JP4586917B2 - インクジェット式記録装置 - Google Patents

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Description

本発明は、記録用紙の幅方向に移動する記録ヘッドを有し、印刷データに基づいてインク滴を記録用紙に向かって吐出することで、記録用紙上に印字を行うインクジェット式記録装置であって、特にインク滴を吐出するノズル開口の目詰まりを解消するためのキャッピング装置に関する。
パーソナルコンピュータの発達によりグラフィック処理が比較的簡単に実行できるようになったため、ディスプレイに表示される例えばカラー画像のハードコピーを高品質で出力できる記録装置が求められている。このような要求に応えるためにインクジェット式記録ヘッドを搭載した記録装置が提供されている。
このインクジェット式記録装置は、印刷時の騒音が比較的小さく、しかも小さなドットを高い密度で形成できるため、カラー印刷を含めた多くの印刷に使用されている。
このようなインクジェット式記録装置は、インク貯蔵手段からのインクの供給を受けるインクジェット式記録ヘッドと、記録用紙を記録ヘッドに対して相対的に移動させる紙送り手段を備え、印字信号に応じて記録ヘッドを移動させながら記録用紙にインク滴を吐出させてドットを形成することで記録が行われる。
そして共通のヘッドホルダー(キャリッジ)にブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクの吐出が可能な記録ヘッドを設け、ブラックインクによるテキスト印刷ばかりでなく、各インクの吐出割合を変えることにより、フルカラー印刷を可能としている。
このようなインクジェット式記録ヘッドは、圧力発生室で加圧したインクをノズルからインク滴として記録用紙に吐出させて印刷を行う関係上、ノズル開口からの溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇や、インクの固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などによりノズル開口に目詰まりを発生し、印刷不良を起こすという問題がある。
このために、インクジェット式記録装置は通常、非印刷時に記録ヘッドのノズル開口を封止するためのキャッピング装置と、必要に応じてノズルプレートを清掃するクリーニング装置を備えている。
このキャッピング装置は、前記したノズル開口のインクの乾燥を防止する蓋として機能するだけでなく、ノズル開口に目詰まりが生じた場合には、キャップ部材によりノズルプレートを封止し、吸引ポンプからの負圧により、ノズル開口からインクを吸引してノズル開口の目詰まりを解消する機能をも備えている。
記録ヘッドの目詰まり解消のために行うインクの強制的な排出処理は、通常クリーニング操作と呼ばれ、長時間の休止後に印刷を再開する場合や、またユーザが記録ヘッドの目詰まりを解消するためにクリーニングスイッチを押下した場合に実行され、インク滴を排出させた後にゴムなどの弾性板からなるクリーニング部材によりワイピング操作を伴う処理である。
また、記録ヘッドに印刷とは関係のない駆動信号を印加してインク滴を吐出させる機能も備えており、これは通常フラッシング操作と呼ばれ、クリーニング操作時にワイピング等でヘッドのノズル開口近傍の不揃いのメニスカスを回復させたり、また印刷中にインク滴の吐出が少ないノズル開口の目詰まりを防止する目的で一定周期ごとに実行させる操作である。
図23および図24は、従来のインクジェット式記録装置に用いられているキャッピング装置の構成を示したものであり、このうち図23は上面図であり、図24は図23におけるA−A線に沿った断面図である。
図23および図24において、キャップユニット38は、上面が解放された方形状のキャップケース40と、このキャップケース40内に収納され、耐インク性を有する可撓性物質、特にゴムなどの弾性部材により形成されたカップ状のキャップ部材16とにより構成されている。そして、前記キャップ部材16はその上側縁がキャップケース40よりも若干突出した状態に形成されている。
また、キャップ部材16の内底部には耐インク性およびインク吸収性に優れた多孔質材料からなるインク吸収材17がキャップ部材16の内側面との間に隙間gを有するように収納されている。そしてインク吸収材17は、キャップ部材16の一部に配置されたストッパ部材16aによりキャップ部材16内に保持されるように構成されている。
さらに、前記キャップケース40およびキャップ部材16の下底部には、キャップケース40およびキャップ部材16を貫通するようにインク吸引口18および大気解放口19が配置されている。前記インク吸引口18および大気解放口19は、キャッピング装置を上面から視た場合に、キャッピング装置の長手方向のほぼ中央に沿って、互いに所定間隔をもって位置するように配置されている。
