JP4590168B2 - 画像処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機やプリンタ等の画像処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、複写機等もその複写結果の高画質化が促進され、両面印刷された原稿を読み取る場合に、いわゆる裏写り(原稿読み取り面の裏面の文字が浮かび上がって見えてしまう現象)を軽減したり、用紙の色や模様等の複写の結果への影響を軽減したりする、下地除去処理を行うものも多くなってきている。
【0003】
この下地除去処理は、一般には、例えば予め定められた所定の諧調レベルを基準にして、原稿読み取りで得られた画像データに対して諧調補正を行うことで実現している。また、原稿の両面を読み取って、各面の画像データを生成し、各画像データに基づいて、裏写りを軽減する処理も考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の処理によっては、カラー複写機における画質劣化を効率的に防止するには十分でない。すなわち、諧調レベルを調整するのみでは、画像部分に影響している下地や裏写りを除去できない。また、裏面の画像データを併せて利用する方法では、表裏の位置合わせなどの処理が煩雑になって効率的でない。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、カラー複写機における画質劣化を効率的に防止できる画像処理装置を提供することを、その目的の一つとする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、画像処理装置であって、予め選択された色を特定する色情報を、少なくとも一つ記憶する記憶手段と、処理対象となった画像データについて、その画像データに含まれる各ピクセルの色情報を順次参照し、前記記憶手段に記憶されている色情報を用いて定められる所定の条件を、当該参照しているピクセルの色情報が満足するか否かを判断する判断手段と、前記判断の結果に基づいて、処理対象となった画像データの各ピクセルの色情報に関する所定の処理を行う処理手段と、を含むことを特徴としている。
【0007】
ここで前記所定の条件は、所定の色空間内における、前記記憶手段に記憶されている色情報と、処理対象となった画像データの各ピクセルの色情報との距離に関する条件であることとしてもよい。
【0008】
また、上記従来例の問題点を解決するための本発明は、画像処理装置であって、予め選択された色を特定する色情報を複数記憶する記憶手段と、処理対象となった画像データについて、その画像データに含まれる各ピクセルを順次参照し、前記記憶手段に記憶されている各色情報によって特定される複数の色を用いて、所定の色空間内で画定される色域内に、当該参照しているピクセルの色情報によって特定される色が含まれるか否かを判断する判断手段と、前記判断の結果に基づいて、処理対象となった画像データの各ピクセルの色情報に関する所定の処理を行う処理手段と、を含むことを特徴としている。
【0009】
ここで前記記憶手段に記憶されている色情報は少なくとも2つであり、当該記憶手段に記憶されている色情報によって特定される複数の色を用いて、所定の色空間内で画定される前記色域は、前記色情報によって特定される複数の色に係るガモットを、外側へ所定量だけ拡張した領域であることとしてもよい。
【0010】
さらにこれらにおいて、前記記憶手段に記憶されている色情報の少なくとも一つは、処理対象となった画像データに含まれるピクセルの色情報に基づいて定められることとしてもよいし、前記処理対象となった画像データに対して、事前に空間周波数に関係する画像フィルタ処理を行うフィルタ手段をさらに含んでもよい。また、処理対象となった画像データが、所定種類の装置で形成された旨を示す入力を、ユーザ側から受け入れる手段をさらに含み、当該入力に基づいて、前記判断手段と処理手段との少なくとも一方の処理を行うか否かが判断される、こととしてもよい。
【0011】
本発明の別の態様に係る予め選択された色を特定する色情報を、少なくとも一つ記憶する記憶手段にアクセス可能なコンピュータ装置を制御する方法は、処理対象となった画像データについて、その画像データに含まれる各ピクセルの色情報を順次参照し、前記記憶手段に記憶されている色情報を用いて定められる所定の条件を、当該参照しているピクセルの色情報が満足するか否かを判断する工程と、前記判断の結果に基づいて、処理対象となった画像データの各ピクセルの色情報に関する所定の処理を行う工程と、を実行することを特徴としている。
【0012】
