JP4585636B2 - アクリル系単量体の重合方法 - Google Patents

アクリル系単量体の重合方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、種々の用途(例えば、レジスト材料用高分子、塗料、コーティング剤、光学樹脂材料など)に有用なアクリル系単量体の重合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アダマンチル(メタ)アクリレートなどの多環式脂肪族炭化水素環を含むアクリル系単量体の重合体は、高いガラス転移温度を有し、低収縮性、低伸張性、高透明性、高熱安定性、高エッチング耐性などの優れた特性を有するため、種々の用途(例えば、レジスト材料用高分子、塗料、コーティング剤、光学樹脂材料など)に利用されている。最近では、前記アクリル系単量体を、エキシマーレーザー(例えば、ArFレーザー)用フォトレジストとして利用することが検討されている。
【0003】
精密なパターニングが行われるフォトレジスト用材料などには、高純度で、より均質な重合体が要求される。このような重合体を得るためには、通常、高純度モノマーが完全に溶解した溶液重合により重合反応を行うのが好ましい。しかし、上記のようなアクリル系単量体を重合する場合、溶媒への溶解性が変動し、重合挙動が大きく変化する。すなわち、前記アクリル系単量体のうち、多環式脂肪族炭化水素環中にヒドロキシル基(特に、複数のヒドロキシル基)を有する単量体などは、ヒドロキシル基の分子間水素結合のために分子同士が互いに凝集しやすく、一旦、固体状態になると、溶媒に溶解させるのが困難である。このような性質は、ヒドロキシル基を有するアクリル系単量体の純度が高くなるほど顕著になる。そのため、高純度のヒドロキシル基含有アクリル系単量体を溶液重合すると、重合系中に不溶モノマー成分が存在し、反応が溶液中及び固体表面の双方で起こるため、生成した重合体は非常に不均質になる。
【0004】
このように、従来の方法では、ヒドロキシル基含有アクリル系単量体を、効率よく溶媒に溶解させるのは困難であり、高純度で均質な重合体を得ることができない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、高純度のアクリル系単量体であっても、容易に溶媒へ溶解でき、均一系で重合できる重合方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、ヒドロキシル基を有するアクリル系単量体から、溶液重合によって、均質な重合体を得ることができる重合方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討の結果、アルコール類、スルホキシド類又はアミド類を含む溶媒中、ヒドロキシル基を有する特定のアクリル系単量体を重合すると、高純度のアクリル系単量体であっても溶媒中に容易に溶解し、均質な重合体を得ることができることを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の重合方法は、(1)アルコール類と、(2)環状エーテル類、ケトン類、及びエステル類から選択された少なくとも1種の有機溶媒とで構成された混合溶媒中、少なくとも下記式(I)で表される重合性単量体(以下、アクリル系単量体という場合がある)を重合する。
【0009】
【化4】
Figure 0004585636
【0010】
アルコール類は、 1−3 アルキルアルコール(メタノール、エタノールなど)であってもよい。混合溶媒は、メタノール及びエタノールから選択された少なくとも1種のアルコール類と、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン及びジオキサンから選択された少なくとも1種の有機溶媒とで構成してもよい。アルコール類と有機溶媒との割合は、前者/後者(重量比)=50/50〜99/1程度である。前記式(I)で表される単量体は、下記式(IIIa)又は(IIIb)で表される単量体であってもよい。
【0011】
【化5】
Figure 0004585636
【0012】
(式中、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示し、R1は前記に同じ)
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の方法では、アルコール類、スルホキシド類及びアミド類から選択された少なくとも1種の溶媒中、少なくとも下記式(I)で表されるアクリル系単量体を重合する。
【0014】
【化6】
Figure 0004585636
【0015】
(式中、R1は水素又はアルキル基、R2は多環式脂肪族炭化水素環を含む基を示し、nは1〜3の整数を示す)
1で表されるアルキル基には、メチル、エチル、プロピルなどのC1-3アルキル基(特に、メチル基)などが挙げられる。
【0016】
2に含まれる多環式脂肪族炭化水素環には、例えば、スピロ炭化水素環,環集合炭化水素環,縮合環式炭化水素環や架橋環式炭化水素環が含まれる。スピロ炭化水素環には、例えば、スピロ[4.4]ノナン,スピロ[4.5]デカン,スピロビシクロヘキサンなどのC8-16炭化水素環などが含まれる。環集合炭化水素環としては、例えば、ビシクロヘキサン,ビパーヒドロナフタレン環などのC5-12シクロアルカン環を有する炭化水素環が例示でき、縮合環式炭化水素環には、例えば、パーヒドロナフタレン環(デカリン環)、パーヒドロアントラセン環、パーヒドロフェナントレン環,パーヒドロアセナフテン環,パーヒドロフルオレン環,パーヒドロインデン環,パーヒドロフェナレン環などの5〜8員シクロアルカン環が縮合した縮合環が例示できる。