次に図25は前記したキャップユニット38によってカラー印字用記録ヘッド8のノズルプレート14を封止した状態を示している。この記録ヘッド8はキャッピング装置の上部に位置し、そのノズルプレート14が前記キャッピング装置によって下方向からキャッピングされる。ノズルプレート14にはノズル開口15が配置されており、各ノズル開口15に対応して配置された圧電振動子13の作用によってイエロー、シアン、マゼンタの各インクが吐出されるように構成されている。
以上の構成において、ノズル開口の目詰まりを解消させるためのインクの吸引作用は、図25に示すようにキャップ部材16を記録ヘッド8のノズルプレート14に密着させた状態で、該キャップ部材16のインク吸引口18に接続された吸引ポンプを作動させ、キャップ内部に負圧を与えることにより行われる。
そして、ノズル開口15からインクが排出され、キャップ内部の負圧がある程度減少した時点で、大気開放口19に接続されたバルブを開放して大気の流入が行われ、キャップ部材内部の負圧が全て解除される。
尚、関連する先行技術文献としては次のものがある。
特開平7−276650号公報 実開平5−35281号公報 特開平9−39258号公報 実開平2−144437号公報
ところで、前記したインクの排出作用により記録ヘッドのノズル開口15から排出されたインクは、キャップ部材16に収容されたインク吸収材17によって吸収される。このインク吸収材17は通常、スポンジ等の多孔質材料により形成されており、このインク吸収材17はインクの吸収よって序々に膨潤し、前記した隙間gを埋めるまで膨出した後に、図25に示すようにその中央部分がノズルプレート14側に変形する、すなわち湾曲して中央部が盛り上がった状態となる。このインク吸収材17は記録装置を長期間放置した後、再使用した場合において特に膨潤の度合いが激しく、前記したような変形作用が発生しやすい。
このために、インク吸収材17とキャップ部材16の底面との間に空間Gが発生し、この空間Gがインク溜まりとなる。そして、大気開放口19からの大気導入時において、前記空間(インク溜まり)Gからインクがインク吸収材17を介して泡状となって上部にふき上がる現象が発生する。
特に図25に示すようにインク吸収材17の中央部分がノズルプレート14側に盛り上がった状態となった場合には、インク吸収材17と記録ヘッドのノズルプレート14との間隔が接近し、インク吸収材17の上部で泡立ったインクは、即座に記録ヘッドのノズルプレート14に付着する。
これによりインクの泡がノズル開口15に侵入するなどしてノズル開口15のメニスカスを破壊し、いわゆるドット抜けを発生させたり混色が発生するなどの印字不良を起こすという技術的課題を抱えている。
本発明は前記した技術的課題に着目してなされたものであり、インク吸収材がたとえ膨潤してもノズルプレートとの間隔を充分確保できるように構成することで、泡立ったインクの影響による印字不良の発生を効果的に防止し得るインクジェット式記録装置を提供することを目的とするものである。
前記した目的を達成するためになされた本発明にかかるインクジェット式記録装置における好ましい実施の形態によれば、ノズル開口からインク滴を吐出する、前記ノズル開口の列であるノズル列を複数備えたインクジェット式記録ヘッドと、 非印刷時に前記ノズル開口を備えたノズルプレートを封止すると共に、必要に応じて前記ノズル開口からインクを排出するキャップ部材と、を備えたインクジェット式記録装置であって、前記キャップ部材内に収容され、前記ノズル開口から排出したインクを吸収するインク吸収材を固定する固定手段を具備し、前記固定手段は、その先端部に頭部を形成し、前記頭部によってキャップ部材の内底部に配置されたインク吸収材を固定する部材であり、前記インク吸収材を固定する部材は、前記キャップ部材が前記ノズルプレートを封止したときに、前記インク吸収材を固定する部材の基部が前記キャップ部材の内底部において2つの前記ノズル列の間に位置するとともに、前記頭部が前記ノズル開口に対向する位置とならないように配置されている。
また、本発明にかかるインクジェット式記録装置における他の好ましい実施の形態によれば、前記キャップ部材の内底部には大気開放口が設けられ、前記固定手段は、前記大気開放口と前記インク吸収材との間に隙間が生じることを防止する。
