[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施形態に係る筆記具、筆記具用キャップ、及び筆記具用キャップの組立て方法を、図1〜図4を参照して詳細に説明する。
本実施形態に係る筆記具1は、図1(a)、(b)に示すように、筆記具本体2と、別体に構成された筆記具用キャップ3と、を備えている。
前記筆記具本体2は、内部にインクが充填されるインクタンク4と先軸5とを一体に構成されるリフィール部6と、該リフィール部6が装着される後軸7と、該リフィール部6の先端に設けられるペン先部8と、を備えている。
前記後軸7は、前記インクタンク4を収容可能とするとともに、前記リフィール部6に着脱自在に装着可能とするものである。
リフィール部6のインクタンク4は、後軸7により収容される部分であり、先軸5は、後軸7に収容されないペン先部8側の部分を示している。
リフィール部6は、替え芯として機能可能な構成であればよく、インクタンク4と先軸5を別体に形成した後、組立て、係合した構成でもよい。
前記インクタンク4は、透明の樹脂製であって、内部の構成およびインクを視認可能としている。前記先軸5との境界部付近の外周部には、ネジ部4aが形成され、後軸7が螺着するようになっている。
尚、インクタンク4の透明部分は、少なくともインクタンク4内部のインクを視認可能とする部位にあればよい。
前記ペン先部8は、ペン先8aと、ペン先支持部9a、9bを有しており、ペン先8aがペン先支持部9a、9bを介して先軸5に組込み、係合されている。従って、リフィール部6とペン先部8とを合せてリフィール(替え芯)とできる。
前記ペン先部8後方の先軸5内には、インク保溜体10が設けられ、インクを保溜してインク漏れを防止するようになっている。
前記インク保溜体10は、外周面に多数形成された周溝を保溜溝10aとし、この保溜溝10aを連通させる縦溝(図示省略)が形成されている。この縦溝はインクタンク4内のインク室11に通じており、インク室11内の空気が温度変化等で膨張しインクをインク室11から押しだそうとしたとき、ペン先部8からインクをボタ落ちさせないように保溜溝10aに一時的に溜めるため、インク室11と保溜溝10a間のインクの通路として機能する。また、縦溝はインク室11の空気が収縮し元の状態に戻ったときに保溜溝10aのインクをインク室11に戻す機能をなしている。
前記インク保溜体10の中心部には、軸方向にインク誘導芯挿入孔12が形成され、このインク誘導芯挿入孔12にインク誘導芯13が、該インク誘導芯挿入孔12の後部(インク室側)で圧入嵌合か又は多少の隙間をもって貫装されている。更に、このインク誘導芯13の先端は、ペン先部8に接続されてインク室11のインクをペン先部8に供給するようになっている。
また、インク室11のインクをペン先部8に供給するインク誘導芯13を付設させるためのインク誘導芯挿入孔12が形成されたインク保溜体10の側面部には、上記インク誘導芯挿入孔12に連通する通気孔(図示省略)が設けられている。
前記リフィール部6の外形形状は、前記ネジ部4aを境に前側の先軸5の外径が、インクタンク4の後側部4bの外径より大径とした、いわゆる段付き形状を呈している。この段付き部5aから一部の範囲で先軸5の先端方向に向かい先細りのテーパー状に形成されている。前記ネジ部4aから後側部4bへの形状は、後方に向かいやや先細りのテーパー状に形成されている。
前記後軸7は、透明の樹脂製であって内部に収容されるインクタンク4を視認可能とするとともに、一端部7a側が開口形成され、その内側に前記ネジ部4aに対応する位置にネジ部7bが形成されている。
前記一端部7aは、外径を前記段付き部5aの外径よりも大径とされている。すなわち、前記一端部7aにリフィール部6を螺着した状態で、該一端部7aの外側端部がリフィール部6の外側端部よりも外側に位置するため、キャップ3を装着した時に、該キャップ3の開口端部が前記一端部7aの開口端部に当接して、いわゆるストッパーの役割を成すようにされている。
よって、キャップ3を筆記具本体2の先軸5側に取り付けた状態では、リフィール部6は該キャップ3と該後軸7に覆われ、該キャップ3と前記後軸7のみが筆記具外形を構成することとなる。