【0017】
好ましい炭化水素環は、架橋環式炭化水素環であり、架橋環式炭化水素環には、例えば、ピナン、ボルナン、ノルピナン、ノルボルナンなどの2環式炭化水素類;ホモブレダン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン,トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカンなどの3環式炭化水素類;テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、パーヒドロ−1,4−メタノ−5,8−メタノナフタレンなどの4環式炭化水素類など]、ジエン類の二量体の水素添加物[例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロペプタジエンなどのシクロアルカジエンの二量体の水素添加物(例えば、パーヒドロ−4,7−メタノインデンなど),ブタジエンの二量体(ビニルシクロヘキセン)やその水素添加物,ブタジエンとシクロペンタジエンとの二量体(ビニルノルボルネン)やその水素添加物など]などが含まれる。好ましい架橋環式炭化水素環は、通常、ボルナン、ノルボルナンやアダマンタン骨格を有している。特に好ましい架橋環式炭化水素環は、アダマンタン骨格を有する。
【0018】
2で表される基は、前記多環式脂肪族炭化水素環を含んでいればよく、(メタ)アクリロイルオキシ基と多環式脂肪族炭化水素環との間に、アルキレン基[例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのC1-4アルキル基、ジメチルメチレンなどの分岐アルキレン基など]などが介在していもよい。
【0019】
好ましいR2は、下記式(IIa)〜(IIe)で表される。
【0020】
【化7】
Figure 0004585636
【0021】
(式中、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示す)
3及びR4で表されるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルなどのC1-6アルキル基などが挙げられる。
【0022】
好ましいアクリル系単量体としては、下記式(IIIa)又は(IIIb)で表される。
【0023】
【化8】
Figure 0004585636
【0024】
(式中、R1、R3及びR4は前記に同じ)
これらのアクリル系単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0025】
なお、前記アクリル系単量体の製造方法は、N−ヒドロキシフタルイミドなどの酸化触媒と、必要により助触媒とで構成された触媒系の存在下、酸素酸化によりアダマンタンなどの多環式脂肪族炭化水素にヒドロキシル基を導入し、(メタ)アクリル酸とエステル化することにより製造できる(特平11−135623号)。
【0026】
また、本発明の方法では、必要により、前記アクリル系単量体とともに共重合性単量体を併用してもよい。共重合性単量体としては、ビニル単量体、例えば、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類;スチレン、α-メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレンなどの芳香族ビニル系単量体:塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン含有ビニル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエスエル系単量体;ビニルピロリドンなどの複素環式ビニル単量体;カルボキシル基含有単量体(例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和多価カルボン酸);スルホン酸基含有単量体又はその塩(例えば、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸又はその塩など);不飽和多価カルボン酸誘導体(マレイン酸ジメチル、フマル酸ジエチルなどのエステル類、N−フェニルマレイミドなどのN−置換マレイミドなど);(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸C1-18アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルシクロへキシルなどの(メタ)アクリル酸C1-12シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル;ベンジル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸アラルキルエステル;パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレートなどのハロゲン含有(メタ)アクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類[例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2-6アルキル(メタ)アクリレート;オキシC2-4アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど];グリシジル(メタ)アクリレート、(β−メチル)グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有ビニル単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアルキルアミノ−アルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド(メタ)アクリレート;ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、α−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレートなどのシリル基含有ビニル系単量体などが挙げられる。