JP4586339B2 - 密閉型電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、密閉型電池に係り、特に、渦巻き状の捲回群の端面から導出された多数の集電タブが、円盤状集電板と、環状当て板とに挟まれて接合された密閉型電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、密閉型電池は家電製品に汎用されており、最近では、密閉型電池の中でも特にリチウム電池が数多く用いられるに至っている。リチウム電池はエネルギ密度が高いことから、電気自動車(EV)又はハイブリッド車(HEV)の車載電源としても開発が進められている。このような用途においては、高出力が要求されるため、密閉型電池の捲回群から多数の集電タブを導出して集電体に接続する必要があり、例えば、集電タブを円盤状の集電板と当て板とで挟持して溶接する構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、集電板に集電タブが超音波溶接された構造も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−118561号公報(図1、段落番号「0027」〜「0029」)
【特許文献2】
特開2002−050338号公報(図2、段落番号「0009」)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、集電板と当て板との間に集電タブを挟んでレーザで溶接しているが、挟まれる集電タブの枚数が位置によってまちまちなので、集電タブの枚数が少ないところでは隙間が多くなり接合が不完全になりやすく、電池の高率放電性能のバラツキが大きくなる、という問題がある。
【0005】
また、特許文献2の技術では、集電板に箔状の集電タブを接続するために超音波溶接を用いているが、集電板と捲回群との間に挿入できるアンビルの厚さに制約があるため、溶接箇所に十分な強度を持たせることが難しく、大きな振動が加わるので、アンビルの寿命が短くなる。
【0006】
本発明は、上記事案に鑑み、高率放電性能のバラツキを低コストで抑制可能な密閉型電池を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、渦巻き状の捲回群の端面から導出された多数の集電タブが、外周側ほど薄いテーパ部を有する円盤状集電板と、前記テーパ部に対向する環状当て板とに挟まれ、前記集電板側から摩擦攪拌接合されている。
【0008】
第1の態様では、集電板のテーパ部が外周側ほど薄いため、集電タブを介して集電板と当て板とを治具により挟むことでテーパ部が当て板に沿って曲がりテーパ部と集電タブとの隙間が減少し、集電タブを集電板側から摩擦攪拌接合することで集電板の接合部が塑性流動状態となり集電タブ同士の隙間に充填されるので、電気抵抗が減少し高率放電性能のバラツキの少ない電池とすることができると共に、治具で集電タブを介して集電板と当て板とを挟んだ状態で摩擦攪拌接合することで治具にかかる振動等の負荷を小さくすることができるので、治具が長期間使用できコストを低減させることができる。本態様において、集電板のテーパ部の角度が5゜を超えると剛性が大きくなりテーパ部が曲りずらくなるのでテーパ部と集電タブとに隙間が生じやすく、1゜未満のときは治具で挟んでもテーパ部が当て板に沿って曲がりずらいので、集電板のテーパ部の角度を1°乃至5°とすることが好ましい。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第2の態様は、渦巻き状の捲回群の端面から導出された多数の集電タブが、円盤状集電板の外周部と、前記外周部に対向し外周側ほど薄いテーパ状の環状当て板とに挟まれ、前記集電板側から摩擦攪拌接合されている。
【0010】
