JP4584607B2 - 加工対象物切断方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ウェハ状の加工対象物を切断予定ラインに沿って切断する加工対象物切断方法に関する。
従来におけるこの種の技術として、下記の特許文献1には次のようなレーザ加工方法が記載されている。すなわち、平板状の加工対象物にその表面を保護する部材を装着し、加工対象物の裏面をレーザ光入射面としてレーザ光を照射することで、切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に改質領域による切断起点領域を形成する。続いて、加工対象物の裏面に伸張性のフィルムを装着し、その伸張性のフィルムを伸張させることで、切断起点領域を起点として加工対象物が切断されて生じた複数の部分を互いに分離する。
特開2004−1076号公報
ところで、上述したレーザ加工方法においては、切断起点領域が形成された加工対象物は切断起点領域を起点として切断され易い状態にあり、しかも、切断起点領域を起点として加工対象物が切断された場合、それにより生じた複数の部分は互いに密接した状態にある。そのため、例えば、表面を保護する部材として保護フィルムを用いた場合において、切断されて生じた複数の部分にチッピングやクラッキング等の不具合が発生するのを防止するためには、切断起点領域が形成された加工対象物を慎重に取り扱う必要がある。
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、切断起点領域が形成された加工対象物の取り扱いを容易化し、且つ切断起点領域を起点として加工対象物が切断されて生じた複数の部分にチッピングやクラッキング等の不具合が発生するのを防止することができる加工対象物切断方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る加工対象物切断方法は、ウェハ状の加工対象物を切断予定ラインに沿って切断する加工対象物切断方法であって、レーザ加工装置において、加工対象物の表面に、加工対象物の変形を防止するための形状保持プレートが取り付けられた状態で、加工対象物の裏面をレーザ光入射面として加工対象物の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射することで改質領域を形成し、その改質領域によって、切断予定ラインに沿ってレーザ光入射面から所定距離内側に切断起点領域を形成する工程と、切断起点領域が形成された加工対象物の裏面に拡張可能フィルム、及び拡張可能フィルムの外周部分が貼り付けられて拡張可能フィルムが固定されたリング状のテープ固定枠を取り付ける工程と、加工対象物の裏面に拡張可能フィルムが取り付けられた加工対象物を、加工対象物の表面に形状保持プレートが取り付けられた状態でフィルム拡張装置に搬送し、テープ固定枠をフィルム拡張装置のリング状の受け部材とフィルム拡張装置のリング状の押え部材とで挟持することで、加工対象物をフィルム拡張装置に装着する工程と、フィルム拡張装置において、拡張可能フィルムが取り付けられた加工対象物の表面から形状保持プレートを取り外す工程と、フィルム拡張装置において、拡張可能フィルムを拡張させることで、切断起点領域を起点として加工対象物が切断されて生じた複数の部分を互いに離間させる工程とを含むことを特徴とする。
この加工対象物切断方法においては、加工対象物の裏面をレーザ光入射面として切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に改質領域による切断起点領域を形成する際中から、その加工対象物の裏面に拡張可能フィルムを取り付けるまでは、加工対象物の表面に形状保持プレートが取り付けられている。この形状保持プレートにより、加工対象物の変形が確実に防止されるため、切断起点領域が形成された加工対象物の取り扱いを容易化することができる。そして、加工対象物の表面から形状保持プレートを取り外し、拡張可能フィルムを拡張させることで、切断起点領域を起点として加工対象物が切断されて生じた複数の部分を互いに離間させる。これにより、切断起点領域が形成された加工対象物は、その変形が確実に防止された状態を経て複数の部分に切断されることになるため、切断されて生じた複数の部分にチッピングやクラッキング等の不具合が発生するのを防止することができる。ここで、切断起点領域とは、加工対象物が切断される際に切断の起点となる領域を意味する。この切断起点領域は、改質領域が連続的に形成されることで形成される場合もあるし、改質領域が断続的に形成されることで形成される場合もある。また、改質領域は、加工対象物の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射することで、多光子吸収或いはそれと同等の光吸収を加工対象物の内部で生じさせることにより形成される。
また、切断起点領域を形成する工程は、レーザ加工装置において行われ、形状保持プレートを取り外す工程、及び複数の部分を互いに離間させる工程は、フィルム拡張装置において行われる。このようにレーザ加工装置とフィルム拡張装置とを用いることで、各装置の構成を簡易化することができる。そして、レーザ加工装置からフィルム拡張装置への加工対象物の搬送においては、加工対象物の内部に切断起点領域が形成されているものの、加工対象物の表面には形状保持プレートが取り付けられているため、搬送中に切断起点領域を起点として加工対象物が不意に切断されてしまうというような事態を防止することができる。
