JP4585256B2 - チタン化合物の微粒子を含む分散体の製造方法 - Google Patents

チタン化合物の微粒子を含む分散体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属酸化物膜の形成に有用なチタン化合物の微粒子を含む分散体の製造方法に関する。
近年、金属酸化物膜、化学吸着膜等の形成用材料や、有機−無機複合ハイブリッド材料等として、金属アルコキシド、金属塩等の金属化合物から得られる分散質が注目されている。
例えば、特許文献1には、透明で均質な金属酸化物ゾルの製造方法として、一種又は二種以上の金属アルコキシドの溶液に、−20℃以下の温度で水を添加することを特徴とする金属酸化物前駆体ゾルの製造方法が提案されている。
特許文献2には、チタンテトラアルコキシドを、1.0倍モル〜1.7倍モルの水を用いて20〜90℃の温度で加水分解する、有機溶剤溶解性の高分子量のラダー状ポリチタノキサンの製造方法が記載されている。この方法は、高分子量体においても有機溶剤に溶解し、緻密な薄膜を形成する高分子量のラダー状ポリチタノキサンを提供することを目的としている。
また、特許文献3には、水を加えて加熱することにより部分的に加水分解した金属塩1モルに対して、0.1〜2.0モルの水を含有するアルコール溶液を加えて加熱して、金属塩を加水分解して金属水酸化物とし、脱水縮合した後、濃縮する金属酸化物前駆体溶液の製造方法が記載されている。
しかしながら、上述した方法によれば、得られる金属酸化物ゾル中に、製造に用いた水や酸、塩基が残存し、金属アルコキシドの加水分解生成物が安定して存在できないために、反応液に酸又は塩基を用いてpHを調整したり、分散安定化剤を添加する必要があり、また、反応液に残存する水や酸、塩基が、重合を阻害したり生成物の物性に悪影響を及ぼす場合があった。さらに、加水分解・脱水縮合後の濃縮段階で金属アルコキシドの加水分解生成物が凝集し、形成する金属酸化物膜の光透過率が低下するという問題もあった。
特開平10−298769号公報 特開平1−129032号公報 特開2001−342018号公報
本発明は、このような従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、金属酸化物膜の形成に有用なチタン化合物の微粒子を含む分散体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、チタンテトライソプロポキシドの有機溶媒溶液に、−20℃以下の低温で所定量の水を滴下した後、自然昇温させ、次いで反応液を還流することで微粒子を得た。そして、得られた微粒子の分子構造を種々の分析手段により解析したところ、この微粒子は、空間的に6つの金属原子が5角錐の頂点に位置する配置を2つ含む新規な分子構造を有するチタン化合物であるという知見を得た。さらに、このような分子構造を有するチタン化合物は、(i)粒子径が数ナノメートル程度の超微粒子であって、しかも粒子径分布が単分散であること、(ii)有機溶媒中に均一に分散させることができること、(iii)有機溶媒中で安定して存在すること、及び(iv)金属酸化物膜、化学吸着膜等の形成用材料や、有機−無機複合ハイブリッド材料として有用であることを見出した。また、前記チタン化合物の微粒子の分散液に所定量の水を添加し、加熱処理すると、前記チタン化合物とは異なる結晶構造を有するチタン化合物の微粒子の分散体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、下記(1)〜(5)に記載の分散体の製造方法が提供される。
(1)Ti(OR)(式中、Rはアルキル基を表す。)で表されるチタンアルコキシドの有機溶媒溶液に、該チタンアルコキシドに対し、0.5〜1.0倍モルの水を添加したのち、還流することにより、1分子内に、11個のチタン原子を含み、空間的に6つのチタン原子が5角錐の頂点に位置する配置と、5つのチタン原子が頂点に位置する5角形からなる配置を含む分子構造を有し、前記分子構造が、5角錐の底面を介して前記5角錐と前記5角形が対峙している配置を有するものであり、かつ、各チタン原子が架橋型酸素原子によって架橋されてなるチタン化合物の微粒子を含む分散液を得る工程と、
前記分散液より析出するチタン化合物の微粒子を単離し、単離したチタン化合物の微粒子を有機溶媒に再度分散させることにより得られる分散液に、該分散液に含まれるチタン化合物に対し、0.1〜1.0倍モルの水を添加し、50℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲で加熱処理する工程を有する分散体の製造方法。
(2)1分子内に、空間的に6つのチタン原子が5角錐の頂点に位置する配置を2つ含む分子構造を有するチタン化合物の微粒子であって、有機溶媒中に分散することができるチタン化合物の微粒子を含む分散体を得るものである(1)に記載の分散体の製造方法。
(3)前記分子構造が、前記5角の底面を向けて、前記2つの5角が一定の角度を持って対峙している分子構造である(2)に記載の分散体の製造方法。