このような共重合性単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい共重合体性単量体としては、(メタ)アクリル酸C1-10アルキルエステルなどの(メタ)アクリル系単量体、スチレン、ヒドロキシスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、酢酸ビニルなどのビニルエステル類などが挙げられる。
【0027】
前記アクリル系単量体と共重合性単量体との割合は、アクリル系単量体/共重合性単量体(重量比)=100/0〜1/99、好ましくは70/30〜3/97、さらに好ましくは50/50〜5/95程度である。
【0028】
また、必要であれば少量の多官能性ビニル単量体(例えば、ジビニルベンゼン,エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなど)を使用してもよい。
【0029】
本発明の方法では、アルコール類、スルホキシド類及びアミド類から選択された少なくとも1種を含む溶媒中、少なくとも前記式(I)で表されるアクリル系単量体を重合する。溶媒の溶解度パラメータ(SP値:計算値、単位(J/cm)1/2)は、23〜30、好ましくは24〜30程度である。
【0030】
上記溶媒のうち、スルホキシド類、アミド類は、単独の溶媒であっても、前記アクリル系単量体が容易に溶解するため、均質な重合体を得ることができ、操作も簡便であるが、スルホキシド類やアミド類は、高沸点溶媒であるため、溶媒の留去により重合体を得る場合、反応温度の制御が容易でなく、工業的に不利である。そのため、アルコール類を含む溶媒を用いるのが好ましい。一方、アルコール類のうち、SP値によっては、前記アクリル系単量体を完全に溶解できない場合がある。そのようなアルコール類を使用する場合には、他の有機溶媒と組み合わせてSP値を調整してもよい。従って、溶媒としては、通常、(1)アルコール類と有機溶媒との混合溶媒、又は(2)スルホキシド類及びアミド類から選択された少なくとも1種の溶媒が使用できる。
【0031】
アルコール類としては、例えば、モノアルコール[例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブタノール、イソブチルアルコール、イソアミルアルコール、ヘキサノールなどのC1-6(好ましくはC1-4)アルキルアルコール、シクロヘキサノールなどのシクロアルカノールなど]などが挙げられる。これらのアルコール類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。好ましいアルコール類としては、C1-3アルキルアルコール(例えば、メタノール、エタノール、特にメタノール)が挙げられる。
【0032】
スルホキシド類としては、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。アミド類としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセチルアミドなどのジメチルアシルアミド、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどが挙げられる。好ましい溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0033】
有機溶媒としては、環状エーテル類[例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなどの飽和3〜8員環(特に、4〜6員環)環状エーテル]、ケトン類[例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの脂肪族C1-2アルキルC1-4アルキルケトン、シクロヘキサノンなどのC4-8アルキルケトンなど]、エステル類[例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチルなどのギ酸C1-5アルキルエステル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ヘキシルなどの酢酸C1-6アルキルエステルなど]などが挙げられる。好ましい有機溶媒としては、環状エーテル、特にテトラヒドロフランが挙げられる。
【0034】
これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0035】
アルコール類と有機溶媒との割合は、前者/後者(重量比)=50/50〜99/1、好ましくは60/40〜95/5、さらに好ましくは70/30〜90/10程度である。
【0036】
なお、前記アルコール類と有機溶媒との混合溶媒を使用する場合、特に、前記単量体をアルコール類に分散又は溶解させた後、前記有機溶媒に溶解させて、重合するのが好ましい。前記アクリル系単量体を有機溶媒に分散(懸濁)させてから、アルコール類に添加しても前記アクリル系単量体は溶解しない場合があるが、有機溶媒中では、前記アクリル系単量体分子が互いに集合又は凝集し、良溶媒であるアルコール類を添加してもその凝集が分散しないためのようである。