また本発明のさらに別の態様に係る予め選択された色を特定する色情報を複数記憶する記憶手段にアクセス可能なコンピュータ装置を制御する方法は、処理対象となった画像データについて、その画像データに含まれる各ピクセルを順次参照し、前記記憶手段に記憶されている各色情報によって特定される複数の色を用いて、所定の色空間内で画定される色域内に、当該参照しているピクセルの色情報によって特定される色が含まれるか否かを判断する工程と、前記判断の結果に基づいて、処理対象となった画像データの各ピクセルの色情報に関する所定の処理を行う工程と、を含むことを特徴としている。
【0013】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、予め選択された色を特定する色情報を、少なくとも一つ記憶する記憶手段にアクセス可能なコンピュータによって実行されるプログラムであって、処理対象となった画像データについて、その画像データに含まれる各ピクセルの色情報を順次参照し、前記記憶手段に記憶されている色情報を用いて定められる所定の条件を、当該参照しているピクセルの色情報が満足するか否かを判断する手順と、前記判断の結果に基づいて、処理対象となった画像データの各ピクセルの色情報に関する所定の処理を行う手順と、を前記コンピュータに実行させることを特徴としている。
【0014】
また、上記従来例の問題点を解決するための本発明は、予め選択された色を特定する色情報を複数記憶する記憶手段にアクセス可能なコンピュータによって実行されるプログラムであって、処理対象となった画像データについて、その画像データに含まれる各ピクセルを順次参照し、前記記憶手段に記憶されている各色情報によって特定される複数の色を用いて、所定の色空間内で画定される色域内に、当該参照しているピクセルの色情報によって特定される色が含まれるか否かを判断する手順と、前記判断の結果に基づいて、処理対象となった画像データの各ピクセルの色情報に関する所定の処理を行う手順と、を前記コンピュータに実行させることを特徴としている。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係る画像処理装置は、図1に示すように、制御部11と、記憶部12と、データベース部13と、スキャナ部14と、操作部15と、表示部16と、プリンタ部17とを含んで構成されている。
【0016】
制御部11は、記憶部12に格納されているプログラムに従って動作し、スキャナ部14から入力される、処理対象の画像データについて、所定の強調処理を行うフィルタ演算を行い、フィルタ演算後の画像データの各ピクセルについて、その色情報が予め定めた所定の条件を満足するか否かを判断して(判断処理)、その判断結果に基づき各ピクセルの色情報について所定の処理を行う。すなわち、この制御部11は、本発明のフィルタ手段、判断手段、並びに処理手段の各手段を具現化したものである。この制御部11の具体的動作については、後に詳しく述べる。
【0017】
記憶部12は、制御部11によって実行されるプログラムを保持するコンピュータ可読な記録媒体と、読み書き可能なメモリ装置(RAM;Random Access Memory)とを含む。すなわち、この記憶部12は、例えばハードディスクや、光学的ディスクなど、電気的ないし磁気的にプログラムなどの情報を担持する媒体と、当該媒体からプログラムなどの情報を読み出して制御部11に出力する。また、この記憶部12は、制御部11の処理に伴って発生する種々のデータを記憶するメモリ装置を備え、ワークメモリとしても動作している。
【0018】
データベース部13は、制御部11における判断処理で用いられる条件に係る情報を保持している。具体的に、このデータベース部13には、図2に示すように、少なくとも一つの色情報が格納されている。この図2に示した例では、色情報は予め決められた色空間における所定の色を表す値である。図2では、例えばシアン(Cyan)、マゼンタ(Magenta)、イエロー(Yellow)、ブラック(Black)、ホワイト(White)からなる5色と、赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の3色と、の色情報を含んでいる例を示しているが、これに限られるものではなく、例えばユーザが付加的な色情報を登録できるようにしておいてもよいし、また、紙の色を示す色情報など、読み取られる対象物の具体的な色に対応する色情報であってもよい。なお、以下の説明では区別のため、このデータベース部13に格納されている色情報を、基準色情報と呼ぶ。さらに、この基準色情報は、後に説明するように、例えば原稿を作成したプリンタや複写機、印刷機などの機種ごとに複数あってもよいので、図2では、複数ある場合を示しているが、以下の説明では簡単のため、一つの機種についての基準色情報を用いる場合の例を主に説明することとする。
【0019】