また、前記後軸7は、前記一端部7aから後端部7cに向かいやや先細りの円筒形状の外形を呈しており、その内部にインクタンク4を収容して、該インクタンク4を全周に亘り覆うようにされている。
前記後軸7の後端部7cは、閉ざされた略半球状を呈し、その略中央部には該後軸7内部と外部とを連通する通気孔15が形成されている。
以上説明したように、本実施形態では前記後軸7に収容されるインクタンク4と先軸5とをリフィール(替え芯、取り替え部材)として取り扱うように、一体、或は一体的に形成したので、リフィール部6内の空間部分にインクを収容できるので多くのインクを収容可能となる。
また、ペン先部8もリフィール部6にきつく嵌合するので、ペン先部8のガタツキもない。
また、前記後軸7は、リフィール部6のインクタンク4の外周に係合されるため、該後軸7とリフィール部6との係合が緩んだ場合でも、リフィール部6の先端に取り付けられるペン先部8のガタツキはない。
また、後軸7の開口する一端部7aの外側端部が、リフィール部6の先軸5側の外側端部よりも同心円状で外側に位置し、キャップ3を装着時の該キャップ3のストッパーの役割を成すようにされている。従って、リフィール部6は該キャップ3と該後軸7に覆われ、該キャップ3と前記後軸7のみが筆記具外形を構成することとなり、また、キャップ3の外径と後軸7の外径の寸法差を小さくできるので、キャップ3を装着した筆記具1の外観がスマートに構成でき、使用し易い筆記具を実現できる。
次に、前記キャップ3について詳細に説明する。
前記キャップ3は、図2、図4(a)に示すように、キャップ本体20と、天冠部21と、が別体に着脱可能に構成されており、キャップ3内部の天冠部21側にインナーキャップ22が配置され、該天冠部21外側部にはクリップ23が別体で設けられている。
まず、キャップ3のキャップ本体20を説明する。
キャップ本体20は、着色された不透明の樹脂製で、略円筒形状を呈し、一端部に天冠部21が嵌入される前開口部20a(図1、図2)が形成されるとともに、他端部に前記先軸5の段付き部5aが嵌入される後開口部20b(図1)が形成されている。
前記前開口部20aの内側には、図2に示すように、天冠部21を保持固定するための凸形状の天冠部係止部20cとインナーキャップ22の脱落防止用の凸形状のインナーキャップ係止部20dとが各々円周方向に沿って内側に向かい連続的に設けられている。
また、前記前開口部20aの内側には、嵌入される先軸5のペン先側端部5bを挟持するための第1の突出部である軸係止部20eが円周方向に沿って2列に(図3)、且つ各々の列に複数箇所で内側に向かい設けられている。
前記軸係止部20eの突出量は、各々の突出した先端部を外接する円(仮想の円)の直径R1(図2)が、後端部7c側の後軸7の外径R2(図3)より僅かに小さい寸法となるようにされている。尚、キャップ本体20は、円の直径R1と後端部7c側の後軸7の外径R2の寸法差分だけ歪んでも破損しないようになっていることは言うまでもない。
また、この軸係止部20eと後軸7による歪みの反力によって生じる後端部表面の摩擦力は、コイルスプリング26のバネ力よりも僅かに大きく設定されている。これにより、筆記具本体2の後軸7にキャップ3を装着した状態でも、キャップ3が後軸7から抜ける方向に受けるコイルスプリング26のバネ力によりキャップ3が後軸7から抜けることを防いでいる。
一方、前記キャップ3の後開口部20b(図1)の内径は、前記段付き部5aの外径よりもやや小径として、筆記具本体2にキャップ3を装着した状態できつい嵌合となるように形成されている。
次に、キャップ3の天冠部21を、図2、図4(a)を参照しつつ説明する。
天冠部21は、着色された不透明の樹脂製で、先端部21aの形状を略半球形状とした略砲弾状とし、他端部21b側を開口形成するとともに略円筒形状として、その内側を中空にしてインナーキャップ22が設置されるように形成されている。
前記先端部21aは、その内側壁の一部を軸心O方向に沿って他端部21b側(後方側)に突出させて、前記インナーキャップ22のストローク量を規制するともにガイドするストローク規制部であるガイド部21j(第2の突出部)が形成されている。
