JP4585098B2 - フィルターシートの切断方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気清浄機や空調システムに用いられるフィルターシートの切断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、気密性の高い住宅内において、空気中に浮遊する臭いの原因である化学物質や、アレルギー等の影響を人体に及ぼす化学物質、或いは湿気を除去するための空気清浄機が各種開発されている。このような空気清浄機は通常、除去すべき化学物質や水分を吸着或いは分解する物質を比表面積の大きな粒体とし、布帛等からなる通気性基材に担持させてなるフィルターシートを備え、該フィルターシートを定期的に交換することで効率よく空気清浄を行っている。
【0003】
最近では、このようなフィルターシートを冷・暖房機の吸気口に取り付けることで冷・暖房と同時に空気清浄も行う空調システムも開発されている。また、押入やクローゼットといった狭い空間内の臭いや湿気を除去するために、上記フィルターシートを壁面や天井に取り付けるシステムも開発されている。
【0004】
上記フィルターシートの製造方法としては、ロール状に巻いた長尺の基材を繰り出しながらその上に粒体を散布し、もう一方の基材を貼り合わせてフィルターシートとして他のロールに巻き取り、このロール状のフィルターシートを原反として、さらに該原反を製品サイズに合わせて適宜切断し、周囲に固定用の枠を形成するなどして提供される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記フィルターシートは、粒体と基材、或いは基材同士を固定するために適宜接着剤が用いられる場合もあるが、接着剤が多すぎると基材の目を詰まらせて通気性を損なったり、粒体の表面を覆って粒体の性能を落としてしまうため、基材間で粒体が移動しない程度に部分的に接着剤が用いられている。また、接着剤を用いずに、エンボス加工などにより基材同士を一体化させている場合もある。そのため、上記ロール状のフィルターシート原反の切断時、或いは、切り出したフィルターシートの周囲に枠を形成するために移動させる際に、フィルターシートの切断面より粒体が脱落して周囲を汚染したり、フィルターシートの外側に該粒体が付着して外観を損ねるなどの問題があった。
【0006】
本発明の課題は、上記問題を解決し、粒体を挟持してなるフィルターシートの切断時或いは切断後の移動時における粒体の脱落を低減し、周囲の汚染やフィルターシートの外観不良を低減したフィルターシートの切断方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも、2枚の透水性基材の間に粒体を挟持してなるフィルターシートの切断方法であって、該フィルターシートの表面に切断ラインに沿って液状接着剤を塗布し、該塗布と同時或いは塗布後に、該フィルターシートの塗布面とは反対側より陰圧によって液状接着剤を吸引し、該接着剤を裏面にまで強制的に浸透させ、固化させた後、上記切断ラインにおいて該フィルターシートを切断することを特徴とするフィルターシートの切断方法である。
【0008】
上記本発明は、上記フィルターシートにおける粒体の散布量が1〜1000g/m2であること、上記フィルターシートにおける粒体の平均粒径が1〜1000μmであること、上記透水性基材が布帛であること、上記液状接着剤が、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂のいずれかを用いてなること、を好ましい態様として含むものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のフィルターシートの切断方法の特徴は、予め切断ラインに液状接着剤を塗布して該切断ラインにおける透水性基材と粒体、粒体同士を該接着剤で接着した上で該接着部分を切断することにある。以下に詳細に説明する。
【0010】
図1に、本発明の切断方法における切断ラインと接着領域との関係を示す。図中1はフィルターシートであり、A−A’が切断ライン、2が液状接着剤の塗布領域である。
【0011】
本発明においては、切断に先立って、フィルターシート1の切断ラインA−A’に沿って液状接着剤を塗布する。この時、回転刃等切断部材が該接着剤の塗布領域2からはずれずに切断できるように、塗布領域2の幅に適当な余裕を持たせて塗布する。通常は、5〜10mm程度の幅で塗布すればよい。
【0012】
フィルターシート1に塗布された液状接着剤は透水性基材を透過して内部に浸透し、他方の側の透水性基材にまで達し、その過程で該液状接着剤は透水性基材及び内部に挟持された粒体表面に付着する。そのため、該液状接着剤の浸透、固化後には該塗布領域において、透水性基材同士、粒体同士、及び、粒体と透水性基材とが接着される。尚、作業時間を短縮する上で、液状接着剤の塗布時、或いは塗布後に塗布面とは反対側の透水性基材の外側より陰圧で吸引することにより、液状接着剤を強制的に該反対側の透水性基材側に向けて浸透させても良い。具体的には、塗布領域2に対応する吸引溝を有するステージ上にフィルターシート1を載せ、該吸引溝内の空気を排出させながら液状接着剤の塗布を行えばよい。
【0013】
