CHO細胞をマウスNPC1L1 DNA、ラットNPC1L1 DNA、FLAG−ラットNPC1L1 DNAまたはFLAG−マウスNPC1L1 DNAで一過性にトランスフェクトした。使用した8アミノ酸FLAGタグは、DYKDDDDK(配列番号37)であった。このタグは、分泌シグナル配列直後のアミノ末端細胞外ループ上に挿入した。これらの細胞を、市販の抗FLAGモノクローナルマウス抗体M2とともにインキュベートし、続いて、BODIPYタグ付抗マウス二次抗体とともにインキュベートした。処理した細胞を、次いで、FACSによって解析した。
このM2抗体は、FLAG−ラットNPC1L1 DNAでトランスフェクトされたCHO細胞およびFLAG−マウスNPC1L1でトランスフェクトされたCHO細胞を染色した。マウスNPC1L1 DNAでトランスフェクトされたCHO細胞およびラットNPC1L1 DNAでトランスフェクトされたCHO細胞では、染色が観察されなかった。これらのデータは、ラットNPC1L1およびマウスNPC1L1が有意な固有の蛍光を有しておらず、抗FLAG抗体が結合していないことを示した。これらの細胞の観察されたFLAGによる標識により、このFLAG−マウスNPC1L1タンパク質およびFLAG−ラットNPC1L1タンパク質がCHO細胞の細胞膜に局在化していることが示された。
(実施例12)
一過性にトランスフェクトされたCHO細胞におけるFLAG−ラットNPC1L1−EGFPキメラのFACS解析
これらの実験では、CHO細胞におけるラットNPC1L1の表面および細胞質での局在化を評価した。CHO細胞をFLAG−ラットNPC1L1 DNAまたはFLAG−ラットNPC1L1−EGFP DNAで一過性にトランスフェクトした。これらの融合物では、FLAGタグは、ラットNPC1L1のアミノ末端にあり、EGFP融合物は、ラットNPC1L1のカルボキシ末端にあった。これらの細胞を、次いで、M2抗FLAGマウス(一次)抗体で染色し、続いて、BODIPY標識抗マウス抗体で二次染色した。対照実験では、細胞を二次抗体でのみ染色し、一次抗体(M2)では染色しなかった。染色した細胞を、次いで、FACSにより解析した。
対照実験では、FLAG−ラットNPC1L1でトランスフェクトされた細胞をBODIPY抗マウス二次抗体で染色したが、一次抗体では染色しなかった。このデータは、二次抗マウス抗体が、FLAG−ラットNPC1L1に対して有意な特異性を有さないこと、およびFLAG−ラットNPC1L1自体が有意な蛍光を有さないことを示した。
別の対照実験では、非標識FLAG−ラットNPC1L1−EGFP細胞をFACS解析した。これらの実験では、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)の自己蛍光を検出した。
FLAG−ラットNPC1L1細胞を抗FLAGマウス抗体M2およびBODIPY標識抗マウス二次抗体で染色し、FACS解析した。この解析からのデータは、これらの細胞が二次BODIPY標識抗体で標識されたことを示した。このことにより、CHO細胞の表面でのFLAG−ラットNPC1L1タンパク質の発現が示された。
FLAG−ラットNPC1L1−EGFP細胞を抗FLAGマウス抗体M2およびBODIPY標識抗マウス二次抗体で染色し、FACS解析した。この解析から得たデータは、両方のマーカー(BODIPYおよびEGFP)が存在することを示し、このことにより、キメラタンパク質の表面発現が示された。このデータはまた、タンパク質の一部が細胞内に存在し、輸送小胞と関連し得ることも示した。これらのデータは、コレステロール、または細胞内小器官(粗面小胞体など)で発現したタンパク質の小胞輸送におけるラットNPC1L1の役割を裏付けた。
(実施例13)
CHO細胞株クローンにおけるFLAG−ラットNPC1L1−EGFPキメラのFACS解析および蛍光顕微鏡検査
これらの実験では、ラットNPC1L1の細胞局在化をFACS解析および免疫組織化学によって評価した。CHO細胞をFLAG−ラットNPC1L1−EGFP DNAでトランスフェクトし、抗FLAGマウス抗体M2で染色し、次いで、BODIPY標識抗マウス二次抗体で染色した。この融合物では、FLAGタグは、ラットNPC1L1のアミノ末端にあり、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)タグは、ラットNPC1L1のカルボキシ末端にある。染色した細胞を、次いで、FACSおよび蛍光顕微鏡検査法によって解析した。
FLAG−ラットNPC1L1−EGFP DNAでトランスフェクトされた細胞を抗FLAGマウス抗体M2で染色し、次いで、BODIPY標識抗マウス二次抗体で染色した。これらの細胞のFACS解析により、両方のマーカーが検出され、このことにより、キメラタンパク質の表面発現が示された。
FLAG−ラットNPC1L1−EGFPでトランスフェクトされた細胞を63×倍率で蛍光顕微鏡によって分析した。これらの細胞の蛍光顕微鏡による分析では、有意な核周囲オルガネラ染色を含む非核染色を示した。この画像を分析しても、小胞関連タンパク質の存在は確認できなかった。これらのデータは、融合タンパク質がCHO細胞の細胞膜上で発現されたことを示した。
(実施例14)
ポリクローナル抗ラットNPC1L1ウサギ抗体の作製.
アミノ末端システイン残基またはカルボキシ末端システイン残基を含む合成ペプチド(配列番号39から42)を、ジスルフィド結合を介してキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)担体タンパク質と結合し、これを抗原として使用して、ニュージーランド白色ウサギ(3ヶ月齢から9ヶ月齢の範囲)においてポリクローナル抗血清を惹起した。このKLH−ペプチドを、等量のフロイントアジュバントと混合することによって乳化し、これを3箇所の皮下背面部位に注射した。16週間免疫スケジュールの前に、免疫前血清試料を採取し、続いて、0.25mg KLH−ペプチドの初回注射を実施し、スケジュールどおり0.1mg KLH−ペプチドの追加抗原注射を3回実施した。動物の耳介動脈から採血し、この血液を凝固させた後、この血清を遠心分離によって集めた。
固相に結合した遊離ペプチド(1μg/ウェル)を用いる酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)により、抗ペプチド抗体力価を決定した。結果を、OD450 0.2をもたらした血清希釈の逆数として表す。検出は、ビオチン化抗ウサギIgG、セイヨウワサビペルオキシダーゼ−ストレプトアビジン(HRP−SA)複合体およびABTSを使用して行った。
(実施例15)
ウサギ抗ラットNPC1L1抗血清を使用する、ラットNPC1L1 DNAで一過性にトランスフェクトされたCHO細胞におけるラットNPC1L1発現のFACS解析
これらの実験では、CHO細胞の表面におけるラットNPC1L1の発現を評価した。CHO細胞をラットNPC1L1 DNAでトランスフェクトした後、ウサギ免疫前血清または上記実施例14に記載した10週間抗ラットNPC1L1血清(すなわち、A0715、A0716、A0867またはA0868)のいずれかとともにインキュベートした。一次抗血清で標識した細胞を、次いで、BODIPY修飾抗ウサギ二次抗体で染色し、続いて、FACS解析を行った。
免疫前血清試料のいずれについても、抗体表面標識は観察されなかった。A0715およびA0868の両方において、ラットNPC1L1トランスフェクト細胞の特異的細胞表面標識が観察された。抗血清A0716およびA0867は、このアッセイ形式においてラットNPC1L1表面発現を認識しなかった。このことは、天然の非融合ラットNPC1L1タンパク質がCHO細胞において発現され、CHO細胞膜に局在化することを示す。NPC1L1の細胞表面発現は、コレステロールの腸管吸収における役割と一致する。
(実施例16)
ウサギ抗ラットNPC1L1抗血清を使用する、FLAG−マウスNPC1L1 DNAで一過性にトランスフェクトされたCHO細胞もしくはFLAG−ラットNPC1L1 DNAで一過性にトランスフェクトされたCHO細胞または非トランスフェクトCHO細胞のFACS解析
これらの実験において、CHO細胞におけるFLAG−マウスNPC1L1およびFLAG−ラットNPC1L1の発現を評価した。CHO細胞をFLAG−マウスNPC1L1 DNAまたはFLAG−ラットNPC1L1 DNAで一過性にトランスフェクトした。FLAG−マウスNPC1L1トランスフェクト細胞およびFLAG−ラットNPC1L1トランスフェクト細胞を、A0801血清、A0802血清、A0715血清もしくはA0868血清(実施例14参照)または抗FLAG抗体M2のいずれかで標識した。標識した細胞を、次いで、BODIPY標識抗ウサギ二次抗体で染色し、FACS解析した。非トランスフェクトCHO細胞を、トランスフェクト細胞株と同様に解析した。
試験した抗血清のいずれについても、非トランスフェクトCHO細胞の陽性染色は観察されなかった。FLAG−ラットNPC1L1トランスフェクト細胞の血清A0801による標識は観察されたが、FLAG−マウスNPC1L1トランスフェクト細胞ではこのような標識は観察されなかった。FLAG−マウスNPC1L1トランスフェクト細胞またはFLAG−ラットNPC1L1トランスフェクト細胞では血清A0802による標識は観察されなかった。FLAG−ラットNPC1L1トランスフェクト細胞では血清A0715による強い標識が観察され、FLAG−マウスNPC1L1トランスフェクト細胞では血清A0715による弱い標識が観察された。ラットNPC1L1トランスフェクト細胞およびマウスNPC1L1トランスフェクト細胞では血清A0868による弱い標識が観察された。FLAG−ラットNPC1L1トランスフェクト細胞およびFLAG−マウスNPC1L1トランスフェクト細胞では抗FLAG M2抗体による強い標識が観察された。この強いM2染色は、M2が既知の濃度の親和性精製されたモノクローナル抗体であるという事実に起因する可能性が高い。対照的に、個々の抗血清は、未精製のポリクローナルであり、予測できない濃度の抗ラットNPC1L1抗体を含む。これらのデータは、FLAG−マウスNPC1L1タンパク質およびFLAG−ラットNPC1L1タンパク質がCHO細胞において発現され、CHO細胞膜に局在化されるというさらなる証拠を提供する。NPC1L1の細胞表面発現は、コレステロールの腸管吸収における役割と一致する。
(実施例17)
ウサギ抗ラットNPC1L1抗血清A0715を用いるラット空腸組織の免疫組織化学分析
これらの実験では、ラット空腸におけるラットNPC1L1の局在化を免疫組織化学により分析した。ラット空腸を取り出し、すぐにO.C.T.化合物に包埋し、液体窒素で凍結した。クリオスタットミクロトームを用いて切片(6μm)を作製し、スライドガラス上に載せた。切片を室温にて風乾した後、ブアン固定液で固定した。ストレプトアビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ免疫染色を、Histostain−SPキットを使用して行った。内因性組織ペルオキシダーゼ活性を、メタノール中3%H2O2中で10分間インキュベートすることによりブロックし、非特異的抗体結合を、10%非免疫ウサギ血清中で45分間インキュベートすることにより最小限に抑えた。切片を、1:500希釈のウサギ抗ラットNPC1L1抗血清A0715またはA0868とともに4℃でインキュベートし、続いて、ビオチン化ヤギ抗ウサギIgGおよびストレプトアビジン−ペルオキシダーゼとともにインキュベートした。続いて、これらの切片を、アミノエチルカルバゾール(AEO)−H2O2染色系で発色させ、ヘマトキシリンを用いて対比染色し、顕微鏡により検査した。このプロトコールを使用する陽性反応は、抗原抗体反応部位における赤色反応生成物の沈着によって確認する。核は、ヘマトキシリン対比染色による青色を呈した。対照は、同じ組織ブロックの隣接する切片で同時に実施した。対照手順は、以下の(1)一次抗体を免疫前血清で置き換えること、(2)一次抗体を非免疫ウサギ血清で置き換えること、(3)一次抗体をPBSで置き換えること、(4)二次抗体をPBSで置き換えることとした。
本実施例は、抗ラットNPC1L1血清A0715または免疫前血清で染色した組織の、低倍率(40×)および高倍率(200×)での分析を示す。A0715で染色された組織は、低倍率では、繊毛上皮層(腸細胞)で強い陽性染色を示した。A0715で染色された組織は、高倍率では、腸細胞頂端膜で強い陽性染色を示した。免疫前血清でのみ処理した組織では、染色は観察されなかった。血清A0868を用いた場合も同様の結果が得られた。これらのデータは、ラットNPC1L1がラット空腸において発現されることを示し、これは、コレステロールの腸管吸収における役割と一致する。
(実施例18)
標識コレステロール取込みアッセイ
本実施例では、ラットNPC1L1で安定にトランスフェクトされたCHO細胞が標識コレステロールを取り込む能力を評価した。これらのアッセイでは、コレステロール取込みを、単一濃度にて、パルス−チェイス実験により評価した。これらの実験で得られたデータを以下の表3に示す。
細胞:
A.ラットNPC1L1 cDNAで安定にトランスフェクトされたCHO細胞