また、本発明にかかるインクジェット式記録装置におけるさらに他の好ましい実施の形態によれば、ノズル開口からインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、非印刷時に前記ノズル開口を備えたノズルプレートを封止すると共に、必要に応じて前記ノズル開口からインクを吸引するキャップ部材を備えたインクジェット式記録装置であって、前記ノズル開口から吸引したインクを吸収するインク吸収材を収容した前記キャップ部材の開口周縁に、可撓性部材による蛇腹部を形成し、記録ヘッドのノズルプレートを封止した状態で、前記蛇腹部の介在によりノズルプレートとインク吸収材との間隔が大きくできるように構成される。
この場合、前記インク吸収材におけるノズル開口と対向する部分に、凹部または切り欠き部等による窪みをさらに形成することが好ましい。またさらに、前記インク吸収材の一部がインクの吸収による膨潤によってノズルプレート側に変形するのを阻止する固定手段を具備した構成を併用してもよい。
そして、前記固定手段は、キャップ部材が記録ヘッドのノズルプレートを封止した状態においてノズル開口に対向する位置を避けて配置されていることが好ましい。
また、前記固定手段は、キャップ部材に開口された大気開放口近傍に配置され、大気開放口近傍におけるインク吸収材の浮き上がりを阻止し得るように構成することが望ましい。
これに用いられる固定手段としては、好ましくはその頭部が半球状または半球状頭部の上面にインク誘導溝を施したピン部材が用いられ、その尾部を前記キャップ部材に植設することで、インク吸収材を前記頭部によってキャップ部材内に固定するように構成される。
もしくは、キャップケースと一体成形されたピン部材が用いられ、その先端部を加熱変形させることによって半球状または半球状の上面にインク誘導溝付きの頭部を形成し、同時に前記頭部によってインク吸収材をキャップ部材内に固定するように構成される。
また、前記固定手段の他の好ましい形態においては、少なくともその一部がキャップ部材の側壁に係合し得るフレーム部材により構成され、該フレーム部材によって前記インク吸収材をキャップ部材内に固定するように構成される。
そして、前記固定手段としてピン部材を用いたとしても、またフレーム部材を用いたとしても、これらは撥水性を備えた金属材料により形成されていることが望ましい。
以上のように構成されたインクジェット式記録装置によると、キャップ部材内に収容されたインク吸収材が、たとえ膨潤して記録ヘッドのノズルプレート側に変形しても、インク吸収材におけるノズル開口と対向する部分に、凹部または切り欠き部等による窪みが形成されているので、インク吸収材の上面に発生するインクの泡によるノズル開口への悪影響を低減させることができる。
また、キャップ部材内に収容されたインク吸収材の膨潤によって、インク吸収材がノズルプレート側に変形するのを阻止する固定手段を採用することで、同様にインク吸収材の上面に発生するインクの泡によるノズル開口への悪影響を低減させることができる。
さらに、キャップ部材の開口周縁に、可撓性部材による蛇腹部を形成したことで、この蛇腹部の介在によりノズルプレートとインク吸収材との間隔を大きくとることが可能となり、同様にインク吸収材の上面に発生するインクの泡によるノズル開口への悪影響を低減させることができる。
以下、本発明にかかるインクジェット式記録装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図1は本発明が適用されたインクジェット式記録装置の一実施例を示すものであり、図中符号1はキャリッジであり、キャリッジモータ3の駆動により往復動するタイミングベルト2を介し、ガイド部材4に案内されてプラテン5の軸方向に往復移動されるように構成されている。
キャリッジ1の記録用紙6に対向する側には、ブラック用記録ヘッド7、およびカラー用記録ヘッド8が搭載され、またその上方にはそれぞれの記録ヘッドにインクを供給するブラック用インクカートリッジ9、およびカラー用インクカートリッジ10が着脱可能に装填されている。
図中符号11は、非印字領域外に配置されたキャッピング装置であって、ブラックヘッド用のキャップユニット37とカラーヘッド用のキャップユニット38が配置されている。そしてキャッピング装置11の下方には、キャッピング装置11に対して負圧を与えるための吸引ポンプ12が配置されている。
前記キャップユニット37,38は記録装置の休止期間中のノズル開口の乾燥を防止するキャップ手段として機能する他、フラッシング動作時のインク受けとして機能し、また前記吸引ポンプ12からの負圧を記録ヘッド7、8に作用させて、インクを吸引する手段としての機能も兼ね備えている。
図2は前記したカラー用記録ヘッド8におけるアクチュエータユニットの例を示したものであって、ノズルプレート14に3つの圧電振動子13が配置され、図2には現されていないが、その下側面に形成されたノズル開口列からそれぞれ異なる色のインクを吐出できるように、各圧電振動子13とノズルプレート14の間には、各ノズル開口列毎に独立したインク供給流路20a〜20fが設けられている。