スキャナ部14は、紙媒体など、何らかの媒体上に固定された画像を光学的に読み取り、その読み取り結果を、処理対象の画像信号として制御部11に出力する。このスキャナ部14は、当該固定された画像が例えば面積諧調の画像である場合、その画像を表現するドットゲインのうち最小のドットゲインに係るドットを1つのピクセルに対応付けられる程度の解像度を有しているものとするのも好適である。
【0020】
操作部15は、ユーザからの指示操作を受け入れて制御部11に出力するキーボードやタッチパネルなどである。ここでユーザからの指示操作としては、例えばスキャナ部14にセットし、読み取りの対象となった原稿の性状の指定や、処理開始の指示などがある。表示部16は、例えば液晶ディスプレイであり、制御部11から入力される指示に従って、文字列や画像で表現されるメッセージ情報をユーザに提示する。プリンタ部17は、一般的なカラープリンタで構わない。
このプリンタ部17は、制御部11から入力される画像データを紙などの媒体上に印刷して固定し、画像を形成する。
【0021】
ここで、制御部11の処理について図3を参照しながら説明する。図3は、制御部11によって実行されるプログラムの機能ブロック図である。図3に示すように、制御部11の実行するプログラムは機能的に、A/D変換部21と、γ変換部23と、フィルタリング処理部24と、マッピング処理部25と、色空間変換部26と、スクリーン処理部27とを含んで構成される。
【0022】
A/D変換部21は、処理対象として、スキャナ部14から順次入力される画像信号をディジタル値に変換し、γ変換部23に出力する。γ変換部23は、A/D変換部21から入力されるディジタル値を濃度値(ピクセル値)に変換し、予め定められたTRC(トーン補正カーブ)を利用して特定補正を行って、フィルタリング処理部24に出力する。このγ変換部23は、A/D変換部21から入力されるディジタル値が反射値に相当するものであって、濃度値とは、その明度が逆転しているため、当該反射値を濃度値に変換するなどの処理を行うもので、その処理自体は、γ変換として広く知られているものであるので、その詳細な説明を省略する。
【0023】
フィルタリング処理部24は、スキャナ部14におけるMTF(Modulation Transfer Function)、すなわち解像力による劣化(なまり)を低減するもので、γ変換部23から入力される画像データに対して空間周波数が中・高周波となっている部分を強調する処理を行って出力する。
【0024】
マッピング処理部25は、フィルタリング処理部24から入力される画像データの各ピクセルの色情報が、データベース部13に格納されている基準色情報を用いて定められる条件を満足するか否かを判断し、当該判断の結果に基づいて各ピクセルの色情報に関する所定処理を行う。このマッピング処理部25のより詳しい処理の内容については後に述べる。
【0025】
色空間変換部26は、マッピング処理部25で処理された画像データの各ピクセルの値をプリンタ部17での処理に適した色空間に変換する。具体的にこの色空間変換部26は、RGB空間からCMYK空間への変換を行う。なお、この際に広く知られたカラーマッチング技術を用いて、プリンタ部17の色再現特性に基づく色情報の変換処理を行ってもよい。スクリーン処理部27は、色空間変換部26にて色空間の変換が行われた画像データについて、プリンタ部17での処理のためにスクリーンを適用し、当該スクリーン適用後の画像データをプリンタ部17に出力する。
【0026】
[マッピング処理部の動作]
ここでマッピング処理部25の具体的動作について説明する。マッピング処理部25は、既に述べたように、フィルタリング処理部24から入力される画像データの各ピクセルをそれぞれ注目ピクセルとして順次、例えばスキャンライン順(画像データのうち、画像の左上隅に相当するピクセルから順に右方向に1ライン分走査し、次に、次のライン左側から右方向に各ピクセルを走査する、といった処理を繰り返す順)に選択し、選択した注目ピクセルの色情報が、データベース部13に格納されている基準色情報を用いて定められる条件を満足するか否かを判断する第1の処理と、当該判断の結果に基づいて各ピクセルの色情報に関する所定処理を行う第2の処理とを行っている。
【0027】
ここで第1の処理は、例えば
(1a)注目ピクセルの値(色情報)と、データベース部13に格納されている各基準色情報との、色空間上の距離を演算し、データベース部13に格納されている各基準色情報に対応する色空間上の点から、注目ピクセルの色情報に対応する色空間上の点までの距離がいずれも、予め定めたしきい値を下回っているか否かを判断するというものであってもよいし、