B.CHOバックグラウンド(トランスフェクションなし)
細胞は、12ウェルプレートに500000細胞/ウェル(mL)で播種した。
手順:
全ての試薬および培養プレートを、特に断りのない限り、37℃で維持した。
(飢餓) 維持培地(F12 HAMS、1%Pen/Strep、10%FCS)を除去し、細胞を、無血清HAMS培地で洗浄した。無血清培地を、次いで、1mL「飢餓」培地(F12 HAMS、Pen/Strep、5%リポタンパク質欠乏血清(LPDS))に取り替えた。
各細胞株の1プレートを一晩飢餓状態にした。残りの2プレートを、「飢餓なし」とした(以下参照)。
(プレインキュベーション) 全てのプレートから培地を除去し、無血清HAMSで洗浄し、30分間飢餓培地に取り替えた。
(3H−コレステロールパルス) 以下のものを各ウェルに直接加えた。
混合胆汁酸塩ミセル50μl中の0.5μCi 3H−コレステロール(〜1.1×106dpm/ウェル)
4.8mMタウロコール酸ナトリウム(2.581mg/mL)
0.6mMオレイン酸ナトリウム(0.183mg/mL)
0.25mMコレステロール(0.1mg/mL)
これらは、超音波振動により「飢餓」培地中に分散される
最終的な培地のコレステロール濃度=5μg/mL
標識コレステロールパルスの時点は、0分、4分、12分および24分であった。各処理について3連のウェルを調製した。
(洗浄) 指定時間に培地を吸引し、細胞を37℃でHobbsバッファーA(50mM、Tris、0.9% NaCl、0.2% BSA、pH 7.4)で1回、HobbsバッファーB(50mM Tris、0.9% NaCI、pH 7.4(BSAなし))で1回洗浄した。
(処理/分析) 細胞を0.2N NaOH(2mL/ウェル)を用いて室温で一晩消化した。1.5mlアリコートを各ウェルから取り出し、中和し、シンチレーション計測法により放射能を測定した。全てのウェルから50μlアリコートをさらに2つずつ、Pierce micro BCA法により総タンパク質についてアッセイした。この細胞において観察された標識コレステロールの量を、この細胞におけるタンパク質の量により正規化した。
(実施例19)
コレステロール取込みに対するエゼチミブの効果
マウスNPC1L1もしくはラットNPC1L1またはマウスSR−B1で安定にトランスフェクトされたCHO細胞が3H−標識コレステロールを取り込む能力に対するエゼチミブの効果を、パルス−チェイス実験により評価した。1種類のマウスNPC1L1 cDNAクローン(C7)と3種類のラットNPC1L1クローン(C7、C17およびC21)を評価した。マウスSR−B1で安定にトランスフェクトされたCHO細胞、マウスNPC1L1で安定にトランスフェクトされたCHO細胞およびラットNPC1L1で安定にトランスフェクトされたCHO細胞がエゼチミブの不在下で標識コレステロールを取り込む能力もまた、パルス−チェイス実験により評価した。これらの実験で得られたデータを以下の表4および表5に示す。さらに、4種類の異なる非標識コレステロール濃度の存在下でトランスフェクトCHO細胞および非トランスフェクトCHO細胞によって取り込まれる総コレステロール量もまた、評価した。これらの実験によるデータを以下の表6に示す。
細胞:
A.ラットNPC1L1 cDNAまたはマウスNPC1L1 cDNAで安定にトランスフェクトされたCHO細胞
B.CHOバックグラウンド(トランスフェクションなし)
C.SR−B1トランスフェクトCHO細胞
細胞は、12ウェルプレートに500000細胞/ウェル(mL)にて播種した。
手順:
全ての試薬および培養プレートを、特に断りのない限り、37℃で維持した。
(飢餓) 維持培地(F12 HAMS、1%Pen/Strep、10%FCS)を除去し、細胞を無血清HAMS培地で洗浄した。無血清培地を、次いで、1mL「飢餓」培地(F12 HAMS、Pen/Strep、5%リポタンパク質欠乏血清(LPDS))に取り替えた。細胞を一晩飢餓状態にした。
(プレインキュベーション/前投与) 全てのプレートから培地を除去し、新鮮な飢餓培地に取り替え、30分間プレインキュベートした。ウェルの半分にエゼチミブを含む培地を与えた(EtOH中のストック溶液;最終濃度=10μM)。
(3H−コレステロールパルス) 以下のものを各ウェルに直接加えた:
混合胆汁酸塩ミセル50μl中の0.5μCi 3H−コレステロール(〜1.1×106dpm/ウェル)
4.8mMタウロコール酸ナトリウム(2.581mg/mL)
0.6mMオレイン酸ナトリウム(0.183mg/mL)
0.25mMコレステロール(0.1mg/mL)
これらは、超音波振動により「飢餓」培地中に分散される
最終的な培地のコレステロール濃度=5μg/mL
標識コレステロールパルスの時点は、4分、12分、24分および4時間であった。各処理について3連のウェルを調製した。
(洗浄) 指定時間に培地を吸引し、細胞を37℃でHobbsバッファーA(50mM Tris、0.9%NaCl、0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)、pH7.4)で1回、HobbsバッファーB(50mM Tris、0.9% NaCI、pH 7.4(BSAなし))で1回洗浄した。
(処理/分析)
A.4分、12分、24分の時点:細胞を0.2N NaOH(2mL/ウェル)を用いて室温にて一晩消化した。1.5mlアリコートを各ウェルから取り出し、中和し、シンチレーション計測法により放射能を測定した。
B.4時間の時点:消化した細胞を薄層クロマトグラフィーによって分析して、細胞中のコレステロールエステルの量を決定した。
抽出物をTLCプレート上にスポットし、ヘキサン:イソプロパノール(3:2)移動相2ml中で30分間展開を行い、続いて、2回目の展開を、ヘキサン:イソプロパノール(3:2)移動相1ml中で15分間行った。
C.細胞抽出物のタンパク質測定:細胞抽出物の試料を含むプレートをオービタルシェーカー上に120rpmにて指定した時間置いた後、抽出物を12×75本のチューブにプールした。プレートを乾燥させ、NaOH(2ml/ウェル)を加えた。試料のタンパク質含量を測定した。全てのウェルから50μlアリコートをさらに2つずつ、Pierce micro BCA法により総タンパク質についてアッセイした。この細胞において観察された標識コレステロールの量を、この細胞におけるタンパク質の量に対して正規化した。
(実施例20)
標識コレステロール取込みアッセイ
本実施例では、ラットNPC1L1またはマウスSR−B1で一過性にトランスフェクトされたCHO細胞が標識コレステロールを取り込む能力を評価した。また、マウスSR−B1でトランスフェクトされたCHO細胞が標識コレステロールを取り込む能力をラットNPC1L1が増強する能力も評価した。これらのアッセイでは、コレステロール取込みを、単一濃度にて、パルス−チェイス実験により評価した。これらの実験で得られたデータを以下の表7に示す。
細胞:
A.CHOバックグラウンド細胞(モックトランスフェクション)。
B.マウスSR−B1で一過性にトランスフェクトされたCHO細胞。
C.ラットNPC1L1 cDNAで一過性にトランスフェクトされたCHO(n=8クローン)。
一過性にトランスフェクトされた細胞を、12ウェルプレートに300000細胞/ウェル(mL)で播種した。
手順:
全ての試薬および培養プレートを、特に断りのない限り、37℃で維持した。
(飢餓) 細胞から維持培地(F12 HAMS、1%Pen/Strep、10%FCS)を除去し、1mL「飢餓」培地(F12 HAMS、Pen/Strep、5%リポタンパク質欠乏血清(LPDS))に取り替えた。細胞を1時間飢餓状態にした。
(3H−コレステロールパルス) 以下のものを各ウェルに直接加えた:
混合胆汁酸塩ミセル50μl中の0.5μCi 3H−コレステロール(約1.1×106dpm/ウェル)
4.8mMタウロコール酸ナトリウム(2.581mg/mL)
0.6mMオレイン酸ナトリウム(0.183mg/mL)
0.25mMコレステロール(0.1mg/mL)
これらは、超音波振動により「飢餓」培地中に分散される
最終的な培地のコレステロール濃度=5μg/mL
標識コレステロールパルスの時点は、24分および4時間とした。各処理について3連のウェルを調製した。
(洗浄) 指定時間に培地を吸引し、細胞を37℃でHobbsバッファーA(50mM Tris、0.9% NaCl、0.2%BSA、pH7.4)で1回、HobbsバッファーB(50mM Tris、0.9% NaCl、pH7.4(BSAなし))で1回洗浄した。
(処理/分析)
A.24分の時点:細胞を0.2N NaOH(2mL/ウェル)を用いて室温にて一晩消化した。1.5mlアリコートを各ウェルから取り出し、中和し、シンチレーション計測法により放射能を測定した。
B.4時間の時点:消化した細胞を薄層クロマトグラフィーによって分析して、細胞中のコレステロールエステルの量を決定した。
抽出物を薄層クロマトグラフィープレート上にスポットし、ヘキサン:イソプロパノール(3:2)含有移動相2ml中で30分間展開を行い、続いて、2回目の展開をヘキサン:イソプロパノール(3:2)含有移動相1ml中で15分間行った。
C.細胞抽出物のタンパク質測定:細胞抽出物の試料を含むプレートをオービタルシェーカー上に120rpmにて示した時間置いた後、抽出物を12×75本のチューブにプールした。プレートを乾燥させ、NaOH(2ml/ウェル)を加えた。試料のタンパク質含量を測定した。全てのウェルから50μlアリコートをさらに2つずつ、Pierce micro BCA法により総タンパク質についてアッセイした。この細胞において観察された標識コレステロールの量を、この細胞におけるタンパク質の量に対して正規化した。
(実施例21)
ラットNPC1L1、マウスNPC1L1およびヒトNPC1L1の発現
本実施例では、NPC1L1を細胞に導入し、発現させた。種特異的NPC1L1発現構築物を、クローン特異的PCRプライマーを使用してプラスミドpCDNA3にクローニングして、このベクターのポリリンカーと適合する適切な制限部位でフランキングされるORFを作製した。3つのNPC1L1種全てについて、小腸全組織RNAを、オリゴdTを鋳型プライマーとして使用する逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)用の鋳型として使用した。ラットNPC1L1をEcoRI断片としてクローニングし、ヒトNPC1L1をXbaI/NotI断片としてクローニングし、マウスNPC1L1をEcoRI断片としてクローニングした。各クローンの順方向鎖および逆方向鎖の配列決定を実施して、配列の完全性を確認した。標準的な一過性トランスフェクション手順を、CHO細胞に対して使用した。6ウェルプレートにおいて、トランスフェクションの1日前に、CHO細胞をプレーティング密度2×105細胞/ウェルでプレーティングした。翌日、細胞を2μgのプラスミドDNAおよび6μLのリポフェクトアミンとともに5時間インキュベートし、次いで、新鮮な培地に交換した。48時間後、抗NPC1L1抗血清を使用して、FACSまたはウエスタンブロットのいずれかによりNPC1L1発現について細胞を解析した。NPC1L1を発現する安定な長期細胞株を確立するために、製造業者(Life Technologies)によって推奨されるように、ジェネティシン(G418、0.8mg/ml)の存在下でトランスフェクトCHO細胞を選択した。1ヶ月間の培養選抜後、細胞集団を抗NPC1L1抗血清で染色し、FACSにより選別した。個々の陽性染色細胞を、限界希釈により単離した後にクローニングし、次いで、ジェネティシン(0.5mg/ml)を含む選択培地で維持した。
トランスフェクション手順を受け入れにくい他の細胞は、アデノウイルスベクター系を使用して作製した。NPC1L1を発現させるために使用するこの系は、Ad5(C型アデノウイルス)から誘導される。この組換え複製欠損アデノウイルスベクターは、E1領域、E2領域およびE4領域の改変によって欠損性にされている。このベクターはまた、E3領域にもさらなる改変を有し、この改変は、一般にE3b領域の遺伝子RIDaおよびRIDbに影響を及ぼす。NPC1L1発現は、アデノウイルスのE3領域において置換された発現カセットとしてCMVプロモーターを使用して行われた。ラットNPC1L1およびマウスNPC1L1を、アデノウイルスベクターと適合する制限部位でフランキングされるクローン特異的プライマーを使用して増幅した。アデノウイルスの感染性粒子を293−D22細胞から、力価5×1010P/mLで作製した。ウイルス溶解物を使用して、標準的なトランスフェクション方法を受け入れにくい細胞を感染させた。CaCo2細胞(この細胞は異種タンパク質発現に強い抵抗を示す)では、NPC1L1のアデノウイルス媒介性発現が感染後少なくとも21日間持続することがウエスタンブロット分析によって証明されている。
(実施例22)
NPC1L1ノックアウトトランスジェニックマウス
