JP4590041B2 - 臓器保存剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、新規な臓器保存剤、とりわけ、グルコシル−L−アスコルビン酸を含んでなる臓器保存剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
傷病者における臓器の障害が甚だ大きく、通常の治療による回復が見込めない場合には、提供者の臓器を被提供者に移植して治療する臓器移植が行なわれる。提供者は生者の場合と死者の場合があり、死者の提供者には、心臓死による死者と脳死者がある。現行法(平成9年10月16日に施行の「臓器の移植に関する法律」)のもとでは、いずれの場合であっても、臓器の摘出は提供者本人の意思表示を必要とするところ、仏教思想に根ざす死生観の我国にあっては、心臓死の場合であっても、生前に臓器提供の意思表示をする提供者が甚だ少なく、提供者の数が被提供者に比べて圧倒的に少ない状況にある。
【0003】
臓器は、生体から摘出されたり、提供者が死亡すると、急速に生存能力を失う。生存能力に劣る臓器を移植すると、たとえ、組織適合性のよい臓器であっても、被提供者の体内で所期の機能を発揮することなく死滅することとなる。したがって、組織適合性の問題を別にすれば、臓器移植が成功するかどうかは、臓器の摘出から移植するまでの時間をいかに短縮できるかに掛かっていると言っても過言ではない。提供者そのものが甚だ少ない現状においては、提供者が被提供者に近接して居住するケースは希有である。それ故に、臓器移植の現場においては、提供者に関する情報を日頃から緊密に交換し合うとか、摘出した臓器をヘリコプターやジェット機で空輸することにより、臓器の摘出から移植するまでの時間を極力短縮する努力がなされている。しかしながら、輸送時間に依存するこのような方法に限界があることは全く明らかであり、その限界を克服すべく、これまで、臓器を低温保存するための多種多様の保存剤が考案されてきた。
【0004】
実用化されている臓器保存剤としては、グルコースと諸種の電解質を含んでなるユーロコリンズ液と、不浸透成分、膠質浸透圧成分、エネルギー代謝促進成分及びホルモンをそれぞれ含んでなるウィスコンシン液がよく知られている。しかしながら、ユーロコリンズ液は生存能力の高い腎臓には有効であるが、腎臓以外の臓器に対しては、組織・細胞に対する保護効果が充分でないと言われており、また、ウィスコンシン液は製剤として不安定であり、調製後は低温保存しなければならない欠点があると言われている。
【0005】
斯かる欠点のない臓器保存剤として、特開平6−40801号公報においては、トレハロース、ヒドロキシエチル澱粉及び諸種の電解質を含んでなる臓器保存剤が提案され、また、特開平6−166624号公報、特開平7−215801号公報及び特開平7−330501号公報においては、合成物質であるL−アスコルビン酸 DL−α−トコフェロール燐酸ジエステルカリウム(以下、「EPC−K」と略記する。)を含んでなる臓器保存剤が提案されている。しかしながら、前者の臓器保存剤は、合成物質であるヒドロキシエチル澱粉の分子量と置換度をごく限られた範囲に調整しなければならないので、製剤の調製と恒常性の維持が難しいという問題がある。また、後者の臓器保存剤で用いられるEPC−Kは、水に対する溶解度が低いうえに、諸種の薬理作用も具備するので、被提供者の事情によっては、EPC−Kの配合量を下げたり、場合によっては、使用そのものを見合わせざるを得ない場合がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
斯かる状況に鑑み、この発明の主たる課題は、安定で取扱い易く、臓器一般に適用可能な臓器保存剤を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者が天然の物質に着目して鋭意研究したところ、L−アスコルビン酸(ビタミンC)に1又は複数のD−グルコースがグリコシド結合してなるグルコシル−L−アスコルビン酸の存在下で臓器一般を低温保存すると、その生存能力が長時間維持されるという、全く意外な事実を突き止めた。しかも、グルコシル−L−アスコルビン酸は、L−アスコルビン酸とは違って、熱、光、酸素などによって分解され難く、したがって、グルコシル−L−アスコルビン酸を含んでなる臓器保存剤は製剤として安定であり、取扱い易いことが判明した。
【0008】
すなわち、この発明は、上記の課題を、グルコシル−L−アスコルビン酸を含んでなる臓器保存剤を提供することによって解決するものである。