この構成により、各圧電振動子13にそれぞれ印刷制御信号が加えられることによりインク供給流路20a〜20fに供給されるイエロー、シアン、マゼンタの各インクがノズル開口列からそれぞれ吐出され、記録用紙6に対してカラー印刷が行われる。
図3(イ)および(ロ)はキャッピング装置11の全体構成を示したものであり、(イ)はキャッピング装置11を一方向から視た斜視図であり、また(ロ)は(イ)の裏面方向から視た斜視図である。図中符号22はスライダであり、自在に回動するアーム23とバネ31によって基台21に連結されており、キャリッジ1が非印字領域側に移動してフラッグ片25に接したときに、キャリッジ1の動きに追従して移動するように構成されている。また、スライダ22にはバルブユニット28が固定され、基台21にはバルブユニット28を開閉するためのバルブ29が圧縮バネ30を介して固定されている。
フラッグ片25は下端に凸片26を有していて、基台21に形成された傾斜ガイド面24と当接してこれの表面を摺動するように構成されている。また、印刷領域側の側部にもガイド面32が設けられており、スライダ22に水平方向に突出された突起33がこれの表面を摺動するように構成されている。これら2つのガイド面24,32の働きにより、スライダ22はほぼ水平姿勢を保ったまま、上下動が可能な構成となっている。
つまり、キャリッジ1が非印字領域側に移動したとき、スライダ22がキャリッジ1の動きと連動して斜め上方に移動することで、キャップ部材と記録ヘッドのノズルプレート面が密着するキャッピング動作がなされるように構成されている。
スライダ22のキャップユニット搭載部36は、バネ34と突起35によってスライダ22に連結されており、突起35を中心として若干の回動が可能である。また、キャップユニット37,38は、それぞれ圧縮バネ39を介してスライダ22に固定されている。従って、キャッピング動作時において、キャップとノズルプレートの密着性は常に良好に保たれる。
前記キャップユニット37,38のそれぞれには、その下底部にそれぞれインク吸引口18が形成され、耐インク性に優れた図示せぬチューブを介して図1に示す吸引ポンプ12に接続されている。またキャップユニット37,38のそれぞれには、図3には現れていないがその底面に後述する大気解放口が配置されており、これら大気解放口に一端が接続されたチューブ27の他端がバルブユニット28にそれぞれ接続されている。
以上の構成により、キャリッジ1が非印字領域側に移動したとき、前記したようにキャリッジ1がフラッグ片25に当接し、これによりスライダ22が斜め上方に移動してキャップユニット37,38が記録ヘッドのノズルプレート面を閉塞するキャッピング状態とされる。
そして、スライダ22が非印字領域側(ホームポジション)に位置することによって、前記バルブユニット28がバルブ29と接触し、前記大気開放口が閉ざされる。この状態で吸引ポンプ12からキャップ内部に負圧を供給することにより、記録ヘッドのノズル開口からのインクの吸引が可能となる。
次に図4は前記したキャッピング装置のうち、カラーヘッド用のキャップユニット38の第1の実施の形態を上面から視た状態で示している。また図5は、図4におけるB−B線に沿った断面図で示されている。そして、すでに図23乃至図25で説明した従来の装置に相当する部分は同一符号で示しており、したがってその説明は省略する。
図4および図5に示すキャップユニット38の第1の実施の形態においては、インク吸収材17の上面における記録ヘッド8の各ノズル開口15と対向する部分にそれぞれ窪み、すなわちノズル列の方向にその軸方向が一致するように円筒面状の凹部17aが形成されている。
このように、インク吸収材17の上面に凹部17aを形成することにより、インク吸収材17がインクを吸収して膨潤し、たとえその中央部がノズルプレート側に盛り上がるように変形しても、インク吸収材17と記録ヘッド8の各ノズル開口(ノズル列)15との距離をある程度確保することができる。したがって大気開放口19の開放によりインクの泡が吹き上る現象が発生しても、その泡がノズル開口15に達するのを阻止できるか、またはその程度を低減させることが可能となる。
次に図6および図7に示す第2の実施の形態も、同様の作用効果を得ることができるものであり、図7は図6におけるC−C線に沿った断面図で示されている。そして、すでに図23乃至図25で説明した従来の装置に相当する部分は同一符号で示している。
図6および図7に示す第2の実施の形態においては、上下2枚で構成されたインク吸収材17の上部側インク吸収材に、切り欠き部17bによる貫通孔が形成されている。そして、切り欠き部17bによる貫通孔は長方形状に成され、その長手方向がノズル列の方向に一致するように形成されている。