前記他端部21bは、円筒状の外径を前記キャップ本体20の前開口部20aの内径と略同寸法に形成されている。前記他端部21bの外周面には、該先端部21aが前記キャップ本体20の前開口部20aに嵌入された状態で、該先端部20a内周の前記天冠部係止部20cと対向する位置に、溝、又は切り欠き等からなるノッチ部21nが円周方向に沿って連続的に形成されている。
天冠部21の外側面には、図2、図4(a)に示すように、クリップ23の縁部が取付けられる取付け面21cと、該クリップ23を位置決めするためのストッパー部21dと、該クリップ23と係合するクリップ取付部21eと、天冠部21外周面に長手方向に凹部を設けて空気通路を形成する凹部21hと、が形成されている。
前記取付け面21cは、クリップ23が取付けられる取付け面であって、前記天冠部21の外側部の長手方向略中央に軸心O方向と略平行にかつ平坦に形成されている。
前記ストッパー部21dは、前記取付け面21cの上側に位置し、クリップ23の内側面と当接して該クリップ23を位置決めするためのストッパーであり、前記取付け面21cと略平行に突設されている。
前記クリップ取付部21eは、図4(a)〜(c)に示すように、前記取付け面21cの上側に前記ストッパー部21dよりも高く設けた取り付け部であり、取付け面21cからの立ち上がり部分の左右側部に、幅方向に狭まるガイド溝21fが形成されている。
また、前記クリップ取付部21eの略中央部には、図4(b),(c)に示すように、天冠部21の内側空間部と外部とを連通する通気孔25が形成されている。前記通気孔25は、軸心O方向に長い横(軸心O方向)断面矩形状を呈している。
クリップ取付部21eは、前記天冠部21と一体に、或いは前記天冠部21と別部材で形成してもよい。
前記天冠部21の外側部には、前記取付け面21cの外周に沿って、クリップ23を取り付けた天冠部21の外周輪郭より凹んだ凹部21hが形成されている。
凹部21hは、先端部21a側を軸心Oに近く、他端部21bに向うに連れて軸心Oから遠くなる。
以上説明したように、前記クリップ取付け部21eの外周に沿って凹部21hを形成することで、誤って筆記具用キャップ3を飲み込んだ場合でも、図4(b)、(c)に示すように前記凹部21hが先端部21a−他端部21b方向及び先端部21a−通気孔25方向の空気通路28を形成するため、天冠部21の外周部に形成される通気孔25と合せて通気性の向上を図ることができる。
次に、クリップ23を詳細に説明する。
クリップ23は、金属を成形加工したものであり、図1に示すように、全長をキャップ3の全長よりも短く構成している。クリップ23は、キャップ3へ装着するための取付部23aと、該取付部23aの他方端の開放端部23bとを有している。
前記取付部23aは、図2、図4(a)〜(c)に示すように、クリップ取付部21eを覆うとともに、前記取付け面21cの輪郭に合わせて円弧状の縁部を形成している。
さらに、取付部23aの縁部のうち、前記クリップ取付部21eの側壁に対向する縁部には挟持部23cが略L字断面形状に折り曲げ形成されており、ガイド溝21fに係合可能とされている。従って、取付部23aの縁部のうち、該クリップ取付部21eの側壁に対向しない部分は、図4(c)に示すように、軸心Oに直角する縦断面で上下反転したU字形状(下方に開放したU字)に形成されている。
また、取付部23aは、前記クリップ取付部21eと対向する部分を側面視で略断面C字形状(下方に開放したC字)に形成されている(図4(b),(c))。
前記クリップ取付部21eにクリップ23を取付けた状態では、図4(b),(c)に示すように、該クリップ取付部21eと取付部23aとの間に隙間を形成して空気通路24を構成している。空気通路24は、通気孔25と天冠部21とを連通し、また、通気路25と凹部21h間を連通している。
次に、天冠部21内に設けるインナーキャップ22を説明する。
前記インナーキャップ22は、図2に示すように、外径を天冠部21の中空部の内径より小径とする略円筒形状の外形を有し、該インナーキャップ22の外周壁と前記天冠部21の内周壁との間に空間をつくり、空気通路27を形成している。前記空気通路27は前記通気孔25を介してキャップ3外部と連通されている。
前記インナーキャップ22の一端部には、天冠部21のガイド部21jが挿入されるガイド孔22aが形成され、該ガイド孔22aにコイルスプリング26が配置され、一方、インナーキャップ22の他端部には、ペン先部8が収容される中空部22bが形成されている。