また、加工対象物がその表面に機能素子が形成された半導体基板である場合には、半導体基板の表面には形状保持プレートが取り付けられるため、機能素子を保護することができる。更に、例えば機能素子にレーザ光を反射する部分が存在しても、切断起点領域を形成する工程では裏面がレーザ光入射面となるため、半導体基板の内部に切断起点領域を確実に形成することができる。ここで、機能素子とは、例えば、結晶成長により形成された半導体動作層、フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、回路として形成された回路素子等を意味する。
また、切断起点領域を形成する工程の前に、加工対象物の表面に形状保持プレートが取り付けられた状態で、加工対象物の裏面を研磨する工程を含んでもよいし、或いは、切断起点領域を形成する工程と拡張可能フィルムを取り付ける工程との間に、加工対象物の表面に形状保持プレートが取り付けられた状態で、加工対象物の裏面を研磨する工程を含んでもよい。これらにより、加工対象物の表面を保護し、且つ加工対象物の変形を防止しつつ、加工対象物を薄型化することができる。これらは、半導体デバイスの小型化に伴って半導体基板の薄型化が望まれているため、加工対象物が半導体基板である場合に特に有効である。ここで、研磨とは、切削、研削、ケミカルエッチング等を含む意味である。
また、形状保持プレートは、ガラス製又は樹脂製であり、粘着剤層を介して加工対象物の表面に取り付けられ、形状保持プレートを取り外す工程では、形状保持プレート側から粘着剤層に電磁波を照射すること、又は粘着剤層を加熱することで粘着剤層の粘着力を低下させ、加工対象物の表面から形状保持プレートを取り外すことが好ましい。これにより、加工対象物の表面に対する形状保持プレートの取り付け、取り外しを容易に行うことができる。
本発明によれば、切断起点領域が形成された加工対象物の取り扱いを容易化し、且つ切断起点領域を起点として加工対象物が切断されて生じた複数の部分にチッピングやクラッキング等の不具合が発生するのを防止することができる。
以下、本発明に係る加工対象物切断方法の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、加工対象物の内部に改質領域を形成するために多光子吸収という現象を利用する。そこで、最初に、多光子吸収により改質領域を形成するためのレーザ加工方法について説明する。
材料の吸収のバンドギャップEよりも光子のエネルギーhνが小さいと光学的に透明となる。よって、材料に吸収が生じる条件はhν>Eである。しかし、光学的に透明でも、レーザ光の強度を非常に大きくするとnhν>Eの条件(n=2,3,4,・・・)で材料に吸収が生じる。この現象を多光子吸収という。パルス波の場合、レーザ光の強度はレーザ光の集光点のピークパワー密度(W/cm)で決まり、例えばピークパワー密度が1×10(W/cm)以上の条件で多光子吸収が生じる。ピークパワー密度は、(集光点におけるレーザ光の1パルス当たりのエネルギー)÷(レーザ光のビームスポット断面積×パルス幅)により求められる。また、連続波の場合、レーザ光の強度はレーザ光の集光点の電界強度(W/cm)で決まる。
このような多光子吸収を利用する本実施形態に係るレーザ加工方法の原理について、図1〜図6を参照して説明する。図1に示すように、ウェハ状(平板状)の加工対象物1の表面3には、加工対象物1を切断するための切断予定ライン5がある。切断予定ライン5は直線状に延びた仮想線である。本実施形態に係るレーザ加工方法では、図2に示すように、多光子吸収が生じる条件で加工対象物1の内部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを照射して改質領域7を形成する。なお、集光点Pとは、レーザ光Lが集光する箇所のことである。また、切断予定ライン5は、直線状に限らず曲線状であってもよいし、仮想線に限らず加工対象物1に実際に引かれた線であってもよい。
そして、レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って(すなわち、図1の矢印A方向に)相対的に移動させることにより、集光点Pを切断予定ライン5に沿って移動させる。これにより、図3〜図5に示すように、改質領域7が切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部に形成され、この改質領域7が切断起点領域8となる。本実施形態に係るレーザ加工方法は、加工対象物1がレーザ光Lを吸収することにより加工対象物1を発熱させて改質領域7を形成するものではない。加工対象物1にレーザ光Lを透過させ加工対象物1の内部に多光子吸収を発生させて改質領域7を形成している。よって、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lがほとんど吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融することはない。