これにより、インク吸収材17の上面における記録ヘッド8の各ノズル開口15と対向する部分にそれぞれ窪みが形成された構成となっている。この様な構成においても同様に、大気開放口19の開放によりインクの泡が吹き上る現象が発生しても、その泡がノズル開口15に達するのを阻止できるか、またはその程度を低減させることが可能となる。
次に図8および図9に示す構成は、第3の実施の形態を示すものである。なお、図9は図8におけるD−D線に沿った断面図で示されている。そして、すでに図23乃至図25で説明した従来の装置に相当する部分は同一符号で示している。
図8および図9に示す第3の実施の形態においては、図4および図5に示す第1の実施の形態に、さらにインク吸収材の一部がインクの吸収による膨潤によってノズルプレート側に変形するのを阻止する固定手段が具備されている。すなわちインク吸収材17の中央部がインクの吸収による膨潤によってノズルプレート14側に湾曲しないように、キャップ部材16に植設した2本のピン部材51によって固定されている。
このピン部材51は、インク吸収材17を貫通し、その尾部を前記キャップ部材16に植設することでインク吸収材17を頭部51aによってキャップ部材16内に固定するように成されている。そして、この2本のピン部材51は、キャップ部材16が記録ヘッドのノズルプレート14を封止した状態において、ノズル開口15に対向する位置を避けて配置されている。
すなわち、図9に示すように2本のピン部材51は、それぞれ各ノズル列の直下を避けて、各ノズル列の間に位置するように配置されている。これにより、インク吸引時において、ノズル開口に悪影響を与えるのを防ぐように作用する。
また前記ピン部材51は、キャップ部材16に開口された大気開放口19の近傍に配置され、特に大気開放口19の近傍におけるインク吸収材17の浮き上がりを阻止し得るように構成されている。これにより、大気開放口19の近傍にインク吸収材との隙間が生ずることによるインクの泡の発生度合いを効果的に低減させることができる。
次に図10および図11に示す構成は、第4の実施の形態を示すものである。なお、図11は図10におけるE−E線に沿った断面図で示されている。そして、すでに図23乃至図25で説明した従来の装置に相当する部分は同一符号で示している。図10および図11に示す第4の実施の形態においては、図6および図7に示す第2の実施の形態に、さらにインク吸収材の一部がインクの吸収による膨潤によってノズルプレート側に変形するのを阻止するピン部材51を具備させたものである。
このピン部材51の配置位置も前記したように、キャップ部材16が記録ヘッドのノズルプレート14を封止した状態において、それぞれ各ノズル列の直下を避けて、各ノズル列の間に位置するように、また前記大気開放口19の近傍に位置するように配置されるのが望ましい。
前記した第3および第4の実施の形態においては、インク吸収材17がインクを吸収し膨潤しても、固定手段としてのピン部材51の存在により、その中央部がノズルプレート14側に湾曲することがない。加えてインク吸収材17の上面に凹部17aまたは切り欠き部17bによる窪みが形成されることにより、インク吸収材17と記録ヘッド8の各ノズル開口15との距離を相当に確保することができる。したがって大気開放口19の開放によりインクの泡が吹き上る現象が発生しても、その泡がノズル開口15に達するのを阻止できるか、またはその程度をより低減させることが可能となる。
なお、前記した第3、第4の実施の形態においては、あえて凹部17aまたは切り欠き部17bを形成したインク吸収材17を、ピン部材51によって固定しているが、前記凹部17aまたは切り欠き部17bが施されていない上面が平坦なインク吸収材17を採用したとしても、固定手段としてのピン部材51の存在により、インク吸収材17の膨潤によるノズルプレート14側への湾曲が阻止される。したがってノズルプレート14とインク吸収材17との間隔を充分に確保することができ、インクの泡がノズル開口15に達するのを有効に阻止し得る。
図12および図13に示す構成は、第5の実施の形態を示すものである。すでに図23乃至図25で説明した従来の装置に相当する部分は同一符号で示している。前述の第3および第4の実施の形態においては、ピン部材51をキャップ部材16に植設することでインク吸収材17をキャップ部材内に固定する構成であるが、第5の実施の形態においては図12に示すように、ピン部材51は棒状でキャップケース40と一体成形されている。