(1b)まずデータベース部13に格納されている複数の基準色情報に基づき、色空間上で、当該複数の基準色情報によって特定される色を用いて(例えばそれらの減法混色により)表現可能な色域(ガモット)を画定する。そして、フィルタリング処理部24から入力される画像データの各ピクセルのうち、一つのピクセルを注目ピクセルとして、当該注目ピクセルの値(色情報)と、画定されたガモットとの距離(注目ピクセルの色の座標から、ガモットまでの最短距離、注目ピクセルの値がガモット内にあれば「0」)を演算し、当該距離が予め定めたしきい値を下回っているか否かを判断するというものであってもよい。また、ここではガモットまでの距離に係る条件を用いているが、ガモットを所定量(余裕幅分)だけ外側へ拡張した領域(以下、拡張ガモットと呼ぶ)をさらに画定し(図4)、注目ピクセルの値から当該拡張ガモットまでの距離を用いてもよい。図4の例では、データベース部13に格納されている基準色情報がA〜Gの7色であるとし、それらを結んでできる多角形領域をガモットとして画定し、当該ガモットを外側へオフセットして得た破線の領域を拡張ガモットとして画定した例を示している。
【0028】
なお、以下の説明の便宜のため、これら第1の処理において、注目ピクセルの色情報に対応する色空間上の点までの距離がいずれも、予め定めたしきい値を下回っている場合、又は、注目ピクセルの色の座標から、ガモットまでの距離が予め定めたしきい値を下回っている場合を、条件を具備している場合、と呼ぶこととする。
【0029】
また、このようにして為された判断の結果に基づいて行われる第2の処理としては、例えば、
(2a)上記条件を具備している場合には、データベース部13に格納されている各基準色情報のいずれかで、当該注目ピクセルの値を置き換え、条件を具備していない場合には、当該注目ピクセルの値を、画像データにおける当該注目ピクセルの周辺ピクセルの値を用いて決められる色情報で置き換えることとしてもよいし、
(2b)上記条件を具備している場合には、データベース部13に格納されている各基準色情報のいずれかで、当該注目ピクセルの値を置き換え、条件を具備していない場合には、当該注目ピクセルの値を予め定めた色情報に設定することとしてもよい。
【0030】
この第2の処理の一例である、処理(2a)において、周辺ピクセルの値を用いて決められる色情報とは、例えば周辺ピクセルのいずれかの色情報そのものであってもよいし、周辺ピクセルの値を補間して得られた値や、それらの平均値等といった値であってもよい。
【0031】
さらに、これら(2a)、(2b)のどちらの処理を行うかについては、予め定めておいてもよいし、ユーザの指定等、条件によって選択することとしてもよい。
【0032】
このように、これらの例によって示される第2の処理は、いわば画像データ中の色情報を所定の範囲内のものに制限する、限定色化の処理ということができる。また、(2b)の例で示した処理の結果は、データベース部13に格納されている基準色情報を特定するインデックス値と、予め定めた色情報を特定するインデックス値とで各ピクセルの値を表現することができ、この例は、いわば、インデックスカラー化する処理ということもできる。
【0033】
[マッピング処理部の変形例]
また、マッピング処理部25は、第1の処理における判断において、注目ピクセルが上記条件を具備していないと判断される場合に、当該注目ピクセルの色情報が、画像データ内でどのような形状で連続しているかを判断し、当該形状が予め定めた幾何形状、又はその幾何形状に対するアフィン変換によって得られる形状に相当する場合、第2の処理を行わずに、当該注目ピクセルの色情報をそのままとすることとしてもよい。これは例えば印刷機で作成された原稿を読み取るとき、当該原稿に特色(金、銀などの準色などを表す特別な色のインキ)が利用されている場合等に有効である。
【0034】
具体的にこの処理は、注目ピクセルの値から一定の距離内にある色が連続する領域を画定する公知の画像処理技術と、当該画定された領域の形状と、予め定められた幾何形状との一致度を調べる画像認識などで利用されている処理を組み合わせ、その一致度が予め定めたしきい値を上回っていれば、上記第2の処理を行わず、そうでないときには、上記第2の処理を行うことで実現できる。
【0035】
[データベース部に保持される基準色情報]
ここまでの説明において、データベース部13に保持される基準色情報は、基本的に予め定められたもの(プリセット)として説明したが、ここに保持される基準色情報としては、処理対象となった画像データに含まれているピクセルの色情報に基づいて定められるものが含まれていてもよい。すなわち、マッピング処理部25に入力される画像データの各ピクセルの値のうち、所定の抽出条件を満足する少なくとも一つの値を、その画像データの代表色を表す値として抽出し、当該値(色情報)を基準色情報として追加してデータベース部13に保持させるようにしてもよい。ここで抽出され、データベース部13によって保持される当該少なくとも一つの基準色情報は、当該基準色情報の抽出元となった画像データに関する処理が終了した時点で、データベース部13から取り除かれるなど、マッピング処理部25のその後の処理で利用できないように制御されることも好ましい。