(4)前記分散体に含まれるチタン化合物の微粒子が、有機溶媒中、酸、塩基、及び/又は分散安定化剤の非存在下に凝集せずに安定に分散しているものである(1)〜(3)のいずれかに記載の分散体の製造方法。
(5)前記分散体に含まれるチタン化合物の微粒子の平均粒径が0.5〜10nmである(1)〜(4)のいずれかに記載の分散体の製造方法。
(5)アルコキシ基が結合している金属原子を含むことを特徴とする(1)〜(4)いずれかの金属化合物。
(6)前記金属原子が、チタン原子、ジルコニウム原子、アルミニウム原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、インジウム原子、スズ原子、タンタル原子、亜鉛原子、タングステン原子及び鉛原子からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする(1)〜(5)いずれかの金属化合物。
(7)前記金属原子がチタン原子であることを特徴とする(1)〜(6)いずれかの金属化合物。
(8)本発明の第2によれば、式(1)
Figure 0004585256
(式中、Mは金属原子を表し、Rはアルキル基を表し、nは金属原子の原子価を表す。)で表される金属アルコキシド、この金属アルコキシドの2種以上から得られる複合アルコキシド、1種もしくは2種以上の金属アルコキシドと1種もしくは2種以上の金属塩との反応により得られる複合アルコキシド、又はこれらの2種以上の組み合わせのいずれかの有機溶媒溶液に、所定量の水を添加して加水分解することを特徴とする(1)〜(7)いずれかの金属化合物の製造方法が提供される。
本発明の第3によれば、下記(9)又は(10)の分散液が提供される。
(9)前記(1)〜(7)いずれかの金属化合物の微粒子が、有機溶媒中に分散してなる分散液。
(10)前記(1)〜(7)いずれかの金属化合物の微粒子が、有機溶媒中、酸、塩基、及び/又は分散安定化剤の非存在下に凝集せずに安定に分散しているものである(9)の分散液。
本発明の第4によれば、下記(11)〜(15)いずれかの分散体が提供される。
(11)前記(9)又は(10)の分散液に、該分散液に含まれる金属化合物に対し、0.1〜1.0倍モルの水を添加し、加熱処理して得られる分散体。
(12)式(1)
Figure 0004585256
(式中、Mは金属原子を表し、Rはアルキル基を表し、nは金属原子の原子価を表す。)で表される金属アルコキシド、この金属アルコキシドの2種以上から得られる複合アルコキシド、1種もしくは2種以上の金属アルコキシドと1種もしくは2種以上の金属塩との反応により得られる複合アルコキシド、又はこれらの2種以上の組み合わせのいずれかの有機溶媒溶液に、所定量の水を添加して加水分解することにより、請求項1〜7いずれかに記載の金属化合物の微粒子を含む分散液を得たのち、得られた分散液に、該分散液に含まれる金属化合物に対し、0.1〜1.0倍モルの水を添加し、加熱処理して得られる分散体。
(13)1分子内に、空間的に6つの金属原子が5角錐の頂点に位置する配置を2つ含む分子構造を有する金属化合物の微粒子であって、有機溶媒中に分散することができるものである(11)又は(12)の分散体。
(14)前記分子構造が、前記5角錐の底面を向けて、前記2つの5角錐が一定の角度を持って対峙している分子構造である(13)の分散体。
(15)前記金属化合物の微粒子が、有機溶媒中、酸、塩基、及び/又は分散安定化剤の非存在下に凝集せずに安定に分散しているものである(12)〜(14)いずれかの分散体。
本発明の分散体を使用することにより、基体表面に緻密で均一な金属酸化物膜を形成することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
1)金属化合物
本発明の第1は、1分子内に、空間的に6つの金属原子が5角錐の頂点に位置する配置と、5つの金属原子が頂点に位置する5角形からなる配置を含む分子構造を有することを特徴とする金属化合物である。
本発明の金属化合物を構成する金属としては特に制限されないが、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、短周期型周期律表第IIIB族元素、同周期律表第IVB族元素、同周期律表第VB族元素、遷移金属元素及びランタニド元素からなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。これらの中でも、金属酸化物膜及び化学吸着膜の形成用材料、並びに複合ハイブリッド材料としての有用性の観点から、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、インジウム、スズ、タンタル、タングステン、亜鉛及び鉛が好ましく、チタンが特に好ましい。
本発明の金属化合物は、1分子内に、5角錐の底面(五角形の面)を介して前記5角錐と前記5角形が対峙しているものであるのが好ましく、前記5角錐の底面と前記5角形が一定の角度を持って対峙しているものがより好ましい。
