JP4588179B2 - 多層配線基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層配線基板に関するものである。より詳しくは、本発明は、高周波化及び薄膜化が達成される多層配線基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
低比誘電率を有するセラミック材料を用いて配線基板を作製することにより配線基板のパターン電極を伝搬する信号の遅延時間を短くすることができるため、このようなセラミック材料は、従来、配線基板に使用されてきた。
【0003】
また、近年、通信の高周波化が図られ、また、コンピューターにおける高速演算性が求められているため、基板自体の高周波化、即ち、より低い比誘電率を有する基板が必要とされている。また、このような基板は、比誘電率の高い基板を用いて配線基板を作製するとパターン電極間の浮遊容量が大きくなってしまい、高密度配線をすることができないため、従来の基板に比べてより低い比誘電率を有することが求められている。
【0004】
しかしながら、従来のセラミック材料を用いた基板では、SiO2ガラスを用いてその比誘電率をε=3.8にまで減少させるのが限度であった。このため、さらに低比誘電率を有する基板として、低比誘電率セラミック材料で形成され、その内部に多数の空隙部が形成された多孔質層と、低比誘電率セラミック材料で形成され、前記多孔質層を被覆する緻密質層とを含む、低比誘電率基板が開発された(特開平2−152,294号公報)。しかしながら、基板として使用されるセラミック材料自体が堅く、重くかつ柔軟性に乏しいので、特開平2−152,294号公報で作製される基板は特にフレキシブル配線基板には不適であるという問題がある。
【0005】
ところで、可撓性(フレキシブル)配線回路基板としては、従来、ポリエステルフィルムやポリイミドフィルムに接着剤を介して銅箔を貼り合わせたものが知られている。また、近年、高周波領域への適用を目的として、信号配線間のクロストーク問題を解決し、信号伝送の高周波化が可能な配線基板が求められていた。しかしながら、従来品は比誘電率が高い(1MHzで約3.4〜4.0)ものが多く、従来配線基板に要求される低比誘電率、耐湿性、耐候性及び高ガスバリア性を兼ね備えた配線基板は存在しなかった。
【0006】
このような要求が満足できる配線基板を開発すべく、様々な低比誘電率シートが開発された。具体的には、ポリイミド樹脂による加工性及び寸法安定性の改善、ならびにフッ素樹脂による低比誘電率化を図ることを目的として、多孔質フッ素樹脂基材にポリイミド樹脂を含浸させた基材が;およびフッ素樹脂多孔質シートと金属層が、下記一般式(1):
【0007】
【化4】
【0008】
(ただし、Ar1は四価の脂肪族基または芳香族基を示し、Ar2は二価の芳香族基を示し、Ar1およびAr2の少なくとも一方の基にパーフルオロアルキレン基を含む)
で表わされる繰り返し単位を有する含フッ素ポリイミド層を介して積層されてなる可撓性プリント回路基板が報告された(特開平2−208,324号公報)。しかしながら、上記公報で開示されるポリイミド樹脂の比誘電率は3.0〜4.5であり、十分な低比誘電率化が達成されなかった。
【0009】
また、同様にして、従来から電気・電子機器、特にコンピューターに用いられる配線基板としては、エポキシ樹脂やフェノール樹脂を用いたガラスエポキシ積層板、紙フェノール樹脂積層板などもまた汎用されていたが、耐熱性や高温時における誘電特性の低下に問題があった。特に、近年の大型コンピューターの発達によって、コンピューターの信号伝達速度の高速化には基板の低比誘電率化が不可欠な課題となっている。このような状況下において、耐熱性や電気特性に優れるポリイミド樹脂やフッ素樹脂が注目され、ガラス繊維とポリイミド樹脂との複合基材や、ガラス繊維とフッ素樹脂との複合基材からなる配線基板などが提案されている。しかしながら、前者の基板では、依然として比誘電率が1MHzの周波数において4以上と高く、また、後者の基板では、比誘電率が2.5とかなり低い値を示しているものの、加工性や寸法安定性、特に多層配線基板を作製する際の多層化工程における高温条件下での寸法安定性が非常に悪いという問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、上記諸事情を鑑みてなされたものであり、低い比誘電率及び誘電損失を有し、かつフレキシブルプリント基板として対応できる多層配線基板を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、上記利点に加えて、優れた耐熱性及び耐湿性をも兼ね備える多層配線基板を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記諸目的を達成するために様々なポリマーについて鋭意検討した結果、本発明者らがこれまで研究を行ってきた含フッ素アリールエーテルケトン重合体の比誘電率が3.0〜3.8と従来絶縁層に使用されてきたポリイミド樹脂に比べて低く、誘電損失も少ない上、優れた耐熱性及び耐湿性を有することに着目し、このような重合体を基材、ならびに配線基板同士を厚み方向に接着させるための接着層、最上層の配線層表面を被覆する表面保護層、配線基板内にまたは配線基板表面上に埋め込まれるキャパシタ、インダクタ、抵抗層及び層間絶縁層等の機能付与層に用いることにより、十分な低比誘電率化ができることを発見した。
【0013】
本発明者らはまた、さらに上記諸目的を達成するために様々なポリマーについて鋭意検討した結果、本願発明者らがこれまで研究を行ってきたポリシアノアリールエーテルもまた、比誘電率が3.0〜3.8と従来絶縁層に使用されてきたポリイミド樹脂に比べて低く、誘電損失も少ない上、優れた耐熱性及び耐湿性を有することに着目し、このような重合体を基材、ならびに配線基板同士を厚み方向に接着させるための接着層、最上層の配線層表面を被覆する表面保護層、配線基板内にまたは配線基板表面上に埋め込まれるキャパシタ、インダクタ、抵抗層及び層間絶縁層等の機能付与層に用いることにより、十分な低比誘電率化ができることを発見した。
【0014】
上記知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、上記諸目的は、基材、配線層および機能付与層からなる多層配線基板において、該基材および機能付与層からなる群より選択される少なくとも一が、下記式(IV):
【0016】
【化5】
【0017】
{ただし、nは重合度を表し、mは1であり、R1は、下記式(V):
【0018】
【化6】
【0019】
(ただし、pは1であり、R 2 は、下記:
【0020】
【化7】
【0021】
からなる群より選択される2価の有機基を表わす。)で表わされる基である。}で示される含フッ素アリールエーテルケトン重合体を含むことを特徴とする多層配線基板によって達成される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
第一の概念によると、本発明は、基材、配線層および機能付与層からなる多層配線基板において、該基材および機能付与層からなる群より選択される少なくとも一が、下記式(IV):
【0024】
【化8】
【0025】
{ただし、nは重合度を表し、mは1であり、R1は、下記式(V):
【0026】
【化9】
【0027】
(ただし、pは1であり、R 2 は、下記:
【0028】
【化10】
【0029】
からなる群より選択される2価の有機基を表わす。)で表わされる基である。}で示される含フッ素アリールエーテルケトン重合体(以下、単に「含フッ素アリールエーテルケトン重合体」ともいう)を含むことを特徴とする多層配線基板を提供するものである。
【0030】
本発明の第一の概念による多層配線基板は、基材、配線層および機能付与層からなり、これらのうち、基材および機能付与層からなる群より選択される少なくとも一が上記したような特定の構造を有する含フッ素アリールエーテルケトン重合体を含むことを必須とする。
【0031】