【0036】
また、ここで抽出条件は、スキャナ部14で読み取られる原稿が減法混色で表現されていることに着目して、その明度が予め定めた明度しきい値より高いものとすることとしてもよい。また、彩度が予め定めた彩度しきい値より高いものとすることとしてもよい。さらに、原稿から得られた色情報のうち、出現頻度の高いものから所定の数だけ選択するなど、出現頻度を利用した条件で抽出してもよい。
【0037】
[動作]
本実施の形態の画像処理装置は、上述のような構成を有してなり、次のように動作する。以下の説明では具体的に本実施の形態の画像処理装置を複写機として用い、スキャナ部14で読み取った原稿の複写物をプリンタ部17で印刷する例について述べる。またここで読み取られる原稿は、カラープリンタや、グラビア印刷機などで印刷された原稿であり、面積諧調で表現された原稿であるとし、印刷を行ったカラープリンタなどの機種を特定する機種特定情報がユーザに知られているものとする。
【0038】
そして画像処理装置のデータベース部13には、当該機種特定情報によって特定されるカラープリンタなどで利用される色材(原稿を構成する材料のうち、トナーや用紙の色など、表現される色に影響する材料)の色が基準色情報として設定されている。例えば当該機種特定情報によって特定されるカラープリンタで利用される4色トナー(C、M、Y、K)の各色の色情報と、用紙の色情報(P)とが予め定められた色空間内の座標値で表現されて、データベース部13に、事前に格納されている。
【0039】
ユーザがスキャナ部14に原稿をセットして、操作部15を操作し、複写の指示を行うと、当該指示が制御部11に出力され、制御部11が記憶部12に格納されているプログラムに従って次のように動作する。
【0040】
すなわち、制御部11は、スキャナ部14に対して原稿の走査を指示し、スキャナ部14から入力される画像信号をディジタル値(ピクセル値)に変換し、γ変換を行って、当該γ変換後のピクセル値を記憶部12に格納する。そして制御部11は、この格納したピクセル値に対して、その空間周波数が中・高周波となっている部分を強調して、なまりなどの劣化を低減する処理を行い、その結果を記憶部12に格納する。
【0041】
この段階で記憶部12には、画像データの各ピクセルについてのピクセル値が格納された状態となっている。次に制御部11は、マッピング処理部25に相当する、図5に示すような処理を開始し、まず、この画像データの各ピクセルのうち、いまだ注目ピクセルとして選択されていないピクセルを、注目ピクセルとして選択する(S1)。この選択は、例えばスキャンライン順に行うこととしてもよい。
【0042】
次に、制御部11は、選択した注目ピクセルの色情報が、データベース部13に格納されている基準色情報を用いて定められる条件を満足するか否かを判断する(S2)。例えば注目ピクセルの値(色情報)と、データベース部13に格納されている各基準色情報との、色空間上の距離を演算し、データベース部13に格納されている各基準色情報に対応する色空間上の点から、注目ピクセルの色情報に対応する色空間上の点までの距離がいずれも、予め定めたしきい値を下回っているか否かを判断する。
【0043】
具体的な処理の方法としては、注目ピクセルの色情報と、データベース部13に格納されている各基準色情報との距離の値を算出し、当該各基準色情報ごとに得られる距離の値のうち、最小のものを選択する。そして選択した距離の値が、予め定めたしきい値を下回っているか否かを判断し、下回っていれば、条件を満足するものとし、下回っていなければ、条件を満足しないものとする。
【0044】
制御部11は、処理S2において、上記条件を具備している場合(Yesの場合)は、データベース部13に格納されている各基準色情報のいずれかで、当該注目ピクセルの値を置き換える(S3)。具体的には、処理S2において演算された距離の値のうち、最も小さい値となった基準色情報の値を、当該注目ピクセルの値として設定し、記憶部12内の画像データに上書きする。
【0045】
そして制御部11は、さらに注目ピクセルとして選択していないピクセルがあるか否かを調べ(S4)、選択していないピクセルがあれば(Yesならば)、処理S1に戻って処理を続ける。また、処理S4において、選択していないピクセルがなければ(Noならば)、処理を終了する。
【0046】