本発明の金属化合物は、その分子構造を構成する各金属原子が、互いに架橋型酸素原子によって架橋されているものが好ましい。架橋型酸素原子には、2つの金属原子のみと結合するμ型架橋酸素原子、3つの金属原子と結合するμ型架橋酸素原子、及び4つの金属原子と結合するμ型架橋酸素原子等が存在し得るが、本発明の金属化合物は、少なくともμ型架橋酸素原子を有するものが好ましい。
本発明の金属化合物は、金属原子が架橋型酸素原子により架橋され、さらにアルコキシ基が結合している金属原子を含むものが好ましい。アルコキシ基としては特に制限されないが、原料の入手容易性、生産効率等の点から、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。結合するアルコキシ基の数は特に制限されず、金属原子の種類や原子価、一分子中に含まれる金属原子の数等に依存する。また、アルコキシ基が複数個の場合、結合するアルコキシ基は全てが同一であっても、種類が異なっていてもよい。
本発明の金属化合物の基本骨格を図1に示す。図1中、黒丸は金属原子を表す。図1に示す基本骨格は、6つの金属原子が5角錐の頂点に位置する配置と5つの金属原子が頂点に位置する5角形からなる配置を含む構造を有する。そして、この5角錐の底面が5つの金属原子が頂点に位置する5角形が対峙し一定の角度を保っている。この角度は、金属原子の大きさ等により定まるものであり、例えば、金属原子がチタン原子の場合には約36°である。また、図1においては、便宜上金属原子同士が結合した構造となっているが、実際には、各金属原子は直接結合していても、架橋型酸素原子を介して結合していてもよい。
本発明の金属化合物は、1分子内に、空間的に6つの金属原子が5角錐の頂点に位置する配置と5つの金属原子が頂点に位置する5角形からなる配置を含む構造を有するものであれば、図1に示す基本骨格を有するものに限定されない。例えば、1分子内に、空間的に6つの金属原子が5角錐の頂点に位置する配置と5つの金属原子が頂点に位置する5角形からなる配置を含む構造を有するが、金属原子と金属原子との結合距離がすべて同じではないものや、1分子内に、空間的に6つの金属原子が5角錐の頂点に位置する配置と5つの金属原子が頂点に位置する5角形からなる配置を含む構造を有するが、5角錐の底面に位置する5角形又は5つの金属原子が頂点に位置する5角形が、正5角形ではないもの等も本発明に含まれる。
2)金属化合物の製造方法
本発明の第2は、式(1)
Figure 0004585256
で表される金属アルコキシド、この金属アルコキシドの2種以上から得られる複合アルコキシド、1種もしくは2種以上の金属アルコキシドと1種もしくは2種以上の金属塩との反応により得られる複合アルコキシド、又はこれらの2種以上の組み合わせ(以下、「金属アルコキシド類」ということがある。)のいずれかを加水分解することを特徴とする本発明の金属化合物の製造方法である。
前記式(1)で表される金属アルコキシドにおいて、式(1)中、Mは金属原子を表す。金属原子としては、チタン原子、ジルコニウム原子、アルミニウム原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、インジウム原子、スズ原子、タンタル原子、亜鉛原子、タングステン原子及び鉛原子からなる群から選ばれる1種以上が挙げられ、チタン原子が特に好ましい。
Rはアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は特に限定されないが、入手が容易であり、取扱い性にも優れることから、通常1〜10、好ましくは1〜4である。また、nは金属原子の原子価を表す。
前記式(1)で表される金属アルコキシドの具体例としては、Ti(OCH、Ti(OC、Ti(OC−i)、Ti(OC等のチタンアルコキシド;Zr(OCH、Zr(OC、Zr(OC、Zr(OC等のジルコニウムアルコキシド;Al(OCH、Al(OC、Al(OC−i)、Al(OC等のアルミニウムアルコキシド;Si(OCH、Si(OC、Si(OC−i)、Si(OC−t)等のケイ素アルコキシド;Ge(OC等のゲルマニウムアルコキシド;In(OCH、In(OC、In(OC−i)、In(OC等のインジウムアルコキシド;Sn(OCH、Sn(OC、Sn(OC−i)、Sn(OC等のスズアルコキシド;Ta(OCH、Ta(OC、Ta(OC−i)、Ta(OC等のタンタルアルコキシド;W(OCH、W(OC、W(OC−i)、W(OC等のタングステンアルコキシド;Zn(OC等の亜鉛アルコキシド;Pb(OC等の鉛アルコキシド等が挙げられる。
2種以上の金属アルコキシド間の反応により得られる複合アルコキシドとしては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシドと遷移金属のアルコキシドとの反応により得られる複合アルコキシド、第IIIB族元素の組合せにより錯塩の形で得られる複合アルコキシド等を例示することができる。