NPC1L1ノックアウトマウスを、標的突然変異誘発を介して構築した。この方法では、マウスNPC1L1遺伝子の特定領域を欠失するように設計された標的化構築物を利用した。この標的化プロセス中に、大腸菌lacZリポーター遺伝子を、内因性NPC1L1プロモーターの制御下に挿入した。NPC1L1(配列番号45)の欠失領域は、ヌクレオチド790からヌクレオチド998である。この標的化ベクターは、ヌクレオチド789で終わる1.9kb 5’アームと、ヌクレオチド999で始まる3.2kb 3’アームによりフランキングされるLacZ−Neoカセットを含む。組換え胚幹細胞株のゲノムDNAを、PCRを使用して、相同組換えについてアッセイした。増幅したDNA断片を、アガロースゲル電気泳動によって視覚化した。この試験PCRでは、遺伝子特異的プライマーを使用した(このプライマーは、標的化ベクターアームの外側にこれに隣接して存在し、LacZ−Neoカセット配列に特異的な3つのプライマーのうちの1つと対合する)。5’PCR再確認のために、NPC1L1特異的オリゴヌクレオチドATGTTAGGTGAGTCTGAACCTACCC(配列番号46)を、3’PCR再確認のために、NPC1L1特異的オリゴヌクレオチドGGATTGCATTTCCTTCAAGAAAGCC(配列番号47)を使用した。F2マウスの遺伝子型決定を、NPC1L1特異的順方向プライマーTATGGCTCTGCCCTCTGCAATGCTC(配列番号48)、LacZ−Neoカセット特異的順方向プライマーTCAGCAGCCTCTGTTCCACATACACTTC(配列番号49)を、NPC1L1遺伝子特異的逆方向プライマーGTTCCACAGGGTCTGTGGTGAGTTC(配列番号50)と組み合わせて使用する、多重PCRによって実施し、標的対立遺伝子と内因性対立遺伝子の両方の決定を可能にした。アガロースゲル電気泳動によるPCR生成物の分析により、野生型マウス、ヘテロ接合体ヌルマウスおよびホモ接合体ヌルマウスを互いに区別した。
(実施例23)
NPC1L1欠損マウスにおける急速コレステロール吸収
NPC1L1がコレステロール吸収において役割を果たすか否かを判定するために、NPC1L1欠損マウスを試験した。
野生型(+/+)マウスとNPC1L1欠損マウス(−/−)を得るために、NPC1L1が欠損したマウス(−/−)を、ヘテロ接合体マウス(+/)を交配することによって作出する。非絶食マウス(6.5週齢から9週齢、129系とC57BL/6系バックグラウンドとのミックス系統)の体重を測定し、群分けした(n=2 −/−およびn=4 +/+)。全ての動物に1μCi l4C−コレステロール(New England Nuclear,[4−l4C]コレステロール,NEC−018)および担体コレステロール塊(Sigma;St.Louis,MO)0.1mgを含有するトウモロコシ油(Sigma;St.Louis,MO)0.1mlを胃管栄養法により与えた(給餌ニードル、24G×1インチ、Popper and Sons,NY)。2時間後、心臓穿刺により採血した。肝臓を取り出し、この重量を測定し、3試料を20ml計測用バイアルに入れた。組織を1N NaOH 1ml、60℃で一晩消化した。この組織消化物を、4N HCl 250μlを加えて酸性化し、次いで、液体シンチレーション計測(LSC)した。微量遠心機による10000rpm、5分間の遠心分離により血漿を分離し、LSC用に、血漿から2連の100μlアリコートを取り出した。
この急速法により評価し、血漿および肝臓における放射性コレステロールの総量として表したコレステロール吸収は、野生型マウス(+/+)が平均11,773dpmを吸収し、NPC1L1欠損マウスが14C−コレステロール992dpmを吸収したことを示した。これらの結果は、NPC1L1欠損マウスではコレステロール吸収が92%減少していることを示している。これらのデータは、NPC1L1のコレステロールの腸管吸収における役割を裏付ける。NPC1L1アンタゴニスト(エゼチミブなど)を被験体に投与することによって被験体におけるNPC1L1介在性コレステロール吸収を阻害することは、被験体における血清コレステロールレベルおよびアテローム性動脈硬化症の発生率を低下させるのに有用な方法である。
(実施例24)
NPC1L1(NPC3)ノックアウトマウスにおけるコレステロール吸収(糞便比率法(Fecal Ratio Method):コレステロール/シトスタノール)
本実施例では、NPC1L1ノックアウトマウス(−/−)、ヘテロ接合体マウス(+/−)および年齢適合野生型マウス(+/+)において、コレステロール吸収およびエゼチミブの活性を測定した。
マウスにおけるコレステロール吸収を、Altmannら (Biochim.Biophys.Acta.1580(1):77から93頁 (2002))により記載されている糞便二重同位元素比率法(dual fecal isotope ratio method)により測定した。マウス(n=4から6/群)に標準的な齧歯類用飼料を給餌し、一部の群では、最大有効量のエゼチミブ(10mg/kg)で毎日処置した。マウスにトウモロコシ油0.1ml中の14C−コレステロール(1μCi、非標識コレステロール0.1mg)および3H−シトスタノール(2μCi)を胃管栄養法により与えた。糞便を2日間採取し、糞便中の14C−コレステロールおよび3H−シトスタノールレベルを、Packard Oxidizerで燃焼することにより測定した。糞便二重同位元素技術(fecal dual isotope technique)により評価した、吸収されたコレステロールの割合は、飼料を給餌した野生型(+/+)マウスとヘテロ接合体マウス(+/−)においては同程度であった(ヘテロ接合体マウスは14C−コレステロール投与量の46±5%を吸収し、年齢適合野生型マウスは14C−コレステロール投与量の51±3%を吸収した)。NPC1L1ノックアウトマウス(−/−)は、14C−コレステロールの15.60±0.4%を吸収した。この値は、最大有効量のエゼチミブで処置した野生型マウスと同程度であり(16.1±0.3%)、野生型マウスに対して69%低い値であった(p<0.001)。エゼチミブで、10mg/kg/日にて処置したNPC1L1ノックアウトマウスでのコレステロール吸収は、未処置のノックアウトマウスで見られたものと同程度であった(それぞれ、16.2±0.6%と15.6%±0.4%)。従って、大部分のコレステロール吸収は、NPC1L1の存在に依存しているが、残るNPC1L1を有していないマウスにおけるコレステロール吸収は、エゼチミブ処置に反応しない。これらの結果は、NPC1L1がコレステロールの小腸細胞取込みおよび吸収に関与しており、エゼチミブ感受性経路に存在することを示している。
(実施例25)
マウススクリーニングアッセイ(急速コレステロール吸収)
以下のスクリーニングアッセイを使用して、試料中のNPC1L1アンタゴニストの存在を同定する。
野生型マウス(+/+)とNPC1L1欠損マウス(−/−)を得るために、NPC1L1が欠損したマウス(−/−)を、ヘテロ接合体マウス(+/)を交配することによって作出する。
第1の実験セットでは、非絶食マウス(6.5週齢から9週齢、129系とC57BL/6系バックグラウンドとのミックス系統)の体重を測定し、群分けする(n=1から4 −/−およびn=1から4 +/+)。全ての動物に1μCi l4C−コレステロール(New England Nuclear,[4−l4C]コレステロール,NEC−018)および担体コレステロール塊(Sigma;St.Louis,MO)0.1mgを含有するトウモロコシ油(Sigma;St.Louis,MO)0.1mlを胃管栄養法により与える(給餌ニードル、24G×1インチ、Popper and Sons,NY)。
別の実験セットでは、1から4匹の野生型NPC1L1マウス(+/+)を、マウスにNPC1L1アンタゴニストの存在について調べようとする試料をさらに給餌することを除き、上記の第1の実験セットにおけるマウスと同じように処置する。
2時間後、各マウスから心臓穿刺により採血する。肝臓を取り出し、この重量を測定し、3試料を20ml計測用バイアルに入れる。組織を1N NaOH 1ml、60℃で一晩消化する。この組織消化物を、4N HCl 250μlを加えて酸性化し、次いで液体シンチレーション計測(LSC)する。微量遠心機による10000rpm、5分間の遠心分離により血漿を分離し、LSC用に、血漿から2連の100μlアリコートを取り出す。
この急速法により評価したコレステロール吸収を、血漿および肝臓における放射性コレステロールの総量として表す。試験試料を給餌した野生型NPC1L1マウス(+/+)およびNPC1L1欠損マウス(−/−)における(上記の方法によって測定した)コレステロール吸収レベルが、この試料を給餌していない野生型NPC1L1マウス(+/+)におけるコレステロール吸収量より少ない場合に、この試料がNPC1L1アンタゴニストを含有していると判定される。
(実施例26)
マウススクリーニングアッセイ(糞便比率法:コレステロール/シトスタノール)
以下のスクリーニングアッセイを使用して、試料中のNPC1L1アンタゴニストの存在を同定する。
マウスにおけるコレステロール吸収を、Altmannら (Biochim.Biophys.Acta.1580(1):77から93頁 (2002))により記載されている糞便二重同位元素比率法により測定する。
3つのマウス群(n=1から6/群)を設ける。2つの独立した群を野生型NPC1L1マウス(+/+)で構成し、1つの群をNPC1L1欠損マウス(−/−)で構成する。
各群に標準的な齧歯類用飼料を給餌し、一部の群では、毎日処置した。マウスにトウモロコシ油0.1ml中の14C−コレステロール(1μCi、非標識コレステロール0.1mg)および3H−シトスタノール(2μCi)を胃管栄養法により与える。野生型NPC1L1マウス(+/+)で構成される1群のマウスにNPC1L1アンタゴニストの存在について調べようとする試料をさらに給餌する。糞便を2日間採取し、糞便中の14C−コレステロールおよび3H−シトスタノールレベルを、Packard Oxidizerで燃焼することにより測定する。
試験試料を給餌した野生型NPC1L1マウス(+/+)およびNPC1L1欠損マウス(−/−)における(上記の方法によって測定した)コレステロールおよび/またはシトスタノール吸収レベルが、この試料を給餌していない野生型NPC1L1マウス(+/+)におけるコレステロールおよび/またはシトスタノール吸収量より少ない場合に、この試料がNPC1L1アンタゴニストを含有していると判定される。
(実施例27)
刷子縁膜小胞を使用した結合解析
以下のスクリーニングアッセイを使用して、試料中のNPC1L1リガンドの存在を同定し得る。
(材料) 本明細書に記載される結合アッセイ用に、以下の2種類の化合物を合成した。3H−エゼチミブグルクロニド1(34.5Ci/mmol)およびこの35S−プロパルギル−スルホンアミド誘導体2(800から1100Ci/mmol)。
(エゼチミブグルクロニドおよびS−プロパルギル−スルホンアミド エゼチミブ−グルクロニドの合成) エゼチミブグルクロニド(化合物1)(EZE−グルクロニドとも呼ばれる)は、米国特許第5,756,470号における手順に従って作製され得る。以下の一般スキームにより、化合物2および放射性標識35S−2の合成法を説明する。
化合物 35 S−2(放射性標識 35 Sを有する化合物2)の調製
段階A:[35S]N−プロパ−2−イン−1−イルメタンスルホンアミド(i)の調製
塩化メチレン中のストック溶液から[35S]塩化メタンスルホニル(Dean,D.C.ら,J.Med.Chem.1996,39,1767頁参照)適量(3.5mCi)を取り出し、5mL三角フラスコに入れた。これを、次いで、約50μL量になるまで大気圧下で蒸留した。この溶液に、すぐにプロパルギルアミン50μLを加えた。15分後、この反応混合物を酢酸エチル10mLで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム溶液(3×2mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後に得られた溶液のカウント値は、3.3mCiであり、HPLC(Zorbax XDB C8カラム、4.6×150mm、5%アセトニトリル:H2O(0.1%TFA)から100%アセトニトリル、15分間で直線勾配、1mL/分、tR=4.4分)による放射化学的純度は99.9%であった。
段階B:[35S]4−[(2S,3R)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−1−(4−{3−[(メチルスルホニル)アミノ]プロパ−1−イン−1−イル}フェニル)−4−オキソアゼチジン−2−イル]フェニルメチルβ−D−グルコピラノシドウロナート([35S])(iii)の調製 プラスチック製微量遠心管内で、[35S]N−プロパ−2−イン−1−イルメタンスルホンアミド3.0mCi、化合物ii(Burnett,D.S.ら,Bioorg.Med.Chem.Lett.(2002),第12巻,311頁に従って調製したもの)1mgおよびトリエチルアミン1μLをジメチルホルムアミド100μLに溶かした。この溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)8.1mgを含むストック溶液10μLおよびジメチルホルムアミド1mL中のヨウ化銅1.4mgを加えた。室温で60時間攪拌した。この時点でのHPLCでは55%変換を示した。この反応混合物のHPLC(Zorbax XDB C8カラム、4.6×150mm、5%アセトニトリル:H2O(0.1%TFA)から100%アセトニトリル、15分間で直線勾配、1mL/分、tR=9.3分)による放射化学的純度は44.4%であり、この反応混合物をこのまま次の段階において使用した。
