JP4590033B2 - デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジストロフィン遺伝子に生じた異常に起因する、アミノ酸読みとり枠(リーディングフレーム)のずれた前駆体mRNAに対して、所定のエクソンスキッピングを誘導してリーディングフレームのずれを解消するための、デュシェンヌ(Duchenne)型筋ジストロフィー治療薬に関する。更に具体的には、本発明は、特定のタイプのデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療剤の製造のために用いることのできる、ジストロフィン遺伝子のスプライシング促進配列(SES)、並びに、該スプライシング促進配列に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド及びこれを含んだ治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、前駆体mRNA分子の異常スプライシングによる遺伝子疾患が診断可能となり、特に、難病である筋ジストロフィーが注目されている。筋ジストロフィーはデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD: Duchenne Muscular Dystrophy)とベッカー型筋ジストロフィー(BMD:Becker Muscular Dystrophy)とに大別される。DMDは、最も頻度の高い遺伝子性筋疾患であり、出生男子3,500人に1人の割合で発症する。本症の患者は、幼児期に筋力低下症状を現し、その後一貫して筋萎縮が進行して、20歳前後で死に至る。現在、DMDに対する有効な治療薬はなく、全世界の患者から治療薬の開発が強く求められている。1987年にDMDの原因遺伝子であるジストロフィン遺伝子が、逆行遺伝学の手法により発見され、またBMBも同じジストロフィン遺伝子の異常から発症することが明らかにされた[Koenig, M. et al., Cell, 50: 509-517 (1987)]。BMDでは、その発症年齢は成人期と比較的遅く、発症後に軽度の筋力低下は見られるものの、ほぼ正常な生存が可能である。
【0003】
ジストロフィン遺伝子はX染色体短腕21領域に存在し、その遺伝子サイズは3.0 メガ塩基であり、ヒトの最大の既知遺伝子である。このように大きなサイズであるが、ジストロフィン遺伝子中でジストロフィンタンパク質をコードしている領域はわずか14kbに過ぎず、しかもそのコード領域は79ものエクソンに分かれて遺伝子内に分散して存在している[Roberts, RG., et al., Genomics, 16: 536-538 (1993)]。ジストロフィン遺伝子の転写物であるmRNA前駆体は、スプライシングを受けて14kbの成熟mRNAとなる。更に、この遺伝子には8種の異なるプロモーター領域が遺伝子内にやはり分散して存在し、それぞれが異なったmRNAを産生している[Nishio, H., et al., J. Clin. Invest., 94: 1073-1042 (1994), Ann, AH. and Kunkel, LM., Nature Genet., 3: 283-291 (1993), D'Souza, VN. et al., Hum. Mol. Genet., 4: 837-842 (1995)]。これらのことから、ジストロフィン遺伝子及びその転写物は、非常に複雑な構成になっている。
【0004】
DMD及びBMDの遺伝子診断は、初期にはジストロフィンの遺伝子断片を用い、次いで、cDNAをプローブとして用いたサザンブロット法により行われ、約6割のDMD/BMD患者でジストロフィン遺伝子に大きな欠失あるいは重複という異常の存在することが明らかにされた[Hoffman, EP. and Kunkel, LM., Neuron, 2: 1019-1029 (1989)]。これらDMD/BMDで発見される遺伝子異常の殆どは遺伝子欠失であり、しかもそのサイズは数kbと大きなものであった。遺伝子診断に関しては、サザンブロット法で発見されたジストロフィン遺伝子の異常が、遺伝子の2カ所のホットスポットに集中していることから、このホットスポットの19個のエクソンに的を絞り、2つのPCR(Polymerase Chain Reaction)反応系を用いて簡易に欠失を発見する、重複PCR法が考案された[Chamberlain JS., et al., Nucleic Acids Res., 16: 11141-11156 (1988), Beggs AH., et al., Hum. Genet., 86: 45-48 (1990)]。この重複PCR法は、短時間で結果を得ることができ、サザンブロット法で検出できる遺伝子異常の98%がこの方法で検出できることから、今日では最もポピュラーな遺伝子診断法となっている。
【0005】
DMDの動物モデルとしては、mdx(X chromosome-linked muscular dystrophy)マウスがある[Bulfield, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81: 1189-1192 (1984)]。
【0006】
マウスのジストロフィン遺伝子のエクソン23内のナンセンス変異により、mdxマウスのこの遺伝子が不活性化され、結果としてエクソン23内で翻訳が終止することとなる。mdxマウスでは、如何なる機能的なジストロフィンも発現されないが、免疫化学的にはジストロフィン陽性筋繊維が微量に検出される。
【0007】
ジストロフィン遺伝子という同一遺伝子の、しかも同じ様な遺伝子異常から発症する2種の疾病であるDMDとBMDの臨床的な病態における大きな相違は謎とされていたが、いわゆるフレームシフト説[Monaco, AP., et al., Genomics, 2: 90-95 (1988)]で説明されるようになっている。すなわち、「DMDでは、遺伝子内の部分的な欠失によりジストロフィンmRNAにコードされるアミノ酸読みとり枠(リーディングフレーム)にずれが生じ(アウトフレーム:out-of-frame)、結果的にストップコドンが出現しジストロフィンの合成が途中で停止してしまう。これに対し、BMDでは、遺伝子に部分欠失が存在してもリーディングフレームが維持され(インフレーム:in-frame)て、本来のジストロフィンとはサイズが異なるものの、ジストロフィンタンパク質が生成できる」とするものである。実際、患者の筋肉中のジストロフィンを調べると、DMDではジストロフィンが消失しているのに対して、BMDでは染色性を正常とは異にしたジストロフィンが存在している。またDMD/BMD患者でジストロフィン遺伝子異常から計算されたリーディングフレームの型と患者の表現型とを比較すると、90%以上の患者でこのフレームシフト説が当てはまっている。
【0008】
筋ジストロフィーに対する試験的治療法としては、筋芽細胞の移植等やプラスミド又はウイルスベクターを用いることによる機能的ジストロフィン遺伝子の導入等が試みられている [Morgan, J., Hum. Gene. Ther. 5:195-173(1994)]。
【0009】
ジストロフィン陽性筋繊維は、多くのDMD患者にも見出されている [Nicholson, L. et al., J. Neurol. Sci., 94:137-146(1989)]。DMD患者に見られるジストロフィン陽性筋繊維は、エクソンスキッピング機構により生じることが提唱されており [Klein, C. et al., Am. J. Hum. Genet., 50:950-959(1992)]、実際、mdxマウスの例で、主要なナンセンス変異を含有するエクソンをスキップしているリーディングフレームの維持されたジストロフィン遺伝子転写物が同定された [Wilton, S. et al., Muscle Nerve, 20:728-734(1997)]。