第2の態様では、当て板が外周側ほど薄いテーパ状のため、集電タブを介して集電板と当て板とを治具により挟むことで集電板が当て板に沿って曲がり集電板と集電タブとの隙間が減少し、集電タブを集電板側から摩擦攪拌接合することで集電板の接合部が塑性流動状態となり集電タブ同士の隙間に充填されるので、電気抵抗が減少し高率放電性能のバラツキの少ない電池とすることができると共に、治具で集電タブを介して集電板と当て板とを挟んだ状態で摩擦攪拌接合することで治具にかかる振動等の負荷を小さくすることができるので、治具が長期間使用できコストを低減させることができる。本態様において、当て板のテーパの角度が5゜を超えると集電板が当て板に沿って曲りずらくなるので集電板と集電タブとに隙間が生じやすく、1゜未満のときは治具で挟んでも集電板が当て板に沿って曲がりずらいので、当て板のテーパの角度を1°乃至5°とすることが好ましい。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第3の態様は、渦巻き状の捲回群の端面から導出された多数の集電タブが、外周部が上方に反った円盤状集電板と、前記外周部に対向し外周側ほど上方に反った裁頭円錐台形状当て板とに挟まれ、前記集電板の外周部の上方への反り角度が、前記当て板の上方への反り角度より1°以上大きく、前記集電板側から摩擦攪拌接合されている。
【0012】
第3の態様では、集電板の外周部が上方に反い、当て板が外周側ほど上方に反っているため、集電タブを介して集電板と当て板とを治具により挟むことで集電板が当て板に沿って曲がり集電板と集電タブとの隙間が減少し、集電タブを集電板側から摩擦攪拌接合することで上記態様と同様に高率放電性能のバラツキが小さくコストの低減された電池とすることができると共に、当て板が裁頭円錐台形状なので、接合の強度を向上させることができ、集電板及び当て板を反らすだけでテーパ部を形成するプレス機が不要なので、更にコストを低減することができる。本態様において、集電板の外周部の上方への反り角度が当て板の上方への反り角度より5°を超えて大きくなると剛性が大きくなり曲りずらくなるので隙間が生じやすく、1゜未満のときは集電板が当て板に沿って曲がりずらいので、集電板の外周部の反り角度を当て板の反り角度より1°乃至5°大きくすることすることが好ましい。
【0013】
上記態様において、摩擦攪拌接合用の接合ツールと、集電板及び捲回群とを互いに逆方向の回転により接合すれば、経験上、欠陥を接合箇所の外周側に生じさせることができるため、欠陥が内周側に生ずるときに比べ欠陥による電気抵抗の増大を抑制することができるので、高率放電性能のバラツキを小さくすることができる。
【0014】
また、上記態様において、集電タブを、集電板にツールが圧入された接合開始点から集電板が360゜回転した後更に20゜以上回転した位置まで接合すれば、接合開始点付近の欠陥を補修することができるので、高率放電性能のバラツキを更に小さくすることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明が適用可能な円筒密閉型リチウムイオン電池の実施の形態について説明する。
【0016】
(構成)
図1に示すように、本実施形態の円筒密閉型リチウムイオン電池(以下、リチウムイオン電池、という。)30は、中空円筒状でポリプロピレン(PP)製の捲芯15の周りに正負極板が合成樹脂製微多孔薄膜のセパレータを介して捲回された渦巻き状捲回群14が、導電性の有底電池容器16の中央部に収容されている。電池容器16は、厚さ0.5mmのSPCC(冷間圧延鋼鈑)を深絞り加工で有底円筒状に成形した後、内面を含めてニッケルの電気メッキを施して作製されている。
【0017】
捲回群14の正極板からは、多数の短冊状の正極集電タブ3が、電池容器16の上方側へ導出されている。正極集電タブ3は、正極板の基材となる厚さ20μmのアルミニウム合金箔を切り欠いて作製されている。捲芯15の上端側の中空部には、アルミニウム合金製円盤状正極集電板1の中央に形成されたスリーブが挿嵌されている。スリーブはプレスによる深絞り加工により形成されている。正極集電タブ3の端部は、正極集電板1の外周部と、外周部に対向して配置され平板環状の正極リング2との間に挟まれて摩擦攪拌接合により正極集電板1側から接合されている。正極リング2は、アルミニウム合金製板の打ち抜き加工により作製されている。