段階C:[35S]4−[(2S,3R)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−1−(4−{3−[(メチルスルホニル)アミノ]プロパ−1−イン−1−イル}フェニル)−4−オキソアゼチジン−2−イル]フェニルβ−D−グルコピラノシドウロン酸35S−2の調製 化合物iiiを含む未精製の反応混合物をメタノール25μL、水90μLおよびトリエチルアミン30μLで処理し、室温にて1時間攪拌した。この時点でこの反応物を緩慢な窒素気流下で濃縮して、ほぼ乾固させた。この残渣を1:1 アセトニトリル:H2Oに溶かし、セミ分取クロマトグラフィー(Zorbax XDB C8 250×9.4mmカラム、70:30 アセトニトリル:H2O(0.1%TFA)4mL/分、注入 1×0.2mL)に付した。生成物540μCiを得(この生成物のHPLC(Zorbax XDB C8カラム、4.6×150mm、70:30 アセトニトリル:H2O(0.1%TFA)、1mL/分、tR=10.4分)による放射化学的純度は99.9%であった)、化合物2のオーセンティック試料と共溶出した。LC/MS m/z=508(生成物−グルクロニド−H2O)、SA=769Ci/mmol。
35S−2の代替調製法
段階A:iiiの調製 塩化メチレン中のストック溶液から[35S]塩化メタンスルホニル(Dean,D.C.ら,J.Med.Chem.1996,39,1767頁参照)適量(1.3mCi)を取り出し、5mL三角フラスコに入れた。これを、次いで、約50μL量になるまで大気圧下で蒸留した。この溶液に、すぐにv 1mgのピリジン(水素化カルシウムで新たに蒸留したもの)5μL中溶液を加えた。
この溶液を室温にて5分間攪拌した。この時点でこの溶液を緩慢な窒素気流下で濃縮して、ほぼ乾固させた。この反応混合物のHPLC(Zorbax XDB C8カラム、4.6×150mm、5%アセトニトリル:H2O(0.1%TFA)から100%アセトニトリル、15分間で直線勾配、1mL/分、tR=9.3分)による放射化学的純度は80.1%であり、この反応混合物をこのまま次の段階において使用した。
段階B:35S−2の調製 iiiを含む未精製の反応混合物をメタノール25μL、水90μLおよびトリエチルアミン30μLで処理し、室温にて1時間攪拌した。この時点でこの反応物を緩慢な窒素気流下で濃縮して、ほぼ乾固させた。この残渣を1:1 アセトニトリル:H2Oに溶かし、セミ分取クロマトグラフィー(Zorbax XDB C8 250×9.4mmカラム、70:30 アセトニトリル:H2O(0.1%TFA)4mL/分、注入 1×0.2mL)に付した。生成物350μCiを得(この生成物のHPLC(Zorbax XDB C8カラム、4.6×150mm、70:30 アセトニトリル:H2O(0.1%TFA)、1mL/分、tR=10.4分)による放射化学的純度は98.4%であった)、2のオーセンティック試料と共溶出した。LC/MS m/z=508(生成物−グルクロニド−H2O)、SA=911Ci/mmol。
化合物2およびivは、放射性標識を実施しないことを除き、35S−2の合成のための同じ基本手順に従って、調製できる。
(刷子縁膜小胞(BBMV)の調製)
膜をアカゲザル(Macaca mulatta)腸、ラット(雄Sprague−Dawley)腸およびマウス(雄C57BL/6J)腸から、以下の参考文献において記載されているMg++沈殿法および下記変形を使用して、調製した(Hauser,H.,Howell,K.,Dawson,R.M.C.,Bowyer,D.E.Biochim.Biophys.Acta 602,567から577頁 (1980);Kramer,W.,Girbig,F.,Gutjahr,U.,Kowalewski,S.,Jouvenal,K.,Muller,G.,Tripier,D.,Wess,G.J.Biol.Chem.268,18035から18046頁 (1993);Rigtrup,K.M.,Ong,D.E.Biochemistry 31,2920から2926頁 (1992))。
新たに屠殺した動物の腸を切片にし、氷冷緩衝生理食塩水(バッファーA:26mM NaHCO3、0.96mM NaH2PO4、5mM HEPES、5.5mMグルコース、117mM NaCl、5.4mM KCl、pH=7.4)で潅流し、冷却したガラス板上に載せ、縦方向に切開し、粘膜をガラス製顕微鏡スリップで擦り取った。この粘膜は、新鮮なものを使用した場合でも凍結したものを使用した場合でも結果は同じであった。膜を調製するために、粘膜擦過物を、300mM D−マンニトール、5mM EGTA、12mM Tris(pH7.4、HClを含む)で構成され、0.1mM PMSFおよびプロテアーゼ阻害剤カクテルの1%希釈物(セット1、Calbiochem)を含む冷バッファー(20容量)に再懸濁した。これらをPolytronを中速で氷上で使用して、顕微鏡検査により完全に細胞溶解したことが分かるまでホモジナイズした。次いで、固体MgCl2を攪拌しながらゆっくりと加えて最終濃度10mMにし、この溶液を氷上で15分間攪拌し続けた。細胞残屑を3000gにて15分間の遠心分離により除去し、膜を48000gにて60分間の遠心分離により回収した。膜を、50mM D−マンニトール、5mM EGTAおよび2mM Tris(pH7.40)を含むバッファーに再懸濁し、48000gにて60分間の遠心分離することによりさらに洗浄した。最終ペレットを120mM NaClおよび20mM Tris(pH7.40)に濃度約10から20mgタンパク質/mlに再懸濁し、これを等分し、液体窒素で凍結し、−80℃で保存した。活性は無期限に安定し、活性の損失を最小限に抑えて凍結融解できた。
膜タンパク質をBradford法(Bradford,M.M.Anal.Biochem.72,248から254頁 (1976))により、標準としてウシ血清アルブミンを使用して、測定した。刷子縁膜の濃縮を、マーカー酵素としてγ−グルタミルトランスフェラーゼを使用して評価した(Kramer,W.,Girbig,F.,Gutjahr,U.,Kowalewski,S.,Jouvenal,K.,Muller,G.,Tripier,D.,Wess,G.J.Biol.Chem.268,18035から18046頁 (1993))。これにより、最初のホモジェネートに対して6倍濃縮されていることが示された。
(結合アッセイ) アッセイを12×75mmガラス製試験管において総量20から100μlで実施した。一般に、凍結した膜をバッファーAまたは0.03%タウロコール酸塩および0.05%ジギトニンを含むバッファーAで最終濃度0.02から5mg/mlに希釈した。このアッセイにおいて、放射性標識リガンドは、一般に3H−エゼチミブ(EZE)グルクロニド1に対して25から50nMであり、この35S類似体2に対して3から5nMであり、これらをDMSO溶液またはCH3CN溶液として送達した。競合するリガンドを同様にDMSO溶液として加えて、全体として有機溶媒含有量2から10%とした。非特異的結合は、100μMエゼチミブグルクロニドとの競合により見極めた。バッファーAのうちの少なくとも2成分、重炭酸塩およびリン酸塩は、後に重要ではないことが分かったため、通常は省略した。平衡状態を確立するため、化合物1との反応物を、室温にて、アカゲザルの膜の場合には少なくとも3時間、ラットの膜の場合には少なくとも1時間インキュベートし、化合物2との反応物についてはアカゲザルのブラッシュメンブランの場合もラットのブラッシュメンブラン(brush membranes)の場合も37℃で2時間の間インキュベートした。さらに、マウスNPC1L1を発現するHEK−293細胞、ラットNPC1L1を発現するHEK−293細胞またはヒトNPC1L1を発現するHEK−293細胞由来の膜の場合には、化合物2との反応物を37℃で2時間の間インキュベートした。
結合したリガンドを、GF/Cガラス繊維フィルターを使用するシングルチューブ真空濾過により定量した。ガラス繊維フィルター(GF/C)はWhatmanから入手した。非特異的結合を減少させるために、フィルターを0.5%ポリエチレンイミンに浸漬することによって前処理した。濾過は、氷冷バッファー(120mM NaCl、0.1%コール酸ナトリウムおよび20mM MES(pH6.70))2.5mlをアッセイチューブに加え、フィルターを通して混合物に注ぎ、次いでチューブとフィルターをさらなるバッファー2×2.5mlで3回以上洗浄することにより、実施した。フィルターを、7mlバイアルで、シンチレーション液(Packard DM liquid)を用いて測定した。3連のアッセイを実施した場合の標準誤差は、一般に<4%であった。一例として、ラット刷子縁膜(2mg/ml)の、400000dpm(50nM)の3H−エゼチミブグルクロニドの存在下での100μlアッセイでは、15000dpmの特異的結合と3000dpmの非特異的結合が得られた。フィルターが、非特異的結合の大部分の原因であった(2000dpm)。
また、化合物2をMillipore 96−ウェルプレート(Whatman GF/C)で真空濾過を行っても、十分な精度が得られる。
(データ解析) 飽和実験からのデータをスキャッチャード解析に付し、線形回帰を実行して、平衡解離定数(Kd)および最大受容体濃度(Bmax)を得た。得られたこれらの値間の相関係数は、一般に0.96より大きかった。競合実験からのデータを解析し、結合データのヒルプロットからIC50値を決定した。リガンドの結合および解離についての動態データをWeiland and Molinoff(Weiland,G.,Molinoff,.B.Life Sci.29,313から330頁 (1981))の解析に付した。リガンドの解離と時間との関係を示す1次プロットについては、解離速度定数(k−1)を直接決定した。リガンドの結合速度(k1)を、方程式k1=kobs([LRe]/([L][LR]max))(式中、[L]はリガンドの濃度であり、[LRe]は平衡状態における複合体の濃度であり、[LR]maxは存在する受容体の最大数であり、kobsはLn([LE]e/([LR]e−[LR]t))と時間との関係を示す擬1次プロットの傾きである)により決定した。
(結合解析) エゼチミブをin vivoで迅速にこのグルクロニドへと変換する。この代謝生成物は、排他的にさもなくば主として、コレステロール取込みの阻害に関与すると考えられている。よって、3H−エゼチミブおよびこの対応するグルクロニド誘導体(1)の両方を調製し、腸刷子縁膜調製物との結合について、シングルチューブ真空濾過技術を用いて試験した。3H−エゼチミブの疎水性の結果として、高い非特異的結合が観察されたため、結合アッセイでの放射性リガンドとしてのこの使用を除外した。しかしながら、グルクロニド誘導体(1)の物理的性質の向上により、この放射性リガンドでは特異的結合が観察されたため、これをアカゲザル腸刷子縁膜、ラット腸刷子縁膜およびマウス腸刷子縁膜における結合を評価するのに使用した。
アカゲザル腸擦過物、ラット腸擦過物およびマウス腸擦過物をホモジナイズし、この刷子縁膜を単離した。膜画分のみで特異的結合が観察された。アカゲザル刷子縁膜(図1)およびラット(図2)刷子縁膜との全結合、非特異的結合および特異的結合をプロットした。アカゲザルBBMV(83μg/アッセイ)またはラットBBMV(250μg/アッセイ)のアリコートを漸増濃度の3H−EZE−グルクロニドとともにインキュベートした。10から100μM EZE−グルクロニドの存在下で決定した全結合および非特異的結合を示す。特異的結合は、全結合と非特異的結合との差から算出した。上記のように、非線形回帰によりデータをフィッティングし、この線形スキャッチャードプロットを示している。アカゲザルの膜でのデータは、単一の結合部位(Kd=41nMおよび濃度5.5pmol/mg膜タンパク質)に相当する。ラットの膜では、親和性が約10倍低い(Kd=540nM)。3H−EZE−グルクロニドは、マウスの膜における化合物の親和性が低いため、マウス標的についての結合アッセイに最適なリガンドではない。これらの有効性は、エゼチミブによるコレステロール取込み阻害に対するこれらの種の感受性とほぼ相関する。