【0010】
遺伝子から転写された遺伝情報は、スプライシングによりイントロン配列が除去される等の修飾を受け、エクソン配列のみからなる成熟mRNAとなる。更に、この成熟mRNAがそのリーディングフレームに従って翻訳され、遺伝子にコードされた遺伝情報に忠実に従ったタンパク質の合成が可能となる。mRNA前駆体のスプライシング時には、mRNA前駆体の塩基配列のうちでイントロン配列とエクソン配列を正確に決定する機構がある。そのためにイントロン・エクソン境界部の配列は一定のルールで全ての遺伝子で保存されており、コンセンサス配列として知られている。
【0011】
このコンセンサス配列として、イントロンの5’末端のスプライスドナーサイトと呼ばれるエクソンからイントロンへまたがる部位、イントロンの3’末端のスプライスアクセプターサイトと呼ばれる部位、そして、ブランチングポイントと呼ばれる部位の、3カ所の配列が知られている。
【0012】
これらのコンセンサス配列の中で、わずか1塩基の置換でも発生すると、スプライシングの異常を起こすことが各種の疾病で報告されているように[Sakuraba, H. et al., Genomics, 12: 643-650 (1992)]、コンセンサス配列は、スプライシングを進行させる鍵となっている。
【0013】
先に、本発明者等は、DMD/BMD患者を対象としたジストロフィン遺伝子異常の診断を日本で初めてPCR法を用いて実施した。そして、ジストロフィン遺伝子の異常型が欧米人と日本人とで大きな差がないこと、すなわち大きな人種差のないことを明らかにした。こうした遺伝子診断で見出された遺伝子異常は、塩基数において数kbから数百kbの巨大なものばかりであったが、更に詳細な分析を重ねることにより、あるジストロフィン遺伝子の欠失部位の塩基配列を決定することに世界で初めて成功し、「ジストロフィン神戸」と命名して報告した[Matsuo, M, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 170: 963-967 (1990)]。
【0014】
「ジストロフィン神戸」と命名した遺伝子異常を有する症例は、DMDであり、重複PCR分析の結果によれば、エクソン19に相当するゲノムDNAの増幅産物のバンドが、本来存在すべき位置に認められず、一見、エクソン19の欠失と考えられた。しかしながら、ゲノムDNAについてエクソン19領域の単独増幅を試みたところ、エクソン19が正常より小さいサイズの増幅産物として検出され、ジストロフィン遺伝子によく見られる単純なエクソン欠失ではないことが判明した。この患者の家系の構成員のジストロフィンのエクソン19領域をPCR法で増幅することにより、母親と妹のDNAから正常な増幅産物と共に患者と同じサイズの増幅産物が得られ、両者がこの遺伝子異常の保因者であることが判明した。
【0015】
次いで、患者から得られた異常な増幅産物の塩基配列を決定すると、88塩基からなるエクソン19の配列のうち52塩基が欠失していることが判明した。この52塩基の欠失がエクソン配列内に存在することは、この患者のジストロフィンmRNAではリーディングフレームにずれを生じて(アウトフレーム)、エクソン20内でストップコドンが出現することになる。この遺伝子診断の結果は、DMDという臨床診断と一致するものであった。
【0016】
ジストロフィン神戸で発見されたエクソン19の欠失部分がスプライシングに及ぼす影響を調べるために、患者のジストロフィンmRNAを分析した[Matsuo, M., et al., J. Clin. Invest., 87: 2127-2131 (1991)]。
【0017】
まず、患者白血球のmRNAを逆転写酵素によりcDNAに変換し、これを入れ子型PCR(nested-PCR)法を用いて増幅した。エクソン18から20にわたる領域を増幅したところ、ゲノムで発見された異常を基に計算されたサイズより更に短くなった増幅断片が得られた。これはmRNAにゲノムDNAの異常とは異なった異常が存在する可能性あるいは白血球と筋肉でmRNAが異なる可能性を示唆した。そこで、このmRNA異常が疾病と関連する筋肉のmRNAにも存在することを確認するため、筋肉のmRNAから合成したcDNAを鋳型としてPCR法でエクソン18からエクソン20の領域を増幅した。その結果得られた増幅産のサイズは、白血球のエクソン18から20の増幅産物と全く同じであった。
【0018】
次に、得られた小さな異常増幅産物の塩基配列決定により、ジストロフィン神戸の患者のジストロフィンcDNAではエクソン18の配列が直接エクソン20の配列につながっており、エクソン19の配列が完全に消失していることが判明した。この結果は、ゲノムでは、エクソン19内の52塩基のみが欠失し36塩基がエクソンとして残存していたことと矛盾している。これらのことから、ジストロフィン神戸では、前駆体mRNAの成熟過程で36塩基のエクソン19がスプライスアウトされ、エクソンのスキッピングが起こったことが示された。
【0019】
遺伝子の異常からエクソンのスキッピングが生ずる例は少なからず報告されている。既に、本発明者等はジストロフィン遺伝子の点突然変異例でエクソンのスキッピングが生じることを世界で初めて発見している[Hagiwara, Y., Am. J. Hum. Genet., 54: 53-61 (1994)]。これらのエクソンのスキッピングを生じる生じる遺伝子変異は、いずれも、先に述べたスプライシング部位を決定するコンセンサス配列内に生じた異常に起因している。
【0020】
これに対し、ジストロフィン神戸では、エクソン「内」に52塩基の欠失を認めたのみで、コンセンサス配列には異常がなく、この例でエクソンのスキッピングが生じる原因は不明であった。
【0021】
ジストロフィン神戸に見られたエクソンのスキッピングの原因がDNA及びmRNA前駆体の一次構造の異常には求められないことから、mRNA前駆体の2次構造にエクソンスキッピングの原因が存在するものと推察され、その2次構造を解析した。解析は、2次構造でエネルギー的に最も安定した塩基結合を算出するZuker等のアルゴリズムを用い、コンピュータを用いて行った[Matsuo, M. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 182: 495-500 (1992)]。野生型のジストロフィンのエクソン19及びその両側のイントロンの塩基配列を含む617塩基を対象にした解析結果では、mRNA前駆体は比較的単純なステムループ構造を呈した。特徴的な構造として、エクソン19の配列それ自体が塩基対をなすイントラエクソンヘアピン構造が確認された。これに対し、52塩基のエクソン内欠失を有するジストロフィン神戸のエクソンとその近傍のイントロンの塩基配列からmRNA前駆体の2次構造を演繹すると、野生型と大きく異なっており、ジストロフィン神戸における最大の特徴は、エクソンの配列がイントロンの配列のみと塩基対をなす単純なステム構造を形成することであった。この結果は野生株で見られたイントラエクソンヘアピン構造が、ジストロフィン遺伝子のエクソン構造を特徴づける要素である可能性を示唆した。
【0022】
そこで、ジストロフィン遺伝子の79個のエクソンのうちから、近傍のイントロンの塩基配列の明らかにされている22個のエクソンを選び、そのmRNA前駆体の2次構造を解析した。解析した全てのエクソンは、イントラエクソンヘアピン構造を形成する結果となり、このイントラエクソンヘアピン構造が、エクソンの機能の必須な要素と考えられた。これらのことは、ジストロフィン神戸に見出されたエクソンのスキッピングがmRNA前駆体のイントラエクソンヘアピン構造の消失により発生したことを強く示唆した。これはまた、エクソン自体の配列がスプライシング時のエクソン認識に重要な役割を果たしていることをも示唆した。