加工対象物1の内部に切断起点領域8を形成すると、この切断起点領域8を起点として割れが発生し易くなるため、図6に示すように、比較的小さな力で加工対象物1を切断することができる。よって、加工対象物1の表面3に不必要な割れを発生させることなく、加工対象物1を高精度に切断することが可能になる。
この切断起点領域8を起点とした加工対象物1の切断には、次の2通りが考えられる。1つは、切断起点領域8形成後、加工対象物1に人為的な力が印加されることにより、切断起点領域8を起点として加工対象物1が割れ、加工対象物1が切断される場合である。これは、例えば加工対象物1の厚さが大きい場合の切断である。人為的な力が印加されるとは、例えば、加工対象物1の切断起点領域8に沿って加工対象物1に曲げ応力やせん断応力を加えたり、加工対象物1に温度差を与えることにより熱応力を発生させたりすることである。他の1つは、切断起点領域8を形成することにより、切断起点領域8を起点として加工対象物1の断面方向(厚さ方向)に向かって自然に割れ、結果的に加工対象物1が切断される場合である。これは、例えば加工対象物1の厚さが小さい場合には、1列の改質領域7により切断起点領域8が形成されることで可能となり、加工対象物1の厚さが大きい場合には、厚さ方向に複数列形成された改質領域7により切断起点領域8が形成されることで可能となる。なお、この自然に割れる場合も、切断する箇所において、切断起点領域8が形成されていない部位に対応する部分の表面3上にまで割れが先走ることがなく、切断起点領域8を形成した部位に対応する部分のみを割断することができるので、割断を制御よくすることができる。近年、シリコンウェハ等の加工対象物1の厚さは薄くなる傾向にあるので、このような制御性のよい割断方法は大変有効である。
さて、本実施形態に係るレーザ加工方法において、多光子吸収により形成される改質領域としては、次の(1)〜(3)の場合がある。
(1)改質領域が1つ又は複数のクラックを含むクラック領域の場合
加工対象物(例えばガラスやLiTaOからなる圧電材料)の内部に集光点を合わせて、集光点における電界強度が1×10(W/cm)以上で且つパルス幅が1μs以下の条件でレーザ光を照射する。このパルス幅の大きさは、多光子吸収を生じさせつつ加工対象物の表面に余計なダメージを与えずに、加工対象物の内部にのみクラック領域を形成できる条件である。これにより、加工対象物の内部には多光子吸収による光学的損傷という現象が発生する。この光学的損傷により加工対象物の内部に熱ひずみが誘起され、これにより加工対象物の内部にクラック領域が形成される。電界強度の上限値としては、例えば1×1012(W/cm)である。パルス幅は例えば1ns〜200nsが好ましい。なお、多光子吸収によるクラック領域の形成は、例えば、第45回レーザ熱加工研究会論文集(1998年.12月)の第23頁〜第28頁の「固体レーザー高調波によるガラス基板の内部マーキング」に記載されている。
本発明者は、電界強度とクラックの大きさとの関係を実験により求めた。実験条件は次ぎの通りである。
(A)加工対象物:パイレックス(登録商標)ガラス(厚さ700μm)
(B)レーザ
光源:半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ
波長:1064nm
レーザ光スポット断面積:3.14×10−8cm
発振形態:Qスイッチパルス
繰り返し周波数:100kHz
パルス幅:30ns
出力:出力<1mJ/パルス
レーザ光品質:TEM00
偏光特性:直線偏光
(C)集光用レンズ
レーザ光波長に対する透過率:60パーセント
(D)加工対象物が載置される載置台の移動速度:100mm/秒
なお、レーザ光品質がTEM00とは、集光性が高くレーザ光の波長程度まで集光可能を意味する。
図7は上記実験の結果を示すグラフである。横軸はピークパワー密度であり、レーザ光がパルスレーザ光なので電界強度はピークパワー密度で表される。縦軸は1パルスのレーザ光により加工対象物の内部に形成されたクラック部分(クラックスポット)の大きさを示している。クラックスポットが集まりクラック領域となる。クラックスポットの大きさは、クラックスポットの形状のうち最大の長さとなる部分の大きさである。グラフ中の黒丸で示すデータは集光用レンズ(C)の倍率が100倍、開口数(NA)が0.80の場合である。一方、グラフ中の白丸で示すデータは集光用レンズ(C)の倍率が50倍、開口数(NA)が0.55の場合である。ピークパワー密度が1011(W/cm)程度から加工対象物の内部にクラックスポットが発生し、ピークパワー密度が大きくなるに従いクラックスポットも大きくなることが分かる。
次に、クラック領域形成による加工対象物の切断のメカニズムについて、図8〜図11を参照して説明する。図8に示すように、多光子吸収が生じる条件で加工対象物1の内部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを照射して切断予定ラインに沿って内部にクラック領域9を形成する。クラック領域9は1つ又は複数のクラックを含む領域である。このように形成されたクラック領域9が切断起点領域となる。図9に示すように、クラック領域9を起点として(すなわち、切断起点領域を起点として)クラックがさらに成長し、図10に示すように、クラックが加工対象物1の表面3と裏面21とに到達し、図11に示すように、加工対象物1が割れることにより加工対象物1が切断される。加工対象物1の表面3と裏面21とに到達するクラックは自然に成長する場合もあるし、加工対象物1に力が印加されることにより成長する場合もある。