インナーキャップ22は、開口側端部22cとペン先部8外周の一部が当接する状態で、ペン先8aがインナーキャップ22内壁と接触しないように形成されている。
前記ガイド孔22aの底部には、ストッパー部22fが開口側に向かい突設されており、キャップ3内にペン先部8が収容された状態で、該ストッパー部22fと前記ガイド部21jとが当接しないように形成されている。
前記インナーキャップ22の端部22c側の外周部には、円周方向に沿ってガイド羽22dが複数個突出形成されており、キャップ本体20の内周壁をガイドにして、インナーキャップ22の外周壁がキャップ本体20の内周壁と接することなく、インナーキャップ22が摺動自在に設置されている。また、隣り合うガイド羽22dの間の空間を空気通路22eとして、インナーキャップ22内部のキャップ先端21a側と筆記体1側との空間を連通可能にしている。よって、キャップ3の筆記体1側の空間は、空気通路22e、空気通路27、通気孔25、空気通路24、及び凹部21hを介してキャップ21前方空間と連通する。
次に、本実施形態による筆記具用キャップの装着について説明する。
筆記具1を使用しない状態では、筆記具1のペン先部8にキャップ3を装着して、ペン先部8が露出した状態で不用意に他を汚さないように、また、ペン先が乾燥しないようにする。
このとき、キャップ3は、図1(a)、図2に示すように、後開口部20bが後軸7の一端部7aと当接した状態で先軸5の段付き部5aと嵌合するとともに、軸係止部20eにペン先側端部5bが嵌合してインクタンク4に装着保持される。キャップ3内のペン先部8は、インナーキャップ22を天冠部21方向に押圧した状態で配置されている。
前記インナーキャップ22は、天冠部21のガイド部21jと該インナーキャップ22のストッパー部22fとが当接しない状態(図2)で、コイルスプリング26によりペン先部8に付勢されている。これにより、開口側端部22cがペン先部8に密着することで、ペン先を中空部22b内に密閉した状態で収容できる。
一方、筆記具1を使用する場合は、キャップ3を筆記具本体2先端部より外し、該筆記具本体2の後端部に装着して使用する。
このとき、キャップ3は、図1(b)、図3に示すように、軸係止部20eと後端部7c側の後軸7とがきつく嵌合し、かつ、後端部7cが中キャップ22を押圧した状態で後軸7に装着されている。
この時、インナーキャップ22は、後端部7cによりコイルスプリング26を付勢しながらキャップ3内に押し込まれ、ストッパー部22fが天冠部21のガイド部21jと当接することで後軸7の後端部の所定位置に装着される(図3)。
上記第1の実施形態によれば、後軸7の一端部7aの外径をリフィール部6の段付き部5aの外径よりも大径としたので、キャップ3を装着した時に、一端部7aの端部に該キャップの端部が当接して、いわゆるストッパーの役割を成し、筆記具本体2にキャップ3を確実に装着することができる。また、キャップ3の外径と後軸7の外径の寸法差を小さくできるので、キャップ3を装着した筆記具1の外観をスマートに構成できるとともに、使用し易い筆記具を実現できる。
また、後軸7の全体又は一部を透明の樹脂製とすることで、該後軸7内部に収容されるインクタンクのインク残量を容易に確認できる。
また、キャップ3を着色された不透明の樹脂製としたので、筆記具未使用時には、先軸5内部の複雑なインク保溜体10の構造やキャップ3内部のペン先密閉構造をユーザーに見せることのない見栄えの良いデザインの筆記具を実現できる。
また、インナーキャップ22の構成を、ガイド孔22aの底部にストッパー部22fを開口側に向かい突設し、キャップ3内にペン先部8が収容された状態で(図2)、該ストッパー部22fと前記ガイド部21jとが当接しないように構成した。さらに、インナーキャップ22の構成を、キャップ3内部に後軸7の後端部7cが装着された状態で(図3)、該インナーキャップ22が後端部7cからの押圧力によりコイルスプリング26を縮小する方向に付勢しながらキャップ3内に押し込まれ、ストッパー部22fが天冠部21のガイド部21j(第2の突出部)と当接可能としたので、後軸7の後端部7cがキャップ3内部に入り込み過ぎることなく所定位置に装着することができる。