【0023】
最近、コンセンサス配列以外に、エクソン内の配列の異常によってもエクソンのスキッピングが生じ得ることが報告され[Dietz, HC., et al., Science, 259: 680-683 (1993)]、コンセンサス配列に加えてエクソンの配列もスプライシング部位決定要因として機能しているとして注目を集めている。これらのことは、従来の分子生物学のスプライシングに関する概念を崩すものとなっている。
【0024】
エクソン19内の配列がスプライス部位の決定に重要なことが示唆されたので、in vitro のスプライシング反応系を構築し、このことを実験的に明らかにする試みを行った[Takeshima, Y., et al., J. Clin. Invest., 95: 515-520 (1995)] [特願平11-140930号]。まず、ジストロフィン遺伝子のエクソン18と19並びにイントロン18からなるミニジーンを作成し、このミニジーンからラジオアイソトープでラベルしたmRNA前駆体を合成した。得られたmRNA前駆体をHeLa細胞の核抽出液と混合しスプライシング反応を試験管内で進行させ、産生された成熟mRNAを電気泳動により分離した。この反応系で正常のエクソン19塩基配列を有するmRNA前駆体を用いるとスプライシングは正常に進行し、エクソン18と19が連続した成熟mRNAを得ることができた。しかしエクソン19の塩基配列をジストロフィンのそれと置換すると、成熟mRNAは産生されなくなった。これは、ジストロフィン神戸でエクソン19から欠失した52塩基がスプライシングに重要な役割を果たしていることを示すものであった。
【0025】
しかしこのスプライシング異常が、エクソン19の「サイズ」が36塩基と短くなった結果による可能性もあるため、ジストロフィン神戸のエクソン19の欠失部を補うものとして、欠失した遺伝子を逆方向に挿入し、同様の実験を行った。このmRNA前駆体では、スプライシングは進行するものの、その効率は低かった。この結果は、たとえエクソンが正常な長さを有しても、エクソン内の塩基配列が異なるとスプライシング効率は低下することを示し、エクソンの(サイズでなく)エクソン内の塩基配列自体が重要であることを示すものであった。
【0026】
そこで、エクソン内の塩基配列自体のスプライシングへの影響を更に解析するため、52塩基の欠失配列に代わって、2種の異なる配列を挿入したmRNA前駆体を作成し、そのスプライシング効率を調べた。β−グロビン遺伝子の一部あるいはアンピシリン耐性遺伝子の一部をそれぞれ挿入した2種のmRNA前駆体において、いずれもスプライシングは進行したが、ともに極めて低い効率であった。しかし、β−グロビン遺伝子を挿入した方が、アンピシリン耐性遺伝子を挿入した方よりも相対的に高いスプライシング効率を示した。前者の塩基配列には多くのプリン基が含まれており、エクソン内のプリン配列がエクソン認識に関与していると考えられている[Watanabe, A., et al., Genes Dev., 7: 407-418 (1993)]。
【0027】
これらの実験結果は、スプライシングには、コンセンサス配列のみならずその下流のエクソンの配列が関与していることを実験的に明らかにしたもので、遺伝情報処理プロセスに新しい概念を導入するものであった。
【0028】
<アンチセンスオリゴヌクレオチドによるスプライシング制御>
ジストロフィン遺伝子のエクソン19内の配列がスプライシングの進行に極めて重要であるという上記発見から、この配列を破壊することによりスプライシングの異常が人為的に誘導できるのではないかという可能性に着目し、本発明者等は続けて検討を行った。すなわち、ジストロフィン神戸で欠失した52塩基のうち配列表の配列番号5に示した塩基配列部分を含んだ配列表の配列番号6に示した31塩基に対し、これに相補的な2’−O−メチルオリゴRNAを合成し、これが、エクソン18−イントロン18−エクソン19よりなるmRNA前駆体のスプライシングに及ぼす影響を、前述の試験管内スプライシング反応系で調べた。その結果、スプライシング反応はアンチセンスオリゴヌクレオチドの添加量に、またその反応時間に依存して阻害された。これは、アンチセンスオリゴヌクレオチドによりジストロフィンのイントロンのスプライシングが阻止できることを実験的に初めて証明したものであった。そして、このことは、核内でおこるスプライシング反応が人為的な手段により制御できる可能性を示した[Takeshima, Y. et al., J. Clin. Invest., 95: 515-520 (1995)]。
【0029】
<細胞核内でのスプライシング制御>
生きた細胞の核内でもアンチセンスオリゴヌクレオチドによりジストロフィンmRNA前駆体のスプライシングが制御できることを明らかにするため、本発明者等は、正常なヒトリンパ芽球細胞を用い、配列表の配列番号5に示した塩基配列部分を含んだ配列表の配列番号6に示された塩基配列に対し、これに相補的な塩基配列を有するアンチセンスオリゴDNAの導入を行って、その存在下に産生されるジストロフィン成熟mRNAについて解析を行った[Zacharias A. DP. et al., B.B.R.C., 226: 445-449 (1996)]。すなわち、アンチセンスオリゴDNAの核内への導入は、リポフェクタミンと混合後、これをリンパ芽球培養液に加えることにより行った。その結果、先に試験管内スプライシング反応系で得られた結果とは異なって、ジストロフィンのエクソン19の塩基配列に対するアンチセンスオリゴDNAはヒトリンパ芽球細胞においてエクソン19のスキッピングを誘導し、mRNAにおいてエクソン18がエクソン20に直接つながったものが得られることが確認された。また培養時間を延長することにより、このエクソンスキッピング誘導効果は完全なものとなり、全てのmRNAがエクソン19を欠失したものとして認められるようになった。更に、用いたアンチセンスオリゴDNAは、他のエクソンのスプライシングには問題を起こさなかったことも確認された。
【0030】
今日、アンチセンスオリゴヌクレオチド (AOs: Antisense oligonucleotides)は、タンパク質の翻訳阻害のために遺伝子発現を抑制するために適用されてきた。AOsはまた、RNAポリメラーゼIIによる転写を阻害するためにDNAの特異的な領域を標的とするためにも用いられてきた。また、別のアプローチとして、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて前駆体mRNA分子の異常スプライシングを阻害する方法も報告されている[特表平8-510130号]。また、ホスホロチオエート−2−O−メチルオリゴヌクレオチドは、リボヌクレアーゼ−H活性を誘導しないため、サラセミア症貧血患者において、前駆体mRNA中ずれたスプライシング部位を阻害することにより正しいスプライシングを回復する目的で、用いられてきた。
【0031】
<人為的エクソンスキッピングの治療への応用>