【0037】
本発明によれば、高純度で、通常の溶媒には不溶性のアクリル系単量体であっても、容易に溶解させることができるので、溶液重合により均質な重合体を得ることができる。
【0038】
重合方法は、イオン重合、リビング重合であってもよいが、通常、ラジカル重合により行うことができる。
【0039】
重合開始剤としては、慣用の成分、例えば、アゾ系重合開始剤[例えば、アゾビスニトリル(例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などの2,2’−アゾビスブチロニトリル類;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などの2,2’−アゾビスバレロニトリル類;2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などの2,2’−アゾビスプロピオニトリル類;1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリルなどの1,1’−アゾビス−1−シクロアルカンニトリル類;4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などのアゾビスシアノカルボン酸など)、アゾニトリル(例えば、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリルなどのアゾブチロニトリル類;2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルなどのアゾバレロニトリル類など)など];パーオキサイド系重合開始剤[例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレートなどのパーオキシケタール類、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類、ビス(t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル類など有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなど)などの無機過酸化物など]が例示できる。このような重合開始剤は、一種又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0040】
重合開始剤の使用量は、特に制限されず、例えば、アクリル系単量体100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部程度である。
【0041】
重合温度としては、通常、50℃〜120℃、好ましくは60℃〜90℃程度の範囲から選択できる。なお、重合反応は、不活性ガス(例えば、窒素ガス、ヘリウムガス)雰囲気中で行うことができる。
【0042】
生成した重合体は、種々の方法、例えば、得られた重合体を貧溶媒に溶解させ、沈殿した重合体を回収した後、良溶媒に溶解させ、再び貧溶媒に溶解させて重合体を精製する再沈精製により精製してもよい。例えば、前記アクリル系単量体の割合が高い重合体では、重合反応終了後、反応混合物に貧溶媒(ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類や石油エーテルなどの炭化水素系溶媒など)を添加して重合体を沈殿させ、沈殿した重合体を濾別した後、良溶媒(テトラヒヒドロフランなどの環状エーテル類など)に溶解させ、再び貧溶媒を加え、沈殿させる操作を少なくとも1サイクル繰り返して精製してもよい。また、前記アクリル系単量体の割合が低い重合体では、反応混合物に、貧溶媒(水とメタノールなどのアルコール類との混合溶媒など)を添加し、重合体を沈殿させ、沈殿した重合体を濾別してから、良溶媒(テトラヒドロフランなど)に溶解させ、貧溶媒を添加して重合体を沈殿させて精製してもよい。
【0043】
本発明の方法により得られた重合体は、前記式(1)で示される単量体を構成単位とする均質な重合体である。また、得られた重合体の分子量は、用途に応じて広い範囲から選択でき、分子量分布の狭い重合体が得られる。重合体の分子量としては、例えば、重量平均分子量Mw3000〜200000、好ましくは3000〜100000、さらに好ましくは4000〜80000程度の範囲から選択できる。特にフォトレジスト用途においては、Mw=3000〜20000程度であるのが好ましい。
【0044】
共重合体の構造は、特に制限されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
【0045】
本発明の方法により、得られた重合体は均質であるため、種々の用途(例えばレジスト材料用高分子、塗料、コーティング剤、光学樹脂材料など)に有用である。
【0046】
【発明の効果】
本発明では、溶媒として、アルコール類と有機溶媒との混合溶媒、又はスルホキシド類やアミド類を使用するので、本来、不溶性のアクリル系単量体であっても容易に溶解できるとともに、溶液重合により、高純度で均質な重合体を得ることができる。従って、得られた重合体は、分子量分布が狭く、単分散であるため、高精度の要求されるフォトレジスト材料としても有用である。
【0047】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0048】
調製例1[ジヒドロキシアダマンタンアクリレートの合成]