【0009】
さらに、この発明は、上記の課題を、生体から摘出した臓器を斯かる臓器保存剤の存在下で低温保存することを特徴とする臓器の保存方法により解決するものである。
【0010】
グルコシル−L−アスコルビン酸自体は公知の物質であるが、グルコシル−L−アスコルビン酸に摘出した臓器の組織・細胞を保護する作用があることは未だ知られていない。この発明はグルコシル−L−アスコルビン酸の新規な作用の発見に基づくものであって、グルコシル−L−アスコルビン酸の臓器保存剤おける用途はこの発明をもって嚆矢とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明は、グルコシル−L−アスコルビン酸を含んでなる臓器保存剤に関するものである。グルコシル−L−アスコルビン酸としては、通常、L−アスコルビン酸におけるC−2位の位置に1又は複数のD−グルコースがグリコシド結合してなる、2−O−α−D−モノグルコピラノシル−L−アスコルビン酸を初めとする一連の2−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸が用いられる。この発明で用いるグルコシル−L−アスコルビン酸は、有機酸としてのグルコシル−L−アスコルビン酸に限定されるものではなく、水性媒体中でグルコシル−L−アスコルビン酸を遊離する、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩及びアンモニウム塩などの生理学的に許容される無機塩及び有機塩のいずれであってもよい。
【0012】
グルコシル−L−アスコルビン酸は、通常、酵素を用いる生化学的方法により調製される。この発明はグルコシル−L−アスコルビン酸の調製方法に係わるものではないので詳細な説明は省略するけれども、経済性を問題にするのであれば、例えば、同じ特許出願人による特開平3−139288号公報、特開平3−135992号公報及び特開平3−183492号公報に記載されているように、シクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼなどの糖転移酵素の存在下でL−アスコルビン酸にシクロマルトデキストリンや澱粉部分加水分解物などのα−グルコシル化合物を作用させるのが有利である。グルコシル−L−アスコルビン酸の市販品としては、例えば、『AA−2G』(固形分重量当りの2−O−α−D−モノグルコピラノシル−L−アスコルビン酸含有量98%以上、株式会社林原商事販売)が挙げられる。なお、この発明で用いるグルコシル−L−アスコルビン酸は単離された形態でなくてもよく、この発明による臓器保存剤に配合して所期の臓器保存能を発揮するかぎり、例えば、L−アスコルビン酸やα−グルコシル化合物などの、製造方法に特有な他の物質との未分離組成物の形態であってもよい。また、用途にもよるが、この発明の臓器保存剤は臓器に直接接触させて用いるものであることから、臓器保存剤に配合するグルコシル−L−アスコルビン酸は、例えば、イオン交換樹脂又は天然若しくは合成の吸着体を用いる通常の方法により、事前にパイロジェンを除去しておくのが望ましい。
【0013】
グルコシル−L−アスコルビン酸は天然にも存在する物質であって、生体においては、α−グルコシダーゼによってL−アスコルビン酸とD−グルコースに分解され、L−アスコルビン酸と同等の生理活性を発現する。高濃度でも細胞毒性がなく、コラーゲン合成促進作用や細胞増殖・分化促進作用が顕著であることから、食品や化粧品のみならず、線維芽細胞などの結合組織の培養にも頻用されている。ちなみに、ラットに経口投与したときのLD50は2g/kg体重以上であり、人体に適用して安全であることが確認されている。
【0014】
この発明の臓器保存剤は、グルコシル−L−アスコルビン酸単独の形態であっても、グルコシル−L−アスコルビン酸とそれ以外の、例えば、グルコース、マルトース、シュークロース、ラクトース、ラフィノース、トレハロース、マンニトール、ヒドロキシエチル澱粉、プルランなどの糖質、グルコン酸、乳酸、酢酸、プロピオン酸、β−ヒドロキシ酪酸、クエン酸などの有機酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、燐酸二水素ナトリウム、燐酸二水素カリウム、燐酸水素二ナトリウム、燐酸水素二カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの電解質、L−アスコルビン酸、ビタミンEなどのビタミン、グリシン、グルタミン酸、リジンなどのアミノ酸、抗利尿ホルモン、インスリンなどのホルモン、クエン酸、クエン酸塩、ヘパリン、エデト酸ナトリウムなどの抗凝固剤、カルシウム拮抗剤、アドレナリンβ受容体拮抗剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤などの降圧剤、アデノシン酸燐酸などの核酸塩基、凍結防止蛋白質(以下、「AFP」と言う。)