このピン部材51は図13(a)に示すように、キャップ部材16およびインク吸収材17を貫通し、先端部が吸収材17より上部へ突き出るような構造となっている。そしてその先端部を加熱し、押しつぶすことによって図13(b)に示すようにインク吸収材17をキャップ部材内にかしめ固定するように構成されている。
なお、図12に示す第5の実施の形態においては、上面が平坦なインク吸収材17を採用しているが、5本のピン部材51によってかしめ固定されていることから、インク吸収材17の膨潤による浮き上がりを確実に阻止し得るように構成されている。これにより、インク吸収材の上面に発生するインクの泡によるノズル開口への悪影響を効果的に低減させることができる。
また本実施例においては、上面が平坦なインク吸収材17の代わりに、前記凹部17aまたは切り欠き部17bを施したインク吸収材17を採用した場合においても、同様の作用効果を得ることができることは明らかである。
図14は、前記したピン部材51の各種の外観構成を示したものである。すなわち、図12(a)に示すピン部材は、すでに説明した図8乃至図13に示したキャッピング装置において用いられているものであり、その頭部51aの上面が平坦状に成されたものである。この図14(a)に示したピン部材においては、頭部51aの上面が平坦に成されているがため、インクの表面張力によりその上面にインクが乗って、キャッピング装置からのインクの排出工程後においても、インクが残留するという問題がある。
そこで、図14(b)に示すようにピン部材51の頭部51aを半球状に形成することが好ましい。このようにピン部材の頭部を半球状に形成することで、ピン部材51の頭部51aに表面張力によりインクが残留する現象を低減でき、ピン部材51周りのインクはインク吸収材17側に吸収される。
また、図14(c)および図14(d)に示すように、ピン部材51の頭部51aを半球状に形成させると共に、半球状頭部の上面にさらにインク誘導溝51bを施すように構成することがさらに好ましい。なお、図14(c)と図14(d)とは、ピン部材51を互いに直交する正面および側面方向から視た状態で示しており、半球状頭部の上面中央に1本の溝51bが施されている。このようにインク誘導溝51bを施すことにより、インクは誘導溝を通りインク吸収材17側に即座に吸収される。なお、インク誘導溝51bは図に示すように1本に限られることはなく、半球状頭部の大きさに応じて適宜の本数が施される。またこの場合、インク誘導溝がクロスするように配置されていても良い。
さらにまた、ピン部材51をキャップ部材16に植設する第3および第4の実施の形態においては、図14に示すピン部材51のいずれにおいても、例えばステンレス鋼等のように撥水性を備えた金属材料により構成することで、インクの残留度合いをさらに低減させる効果が得られる。
以上説明した各種のピン部材を用いることで、すでに図24において説明した従来のもののように、あえてキャップ部材16の内側面とインク吸収材17との間に隙間gを設ける必要はなくなる。すなわち、隙間gを設けることによるインクの泡の発生要因を無くすことが可能となり、印字ヘッドのクリーニング工程による信頼性を増加させることが可能となる。
次に図15および図16に示す構成は、第6の実施の形態を断面図によって示したものであり、図15はキャッピング装置がノズルプレート14に対して離開している状態を、また図16はキャッピング装置がノズルプレート14に接触している状態を示している。そして、すでに図23乃至図25で説明した従来の装置に相当する部分は同一符号で示している。
この第6の実施の形態においては、キャップ部材16の開口部周縁に可撓性部材による蛇腹部16aを上向きに形成したことを特徴とするものである。すなわち前記蛇腹部16aはキャップ部材16と一体に若干肉薄状に形成され、また延長方向に直交する断面が「く」字状に形成されている。
このような形態においては、前述したキャッピング動作により、キャップ部材16はノズルプレート14に密着する。そしてインク吸引時には、この状態でキャップ内部に負圧が生じるため、図15に示すようにキャップ部材の蛇腹部16aが収縮し、ノズルプレート14とインク吸収材17とが接近する。このため、ノズルプレート面にしみだしたインクを効率良く吸収することが可能となる。
一方、インクの吸引が終了し、キャップ内部が大気開放される段階では、キャップ内部の負圧が解除されると同時に、蛇腹部16aの収縮が回復するので、ノズルプレート14とインク吸収材17との間隔が十分に広くなる。これにより、大気開放時に発生する泡状のインクがノズル開口15に付着するのを有効に阻止し得ることができる。
なお、この第6の実施の形態においては、インク吸収材17の表面が平坦なものが用いられているが、すでに説明した第1乃至第4の実施の形態のようにインク吸収材17の表面に凹部17aや切り欠き部17bを形成してもよい。この場合には、インク吸収材17とノズル開口15との間隔をより大きく形成させることができる。