これら複合アルコキシドの具体例としては、BaTi(OR)、SrTi(OR)、BaZr(OR)、SrZr(OR)、LiNb(OR)、LiTa(OR)、及びこれらの組合せ、LiVO(OR)、MgA1(OR)、(RO)SiOAl(OR’)、(RO)SiOTi(OR’)、(RO)SiOZr(OR’)、(RO)SiOB(OR’)、(RO)SiONb(OR’)、(RO)SiOTa(OR’)等のシリコンアルコキシドと前記金属アルコキシドとの反応物及びその縮重合物が挙げられる。ここで、Rは前記と同じ意味を表し、R’はRと同様のアルキル基を表す。
1種もしくは2種以上の金属アルコキシドと1種もしくは2種以上の金属塩との反応により得られる複合アルコキシドとしては、金属塩と金属アルコキシドとの反応により得られる化合物を例示することができる。金属塩としては、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩等を使用できる。また、金属アルコキシドとして、上述した金属アルコキシドと同様のものが使用できる。
金属アルコキシド類は、適当な有機溶媒に溶解又は分散させて使用する。有機溶媒中の金属アルコキシド類の濃度は、急激な発熱を抑制し、撹拌が可能な流動性を有する範囲であれば特に限定されないが、通常5〜30重量%である。
用いる有機溶媒としては、金属アルコキシド類の加水分解反応に対して不活性なものであれば特に制約されない。金属アルコキシド類の加水分解反応を低温で行うためには、低い凝固点、好ましくは0℃以下、より好ましくは−50℃以下の凝固点を有するものが好適である。具体的には、エーテル系溶媒や芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。芳香族炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、ブロモベンゼン、クメン、テトラリン、ブチルベンゼン、シメン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、酢酸ベンジル等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、本発明の金属化合物が収率よく得られることから、トルエン、テトラヒドロフランの使用が好ましい。
また、金属アルコキシド類が有機溶媒と均一に混合しない場合には、例えば、1,2−ビス−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)−1−エタンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(6)ノニルフェニルエーテル等の界面活性剤を添加したり、撹拌処理、超音波処理等を施し、溶液を均一にするのが好ましい。
有機溶媒の使用量は、金属アルコキシド類100重量部に対し、通常10〜5,000重量部、好ましくは100〜3,000重量部である。10重量部未満では生成する微粒子が結合した状態で成長し、粒径制御が困難になる場合があり、一方5,000重量部を超えると溶液が希薄すぎて、微粒子の生成が困難となるおそれがある。
金属アルコキシド類の加水分解に用いる水は、中性であれば特に制限されないが、副反応を抑制する観点から、不純物含有量の少ない純水、蒸留水又はイオン交換水が好ましい。
反応に関与する水の使用量は特に制限されないが、具体的には、金属アルコキシド類に対し0.5〜1.5倍モル、好ましくは0.5〜1.0倍モルを例示することができる。
水の添加方法としては、使用量の全量の水を連続的に添加する方法、及び複数回に分割して添加する方法のいずれであってもよい。後述するように、水を複数回に分割して添加する場合には、添加するときの温度を変化させてもよい。例えば、第1回目の水の添加を−25℃〜−20℃で行い、2回目の添加を−80℃〜−70℃で行うことができる。
また、水は適当な有機溶媒に希釈して用いることもできる。有機溶媒に希釈した水を用いることで、水の滴下時における局部的な発熱を防止して、金属アルコキシド類の均質な加水分解を行うことができる。水の希釈に用いる有機溶媒としては、水と相溶性のあるものが好ましい。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール等が挙げられる。
金属アルコキシド類の水による加水分解反応においては、酸、塩基又は分散安定化剤を添加してもよい。
酸及び塩基は、凝結してできた沈殿を再び分散させる解膠剤として、また、金属アルコキシド類及び生成した金属アルコキシド類の多量体等を加水分解、脱水縮合させてコロイド粒子等の分散質を製造するための触媒として、並びに生成した分散質の分散剤として機能するものであれば特に制限されない。
酸としては、例えば、塩酸、硝酸、ホウ酸、ホウフッ化水素酸等の鉱酸;酢酸、ギ酸、シュウ酸、炭酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等の光照射によって酸を発生する光酸発生剤;等が挙げられる。塩基としては、例えば、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、アンモニア、ジメチルホルムアミド、ホスフィン等が挙げられる。