先述のように、DMDでは、ジストロフィンmRNAのリーディングフレームがずれてアウトフレームとなるような遺伝子異常を有している。もしこのリーディングフレームの異常をインフレームに転換できるとすれば、それによりDMDはBMDとなり、症状の改善が期待できる筈である。例えば、仮に、エクソン20のみが単独で欠失している患者を想定すると、エクソン20は242塩基からなっており、当然ながらその単独欠失はフレームシフトを起こして翻訳途中で停止コドンが出現してジストロフィン合成が途中で停止し、その結果DMDの表現型となる。しかしながら、この症例に対し、前記の実験で用いたようなエクソン19に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与してエクソン19のスキッピングを人為的に誘発できたとすると、エクソン20の242塩基に加えエクソン19の88塩基が前駆体mRNAから欠失することとなり、合計330塩基の欠失となって、リーディングフレームは一転してインフレームとなる可能性が、すなわちアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用によりDMDの表現型をBMDに転換できる可能性が、理論上はある。
【0032】
しかしながら、ジストロフィン遺伝子は前述の通り非常に複雑な構造をしており、そのmRNA前駆体も、スプライスアウトされるべき多数の長いイントロンを含んだ複雑な2次構造をなしておりそれがスプライシングの正常な進行を制御している。従って、正常なヒトのリンパ球芽細胞でなく、エクソン20の単独欠失を有する患者の筋芽細胞においても、エクソン19に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドによって期待通りエクソン19のスキッピングを起こすことができるか否か、またエクソン19のスキッピングにうまく成功したとしても、元々エクソン20のスプライスアウトを引き起こす異常を有するmRNA前駆体において、エクソン20のスプライスアウトや他の部位のスプライシングに対して影響を及ぼすことなくmRNAのリーディングフレームをアウトフレームからインフレームへと転換することができるか否か、そして更には、インフレームへと転換できたとしてもそのmRNAがジストロフィンに近似のタンパク質を有効に産生できるか否か、という現実の可能性は不明であった。
【0033】
このような背景のもと、本発明者の一人は、ジストロフィン成熟mRNAにおいてエクソン20の完全欠失を有するDMD患者の細胞で、エクソン19に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてそのスプライスアウトを誘導できること、そしてそれによりジストロフィン成熟mRNAのリーディングフレームのずれを修正でき、ジストロフィン陰性細胞を陽性細胞に転換できることを明らかにし、その結果に基づきDMDに対する治療薬を先に開示した(特開平11-140930号)。
【0034】
すなわち、ジストロフィンのエクソン19に対するアンチセンスオリゴリボヌクレオチドをエクソン20の単独欠失を有するDMD患者の筋芽細胞の培養液中に投与することにより、これが筋芽細胞内へ、次いで核内へと取り込まれ、その結果、エクソン19とエクソン20とを完全欠失はするもののアミノ酸読み取り枠はアウトフレームからインフレームになるよう回復されて、エクソン19とエクソン20がコードする部分以外は完全長のジストロフィンを産生できるようになることが確認された。このことは、エクソン20の単独欠失に基づくDMD患者に対して、エクソン19に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することにより、極めて重篤な疾患であるDMDを比較的軽い疾患であるBMDへと転換させ得るという可能性を強く支持している。
【0035】
このように、ゲノムより転写されたmRNA前駆体がスプライシングを受けて成熟mRNAとなるときに、スプライシングの部位決定に、従来より知られているエクソン・イントロン境界部に存在するコンセンサス配列に加えて、エクソン内に存在するスプライシング促進配列(Splicing Enhancer Sequence: SES)が重要な役割を果たしている。また本発明の一人は、上記の通り、ジストロフィン遺伝子エクソン19内にSESが存在することを示し、更にそのSESに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドによりエクソン19のスキッピングを導入し得ることを明らかにした。
【0036】
【発明が解決しようとする課題】
DMDに対して、ジストロフィンの前駆体mRNAのスプライシングに際しエクソンスキッピングを誘導することによりリーディングフレームのずれを修復すると、部分的に機能回復したジストロフィンタンパク質が産生されることになり、それによりDMDをBMDへと変化させることが可能である。しかしながら、DMDにおけるジストロフィン遺伝子の変異部位は多種存在すると考えられている。従って、そのような種々の変異部位に対して治療の可能性を考える上において、エクソン19のみでは不十分であり、ジストロフィン遺伝子の欠失好発部位の周辺に存在するSESを同定することが重要である。すなわち、本発明は、ジストロフィンエキソン内の新規のSESを発見しそれに基づき新規のDMDの治療剤を提供することを目的とする。
【0037】
【課題を解決するための手段】
上記背景の下で、本発明者らは、in vitroのスプライシング系を用いて、ジストロフィン遺伝子のエキソン43及び53内に新たなSESをそれぞれ同定することに成功し、それに基づきデュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する新たな治療手段を創り出した。
【0038】
すなわち本発明は、配列表において配列番号1又は2で示された塩基配列を有するRNA及び該塩基配列に対する相補的塩基配列に対して相補的である塩基配列を有するDNAよりなる群より選ばれるオリゴヌクレオチドを提供する。
【0039】
これらのオリゴヌクレオチドのうちのRNAは、ヒトジストロフィンのmRNA前駆体のエクソン43内のSES部分(配列表において配列番号1で示す)又はエクソン53内のSES部分(配列表において配列番号2で示す)である。これらのRNA及びDNAは、後述のデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療剤としてのアンチセンスの製造のための鋳型として使用される。
【0040】
また本発明は、配列表において配列番号1又は2で示された塩基配列に対して相補的な塩基配列を含んでなるアンチセンスオリゴヌクレオチドをも提供する。
【0041】
該アンチセンスオリゴヌクレオチドは、それぞれヒトジストロフィンmRNAエクソン43内のSES(配列表において配列番号1で、同等のDNA配列として示した)及びエクソン53内のSES(配列表において配列番号2で、同等のDNA配列として示した)と相補的であるため、それらの投与により、ヒトジストロフィンmRNAのスプライシングに際してそれぞれエクソン43及びエクソン53のスキッピングを誘導することができる。このため、これらアンチセンスオリゴヌクレオチドは、特定のデュシェンヌ型筋ジストロフィーにおいて、リーディングフレームのずれを修復することに基づく治療剤として用いることができる。
【0042】
上記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列表においてそれぞれ配列番号3又は4で示された塩基配列を有するDNA及びこれらと同一の塩基配列を有するホスホロチオエートDNAよりなる群より選ばれるものであってよい。これらの配列は、それぞれ、エクソン43又は53のSES及びそれらの両端の隣接塩基配列をも含んだ配列に対して相補的な配列であり、従って、これらの配列を有するDNAは、それぞれmRNA前駆体のエクソン43又は53のSESに、一層強力にハイブリダイズしてその機能をブロックできる。
【0043】