本明細書において、「機能付与層」とは、多層配線基板を構成する部分のうち、基材及び配線層を除いた部分を指し、機能付与層としては、例えば、配線基板同士を厚み方向に接着させるための接着層、最上層の配線層表面を被覆する表面保護層、配線基板内にまたは配線基板表面上に埋め込まれるキャパシタ、インダクタ、抵抗層及び層間絶縁層からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらのうち、機能付与層は、本発明の多層配線基板の用途によって適宜選択され、特に制限されるものではなく、その例は下記に詳述される。
【0032】
すなわち、本発明の一実施態様としては、図1に示されるような、基材1、配線層2、ならびに基材及び配線層からなる配線基板同士を厚み方向に接着させるための接着層3(本明細書では、単に「接着層」ともいう)および最上層の配線層表面を被覆する表面保護層4(本明細書では、単に「表面保護膜」ともいう)を有する多層配線基板があり、この際、接着層3及び表面保護膜4が本発明に係る機能付与層に相当する。上記実施態様による多層配線基板では、基材、接着層及び表面保護膜からなる群より選ばれる少なくとも一種が上記したような特定の構造を有する含フッ素アリールエーテルケトン重合体を含む。この際、基材、接着層及び表面保護膜は、少なくともいずれか一が上記したような含フッ素アリールエーテルケトン重合体を含むものであればよいが、好ましくは、基材及び表面保護膜が、特に好ましくは、基材、接着層及び表面保護膜すべてが上記したような含フッ素アリールエーテルケトン重合体を含むものである。
【0033】
本発明において基材、接着層及び表面保護膜からなる群より選ばれる少なくとも一種を構成する含フッ素アリールエーテルケトン重合体は、下記式(I):
【0034】
【化11】
【0035】
で示される重合体である。
【0036】
上記式(I)で示される含フッ素アリールエーテルケトン重合体の各繰り返し単位は、下記式:
【0037】
【化12】
【0038】
で示されるp−テトラフルオロベンゾイレン基(本明細書では、単に「p−テトラフルオロベンゾイレン基」ともいう)及び下記式:
【0039】
【化13】
【0040】
で示されるオキシアルキレン基(本明細書では、単に「オキシアルキレン基」ともいう)がベンゼン環の任意の位置に(オルト位、メタ位またはパラ位に、特に好ましくはパラ位に)それぞれ結合し、ベンゼン環の任意の残位がXで置換されるまたは置換されない構造を有するものである。
【0041】
上記式(I)において、Xは、ハロゲン原子、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子及びヨウ素原子、好ましくはフッ素原子;低級アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル及びブチル等の炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、好ましくはメチル及びエチル、ならびにトリフルオロメチル等のこれらのハロゲン化アルキル基;低級アルコキシル基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ及びブトキシ等の炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシル基、好ましくはメトキシ及びエトキシ、ならびにトリフルオロメトキシ等のこれらのハロゲン化アルコキシル基などを表わす。これらのうち、フッ素原子が特にXとして好ましく使用される。上述したように、Xは、p−テトラフルオロベンゾイレン基及びオキシアルキレン基が結合しない残位の水素原子の代わりに置換される基であるが、ベンゼン環へのXの結合数、即ち、式(I)におけるqの値は、0〜4の整数である。
【0042】
また、上記式(I)において、mは0または1の整数であり、R1は、下記式(II):
【0043】
【化14】
【0044】
で表される基である。
【0045】
上記式(II)において、X’は、ハロゲン原子、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子及びヨウ素原子、好ましくはフッ素原子;低級アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル及びブチル等の炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、好ましくはメチル及びエチル、ならびにトリフルオロメチル等のこれらのハロゲン化アルキル基;低級アルコキシル基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ及びブトキシ等の炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシル基、好ましくはメトキシ及びエトキシ、ならびにトリフルオロメトキシ等のこれらのハロゲン化アルコキシル基などを表わす。これらのうち、フッ素原子が特にX’として好ましく使用される。また、X’のベンゼン環への結合数、即ち、式(II)におけるq’の値は、0〜4の整数である。
【0046】
これらのうち、R1は、下記式(V):
【0047】
【化15】
【0048】
で表される基であることが好ましい。
【0049】
また、上記式(II)及び(V)において、pは0または1の整数である。また、R2は、2価の有機基を表わすが、具体的には、メチレン(−CH2−)、エチレン(−CH2CH2−)、プロピレン(−CH2CH(CH3)−)、トリメチレン(−CH2CH2CH2−)、テトラメチレン(−CH2(CH2)2CH2−)、ペンタメチレン(−CH2(CH2)3CH2−)、ヘキサメチレン(−CH2(CH2)4CH2−)、プロペニレン(−CH2CH=CH−)、ビニレン(−CH=CH−)、1,2,3−プロパントリイル(−CH2CHCH2−)、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサメチレン(−CH2(CF2)4CH2−)、及び2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロオクタメチレン(−CH2(CF2)6CH2−)等の、炭素原子数が、通常、1〜12、好ましくは1〜6の直鎖若しくは分岐鎖の、飽和若しくは不飽和アルキレン基;式:−CH2−CH2−O−CH2−CH2−で表わされる基;ならびにo−、m−またはp−ベンゼンジメチレン、o−、m−またはp−ベンゼンテトラフルオロジメチレン、o−、m−またはp−フェニレン、2価のナフタレン、ビフェニル、アントラセン、o−、m−またはp−テルフェニル、フェナントレン、ジベンゾフラン、ビフェニルエーテル、ビフェニルスルホン、および下記5式:
【0050】
【化16】
【0051】
で表わされる芳香族基などの2価の芳香族基が挙げられる。なお、本発明による2価の有機基において、炭素原子に直接結合する水素がハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシル基で置換されていてもよい。これらのうち、2価の芳香族基がR2として好ましく、より好ましくは、下記7種:
【0052】
【化17】
【0053】
で示される芳香族基がR2として使用される。
【0054】
さらに、上記式(I)において、nは、重合度を表わし、具体的には、2〜5000、好ましくは5〜500である。さらに、本発明において、含フッ素アリールエーテルケトン重合体は、同一の繰り返し単位からなるものであってもまたは異なる繰り返し単位からなるものであってもよく、後者の場合には、その繰り返し単位はブロック状であったもまたはランダム状であってもよい。
【0055】
本発明において特に好ましく使用される含フッ素アリールエーテルケトン重合体は、下記式(IV):
【0056】
【化18】
【0057】
で示されるものである。なお、上記式(IV)において、R1及びmは、上記式(I)における定義と同様である。
【0058】
なお、本発明による含フッ素アリールエーテルケトン重合体の製造方法については以下に詳述するが、この記載から、式(I)で示される含フッ素アリールエーテルケトン重合体の末端は、p−テトラフルオロベンゾイレン基側がフッ素であり、オキシアルキレン基側が水素原子であると、即ち、式(I)で示される含フッ素アリールエーテルケトン重合体は、下記式(IX):
【0059】
【化19】
【0060】
で示される重合体、好ましくは下記式(X):
【0061】
【化20】
【0062】
で示される重合体であると考えられる。また、本発明で使用される式(I)の含フッ素アリールエーテルケトン重合体は架橋構造を有するものであってもよい。
【0063】
以下、本発明において好ましく使用される上記式(IV)で示される含フッ素アリールエーテルケトン重合体について以下に詳述するが、上記式(I)で示される含フッ素アリールエーテルケトン重合体は、例えば、置換した化合物を代わりに出発原料として使用する、または下記合成方法において各工程間若しくは全工程終了後の生成物の相当するベンゼン環に所望の置換基を公知の方法を用いて導入するなどによって、当業者により同様にして調製できる。
【0064】
上記式(IV)において、mが0の場合には、下記式(VI):
【0065】
【化21】
【0066】
ただし、nは重合度を表す、
で示される含フッ素アリールエーテルケトン重合体となる。
【0067】
また、上記式(IV)において、mが1でありかつpが0である場合には、下記式(VII):
【0068】
【化22】
【0069】
ただし、nは重合度を表す、
で示される含フッ素アリールエーテルケトン重合体となる。
【0070】
さらに、上記式(IV)において、mが1でありかつpが1である場合には、下記式(VIII):
【0071】
【化23】
【0072】
ただし、nは重合度を表し、およびR2は前記のとおりである、
で示される含フッ素アリールエーテルケトン重合体となる。なお、上記式(VIII)では、nは、重合度を表わすが、好ましくは、2〜2000、より好ましくは5〜200である。
【0073】
本発明による含フッ素アリールエーテルケトン重合体の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法、例えば、K. Kimura et al., Polymer Preprints, Vol. 39, No. 2, 1998に記載される方法が使用できる。
【0074】
より詳細に述べると、本発明による含フッ素アリールエーテルケトン重合体が上記式(VI)または上記式(VII)で示される際の、含フッ素アリールエーテルケトン重合体の製造方法を以下に説明する。
【0075】
まず、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルクロライドを、有機溶剤中でフリーデルクラフツ触媒の存在下で、例えば、メトキシベンゼンやエトキシベンゼン等のアルコキシベンゼンまたは4−メトキシジフェニルエーテルや4−エトキシジフェニルエーテル等の4−アルコキシジフェニルエーテルとフリーデルクラフツ反応させることにより、p−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)アルコキシベンゼンまたは4−アルコキシ−4’−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテルをそれぞれ得、この反応産物を脱アルキル化反応することよって、下記式:
【0076】
【化24】
【0077】
ただし、qは0または1の整数である、
で示される2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル化合物(以下、単に「2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル化合物」と称する)を得る。
【0078】
上記フリーデルクラフツ反応において、アルコキシベンゼンまたは4−アルコキシジフェニルエーテルの使用量は、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルクロライド1モル当たり、0.8〜1.2モル、好ましくは0.9〜1.1モルである。この際、アルコキシベンゼンまたは4−アルコキシジフェニルエーテルの使用量が0.8モル未満では、アルコキシベンゼンまたは4−アルコキシジフェニルエーテルに過剰に2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル基が導入されてしまい好ましくない。これに対して、アルコキシベンゼンまたは4−アルコキシジフェニルエーテルの使用量が1.2モルを越えると、未反応のアルコキシベンゼンまたは4−アルコキシジフェニルエーテルが多量に残り、生産性の面で好ましくない。
【0079】
上記フリーデルクラフツ反応において効果的に使用されるフリーデルクラフツ触媒としては、塩化アルミニウム、塩化アンチモン、塩化第二鉄、塩化第一鉄、四塩化チタン、三フッ化ホウ素、四塩化錫、塩化ビスマス、塩化亜鉛、塩化水銀及び硫酸等が挙げられる。また、フリーデルクラフツ触媒の使用量は、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルクロライド1モルに対して、0.5〜10モル、好ましくは1〜5モルである。
【0080】
上記フリーデルクラフツ反応において使用される有機溶剤は、酸クロライドと反応しないものでなければならない。このような有機溶剤としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、二硫化炭素及びニトロベンゼン等が挙げられる。この有機溶剤における2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルクロライドの濃度は、1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%である。反応は、反応系を撹拌状態に保ちながら、0〜150℃、好ましくは0〜100℃の温度で行なわれる。
【0081】
このような反応によって得られる生成物は、反応混合物に水を注加し、ジクロロメタン、ジクロロエタンまたは四塩化炭素等の抽出剤で抽出した後、有機層を抽出物から分離し、抽出剤を留去することにより得られる。さらに、この生成物を、必要であれば、メタノールまたはエタノールで再結晶化することによって、白色結晶として得てもよい。
【0082】
次に、脱アルキル化処理について、以下に説明する。すなわち、脱アルキル化反応は、酸、アルカリまたは有機金属試薬などを用いて行うことができる。試薬としては、例えば、臭化水素、ヨウ化水素、トリフルオロ酢酸、ピリジンの塩酸塩、濃塩酸、ヨウ化マグネシウムエーテラート(magnesium iodide etherate)、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、三塩化ホウ素、三ヨウ化ホウ素、水酸化カリウム及びグリニヤール試薬などが挙げられる。試薬の使用量は、p−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)アルコキシベンゼンまたは4−アルコキシ−4’−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル1モルに対して、0.1モル以上、好ましくは0.1〜30モルである。
【0083】
本発明において、脱アルキル化反応は、無溶媒下で行われてもあるいは溶媒中で行われてもよいが、反応効率や反応制御などを考慮すると、溶媒中で行われることが好ましい。
【0084】
本発明において、溶媒中で脱アルキル化反応を行う際に効果的に使用される溶媒としては、例えば、水、酢酸、無水酢酸、ベンゼン及びテトラヒドロフランなどが挙げられる。また、この溶媒中でのp−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)アルコキシベンゼンまたは4−アルコキシ−4’−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテルの濃度は、1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%である。反応は、0〜250℃、好ましくは50〜200℃の温度で行なわれる。
【0085】
さらに、このようにして得られた2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル化合物を、塩基性化合物の存在下で有機溶媒中で、30〜250℃、好ましくは50〜200℃の反応温度で加熱することによって、上記式(VI)および(VII)で示される含フッ素アリールエーテルケトン重合体が得られる。
【0086】
上記重合反応で使用される有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド及びメタノール等の極性溶媒やトルエンなどが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0087】
また、有機溶媒における2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル化合物の濃度は、5〜50質量%、好ましくは、10〜30質量%である。
【0088】
トルエンや他の同様の溶媒を反応の初期段階に使用する際には、フェノキシド生成の際に副生する水を、重合溶媒に関係なく、トルエンの共沸物として除去できる。
【0089】
本発明において使用される塩基性化合物は、重縮合反応によって生成するフッ化水素を捕集することにより重縮合反応を促進するよう作用する。このような塩基性化合物としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸リチウム及び水酸化カリウムが挙げられる。
【0090】
また、上記重合反応において、塩基性化合物の使用量は、使用される2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル化合物1モルに対して、0.5〜10モル、好ましくは0.5〜5モルである。
【0091】
重合反応終了後は、反応溶液より蒸発等により溶媒の除去を行ない、必要により留出物を洗浄することによって、所望の重合体が得られる。または、反応溶液を重合体の溶解度が低い溶媒中に加えることにより、重合体を固体として沈殿させ、沈殿物を濾過により分離することによって、重合体を得てもよい。
【0092】
次に、本発明による含フッ素アリールエーテルケトン重合体が上記式(VIII)で示される際の、含フッ素アリールエーテルケトン重合体の製造方法を以下に説明する。
【0093】
まず、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルクロライドを、有機溶剤中でフリーデルクラフツ触媒の存在下で、ジフェニルエーテルとフリーデルクラフツ反応させることよって、下記式:
【0094】
【化25】
【0095】
で示される4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル(以下、単に「4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル」または「BPDE」と称する)を得る。
【0096】
上記フリーデルクラフツ反応において、ジフェニルエーテルの使用量は、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルクロライド1モル当たり、0.4〜0.6モル、好ましくは0.45〜0.55モルである。すなわち、ジフェニルエーテルの使用量が0.4モル未満では、ジフェニルエーテルに過剰に2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル基が導入されてしまい好ましくない。これに対して、ジフェニルエーテルの使用量が0.6モルを越えると、未反応のジフェニルエーテルが多量に残り、生産性の面で好ましくない。
【0097】
上記フリーデルクラフツ反応において効果的に使用されるフリーデルクラフツ触媒としては、塩化アルミニウム、塩化アンチモン、塩化第二鉄、塩化第一鉄、四塩化チタン、三フッ化ホウ素、四塩化錫、塩化ビスマス、塩化亜鉛、塩化水銀及び硫酸等が挙げられる。また、フリーデルクラフツ触媒の使用量は、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルクロライド1モルに対して、0.5〜10モル、好ましくは1〜5モルである。
【0098】
上記フリーデルクラフツ反応において使用される有機溶剤としては、酸クロライドと反応しない溶剤が使用できる。このような有機溶剤としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、二硫化炭素及びニトロベンゼン等が挙げられる。この有機溶剤における2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルクロライドの濃度は、1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%である。また、反応は、反応系を撹拌状態に保ちながら、0〜150℃、好ましくは0〜100℃の温度で行なわれる。
【0099】
このような反応によって得られる生成物は、反応混合物に水を注加し、ジクロロメタン、ジクロロエタンまたは四塩化炭素等の抽出剤で抽出した後、有機層を抽出物から分離し、抽出剤を留去することにより得られる。さらに、この生成物を、必要であれば、メタノールまたはエタノールで再結晶化することによって、白色結晶として得てもよい。
【0100】
さらに、このようにして得られた4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル(BPDE)を、塩基性化合物の存在下で有機溶媒中で、下記式(XIV):
【0101】
【化26】
【0102】
ただし、R2は上記式(II)及び(V)における定義と同様である、
で示される2価のフェノール化合物と共に加熱することよって、上記式(VIII)で示される含フッ素アリールエーテルケトン重合体が得られる。
【0103】
上記反応において、反応温度は、20〜150℃、好ましくは50〜120℃である。この際、このように低温度で反応することで副反応を抑制し、重合体のゲル化を防止することができる。
【0104】
上記重合反応で使用される有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド及びメタノール等の極性溶媒やトルエンなどが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0105】
また、有機溶媒における4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテルの濃度は、5〜50質量%、好ましくは、10〜30質量%である。
【0106】
トルエンや他の同様の溶媒を反応の初期段階に使用する際には、フェノキシド生成の際に副生する水を、重合溶媒に関係なく、トルエンの共沸物として除去できる。
【0107】
本発明において使用される塩基性化合物は、重縮合反応によって生成するフッ化水素を捕集することにより重縮合反応を促進するよう作用し、さらにフェノール化合物をより反応性の高いアニオンに変える作用がある。このような塩基性化合物としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸リチウム及び水酸化カリウムが挙げられる。
【0108】
また、上記重合反応において、塩基性化合物の使用量は、使用される4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル1モルに対して、1〜20モル、好ましくは1〜10モルである。
【0109】
上記重合反応において使用される2価のフェノール化合物としては、上記式(XIV)で示されるものであれば特に制限されないが、例えば、2,2−ビス(4−ビドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−へキサフルオロプロパン(以下、「6FBA」という)、ビスフェノールA(以下、「BA」という)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(以下、「HF」という)、ビスフェノールF(以下、「BF」という)、ハイドロキノン(以下、「HQ」という)、レゾルシノール(以下、「RS」という)および2−(3−オキシフェニル)−2−(4’−オキシフェニル)プロパン(以下、「3,4’−BA」という)などが挙げられる。また、2価のフェノール化合物の使用量は、4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル1モルに対して、0.8〜1.2モル、好ましくは0.9〜1.1モルである。
【0110】
重合反応終了後は、反応溶液より蒸発等により溶媒の除去を行ない、必要により留出物を洗浄することによって、所望の重合体が得られる。または、反応溶液を重合体の溶解度が低い溶媒中に加えることにより、重合体を固体として沈殿させ、沈殿物を濾過により分離することによって、重合体を得てもよい。
【0111】
このようにして製造された含フッ素アリールエーテルケトン重合体は、比誘電率が3.0〜3.8と十分従来の樹脂に比べて低い比誘電率を有し、誘電損失が小さいため、導体層間の高周波インピーダンスを有意に向上でき、さらに製造される配線基板についてさらに高周波化が達成され、浮遊容量を抑制できるため基板を薄膜化することが可能である。さらに、本発明において使用される含フッ素アリールエーテルケトン重合体は、優れた耐熱性及び耐湿性を有するので、この含フッ素アリールエーテルケトン重合体を含む基材、接着層または表面保護膜を有する本発明の多層配線基板はフレキシブル配線基板として好適である。なお、本明細書において、ポリマーの比誘電率は、100MHzの周波数で、インピーダンス測定法によって測定した値である。
【0112】
また、本発明において基材、接着層及び表面保護膜からなる群より選ばれる少なくとも一種を構成するポリシアノアリールエーテルは、下記式(III):
【0113】
【化27】
【0114】
で示される重合体である。
【0115】
上記式(III)において、Y1は、置換基を有してもよい炭素原子数1〜12のアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル及び2−エチルヘキシル、好ましくはメチル、エチル、プロピル及びブチル;置換基を有してもよい炭素原子数1〜12のアルコキシル基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、フルフリルオキシ及びアリルオキシ、好ましくはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ及びブトキシ;置換基を有してもよい炭素原子数1〜12のアルキルアミノ基、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、プロピルアミノ、n−ブチルアミノ、sec−ブチルアミノ及びtert−ブチルアミノ、好ましくはメチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ及びジエチルアミノ;置換基を有してもよい炭素原子数1〜12のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ及びn−ブチルチオ、sec−ブチルチオ、tert−ブチルチオ及びiso−プロピルチオ、好ましくは、メチルチオ、エチルチオ及びプロピルチオ;置換基を有してもよい炭素原子数6〜20のアリール基、例えば、フェニル、ベンジル、フェネチル、o−,m−若しくはp−トリル、2,3−若しくは2,4−キシリル、メシチル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ビフェニリル、ベンズヒドリル、トリチル及びピレニル、好ましくはフェニルならびにo−,m−及びp−トリル;置換基を有してもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、ベンジルオキシ、ヒドロキシ安息香酸及びそのエステル類(例えば、メチルエステル、エチルエステル、メトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、フルフリルエステル及びフェニルエステルなど;以下、同様)、ナフトキシ、o−,m−若しくはp−メチルフェノキシ、o−,m−若しくはp−フェニルフェノキシ、フェニルエチニルフェノキシ、ならびにクレソチン酸及びそのエステル類、好ましくはフェノキシ及びナフトキシ;置換基を有してもよい炭素原子数6〜20のアリールアミノ基、例えば、アニリノ、o−,m−若しくはp−トルイジノ、1,2−若しくは1,3−キシリジノ、o−,m−若しくはp−メトキシアニリノならびにアントラニル酸及びそのエステル類、好ましくはアニリノ及びo−,m−若しくはp−トルイジノ;または置換基を有してもよい炭素原子数6〜20のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ、フェニルメタンチオ、o−,m−若しくはp−トリルチオならびにチオサリチル酸及びそのエステル類、好ましくはフェニルチオを表わす。
これらのうち、置換基を有してもよいアリールオキシ基、アリールチオ基およびアリールアミノ基が好ましく、さらに、フェノキシ、フェニルチオ及びアニリノがY1として最も好ましい。
【0116】
また、上記式(III)において、Y1が置換基を有するアルキル基、アルコキシル基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアミノ基またはアリールチオ基を表わす際に使用できる置換基としては、目的物の所望の特性に応じて適宜選択でき、特に制限されるものではないが、例えば、炭素原子数1〜12のアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシル;ハロゲン原子、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素;シアノ基、ニトロ基ならびにカルボキシエステル基などが挙げられる。これらのうち、好ましくはメチル及びカルボキシエステル基である。
【0117】
さらに、上記式(III)において、Y2は、2価の有機基を表わし、例えば、下記式:
【0118】
【化28】
【0119】
これらのうち、下記式:
【0120】
【化29】
【0121】
で示される2価の有機基がY2として好ましく、特に下記式:
【0122】
【化30】
【0123】
で示される2価の有機基がY2として好ましい。
【0124】
さらに、上記式(III)において、zは重合度を表わし、具体的には、5〜1000、好ましくは10〜500である。なお、本発明のポリシアノアリールエーテルは、上記式(III)の構成単位の同一の繰り返し単位からなるものであったもまたは異なる繰り返し単位からなるものであってもよく、後者の場合には、その繰り返し単位はブロック状であったもまたはランダム状であってもよい。
【0125】
また、本発明のポリシアノアリールエーテルの製造方法については以下に詳述するが、この記載から、式(III)で示されるポリシアノアリールエーテルの末端は、フッ素原子を含むベンゼン環側がフッ素であり、酸素原子(Y2)側が水素原子であると、即ち、式(III)で示されるポリシアノアリールエーテルは下記式(XI):
【0126】
【化31】
【0127】
で示されるポリマーであると考えられる。また、本発明で使用される式(III)のポリシアノアリールエーテルは架橋構造を有するものであってもよい。
【0128】
本発明のポリシアノアリールエーテルは、上記含フッ素アリールエーテルケトンに関して述べたのと同様にして製造できるが、具体的には、下記式(XII):
【0129】
【化32】
【0130】
で示されるテトラフルオロベンゾニトリル誘導体を、下記式(XIII):
【0131】
【化33】
【0132】
で示されるジヒドロキシ化合物と塩基性触媒の存在下で重合することによって、製造される。この際、上記式(XII)におけるY1及び上記式(XIII)におけるY2の定義は、上記式(III)におけるY1及びY2の定義と同様である。
【0133】
本発明において、式(XII)のテトラフルオロベンゾニトリル誘導体は、公知の方法によって製造できるが、例えば、式:Y1H[式中、Y1は上記式(III)における定義と同様である]で示される化合物を有機溶媒中で塩基性化合物の存在下で2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾニトリル(本明細書中、「PFBN」とも称する)と反応させることによって得られる。
【0134】
上記反応において、式:Y1Hで示される化合物およびPFBNは、それぞれ、単一の化合物として使用されてもあるいは2種以上の式:Y1Hで示される化合物およびPFBNからなる群より選択される化合物の混合物の形態で使用されてもよいが、精製工程やポリマーの物性などを考慮すると、単一の化合物として使用されることが好ましい。なお、後者の場合には、使用される複数または単一のPFBNのモル数の合計が、複数または単一の式:Y1Hで示される化合物のモル数の合計に等しいまたはほぼ等しいことが好ましいが、具体的には、式:Y1Hで示される化合物の使用量が、PFBN 1モルに対して、好ましくは0.1〜5モル、より好ましくは0.5〜2モルである。
【0135】
上記反応において使用できる有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、ニトロメタン及びメタノール等の極性溶媒;ならびにこれらの極性溶媒とトルエンやキシレン等の非極性溶媒との混合溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、有機溶媒におけるPFBNの濃度は、1〜40質量%、好ましくは、5〜30質量%である。この際、トルエンや他の同様の溶媒を反応の初期段階に使用する際には、反応中に副生する水を、重合溶媒に関係なく、トルエンの共沸物として除去できる。
【0136】
また、上記反応において使用される塩基性化合物は、反応を促進させるために生成するフッ化水素を捕集するよう作用するものであることが望ましい。このような塩基性化合物としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及びフッ化カリウムなどが挙げられる。この際、塩基性化合物の使用量は、使用されるPFBN 1モルに対して、0.1〜5モル、好ましくは0.5〜2モルである。
【0137】
さらに、上記反応における反応条件は、Y1Hで示される化合物とPFBNとの反応が効率よく進行するものであれば特に制限されるものではないが、例えば、反応は、好ましくは反応系を撹拌状態に保ちながら、通常、20〜180℃、好ましくは40〜160℃の温度で行なわれる。また、反応時間は、他の反応条件や使用する原料などにより異なるが、通常、1〜48時間、好ましくは2〜24時間である。さらに、反応は、常圧下または減圧下いずれで行ってもよいが、設備面から、常圧下で行うことが望ましい。このような反応によって得られる生成物は、反応混合物に蒸留水を注加し、ジクロロメタン、ジクロロエタンまたは四塩化炭素等の抽出剤で抽出した後、有機層を抽出物から分離し、抽出剤を留去することにより得られる。さらに、この生成物を、必要であれば、メタノールまたはエタノール等で再結晶化することによって、結晶として得てもよい。
【0138】
このようにして合成された式(XII)のテトラフルオロベンゾニトリル誘導体は、上述したように、さらに式(XIII)のジヒドロキシ化合物と塩基性触媒の存在下で重合に供されることによって、目的の式(III)のポリシアノアリールエーテルが製造される。この際、式(XII)のテトラフルオロベンゾニトリル誘導体は、上記したような抽出、再結晶化、クロマトグラフィー及び蒸留等の精製工程をへた後使用されてもまたは精製工程を行なわずにそのまま使用してもよいが、次工程の収率などを考慮すると精製された後使用することが好ましい。
【0139】
上記反応において使用される式(XIII)のジヒドロキシ化合物は、目的産物である式(III)のポリシアノアリールエーテルの構造に従って選択される。本発明において好ましく使用される式(XIII)のジヒドロキシ化合物としては、以下にしめされるように、2,2−ビス(4−ビドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−へキサフルオロプロパン(以下、「6FBA」という)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(以下、「DPE」という)、ビスフェノールF(以下、「BF」という)、ハイドロキノン(以下、「HQ」という)、ビスフェノールA(以下、「BA」という)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(以下、「HF」という)、フェノールフタレイン(以下、「PP」という)、1,4−ビス(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(以下、「CHB」という)、および4,4’−ジヒドロキシビフェニル(以下、「BP」という)が挙げられる。
【0140】
【化34】
【0141】
上記反応において、式(XII)のテトラフルオロベンゾニトリル誘導体および式(XIII)のジヒドロキシ化合物は、それぞれ、単一の化合物として使用されてもあるいは2種以上の式(XII)のテトラフルオロベンゾニトリル誘導体および式(XIII)のジヒドロキシ化合物からなる群より選択される化合物の混合物の形態で使用されてもよいが、精製工程やポリマーの物性などを考慮すると、単一の化合物として使用されることが好ましい。なお、後者の場合には、使用される複数または単一の式(XII)のテトラフルオロベンゾニトリル誘導体のモル数の合計が、複数または単一の式(XIII)のジヒドロキシ化合物のモル数の合計に等しいまたはほぼ等しいことが好ましいが、具体的には、式(XIII)のジヒドロキシ化合物の使用量は、式(XII)のテトラフルオロベンゾニトリル誘導体1モルに対して、0.1〜5モル、好ましくは1〜2モルである。
【0142】
上記反応は、有機溶剤中で行なわれてまたは無溶剤下で行なわれてもよいが、有機溶剤中に行われることが好ましい。前者の場合、使用できる有機溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、ニトロメタン及びメタノール等の極性溶媒;ならびにこれらの極性溶媒とトルエンやキシレン等の非極性溶媒との混合溶媒などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独でまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、有機溶剤における式(XII)のテトラフルオロベンゾニトリル誘導体の濃度は、1〜50質量%、好ましくは、5〜20質量%である。この際、トルエンや他の同様の溶剤を反応の初期段階に使用する際には、反応中に副生する水を、重合溶剤に関係なく、トルエンの共沸物として除去できる。
【0143】
また、本発明において、式(XII)のテトラフルオロベンゾニトリル誘導体および式(XIII)のジヒドロキシ化合物の反応は、塩基性触媒の存在下で行なうことを必須とする。塩基性触媒は、式(XIII)のジヒドロキシ化合物による重縮合反応を促進するよう、式(XIII)のジヒドロキシ化合物をより反応性の高いアニオンに変える作用を有するものが好ましく、具体的には、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムまたはフッ化カリウムなどが挙げられる。また、塩基性触媒の使用量は、式(XII)のテトラフルオロベンゾニトリル誘導体と式(XIII)のジヒドロキシ化合物との反応が良好に進行できる量であれば特に制限されるものではないが、式(XII)のテトラフルオロベンゾニトリル誘導体 1モルに対して、通常、0.1〜5モル、好ましくは0.5〜2モルである。
【0144】
さらに、上記重合反応における反応条件は、式(XII)のテトラフルオロベンゾニトリル誘導体と式(XIII)のジヒドロキシ化合物との反応が効率よく進行するものであれば特に制限されるものではないが、例えば、重合温度は、好ましくは200℃以下、より好ましくは20〜150℃、最も好ましくは40〜100℃である。このように低温度で反応することで、特別の設備を必要とすることなく、副反応を抑制し、ポリマーのゲル化を防止することができる。また、重合時間は、他の反応条件や使用する原料などにより異なるが、好ましくは、1〜48時間、より好ましくは2〜24時間である。さらに、重合反応は、常圧下または減圧下いずれで行ってもよいが、設備面から、常圧下で行うことが望ましい。
【0145】
上記重合反応終了後は、反応溶液より蒸発等により溶媒の除去を行ない、必要により留出物を洗浄することによって、所望のポリマーが得られる。または、反応溶液をポリマーの溶解度が低い溶媒中に加えることにより、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物を濾過により分離することによって、ポリマーを得てもよい。
【0146】
このようにして製造されたポリシアノアリールエーテルは、比誘電率が3.0〜3.8と十分従来の樹脂に比べて低い比誘電率を有し、誘電損失が小さいため、導体層間の高周波インピーダンスを有意に向上でき、さらに製造される配線基板についてさらに高周波化が達成され、浮遊容量を抑制できるため基板を薄膜化することが可能である。さらに、本発明において使用されるポリシアノアリールエーテルは、優れた耐熱性及び耐湿性を有するので、このポリシアノアリールエーテルを含む基材、接着層または表面保護膜を有する本発明の多層配線基板はフレキシブル配線基板として好適である。
【0147】
また、本発明において、基材、接着層及び表面保護膜からなる群より選ばれる少なくとも一種は、上記したような特定の構造を有する含フッ素アリールエーテルケトン重合体および/またはポリシアノアリールエーテルを含むことを必須とし、このようにして製造された含フッ素アリールエーテルケトン重合体は、低い比誘電率及び誘電損失、ならびに優れた耐熱性及び耐湿性を兼ね備えているが、これらの特性が不十分であるあるいは他の特性が必要である場合には、これらに加えて、所望の低比誘電率、低誘電損失、耐熱性や耐湿性等に悪影響を及ぼしたりせず、本発明の範疇を逸脱しない範囲において、さらに他の成分を含んでいてもよい。さらなる成分としては、例えば、ポリ尿素、ポリウレタン、及びポリアゾメチン;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)及びポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等のフッ素樹脂;ならびに分散剤や溶剤、無機充填材等の各種添加剤が挙げられる。基材、接着層及び表面保護膜からなる群より選ばれる少なくとも一種がさらなる成分を含む際のさらなる成分の含量は、全原料に対して、0〜49質量%である。
【0148】
本発明の多層配線基板の製造方法について、以下に簡単に説明した後、各工程についてさらに詳述する。(1)まず、基材を形成し;(2)この基材の片面に配線層を形成し;(3)上記(1)及び(2)の工程を繰り返し、別途目的とする多層配線基板の層数より1層少ない分だけ、配線基板(基材及び配線層がそれぞれ1層ずつから構成される)を作製し;さらに、(4)上記(3)の工程で作製された各配線基板を、図1で示される構造になるように、厚み方向に接着剤(接着層)を介して貼り合わせ;さらに、(5)最上層の配線層上に表面保護膜を形成する。なお、上記態様においては、基材の片面のみに配線層を形成したが、基材の両面に配線層を形成してもよい。すなわち、基材の両面に配線層を形成する場合には、以下のような態様となる。(a)まず、基材を形成し;(b)この基材の両面に配線層を形成し;(c)上記(a)と同様にして形成された基材の片面に配線層を形成した配線基板(基材及び配線層がそれぞれ1層ずつから構成される)を、別途目的とする多層配線基板の層数より2層少ない分だけ、作製し;さらに、(d)上記(b)で形成された双方の配線層上に、上記(c)の工程で作製された各配線基板を厚み方向に接着剤(接着層)を介して貼り合わせ;さらに、(e)最上層の各配線層上に表面保護膜を形成する。
【0149】
本発明において、基材の形成方法としては、特に制限されず公知の方法が使用される。基材の形成方法としては、基材が本発明による含フッ素アリールエーテルケトン重合体を含む場合には、例えば、切削法、押出法、カレンダー法、溶液流延法、インフレーション法及びディスパージョン法などの方法が挙げられる。また、基材が本発明による含フッ素アリールエーテルケトン重合体以外の樹脂で構成される場合には、例えば、ガラス、シリコン、又はアルミナ等のセラミックで形成される基材、PMMA及びエポキシ樹脂等のポリマーフィルムなどの素材、好ましくは低比誘電率の素材を、公知の方法、例えば、溶液流延法、カレンダー法及び押出法などの方法を用いて、板状、シート状あるいはフィルム状に成形することによって製造される。この際、基材の厚みは、公知の基材と同様の厚みを使用でき、目的とする特性及び用途ならびにその材質などに合わせて適宜選択することができる。
【0150】
また、本発明において、表面保護膜や接着層の形成方法としては、特に制限されず公知の方法が使用される。表面保護膜や接着層の形成方法としては、表面保護膜や接着層が本発明による含フッ素アリールエーテルケトン重合体を含む場合には、例えば、キャスティング(流延法)、スピンコーティング(回転塗布法)、ロールコーティング、スプレイコーティング、バーコーティング、フレキソ印刷、およびディップコーティングなどの方法が挙げられる。これらの方法のうち、薄膜化や凹凸の少ない平滑な表面保護膜の形成が可能である点などを考慮すると、スピンコーティングやバーコーティングが好ましく使用される。また、表面保護膜や接着層が本発明による含フッ素アリールエーテルケトン重合体および/またはポリシアノアリールエーテル以外の樹脂を含む場合には、例えば、キャスティング、スピンコーティング、ロールコーティング、スプレイコーティング、バーコーティング、フレキソ印刷、およびディップコーティングなどの方法が挙げられる。なお、本発明において、表面保護膜や接着層が本発明による含フッ素アリールエーテルケトン重合体以外の樹脂を含む場合に使用される他の樹脂としては、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレ共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)及びポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などが挙げられる。この際、表面保護膜や接着層の厚みは、目的とする特性及び用途ならびにその材質などに合わせて適宜選択することができるが、表面保護膜の厚みが、通常、1〜100μm、好ましくは10〜50μmであり、また、接着層の厚みが、通常、10〜100μmである。
【0151】
本発明において、配線層(導体層)は、公知の方法と同様にして、例えば、クロム(Cr)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、銀(Ag)及び金(Au)等の材料を真空蒸着、メッキ、スパッタ、エッチング、サブトラクティブ法(subtractive process)及びスクリーン印刷法などにより製膜することによって、上記基材上に形成される。この際、配線層(導体層)は、パターン状であってもよく、また、基材の片面または両面のいずれに形成されてもよい。
【0152】
上記態様では、表面保護膜や接着層の形成に、本発明による含フッ素アリールエーテルケトン重合体に加えて、必要であれば、公知の添加剤を使用してもよい。
【0153】
このようにして製造された本発明の多層配線基板は、低比誘電率、低誘電損失、高耐熱性及び高耐湿性の含フッ素アリールエーテルケトン重合体を用いて基材、接着層及び表面保護膜からなる群より選ばれる少なくとも一種が形成されているので、導体層間の高周波インピーダンスを有意に向上でき、高周波化及び薄膜化が可能である。
【0154】
また、本発明の多層配線基板は、リード・フレームを用いたパッケージによる多層配線基板の形態であっても、BGAによるIVH型の多層配線基板の形態であっても、CSP(chip size package)による薄膜技術を用いた薄膜型ビルドアップ基板の形態であっても、全層ビア型ビルドアップ基板の形態であっても、ウェーハ・レベルCSPやベア・チップによる薄膜型と厚膜型を組み合わせたビルドアップ基板の形態であっても、あるいはモジュール向けの微細パターンのビルドアップ基板を従来基板上に搭載した基板の形態であってもよい。
【0155】
次に、本発明の他の実施態様としては図2及び3に示されるような、基材11、配線層12、ならびに該配線層間に設けられた層間絶縁層13(本明細書では、単に「層間絶縁層」または「絶縁層」ともいう)および最上層の配線層表面を被覆する表面保護膜14を有する多層配線基板があり、この際、層間絶縁層13及び表面保護膜14が本発明に係る機能付与層に相当する。上記実施態様による多層配線基板では、基材11、層間絶縁層13及び表面保護膜14からなる群より選ばれる少なくとも一が上記した特定の含フッ素アリールエーテルケトン重合体を含む。
【0156】
上記他の実施態様において使用される含フッ素アリールエーテルケトン重合体、ポリシアノアリールエーテルおよび他の成分などに関しては、上記第一の実施態様におけるのと同様の定義である。
【0157】
ここで、他の実施態様による多層配線基板の製造方法について、以下に簡単に説明する。1)まず、基材を形成し;2)この基材の片面にまず、上記含フッ素アリールエーテルケトン重合体を用いて絶縁層(プリプレグ)を形成し;3)このようにして形成された絶縁層に炭酸ガス・レーザ光、エキシマ・レーザー光やエッチングなどでビアになる孔をあけ;4)この孔に銅粉、エポキシ樹脂、硬化剤からなる導電性ペーストを充填し;5)これを銅箔等の導体箔で挟んで熱プレス機で熱圧着し;6)導体箔をエッチングし、銅配線をパターニングし(配線層を形成し);さらに7)上記2)〜4)の工程を経た孔を形成した絶縁層と導体箔を重ねて、目的とする配線層数の分だけ上記5)及び6)の工程を繰り返し;さらに、8)最上層の配線層を含む絶縁層上に表面保護膜を形成する。なお、上記態様においては、基材の片面のみに配線層を形成したが、図2や図3に示されるように、基材の両面に上記と同様にして配線層を形成してもよい。
【0158】
または、(i)まず、銅箔上に銀ペーストで、ビアを形成する位置に三角錐状のバンプを印刷し;(ii)バンプを付けた銅箔と絶縁層になるプリプレグを重ねて圧着することにより、バンプがプリプレグを貫通させ(孔を形成し);(iii)銅箔をパターニングし;(iv)さらに、バンプの付いた(孔が形成された)銅箔とプリプレグ(絶縁層)を重ねて、積層する層数の分だけ、(ii)及び(iii)の工程を繰り返し;さらに、(v)最上層の配線層を含む絶縁層上に表面保護膜を形成することによって、本発明の多層配線基板をビルドアップ基板として製造してもよい。なお、本実施態様においても、配線層は、基材の片面のみに形成されてもあるいは基材の両面に形成されてもよい。
【0159】
または、配線層を有する基材を従来公知の方法による多層に形成した後、これら基板間の空隙を含フッ素アリールエーテルケトン重合体で真空中で埋めた後、最上層の配線層を含む絶縁層上に表面保護膜を形成することによって、本発明の多層配線基板を製造してもよい。なお、本実施態様においても、配線層は、基材の片面のみに形成されてもあるいは基材の両面に形成されてもよい。
【0160】
本発明において、層間絶縁層は、特に制限されず公知の方法が使用される。層間絶縁層の形成方法としては、層間絶縁層が本発明による含フッ素アリールエーテルケトン重合体を含む場合には、例えば、キャスティング、スピンコーティング、ロールコーティング、スプレイコーティング、バーコーティング、フレキソ印刷、およびディップコーティングなどの方法が挙げられる。これらの方法のうち、薄膜化や凹凸の少ない平滑な表面保護膜の形成が可能である点などを考慮すると、スピンコーティング、ディップコーティングが好ましく使用される。また、層間絶縁層が本発明による含フッ素アリールエーテルケトン重合体以外の樹脂を含む場合には、例えば、キャスティング、スピンコーティング、ロールコーティング、スプレイコーティング、バーコーティング、フレキソ印刷、及びディップコーティングなどの方法が挙げられる。なお、本発明において、層間絶縁層が本発明による含フッ素アリールエーテルケトン重合体以外の樹脂を含む場合に使用される他の樹脂としては、ポリアミド、ポリアミドイミド、PTFE、FEP及びPFAなどが挙げられる。この際、層間絶縁層の厚みは、目的とする特性及び用途ならびにその材質などに合わせて適宜選択することができるが、通常、1〜100μmである。このようにして形成された多層配線基板は、一般に「ビルドアップ基板」と呼ばれている。
【0161】
また、このようにして製造された本発明の多層配線基板は、低比誘電率、低誘電損失、高耐熱性及び高耐湿性の含フッ素アリールエーテルケトン重合体を用いて基材、層間絶縁層及び表面保護膜の少なくとも一が形成されているので、導体層間の高周波インピーダンスを有意に向上でき、高周波化及び薄膜化が可能である。
【0162】
また、本発明の多層配線基板は、リード・フレームを用いたパッケージによる多層配線基板の形態であっても、BGAによるIVH型の多層配線基板の形態であっても、CSP(chip size package)による薄膜技術を用いた薄膜型ビルドアップ基板の形態であっても、全層ビア型ビルドアップ基板の形態であっても、ウェーハ・レベルCSPやベア・チップによる薄膜型と厚膜型を組み合わせたビルドアップ基板の形態であっても、あるいはモジュール向けの微細パターンのビルドアップ基板を従来基板上に搭載した基板の形態であってもよい。
【0163】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
【0164】
実施例1
本実施例を図4を参照しながら以下に説明する。まず、基材31としてのセラミック基板上に、厚さ20μmの銅パターンをスクリーン印刷法により成膜した後、パターニングすることにより、配線層32を基材31上に形成した[図4、(b)]。次に、トルエンを溶媒として重合度をnとした場合に下記式で示される含フッ素アリールエーテルケトン重合体を20質量%含む溶液をスピンコートにて配線層32上にコートし、70℃、1時間乾燥することで絶縁層33を形成した後、エッチングによりビアホール34を形成した。上記配線層の形成工程及び絶縁層の形成工程を、上記と同様にして4回繰り返すことによって、5層の配線図がその厚み方向に絶縁層を介して積層したビルドアップ多層プリント基板を製造した。なお、本実施例において、最上層に形成された絶縁層は本発明による表面保護膜に相当するものである。
【0165】
【化35】
【0166】
実施例2
まず、下記式で表される含フッ素アリールエーテルケトン重合体をトルエンに20質量%の濃度で溶解した溶液を溶液流延法にてフィルム加工し、70℃で2時間乾燥することで厚さ10μmのフィルムを得た。スパッタ法にてフィルム両面に銅にて縦10mm、横10mm、厚さ10μmの平行平板電極を作成し、比誘電率測定用の試料とした。
【0167】
実施例3
実施例2で作成した試料をインピーダンスアナライザー(HP4294A)で比誘電率を測定した。その結果、比誘電率は、ε=3.1(10MHz)であった。
【0168】
【発明の効果】
上述したように、本願発明の多層配線基板は、基材、配線層および機能付与層からなり、かつ材および機能付与層からなる群より選択される少なくとも一が含フッ素アリールエーテルケトン重合体を含むことを特徴とするものである。したがって、本願発明による含フッ素アリールエーテルケトン重合体は低比誘電率、低誘電損失、高耐熱性及び高耐候性を有するので、この含フッ素アリールエーテルケトン重合体の基材や機能付与層を用いて多層配線基板を作製することにより、従来の基板を用いたものに比べてパターン電極を伝搬する信号の遅延時間を短くすることができ、信号伝達速度を大きくすることができる。
【0169】
また、低比誘電率の含フッ素アリールエーテルケトン重合体の機能付与層を用いて多層配線基板を作製することにより、パターン電極間の浮遊容量を有意に抑制することができ、配線密度を高めることができるので、より小型化/薄型化された高密度実装可能な多層配線基板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、基材、配線層、接着層および表面保護層を含む多層配線基板の断面図を示すものである。
【図2】は、基材、配線層、接着層、表面保護層および層間絶縁層を含む多層配線基板の断面図を示すものである。
【図3】は、層間絶縁層を含む多層配線基板の多層配線基板の断面図を示すものである。
【図4】は、実施例1による多層プリント基板の主要製造工程での要部断面図を示すものである。
【付号の説明】
1,11,31…基材、
2,12,32…配線層、
3…接着層、
4…表面保護膜、
13,33…層間絶縁層、
34…ビアホール、
35…配線層。
Claims (1)
- 基材、配線層および機能付与層からなる多層配線基板において、該基材および機能付与層からなる群より選択される少なくとも一が、下記式(IV):
で示される含フッ素アリールエーテルケトン重合体を含むことを特徴とする多層配線基板。
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