分散安定化剤は、分散質を分散媒中に安定に分散させる効力を有する、解膠剤、保護コロイド、界面活性剤等の凝結防止剤等の剤をいう。その具体例としては、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸等の多価カルボン酸;ヒドロキシカルボン酸;ピロ燐酸、トリポリ燐酸等の燐酸;アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢駿−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、2,4−ノナンジオン、5−メチル−ヘキサンジオン等の金属原子に対して強いキレート能力を有する多座配位子化合物;等が挙げられる。
金属アルコキシド類と水との加水分解反応を行う方法としては、(a)金属アルコキシド類の有機溶媒溶液に水を添加する方法、(b)水と有機溶媒との混合溶媒中に、金属アルコキシド類を添加する方法等が挙げられるが、収率よく本発明の金属化合物を得ることができることから、(a)の方法が好ましい。なかでも、金属アルコキシド類を有機溶媒に溶解又は分散させた溶液に、金属アルコキシド類に対し0.5倍モル〜1.5倍モルの水を、−20℃以下でゆっくりと添加し、反応液を自然昇温させた(第1工程)後、還流する(第2工程)方法が特に好ましい。
第1工程においては、金属アルコキシド類の低温加水分解反応が主に進行するものと考えられる。例えば、金属アルコキシド類としてチタンテトライソプロポキシドを使用する場合、第1工程により、ゆるい結晶類似かご型(鎖)構造(準安定化構造)を有する微粒子の分散液が得られる。
水の滴下温度は、用いる金属アルコキシド類の安定性に依存する。通常、−20℃以下の温度であれば特に問題はないが、金属アルコキシド類の種類によっては、−50℃〜−100℃の温度範囲で行うことがより好ましい場合がある。このように低温で水を滴下することにより、微粒子状の本発明の金属化合物の分散液を得ることができる。
水の滴下時間は反応規模等によるが、通常10分から3時間、好ましくは15分から1時間である。滴下終了後においては、反応液を室温に昇温し、熟成のために1〜24時間撹拌を続けるのが好ましい。
第2工程は、第1工程で得られた反応液を用いる有機溶媒の還流温度で還流することにより本発明の金属化合物を含む溶液を得るものである。この工程においては、滴下した水が完全に加水分解に使用され、重縮合反応(脱水及び脱アルコール反応)により本発明の化合物が生成する。還流時間は特に制約はないが、通常30分〜5時間、好ましくは、1〜3時間である。
第2工程により得られる本発明の金属化合物を含む溶液は、本発明の金属化合物の微粒子が有機溶媒中で均一に分散したものである。分散質である金属化合物の微粒子は、その平均粒径が0.3〜5nm、好ましくは0.5〜3nmであり、粒径分布が0.1〜50nmの単分散である。
第2工程で得られた反応液を、室温以下の温度で静置することにより、本発明の金属化合物の結晶が析出する。析出した結晶をろ取することにより、これを単離することができる。本発明の金属化合物は安定であり、各種有機溶媒に対する分散性に優れる。
3)分散液
本発明の第3は、上述した本発明の金属化合物の微粒子が有機溶媒中に分散してなる分散液である。本発明の分散液は、本発明の金属化合物の微粒子が、有機溶媒中、酸、塩基、及び/又は分散安定化剤の非存在下に凝集せずに安定に分散しているものである。
本発明の分散液は、上述した製造方法により得られる反応液そのものであっても、あるいは、単離した本発明の金属化合物を有機溶媒に再度分散させることにより調製したものであってもよい。
本発明の分散液は、後述するように、金属酸化物膜、化学吸着膜等の形成用材料、有機−無機複合ハイブリッドの材料として有用である。
4)分散体
本発明の第4は、上述した本発明の分散液に、該分散液に含まれる金属化合物に対し0.1〜1.0倍モルの水を添加し、加熱処理して得られる分散体である。
また、本発明の分散体は、前記式(1)で表される金属アルコキシド、この金属アルコキシドの2種以上から得られる複合アルコキシド、1種もしくは2種以上の金属アルコキシドと1種もしくは2種以上の金属塩との反応により得られる複合アルコキシド、又はこれらの2種以上の組み合わせのいずれかの有機溶媒溶液に、所定量の水を添加して加水分解することにより、本発明の金属化合物の微粒子を含む分散液を得たのち、得られた分散液に、該分散液に含まれる金属化合物に対し、0.1〜1.0倍モルの水を添加し、加熱処理することによって得ることができる。
この場合において、前記式(1)で表される金属アルコキシド、この金属アルコキシドの2種以上から得られる複合アルコキシド、1種もしくは2種以上の金属アルコキシドと1種もしくは2種以上の金属塩との反応により得られる複合アルコキシド、又はこれらの2種以上の組み合わせとしては、前記本発明の金属化合物を製造する場合に用いることができるものとして列記した、前記式(1)で表される金属アルコキシド、この金属アルコキシドの2種以上から得られる複合アルコキシド、1種もしくは2種以上の金属アルコキシドと1種もしくは2種以上の金属塩との反応により得られる複合アルコキシド、又はこれらの2種以上の組み合わせと同様のものを使用することができる。