また制御部11は、処理S2において、上記条件を具備していない場合(Noの場合)は、当該注目ピクセルの値を、画像データにおける当該注目ピクセルの周辺ピクセルの値を用いて決められる色情報で置き換え(S5)、処理S4に移行する。この処理S5では、具体的には、記憶部12に格納されている画像データ上で、注目ピクセルの周囲のピクセルの値の平均値を演算し、当該平均値を、注目ピクセルのピクセル値として設定し、記憶部12内の画像データに上書きする。
【0047】
制御部11は、上記図5に示した処理の後で、記憶部12内に格納された画像データの各ピクセルの値をプリンタ部17での処理に適した色空間に変換する。具体的には、RGB空間からCMYK空間への変換を行う。なお、この際に広く知られたカラーマッチング技術を用いて、プリンタ部17の色再現特性に基づく色情報の変換処理を行ってもよい。さらに制御部11は、色空間の変換が行われた画像データについて、プリンタ部17での処理のためにスクリーンを適用し、当該スクリーン適用後の画像データをプリンタ部17に出力する。そしてプリンタ部17が当該画像データに基づく画像を、用紙面に形成する。
【0048】
ここで説明した例によれば、スキャナ部14で読み取った原稿について、その原稿の作成に用いられたトナーやインク、媒体の色からは再現できない色となっている部分(すなわち裏写り等)の部分を除去した印刷結果、つまり原稿に使用されている色に変換(復元)した印刷結果を得ることができる。
【0049】
また、ここでの例では図5を用いて説明したようにマッピング処理部25に対応する処理として、上述の第1の処理として(1a)の例を、第2の処理として(2a)の例をそれぞれ用いた場合を説明しているが、(1a)と(2b)、(1b)と(2a)、(1b)と(2b)といったように組み合わせてもよい。
【0050】
さらに例えばこの第1の処理に相当する処理S2では、上に示した例だけでなく、データベース部13に格納されているいずれかの基準色情報との距離が予め定めたしきい値を下回っているとの条件を具備しているか否かを判断してもよい。この場合、注目ピクセルの値によって表される色が、いずれかの基準色情報に近い色であれば、例えばデータベース部13に格納されている基準色情報のうち最も近い基準色情報で注目ピクセルの値を置き換え、上記条件を満足しない場合は、周辺のピクセル値の平均値を、当該ピクセルの値として設定してもよい。
【0051】
またここで説明した動作の例では、原稿を作成するプリンタ等が1種類である場合を例として説明したが、原稿を作成する装置の候補が複数あっても構わない。この場合、データベース部13は、当該候補となる装置ごとに、基準色情報(又はそのセット)を関連づけて保持しておく。
【0052】
この場合、例えば原稿の作成に用いられたプリンタ等を特定する指示操作をユーザが行い、制御部11が、当該指示操作によって特定されるプリンタ等の装置に関連づけてデータベース部13に格納されている基準色情報(又はそのセット)を用いて既に述べた各処理を行うようになる。またこの場合に、当該操作指示が行われないとき(プリンタ等を特定する情報が入力されない場合)など、処理対象となる画像データが、印刷原稿を読み取ったものであること等、所定種類の装置で形成されたものに基づくものであるといった指定を行わなかった場合は、制御部11は、マッピング処理部25に相当する処理を行わずに、なまりなどの劣化を低減する処理を行った後で、その結果を記憶部12に格納し、色空間の変換を行い、スクリーンを適用してプリンタ部17に出力するようにしてもよい。
【0053】
また、ユーザの指示操作によることに代えて、例えば原稿上に、予め当該原稿を作成した装置を特定する情報を記述しておき、当該記述を読み取って、基準色情報(又はそのセット)を選択的に利用してもよい。
【0054】
さらに、このような原稿を作成した装置を特定する情報など、元の原稿の特性(複写原稿、印刷原稿等の別)を表す情報に応じて、スクリーン方法も変更するようにしてもよい。
【0055】
さらに、ここまでの説明では、画像処理装置が複写機である場合を一つの例としていたが、ここでの画像処理装置は、これに限られるものではない。例えばマッピング処理部25に相当する処理を行った後、当該処理によって設定した各ピクセルの色情報を原稿に埋め込むという処理を行ってもよい。これによれば、当該埋め込まれた色情報を参照して、各ピクセルの色情報を正確に再現させることができるようになる。
【0056】