(2)改質領域が溶融処理領域の場合
加工対象物(例えばシリコンのような半導体材料)の内部に集光点を合わせて、集光点における電界強度が1×10(W/cm)以上で且つパルス幅が1μs以下の条件でレーザ光を照射する。これにより加工対象物の内部は多光子吸収によって局所的に加熱される。この加熱により加工対象物の内部に溶融処理領域が形成される。溶融処理領域とは一旦溶融後再固化した領域や、まさに溶融状態の領域や、溶融状態から再固化する状態の領域であり、相変化した領域や結晶構造が変化した領域ということもできる。また、溶融処理領域とは単結晶構造、非晶質構造、多結晶構造において、ある構造が別の構造に変化した領域ということもできる。つまり、例えば、単結晶構造から非晶質構造に変化した領域、単結晶構造から多結晶構造に変化した領域、単結晶構造から非晶質構造及び多結晶構造を含む構造に変化した領域を意味する。加工対象物がシリコン単結晶構造の場合、溶融処理領域は例えば非晶質シリコン構造である。電界強度の上限値としては、例えば1×1012(W/cm)である。パルス幅は例えば1ns〜200nsが好ましい。
本発明者は、シリコンウェハの内部で溶融処理領域が形成されることを実験により確認した。実験条件は次の通りである。
(A)加工対象物:シリコンウェハ(厚さ350μm、外径4インチ)
(B)レーザ
光源:半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ
波長:1064nm
レーザ光スポット断面積:3.14×10−8cm
発振形態:Qスイッチパルス
繰り返し周波数:100kHz
パルス幅:30ns
出力:20μJ/パルス
レーザ光品質:TEM00
偏光特性:直線偏光
(C)集光用レンズ
倍率:50倍
N.A.:0.55
レーザ光波長に対する透過率:60パーセント
(D)加工対象物が載置される載置台の移動速度:100mm/秒
図12は、上記条件でのレーザ加工により切断されたシリコンウェハの一部における断面の写真を表した図である。シリコンウェハ11の内部に溶融処理領域13が形成されている。なお、上記条件により形成された溶融処理領域13の厚さ方向の大きさは100μm程度である。
溶融処理領域13が多光子吸収により形成されたことを説明する。図13は、レーザ光の波長とシリコン基板の内部の透過率との関係を示すグラフである。ただし、シリコン基板の表面側と裏面側それぞれの反射成分を除去し、内部のみの透過率を示している。シリコン基板の厚さtが50μm、100μm、200μm、500μm、1000μmの各々について上記関係を示した。
例えば、Nd:YAGレーザの波長である1064nmにおいて、シリコン基板の厚さが500μm以下の場合、シリコン基板の内部ではレーザ光が80%以上透過することが分かる。図12に示すシリコンウェハ11の厚さは350μmであるので、多光子吸収による溶融処理領域13はシリコンウェハ11の中心付近、つまり表面から175μmの部分に形成される。この場合の透過率は、厚さ200μmのシリコンウェハを参考にすると、90%以上なので、レーザ光がシリコンウェハ11の内部で吸収されるのは僅かであり、ほとんどが透過する。このことは、シリコンウェハ11の内部でレーザ光が吸収されて、溶融処理領域13がシリコンウェハ11の内部に形成(つまりレーザ光による通常の加熱で溶融処理領域が形成)されたものではなく、溶融処理領域13が多光子吸収により形成されたことを意味する。多光子吸収による溶融処理領域の形成は、例えば、溶接学会全国大会講演概要第66集(2000年4月)の第72頁〜第73頁の「ピコ秒パルスレーザによるシリコンの加工特性評価」に記載されている。
なお、シリコンウェハは、溶融処理領域によって形成される切断起点領域を起点として断面方向に向かって割れを発生させ、その割れがシリコンウェハの表面と裏面とに到達することにより、結果的に切断される。シリコンウェハの表面と裏面に到達するこの割れは自然に成長する場合もあるし、シリコンウェハに力が印加されることにより成長する場合もある。そして、切断起点領域からシリコンウェハの表面と裏面とに割れが自然に成長する場合には、切断起点領域を形成する溶融処理領域が溶融している状態から割れが成長する場合と、切断起点領域を形成する溶融処理領域が溶融している状態から再固化する際に割れが成長する場合とのいずれもある。ただし、どちらの場合も溶融処理領域はシリコンウェハの内部のみに形成され、切断後の切断面には、図12のように内部にのみ溶融処理領域が形成されている。このように、加工対象物の内部に溶融処理領域によって切断起点領域を形成すると、割断時、切断起点領域ラインから外れた不必要な割れが生じにくいので、割断制御が容易となる。
(3)改質領域が屈折率変化領域の場合