更に本発明は、ヒトジストロフィンmRNAにおけるエクソン43に隣接するエクソンを構成する塩基配列において正常な塩基配列からの塩基の欠失による塩基数の変化に起因するデュシェンヌ型筋ジストロフィーであって、該塩基数の正味の変化が(3×N+1)個(Nはゼロ又は自然数)の塩基の減少として表されるものであるデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療剤の製造のための、配列表において配列番号1で示された塩基配列に対して相補的である塩基配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用をも提供する。ここにおいて、該アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列表において配列番号3で示された塩基配列を有するDNA及びこれと同一の塩基配列を有するホスホロチオエートDNAよりなる群より選ばれるものであってよい。
【0044】
更に本発明は、薬剤学的に許容し得る注射可能な媒質中に、エクソン43のSESに対するこれらのアンチセンスオリゴヌクレオチドの何れかを含有することを特徴とする、ヒトジストロフィンmRNAにおけるエクソン43に隣接するエクソンを構成する塩基配列において正常な塩基配列からの塩基の欠失による塩基数の変化に起因するデュシェンヌ型筋ジストロフィーであって、該塩基数の正味の変化が(3×N+1)個(Nはゼロ又は自然数)の塩基の減少として表されるものであるデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療剤をも提供する。
【0045】
更に本発明は、ヒトジストロフィンmRNAにおけるエクソン53に隣接するエクソンを構成する塩基配列において正常な塩基配列からの塩基の欠失による塩基数の変化に起因するデュシェンヌ型筋ジストロフィーであって、該塩基数の正味の変化が(3×N+1)個(Nはゼロ又は自然数)の塩基の減少として表されるものであるデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療剤の製造のための、配列表において配列番号2で示された塩基配列に対して相補的である塩基配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用をも提供する。ここにおいて、該アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列表において配列番号4で示された塩基配列を有するDNA及びこれと同一の塩基配列を有するホスホロチオエートDNAよりなる群より選ばれるものであってよい。
【0046】
更に本発明は、薬剤学的に許容し得る注射可能な媒質中に、エクソン53のSESに対するこれらのアンチセンスオリゴヌクレオチドの何れかを含有することを特徴とする、ヒトジストロフィンmRNAにおけるエクソン53に隣接するエクソンを構成する塩基配列において正常な塩基配列からの塩基の欠失よる塩基数の変化に起因するデュシェンヌ型筋ジストロフィーであって、該塩基数の正味の変化が(3×N+1)個(Nはゼロ又は自然数)の塩基の減少として表されるものであるデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療剤をも提供する。
【0047】
本発明において、「オリゴヌクレオチド」は、オリゴDNA、オリゴRNAのみならず、ホスホロチオエートオリゴDNA等のホスホロチオエート類似体をも包含する。ホスホロチオエートDNAは、リン酸基の酸素原子がイオウ原子で置換されたヌクレオチドであり、各種の核酸分解酵素に対して耐性があること等から、部位特異的な遺伝子の置換その他で遺伝子工学の分野において汎用されているヌクレオチド類似体であり、その製法及び性質、及び種々の用途は当業者に周知である。ホスホロチオエートDNAは、通常のDNAと同様に塩基対を形成するが、各種分解酵素に対して抵抗性が大きく本発明において用いるのに特に有利である。ここに、「ホスホロチオエート類似体」は、通常のDNAのヌクレオチド間のホスホロジエステル基の1個以上がホスホロチオエート基に置き換えられている構造のものである。
【0048】
本発明の治療剤は、好ましくは、0.05〜5μmoles/mlの該アンチセンスオリゴヌクレオチド、0.02〜10%w/vの炭水化物又は多価アルコール及び0.01〜0.4%w/vの薬剤学的に許容し得る界面活性剤を含有する、該アンチセンスオリゴヌクレオチドの更に好ましい範囲は、0.1〜1μmoles/mlである。
【0049】
該炭水化物としては、単糖類及び/又は2糖類が特に好ましい。これら炭水化物及び多価アルコールの例としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、ラクトース、マルトース、マンニトール及びソルビトールが挙げられる。これらは、単独で用いても、併用してもよい。
【0050】
また、界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノ〜トリ−エステル、アルキルフェニルポリオキシエチレン、ナトリウムタウロコラート、ナトリウムコラート、及び多価アルコールエステルが挙げられる。このうち特に好ましいのは、ポリオキシエチレンソルビタンモノ〜トリ−エステルであり、ここにおいてエステルとして特に好ましいのは、オレエート、ラウレート、ステアレート及びパルミテートである。これらは単独で用いても、併用してもよい。
【0051】
また本発明の治療剤は、更に好ましくは、0.03〜0.09Mの薬剤学的に許容し得る中性塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び/又は塩化カルシウムを、含有する。
【0052】
また本発明の治療剤は、更に好ましくは、0.002〜0.05Mの薬剤学的に許容し得る緩衝剤を含有することができる。好ましい緩衝剤の例としては、クエン酸ナトリウム、ナトリウムグリシネート、リン酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンが挙げられる。これらの緩衝剤は、単独で用いても、併用してもよい。
【0053】
更に、上記の治療剤は、溶液状態で供給してもよい。しかし、ある期間保存する必要がある場合等のために、アンチセンスオリゴヌクレオチドを安定化して治療効果の低下を防止する目的で通常は凍結乾燥しておくことが好ましく、その場合は用時に溶解液(注射用蒸留水など)で再構成(reconstruction)して、即ち投与される液体状態にして用いればよい。従って、本発明の治療剤は、各成分が所定の濃度範囲になるよう溶解液で再構成して使用するための、凍結乾燥された状態のものも包含する。凍結乾燥物の溶解性を促進する目的で、アルブミン、グリシン等のアミノ酸を更に含有させておいてもよい。
【0054】
【発明の実施の形態】
以下、各種の試験に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
【0055】
1. 患者由来のリンパ芽球細胞におけるエクソンスキッピングの誘導
前述の通り、正常のジストロフィン遺伝子構造を持つ遺伝子から転写されたmRNA前駆体のスプライシング反応において、本発明者等のデザインしたアンチセンスオリゴヌクレオチドがエクソン19のスキッピングを有効に誘導することが確認された。一方、エクソン20を欠失したDMD患者では、正常とは遺伝子構造を異にするため、ジストロフィンのmRNA前駆体の2次構造あるいは3次構造が正常とは異なると予想される。そのようなエクソン20を欠失したDMD患者でも、前記31塩基のアンチセンスオリゴヌクレオチドが有効か否かを検討した。すなわち、以下に詳述するように、ジストロフィンのエクソン20を欠失したDMD患者2名からEBウイルスでトランスフォームしたリンパ芽球細胞株を樹立し、これを用いてアンチセンスオリゴヌクレオチドによりエクソンスキッピングを誘導できること確認した。
【0056】
(a) DMD患者由来リンパ球芽細胞株の樹立
ジストロフィンのエクソン20を欠失したDMD患者2名から、EBウイルスで形質転換したリンパ芽球細胞株を次のようにして樹立した。すなわち、患者より採取した2mlの全血を2mlのRPMI1640培地(10%FBSを補充)と混和し、3mlのFicoll Paque(Pharmacia社)上に重層し、濃度勾配遠心した。その後、リンパ球層のみを回収し、RPMI1640培地(10%FBSを補充)にて2回洗浄し、最後に0.5mlのRPMI1640培地(10%FBSを補充)に浮遊させ、リンパ浮遊液とした。この液と、予め用意しておいたEBウイルス液0.5mlを混和し、混和液を37℃にて1週間培養した。1週間後にEBウイルスを除くためRPMI1640培地(10%FBSを補充)にて洗浄し、その後同じ培養液を使用して培養を継続した。こうして、EBウイルスが患者リンパ球に感染し、形態的に大きな、リンパ芽球となった細胞を得た。
【0057】
(b) アンチセンスオリゴDNAの導入
上記により得られたリンパ芽球細胞株の細胞培養液を遠心し、細胞成分のみに分離した。そして、配列表において配列番号2で示した塩基配列に相補的な配列よりなる31塩基のアンチセンスオリゴDNAを約200nM(200pmoles/ml)と2%胎仔牛血清(FBS)を含む維持培地で、この細胞を36℃にて5時間培養した。次いで血清培地に交換した後に、引き続き12時間培養した。培養終了後に、常法により細胞を集めて全RNAを抽出した。
【0058】
(c) ジストロフィンcDNAの解析
得られた全RNAを基質とし、ヘキサオリゴヌクレオチドからなるランダムオリゴヌクレオチドをプライマーとして、常法に従い逆転写酵素の作用によりcDNAを合成した。合成したcDNAよりジストロフィンのエクソン18から21にわたる領域をnested PCR法を用いて増幅した。まず、プライマーをエクソン18と21にデザインしたもので1回増幅した。この増幅産物をテンプレートとして、1回目に用いたプライマーの内側に位置する領域にマッチするプライマーをデザインして2回目のPCR増幅を行った。この増幅は、アニーリング温度を60℃に設定して行った。
【0059】
(d) エクソン19のスキッピングの確認
こうして、ジストロフィンcDNAのエクソン18〜21の領域を増幅したところ、アンチセンスの無添加では384塩基対のきれいなバンドが得られた。この増幅産物の塩基配列を常法により決定したところ、これがエクソン18、19、21からなることが示された。これは患者の遺伝子解析結果とよく一致していた。
【0060】
一方、アンチセンスオリゴDNA添加細胞のcDNAでは、アンチセンスオリゴDNAを導入しない細胞から得られた産物と同じサイズの増幅産物が得られたのみならず、培養4日目から小さなサイズの、リーディングフレームの維持された産物が得られた。また、症例2より確立したリンパ芽球細胞でも、同様の処理により2種類のバンドが得られた。これらのうち小さなサイズの増幅産物の塩基配列を決定したところ、エクソン18の配列が直接エクソン21の配列につながっており、エクソン19と20とは欠失していることが判明した。このことは、アンチセンス処理によりエクソン19がスキッピングしたことを示している。一方、正常者から確立したリンパ芽球細胞では、この条件で小さなサイズの転写物、すなわちエクソン19のスキッピングを有するもののみが得られた。また、ジストロフィンcDNAの全領域を10抗体に分けて増幅して調べたが、スプライシングの異常を示す断片は得られなかった。
【0061】
(e) 考 察
このアンチセンスオリゴヌクレオチドのエクソンスキッピング誘導効果が正常とDMD患者で異なっている原因は、エクソン19近辺のmRNA前駆体の2次構造あるいは3次構造の差に由来するものと考えられた。アンチセンスオリゴヌクレオチドの濃度を変えることにより、更にDMD患者におけるエクソンスキッピング誘導効率を調べた。しかし、正常患者由来細胞で見られたような、全ての転写産物がエクソンスキッピングを示すような条件は得られなかった。なお、このアンチセンス誘導は、センスオリゴヌクレオチドでも、また他の領域に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドでも、見られなかった。
【0062】
これらの結果は、ジストロフィンmRNA前駆体のスプライシングを制御することによりエクソンのスキッピングを誘導し、その結果リーディングフレームの修正ができることを示している。しかし、筋細胞においてもこうしたmRNAの修正でアミノ酸読み取り枠が維持できるようになったmRNAが有効にタンパク質を合成できるか否かは依然として不明であった。
【0063】
2. DMD患者由来筋細胞におけるジストロフィン近似タンパク質の発現
そこで、次に、エクソン20の欠失したDMD患者の筋芽細胞を用いて、ジストロフィン近似のタンパク質が発現するか否かにつき検討した。
【0064】
(a)DMD患者由来筋細胞株の樹立
ジストロフィン遺伝子のエクソン20を欠失した患者より、無菌的に筋組織を取り出し、細切した後、トリプシンにて遊離細胞を得た。これを洗浄した後、生育培地(Growth medium: 20% FCS、0.5% chicken胚抽出物を補充したHam-F10)中にて培養した。継代に際し細胞培養用のシャーレの中にカバーグラスをおき、その上で筋細胞の培養を行った。筋芽細胞の割合が80%程度になるまで増殖したとき、培養液をFusion培地(2%HSを補充したDMEM)に交換して分化を誘導し、筋細胞とした。
【0065】
(b)アンチセンスオリゴDNAの導入
分化誘導して4日目に、アンチセンスオリゴDNA(200 pmol)をリポフェクタミン(6μl)によって細胞内に導入し、更に3、7、及び10日間培養した。
【0066】
(c)ジストロフィン免疫染色
上記培養後のそれぞれの細胞につき、ジストロフィンのC末端に対する抗体を用いたジストロフィン免疫染色を行った。その結果、当初全くジストロフィンの染色のなかった細胞で、ジストロフィンが染色されるようになった。何れにおいても、ジストロフィン陽性細胞が確認された。また、ジストロフィンのN末端領域を認識する抗体を用いてもC末端領域の染色と同様な染色結果が得られ、この産生されたジストロフィンがN末端からC末端に及ぶものであることが確認された。
【0067】
このように、アンチセンスオリゴDNAを添加した筋芽細胞には、ジストロフィンの染色が認められたのに対し、同様の方法でアンチセンスオリゴDNA無添加の筋芽細胞を検討したところでは、ジストロフィンの染色は全く認められていない。
【0068】
(d)ジストロフィンcDNAの解析
続いて、上記アンチセンスオリゴDNA添加培養筋芽細胞から、常法によりRNAを抽出した。得られたRNAよりcDNAを合成し、リンパ芽球細胞からのRNAについて上記したのと同様にして、ジストロフィンのエクソン18〜21の領域を増幅した。
【0069】
得られた増幅産物につき、常法により塩基配列決定した。その結果、培養4日目から、エクソン18の塩基配列がエクソン21の塩基配列に直接つながってアミノ酸読み取り枠がインフレームとなった増幅産物が得られた。
【0070】
次いで、アンチセンスオリゴDNA添加培養筋芽細胞から作成したcDNAにつき、その全領域を10個の部分に分けてPCR法により増幅し、増幅産物として得られた各断片のサイズを常法により電気泳動して検討した。その結果、エクソン19及び20のスキッピング以外、スプライシングの異常を示唆するような断片は認めらなかった。これらの結果は、得られたジストロフィン成熟mRNAが、エクソン19とエクソン20とを完全欠失していること以外は、リーディングフレームの維持された完全長のmRNAであることを示すものである。
【0071】
3. アンチセンスオリゴDNAの核内への移行
次いで、アンチセンスオリゴDNAが実際に核内に移行して作用していることの裏付けを得るために、蛍光標識したアンチセンスオリゴDNAを用いて、その核内への移行の様子を観察した。
【0072】
上で用いたアンチセンスオリゴDNAを常法によりFITC(フルオレセインイソチオシアネート)標識して、アンチセンスオリゴDNAの核内への移行について検討した。すなわち、DMD患者から採取した筋細胞を生育培地(Growth medium: 20% FCS、0.5% chicken胚抽出物を補充したHam-F10)中にて培養した。培養は、細胞培養用のシャーレ内においたカバーグラス上で行い、細胞がセミコンフルエントになったときFusion培地(2%HSを補充したDMEM)に置換して分化を誘導し、筋細胞とした。分化誘導して4日目にFITC標識したアンチセンスオリゴDNA(200 pmol)をリポフェクタン(6μl)によって細胞内に導入し、1、2、3、7及び10日後に蛍光顕微鏡にてFITCの局在を確認した。
【0073】
その結果、核に一致して蛍光シグナルが検出された。このことは、アンチセンスオリゴDNAが実際に核内に移行してエクソン19のスプライシングをスキップさせたことを裏付けるものである。
【0074】
以上の試験結果が示すように、DMD患者の筋芽細胞において、アミノ酸読み取り枠をインフレームへと転換させることによって、ジストロフィンに対応するタンパク質を合成させることができる。これは、従来極めて重篤な不治の疾患であったDMDにおいて、特にエクソン20の単独欠失を有する患者を、比較的穏やかなBMDへと転換させる可能性を示すものである。
【0075】
4.他のエクソン内のSES配列の検索
上記の結果を基に、更に本発明等は、ジストロフィン遺伝子における欠失好発部位であるエクソン45〜55周辺の、リーディングフレームに関して端数の塩基よりなるエクソン(即ち、その欠失が起こると、アミノ酸読み取りに関しアウトフレームとなる)内より、SESを転写物として与える配列の存在につき調べた。上記のように、in vitroの系における解析よって、SESはプリン残基(特にaagの繰り返し配列)に富んでいる。これに基づき、本発明者等は、ヒトジストロフィン遺伝子のエキソン内にある、比較的プリン残基に富んだ転写物を与える鋳型となりうる(1) エクソン43内の26塩基よりなる塩基配列(配列表の配列番号1に示した塩基配列に相補的な塩基配列)、(2) エクソン46内の28塩基よりなる塩基配列(配列表の配列番号2に示した塩基配列に相補的な塩基配列)、及び(3) エクソン53内の26塩基、の3箇所を候補として選択し、それらの配列がSES活性を有する転写物を与えるか否かを検討した。
【0076】
SES活性評価のためのmRNA前駆体の作製及び評価には、ショウジョウバエのdoublesex (dsx)遺伝子のエクソン3、イントロン3、及びエクソン4の5'末端部分を含んだ、Watakabe, A., et al., Genes & Development, 7:407-418(1993)に記載のプラスミドを基本プラスミドとして用いた。このプラスミドは、ショウジョウバエのdoublesex (dsx)遺伝子のエクソン3から雌性特異的アクセプター部位(female-specific acceptor site)の1128塩基下流までを含んだdsxのゲノム断片をpSP73(Promega)にサブクローンして得られるプラスミドであるpSPdsxE34f〔Inoue et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:8092-8096(1992)〕のBglII-HincII断片を、プラスミドpSP72のBglII-SmaI部位に挿入することにより得られたものである。このBglII-HincII断片は、その転写物において、雌性特異的エクソンであるエクソン4の5末端部分のすぐ下流にSESが付加されないとイントロン3を挟むエクソン間のスプライシングが見られないが、当該部分にSESが付加されるとスプライシングが見られるようになる系を提供する。他方、解析対象である塩基配列については、正逆両方向の一本鎖DNAを各々合成した。このとき、正方向のDNAの5末端には制限酵素BamHI切断部位を付加し、逆方向のDNAの5末端には制限酵素XhoI切断部位を付加した。合成した正逆両一本鎖DNAを混合し、熱処理(94℃、2分間)後、室温に戻して両鎖をアニールさせて二本鎖とした。この二本鎖DNAを、前記試験用の基本プラスミド中のdsxエクソン4の5末端部分のすぐ下流にあるBamHI-Xhol部位に挿入した。こうして、dsxのエクソン3からエクソン4の5末端部分までの塩基配列とその下流に挿入された解析対象塩基配列とからなるミニジーンを含んだプラスミドが得られた。これらのプラスミドを鋳型として、常法によりRNAポリメラーゼによりラジオアイソトープによって標識されたmRNA前駆体を合成した。このmRNA前駆体を前述の方法と同様にしてHeLa細胞核抽出液と1時間反応させ、スプライシング反応を進行させた後、常法によりゲル電気泳動で解析した。
【0077】
その結果、エクソン43及び53のSES候補を組み込んだmRNA前駆体を用いたスプライシング反応では、何れもイントロン3のスプライシングを受けたmRNAの生成が明らかに認められた。このことは、これら2種の候補配列がSES活性を有することを示している。また両者の対比では、SES活性は、エクソン43の方が上回っていた。一方、エクソン46のSES候補を組み込んだmRNA前駆体を用いたスプライシング反応では、スプライシング反応を受けたmRNAは認められるものの、活性は非常に弱かった。
【0078】
こうして、本発明者等は、ヒトジストロフィンmRNAのエクソン43及び53内にSESが存在することを見出した。mRNA中におけるそれらのSESは、それぞれ、配列表の配列番号1及び2に示したリボヌクレオチド配列である。
【0079】
既に本発明者等は、ジストロフィン遺伝子の転写物である前駆体mRNAのエクソン19内にSESが存在し、更にそのSESに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドによりエクソン19のスキッピングを誘導でき、それによりリーディングフレームの回復が可能となることを見出している。上記で更に同定したエクソン43及びエクソン53内にそれぞれ存在するSESについても、それらに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いることにより、それぞれエクソン43(173塩基、即ち3×57+2塩基)及び53(212塩基、即ち3×70+2塩基)のスキッピングを誘導できる筈である。
【0080】
従って、ジストロフィンの前駆体mRNAのエクソン43に隣接するエクソン内の塩基配列の欠失により塩基数が(3×N+1)個(Nはゼロ又は自然数)減少しているタイプのDMD症例に対しては、エクソン43のSESに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与により、スプライシングに際したエクソン43のスキッピングの誘導が行われる。これにより、スプライシングに際してエクソン43を構成する173個の塩基が更に欠失するため、スプライシング後におけるmRNA中の欠失塩基個数を3の倍数にしてアウトフレームであった変異をインフレームに戻すことが可能である。このため、スキッピングされた塩基配列に対応するアミノ酸は欠落するもののその下流側のアミノ酸配列は遺伝子異常の影響を受けずにジストロフィンタンパク質が合成されることとなり、重症のDMDが比較的軽いBMDへと転換される。そのようなDMD例としてはエクソン44(148塩基、即ち3×49+1塩基)の欠失したもの、エクソン44から46まで(148+176+148=472塩基、即ち3×157+1塩基)が欠失したもの、エクソン44から47まで(148+176+148+150=622塩基、即ち3×207+1塩基)が欠失したもの、エクソン44から48まで(148+176+148+150+186=808塩基、即ち3×269+1塩基)が欠失したもの、及びエクソン44から49まで(148+176+148+150+186+102=910塩基、即ち3×303+1塩基)が欠失したものが挙げられる。
【0081】
同様に例えば、DMD患者のジストロフィンの前駆体mRNAのエクソン53に隣接するエクソン内の塩基配列の欠失により塩基数が(3×N+1)個(Nはゼロ又は自然数)減少しているタイプのDMD症例に対しては、エクソン53のSESに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与により、スプライシングに際したエクソン53のスキッピングの誘導が行われる。該当する例としては、エクソン52(118塩基、即ち3×39+1塩基)を欠失、又はエクソン50・エクソン51・エクソン52を欠失(109+233+118=460塩基、即ち3×153+1塩基)を欠失したDMD症例が挙げられる。これらに対し、エクソン53のSESに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入してスプライシングに際したエクソン53のスキッピングを誘導することにより、スプライシング後におけるmRNA中の欠失の長さをそれぞれ330塩基及び672塩基とすることが可能である。そうすることにより、スプライシング後のmRNA中の欠失塩基の個数が3の倍数となるため、元の欠失により起こっていたリーディングフレームのずれが正常に復帰する。
【0082】
適合するDMD患者への本発明の何れかのアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与は、例えば次の通りに行うことができる。すなわち、症例に応じ配列表において配列番号1又は2に示された塩基配列に対して相補的な塩基配列を含んでなる、例えば配列表においてそれぞれ配列番号3又は4に示されたアンチセンスオリゴDNA又は同じ塩基配列のアンチセンスホスホロチオエートオリゴDNAを当業者に周知の方法で製造し、これを常法により滅菌処理し、例えば1200μg/mlの注射用溶液を調製する。この溶液を、患者静脈内にアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与量が体重1kg当たり例えば20mgとなるように、例えば輸液の形で点滴投与する。投与は、例えば2週間の間隔で4回繰り返し、その後も、筋生検組織におけるジストロフィンタンパク質の発現、血清クレアチンキナーゼ値、臨床症状を指標とした治療効果の確認をしながら、適宜この治療を繰り返す。治療効果があり明らかな副作用が見られない限り、治療を継続し、原則として生涯投与が行われる。
【0083】
以下、代表的な実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明が該実施例に限定されることは意図しない。
【0084】
【実施例】
1. アンチセンスオリゴDNA及びホスホロチオエートオリゴDNAの調製
配列表において配列番号2で示されたヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有するDNA及びホスホロチオエートオリゴDNAの製造は、Applied Biosystems Model 1380B等のような市販のDNA合成装置を用いて、また、Zon et al., 「Oligonucleotides and Analogues」:A Practical Approach, F. Eckstein, Ed., p. 87-108, Oxford University Press, Oxford, England、米国特許第5,151,510号に記載された方法を用いて、行うことができる。
【0085】
<製剤実施例1>
下記の処方に従って必要量の基剤成分を混合して溶解し、これにアンチセンスオリゴヌクレオチドを溶解させ、所定液量とし、ポアサイズ0.22μmのメンブランフィルターにより濾過して、静脈内投与用製剤とする。
アンチセンスオリゴヌクレオチド(注1)・・・500mg
塩化ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・・8.6g
塩化カリウム・・・・・・・・・・・・・・・・0.3g
塩化カルシウム・・・・・・・・・・・・・・・0.33g
注射用蒸留水・・・・・・・・・・・・・全量 1000ml
注1: 配列表の配列番号3に示された塩基配列よりなるホスホロチオエートオリゴDNA
【0086】
<製剤実施例2>
下記の処方に従って必要量の基剤成分を混合して溶解し、これにアンチセンスオリゴヌクレオチドを溶解させ、所定液量とし、ポアサイズ15nmのフィルター(PLANOVE 15:旭化成)により濾過して、静脈内投与用製剤とする。
アンチセンスオリゴヌクレオチド(注2)・・・100mg
塩化ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・・8.3g
塩化カリウム・・・・・・・・・・・・・・・・0.3g
塩化カルシウム・・・・・・・・・・・・・・・0.33g
リン酸水素ナトリウム・12水塩・・・・・・・・1.8g
1N塩酸・・・・・・・・・・・・・適量(pH7.4)
注射用蒸留水・・・・・・・・・・・・・全量 1000ml
注2: 配列表の配列番号4に示された塩基配列よりなるホスホロチオエートオリゴDNA
【0087】
<製剤実施例3>
下記の処方に従って必要量の基剤成分を混合して溶解し、これにアンチセンスオリゴヌクレオチドを溶解させ、所定液量とし、ポアサイズ35nmのフィルター(PLANOVE 35:旭化成)により濾過して、静脈内投与用製剤とする。
アンチセンスオリゴヌクレオチド(注3)・・・100mg
塩化ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・・8.3g
塩化カリウム・・・・・・・・・・・・・・・・0.3g
塩化カルシウム・・・・・・・・・・・・・・・0.33g
グルコース・・・・・・・・・・・・・・・・・0.4g
リン酸水素ナトリウム・12水塩・・・・・・・・1.8g
1N塩酸・・・・・・・・・・・・・適量(pH7.4)
注射用蒸留水・・・・・・・・・・・・・全量 1000ml
注3: 配列表の配列番号3に示された塩基配列よりなるホスホロチオエートオリゴDNA
【0088】
【配列表】
Claims (3)
- 次の(i)及び(ii)よりなる群より選ばれるものであるオリゴヌクレオチド:
(i) 配列番号3で示された塩基配列からなるDNA,及び
(ii) 配列番号3で示された塩基配列の部分配列であって,配列番号1で示された塩基配列に対して相補的な塩基配列を含んでなる配列からなるDNA。 - 次の(i)及び(ii)よりなる群より選ばれるものであるオリゴヌクレオチド:
(i) 配列番号3で示された塩基配列からなるホスホロチオエートDNA,及び
(ii) 配列番号3で示された塩基配列の部分配列であって,配列番号1で示された塩基配列に対して相補的な塩基配列を含んでなる配列からなるホスホロチオエートDNA。 - 配列表において配列番号1で示された塩基配列を有するRNA及び該塩基配列に対する相補的塩基配列に対して相補的である塩基配列を有するDNAよりなる群より選ばれるオリゴヌクレオチドであって,請求項1のオリゴヌクレオチドに対して相補的である塩基配列からなるものである,オリゴヌクレオチド。
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