(結合速度定数および解離速度定数) エゼチミブ−グルクロニドは、結合に時間がかかり、この受容体とともに比較的長寿命の複合体を形成する。実際には、リガンドのオフ速度は一般的に速いために、Kd値が100nMより大きいリガンド/受容体相互作用は、認識されずに済まされることが多いことから、このことは伝統的なフィルター−結合アッセイにおいて相互作用を検出するために重要であった。ラットの膜およびアカゲザルの膜について、化合物1の結合速度定数(kon)および解離速度定数(koff)を決定し、これらを代替法として用いて、関係Kd=koff/konに従って解離定数(Kd)を算出した。結合動態研究では、300μg/アッセイのラット刷子縁膜小胞を25nM 3H−EZE−グルクロニドとともに室温で最大3時間インキュベートした。結合動態研究では、83μg/アッセイのアカゲザル刷子縁膜小胞を25nM 3H−EZE−グルクロニドとともに室温で最大5時間インキュベートした。全結合から100μM EZE−グルクロニドの存在下で測定した非特異的結合を差し引いて、特異的結合を算出した。この特異的結合を図3Aおよび4Aに示す。解離動態研究では、ラット刷子縁膜小胞を25nM 3H−EZE−グルクロニドとともに室温で2時間インキュベートし、リガンドの解離を、100μM EZE−グルクロニドを加えて開始した。アカゲザル刷子縁膜小胞を42nM 3H−EZE−グルクロニドとともに室温で4時間インキュベートし、リガンドの解離を、100μM EZE−グルクロニドを加えて開始した。ラットの解離研究およびアカゲザルの解離研究の両方において、試料を種々の時点で採取し、放射性同位元素を検出した。解離曲線を図3B(ラット)および4B(アカゲザル)に示す。
ラットの膜では、結合速度定数はkon=5,540M−1s−1(拡散律速接触の場合の108から109M−1s−1と比較)であり、解離速度定数はkoff=2.4×10−3s−1であり、この値は、半減期4.7分に相当する。このデータは図3に示す(ここで、実線は、これらの速度定数の理論値である)。これらの速度定数から推定されるKd値(Kd=koff/kon=440nM)は、平衡状態での測定値(Kd=540nM)とよく一致している。
(上記のように)3H−エゼチミブグルクロニドが少なくとも10倍有力なアカゲザルの膜では、結合速度は同じであるが、複合体の解離半減期は約90分に増加する。これらのデータは図4に示す(ここで、理論直線は、kon=3,900M−1s−1およびkoff=1.23×10−4s−1および推定Kd=32nM(平衡状態での測定値(Kd=41nM)と比較)に相当する)。
(実施例28)
有力なNPC1L1リガンドの結合解析
エゼチミブグルクロニドの35S−標識プロパルギル−スルホンアミド類似体(35S−2)をNPC1L1アンタゴニスト候補として同定した。化合物2を、実施例27に記載のとおり調製した。この化合物2の、いくつかの種類の刷子縁膜小胞に対する親和性が著しく向上していることが分かった。アカゲザル刷子縁膜小胞では、56μgタンパク質/アッセイを、漸増濃度のEZE−グルクロニドおよび2の存在下で、25nM 3H−EZE−グルクロニドとともにインキュベートした。ラット刷子縁膜小胞では、150μgタンパク質/アッセイを、漸増濃度のEZE−グルクロニドおよび2の存在下で、50nM3H−EZE−グルクロニドとともにインキュベートした。マウス刷子縁膜小胞では、20μgタンパク質/アッセイを、漸増濃度のEZE−グルクロニドおよび2の存在下で、3nM 35S−2とともにインキュベートした。
2は、ラット由来の腸細胞刷子縁膜調製物に対してより有力であり(35倍)、アカゲザルの膜調製物に対するエゼチミブグルクロニドの効力と等しい(図5、表8)。また、マウスの膜に対する親和性も高い(図6、表8)。
(実施例29)
腸組織への3H−エゼチミブグルクロニド(1)結合の分布
これまでの研究により、コレステロール吸収が、主として空腸で起こり、回腸および十二指腸では実質的に少ないことが立証されている。結合活性が同様に分布しているか否かを判定するために、3H−エゼチミブグルクロニド(3H−1)を放射性リガンドとして用いる結合アッセイを使用して、アカゲザルの腸およびラットの腸由来の切片における結合部位の分布を決定した。
アカゲザル研究では、アカゲザル小腸の回腸に相当する10cmを分離し、残りの腸を等しい長さの3切片に分割した(近位部、中央部および遠位部)(各70cm)。ラット研究では、アカゲザル小腸の回腸に相当する10cmを分離し、残りの腸を等しい長さの3切片に分割した(近位部、中央部および遠位部)(各36cm)。刷子縁膜小胞を、実施例27に記載のとおり調製した。小胞(100から200μg)タンパク質/アッセイのアリコートを、100μM EZE−グルクロニドの不在下および存在下で、50nM 3H−EZE−グルクロニドとともにインキュベートした。
図7で示されるように、3H−エゼチミブグルクロニドに対する特異的結合は、両方の種とも、空腸においてピークに達しており、これまでに観察されたコレステロール吸収パターンと一致している。
(実施例30)
NPC1L1のin vitroでの結合活性とin vivoでの結合活性との相関
in vitroでの結合活性がin vivoでの有効性の予測となるか否かを判定するために、ラット膜結合アッセイにより試験した、エゼチミブグルクロニドのエナンチオマーおよびエゼチミブグルクロニドのいくつかの近似構造類似体を、実施例23から26に記載されているラットの急速コレステロール吸収研究により試験した。選択した類似体は、ある範囲のin vitroでの有効性を有しており、エゼチミブグルクロニドと類似した物理的性質を有すると予想された(表9および12)。ラット標的に対してKd>100000nMであるエナンチオマーは、in vivo アッセイでは不活性であった。他の類似体については、in vitroアッセイおよびin vivoアッセイにおいて、同順位序列の有効性が観察される。これにより、観察された結合がエゼチミブの標的によることがさらに明示される。
(実施例31)
エゼチミブグルクロニドおよびこの類似体の組換えNPC1L1に対する結合親和性
コレステロール結合モチーフについての遺伝子データベースの検索により、NPC1L1をエゼチミブの候補標的として同定した。続いて、コレステロール吸収が80%減少していることが分かり、NPC1L1欠損マウスではエゼチミブ処置に応答しなかった。これは、このタンパク質がエゼチミブの有効性に必要であることを強く示唆している。NPC1L1がエゼチミブの直接標的であるか否かを判定するために、NPC1L1トランスフェクト細胞およびラット刷子縁膜小胞に対するエゼチミブグルクロニドおよびいくつかの類似体の結合親和性を比較した。
ラットNPC1L1でトランスフェクトされたCHO細胞(約500000細胞/アッセイ)を、漸増濃度のEZE−グルクロニド(化合物1)、化合物2、3、5、6または8の不在下または存在下で5nM 35S−2(約100万dpm/アッセイ)とともに37℃で2時間インキュベートした。化合物8は、化合物2の類似体(この類似体では、2の3−ヒドロキシルプロピル部分のヒドロキシル基がオキソ基で置換されている)である。
ヒトNPC1L1でトランスフェクトされたCHO細胞(約600000細胞/アッセイ)を、漸増濃度のEZE−グルクロニド(化合物1)、化合物2、3、5、6または8の不在下または存在下でバッファーA中5nM 35S−2(約100万dpm/アッセイ)とともに37℃で2時間インキュベートした。
図9および12、ならびに表10で示されるように、組換えタンパク質対する親和性と天然タンパク質に対する親和性は、実質的に同一であり、このことは、哺乳動物組織においては、NPC1Llがエゼチミブの直接標的であり、結合には他のタンパク質を必要としないということの有力な証拠を提供する。
ヒト組換えNPC1L1に対するエゼチミブグルクロニドおよびこの類似体の親和性も決定した。これらの結果を図9に示す。これらの結果では、エゼチミブグルクロニド(1)のヒトタンパク質に対する親和性が907nMであることが示されている。プロパルギル−スルホンアミド類似体(2)は、約50倍強く(Kd=21nM)、このことは、この化合物が、ヒトにおけるコレステロール吸収の阻害効力が高い可能性があることを示唆している。
(実施例32)
野生型マウスおよびNPC1L1欠損マウス由来の膜への35S−2の結合
NPC1L1がエゼチミブの標的であるということを、NPC1L1欠損マウスおよび対照マウス由来の腸刷子縁膜における35S−2を用いた結合研究により最終確認を得た。
野生型マウスおよびNPC1L1ノックアウト(−/−)マウスの腸組織から刷子縁膜小胞を調製した。15μgタンパク質/アッセイ、30μgタンパク質/アッセイおよび60μgタンパク質/アッセイの刷子縁膜小胞を、100μM EZE−グルクロニドの存在下および不在下でバッファーA中4nM35S−2とともに37℃で3時間インキュベートした。
これらの結果を図10に示す。これらの結果では、NPC1L1欠損マウス由来の膜では検出可能な結合が観察されないが、年齢適合野生型対照膜には検出可能な結合が存在していることが示されている。この実験において、対照マウスの膜で観察された結合親和性(Kd=156nM)は、これまでの研究で観察された結合親和性と実質的に同一であった(図11)。
(実施例33)
ラット由来の刷子縁膜小胞、マウス由来の刷子縁膜小胞およびアカゲザル由来の刷子縁膜小胞を使用した結合解析
結合研究を実施して、種々の刷子縁膜小胞に対するエゼチミブグルクロニドの相対的結合親和性を比較した。
3H−エゼチミブグルクロニド1を、実施例27に記載のとおり調製した。刷子縁膜を、実施例27に記載のとおり調製した。
(結合アッセイ) アッセイを12×75mmガラス製試験管において総量20から100μlで実施した。一般に、凍結した膜をバッファーAまたは0.03%タウロコール酸塩および0.05%ジギトニンを含むバッファーAで最終濃度0.5から5mg/mlに希釈した(バッファーA:26 mM NaHCO3、0.96 mM NaH2PO4、5 mM HEPES、5.5 mMグルコース、117 mM NaCl、5.4 mM KCl、pH=7.4)。[3H]エゼチミブグルクロニド1の最終濃度は、一般に25から50nMであり、これらをDMSO溶液またはCH3CN溶液として送達した。競合するリガンドを、同様にDMSO溶液として加えて、全体として有機溶媒含有量1から5%とした。非特異的結合は、100から500μMエゼチミブグルクロニドとの競合により見極めた。バッファーAのうちの少なくとも3成分、重炭酸塩およびリン酸塩、ならびにグルコースは、後に重要ではないことが分かったため、通常は省略した。平衡状態に達するまで、反応物をインキュベートした(ラットの膜の場合には1時間またはアカゲザルの膜の場合には3時間)。
結合したリガンドを、Whatman GF/Cガラス繊維フィルターでのシングルチューブ真空濾過により回収した。非特異的結合を減少させるために、フィルターを0.5%ポリエチレンイミンに浸漬することによって前処理した。濾過を、氷冷バッファー(120mM NaCl、0.1%コール酸ナトリウムおよび20mM MES(pH6.7))2.5mlをアッセイチューブに加え、フィルターを通して混合物に注ぎ、次いでチューブとフィルターをさらなるバッファー2×2.5mlで3回以上洗浄することにより、実施した。フィルターを、7mlバイアルで、Packard社製のシンチレーション液(Ultima Gold MV liquid)を用いて測定した。3連のアッセイを実施した場合の標準誤差は、一般に<4%であった。一例として、ラット刷子縁膜(2mg/ml)の、400000dpm(50nM)の[3H]エゼチミブグルクロニドの存在下での100μlアッセイでは、15000dpmの特異的結合と3000dpmの非特異的結合が得られた。フィルターが非特異的結合の大部分の原因であった(2000dpm)。
(データ解析) 非特異的結合の補正後、非線形回帰により飽和−結合データを単一の式[B]=Bmax×[L]/([L]+KD)にフィッティングした(Sigma Plot)。この線形スキャッチャードプロットを例示している。競合実験からのKiについてのデータを、式[B]=[B0]/(1+[I]/Ki obs)への非線形回帰により解析し、必要に応じて、放射性リガンド競合をKi=Ki obs/(1+[L*]/KD)として補正した。
一次速度定数(kobsおよびkoff)を、一次速度式A=A0e−ktへの非線形回帰により決定した。動態データkonをWeiland and Molinoff(32)に従って、方程式kon=kobs([LR]e/([L][LR]max))(式中、[L]はリガンドの濃度であり、[LR]eは平衡状態における複合体の濃度であり、[LR]maxは存在する受容体の最大数であり、kobsは見かけの一次速度定数である)を用いて解析した。
(結合解析) ラット由来、マウス由来およびアカゲザル由来の腸細胞刷子縁膜調製物を用いて、[3H]エゼチミブグルクロニドを使用した結合研究、ガラス繊維フィルターでの伝統的な迅速濾過アッセイを実施した(表11)。表11では、界面活性剤の不在下でのこれらの膜に対する[3H]エゼチミブグルクロニドの結合親和性を示している。観察された結合は、特異的飽和結合であり、単一分子部位と一致していた。ラットおよびサルについてのスキャッチャード解析および特異的/非特異的結合ウインドウを図12に示す。ラットの膜では、結合親和性が比較的弱く(KD=542nM)、ネズミの膜ではさらに弱かった(KD=10000nM)。対照的に、アカゲザルの膜における結合親和性は約10倍高かった(KD=41nM)。結合部位の数は、種および調製に応じて5から20pmol/mg膜タンパク質と変動した。