上記液状接着剤の固化後に切断ラインA−A’においてフィルターシート1を切断する。本発明によれば、塗布領域2では上記したように透水性基材同士、粒体同士、及び粒体と透水性基材とが接着固定されているため、A−A’切断面に露出した粒体が該フィルターシート1から脱落しにくくなっている。また、切断後にフィルターシート1を移動させた際の振動等により塗布領域2からはずれた領域の粒体が移動して切断面に近づいたとしても、該塗布領域2において接着固定された粒体に阻まれるため、外部にこぼれ出ることができない。
【0014】
よって、本発明の切断方法によれば、切断時及び切断後にフィルターシートの切断面からの粒体の脱落が大幅に低減され、該脱落粒体による周囲の汚染やフィルターシートの外観不良が大幅に抑えられる。
【0015】
本発明の切断方法の対象となるフィルターシートは、少なくとも、2枚の透水性基材間に粒体を挟持した構造を有するものである。
【0016】
図2に、本発明の切断対象であるフィルターシートの基本構成の断面模式図を示す。図中、1はフィルターシート、3は粒体、4a、4bは透水性基材である。各構成について説明する。
【0017】
本発明にかかるフィルターシート1を構成する透水性基材4a、4bとは、気体や液体等流体の透過性を有するシート状基材であって、具体的には、合成繊維や天然繊維、無機繊維からなる不織布、織布といった布帛、紙、通気性及び通水性を有するプラスチックシートなどが挙げられる。また、これらのうちの複数を重ねた複層基材でも良い。中でも、布帛を用いた構成では、切断端部において透水性基材4a、4bがほつれやすいが、本発明においては、上記したように切断ラインA−A’には液状接着剤が塗布されているため、ほつれも防止することができ、このような構成に本発明は好ましく適用される。
【0018】
また、透水性基材4a、4bとして布帛を用いる場合には、通常、10〜1000g/m2程度のものが好ましく用いられる。また、透水性基材4aと4bは、互いに異なる素材であってもかまわない。
【0019】
また、本発明にかかる粒体3としては、フィルターシート1の用途に応じて選択されるが、空気中の湿気や、臭いの原因である化学物質、アレルギー等の人体に悪影響を及ぼす化学物質を物理的或いは化学的に吸着したり、化学反応によって分解する機能を有し、実質的に空気中より除去、或いは無害化する物質で形成されたものである。具体的には、活性炭や木炭、シリカゲル、吸水性ポリマー、化学物質吸着性ポリマー等を比表面積の広い粒体としたものである。本発明においては、異なる複数種の粒体を用いたものであってもかまわない。
【0020】
本発明にかかる粒体3としては、粒の大きさが小さく、また、散布量が多いほど、切断時、切断後の脱落による汚染の影響が大きく、取り扱いにくい。従って、本発明は、粒体3の平均粒径は好ましくは1〜1000μm、より好ましくは100〜200μmであり、散布量は好ましくは1〜1000g/m2、より好ましくは10〜200g/m2である。
【0021】
かかるフィルターシート1において、粒体3と透水性基材4a、4b、或いは、透水性基材4aと4bとは接着剤等により接着固定されたものであっても良い。但し、前記したように、接着剤の使用によりフィルターシート1自体の通気性や粒体の表面積が低下するため、多量に用いられることはない。また、例えば、透水性基材4a、4bに不織布を用い、外側より強く圧着させたりエンボス加工などにより、互いの繊維を絡ませることで接着剤を用いることなく一体化することも可能である。この場合には、粒体3が透水性基材4に固定されていないため、切断面より容易に脱落するため、本発明の切断方法がより効果的に用いられる。
【0022】
また、本発明にかかるフィルターシート1は、図2に示すように、少なくとも2枚の透水性基材4aと4bとで粒体3を挟持していれば良いが、例えば、3枚以上の透水性基材を有し、隣接する透水性基材間にそれぞれ同種或いは異なる粒体を挟持させたものでも良い。
【0023】
本発明の切断方法において用いられる液状接着剤としては、フィルターシート内に速やかに浸透し、且つ、適度に透水性基材や粒体に付着してこれらを接着固定しうるものであり、また、固化後にフィルターシートの切断を妨げないものであれば特にその素材を限定されるものではなく、水系、溶剤系のいずれでも好ましく用いることができ、具体的には、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂をそれぞれ適当な溶媒に溶解、或いは、分散させたものが用いられる。特に、透水性基材や活性炭等粒体に良好に付着する点から、両親媒性のポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンが好ましく用いられる。
【0024】
また、本発明において用いられる液状接着剤の固形分(濃度)や塗布量については、フィルターシートの透水性、接着程度、固化に要する時間、液状接着剤の粘度等により適宜設定すればよい。
【0025】
【実施例】
(実施例1〜5、比較例1)
フィルターシートとして、旭化成工業製「セミアV」を用い、液状接着剤の種類を変えて切断試験を行った。また、比較のため、液状接着剤を用いずに切断試験を行った。該フィルターシートは、線径20μmのポリエステル繊維からなる、15g/m2及び30g/m2の不織布間に平均粒径が100〜200μmの活性炭を100g/m2挟持してなるものである。
【0026】