加工対象物(例えばガラス)の内部に集光点を合わせて、集光点における電界強度が1×10(W/cm)以上で且つパルス幅が1ns以下の条件でレーザ光を照射する。パルス幅を極めて短くして、多光子吸収を加工対象物の内部に起こさせると、多光子吸収によるエネルギーが熱エネルギーに転化せずに、加工対象物の内部にはイオン価数変化、結晶化又は分極配向等の永続的な構造変化が誘起されて屈折率変化領域が形成される。電界強度の上限値としては、例えば1×1012(W/cm)である。パルス幅は例えば1ns以下が好ましく、1ps以下がさらに好ましい。多光子吸収による屈折率変化領域の形成は、例えば、第42回レーザ熱加工研究会論文集(1997年.11月)の第105頁〜第111頁の「フェムト秒レーザー照射によるガラス内部への光誘起構造形成」に記載されている。
以上、多光子吸収により形成される改質領域として(1)〜(3)の場合を説明したが、ウェハ状の加工対象物の結晶構造やその劈開性などを考慮して切断起点領域を次のように形成すれば、その切断起点領域を起点として、より一層小さな力で、しかも精度良く加工対象物を切断することが可能になる。
すなわち、シリコンなどのダイヤモンド構造の単結晶半導体からなる基板の場合は、(111)面(第1劈開面)や(110)面(第2劈開面)に沿った方向に切断起点領域を形成するのが好ましい。また、GaAsなどの閃亜鉛鉱型構造のIII−V族化合物半導体からなる基板の場合は、(110)面に沿った方向に切断起点領域を形成するのが好ましい。さらに、サファイア(Al)などの六方晶系の結晶構造を有する基板の場合は、(0001)面(C面)を主面として(1120)面(A面)或いは(1100)面(M面)に沿った方向に切断起点領域を形成するのが好ましい。
なお、上述した切断起点領域を形成すべき方向(例えば、単結晶シリコン基板における(111)面に沿った方向)、或いは切断起点領域を形成すべき方向に直交する方向に沿って基板にオリエンテーションフラットを形成すれば、そのオリエンテーションフラットを基準とすることで、切断起点領域を形成すべき方向に沿った切断起点領域を容易且つ正確に基板に形成することが可能になる。
以下、本発明に係る加工対象物切断方法の好適な実施形態について説明する。なお、図15〜図17は、図14のシリコンウェハのXV−XV線に沿っての部分断面図である。
図14に示すように、加工対象物となるシリコンウェハ(半導体基板)11の表面3には、複数の機能素子15がオリエンテーションフラット16に平行な方向及び垂直な方向にマトリックス状にパターン形成されている。このようなシリコンウェハ11を次のようにして機能素子15毎に切断する。
まず、図15(a)に示すように、シリコンウェハ11の表面3に両面粘着テープ17を貼り付ける。この両面粘着テープ17のシリコンウェハ11側の粘着剤層17aは、紫外線の照射により粘着力が低下し、且つシリコンウェハ11との界面にガスが発生することで、シリコンウェハ11を自ら剥離させるものである。このような自己剥離型の両面粘着テープ17としては、例えば、積水化学工業株式会社の「セルファ(SELFA)(商品名)」がある。そして、図15(b)に示すように、両面粘着テープ17のシリコンウェハ11と反対側の粘着剤層17bにガラス製の形状保持プレート(形状保持体)18を貼り付ける。このように、機能素子15が形成されたシリコンウェハ11の表面3に形状保持プレート18が取り付けられるため、機能素子15を保護することができる。
続いて、図15(c)に示すように、表面3に形状保持プレート18が取り付けられた状態でシリコンウェハ11を研削装置50に搬送し、研削装置50の加工台51上に、シリコンウェハ11の裏面21を上方に向けて形状保持プレート18を固定する。そして、シリコンウェハ11の裏面21を回転砥石52により平面研削し、例えば、厚さ350μmのシリコンウェハ11を厚さ100μmに薄型化する。このように形状保持プレート18を用いることで、シリコンウェハ11の表面3及び表面3に形成された機能素子15を保護し、且つシリコンウェハ11の変形を防止しつつ、シリコンウェハ11を薄型化することができる。
続いて、図16(a)に示すように、表面3に形状保持プレート18が取り付けられた状態でシリコンウェハ11をレーザ加工装置60に搬送し、レーザ加工装置60の加工台61上に、シリコンウェハ11の裏面21を上方に向けて形状保持プレート18を固定する。そして、隣り合う機能素子15,15間を通るように切断予定ライン5を格子状に設定し(図14の二点鎖線参照)、裏面21をレーザ光入射面としてシリコンウェハ11の内部に集光点Pを合わせて、多光子吸収が生じる条件でレーザ光Lを照射しながら、加工台61の移動により切断予定ライン5に沿って集光点Pを相対移動させる。これにより、シリコンウェハ11の内部には、図16(b)に示すように、切断予定ライン5に沿って溶融処理領域13による切断起点領域8が形成される。このようにシリコンウェハ11の裏面21をレーザ光入射面とすることで、例えば機能素子15にレーザ光Lを反射する部分が存在しても、シリコンウェハ11の内部に切断起点領域8を確実に形成することができる。
続いて、形状保持プレート18が取り付けられたシリコンウェハ11を加工台61から取り外し、図16(c)に示すように、テープ貼付機(図示せず)を用いて、シリコンウェハ11の裏面21に、エキスパンドテープ(拡張可能フィルム)19を貼り付ける。このエキスパンドテープ19は、その外周部分がリング状のテープ固定枠22に貼り付けられて、このテープ固定枠22に固定されている。