いずれの方法においても、加熱温度は、通常50℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲であるのが好ましい。
このようにして得られる本発明の分散体は、本発明の金属化合物(以下、「金属化合物(1)」ということがある)がさらに加水分解、重縮合した構造の金属化合物(以下、「金属化合物(2)」ということがある)を含む分散液であると考えられる。分散質である金属化合物(2)は微粒子状であり、その平均粒径が0.5〜10nm、好ましくは1〜6nmであり、粒径分布が0.1〜50nmの単分散である。
前記金属化合物(2)は、前記金属化合物(1)と同様に保存安定性に優れる。この金属化合物は、有機溶媒中、酸、塩基、及び/又は分散安定化剤の非存在下に安定に存在し得る。
本発明の分散体に含まれる金属化合物(2)の分子構造は、特に制限されるものではないが、金属化合物(1)の分子構造とは異なり、1分子内に、空間的に6つの金属原子が5角錐の頂点に位置する配置を2つ含む分子構造であるのが好ましく、前記5角錐の底面を向けて、前記2つの5角錐が一定の角度を持って対峙している分子構造であるのがより好ましい。
本発明の分散体の製造に用いる有機溶媒としては、金属化合物(2)の分散性に影響を与えない溶媒であれば特に制約はない。具体的には、上述した本発明の金属化合物(1)又は分散液を製造する際に用いることができる溶媒として例示したものと同様の溶媒が挙げられる。
金属化合物(2)の分散体中の濃度は、基板上に塗布可能な濃度であれば特に制限されず、後述する金属酸化物膜を成膜する際に採用する塗布方法や、金属酸化物膜の設定膜厚等により適宜設定することができる。一般的には、酸化物に換算した重量で5〜50重量%の範囲である。
(金属酸化物膜の形成)
上述した本発明の分散液又は分散体を基体上に塗布又は吹き付け後、200℃以下、好ましくは150℃以下の温度で加熱・乾燥し、成膜することにより金属酸化物膜を成膜することができる。前記分散液又は分散体を基体上に塗布又は吹き付け後、加熱することで、溶媒を乾燥し、前記生成物の加水分解及び脱水縮合を行う。加熱時間は、特に限定されないが、通常1〜120分の範囲である。
用いる基体の材質や大きさに特に制限はない。基体の材質としては、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック、紙、繊維、皮革等が挙げられる。基体の形状も、シート状、板状、フィルム状、立体物等いかなる形状であってもよい。また、すでに塗装した基体を用いることもできる。
本発明の分散液又は分散体を基体上に塗布する方法としては、特に制約はない。例えば、スピンコート法、デイップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等の公知の方法をいずれも使用することができる。なかでも、塗布時にパターニングできる、スクリーン印刷法やオフセット印刷法、ロールコート法が好ましく、大量生産を安価に行うことのできる、バーを用いるロールコート法、ギーサーを用いるロールコート法等のロールコート法がより好ましい。
本発明の分散液又は分散体を基体上に塗布又は吹き付けして金属酸化物膜を形成する場合においては、塗布(又は吹き付け)被膜の加熱時及び/又は加熱後に光照射するのが好ましい。塗布(又は吹き付け)被膜に紫外光もしくは可視光を照射する光源は、150nm〜700nmの波長の光を発生するものであれば、特に制約はない。例えば、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、ナトリウムランプ等が挙げられ、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプが好ましい。
また、前記分散液又は分散体を使用して金属酸化物を成膜した場合においては、金属酸化物膜中に金属水酸化物が残存するので、金属水酸化物が有する金属−OH結合の吸収を考慮して、400nm以下の紫外光を含む光を照射するのが好ましい。
さらに、脱水反応が進行してメタロキサンネットワークが形成されている場合においては、金属−O−金属結合の吸収は,金属−OH結合より短波長であるが、金属−O−金属結合を活性化することができる波長の光照射によって、金属酸化物の結晶化を促進させることができる。
光照射する時間は、特に限定されるものではないが、通常1分〜120時間である。
また、フォトマスクを併用することによって、透明導電性パターンを形成することができる。さらに、レーザー発振装置を使用することもできる。レーザー光を用いた場合、照射部分以外は金属酸化物とならないので、塗布時にスクリーン印刷等を用いることなく所望のパターンを形成することができる。
本発明の分散液又は分散体を用いて成膜した金属酸化物膜の膜表面は、平均粗さが10nm以下、好ましくは5nm以下であって、平坦性に優れ、濡れ性、撥水性、保存安定性にも優れている。