なお、第1の実施形態では、後軸7を透明な樹脂製で形成して、後軸7内部を視認可能にしているが、例えば、不透明の材料(金属製であってもよい)によって形成されるものであっても良く、この場合、後軸7内部が視認可能な覗き窓を形成してインクタンク内のインク残量を視認できるようにしたものが好ましい。
また、本実施形態では、キャップ3の構造を、空気通路24、21fを形成するようにしているが、係るキャップの構造に限定されるものではない。
また、キャップ本体20の内側に、第1の突出部である軸係止部20eを突設したことにより、後軸7の外周部に何も形成することなく略円筒形状のままで、すなわち、外観を損ねることなく、簡単な構成でキャップを後軸7の後端部7c側に装着することができる。
また、前記軸係止部20eを軸方向に沿って2列で形成するとともに、各々の列上に複数箇所で内側に向かい突設したので、2段階で後端部7c側の後軸7を挟持することで、キャップ3装着時のショックを緩和することができ、スムーズな装着を実現できる。
また、キャップ3内部にコイルスプリング26を介してインナーキャップ22を配置して、軸係止部20eと後軸7による歪みの反力によって生じる後端部表面の摩擦力を、前記コイルスプリング26のバネ力よりも僅かに大きく設定したので、キャップ3装着時にキャップ挟持力がバネ力にまけてキャップ3が外れることなく、確実にキャップを後端部7c側の後軸7に装着することができる。
尚、本第1の実施形態では、キャップ本体20の内側に軸係止部20eを軸方向に沿って2列で構成しているが、軸係止部の列数や形状は限定されない。例えば、1列の突出部を構成するようにしたものであっても良い。この構成によれば、キャップ本体の構成をさらに簡単にすることができ、コストの低減を図ることができる。
また、上記実施形態では、軸係止部20eが後端部7c側の後軸7をきつく嵌合する構成を説明したが、軸係止部20eが後端部7cをきつく嵌合する構成ともできる。
また、インナーキャップ22の作動手段としてコイルスプリング26を採用しているが、これに限定するものではない。例えば、キャップ3とインナーキャップ22との間にゴム材を介在させて、ゴムの弾性によりインナーキャップ22を動作させるものであっても良い。
さらに、上述の図示例にのみ限定せず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
[第2の実施の形態]
以下、本発明の第2の実施の形態に係る筆記具、筆記具用キャップ、及び筆記具への筆記具用キャップの組立て方法を、図5〜図12を参照して説明する。
図5に示すように筆記具31は、筆記具用キャップAと、筆記具本体Bとから構成されている。
前記筆記具本体Bは、軸筒35と円筒形外装体36とより構成され、円筒形外装体36に軸筒35を内挿して互いのねじ部35d,36bを螺合することで形成される。
軸筒35は、ペン先32を支持部材33に支持してなるペン先部34を先端開口35aに嵌着するとともに、ペン先部34側に続く前半部側にインク保留部35b、これに続く後半部にインクタンク部35cを内設している。また、インクタンク部35cの先端部外周壁面には、ねじ部35dが形成されている。
円筒形外装体36は、先端開口36aの内周壁面にねじ部36bを形成するとともに、上記軸筒35の後半部、例えばインクタンク部35cを収容する長さに形成されている。
筆記具用キャップAは、図5、図6に示すように、天冠37とキャップ筒38とを嵌合してなるキャップ本体39と、天冠37とキャップ筒38の間に設ける中キャップ49と、キャップ本体39に取付るクリップ40と、を有している。天冠37と、キャップ筒38と、中キャップ49と、及びクリップ40とは、別体に形成されている。
キャップ筒38は、先端開口38a(図6)の内周壁面に、天冠37を係止するための凸形状の冠係止部38bと、中キャップ49のキャップ本体39からの脱落を防止するための凸形状の中キャップ係止部38cとが全周にわたり設けられている。
また、キャップ筒38の後端開口38dの内周壁面には、軸筒35のインク保留部35bとインクタンク部35cとの間の段付き部35eに密接する段差部38eが形成されている。
キャップ筒38の材質は、比較的やわらかいPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PEТ(ポリエチレン)、CO‐PEТ(ポリエチレンを主成分とし、他の樹脂(例えばポリシクロヘキサンジメタノール(PCТ))等が比較的多く混入されているもの)、ABS、セルロース系樹脂、塩化ビニル、又はPMMA(ポリメタクリル酸メチル)等の合成樹脂製のものである。
天冠37は、図5〜図9に示すように、膨出部41の軸心O方向後端に、キャップ筒38の先端開口38aに嵌挿するための嵌挿筒部42を突設し、かつ、内部に円筒形の空処αを形成している。
天冠37の材質は、PC/PEТ(ポリカーボネートとポリエチレンテレフタレートとのポリマーアロイ)、PC/ABS(ポリカーボネートとABSとのポリマーアロイ)、ABS、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、PEТ(ポリエチレン)、又はPMMA(ポリメタクリル酸メチル)等の合成樹脂製のものである。
空処α内には、天冠37の先端内壁面に、中キャップ49を支持するための支持部材43が、軸心Оに一致して突設されている。
支持部材43は、先端側にスプリング50を係合、取付けるため、外径を小さくした支持軸を形成している。尚、支持部材43は、軸心Oに直交する方向の断面を十字形(図7(c))に形成している。
膨出部41は、先端側の頂部に半球形突起41aを形成するとともに、後端縁部の外径を、キャップ筒38の先端開口38aの外径に略一致させて形成した外観略砲弾形のものである。また、膨出部41はその外周面の一部に形成した平坦な取付け面41bに、係止部44が突設されている。
嵌挿筒部42は、上記キャップ筒8の内径に略一致した外径の円筒形に形成されており、その開口縁部の至近位置には、天冠係止部38bと係止するための溝や切り欠きなどのノッチ42aが全周にわたり形成されている。
係止部44は、クリップ40を係止する係止部であり、ガイド部材45と通気孔46により構成されている。
一対のガイド部材45,45は、外側面を緩やかな鋸歯形に形成した起立脚45a,45aと、起立脚45a,45aの上縁部に起立脚45a,45aよりも外側方に突出形成してガイド部材として機能する一対の歯係止片45b,45bとを有し、互いに所要の間隔(通気孔46)を保持しかつ軸心Оに沿って形成されている。
上記一対のガイド部材45,45の構成により、クリップ40の係合歯51a〜51cが歯係止片45b,45bに押圧されると、一対のガイド部材45,45の弾性作用により歯係止片45b,45bを越えて起立脚45a,45aに係合する。
すなわち、ガイド部材45,45は、径方向γからのクリップ40の押圧により、弾性力を利用した少ない押圧力により嵌合するワンタッチ嵌合、すなわちスナップフィットによる弱い取付け力で、ガイド部材45,45とクリップ40の仮止めが可能に形成されている。
起立脚45aと歯係止片45bは、通気孔46に面する内側縁部に対して、外側縁部が、クリップ40の差込み方向β(図5(a)、図4(a),(b))の上流側端から下流側端に向けて外側方に離間するように傾設されている(図9(a),(b))。換言すると、一対のガイド部材45,45は、これの外側縁部が平面テーパー形状に形成されている。
また、歯係止片45b,45bは、クリップ10の差込み方向β(図7)の上流側端から下流側端に向けて厚みが次第に大きくなるクサビ形に形成されている。
起立脚45aの側面には、浅い鋸歯状の突起Pが所定間隔毎に複数形成されている(図9(a),(b))。
歯係止片45bの上面45cは、図7(a)〜(c)、図9(a),(b)に示すように、センタリング効果のある傾斜面が形成されている。すなわち、一対の上面45c、45cは、図8に示すように、互いの接線TLの交点Xがクリップ40の取付け側の空間、すなわち上面45cの前面側の空間FS内に位置するような傾斜面に形成されている(図8)。尚、空間FSは、歯係止片45−45間の空間である通気孔46は含まない。
上面45cは、全面或は一部が、平面或は曲面であればよい。