[3H]エゼチミブグルクロニドの結合速度および解離速度を決定し、タンパク質−リガンド相互作用で一般に観察される速度と比べて遅いことが分かった。例えば、ラット刷子縁膜およびサル刷子縁膜との結合についての速度定数は、kon=5.54および3.90×103M−1s−1である(図12)。これらの値は、拡散律速接触で一般に観察されるもの(108から109M−1s−1)よりも100000倍小さい。同様に、これらの複合体は、非常に長寿命であり、25℃で速度定数koff=2.4×10−3s−1および1.2×10−4s−1(ラット複合体およびサル複合体それぞれの半減期4.7分および96分に相当する)で解離する。比較して、一般的な拡散律速の、100のナノ極性KDリガンドの解離半減期は、通常<1秒である。これらの速度定数からK0値(KD=koff/kon)、それぞれ440nMおよび32nMが推定される。これらの値は、平衡滴定による測定値(図12)および先に述べた飽和による測定値(通り)とよく一致している。上記のような、ゆっくりと形成する長寿命の複合体は、タンパク質の構造変化が律速であることを示唆する。
表11はまた、ラット由来、マウス由来およびアカゲザル由来の種々の腸細胞刷子縁膜調製物における[3H]エゼチミブグルクロニドのin vitro結合とin vivo結合との相関も示している。in vivoでのED50値は、コレステロール吸収研究およびコレステロール摂食研究から得られる。in vivoでのエゼチミブ有効性(ED50)の順位序列は以下のとおりであり:アカゲザル(0.0005mpk)>ラット(0.03mpk)>マウス(0.5mpk)、この順位序列はin vitroでの結合親和性(IC50)の順序、以下:アカゲザル(41nM)<ラット(542nM)<マウス(12000nM)と同じである。
刷子縁膜に対する1の結合親和性は、全ての種で、in vivoでのエゼチミブによるコレステロール取込み阻害に対する感受性と相関し(マウス<ラット<サル)(Clader,J.W.The discovery of ezetimibe;A view from outside the receptor.J.Med.Chem.47、1から9頁 (2004);Davis,H.R.Jr.,Compton,D.S.,Hoos,L.& Tetzloff,G.Ezetimibe,a potent cholesterol absorption inhibitor,inhibits the development of atherosclerosis in ApoE knockout mice.Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.21,2032から2038頁 (2001);Burnett,D.A.Βeta−lactam cholesterol absorption inhibitors.Curr.Med.Chem.11,1873から1887頁 (2004))、アッセイがin vivoでのエゼチミブの標的に関するアッセイであるという前提と一致する(表11)。この相互作用が極めて特異的であるということの証拠として、エゼチミブエナンチオマーのグルクロニドを調製した。このエゼチミブエナンチオマーのグルクロニドがin vitroでは完全に不活性であることが分かり(全ての種において、Ki>100×エゼチミブグルクロニドのKD)、ラット急速コレステロール吸収モデルではin vivoでのこの活性損失と一致した(エナンチオマーが解析されている表12を参照)。
(実施例34)
NPC1L1発現HEK293細胞におけるエゼチミブの標的としてのNPC1L1.
本実施例では、エゼチミブがNPC1L1発現HEK293細胞と特異的に結合することを証明する。
(NPC1L1の一過性発現) ラットNPC1L1(Genbank AY437867)またはヒトNPC1L1(Genbank AY437865)を発現するプラスミドpCR3.1を、標準的な分子生物学プロトコールを用いて調製した。トランスフェクションの18時間前に、HEK−293細胞(ATCC)を、10%ウシ胎児血清、4.5g/L D−グルコースおよびL−グルタミンを含むDMEMの入ったT−225フラスコ(Corning)につき10×106細胞にて播種した。これらをDNA 25μgで、Fugene トランスフェクション試薬(Roche Biochemical)をFugene:DNA 6:1 の割合で使用して、一過性にトランスフェクトした。トランスフェクション後、細胞を37℃、5%CO2にて48時間インキュベートし、次いで、PBSに基づく細胞解離バッファー(Gibco)を使用して回収し、500×gにてペレット化し、これをドライアイスでスナップ凍結し、−80℃で保存した。
(HEK−293細胞由来の膜調製物) 膜を、凍結した細胞ペレットを8%スクロースを含む20mMのHEPES/Trisバッファー(pH7.40)(10容量)に再懸濁し、この懸濁液を、大部分の細胞が溶解するまで、プローブ式超音波処理装置を用いて氷上で超音波処理することにより、調製した。膜を単離するために、超音波処理物を1600×gにて10分間遠心分離して、細胞残屑を除去した後、上清を125000×gにて1時間遠心分離して、膜を回収した。これらの膜を、160mM NaClおよび5%グリセロールを含む20mMのHEPES/Trisバッファー(pH7.40)に再懸濁し、10から20mg/mlタンパク質において−80℃で保存した。
NPC1L1がエゼチミブによって阻害される経路の重要な成分であるということを示す最新の証拠を求めて、組換えラットNPC1L1および組換えヒトNPC1L1をヒト胎児腎臓(HEK)293細胞において発現させた(図13、パネル1)。NPC1LIを発現するHEK−293細胞の細胞溶解物(図13、パネル1のレーン1およびレーン3)および野生型細胞由来の細胞溶解物(図13、パネル1のレーン2およびレーン4)を、抗NPC1L1抗体A1801を用いるゲル電気泳動およびウエスタンブロットによって解析した。過剰のNPC1L1特異的ペプチドを含めて、この抗体のNPC1L1に対する特異性を評価した(図13、パネル1のレーン3およびレーン4)。1を使用した予備結合研究では、NPC1L1発現細胞由来の膜調製物に対する特異的結合を示したが、モックトランスフェクト細胞由来の膜に対する特異的結合は示さなかった(示していない)。
BODIPY標識蛍光エゼチミブグルクロニド類似体(SCH354909)に関しても、NPC1L1発現細胞との結合が観察された(図13、パネル2A)。図13のパネル2では、NPC1L1−293細胞の表面に結合した蛍光エゼチミブグルクロニド類似体(SCH354909)(パネル2A)、100μM非標識エゼチミブグルクロニドの存在下でのSCH354909とNPC1L1−293細胞との非特異的結合(パネル2B)、SCH354909と野生型HEK293細胞との結合(パネル2C)、および100μM非標識エゼチミブグルクロニドの存在下でのSCH354909と野生型HEK293細胞との非特異的結合(パネル2D)についての共焦点顕微鏡画像を示している。いずれの場合にも、プレーティングした細胞を、500nM SCH354909を含有する培養培地において37℃で4時間インキュベートした。細胞を、続いてPBSで洗浄し、共焦点顕微鏡により蛍光を検出した。
SCH345909の結合は、NPC1L1発現細胞の細胞表面膜において全く明らかであったが、過剰の非標識エゼチミブグルクロニドの存在下では完全に廃止された(図13、パネル2C)。野生型HEK293細胞では、結合は観察されなかった(図13、パネル2Bおよびパネル2D)。これらの結果は、エゼチミブグルクロニドがNPC1L1と特異的に結合することを証明した。
(実施例35)
エゼチミブのin vivo標的としてのNPC1L1
NPC1L1がin vivoでのエゼチミブの直接結合標的であるという証拠を得るため、1およびいくつかの重要な類似体の、HEK−293細胞膜において発現される組換えラットNPC1L1および組換えヒトNPC1L1に対する結合親和性を決定し、天然ラット腸細胞刷子縁膜および天然アカゲザル腸細胞刷子縁膜に対する結合親和性と比較した。構造に微細な変化を有し、天然刷子縁膜(1000倍の範囲に及ぶ)に対する結合親和性を有さない一連のエゼチミブ類似体を選択した。
表12では、組換えNPC1L1−293細胞膜および天然刷子縁膜に対する結合親和性(Ki値)の比較を示している。選択したエゼチミブグルクロニド類似体を、一過性にトランスフェクトされたHEK−293細胞から調製した組換えラットNPC1L1膜および組換えヒトNPC1L1膜と天然ラット刷子縁膜および天然アカゲザル刷子縁膜とに対して比較する。結合アッセイを、0.03%タウロコール酸ナトリウムおよび0.05%ジギトニンの存在下、最終量20μlにおいて、平衡状態に達するまで実施した。天然ラット実験、組換えラット実験および組換えヒト実験では、1.25mgタンパク質/mlおよび100nMの1を使用し、天然アカゲザル実験では1.25mgタンパク質/mlおよび20nMの1を使用した。
阻害の不在下で観察された全結合および非特異的結合は、それぞれ、天然ラット:7,700dpm&1,100dpm、組換えラット:33000dpm&1,100dpm、天然アカゲザル:7,300dpm&367dpm、および組換えヒト:19,200dpm&1000dpmであった。類似体の構造を表12に記載する。化合物4は、立体化学的配置3S,4Rを有する、エゼチミブエナンチオマーのグルクロニドである。これらの測定は、0.03%タウロコール酸塩および0.05%ジギトニン(これらの界面活性剤の臨界ミセル濃度より低いレベル)を含むバッファー中で実施した。これらの条件は、組換え調製物において見かけの結合を20倍ほど強化し(主として、Bmax効果)、1およびこの類似体のKi値の定量比較を一段と進めやすくした。
表12で示されるように、組換えラットNPC1L1および天然ラット刷子縁膜に対するKi値は実質的に同一である。これは、NPC1LIがin vivoでのエゼチミブの分子標的であることを強く示唆している。組換えヒトNPC1L1を発現する細胞由来の膜の場合、この結合親和性もまたラットの膜において観察された結合親和性と同等であるが、一方、天然アカゲザル刷子縁膜に対する結合親和性は、一様に〜10倍強い。この結果は、エゼチミブではヒトまたはラットよりもサルにおいて有効性が大きい順序となるという発見と一致している(Clader,J.W.The discovery of ezetimibe;A view from outside the receptor.J Med.Chem.47,1から9頁 (2004);Jeu,L.& Cheng,J.W.Pharmacology and therapeutics of ezetimibe(SCH 58235),a cholesterol−absorption inhibitor.Clin.Ther.25,2352から2387頁 (2003))。
NPC1L1がエゼチミブの標的であるという決定的な証拠は、NPC1L1欠損マウスの組織を用いた研究によって得られた。NPC1L1欠損マウスから調製した腸細胞刷子縁膜は、1に対して特異的な、検出可能な結合親和性を示さなかったが、一方、年齢適合野生型マウス由来の膜は高レベルの特異的結合(KD=12μM)を示した(図14)。
図14Aでは、腸細胞刷子縁膜をNPC1L1が欠損した雄マウスおよび同性の野生型同腹子から調製し、これらの膜を1の結合について試験した。結合についての条件は、0.03%タウロコール酸ナトリウムおよび0.05%ジギトニンの存在下、20μl量中5mg/mlタンパク質および500nM 1でであった。左側が野生型マウス由来の膜であり、右側がNPC1L1欠損マウス由来の膜である。棒グラフでは、野生型マウスおよびNPC1L1欠損マウス各々についての全結合(左のバー)、500μMコールドエゼチミブグルクロニドの存在下での非特異的結合(中央のバー)および特異的結合(右のバー)、エラーバーにより三連の測定値を表している。このグラフは、野生型マウスでは特異的結合が容易に検出できるが、NPC1L1欠損マウスでは特異的結合が存在しないことを示している。
図14Bでは、非標識エゼチミブグルクロニドの1との競合を表すプロットを示している。野生型マウス由来の膜(上側の曲線)ではKi=12000nMが得られたが、ノックアウト動物由来の膜(下側の曲線)では特異的結合が実質的に検出できなかった。条件は、図14Aにおいて記載されているものであった。
本研究では、組換えタンパク質と刷子縁膜との間の結合の定量比較が必要である。SR−BI(スカベンジャー受容体タイプB1)は、エゼチミブと候補タンパク質との結合を利用した発現クローニング戦略により、潜在的標的としてこれまでに確認された。この仮説は、SR−BI欠損マウスにおいてコレステロール吸収もエゼチミブ活性も影響を受けなかったことで、簡単に退けられた(Altmann,S.W.ら The identification of intestinal scavenger receptor class B,type 1(SR−B1)by expression cloning and its role in cholesterol absorption.Biochem.Biophs.Acta 1580,77から93頁 (2002))。これらの結果は、エゼチミブが天然の腸膜と組換えNPC1L1を発現する細胞とに、同等の親和性で結合し、NPC1L1欠損マウス由来の膜とは結合しないことを示す。これにより、NPC1L1とエゼチミブとの間の特異的結合相互作用が示される。NPC1L1が欠損したマウスは、腸コレステロール取込みにおいて障害があり、もはやエゼチミブとは反応しないというこれまでに公開されている研究結果(Altmann,S.W.ら Niemann−Pick Cl Like 1 protein is critical for intestinal cholesterol absorption.Science 303,1201から1204頁 (2004))と、これらのデータにより、NPC1L1がエゼチミブの直接標的として明確に確立される。