続いて、図17(a)に示すように、裏面21にエキスパンドテープ19が貼り付けられたシリコンウェハ11を、表面3に形状保持プレート18が取り付けられた状態でフィルム拡張装置70に搬送し、テープ固定枠22をリング状の受け部材71とリング状の押え部材72とで挟持することで、シリコンウェハ11をフィルム拡張装置70に装着する。この状態で形状保持プレート18側から紫外線を照射し、粘着剤層17aの粘着力を低下させ、且つシリコンウェハ11との界面にガスを発生させることで、シリコンウェハ11の表面3から両面粘着テープ17及び形状保持プレート18を取り外す。そして、図17(b)に示すように、受け部材71の内側に配置された円柱状の押圧部材73をエキスパンドテープ19の下側から上昇させ、図17(c)に示すように、エキスパンドテープ19を拡張させることで、切断起点領域8を起点としてシリコンウェハ11を切断すると共に、切断されて生じた各チップ23を互いに離間させる。これにより、各チップ23を容易且つ確実にピックアップすることが可能になる。
以上説明した加工対象物切断方法においては、シリコンウェハ11の裏面21をレーザ光入射面として切断予定ライン5に沿ってシリコンウェハ11の内部に溶融処理領域13による切断起点領域8を形成する際中から、そのシリコンウェハ11の裏面21にエキスパンドテープ19を貼り付けるまでは、シリコンウェハ11の表面3に形状保持プレート18が取り付けられている。この形状保持プレート18により、シリコンウェハ11の変形が確実に防止されるため、切断起点領域8が形成されたシリコンウェハ11の取り扱いを容易化することができる。そして、シリコンウェハ11の表面3から形状保持プレート18を取り外し、エキスパンドテープ19を拡張させることで、切断起点領域8を起点としてシリコンウェハ11が切断されて生じた複数のチップ23を互いに離間させる。これにより、切断起点領域8が形成されたシリコンウェハ11は、その変形が確実に防止された状態を経て複数のチップ23に切断されることになるため、切断されて生じた複数のチップ23にチッピングやクラッキング等の不具合が発生するのを防止することができる。
また、切断起点領域8の形成はレーザ加工装置60において行われ、形状保持プレート18の取り外し及び各チップ23の離間はフィルム拡張装置70において行われるため、各装置60,70の構成を簡易化することができる。そして、レーザ加工装置60からフィルム拡張装置70へのシリコンウェハ11の搬送においては、シリコンウェハ11の内部に切断起点領域8が形成されているものの、シリコンウェハ11の表面3には形状保持プレート18が取り付けられているため、搬送中に切断起点領域8を起点としてシリコンウェハ11が不意に切断されてしまうというような事態を防止することができる。
次に、上述したフィルム拡張装置70の構成について説明する。図18〜図20に示すように、フィルム拡張装置70は、受け部材71、押え部材72及び押圧部材73が設けられた本体部74と、この本体部74に並設された載置台75とを有している。本体部74には開閉自在なカバー79が取り付けられており、このカバー79の内面には紫外線ランプ76が取り付けられている。更に、本体部74には、吸着パッド77が先端に固定された揺動自在なアーム78が取り付けられている。
このように構成されたフィルム拡張装置70の使用方法について説明する。まず、図18(a)に示すように、カバー79を開放した状態で受け部材71及び押え部材72によりシリコンウェハ11をフィルム拡張装置70に装着する。そして、図18(b)に示すように、カバー79を閉鎖し、この状態で紫外線ランプ75により形状保持プレート18側から紫外線を照射する。これにより、シリコンウェハ11の表面3から両面粘着テープ17及び形状保持プレート18が取り外し可能となる。
続いて、図19(a)に示すように、カバー79を開放し、この状態でアーム78を揺動させて吸着パッド77を形状保持プレート18上に移動して、吸着パッド77により形状保持プレート18を吸着する。その後、図19(b)に示すように、アーム78を揺動させて両面粘着テープ17及び形状保持プレート18を載置台75上に移動する。そして、図20に示すように、押圧部材73をエキスパンドテープ19の下側から上昇させ、エキスパンドテープ19を拡張させることで、切断起点領域を起点としてシリコンウェハ11が切断されて生じた各チップ23を互いに離間させる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態は、加工対象物1の内部で多光子吸収を生じさせて改質領域7を形成する場合であったが、加工対象物1の内部で多光子吸収と同等の光吸収を生じさせて改質領域7を形成することができる場合もある。
また、上記実施形態は、エキスパンドテープ19を拡張させることで、切断起点領域8を起点としてシリコンウェハ11を切断すると共に、切断されて生じた各チップ23を互いに離間させる場合であったが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、表面3に形状保持プレート18が取り付けられた状態で、切断起点領域8が形成されたシリコンウェハ11に対して裏面21側から熱応力等の外力を印加することで、エキスパンドテープ19を拡張させる前に、切断起点領域8を起点としてシリコンウェハ11を切断しておいてもよい。