などの凍結防止剤、活性酸素消去剤、細胞賦活剤、抗生物質、抗血小板因子、肝障害抑制剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、分散剤、粘性剤、再吸収促進剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、防腐剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤、緩衝剤、pH調整剤などの、臓器保存剤に通常一般に配合される成分の1又は複数との組成物としての形態であってもよい。
【0015】
この発明の臓器保存剤は、通常、液剤の形態に調製されるが、必要に応じて、散剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤などの固形剤に調製してもよい。固形剤に調製されたものは、使用に際して、例えば、精製水、注射用蒸留水、滅菌精製水、生理食塩水又はこれらのいずれかと親水性有機溶剤の混液などの水性媒体に溶解、懸濁又は乳化して用いる。また、この発明の臓器保存剤を、例えば、ユーロコリンズ液やウィスコンシン液などの公知の臓器保存剤に配合して用いるときには、それらの臓器保存能を改善することができる。用途と製剤としての形態にもよるが、この発明の臓器保存剤におけるグルコシル−L−アスコルビン酸の配合量としては、通常、0.0001%(w/w)以上、望ましくは、0.001%(w/w)以上とする。
【0016】
この発明による臓器保存剤の使用方法について説明すると、この発明の臓器保存剤は従来公知の臓器保存剤と同様にして用いることができる。すなわち、公知の臓器保存容器や潅流装置と組合せることによって、いわゆる、「単純冷却保存法」及び「低温持続潅流保存法」を適用することができ、例えば、摘出直後の臓器の初期潅流剤、初期潅流後の浸漬保存剤及び潅流保存剤、さらには、血液を再潅流させる前のリンス剤として用いることができる。臓器を浸漬又は潅流するときの浸透圧は250乃至500mOsm/l、望ましくは、300乃至450mOsm/lの範囲に、また、pHは3乃至10、望ましくは、6.5乃至8.0の範囲にそれぞれ設定すればよい。使用時におけるグルコシル−L−アスコルビン酸の濃度は、通常、0.01mM以上、望ましくは、0.1乃至200mMの範囲とする。したがって、臓器保存剤の形態によっては、使用に先立って、斯かる濃度になるように適宜溶解・希釈する。また、臓器を浸漬又は浸漬して保存する温度は、臓器の種類、摘出時の状態及び保存時間にもよるが、通常、体温を下回る温度、望ましくは、−5乃至20℃、さらに望ましくは、−3乃至15℃に設定する。この発明は移植を前提とする臓器一般の保存を目的とするものであり、したがって、この発明でいう臓器は、例えば、腎臓、肝臓、膵臓、肺臓及び心臓などの狭義の臓器に限定されるべきではなく、それ以外の、例えば、血液、骨髄、眼球、角膜、骨、皮膚、血管、心臓弁及び上皮小体などの細胞及び組織をも包含する。また、この発明の臓器保存剤は、臓器移植の遺伝学的分類や解剖学的分類を問うものでなく、移植が遺伝学的に自己移植、異種移植及び同種移植のいずれであっても、解剖学的に同所性移植及び異所性移植のいずれであっても構わない。
【0017】
次に、この発明の実施の形態につき、実施例を挙げて具体的に説明する。
【0018】
【実施例1】
パイロジェン無含有のグルコシル−L−アスコルビン酸(商品名『AA−2G』、固形分重量当りの2−O−α−D−モノグルコピラノシル−L−アスコルビン酸含量98%以上、株式会社林原商事)を燐酸緩衝生理食塩水(以下、「PBS」と言う。)に濃度1%(w/w)になるように溶解した後、常法にしたがって、溶液を直ちに無菌濾過し、ガラス瓶に充填し、密栓し、蒸気滅菌して液剤(pH7.2)を調製した。
【0019】
本例の液剤は、血液、骨髄、角膜、眼球、骨、皮膚、血管、心臓弁、上皮小体、腎臓、肝臓、膵臓、肺臓、心臓などの臓器一般を低温保存するための臓器保存剤として有用である。