【0018】
図2(A)に示すように、接合前では、端部に段差が形成された治具5に正極リング2が載置されており、正極集電板1の上方に治具4が配置されている。正極集電板1は、外周部に外周側ほど薄いテーパ部1aを有している。テーパ部1aの角度、すなわち、テーパ部1aの水平面と斜面とのなす角度Dは、1゜以上5゜以下に設定されている。このため、テーパ部1aの斜面と正極リング2の上面との隙間は、外周側ほど大きくなっている。図2(B)に示すように、接合時には、テーパ部1aは、治具4、5により拘束され正極リング2に沿うように曲げられることで、テーパ部1aと正極集電タブ3との内周側の隙間が減少して均一化される。テーパ部1aには、円柱状の摩擦攪拌接合ツール6を用いる摩擦攪拌接合により、断面半円状の接合部7が形成されている。接合部7は、正極集電板1の外周部にツール6の直径の幅で円形状に形成されている(図7参照)。
【0019】
摩擦攪拌接合は、図3に示す合金工具鋼製の摩擦攪拌接合ツール6を用いて行われる。ツール6は、先端側に円柱状ピン25が突出しており、ピン25の基部周囲には、ツール6の角部となるショルダ部26を有している。また、ピン25を除いたツール6の先端面には、ツール6の外周から中心に向かうにつれ深くなる凹部が形成されている。ツール6は不図示の支持台に支持されており上下方向に移動可能とされている。また、ツール6は高速で固定中心点Tを中心に時計回りに回転可能とされている(図7参照)。
【0020】
図7に示すように、正極集電板1が固定された捲回群14は、不図示の摩擦攪拌接合装置の載置台に載置され、治具4、5に拘束されて、正極集電板1の中心点Oを中心に反時計回りに回転可能とされている。摩擦攪拌接合では、ツール6を時計回りに回転させながら捲回群14に固定された正極集電板1の外周部に押しつけて、摩擦熱を発生させ、摩擦熱によって正極集電板1の表層を塑性流動させ、ツール6により攪拌して接合する。従って、ツール6と正極集電板1とは互いに逆方向に回転して接合される。正極集電タブ3は、正極集電板1にツール6が圧入された接合開始点Gから正極集電板1が360゜回転した後、更に20゜以上回転した位置まで接合されている。
【0021】
正極集電板1の上面には、略U字状の正極リード板の一端側が接合されており、正極リード板の他端側は電池の蓋となる封口電池蓋群を構成する皿状の上蓋ケース下面に接合されている。封口電池蓋群は、上蓋ケース、電池内圧が所定圧となると開裂して内圧を外部に開放する安全弁13、安全弁13を挟んで周縁部を上蓋ケースの周縁部でカシメられ正極外部端子として電池外部へ露出される導電性の上蓋キャップ12及び上蓋ケースの皿底部外面周縁に配置され安全弁13を押さえるリング状の弁押さえで一体に構成されている。
【0022】
一方、捲回群14の負極板からは、多数の短冊状の負極集電タブ10が電池容器16の底側へ導出されている。負極集電タブ10は、負極板の基材となる厚さ10μmのニッケル箔を切り欠いて作製されている。負極集電タブ10の端部は、ニッケル製で円盤状負極集電板8の外周部と、外周部に対向して配置された銅製で環状の負極リング9との間に挟持されて摩擦攪拌接合により負極集電板8側から接合されている。
【0023】
図4(A)に示すように、負極リング9は、外周側ほど薄いテーパ状とされている。テーパの角度、すなわち、負極リング9の水平面と斜面とのなす角度は、1゜以上5゜以下に設定されている。負極リング9は、銅板の抜き打ち加工により環状とされており、不図示のプレス機によりプレスすることで外周側ほど薄いテーパ状に作製されている。このため、摩擦攪拌接合前では、負極リング9の斜面と負極集電板8の底面との隙間は、外周側ほど大きくなっている。図4(B)に示すように、負極集電板8は、外周部にテーパ部が形成されておらず、中央部に放熱フィンとして機能する一対の舌状突起が対向するように上方に立設されている(図1参照)。治具4、5により拘束するときには、負極集電板8の外周部は負極リング9の斜面に沿うように曲げられることで、負極リング9と負極集電タブ10との内周側の隙間が減少して均一化される。正極側と同様に摩擦攪拌接合により負極集電板8の外周側に接合部が円形状に形成されている。