(実施例36)
界面活性剤の[3H]エゼチミブグルクロニド結合における効果
組換えタンパク質を用いた研究では、当初、トランスフェクトNPC1L1−293細胞の膜における結合部位の出現数が非常に少ないという実用的な側面があった。0.03%タウロコール酸塩と0.05%ジギトニンの組合せがこれらの膜および天然腸細胞刷子縁膜調製物との特異的結合に及ぼす影響は、図15で例示されるように劇的なものである。
等量(25μgタンパク質)のラット刷子縁膜、組換えラットNPC1L1を一過性に発現するHEK−293細胞由来の膜および組換えヒトNPC1L1を一過性に発現するHEK−293細胞由来の膜を、25nM 1とともに、最終量20μlにおいて、平衡状態に達するまでインキュベートした。インキュベーション条件は、タウロコール酸ナトリウムおよびジギトニンを、それぞれ、最終濃度0.03%および0.05%まで含むバッファーAとタウロコール酸ナトリウムおよびジギトニンを含まないバッファーAであった。x軸にある「C」は界面活性剤の不在下での対照を表し、「+det」は両方の界面活性剤の存在下での応答を表す。これらの結果を3本編成のバー群として示している。全結合(各3本編成バー群内の左のバー)、100μM非標識エゼチミブグルクロニドの存在下での非特異的結合(各3本編成バー群内の中央のバー)および特異的結合(各3本編成バー群内の右のバー)を示す。
(実施例37)
ラット膜およびアカゲザルの膜におけるNPC1L1に対するエゼチミブグルクロニドおよび種々の類似体の結合親和性
ラット刷子縁膜に関する、3H−エゼチミブグルクロニドを使用した結合アッセイの結果から決定されるように、式IIの代表的な試験化合物が、IC50 約13000nM以下を有すると決定された。詳しくは特定の試験化合物がIC50 約1900nM以下を有し、より詳しくは特定の試験化合物がIC50 約1000nM以下を有し、最も詳しくは特定の試験化合物がIC50 100nM未満を有した。アカゲザル刷子縁膜に関する、3H−エゼチミブグルクロニドを使用した結合アッセイの結果から決定されるように、式IIの代表的な試験化合物が、IC50 約4200nM以下を有すると決定された。詳しくは特定の試験化合物がIC50 約165nM以下を有し、より詳しくは、特定の試験化合物がIC50 100nM未満を有し、および最も詳しくは特定の試験化合物がIC50 50nM未満を有した。
以下の実施例において、繰り返し使用される特定の中間体には以下の名称を使用する:
化合物(3R,4S)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヨードフェニル)アゼチジン−2−オン(i−6)および4−[(2S,3R)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−1−(4−ヨードフェニル)−4−オキソアゼチジン−2−イル]フェニルメチルβ−D−グルコピラノシドウロナート(i−7)を、Burnett,D.S.;Caplen,M.A.;Domalski,M.S.;Browne,M.E.;Davis,H.R.Jr.;Clader,J.W.Bioorg.Med.Chem.Lett.(2002),12,311頁に従って調製した。化合物i−8は、ヒドロキシ保護したi−7類似体(式中、保護基はアシルである)である。
また、以下の実施例において、以下の定義も使用する:
(実施例38)
N−プロパ−2−イン−1−イルアセトアミド(i−1)の調製
塩化アセチル(0.52mL、7.3mmol)を、0℃で、ピリジン(2.5mL)中、プロパルギルアミン(0.5mL、7.3mmol)およびジメチルアミノピリジン(18mg、0.14mmol)の攪拌溶液に加え、得られた混合物を周囲温度まで加温した。約15時間後、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、1N HClおよびブラインで連続洗浄した。この有機相を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮し、標題の化合物(i−1)を得た。この化合物をさらなる精製を行わずに使用した。
(実施例39)
N−プロパ−2−イン−1−イルベンゼンスルホンアミド(i−2)の調製
塩化ベンゼンスルホニル(1.16mL、9.1mmol)を、室温で、ピリジン(5mL)中、プロパルギルアミン(0.62mL、9.1mmol)およびジメチルアミノピリジン(22mg、0.18mmol)の攪拌溶液に加えた。得られた溶液を周囲温度にて約15時間エイジングした。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、1N HClおよびブラインで連続洗浄した。この有機相を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮し、標題の化合物(i−2)を得た。この化合物をさらなる精製を行わずに使用した。
(実施例40)
N,N−ジメチル−N’−プロパ−2−イン−1−イル尿素(i−3)の調製
塩化ジメチルカルバミル(0.84mL、9.1mmol)を、室温で、ピリジン(5mL)中、プロパルギルアミン(0.62mL、9.1mmol)およびジメチルアミノピリジン(22mg、0.18mmol)の攪拌溶液に加えた。得られた懸濁液を周囲温度にて約15時間攪拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、1N HClおよびブラインで連続洗浄した。この有機相を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮し、標題の化合物(i−3)を得た。この化合物をさらなる精製を行わずに使用した。
(実施例41)
N−メチル−N−プロパ−2−イン−1−イルメタンスルホンアミド(i−4)の調製
塩化メタンスルホニル(1.12mL、14.5mmol)を、室温で、ピリジン(10mL)中、N−メチルプロパルギルアミン(1.22mL、14.5mmol)およびジメチルアミノピリジン(35mg、0.30mmol)の攪拌溶液に加えた。約15時間エイジングした後、反応混合物を酢酸エチルに注ぎ込み、1N HClおよびブラインで連続洗浄した。この有機相を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮し、標題の化合物(i−4)を得た。この化合物をさらなる精製を行わずに使用した。
(実施例42)
N−プロパ−2−イン−1−イルメタンスルホンアミド(i−5)の調製
塩化メタンスルホニル(1.40mL、18.1mmol)を、0℃で、ピリジン(10mL)中、プロパルギルアミン(1.00g、18.1mmol)およびジメチルアミノピリジン(44.0mg、0.36mmol)の攪拌溶液に滴加した。約15時間エイジングした後、反応混合物を1N HClに注ぎ込み、酢酸エチルで2回抽出した。合わした有機抽出物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液、ブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、真空濃縮し、標題の化合物i−5を得た。未精製のi−5を、静置して結晶化させ、この化合物をさらなる精製を行わずに使用した。
(実施例43)
N−(3−{4−[(2S,3R)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−2−(4−ヒドロキシフェニル)−4−オキソアゼチジン−1−イル]フェニル}プロパ−2−イン−1−イル)メタンスルホンアミド(化合物6a)の調製
トリエチルアミン(7当量)を、窒素雰囲気下、DMF(最終生成物に対し、0.1M濃度)中、(3R,4S)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヨードフェニル)アゼチジン−2−オン(i−6)(1.00当量)、N−プロパ−2−イン−1−イルメタンスルホンアミド(i−5)(1.50当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(0.15当量)およびヨウ化銅(I)(0.30当量)の溶液に加え、得られた溶液を室温でエイジングする。反応完了後、揮発性物質を真空蒸発させる。未精製の残渣を、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、標題の化合物を得ることができる。
(実施例44)
段階A:4−[(2S,3R)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−1−(4−{3−[(メチルスルホニル)アミノ]プロパ−1−イン−1−イル}フェニル)−4−オキソアゼチジン−2−イル]フェニルメチルβ−D−グルコピラノシドウロナート(化合物7a)の調製
トリエチルアミン(0.07mL、0.502mmol)を、窒素雰囲気下、DMF(0.5mL)中、4−[(2S,3R)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−1−(4−ヨードフェニル)−4−オキソアゼチジン−2−イル]フェニルメチルβ−D−グルコピラノシドウロナート(i−7)(0.050g、0.071mmol)、N−プロパ−2−イン−1−イルメタンスルホンアミド(i−5)(0.014g、0.105mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(0.012g、0.010mmol)およびヨウ化銅(0.005g、0.026mmol)の攪拌溶液に加え、得られた溶液を室温で18時間エイジングした。揮発性物質を真空蒸発させ、未精製の残渣を、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶出剤として0から25%メタノール/塩化メチレン)により精製し、標題の化合物を得た。m/z(ES)713(MH+)、505。
段階B:4−[(2S,3R)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−1−(4−{3−[(メチルスルホニル)アミノ]プロパ−1−イン−1−イル}フェニル)−4−オキソアゼチジン−2−イル]フェニルβ−D−グルコピラノシドウロン酸(化合物7b、本明細書中では化合物2ともと呼ばれる)の調製
化合物7aのメタノール/水/トリエチルアミン(1:7:2、1mL)中溶液を室温で約1.5時間攪拌した。揮発性物質を真空蒸発させ、未精製の残渣を、YMC Pack Pro C18相での分取逆相高速液体クロマトグラフィー(勾配溶出;溶出剤として10から65%アセトニトリル/水、0.1%TFA修飾剤)により精製し、標題の化合物(7b)を得た。m/z(ES)699(MH+)、505;C34H36FN2O11SのHRMS(ES)m/z 理論値(MH+)699.2024、測定値699.2016。
(実施例45)
(化合物6Bから6Gおよび化合物7Cから7N)
(与えられたMSデータで示される)以下の式IIaの化合物を調製した。これらの化合物は、実施例43(表13に示す)または実施例44(表14に示す)に記載されている一般合成手順により調製することができる。
(実施例46)
段階A:4−((2S,3R)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−4−オキソ−1−{4−[(トリメチルシリル)エチニル]フェニル}アゼチジン−2−イル)フェニルメチルβ−D−グルコピラノシドウロナート(8a)の調製
トリエチルアミン(69.0μL、0.495mmol)を、窒素雰囲気下、DMF(0.5mL)中、i−7(50.0mg、0.071mmol)、トリメチルシリアセチレン(trimethylsilyacetylene)(12.0μL、0.085mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(13.0mg、0.011mmol)およびヨウ化銅(5.10mg、0.028mmol)の攪拌溶液に加え、得られた溶液を室温で18時間エイジングした。揮発性物質を真空蒸発させ、未精製の残渣を、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶出剤として0から25%メタノール/塩化メチレン)により精製し、標題の化合物(8a)を得た。m/z(ES)660(M−OH)+、470。