【0020】
【実施例2】
実施例1の方法により調製した臓器保存剤を常法により凍結乾燥して固形剤を調製した。
【0021】
本品は、使用に先立って、精製水、注射用蒸留水、滅菌精製水などに溶解する。本例の固形剤は、血液、骨髄、角膜、眼球、骨、皮膚、血管、心臓弁、上皮小体、腎臓、肝臓、膵臓、肺臓、心臓などの臓器一般を低温低温で保存するための臓器保存剤として有用である。
【0022】
【実施例3】
常法にしたがって、市販のウィスコンシン液にパイロジェン無含有のグルコシル−L−アスコルビン酸(商品名『AA−2G』、固形分重量当りの2−O−α−D−モノグルコピラノシル−L−アスコルビン酸含量98%以上、株式会社林原商事販売)及び凍結防止蛋白質(AFP)をそれぞれ0.1%(w/w)配合して液剤を調製した。
【0023】
本例の液剤は、血液、骨髄、角膜、眼球、骨、皮膚、血管、心臓弁、上皮小体、腎臓、肝臓、膵臓、肺臓、心臓などの臓器一般を低温保存するための臓器保存剤、とりわけ、臓器一般を0℃以下で冷却保存するための臓器保存剤として有用である。
【0024】
【実施例4】
注射用精製水にパイロジェン無含有のグルコシル−L−アスコルビン酸(商品名『AA−2G』、固形分重量当りの2−O−α−D−モノグルコピラノシル−L−アスコルビン酸含量98%以上、株式会社林原商事販売)5mg、塩化カリウム1.2g、塩化カルシウム150mg、塩化マグネシウム50mg及び塩化ナトリウム8gをそれぞれ溶解し、適量の1N塩酸及び1N水酸化ナトリウムによりpH7.3に調整した後、常法にしたがって滅菌して液剤1,000mlを調製した。
【0025】
本例の液剤は、血液、骨髄、角膜、眼球、骨、皮膚、血管、心臓弁、上皮小体、腎臓、肝臓、膵臓、肺臓、心臓などの臓器一般を低温保存するための臓器保存剤として有用である。
【0026】
【実施例5】
常法にしたがって、注射用精製水にパイロジェン無含有のグルコシル−L−アスコルビン酸(商品名『AA−2G』、固形分重量当りの2−O−α−D−モノグルコピラノシル−L−アスコルビン酸含量98%以上、株式会社林原商事販売)5g及びトレハロース(商品名『トレハオース』、固形分重量当りのトレハロース含量98%以上、株式会社林原商事販売)50gをそれぞれ溶解し、適量の1N水酸化ナトリウムによりpH7.4に調整した後、常法にしたがって滅菌して液剤1,000mlを調製した。
【0027】
本例の液剤は、血液、骨髄、角膜、眼球、骨、皮膚、血管、心臓弁、上皮小体、腎臓、肝臓、膵臓、肺臓、心臓などの臓器一般を保存するための臓器保存剤として有用である。
【0028】
【実施例6】
パイロジェン無含有のグルコシル−L−アスコルビン酸(商品名『AA−2G』、固形分重量当りの2−O−α−D−モノグルコピラノシル−L−アスコルビン酸含量98%以上、株式会社林原商事販売)1重量部及びトレハロース(商品名『トレハオース』、固形分重量当りのトレハロース含量98%以上、株式会社林原商事販売)2重量部を均一に混合した後、常法にしたがって打錠して固形剤(平均300mg/錠)を得た。
【0029】
本例の固形剤は、使用に当って、精製水、注射用蒸留水、滅菌精製水、生理食塩水などに溶解する。本例の固形剤は、血液、骨髄、角膜、眼球、骨、皮膚、血管、心臓弁、上皮小体、腎臓、肝臓、膵臓、肺臓、心臓などの臓器一般を保存するための臓器保存剤として有用である。
【0030】
次に、この発明の臓器保存剤の作用効果につき、実験例を挙げて説明する。
【0031】
【実験1】
〈心臓〉
1群の成長ラット(10匹/群)から心臓を摘出し、実施例1の方法により調製した臓器保存剤にそれぞれ浸漬し、0℃で4時間保存した後、オノ−リンゼイ法により別の1群の成長ラットに異所性移植した。移植後、移植心の拍動を観察する一方、下大静脈から血液を採取し、血液におけるクレアチニンホスホキナーゼ(CPK)、乳酸脱水素酵素(LDH)及びグルタミンオキザロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)のレベルをそれぞれ測定した。その後、移植した心臓を摘出し、常法にしたがって凍結切片を作製し、顕微鏡観察した。併行して、臓器保存剤に代えてPBSを用いる1群を設け、これを上記と同様に処置して対照とした。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
Figure 0004590041
【0033】