1,3,5−アダマンタントリオール(1.00ミリモル)、ヨウ化サマリウム(0.10ミリモル)、アクリル酸イソプロペニル(1.10ミリモル)、ジオキサン(2mL)の混合溶液を50℃で4時間攪拌した。ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、反応混合液中には、1−アクリロイルオキシ−3,5−アダマンタンジオールが収率90%で得られた。
【0049】
白色固体
マススペクトルデータ [M]+:238
IR(cm-1):3320、1620、1320、1140
調製例2[ジヒドロキシアダマンタンメタクリレートの合成]
アクリル酸イソプロペニルに代えて、メタクリル酸イソプロペニルを用いる以外、調製例1と同様にして反応を行ったところ、1−メタクリロイルオキシ−3,5−アダマンタンジオールが収率90%で得られた。
【0050】
白色固体
マススペクトルデータ [M]+:252
IR(cm-1):3320、1610、1390、1120
実施例1[ジヒドロキシアダマンチル誘導体化合物の溶解性]
各溶媒の溶解度パラメーター(SP値)、および前記調製例1及び2で得られたジヒドロキシアダマンタンアクリレート及びジヒドロキシアダマンタンメタアクリレートに対する前記溶媒の溶解性について調べた結果を表1に示す。なお、SP値は計算で求めた。溶解性については、以下の基準で評価した。
【0051】
◎…可溶
○…部分可溶
×…不溶
なお、可溶、不溶の判断は、各溶媒に対してジヒドロキシアダマンタン(メタ)アクリレートが10重量%以上溶解した場合を可溶として評価した。
【0052】
【表1】
Figure 0004585636
【0053】
実施例2
三角フラスコにアダマンチルメタアクリレート5.0g(22.7ミリモル)、ジヒドロキシアダマンチルアクリレート5.4g(22.7ミリモル)および開始剤(和光純薬工業製、商品名V−65)1.04gを仕込み、この三角フラスコにメタノール20g、テトラヒドロフラン(THF)5gの順に添加し、完全に溶解したモノマー溶液を得た。一方、還流管および3方コックを備えた100mLフラスコに、THFを15g仕込み、前記モノマー溶液を、送液ポンプを用いて、窒素雰囲気下、90分かけて反応系へ導入した。送液終了後、温度を60℃に保ち、10時間攪拌した後、反応液を500mLのヘキサンに添加し、生成した沈殿を濾別した。この再沈精製操作を再度一度繰り返し、重合体7.4gを得た。
【0054】
得られた重合体をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析したところ、重量平均分子量Mwが9000、数平均分子量Mnが3300あり、分散度(Mw/Mn)が2.7であった。なお、得られた重合体はGPC測定の結果、単分散であることが認められた。
【0055】
実施例3
三角フラスコにt−ブチルメタアクリレート2.7g(19.1ミリモル)、ジヒドロキシアダマンチルメタアクリレート4.8g(19.1ミリモル)、および開始剤(和光純薬工業製、商品名V−65)0.98gを仕込み、この三角フラスコにメタノール20g、THF5gの順に溶媒を添加し、完全に溶解したモノマー溶液を得た。一方、還流管および3方コックを備えた100mLフラスコに、THFを15g仕込み、前記モノマー溶液を送液ポンプを用いて、窒素雰囲気下、90分かけて反応系へ導入した。送液終了後、温度を60℃に保ち、10時間攪拌した後、反応液を500mLのヘキサンに添加し、生成した沈殿を濾別した。この再沈精製操作をもう一度繰り返し、重合体7.41gを得た。
【0056】
得られた重合体をGPC分析したところ、Mwが8000、Mnが3500、分散度(Mw/Mn)が2.3であった。なお、得られた重合体はGPC測定の結果、単分散であることが認められた。

Claims (8)

  1. (1)アルコール類と、(2)環状エーテル類、ケトン類、及びエステル類から選択された少なくとも1種の有機溶媒とで構成された混合溶媒中、少なくとも下記式(I)で表されるアクリル系単量体を重合する方法。
    Figure 0004585636
    (式中、R1は水素又はアルキル基、R2は多環式脂肪族炭化水素環を含む基を示し、nは1〜3の整数を示す)
  2. アルコール類がC1−3アルキルアルコールである請求項1記載の重合方法。
  3. 混合溶媒が、メタノール及びエタノールから選択された少なくとも1種のアルコール類と、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン及びジオキサンから選択された少なくとも1種の有機溶媒とで構成されている請求項1又は2記載の重合方法。
  4. アルコール類と有機溶媒との割合が、前者/後者(重量比)=50/50〜99/1である請求項1〜3のいずれかに記載の重合方法。
  5. 式(I)の単量体において、R2が下記式(IIa)〜(IIe)で表される請求項1〜4のいずれかに記載の重合方法。
    Figure 0004585636
    (式中、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示す)
  6. 式(I)で表される単量体が、下記式(IIIa)又は(IIIb)で表される単量体である請求項1〜5のいずれかに記載の重合方法。
    Figure 0004585636
    (式中、R1、R3及びR4は前記に同じ)
  7. アクリル系単量体とともに共重合性単量体を重合する請求項1〜6のいずれかに記載の重合方法。
  8. 少なくとも式(I)で表されるアクリル系単量体を、アルコール類に分散又は溶解させた後、有機溶媒に溶解させて重合する請求項1〜7のいずれかに記載の重合方法。
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