段階B:4−{(2S,3R)−1−(4−エチニルフェニル)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−4−オキソアゼチジン−2−イル}フェニルβ−D−グルコピラノシドウロン酸(8b)の調製
8aのメタノール/水/トリエチルアミン(0.25mL:1.10mL:0.40mL)中溶液を室温で約6時間攪拌した。揮発性物質を真空蒸発させ、未精製の残渣を、YMC Pack Pro C18相での分取逆相高速液体クロマトグラフィー(勾配溶出;溶出剤として10から65%アセトニトリル/水、0.1%TFA修飾剤)により精製し、標題の化合物(8b)を得た。m/z(ES)574(M−OH)+,398;C32H31FNO9(MH+)についての計算値HRMS(ES)m/z592.1983,実測値592.1985。
(実施例47)
段階A:4−[(2S,3R)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−1−(4−{3−[(メチルスルホニル)アミノ]プロピル}フェニル)−4−オキソアゼチジン−2−イル]フェニルメチルβ−D−グルコピラノシドウロナート(9a)の調製
メタノール(2mL)中、7a(40.0mg、0.056mmol)およびパラジウム(〜8mg、活性炭に対して10重量%(乾燥ベース))の混合物を、大気圧下で約1時間水素化した。反応混合物をセライトのショートプラグで濾過して、大量のメタノールで溶出し、濾液を真空蒸発させ、標題の化合物(9a)を得た。m/z(ES)509(M−糖−OH)+。
段階B:4−[(2S,3R)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−1−(4−{3−[(メチルスルホニル)アミノ]プロピル}フェニル)−4−オキソアゼチジン−2−イル]フェニルβ−D−グルコピラノシドウロン酸(9b)の調製
9aのメタノール/水/トリエチルアミン(1:7:2、1mL)中溶液を室温で約1時間攪拌した。揮発性物質を真空蒸発させ、未精製の残渣を、YMC Pack Pro C18相での分取逆相高速液体クロマトグラフィー(勾配溶出;溶出剤として10から65%アセトニトリル/水、0.1%TFA修飾剤)により精製し、標題の化合物(9b)を得た。m/z(ES)735(M+Na)+,685(M−OH)+,509(M−糖−OH)+;C34H39FN2O11S(MH+)についての計算値HRMS(ES)m/z703.2337,実測値703.2337。
(実施例48)
段階A:4−{(2S,3R)−3−[(3S)−3−アセトキシ]−3−(4−フルオロフェニル)プロピル}−1−[4−(3−{[tert−ブチル(ジメチルシリル)オキシ]プロパ−1−イン−1−イル]フェニル]−4−オキソアゼチジン−2−イル}フェニルメチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシドウロナート(10a)の調製
トリエチルアミン(170μL、1.25mmol)を、窒素雰囲気下、DMF(1.3mL)中、i−8(156mg、0.178mmol)、tert−ブチルジメチル(2−プロピニルオキシ)シラン(43.0μL、0.214mmol)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)(12.0mg、0.018mmol)およびヨウ化銅(7.00mg、0.036mmol)の溶液に加え、得られた溶液を室温で約20時間エイジングした。反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液に注ぎ込み、ジエチルエーテルで2回抽出した。合わせた有機抽出物を水、ブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、この濾液を真空濃縮した。未精製の残渣を、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶出剤として15から40%酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、標題の化合物10aを得た。
段階B:4−{(2S,3R)−3−[(3S)−3−(アセチルオキシ)−3−(4−フルオロフェニル)プロピル]−1−[4−(3−ヒドロキシプロパ−1−イン−1−イル)フェニル]−4−オキソアゼチジン−2−イル}フェニルメチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシドウロナート(10b)の調製
フッ化テトラブチルアンモニウム水和物(39.0mg、0.148mmol)を、テトラヒドロフラン(1.5mL)中の10a(136mg、0.148mmol)に加え、得られた溶液を室温で1時間エイジングした。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、エーテルで2回抽出した。合わせた有機抽出物を飽和重炭酸ナトリウム、ブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、真空濃縮した。未精製の残渣を、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(50%酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、標題の化合物10bを得た。
段階C:4−{(2S,3R)−3−[(3S)−3−(アセチルオキシ)−3−(4−フルオロフェニル)プロピル]−4−オキソ−1−[4−(3−オキソプロパ−1−イン−1−イル)フェニル]アゼチジン−2−イル}フェニルメチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシドウロナート(10c)の調製
デス・マーチン・ペルヨージナン(33.0mg、0.077mmol)を、室温で、ジクロロメタン(1mL)中、10b(62.0mg、0.077mmol)およびピリジン(31.0μL、0.386mmol)の溶液に加えた。30分後、反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液に注ぎ込み、酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機抽出物を水、ブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、真空濃縮した。未精製の残渣を、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;20から40%酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、標題の化合物10cを得た。
段階D:4−{(2S,3R)−3−[(3S)−3−(アセチルオキシ)−3−(4−フルオロフェニル)プロピル]−1−[4−(カルボキシエチニル)フェニル]−4−オキソアゼチジン−2−イル}フェニルメチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシドウロナート(10d)の調製
リン酸二水素ナトリウム(9.00mg、0.065mmol)および亜塩素酸ナトリウム(5.00mg、0.055mmol)の水溶液(0.1mL)を、室温で、10c(37.0mg、0.046mmol)のtert−ブチルアルコール(0.4mL)、ジオキサン(0.2mL)およびイソブチレン(〜0.1mL)中溶液に加えた。1.5時間後、反応混合物を真空濃縮し、未精製の残渣を酢酸エチルで繰り返しトリチュレートした。有機洗液を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮し、標題の化合物10dを得た。
段階E:4−{(2S,3R)−1−[4−(カルボキシエチニル)フェニル]−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−4−オキソアゼチジン−2−イル}フェニルβ−D−グルコピラノシドウロン酸(10e)の調製
メタノール(3mL)中、4−{(2S,3R)−3−[(3S)−3−(アセチルオキシ)−3−(4−フルオロフェニル)プロピル]−1−[4−(カルボキシエチニル)フェニル]−4−オキソアゼチジン−2−イル}フェニルメチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシドウロナート(10d)およびシアン化ナトリウム(約1mg、0.020mmol)の溶液を45℃まで加熱した。22時間後、反応混合物を減圧下で濃縮し、メタノール/水/トリエチルアミン(1:7:2、1mL)に溶かした。室温で約1時間攪拌した後、揮発性物質を真空蒸発させ、未精製の残渣を、YMC Pack Pro C18相での分取逆相高速液体クロマトグラフィー(勾配溶出;溶出剤として10から60%アセトニトリル/水、0.1%TFA修飾剤)により精製し、標題の化合物(10e)を得た。m/z(ES)442.0(M−糖−OH)+,618.0(M−OH)+;C33H31FNO11(MH+)についての計算値HRMS(ES)m/z636.1881,実測値636.1889。
(実施例49)
段階A:4−((2S,3R)−3−[(3S)−3−(アセチルオキシ)−3−(4−フルオロフェニル)プロピル]−1−{4−(3−(エチルアミノ)−3−オキソプロパ−1−イン−1−イル]フェニル}−4−オキソアゼチジン−2−イル)フェニルメチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシドウロナート(11a)の調製
DMF(40.0μL、0.40mmol)中、塩酸エチルアミンおよびジイソプロピルエチルアミンの1M溶液を、DMF(0.25mL)中の、4−{(2S,3R)−3−[(3S)−3−(アセチルオキシ)−3−(4−フルオロフェニル)プロピル]−1−[4−(カルボキシエチニル)フェニル]−4−オキソアゼチジン−2−イル}フェニルメチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシドウロナート(10d)(27.0mg、0.033mmol)、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(19.0mg、0.099mmol)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(8.00mg、0.059mmol)に加えた。4.5時間後、反応混合物を酢酸エチルに注ぎ込み、水およびブラインで連続洗浄した。この有機層を乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。未精製の残渣を、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;50から60%酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、標題の化合物11aを得た。
段階B:4−{(2S,3R)−1−{4−[3−(エチルアミノ)−3−オキソプロパ−1−イン−1−イル]フェニル}−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−4−オキソアゼチジン−2−イル}フェニルβ−D−グルコピラノシドウロン酸(11b)の調製
メタノール(3mL)中、4−((2S,3R)−3−[(3S)−3−(アセチルオキシ)−3−(4−フルオロフェニル)プロピル]−1−{4−(3−(エチルアミノ)−3−オキソプロパ−1−イン−1−イル)フェニル}−4−オキソアゼチジン−2−イル)フェニルメチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシドウロナート(11a)(22.0mg、0.026mmol)およびシアン化ナトリウム(〜1mg、0.020mmol)の溶液を45℃まで加熱した。18時間後、反応混合物を減圧下で濃縮し、メタノール/水/トリエチルアミン(1:3:1、2.5mL)に溶かした。室温で約1時間攪拌した後、揮発性物質を真空蒸発させ、未精製の残渣を、YMC Pack Pro C18相での分取逆相高速液体クロマトグラフィー(勾配溶出;溶出剤として10から60%アセトニトリル/水、0.1%TFA修飾剤)により精製し、標題の化合物(11b)を得た。m/z(ES)663.0(M+H)+;についての計算値HRMS(ES)m/zC35H36FN2O10(MH+)663.2354,実測値663.2341。
本発明は、本明細書に記載される特定の実施態様によって範囲を限定されるものではない。実際に、本明細書に記載されるものに加えて、本発明の種々の改変が、上記の説明から当業者にとって明らかになる。このような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるものと意図される。
特許、特許出願、刊行物、製品説明書、Genbank受託番号およびプロトコールが、本願を通じて引用される。これらの開示は、全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる。