JP4588922B2 - 黒鉛製放電加工用電極及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、黒鉛製放電加工用電極及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
放電加工とは、加工用の電極と被加工物間との間に高電圧をかけて放電現象を発生させることにより、被加工物の表面を削って目的とする形状にする金属加工法の一種をいう。そして、このような放電加工は、切削加工ができない硬質金属の加工や、高い精度が要求される金型部品の加工等に利用されている。
【0003】
ところで、放電加工装置においては、従来、黒鉛製の電極が用いられることが多い。放電加工を行うと電極側も消耗することから、加工部位には加工くずが発生する。そして、電極と被加工物との間に導電性の加工くずが存在するような場合、両者間で短絡が起こり、異常電流が局所的に集中して流れてしまう。このため、アーク放電が不安定化して加工特性が変動しやすくなり、加工部位に精密な表面形状を付与することができなくなる。
【0004】
上記の事情に鑑みて従来においては、加工くずを除去するために電極に穴を機械的に開け、その穴を介して加工液の噴出または吸引を行いながら、加工を実施している。また、このような穴は、通常、数個から十数個程度設けられるとともに、その直径は3mm程度に設定されるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような大きさの穴を多数設けると、吸引圧力の低下を来たし、加工くずの除去効率が低下するという問題があった。その反面、穴の数が少なくても、加工くずの除去効率の向上にはつながらない。
【0006】
また、3mmよりも小径の穴を開けるためには手間のかかる加工が必要となり、コスト性等の観点から実用的ではないという問題もあった。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、加工くずの除去効率に優れた黒鉛製放電加工用電極を提供することにある。
【0007】
本発明の第2の目的は、上記の黒鉛製放電加工用電極を簡単にかつ安価に製造することができる製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、先端側から基端側に向かって延びる直径2mm以下の加工液通過穴が面積比1%以下の割合で形成された黒鉛材からなる黒鉛製放電加工用電極の製造方法であって、炭素を含む原料粉末中に熱分解性繊維を一対の支持体間に張設することにより一軸方向に配向した状態で埋め込んだ成形体を作製した後、この成形体を焼成して黒鉛化するとともに一軸方向に配向した前記加工液通過穴を形成し、所望の形状にトリミングすることをその要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記熱分解性繊維は、弾性体からなる一対の支持体に両端を支持させた状態で張設されるとした。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記熱分解性繊維は、熱分解性材料からなる一対の支持体に両端を支持させた状態で張設されるとした。
【0012】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のいずれか1つに記載の黒鉛製放電加工用電極の製造方法で製造された黒鉛製放電加工用電極をその要旨とする。
以下、本発明の「作用」について説明する。
【0013】
請求項1に記載の発明によると、炭素を含む原料粉末中に熱分解性繊維を埋め込んだ成形体を焼成して黒鉛化した場合、焼成時の熱によって繊維が熱分解し、元あった繊維の形状に対応した穴が一軸方向に配向した状態で形成される。また、本発明の方法によれば、機械加工により同様の穴を形成する場合に比べ、簡単にかつ安価に小径の穴を得ることができる。先端側から基端側に向かって延びる加工液通過穴を介して加工液の噴出または吸引を行うことによって、加工液により加工部位から加工くずが除去される。本発明の場合、加工液通過穴が直径2mm以下という小径であることに加え、面積比1%以下の割合で形成されていることから、吸引圧力の低下を来たしにくく、加工くずの除去効率に優れたものとなる。
【0016】
請求項2に記載の発明によると、成形時に一対の支持体に熱分解性繊維の両端を支持させた状態で張設しておくことにより、一軸方向に配向した状態で繊維を成形体における所望部位に配置することができる。従って、この成形体を焼成して黒鉛化すれば、所望の穴を確実に形成することができる。しかも、この方法によれば、自身の剛性により直線形状を保持できない細い熱分解性繊維であっても、一軸方向に配向した状態で張設することが可能である。ゆえに、小径の穴の形成にも十分対応することができる。
【0017】
さらに、弾性体からなる支持体は成形時に圧縮変形することから、成形容器内に収容したとしても成形容器を傷付けにくい。
請求項3に記載の発明によると、成形時に一対の支持体に熱分解性繊維の両端を支持させた状態で張設しておくことにより、一軸方向に配向した状態で繊維を成形体における所望部位に配置することができる。従って、この成形体を焼成して黒鉛化すれば、所望の穴を確実に形成することができる。しかも、この方法によれば、自身の剛性により直線形状を保持できない細い熱分解性繊維であっても、一軸方向に配向した状態で張設することが可能である。ゆえに、小径の穴の形成にも十分対応することができる。
【0018】
さらに、熱分解性材料からなる支持体であれば、焼成時の熱により熱分解性繊維と同様に分解・焼失してしまう。このため、焼成後に支持体を除去する作業が不要になる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態の放電加工装置1を図1〜図3に基づき詳細に説明する。
【0020】
図1には放電加工装置1が示されている。この放電加工装置1を構成する支持台2上には、加工液3を溜めておくための槽4が支持されている。加工液3としては、例えば水や放電加工油などが使用される。槽4の内底面には加工テーブル5が固定されており、その加工テーブル5の上面には被加工物6が載置されている。なお、本実施形態における被加工物6は、例えばアルミニウム合金や鋼等のような、導電性を有する金属材料である。支持台2から上方に向かって突設された支持柱2aには、取付アーム7を介して送り機構8が取り付けられている。この送り機構8の下面から突出するロッド9の先端には、アタッチメント9aを介して放電加工用電極11が固定されている。ロッド9は図示しない制御コンピュータによる制御を受けて、例えばZ軸方向(図1の上下方向)に沿って駆動される。ロッド9は二次元的に駆動制御されてもよく、三次元的に駆動制御されてもよい。
【0021】
この放電加工装置1は、パルス電流を発生させる電源10を備えている。この電源10は、放電加工用電極11と被加工物6との間に電気的に接続されている。従って、電源10からパルス電流が供給されることにより、僅かな間隙を隔てて配置された放電加工用電極11と被加工物6との間にアーク放電が起こるようになっている。
【0022】
次に、放電加工用電極11の構成等について説明する。
本実施形態の放電加工用電極11は黒鉛材12からなる。図2において概略的に示すように、この黒鉛材12には複数の加工液通過穴13が貫通した状態で形成されている。加工液通過穴13の向く方向には規則性があり、放電加工用電極11の先端側から基端側に向って、即ち一軸方向に延びている。加工液通過穴13の一端は放電加工用電極11の上端面において開口し、他端は放電加工用電極11の下端面において開口している。また、加工液通過穴13は後述する熱分解性繊維23の形状に対応しており、等断面形状を呈している。
【0023】
黒鉛材12において加工液通過穴13は面積比で1%以下の割合で存在していることがよく、好ましくは0.01%〜0.1%の割合で存在していることがよい。1%を超える割合で存在する場合、たとえ小径の加工液通過穴13であったとしても、流路断面積が増えることになる結果、吸引圧力の低下を来たすおそれがある。よって、加工くずの除去効率の向上を図ることができなくなる可能性がある。
【0024】
なお、本明細書において「加工液通過穴13の面積比」とは、加工液通過穴13の延びる方向に対して直交する任意の面で黒鉛材12を切断した場合において、切断面全体の面積に占める穴部分の総面積の割合のことをいう。
【0025】
加工液通過穴13の直径は2mm以下であることがよく、特には0.1mm〜1.5mm程度であることがよい。直径が2mmを超えるような場合、たとえ加工液通過穴13の存在比が小であったとしても、流路断面積が増えることになる結果、吸引圧力の低下を来たすおそれがある。よって、加工くずの除去効率の向上を図ることができなくなる可能性がある。
【0026】
黒鉛材12の固有抵抗は1000μΩcm〜2000μΩcmであることがよく、特には1200μΩcm〜1700μΩcmであることがよい。固有抵抗が2000μΩcmを超えると、被加工物6と電極との間に異常放電が生じやすくなり、加工面に荒れが発生する。逆に、固有抵抗が1000μΩcm未満であると、異常放電は発生しにくくなる反面、含浸を繰り返し行ったり、黒鉛化温度を高くする必要があり、製造コストが高くなる可能性がある。
【0027】
黒鉛材12の密度は1.7g/cm3〜2.0g/cm3であることがよく、特には1.8g/cm3〜1.9g/cm3であることがよい。密度が1.7g/cm3未満であると、原料粉末21同士の結合力が弱くなり、熱伝導性及び機械的強度が低下してしまうおそれがある。逆に、密度を2.0g/cm3よりも大きくしようとした場合、含浸を繰り返し行わなければならず、製造コストが高くなるおそれがある。
【0028】
次に、本実施形態の放電加工用電極11の製造手順について説明する。
まず、コークス粉末にバインダとしてのピッチを混合し、これを加熱下で混練した後、これを粉砕することにより、原料粉末21を得る(原料粉末作製工程)。コークス粉末の平均粒子径は100μm以下であることが好ましい。ピッチはコークス粉末に対して重量比20%〜70%の範囲で混合されることが好ましい。ピッチの量が20重量%未満であると、原料粉末21同士の結合力が弱くなり、十分高い熱伝導性及び機械的強度を付与することができなくなるからである。なお、混練は200℃〜300℃の範囲で行われることが好ましい。
【0029】
続く成形工程においては、まず、成形容器22内に前記原料粉末21を充填する。その際、原料粉末21中に熱分解性繊維23を埋め込むようにする。なお、本実施形態では成形容器22として、図3に示されるような蓋付きのゴムバッグを用いている。この場合、熱分解性繊維23は、一対の支持体24に両端を支持させた状態で張設されることが好ましい。支持体24を用いれば、熱分解性繊維23を一軸方向に配向させた状態で成形体における所望部位に配置することができるからである。各熱分解性繊維23は互いに等間隔を隔てた状態で支持されていることがよい。
【0030】
支持体24は弾性体であることが好ましい。その理由は、弾性体であれば成形時に圧縮変形することから、成形容器22内に収容したとしても、突っ張ることがないからである。ゆえに、成形容器22を傷付けにくく、成形容器22の短命化を防止できるという利点がある。また、支持体24は熱分解性材料からなることが好ましい。その理由は、このような材料からなる支持体24であれば、焼成時の熱により熱分解性繊維23と同様に分解・焼失してしまうからである。このため、焼成後に支持体24を除去する作業が不要になり、工数が少なくて済むという利点がある。
【0031】
なお、本実施形態では、弾性体かつ熱分解性の材料である発泡スチロールを用いて支持体24を構成している。
本実施形態において前記熱分解性繊維23とは、成形体を焼成して黒鉛化した場合、焼成時の熱によって分解・焼失する繊維を全般的を指す。熱分解性繊維23としては具体的には、ナイロン、アクリル、ポリエステル、ビニロン等の合成高分子からなる繊維、綿糸や麻糸等の天然繊維がある。なお、黒鉛化温度に達するまでに分解・焼失するものであれば、ガラス繊維等の無機繊維や一部の金属繊維であっても選択可能である。なお、熱分解性繊維23としては、形成される加工液通過穴13のサイズに鑑みて、直径が2mm以下のものを使用することが好ましい。
【0032】
上記のように原料粉末21中に、支持体24及び熱分解性繊維23を埋め込み、この状態で成形圧を加えることにより、成形体を得る。ここで行われる成形法としては例えば押出成形、型押成形、CIP等があり、高い成形圧の設定が可能であるという点において特にCIPが有利である。比較的高密度の成形体を得ることができ、ひいては黒鉛材12の強度アップにつながるからである。
【0033】
次に、前記成形工程により得られた成形体を成形容器22から取り出した後、成形体を900℃〜1100℃で焼成することにより炭素化し(焼成工程)、さらにこれを2700℃〜2900℃で焼成することにより黒鉛化する(黒鉛化工程)。その結果、成形体25中の熱分解性繊維23が分解・焼失し、元あった熱分解性繊維23の形状に対応した加工液通過穴13が形成される。そして、このようにして得られた黒鉛材12における不必要な部分を削り取って、所望の形状にトリミングすれば、放電加工用電極11が完成する。
【0034】
さて、次に上記の放電加工用電極11を取り付けた放電加工装置1の使用方法について述べる。
まず、被加工物6に対して僅かな間隙を隔てた状態で放電加工用電極11を配置する。そして、放電加工用電極11と被加工物6との間にパルス電流を供給しながら放電加工を行い、被加工物6の上面を掘り進んでいく。その結果、放電加工用電極11の下面側の外形形状に対応した凹部が被加工物6側に形成される。このような加工を行う際においては、図示しない加工液吸引ポンプを常時駆動させておく。その結果、加工液通過穴13の下端から上端に向う加工液3の流れが生じ、加工部位にて発生した加工くずがその流れに乗って電極11の外部に排出される。それゆえ、電極11と被加工物6との間を常にクリーンな状態に保つことができる。
【0035】
【実施例及び比較例】
(実施例1のサンプル作製)
実施例1では、まず、平均粒子径20μmの石炭系コークス100重量部と、バインダーピッチ45重量部とを混合し、これを双腕型ニーダーを用いて200℃で3時間混練した。次に、その混練物を平均粒子径40μmになるように粉砕し、原料粉末21とした。
【0036】
次に、蓋付きのゴムバッグ内に前記原料粉末21を充填した。その際、一対の発泡スチロール板間に直径1.8mmのナイロン繊維を多数張設したものを、原料粉末21内に埋め込んだ。この状態で成形圧を0.8t/cm2に設定してCIPを行い、成形体を得た。なお、ここでは後に得られる加工液通過穴13の面積比が1%以下となるような条件を設定した。より具体的には、繊維張設密度が0.005本/cm2〜0.05本/cm2程度となるように設定した。
【0037】
次に、成形体を1000℃で焼成して炭素化した後、さらにこれを2800℃で焼成して黒鉛化した。その結果、加工液通過穴13を多数有する黒鉛材12を得た。その後、黒鉛材12のトリミングを行い、実施例1の放電加工用電極11を完成させた。
(実施例2のサンプル作製)
実施例2では、一対の発泡スチロール板間に直径1.2mmのナイロン繊維を多数張設したものを用いて、成形体を作製した。それ以外の条件については基本的に実施例1と同様とし、実施例2の放電加工用電極11を完成させた。ここでは繊維張設密度を0.01本/cm2〜0.1本/cm2程度に設定した。
(実施例3のサンプル作製)
実施例3では、一対の発泡スチロール板間に直径0.5mmのナイロン繊維を多数張設したものを用いて、成形体を作製した。それ以外の条件については基本的に実施例1と同様とし、実施例3の放電加工用電極11を完成させた。ここでは繊維張設密度を0.06本/cm2〜0.6本/cm2程度に設定した。
(実施例4のサンプル作製)
実施例4では、一対の発泡スチロール板間に直径1.5mmのアクリル繊維を多数張設したものを用いて、成形体を作製した。それ以外の条件については基本的に実施例1と同様とし、実施例4の放電加工用電極11を完成させた。ここでは繊維張設密度を0.007本/cm2〜0.07本/cm2程度に設定した。
(比較例のサンプル作製)
比較例では、まず、平均粒子径20μmの石炭系コークス100重量部と、40重部のバインダーピッチとを混合し、これを双腕型ニーダーを用いて200℃で3時間混練した。次に、その混練物を平均粒子径40μmになるように粉砕し、原料粉末21とした。
【0038】
次に、前記原料粉末21を用いて0.8t/cm2でラバープレスを行うことにより、成形体を得た。なお、原料粉末21中には熱分解性繊維23を埋め込まなかった。
【0039】
次に、成形体を1000℃で焼成して炭素化した後、さらにこれを2800℃で焼成して黒鉛化した。このようにして得られた黒鉛材12に対して機械的加工(ドリル加工)を行うことにより直径3mmの加工液通過穴13を形成した。その結果、比較例の放電加工用電極を完成させた。ここでは穴密度を0.007穴/cm2程度に設定した。
(評価試験及び評価結果)
各サンプルにつき、穴の直径、穴の面積比、固有抵抗、密度を測定した。
【0040】
その結果、実施例1〜4においては、それぞれ用いた熱分解性繊維23の直径に対応した大きさの加工液通過穴13が形成されていた。また、加工液通過穴13はほぼ一軸方向に配向していた。また、実施例1〜4のサンプルにおける固有抵抗は1400μΩcm〜1600μΩcm程度、密度は1.8g/cm3前後、加工液通過穴13の面積比は0.01%〜0.1%程度であった。比較的のサンプルについては、固有抵抗は1450μΩcm、密度は約1.8g/cm3であった。加工液通過穴13の面積比は0.05%程度であった。
【0041】
次に、上記5種のサンプルをアタッチメント6aに取り付け、実際に放電加工を連続して行い、加工の良否を調査した。
その結果、実施例1〜4では、加工くずが加工部位に残らず、すぐに除去されてしまうことが判明した。従って、電極11−被加工物6間での短絡による異常電流の局所的集中もなく、高精度な加工を行うことが可能であった。
【0042】
一方、比較例では、加工部位に加工くずが残りやすいことが判明した。従って、電極11−被加工物6間での短絡による異常電流の局所的集中がみられ、結果として高精度な加工を行うことが不可能であった。
【0043】
従って、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の黒鉛製放電加工用電極11は、先端側から基端側に向かって延びる直径2mm以下の加工液通過穴13が面積比1%以下の割合で形成された黒鉛材12からなる。従って、加工液通過穴13を介して加工液3のは吸引を行うことによって、加工液3により加工部位から加工くずを除去することができる。また、この放電加工用電極11の場合、加工液通過穴13が小径であることに加え、面積比1%以下の割合で形成されている。よって、吸引圧力の低下を来たしにくく、加工くずの除去効率に優れている。以上の結果、アーク放電が安定化して加工特性が変動しにくくなり、加工部位に精密な表面形状を付与することができる。
【0044】
(2)本実施形態の放電加工用電極11は、炭素を含む原料粉末21中に熱分解性繊維23を一軸方向に配向した状態で埋め込んだ成形体を作製した後、これを焼成して黒鉛化することにより製造される。従って、焼成時の熱によって熱分解性繊維23が熱分解し、元あった熱分解性繊維23の形状に対応した加工液通過穴13が一軸方向に配向した状態で形成される。また、本実施形態の製造方法によれば、機械加工により同様の穴13を形成する場合に比べ、簡単にかつ安価に多数の小径の穴13を得ることができる。
【0045】
(3)この放電加工用電極11を製造する場合、熱分解性繊維23を一対の支持体24に両端を支持させた状態で張設するようにしている。このため、一軸方向に配向した状態で熱分解性繊維23を成形体における所望部位に配置することができる。従って、この成形体を焼成して黒鉛化すれば、所望の穴13を確実に形成することができる。
【0046】
しかも、この製造方法によれば、自身の剛性により直線形状を保持できない細い熱分解性繊維23であっても、一軸方向に配向した状態で張設することが可能である。ゆえに、小径の穴13の形成にも十分対応することができる。
【0047】
(4)本実施形態では、支持体24として発泡スチロール板を用いている。ゆえに、成形容器22の傷付きの防止及び工数の低減を図ることができる。また、かかる樹脂材料は比較的安価なものであるため、放電加工用電極11の製造コストの高騰を避けることができる。
【0048】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 加工時においては上記実施形態のように加工液通過穴13を介して加工液3を吸引してもよいほか、加工液通過穴13を介して加工液3を噴出させてもよい。いずれの場合であっても加工くずを除去することが可能である。
【0049】
・ 支持体24は必ずしも実施形態のようなスチロール系の発泡樹脂からなるものでなくてもよく、例えばポリウレタン等のような他の発泡樹脂からなるものであっても構わない。勿論、発泡体ではない樹脂材料を支持体24として用いることも可能である。
【0050】
・ 支持体24は必ずしも実施形態のような板状物でなくてもよく、例えば棒状物などであってもよい。
・ 支持体24は熱分解しないものであっても構わない。
【0051】
・ 支持体24を1つのみ用いてそれに熱分解性繊維23を支持させて成形を行ったり、支持体24を全く用いずに熱分解性繊維23のみを埋め込んで成形を行うことも許容される。
【0052】
・ 本発明の黒鉛材12は上記実施形態のような放電加工用電極11用の形成材料として用いられるばかりでなく、例えばフィルタ、熱交換器、反応器等の形成材料として用いられても構わない。
【0053】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1) 請求項1,2,3のいずれか1つにおいて、前記熱分解性繊維は、黒鉛化温度よりも低い温度において分解・焼失する、合成高分子、天然繊維、無機繊維または金属繊維であること。従って、この技術的思想1に記載の発明によれば、連続した長い加工液通過穴を確実に形成することができる。
【0054】
(2) 請求項4において、固有抵抗が1000μΩcm〜2000μΩcmであること。従って、この技術的思想2に記載の発明によれば、耐久性及びコスト性に優れたものとすることができる。
【0055】
(3) 請求項2において、前記支持体は合成樹脂製の発泡材料からなること。従って、この技術的思想3に記載の発明によれば、成形容器の傷付きの防止及び工数の低減を図ることができるとともに、製造コストの高騰を避けることができる。
【0056】
(4) 先端側から基端側に向かって延びる直径2mm以下の加工液通過穴が面積比1%以下の割合で形成された黒鉛材からなる黒鉛製放電加工用電極の製造方法であって、平均粒子径100μm以下のコークス粉末にピッチを重量比20%〜70%の範囲で混合し、かつ200℃〜300℃の範囲で混練した後、これを粉砕することにより原料粉末を得る原料粉末作製工程と、前記原料粉末中に熱分解性繊維を一軸方向に配向した状態で埋め込んだ成形体を作製する成形工程と、前記成形体を焼成して炭素化・黒鉛化する焼成工程と、を含むことを特徴とする黒鉛製放電加工用電極の製造方法。
【0057】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1,2,3に記載の発明によれば、加工くずの除去効率に優れた黒鉛製放電加工用電極を簡単にかつ安価に製造することができる製造方法を提供することができる。
【0058】
請求項4に記載の発明によれば、加工くずの除去効率に優れた黒鉛製放電加工用電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における放電加工装置の概略図。
【図2】実施形態の装置に用いられる黒鉛製放電加工用電極の部分拡大断面斜視図。
【図3】実施形態の黒鉛製放電加工用電極の製造方法を説明するための概略断面図。
【符号の説明】
11…黒鉛製放電加工用電極、12…黒鉛材、13…穴としての加工液通過穴、21…原料粉末、23…熱分解性繊維、24…支持体。
Claims (4)
- 先端側から基端側に向かって延びる直径2mm以下の加工液通過穴が面積比1%以下の割合で形成された黒鉛材からなる黒鉛製放電加工用電極の製造方法であって、
炭素を含む原料粉末中に熱分解性繊維を一対の支持体間に張設することにより一軸方向に配向した状態で埋め込んだ成形体を作製した後、この成形体を焼成して黒鉛化するとともに一軸方向に配向した前記加工液通過穴を形成し、所望の形状にトリミングすることを特徴とする黒鉛製放電加工用電極の製造方法。 - 前記熱分解性繊維は、弾性体からなる一対の支持体に両端を支持させた状態で張設されることを特徴とする請求項1に記載の黒鉛製放電加工用電極の製造方法。
- 前記熱分解性繊維は、熱分解性材料からなる一対の支持体に両端を支持させた状態で張設されることを特徴とする請求項1または2に記載の黒鉛製放電加工用電極の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1つに記載の黒鉛製放電加工用電極の製造方法で製造された黒鉛製放電加工用電極。
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