例えば、一対の上面45c、45cが平面の場合には、一対の上面45c、45cはテーパー形状となり、一対の上面45c、45cが曲面の場合には、略上下反転したU字状、或はアーチ形状(略下方開口C字状)を形成することとなる。もちろん、一対の上面45c、45cは、一方が平面で他方が曲面でも、センタリング効果を発揮することができる。
通気孔46は、天冠37内の空処αと外部とを連通する横断面・縦断面共に略矩形の通気孔であり、上記ガイド部材45−45の間に、それらガイド部材45とほぼ同じ長さにして形成されている。
ストッパー47は、係止部44に組み付けられるクリップ40を位置決めするための位置決めストッパーであり、それは、上記係止部44に係合されるクリップ40の鉤部(フック)40a(図10(a)〜(c))の先端部内壁面に当接する長さにした平面U字形のものであり、ガイド部材45,45の先端部側(突起41a側)の取付け面41b上に突設されている。
凹陥部48は、係止部44の周囲に形成した凹陥部であり、取付け面41aを囲繞する所要の領域に形成されている。
中キャップ49は、図5、図6に示すように、前記天冠37の空処αの内周壁面との間に余裕空間を残す外径を有する略円筒形に形成された本体49aと、本体49aの後端縁部外周面上に等角度間隔に設けられ、前記キャップ筒38の内周壁面に当接する外径を形成する複数の突片49b…と、から構成されている。よって、中キャップ49は天冠7内で軸心Оに沿って摺動可能に形成されている。
本体49aの内部は、仕切り壁49cによってスプリング収容空処49dとペン先収容空処49eとに区画されている。先端部側のスプリング収容空処49dには、前記支持部材43に嵌装されるスプリング50が収容され、また、後端部側のペン先収容空処49eには、これに突入された前記ペン先部34を保持するように形成されている。
クリップ40は、図10(a)〜(c)に示すように、キャップ本体39の係止部44に係合するための鉤部40aを先端部に形成するとともに、その鉤部40aより後端部側に細長い挟持部40bを形成した金属製のものであり、その詳細な構成は次の通りである。
鉤部40aは、図9、図11に示すように、上記位置決めストッパー47と係止部44とを同時に覆う容積を有し、かつ平面U字形にした下端縁部の対向する両側縁部に沿い、鋸刃形にした3つの係合歯51a〜51c、51a〜51cを互いに対向させて列設している。それら係合歯51a〜51c、51a〜51cは、これらの歯先を結ぶ仮想線О1,О1(図11)どうしが、差込み方向β(図6)上流側において交差する関係にしている。換言すると、係合歯51a〜51c、51a〜51cどうしは、それらの歯先が、差込み方向β上流側端から下流側端に向けて互いの間隔が次第に広くなる平面テーパー状に列設されている。
挟持部40bは、図10に示すように、差込み方向β上流側端から下流側端に向けて次第に幅狭になる断面下向きC字形に形成されており、それの後端部には、挟持用玉部40cが、上記鉤部40aの下端面とほぼ同一平面上に位置する関係にして下向きに突設されている。
次に、前述した筆記具用キャップAの組立て作業について説明する。
まず、図9(a)に示すように、天冠37の係止部44に対し、クリップ40の先端部側内壁面が、位置決めストッパー47からストローク距離Sだけ離間した仮止め位置P1において、クリップ40の鉤部40aをなす係合歯51a〜51c、51a〜51cを、係止部44のガイド部材45,45の上面に当接させて押圧する。
径方向γ(図7(a)〜(c))からクリップ40を天冠37に仮止めすると、挟持用玉部40c等が邪魔にならず、自動機による組み立てを行う際に有効である。
その径方向γに加えられる押圧力に従って、ガイド部材45,45は互いに近接する方向に弾性変形し、係合歯51a〜51c,51a〜51cが歯係止片45b,45bの下側に移動して、起立脚45a,45aの外側面に係合した状態になり、ガイド部材45,45は、弾性変形前の起立姿勢に復帰する。これにより、クリップ40が天冠37に、すなわちキャップ本体39に仮止めされた状態になる。
次に、仮止めされている上記クリップ40を、ガイド部材45,45に沿って、これの軸方向の差込み方向β(図9(a),(b))上流側端から下流側端に向けて押動するのに従って、係合歯51a〜51c,51a〜51cとガイド部材45,45との係合強度が次第に増加しながら、ガイド部材45,45の差込み方向β上流側端から下流側端に向けて移動する。そして、鉤部40aの先端部内壁面が位置決めストッパー47に当接して、図9(b)に示すように、所期の係止位置P2に位置決めされる。