【0024】
負極集電板8の中心部で舌状突起が立設された面の背面側には、凸設形状のプロジェクションが形成されている。舌状突起は捲芯15の中空部に挿入されており、プロジェクションは電池容器16の底面に抵抗溶接で接合されている。なお、捲芯15の下端は負極集電板8の平板部に連通穴を跨ぐように当接固定されている。
【0025】
封口電池蓋群は、電気的絶縁性及び耐熱性を有する絶縁部材を介して電池容器16の上部でカシメ固定され、リチウムイオン電池30の内部は密閉されている。また、リチウムイオン電池30には、電池容器16内にエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及ジエチルカーボネートの混合溶媒に6フッ化リン酸リチウム(LiPF)を加えた図示しない非水電解液が所定量注入されており、捲回群14はこの図示しない非水電解液に浸潤されている。
【0026】
(作用)
次に、本実施形態のリチウムイオン電池30の作用等について説明する。
【0027】
正極集電タブ3の接合に摩擦攪拌接合を採用する場合には、レーザ溶接よりも更に強固にワークを固縛する必要がある。このため、図6(A)、(B)に示すように、治具4、5によって正極集電板1及び正極リング2を拘束しても、正極集電タブ3の弾性のため、テーパ部1aの内周側が浮き上がり正極集電タブ3同士に隙間が生ずる。本実施形態のリチウムイオン電池30は、正極集電板1のテーパ部1aが外周側ほど薄い。このため、正極集電タブ3を介して正極集電板と正極リング2とを治具4、5により挟むことで、テーパ部1aが正極リング2に沿って曲がり正極集電タブ3同士の隙間やテーパ部1aと正極集電タブ3との隙間が減少しテーパ部1aと正極リング2との間隔が均一化される。また、正極集電板側から摩擦攪拌接合することで、正極集電板の接合部が塑性流動状態となり正極集電タブ3同士の隙間に充填される。このため、接合部7での電気抵抗が減少し高率放電性能のバラツキの少ない電池を得ることができる。
【0028】
また、本実施形態のリチウムイオン電池30では、治具4、5で正極集電タブ3を介して正極集電板と正極リング2とを挟んだ状態で摩擦攪拌接合するので、超音波溶接するときに比べ、治具4、5にかかる振動等の負荷を小さくすることができる。このため、治具4、5が長期間使用できるので、コストを低減させることができる。
【0029】
更に、本実施形態のリチウムイオン電池30は、テーパ部1aの角度Dが1゜以上5゜以下に設定されている。正極集電板のテーパ部1aの角度を5゜以下としたので、剛性が小さくなりテーパ部1aが曲りやすくなり、1゜以上としたので治具4、5で挟むことでテーパ部1aが正極リング2に沿って曲がりやすくなり、テーパ部1aと正極集電タブ3とに隙間が生ずることを防止することができる。
【0030】
更にまた、本実施形態のリチウムイオン電池30は、正極集電板1はアルミニウム合金製なので、負極集電板8のニッケル板に比べ強度が小さく、小さい力でプレス機によりテーパ部1aを形成することができる。従って、強力なプレス機が不要なので、コスト高となることを防止することができる。
【0031】
また、本実施形態のリチウムイオン電池30は、負極リング9が外周側ほど薄いテーパ状とされている。このため、正極側と同様に、負極集電タブ10を介して負極集電板8と負極リング9とを治具4、5により挟むことで、負極集電板8が負極リング9に沿って曲がり負極集電板8と負極集電タブ10との隙間が減少し、負極集電板8と負極リング9との間隔が均一化される。また、負極集電タブ10を負極集電板8側から摩擦攪拌接合することで、負極集電板8の接合部が塑性流動状態となり負極集電タブ10同士の隙間に充填される。このため、接合部の電気抵抗が減少し高率放電性能のバラツキの少ない電池とすることができる。
【0032】