また、200℃以下の温度で乾燥することにより成膜できるので、プラスチック基板上にも成膜することができる。すなわち、プラスチック基板上にも、炭素含有量が元素比で10%以下の高密度の平滑な膜表面を有する金属酸化物膜を形成することができる。
本発明の分散液又は分散体は、化学吸着膜形成用材料としても有用である。例えば、アルキルトリアルコキシシランやフルオロアルキルトリアルコキシシラン等の金属系界面活性剤の有機溶媒溶液に、本発明の分散液又は分散体を所定量添加して化学吸着膜形成用溶液を調製し、このものをガラス基板等の基体上表面に塗布、乾燥することで、良好で緻密な単分子からなる化学吸着膜を形成することができる。
化学吸着膜の形成に用いる基体としては特に制約されず、前記金属酸化物膜の形成に用いることができる基体として列記したものと同様のものが挙げられる。その他、本発明の金属化合物は、有機−無機複合ハイブリッド材料としても有用である。
以下実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、有機溶媒は、モレキュラーシーブス(4A1/16、和光純薬工業製)で乾燥したものを使用した。
(参考例1)
チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)製A−1:純度99.9%、酸化チタン換算濃度28重量%)100g(0.35mol)を4つ口フラスコ中で、トルエン(ナカライテスク社製)370gに溶解し、窒素ガス置換した後に、ドライアイスを加えたメタノール浴で冷却し、−20℃とした。別に調製したイソプロピルアルコール(ナカライテスク社製)51.7gで希釈した蒸留水(ADBANTEC GS−200より採水)5.73g(H20/Ti=0.9mol/mol)の混合溶液を、−25〜−20℃で撹拌しながら30分間で滴下した。滴下終了後、反応液の撹拌を継続しながら、1.5時間かけて徐々に室温まで自然昇温し、さらに、80℃で2.5時間還流して、無色透明なゾル溶液を得た。この溶液の光透過率50%の光の透過波長は385nmであった。得られたゾル溶液のラマンスペクトルを測定した。 測定したラマンスペクトルを、図2に示す。
(粒径の測定)
得られたゾル溶液の粒径を、動的光散乱法(Malvern社製、HPPS)を用いてトルエン溶媒中、25℃で測定した。測定した粒度分布を図3に示す。ゾルは、図3に示すように、平均粒径1.52nmでシャープな単分散の粒度分布を示した。図3中、横軸は粒子径(nm)、縦軸はピーク強度(存在量)をそれぞれ示す。
H−NMR、13C−NMRの測定)
次いで、反応液から析出した白色結晶を濾取し、真空乾燥した。得られた結晶のH−NMR、13C−NMRの測定及びX線構造解析を行った。
得られた結晶をCに溶解させて、内部標準TMSとして、H−NMR、13C−NMRスペクトルを測定した。測定したH−NMRチャートを図4に、13C−NMRチャートを図5にそれぞれ示す。図4、5中、横軸はケミカルシフト(δppm)を示す。
(X線結晶解析)
得られた結晶の結晶構造及び分子構造は、迅速型単結晶X線解析装置(Rigaku R−AXIS RAPID)を用いて測定して決定した。構造解析精密化における最終のR値は4%であった。
組成式:C5412631Ti11・C(分子量=1890.58)
結晶系:斜方晶系(Pca2
格子定数:a=26.40Å、b=14.23Å、c=24.00Å、α=β=γ=90°、Z=4
上記測定結果より、参考例1で得られた結晶中には、11個のチタン原子が酸素原子によって架橋されたかご状構造(かご状チタニア)に、18個のイソプロポキシ基が結合した分子を4個含むユニットセルが、存在することが分かった。かご状チタニアは、空間的に6つのチタン原子が5角錐の頂点に位置する配置と5つのチタン原子が頂点に位置する5角形からなる配置を含み、該5角錐の底面と該5角形とが対峙し、約36°の角度を持って対峙した構造を有している。
このユニットセルを構成する各分子の構造を図6、及び物件提出書に添付のカラー図面1に示す。図6中、1はチタン原子、2は酸素原子をそれぞれ表す。図中、イソプロピル基の炭素原子及び水素原子、並びに溶媒和したトルエン分子の図示を省略している。なお、図6に示すものは紙面上側から見た図であり、11個のチタン原子、チタン原子間を架橋する酸素原子及び18個のイソプロポキシ基の全ては表されていない。
物件提出書に添付のカラー図面1中、青はチタン原子、赤は酸素原子、緑は炭素原子をそれぞれ表す。水素原子の図示は省略している。
得られた結晶中の分子配列を図7〜図9、及び物件提出書に添付のカラー図面2〜4にそれぞれ示す。図7及びカラー図面2はA軸投影図、図8及びカラー図面3はB軸投影図、図9及びカラー図面4はC軸投影図である。物件提出書に添付のカラー図面中、ピンクはチタン原子、赤は酸素原子、グレーは炭素原子をそれぞれ表す。
(参考例2)
参考例1で得られたゾルの溶液を、表面がオゾン処理されたポリエチレンテレフタレート基板(10cm×10cm、厚み5mm)上にNo.3のバーコーターを用いて塗布し、100℃で10分間乾燥して、該基板上に金属酸化物膜を形成した。SPM装置(セイコーインスツルメント社製、SPA−400(SII))を用いて該膜表面の形状を測定したところ、その表面の粗さは5nm以下であり、参考例1で得られた分散液から形成された金属酸化物膜は平滑であることが分かった。