また、シリコンウェハ11の内部に切断起点領域8を形成した後、シリコンウェハ11の裏面21にエキスパンドテープ19を貼り付ける前に、表面3に形状保持プレート18が取り付けられた状態で、シリコンウェハ11の裏面21を研磨し、例えば、厚さ100μmのシリコンウェハ11を厚さ50μm〜25μmにより一層薄型化してもよい。この場合にも、シリコンウェハ11の表面3を保護し、且つシリコンウェハ11の変形を防止しつつ、シリコンウェハ11の更なる薄型化を達成することができる。
また、上記実施形態は、形状保持プレート18がガラス製の場合であったが、形状保持プレート18は、それが取り付けられたシリコンウェハ11の変形を防止し得る程度の剛性を有するものであればよい(例えば、アクリル樹脂等の樹脂製であってもよい)。ただし、上記実施形態のように、ガラス製の形状保持プレート18を、粘着剤層17aを介してシリコンウェハ11の表面3に取り付け、その一方で、形状保持プレート18側から粘着剤層17aに紫外線を照射することで粘着剤層17aの粘着力を低下させ、シリコンウェハ11の表面3から形状保持プレート18を取り外すようにすれば、シリコンウェハ11の表面3に対する形状保持プレート18の取り付け、取り外しを容易に行うことができる。なお、シリコンウェハ11の表面3に形状保持プレート18を取り付けるために介在させる粘着剤層として、紫外線その他の電磁波の照射又は加熱により粘着力が低下するものを用いてもよい。これにより、粘着剤層に電磁波を照射すること、又は粘着剤層を加熱することで粘着剤層の粘着力を低下させ、シリコンウェハ11の表面3から形状保持プレート18を容易に取り外すことが可能になる。
また、上記実施形態は、形状保持体が形状保持プレート18の場合であったが、形状保持体は、複数枚の保護フィルムが貼り合わされたものであってもよい。この場合、図21(a)に示すように、シリコンウェハ11の表面3に保護フィルム25を貼り付けた後、研削装置50の加工台51上に、シリコンウェハ11の裏面21を上方に向けてシリコンウェハ11を固定し、シリコンウェハ11の裏面21を回転砥石52により平面研削してシリコンウェハ11を薄型化する。続いて、図21(b)に示すように、テープマウンター80の吸着台81上に、シリコンウェハ11の表面3を上方に向けてシリコンウェハ11を固定し、既に貼り付けられている保護フィルム25上に、更に1枚又は複数枚の保護フィルム25を貼り付ける。その後は、貼り合わされることでシリコンウェハ11の変形を防止し得る程度の剛性を有することとなった複数枚の保護フィルム25を形状保持体として、上記実施形態と同様の工程を実施する。なお、シリコンウェハ11の表面3から保護フィルム25を剥がし易くするための電磁波(例えば、紫外線)の照射は、複数枚の保護フィルム25を貼り合わせてから、フィルム拡張装置70においてシリコンウェハ11の表面3から複数枚の保護フィルム25を剥がすまでの間であれば、いつ行ってもよい。また、保護フィルム25を1枚ずつ剥がす場合、それぞれ剥がすタイミングで電磁波(例えば、紫外線)を照射してもよい。
更に、形状保持体は、シリコンウェハ11の表面3に貼り付けられる保護フィルム25と、形状保持プレート18とが貼り合わされたものであってもよい。この場合、図22(a)に示すように、シリコンウェハ11の表面3に保護フィルム25を貼り付けた後、研削装置50の加工台51上に、シリコンウェハ11の裏面21を上方に向けてシリコンウェハ11を固定し、シリコンウェハ11の裏面21を回転砥石52により平面研削してシリコンウェハ11を薄型化する。続いて、図22(b)に示すように、テープマウンター80の吸着台81上に、シリコンウェハ11の表面3を上方に向けてシリコンウェハ11を固定し、既に貼り付けられている保護フィルム25上に、更に形状保持プレート18を貼り付ける。その後は、保護フィルム25及び形状保持プレート18を形状保持体として、上記実施形態と同様の工程を実施する。なお、シリコンウェハ11の表面3から保護フィルム25及び形状保持プレート18を剥がし易くするための紫外線の照射は、保護フィルム25上に形状保持プレート18を貼り付けてから、フィルム拡張装置70においてシリコンウェハ11の表面3から保護フィルム25及び形状保持プレート18を剥がすまでの間であれば、いつ行ってもよい。
本実施形態のレーザ加工方法によるレーザ加工中の加工対象物の平面図である。 図1に示す加工対象物のII−II線に沿っての断面図である。 本実施形態のレーザ加工方法によるレーザ加工後の加工対象物の平面図である。 図3に示す加工対象物のIV−IV線に沿っての断面図である。 図3に示す加工対象物のV−V線に沿っての断面図である。 本実施形態のレーザ加工方法により切断された加工対象物の平面図である。 本実施形態のレーザ加工方法における電界強度とクラックスポットの大きさとの関係を示すグラフである。 本実施形態のレーザ加工方法の第1工程における加工対象物の断面図である。 本実施形態のレーザ加工方法の第2工程における加工対象物の断面図である。 本実施形態のレーザ加工方法の第3工程における加工対象物の断面図である。 本実施形態のレーザ加工方法の第4工程における加工対象物の断面図である。 本実施形態のレーザ加工方法により切断されたシリコンウェハの一部における断面の写真を表した図である。 本実施形態のレーザ加工方法におけるレーザ光の波長とシリコン基板の内部の透過率との関係を示すグラフである。 