更に、本実施形態のリチウムイオン電池30は、正極側と同様に、治具4、5で負極集電タブ10を介して負極集電板8と負極リング9とを挟んだ状態で摩擦攪拌接合することで、治具4、5にかかる振動等の負荷を小さくすることができる。従って、治具4、5が長期間使用できるので、コストを低減させることができる。
【0033】
また更に、本実施形態のリチウムイオン電池30は、負極リング9のテーパの角度が1°以上5°以下に設定されている。このため、負極リング9のテーパの角度を5゜以下としたので負極集電板8が負極リング9に沿って曲りやすくなり、1゜以上としたので負極集電板8が負極リング9に沿って曲がりやすくなり、負極集電板8と負極集電タブ10とに隙間が生ずることを防止することができる。
【0034】
また、負極集電板8はニッケル製なので、アルミニウム合金に比べ強度が大きく、テーパ部を形成するために強力なプレス機が必要となる。本実施形態のリチウムイオン電池30では、銅製の負極リング9をテーパ状とした。このため、負極集電板8の外周側をテーパ状とする必要がなく強力なプレス機が不要なので、コスト高となることを防止することができる。
【0035】
更に、ツール6を時計回りに、正極集電板1を反時計回りに回転して接合するときには、ツール6の進行方向左側、すなわち、正極集電板1の外周側に欠陥が発生しやすいことが経験上知られている。本実施形態のリチウムイオン電池30では、ツール6を時計回りに、正極集電板1を反時計回りに回転して接合するので、欠陥が接合部7の外周側に生じやすくなる。従って、通電経路側(内周側)に欠陥が生ずることによる電気抵抗の増大を抑制して高率放電性能のバラツキの少ない電池を得ることができる。
【0036】
また、本実施形態のリチウムイオン電池30では、正極集電板1及び正極集電タブ3は、接合開始点Gから360゜回転した後、更に20゜以上回転した位置まで接合されている。このため、接合開始点G付近の欠陥を補修することができるので、接合の安定性を更に向上させることができると共に、接合面積を大きくすることができるので、大電流放電に優れた電池とすることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、正極側では正極集電板1、負極側では負極リング9をそれぞれテーパ部、テーパ状とする例を示したが、正極側では正極リング2、負極側では負極集電板8にそれぞれテーパ部を形成するようにしてもいし、正、負極集電板1、8及び正、負極リング2、9共にテーパ部を形成するようにしてもよい。このようにしても接合時の正、負極集電タブ3、10同士の隙間を減少させ、高率放電特性のバラツキの小さい電池を得ることができる。
【0038】
また、本実施形態では、正極集電板1、負極リング9にそれぞれテーパ部を形成する例を示したが、図5(A)、(B)に示すように、正極集電板21の外周部にテーパ部を形成せず水平方向から上方に角度D1だけ反らせ、正極リング22が水平方向に対して角度D2だけ上方に反る裁頭円錐台形状としてもよい(D1>D2+d(dは1゜〜5゜))。このようにしても、接合時に正極集電板21の外周部と正極リング22との隙間を低減することができるので、高率放電特性のバラツキの小さい電池とすることができる。また、正極集電板1又は正極リング2にテーパ部を形成する必要がないので、強力なプレス機が不要となりコストを低減することができる。更に、正極リング22が裁頭円錐台形状なので、接合部の強度を向上させることができる。なお、正極リング22は上方に反っていない平板としてもよい。
【0039】
更に、本実施形態では、載置台に載置された捲回群14を回転させ、ツール6を固定中心点Tで回転させて円形状に接合する例を示したが、捲回群14を載置台に載置して固定し、ツール6側を円形状に回転するようにしても、同様に接合することができる。
【0040】
【実施例】
次に、上記実施形態に従って作製した実施例のリチウムイオン電池について説明する。比較のために作製した電池についても併記する。なお、電池の容量は6Ahとし、ショルダ径4mm、ピン径1mm、ピンの長さ1mm、1.2mm、1.5mmの3種類のツールをテーパ部の厚さに応じて選択して使用した。