(実施例1)
チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)製A−1:純度99.9%、酸化チタン換算濃度28重量%)100g(0.35mol)を4つ口フラスコ中で窒素ガス置換した。別に調製したイソプロピルアルコール(ナカライテスク社製)51.7gで希釈した蒸留水(ADBANTEC GS−200より採水)5.73g(H20/Ti=0.9mol/mol)の混合溶液を、40℃で撹拌しながら8時間で滴下した。滴下終了後、反応液の撹拌を継続しながら、さらに、80〜85℃で1時間還流した。次に、反応液を40〜50℃に冷却後、減圧下にイソプロピルアルコールを留去して無色透明なゾル溶液を得た。この溶液の光透過率50%の光の透過波長は356nm、平均粒子径は1.77nmであった。
得られたゾル溶液から析出した白色結晶を濾別し、真空乾燥して得られた結晶を、再びトルエン(ナカライテスク社製)に溶解し、窒素ガス置換した後、チタンアルコキシドに対し0.60倍モルの水を加えて透明なゾル溶液を調製した。反応液の撹拌を継続しながら、さらに、80℃で2.5時間還流して、無色透明な酸化チタン換算濃度30重量%のゾルの溶液を得た。この溶液の光透過率50%の光の透過波長は385nmであった。
得られたゾル溶液の粒径を測定した。得られたゾルの溶液の粒子は、平均粒子径5.2nmでシャープな粒度分布を示した。粒径分布を図10に示す。また、得られた反応液のH−NMRとラマンスペクトルを測定した。測定結果をそれぞれ図11、図12に示す。
本発明によれば、酸や塩基によりpHを調整したり、分散安定化剤を添加しなくとも有機溶媒中で凝集することがない、新規な分子構造を有する金属化合物が提供される。本発明の金属化合物は、金属酸化物膜や化学吸着膜の形成用材料、有機−無機複合ハイブリッド材料等として有用であり、産業上の利用価値は高いといえる。
図1は、本発明に用いる金属化合物の基本骨格を示した図である。 図2は、参考例1で得られたゾルの溶液のラマンスペクトルを測定したチャート図である。 図3は、参考例1で得られたゾルの溶液の粒子径分布を測定したチャート図である。 図4は、参考例1で得られた結晶のH−NMRを測定したチャート図である。 図5は、参考例1で得られた結晶の13C−NMRを測定したチャート図である。 図6は、参考例1で得られた結晶のユニットセルを構成する分子構造を示す図である。 図7は、参考例1で得られた結晶中の分子配列を示すA軸投影図である。 図8は、参考例1で得られた結晶中の分子配列を示すB軸投影図である。 図9は、参考例1で得られた結晶中の分子配列を示すC軸投影図である。 図10は、実施例1で得られた反応液の粒子径分布を測定したチャート図である。 図11は、実施例1で得られた反応液のH−NMRを測定したチャート図である。 図12は、実施例1で得られた反応液のラマンスペクトルを測定したチャート図である。

Claims (5)

  1. Ti(OR)(式中、Rはアルキル基を表す。)で表されるチタンアルコキシドの有機溶媒溶液に、該チタンアルコキシドに対し、0.5〜1.0倍モルの水を添加したのち、還流することにより、1分子内に、11個のチタン原子を含み、空間的に6つのチタン原子が5角錐の頂点に位置する配置と、5つのチタン原子が頂点に位置する5角形からなる配置を含む分子構造を有し、前記分子構造が、5角錐の底面を介して前記5角錐と前記5角形が対峙している配置を有するものであり、かつ、各チタン原子が架橋型酸素原子によって架橋されてなるチタン化合物の微粒子を含む分散液を得る工程と、
    前記分散液より析出するチタン化合物の微粒子を単離し、単離したチタン化合物の微粒子を有機溶媒に再度分散させることにより得られる分散液に、該分散液に含まれるチタン化合物に対し、0.1〜1.0倍モルの水を添加し、50℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲で加熱処理する工程を有する分散体の製造方法。
  2. 1分子内に、空間的に6つのチタン原子が5角錐の頂点に位置する配置を2つ含む分子構造を有するチタン化合物の微粒子であって、有機溶媒中に分散することができるチタン化合物の微粒子を含む分散体を得るものである請求項1に記載の分散体の製造方法。
  3. 前記分子構造が、前記5角の底面を向けて、前記2つの5角が一定の角度を持って対峙している分子構造である請求項2に記載の分散体の製造方法。
  4. 前記分散体に含まれるチタン化合物の微粒子が、有機溶媒中、酸、塩基、及び/又は分散安定化剤の非存在下に凝集せずに安定に分散しているものである請求項1〜3のいずれかに記載の分散体の製造方法。
  5. 前記分散体に含まれるチタン化合物の微粒子の平均粒径が0.5〜10nmである請求項1〜4のいずれかに記載の分散体の製造方法。
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