さらに、前記した第3および第4の実施の形態のように、インク吸収材17の中央部がノズルプレート14側に湾曲しないように、凹部17aまたは切り欠き部17b部分を除く部分を複数本のピン部材51によって固定してもよい。
この場合においてもピン部材51の配置位置は、前記したようにキャップ部材16が記録ヘッドのノズルプレート14を封止した状態において、それぞれ各ノズル列の直下を避けて、各ノズル列の間に位置するように、また前記大気開放口19の近傍に位置するように配置することが望ましい。
次に図17および図18に示す構成は、第7の実施の形態を示すものである。なお、図17は図18におけるF−F線に沿った断面図で示されている。そして、すでに図23乃至図25で説明した従来の装置に相当する部分は同一符号で示している。図17および図18に示す第7の実施の形態においては、固定手段として、少なくともその一部がキャップ部材16の側壁に係合し得るフレーム部材52が用いられている。そしてフレーム部材52によって前記インク吸収材17を、その上面側から押さえることで、インク吸収材17をキャップ部材16内に固定するように構成されている。
前記フレーム部材52は、キャップ部材16に内接するように、四角形状に形成されており、その周側縁の全体でキャップ部材16の側壁に係合されるように成されている。そして、長手方向を三分するように一対の梁部52aが一体に形成されている。この構成により、インク吸収材17がインクを吸収し膨潤しても、固定手段としてのフレーム部材52の存在により、その中央部がノズルプレート14側に湾曲することを有効に阻止する。
なおこの梁部52aは、前記したピン部材51の配置位置と同様に、キャップ部材16が記録ヘッドのノズルプレート14を封止した状態において、それぞれ各ノズル列の直下を避けて、各ノズル列の間に位置するように形成されている。
そして、このフレーム部材52においても、前記したピン部材の場合と同様に例えばステンレス鋼等のように撥水性を備えた金属材料により構成することで、その上面に残留するインクの量を低減させることができる。
また、図19および図20に示す構成は、第8の実施の形態を示したものであり、図19は図20におけるG−G線に沿った断面図で示されている。そして、すでに図23乃至図25で説明した従来の装置に相当する部分は同一符号で示している。この第8の実施の形態は、図18および図19に示した実施の形態にさらにインク吸収材17の上面における記録ヘッド8の各ノズル開口15と対向する部分にそれぞれ窪み、すなわちノズル列の方向にその軸方向が一致するように円筒面状の凹部17aを形成したものである。これにより、前記図4および図5で示した第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
さらに、図21および図22に示す構成は、第9の実施の形態を示したものであり、図21は図22におけるH−H線に沿った断面図で示されている。そして、すでに図23乃至図25で説明した従来の装置に相当する部分は同一符号で示している。この第9の実施の形態は、図18および図19に示した実施の形態に、さらに上下2枚で構成されたインク吸収材17の上部側インク吸収材に、切り欠き部17bによる貫通孔を形成した例を示している。これにより、前記図6および図7で示した第2の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
なお、図17乃至図20において使用されている前記フレーム部材52は、例えば薄板材料を打ち抜き等の加工手段で作成されるが、フレーム部材52は、これに代えて針金状のもので形成しても良い。
このように、打ち抜き加工または針金状のもので形成したフレーム部材を用いても、図24に示したようにあえてキャップ部材16の内側面とインク吸収材17との間に隙間gを設ける必要はなくなる。したがって、隙間gを設けることによるインクの泡の発生要因を無くすことが可能となり、印字ヘッドのクリーニング工程による信頼性を増加させることが可能となる。
以上の説明で明らかなように本発明にかかるインクジェット式記録装置は、インク吸収材における記録ヘッドのノズル開口と対向する部分に、凹部または切り欠き部等による窪みを形成したので、キャップユニットの大気開放時にインクの泡が発生しノズル開口に達するのを阻止、またはその程度を低減させることが可能となる。これによりインクの泡がノズル開口に侵入するなどしてノズル開口のメニスカスを破壊し、いわゆるドット抜けなどの印字障害を発生させる問題を有効に回避することができる。