【0041】
(比較例1)
下表1に示すように、比較例1では、正極集電板に外径35mm、厚さ1.6mm、テーパ部のないアルミニウム合金A3003−H14、正極リングに外径37mm、内径23mm、厚さ1mmのアルミニウム合金A3003−H14、負極集電板に厚さ0.5mmのニッケル板、負極リングにテーパ状でない厚さ1.6mmの銅板を用いて、捲回群の回転方向を反時計回り(CCW)、捲回群の回転角度を380゜として電池を作製した。
【0042】
【表1】
Figure 0004586339
【0043】
(比較例2)
表1に示すように、比較例2では、回転角度を360゜とし、それぞれ正負極集電タブをレーザ溶接により接合した以外は比較例1と同様に電池を作製した。
【0044】
(実施例1)
表1に示すように、実施例1では、正極集電板の外周部に幅7mm、外周端部の厚さ0.5mmのテーパ部を形成し、テーパ部の角度を1゜とし、負極リングのテーパの斜面の角度を1゜とした以外は比較例1と同様に電池を作製した。
【0045】
(実施例2、3)
表1に示すように、実施例2、3では、テーパ部の角度をそれぞれ2゜、3゜とし、負極リングのテーパの斜面の角度をそれぞれ2゜、3゜とした以外は実施例1と同様に電池を作製した。
【0046】
(実施例4)
表1に示すように、実施例4では、テーパ部の角度を3゜とし、負極リングのテーパの斜面の角度を3゜とし、回転角度を360゜とした以外は実施例1と同様に電池を作製した。
【0047】
(実施例5、6)
表1に示すように、実施例5、6では、回転角度をそれぞれ400゜、450゜とした以外は実施例4と同様に電池を作製した。
【0048】
(実施例7)
表1に示すように、実施例7では、捲回群を時計回り(CW)に回転した以外は実施例3と同様に電池を作製した。
【0049】
(実施例8)
表1に示すように、実施例8では、テーパ部の角度を5゜とし、負極リングのテーパの斜面の角度を5゜とした以外は実施例1と同様に電池を作製した。
【0050】
(実施例9、10)
表1に示すように、実施例9、10では、テーパ部の角度をそれぞれ7゜、9゜とし、負極リングのテーパの斜面の角度をそれぞれ7゜、9゜とした以外は実施例1と同様に電池を作製した。
【0051】
<試験>
上述したように作製した実施例及び比較例の電池をそれぞれ100個ずつ計1200個準備し、通電時の電池の内部抵抗値を測定し、それぞれ100個の平均値を算出した。下表2に試験結果を示す。
【0052】
【表2】
Figure 0004586339
【0053】
比較例2の電池では、正負極集電タブがそれぞれレーザ溶接されているので、内部抵抗値が6.09であったのに対して、実施例の電池では、摩擦攪拌接合されているので、内部抵抗値が4.37であった。従って、摩擦攪拌接合により高率放電性能のバラツキが小さい電池が得られることが判明した。
【0054】
また、比較例の電池では、テーパ部の角度が1゜〜5゜の範囲外のため、拘束時にテーパ部の剛性が高くなりすぎて逆に正極集電板の外周側に隙間が生じ、接合部の欠陥が発生しやすくなり、内部抵抗値が大きくなったと考えられる。従って、テーパ部の角度を1゜以上5゜以下とすることで、高率放電性能のバラツキが小さい電池を得ることができることが判明した。
【0055】
更に、実施例7の電池では、内部抵抗値が4.65であったのに対して、実施例3の電池では、内部抵抗値が4.14であった。従って、摩擦攪拌接合時には、ツールと捲回群とを互いに逆向きに回転することがよいことが判明した。
【0056】