このように、例えばデータベース部13に格納されているいずれかの基準色情報との距離が予め定めたしきい値を下回っているとの条件を具備しているか否かを判断して、注目ピクセルの値によって表される色が、いずれかの基準色情報に近い色であれば、例えばデータベース部13に格納されている基準色情報のうち最も近い基準色情報で注目ピクセルの値を置き換え、上記条件を満足しない場合は、周辺のピクセル値の平均値を、当該ピクセルの値として設定する等の処理を行うことで、位置合わせなどの複雑な処理をせずに、裏写り等によって本来のインクの色から変化してしまった色となっているものを、本来のインクの色に設定しなおすこと等ができ、カラー複写機における画質劣化を効率的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像処理装置の例を表す構成ブロック図である。
【図2】データベース部13に格納されている基準色情報の例を表す説明図である。
【図3】制御部11が実行するプログラムの例を表す機能ブロック図である。
【図4】ガモットと拡張ガモットとの画定の例を表す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る画像処理装置の動作例を表すフローチャート図である。
【符号の説明】
11 制御部、12 記憶部、13 データベース部、14 スキャナ部、15 操作部、16 表示部、17 プリンタ部、21 A/D変換部、23 γ変換部、24 フィルタリング処理部、25 マッピング処理部、26 色空間変換部、27 スクリーン処理部。
Claims (7)
- 処理対象となった画像データに含まれるピクセルの色情報の少なくとも一つを抽出し、基準色情報として記憶する記憶手段と、
前記処理対象となった画像データについて、その画像データに含まれる各ピクセルの色情報を順次参照し、前記記憶手段に記憶されている基準色情報によって色空間上で画定される色域内に、当該参照しているピクセルの色情報があるか否かを判断する判断手段と、
前記判断の結果、前記記憶手段に記憶されている色情報によって色空間上で画定される色域内に、当該参照しているピクセルの色情報がある場合に、当該ピクセルの色情報を、前記記憶手段に記憶されている基準色情報のいずれかに置き換え、当該参照しているピクセルの色情報が前記色域内にない場合に、前記画像データ上で、参照しているピクセルの周辺ピクセルの色情報を用いて決められる色情報に置き換える処理を行う処理手段と、
を含むことを特徴とする画像処理装置。 - 請求項1に記載の画像処理装置において、
前記記憶手段に記憶されている基準色情報によって色空間上で画定される色域は、当該基準色情報によって特定される色を用いて表現可能な色域であることを特徴とする画像処理装置。 - 請求項1に記載の画像処理装置において、
前記記憶手段に記憶されている基準色情報によって色空間上で画定される色域は、当該基準色情報によって特定される色を用いて表現可能な色域を、色空間上で外側へ所定量だけ拡張した領域であることを特徴とする画像処理装置。 - 請求項1から3のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記処理対象となった画像データに対して、前記判断手段による判断の前に、空間周波数に関係する画像フィルタ処理を行うフィルタ手段をさらに含むことを特徴とする画像処理装置。 - 請求項1から4のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
処理対象となった画像データが、所定種類の装置で形成された旨を示す入力を、ユーザ側から受け入れる手段をさらに含み、当該入力に基づいて、前記判断手段と処理手段との少なくとも一方の処理を行うか否かが判断される、ことを特徴とする画像処理装置。 - 請求項1から5のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記処理手段は、前記処理対象となった画像データに関する処理が終了したときに、前記記憶手段に記憶されている基準色情報を取り除くことを行うことを特徴とする画像処理装置。 - コンピュータを、
処理対象となった画像データに含まれるピクセルの色情報の少なくとも一つを抽出し、基準色情報として記憶する記憶手段と、
前記処理対象となった画像データについて、その画像データに含まれる各ピクセルの色情報を順次参照し、前記記憶手段に記憶されている基準色情報によって色空間上で画定される色域内に、当該参照しているピクセルの色情報があるか否かを判断する判断手段と、
前記判断の結果、前記記憶手段に記憶されている色情報によって色空間上で画定される色域内に、当該参照しているピクセルの色情報がある場合に、当該ピクセルの色情報を、前記記憶手段に記憶されている基準色情報のいずれかに置き換え、当該参照しているピクセルの色情報が前記色域内にない場合に、前記画像データ上で、参照しているピクセルの周辺ピクセルの色情報を用いて決められる色情報に置き換える処理を行う処理手段と、
として機能させることを特徴とする画像処理プログラム。
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