本実施形態の加工対象物切断方法において加工対象物となるシリコンウェハの平面図である。 本実施形態の加工対象物切断方法を説明するための模式図であり、(a)はシリコンウェハに両面粘着テープを貼り付けた状態、(b)は両面粘着テープに形状保持プレートを貼り付けた状態、(c)はシリコンウェハを研削している状態である。 本実施形態の加工対象物切断方法を説明するための模式図であり、(a)はシリコンウェハにレーザ光を照射している状態、(b)はシリコンウェハの内部に切断起点領域が形成された状態、(c)はシリコンウェハにエキスパンドテープを貼り付けた状態である。 本実施形態の加工対象物切断方法を説明するための模式図であり、(a)はフィルム拡張装置において紫外線を照射している状態、(b)はフィルム拡張装置において押圧部材を上昇させている状態、(c)はフィルム拡張装置において各チップが互いに離間した状態である。 本実施形態のフィルム拡張装置の斜視図であり、(a)はシリコンウェハを装着した状態、(b)は紫外線を照射している状態である。 本実施形態のフィルム拡張装置の斜視図であり、(a)は吸着パッドを形状保持プレート上に移動した状態、(b)は両面粘着テープ及び形状保持プレートを載置台上に移動した状態である。 本実施形態のフィルム拡張装置の斜視図であり、押圧部材を上昇させた状態である。 本実施形態の加工対象物切断方法の変形例を説明するための模式図であり、(a)はシリコンウェハを研削している状態、(b)は保護フィルム上に保護フィルムを貼り付けた状態である。 本実施形態の加工対象物切断方法の変形例を説明するための模式図であり、(a)はシリコンウェハを研削している状態、(b)は保護フィルム上に形状保持プレートを貼り付けた状態である。
符号の説明
1…加工対象物、3…表面、5…切断予定ライン、7…改質領域、8…切断起点領域、11…シリコンウェハ(半導体基板)、13…溶融処理領域、15…機能素子、18…形状保持プレート(形状保持体)、19…エキスパンドテープ(拡張可能フィルム)、21…裏面(レーザ光入射面)、23…チップ、25…保護フィルム、60…レーザ加工装置、70…フィルム拡張装置、L…レーザ光、P…集光点。

Claims (5)

  1. ウェハ状の加工対象物を切断予定ラインに沿って切断する加工対象物切断方法であって、
    レーザ加工装置において、前記加工対象物の表面に、前記加工対象物の変形を防止するための形状保持プレートが取り付けられた状態で、前記加工対象物の裏面をレーザ光入射面として前記加工対象物の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射することで改質領域を形成し、その改質領域によって、前記切断予定ラインに沿って前記レーザ光入射面から所定距離内側に切断起点領域を形成する工程と、
    前記切断起点領域が形成された前記加工対象物の裏面に拡張可能フィルム、及び前記拡張可能フィルムの外周部分が貼り付けられて前記拡張可能フィルムが固定されたリング状のテープ固定枠を取り付ける工程と、
    前記加工対象物の裏面に前記拡張可能フィルムが取り付けられた前記加工対象物を、前記加工対象物の表面に前記形状保持プレートが取り付けられた状態でフィルム拡張装置に搬送し、前記テープ固定枠を前記フィルム拡張装置のリング状の受け部材と前記フィルム拡張装置のリング状の押え部材とで挟持することで、前記加工対象物を前記フィルム拡張装置に装着する工程と、
    前記フィルム拡張装置において、前記拡張可能フィルムが取り付けられた前記加工対象物の表面から前記形状保持プレートを取り外す工程と、
    前記フィルム拡張装置において、前記拡張可能フィルムを拡張させることで、前記切断起点領域を起点として前記加工対象物が切断されて生じた複数の部分を互いに離間させる工程とを含むことを特徴とする加工対象物切断方法。
  2. 前記加工対象物は、その表面に機能素子が形成された半導体基板であることを特徴とする請求項1記載の加工対象物切断方法。
  3. 前記切断起点領域を形成する工程の前に、前記加工対象物の表面に前記形状保持プレートが取り付けられた状態で、前記加工対象物の裏面を研磨する工程を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の加工対象物切断方法。
  4. 前記切断起点領域を形成する工程と前記拡張可能フィルムを取り付ける工程との間に、前記加工対象物の表面に前記形状保持プレートが取り付けられた状態で、前記加工対象物の裏面を研磨する工程を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の加工対象物切断方法。
  5. 前記形状保持プレートは、ガラス製又は樹脂製であり、粘着剤層を介して前記加工対象物の表面に取り付けられ、
    前記形状保持プレートを取り外す工程では、前記形状保持プレート側から前記粘着剤層に電磁波を照射すること、又は前記粘着剤層を加熱することで前記粘着剤層の粘着力を低下させ、前記加工対象物の表面から前記形状保持プレートを取り外すことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項記載の加工対象物切断方法。
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