係止位置P2では、図9(b)に示すように、係合歯51a〜51c,51a〜51cが起立脚45aの側面に設けた浅い鋸歯状の突起Pに係合し、クリップ40が仮止め位置P1方向へ移動するのを防いでいる。
起立脚45aに突起Pがなくても係合歯51a〜51c,51a〜51cがクリップ40の仮止め位置P1方向への移動を防止できれば、設ける必要はない。突起Pを設ける場合には、1以上設けることでクリップ40の仮止め位置P1方向への移動を防止できる。
本実施形態に係る筆記具用キャップによれば、キャップ本体39にクリップ40を組み付ける際、そのクリップ40の鉤部40aをガイド部材45,45に押圧する動作と、該クリップ40をそれらガイド部材45,45に沿ってスライドする動作とを時系列的に前後して順次行えばよいものである。
また、クリップ40の係止部44への取付け方向は、軸方向の差込み方向βに限定するものではなく、係止位置P2に向かう方向であれば良い。例えば、クリップ40を軸方向の差込み方向βに対して所定角度の方向に押動するのに従って、係合歯51a〜51c,51a〜51cとガイド部材45,45との係合強度が次第に増加しながら係止位置P2に位置決めされるように構成してもよい。
なお、本発明は本実施形態に限るものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形実施が可能である。
上記においては、係合歯51a〜51cとガイド部材45の双方を、いわば平面テーパー形状に構成したものを一例として説明したが、係合歯又はガイド部材のいずれか一方を平面テーパー形状に形成すればよい。
上記においては、係合歯51a〜51cを複数形成したものを一例として説明したが、少なくとも1つの係合歯を形成すればよい。
上記においては、キャップ本体39の係止部44には、起立脚45aの上縁部に歯係止片45bが外側方に向けて略テーパー形状に突出形成され、かつ、クリップ40の鉤部40aには、その歯係止片45bに圧入固着される係合歯51a〜51cを形成したが、歯係止片45bと係合歯51a〜51cの形状を逆に形成してもよい。
すなわち、形成歯係止片45bに係合歯51a〜51cを形成し、鉤部40aをテーパー状の形状に形成しても、上記と同様の作用効果を奏する。
上記キャップ筒38は、フィット感をやわらかくすし、且つ、嵌合による耐久性向上のため、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、CО‐PEТ(PEТが主成分で、他の樹脂(例えば、ポリシクロヘキサンジメタノール(PCТ)))やゴム分を含んだ材質等、剛性の低い又は耐熱性の低い材質を採用するとよい。
天冠37としては、装飾を目的として追加されることが多いが、本実施形態では、キャップ筒38よりも、剛性や耐熱性が高いPC(ポリカーボネート)、ABS、PEТ(ポリエチレン)、PC/PEТ(ポリカーボネートとポリエチレンテレフタレートとのポリマーアロイ)、PC/ABS(ポリカーボネートとABSとのポリマーアロイ)等の合成樹脂を採用することで、クリップ40の取付け強度アップや抜止め力の向上が図れるとともに、径方向γへのスナップフィット性や差込み方向βへの押圧による固定に関して非常に有効である。
上記においては、キャップ本体39の係止部44を弾性変形させる例について説明したが、クリップ40の鉤部40aを弾性変形させて、ワンタッチ嵌合を実現してもよく、また、キャップ本体39の係止部44とクリップ40の鉤部40aの双方を弾性変形させて、ワンタッチ嵌合を実現してもよい。
尚、係止部44は、一対のガイド部材45,45にて形成しているが、1つのガイド部材で形成してもよく、また、通気孔46(空間)を形成しなくてもよい。すなわち、係止部44は、互いの接線TLの交点Xがクリップ40の取付け側の空間となる傾斜面よりなる上面を有していればよく、1或は2以上の複数の上面から構成できる。
ただし、係止部44に通気孔46等の空間を設けると、係止部44の弾性変形が容易となると共に、通気孔46を設けるとキャップ本体の通気を確保でき、効率的なキャップを構成できる。