また、インク吸収材の一部がインクの吸収による膨潤によってノズルプレート側に変形するのを阻止する固定手段を具備したことにより、インク吸収材の例えば中央部分が盛り上がるといった現象が阻止できる。したがって同様にインクの泡またはその飛散による印字障害の発生を低減させることができる。
また、インク吸収材の一部がインクの吸収による膨潤によってノズルプレート側に変形するのを阻止する固定手段を具備したことにより、インク吸収材の例えば中央部分が盛り上がるといった現象が阻止できる。したがって同様にインクの泡またはその飛散による印字障害の発生を低減させることができる。
さらに、キャップ部材の開口周縁に、可撓性部材による蛇腹部を形成したことにより、蛇腹部の介在によりノズルプレートとインク吸収材との間隔を大きくすることが可能であり、これによって同様にインクの泡またはその飛散による印字障害の発生を低減させることができる。
本発明を適用したインクジェット式記録装置の斜視図である。 図1に示す記録装置に搭載された記録ヘッドにおけるアクチュエータユニットの一例を示す斜視図である。 図1に示す記録装置に搭載されたキャッピング装置の一例を示す斜視図である。 本発明にかかる記録装置に搭載されるキャップユニットの第1の実施の形態を示した上面図である。 図4におけるB−B線で切断した状態の断面図である。 キャップユニットの第2の実施の形態を示した上面図である。 図6におけるC−C線で切断した状態の断面図である。 キャップユニットの第3の実施の形態を示した上面図である。 図8におけるD−D線で切断した状態の断面図である。 キャップユニットの第4の実施の形態を示した上面図である。 図10におけるE−E線で切断した状態の断面図である。 キャップユニットの第5の実施の形態を示した斜視図である。 図12におけるピン部材部分を垂直に切断した状態の断面図である。 固定手段としてのピン部材の各構成を示した図である。 キャップユニットの第6の実施の形態を示した中央断面図である。 同じくキャップユニットがノズルプレートに圧接した状態を示す中央断面図である。 キャップユニットの第7の実施の形態を示した上面図である。 図17におけるF−F線で切断した状態の断面図である。 キャップユニットの第8の実施の形態を示した上面図である。 図19におけるG−G線で切断した状態の断面図である。 キャップユニットの第9の実施の形態を示した上面図である。 図21におけるH−H線で切断した状態の断面図である。 従来におけるキャップユニットの例を示した上面図である。 図23におけるA−A線で切断した状態の断面図である。 従来におけるキャップユニットにおいてインク吸収材が膨潤した状態を示す中央断面図である。
符号の説明
7…ブラック用記録ヘッド、8…カラー用記録ヘッド、9…ブラック用インクカートリッジ、10…カラー用インクカートリッジ、11…キャッピング装置、12…吸引ポンプ、14…ノズルプレート、15…ノズル開口、16…キャップ部材、16a…蛇腹部、17…インク吸収材、17a…凹部(窪み)、17b…切り欠き部(窪み)、18…インク吸引口、19…大気開放口、36…キャップユニット搭載部、37…ブラックヘッド用キャップユニット、38…カラーヘッド用キャップユニット、40…キャップケース、51…ピン部材(固定手段)、52…フレーム部材(固定手段)。

Claims (2)

  1. ノズル開口からインク滴を吐出する、前記ノズル開口の列であるノズル列を複数備えたインクジェット式記録ヘッドと、
    非印刷時に前記ノズル開口を備えたノズルプレートを封止すると共に、必要に応じて前記ノズル開口からインクを排出するキャップ部材と、
    を備えたインクジェット式記録装置であって、
    前記キャップ部材内に収容され、前記ノズル開口から排出したインクを吸収するインク吸収材を固定する固定手段を具備し、
    前記固定手段は、その先端部に頭部を形成し、前記頭部によってキャップ部材の内底部に配置されたインク吸収材を固定する部材であり、
    前記インク吸収材を固定する部材は、前記キャップ部材が前記ノズルプレートを封止したときに、前記インク吸収材を固定する部材の基部が前記キャップ部材の内底部において2つの前記ノズル列の間に位置するとともに、前記頭部が前記ノズル開口に対向する位置とならないように配置されていることを特徴とするインクジェット式記録装置。
  2. 前記キャップ部材の内底部には大気開放口が設けられ、
    前記固定手段は、前記大気開放口と前記インク吸収材との間に隙間が生じることを防止することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット式記録装置。
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