試験方法について説明する。幅960mmのフィルターシート原反より、図3に示すように、外形が320mm×320mmの正方形を切り出し、周囲の切断面をテープ止めし、試験片とする。該試験片は原反の幅方向に3枚(L、C、R)を一組とする。該試験片について、図3に示す外形300mm×300mmの正方形5、及び、該正方形5内に50mmの間隙を介して一方が該正方形の一辺に接する長さ250mmのスリット6を切断ラインとして、該切断ラインを中心に幅5mmの領域に内径が2.4mmのテフロンチューブを備えた定量吐出機を用いて、10mm/secの速度で各種液状接着剤を塗布し、常温で60分間自然乾燥させた。上記接着剤の塗布は、30g/m2の不織布側とした。次いで、重量を測定した後、各切断ラインを丸刃で切断し、切断面より脱落した粒体を除去して再び全重量を測定した。比較例については、上記液状接着剤の塗布を行わずに切断を行った。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
(実施例6〜14)
液状接着剤として、市販の木工ボンド〔ポリ酢酸ビニル:水=4:6(重量比)〕を用い、該ボンドを原液として、10〜90重量%の濃度に水で希釈し、各希釈液を用いて実施例1〜5と同様に切断試験を行った。結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
(実施例15)
フィルターシートとして、実施例1とは異なる種類の「セミアV」を用い、液状接着剤として、実施例10と同じ50重量%希釈のポリ酢酸ビニル系木工ボンドを用いた以外は、実施例1、比較例1と同様にして切断試験を行った。上記フィルターシートは、線径20μmのポリエステル繊維からなる、30g/m2の2枚の不織布間に平均粒径が100〜200μmの活性炭を20g/m2挟持してなるものである。結果を表3に示す。
【0031】
【表3】
【0032】
表1〜3に示したように、本発明によれば、粒体の脱落を大幅に低減することができ、脱落粒体による周囲の汚染やフィルターシートの外観不良が大幅に抑えられることがわかった。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、切断面となる領域の透水性基材同士、粒体同士、及び、粒体と透水性基材とを予め液状接着剤によって接着固定させた後にフィルターシートを切断するため、切断面からの粒体の脱落が大幅に低減され、切断時、及び切断後にフィルターシートの切断面から脱落する粒体による周囲の汚染、及び、フィルターシートへの脱落粒体の付着による外観不良が大幅に抑えられる。よって、従来に比べて、脱落粒体の除去のための製造ラインのメンテナンス作業を低減することができ、製造効率が向上すると同時に、不良品の発生も抑えられるため、歩留まりが向上し、より安価にフィルターシートを提供することができる。
【0034】
また、切断面からの粒体の脱落が大幅に低減されたことで、切り出したフィルターシート端部における粒体量の低下が抑えられ、製品としての信頼性も向上する。
【0035】
さらに、切断面が液状接着剤で接着固定されているため、従来よりも取り扱いが容易で、切断後のシート外周の枠形成もより容易に実施することができる。
【0036】
特に、本発明において、フィルターシートが粒体を多量に挟持している場合や、粒体の平均粒径が小さい場合など、脱落粒体の影響が大きい場合にその効果が著しく、粒体の散布量が1〜1000g/m2、粒体の平均粒径が1〜1000μmの場合においても、その影響を大幅に低減することができる。
【0037】
また、本発明において、透水性基材として布帛を用いて構成されたフィルターシートの場合には、切断面における透水性基材のほつれが液状接着剤の塗布によって防止されるため、該ほつれによる繊維の脱落も防止され、切断寸法精度が高く、取り扱い易いフィルターシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の切断方法における、切断ラインと液状接着剤の塗布領域との関係を示す図である。
【図2】本発明の切断方法の対象であるフィルターシートの基本構成の断面模式図である。
【図3】本発明の実施例における試験片の切断ラインを示す図である。
【符号の説明】
1 フィルターシート
2 液状接着剤塗布領域
3 粒体
4a,4b 透水性基材
5 切断ライン(外形)
6 切断ライン(スリット)
Claims (5)
- 少なくとも、2枚の透水性基材の間に粒体を挟持してなるフィルターシートの切断方法であって、該フィルターシートの表面に切断ラインに沿って液状接着剤を塗布し、該塗布と同時或いは塗布後に、該フィルターシートの塗布面とは反対側より陰圧によって液状接着剤を吸引し、該接着剤を裏面にまで強制的に浸透させ、固化させた後、上記切断ラインにおいて該フィルターシートを切断することを特徴とするフィルターシートの切断方法。
- 上記フィルターシートにおける粒体の散布量が1〜1000g/m2である請求項1に記載のフィルターシートの切断方法。
- 上記フィルターシートにおける粒体の平均粒径が1〜1000μmである請求項1または2に記載のフィルターシートの切断方法。
- 上記透水性基材が布帛である請求項1〜3のいずれかに記載のフィルターシートの切断方法。
- 上記液状接着剤が、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂のいずれかを用いてなる請求項1〜4のいずれかに記載のフィルターシートの切断方法。
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