表1の結果から明らかなように、この発明による臓器保存剤を用いた群においては、CPKのレベルが明らかに低下していた。CPKは臓器障害のよい指標であると言われており、したがって、この発明による臓器保存剤を用いた群においてCPKが有意に低下していたことは、グルコシル−L−アスコルビン酸が、心臓移植に用いて、摘出した心臓の組織・細胞を効果的に保護し、その生存能力を長時間維持することを示している。顕微鏡等による観察結果もこのことを裏付けており、対照において、移植心の拍動が安定せず、移植から短時間で筋繊維の変性が観察されたのに対して、この発明の臓器保存剤を用いた群においては、移植心の拍動が安定し、また、筋繊維の変性や細胞浸潤が生じることなく、細胞構築が長時間良好に保たれていた。
【0034】
【実験2】
〈肝臓〉
1群の成長ラット(10匹/群)から肝臓を摘出し、実施例3の方法により調製した臓器保存剤にそれぞれ浸漬し、−3℃で24時間保存した後、別の1群の成長ラットに同所性移植した。移植後、下大静脈から血液を採取し、ヒアルロン酸(HA)、アラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアデノシン三燐酸(ATP)の血清レベルをそれぞれ測定する一方、胆管カニューレにより胆汁の分泌量を調べた。併行して、グルコシル−L−アスコルビン酸を省略した以外は実施例3におけると同様にして調製した臓器保存剤(ウィスコンシン液+AFP)を用いる1群(対照1)と、グルコシル−L−アスコルビン酸及びAFPをそれぞれ省略した以外は実施例3におけると同様にして調製した臓器保存剤(ウィスコンシン液)を用いる1群(対照2)を設け、摘出した肝臓をそれぞれ−3℃及び4℃で保存して対照とした。結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
Figure 0004590041
【0036】
表2の結果から明らかなように、この発明による臓器保存剤を用いた群は、対照1と比較して、肝機能の重要な指標である胆汁の分泌が有意に高く、対照2と同等以上のレベルに達しており、移植肝が正常に胆汁を分泌していることが窺われた。線維化、炎症などの肝障害の指標である血清HAレベルについて見ると、この発明による臓器保存剤を用いた群は、対照1と比較して、血清HAレベルが有意に低く、対照2と同等のレベルに達しており、移植肝に機能障害が生じていないことが窺われた。また、血球破壊の指標である血清ALTレベルについて見ると、この発明による臓器保存剤を用いた群は、対照1及び対照2のいずれよりも血清ALTレベルが低かった。さらに、エネルギー代謝の指標である血清ATPレベルについて見ても、この発明による臓器保存剤を用いた群は、対照1及び対照2と比較して、いずれよりもATPレベルが高く、移植肝が活発にエネルギー代謝していることが窺われた。
【0037】
これらの結果は、グルコシル−L−アスコルビン酸が、肝臓移植において、摘出した肝臓の組織・細胞を効果的に保護し、その生存能力を長時間維持することを示している。
【0038】
【発明の効果】
叙上のとおり、この発明は、グルコシル−L−アスコルビン酸が摘出した臓器一般の組織・細胞を効果的に保護し、臓器の生存能力を長時間維持するという独自の知見に基づくものである。グルコシル−L−アスコルビン酸は、L−アスコルビン酸とは違って、熱、光、酸素などによって分解され難く、したがって、グルコシル−L−アスコルビン酸又はその塩を含んでなるこの発明の臓器保存剤は製剤として安定であり、取扱い易い。また、グルコシル−L−アスコルビン酸は、天然に存在する物質であることに加えて、高濃度でも細胞毒性がないので、この発明の臓器保存剤は、移植を前提とする臓器一般の低温保存に安心して広く常用することができる。
【0039】
斯くも顕著な効果を奏するこの発明は、斯界に貢献すること誠に多大な、意義のある発明であると言える。

Claims (4)

  1. 2−O−α−D−モノグルコピラノシル−L−アスコルビン酸又はその塩を含んでなる臓器保存剤。
  2. 使用時における2−O−α−D−モノグルコピラノシル−L−アスコルビン酸の濃度が0.01mM以上である請求項1記載の臓器保存剤。
  3. 浸透圧が250乃至500mOsm/lの範囲にあり、かつ、pHが3乃至10の範囲にある請求項1又は2記載の臓器保存剤。
  4. 摘出した臓器を請求項1乃至のいずれかに記載の臓器保存剤の存在下で−5乃至20℃で保存することを特徴とする臓器の保存方法。
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