そして、実施例3、4及び5の電池では、それぞれ、内部抵抗値が4.14、4.33、4.15であった。実施例3の電池は、回転角度が380゜なので、回転角度が360゜の実施例4の電池に比べて、接合開始点Gの欠陥を補修することができるので、内部抵抗値を低減することができた。また、実施例5及び6の電池では、回転角度が400゜以上としたが、実施例3の電池とほぼ同じ効果であることが確認できた。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、集電板のテーパ部が外周側ほど薄いため、集電タブを介して集電板と当て板とを治具により挟むことで、テーパ部が当て板に沿って曲がりテーパ部と集電タブとの隙間が減少し、集電タブを集電板側から摩擦攪拌接合することで、集電板の接合部が塑性流動状態となり集電タブ同士の隙間に充填されるので、電気抵抗が減少し高率放電性能のバラツキの少ない電池とすることができると共に、治具で集電タブを介して集電板と当て板とを挟んだ状態で摩擦攪拌接合することで、治具にかかる振動等の負荷を小さくすることができるので、治具が長期間使用できコストを低減させることができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用可能な実施形態の密閉円筒型リチウムイオン二次電池の断面図である。
【図2】実施形態の密閉円筒型リチウムイオン二次電池の正極集電板及び正極集電タブの断面図であり、(A)は接合前の断面図、(B)は接合時の断面図を示す。
【図3】実施形態の摩擦攪拌接合ツールの先端部の部分断面図である。
【図4】実施形態の密閉円筒型リチウムイオン二次電池の負極集電板及び負極集電タブの断面図であり、(A)は拘束前の断面図、(B)は拘束時の断面図を示す。
【図5】本発明が適用可能な他の実施形態の密閉円筒型リチウムイオン二次電池の正極集電板及び正極集電タブの断面図であり、(A)は拘束前の断面図、(B)は拘束時の断面図を示す。
【図6】従来の密閉円筒型リチウムイオン二次電池の正極集電板及び正極集電タブの断面図であり、(A)は拘束前の断面図、(B)は拘束時の断面図を示す。
【図7】実施形態の密閉円筒型リチウムイオン二次電池の摩擦攪拌接合工程での正極集電板の平面図である。
【符号の説明】
1 正極集電板
1a テーパ部
2 正極リング(当て板)
3 正極集電タブ
4、5 治具
6 摩擦攪拌接合ツール(接合ツール)
8 負極集電板
9 負極リング(当て板)
10 負極集電タブ
14 捲回群
30 密閉円筒型リチウムイオン二次電池(密閉型電池)

Claims (8)

  1. 渦巻き状の捲回群の端面から導出された多数の集電タブが、外周側ほど薄いテーパ部を有する円盤状集電板と、前記テーパ部に対向する環状当て板とに挟まれ、前記集電板側から摩擦攪拌接合されたことを特徴とする密閉型電池。
  2. 前記集電板のテーパ部の角度が1°乃至5°であることを特徴とする請求項1に記載の密閉型電池。
  3. 渦巻き状の捲回群の端面から導出された多数の集電タブが、円盤状集電板の外周部と、前記外周部に対向し外周側ほど薄いテーパ状の環状当て板とに挟まれ、前記集電板側から摩擦攪拌接合されたことを特徴とする密閉型電池。
  4. 前記当て板のテーパの角度が1°乃至5°であることを特徴とする請求項3に記載の密閉型電池。
  5. 渦巻き状の捲回群の端面から導出された多数の集電タブが、外周部が上方に反った円盤状集電板と、前記外周部に対向し外周側ほど上方に反った裁頭円錐台形状当て板とに挟まれ、前記集電板の外周部の上方への反り角度が、前記当て板の上方への反り角度より1°以上大きく、前記集電板側から摩擦攪拌接合されたことを特徴とする密閉型電池。
  6. 前記集電板の外周部の上方への反り角度が、前記当て板の上方への反り角度より1°乃至5°大きいことを特徴とする請求項5に記載の密閉型電池。
  7. 摩擦攪拌接合用の接合ツールと、前記集電板及び前記捲回群とが互いに逆方向の回転により接合されたことを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の密閉型電池。
  8. 前記集電タブは、前記集電板に前記ツールが圧入された接合開始点から前記集電板が360゜回転した後更に20゜以上回転した位置まで接合されたことを特徴とする請求項1、請求項3及び請求項5のいずれか1項に記載の密閉型電池。
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