JP4583208B2 - 建材の廃棄時分別装置 - Google Patents

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Description

本発明は、建築物の一部として利用されていた建材を廃棄する際に、その材質に基づいて、廃棄方法に関する分別を行う技術に関する。
エコロジーの観点から、ゴミの排出時に分別を行うことは、古くから行われているが、最近では、パソコンや家電製品などの様々な製品について、産業廃棄物としての処理方法が細かく定められている。また、一部の製品については、製造メーカの出荷価格に廃棄費用を上乗せして販売することが義務づけられるようになってきている。製品を廃棄する方法としては、一般的には、そのまま再利用が可能な部品については、新品の部品への転用が行われ、材料としての再利用が可能な部品については、いわゆるリサイクルが行われ、燃やすことが可能な部品については焼却処理が行われ、燃やすことができない部品は埋め立てへ回されることになる。
建材は、このような廃棄時の処理方法が非常に重要な製品として注目されている。これは、建材には様々な材料が使用されており、しかも、建築物の取り壊し時などに、一度に大量の建材が産業廃棄物として排出されるためである。たとえば、下記の特許文献1には、剥離用治具を用いて、建材中の無機質ボードと鋼板とを物理的に分別して回収するための廃棄時分別方法および分別装置が開示されている。
特開2004−195275号公報
パソコンや家電製品などでは、廃棄対象となる製品を、当該製品の製造メーカ自身が回収して、廃棄処理を行う方式が定着しつつある。このような方式をとれば、個々の製品の構造や材質を熟知している各製造メーカが、それぞれ自社製品についての廃棄処理を行うことになるので非常に合理的である。各製造メーカは、再利用可能な部品については、その場で新製品の部品へと転用することもできる。
ところが、建材に関しては、このような方式をとることは非常に困難である。1つの建築物を取り壊した場合に生まれる廃材は多種多様であり、これらの廃材をそれぞれ製造メーカへと戻すことは、現実的には不可能である。このため、建材を廃棄する際には、産廃処理業者が廃材をまとめて回収し、個々の材質に基づいて、その廃棄方法に関する分別を行っているのが現状である。しかしながら、各建材の廃棄時に、このような分別を行う仕事は、非常に手間と時間を必要とする作業になる。産廃処理業者は、個々の建材の製造メーカではないので、その材質を正確に把握することは困難であり、また、廃棄時には、個々の建材はかなり汚れており、材質確認作業を妨げる要因となるからである。
そこで本発明は、建材を廃棄する際に、当該建材の材質に基づいて、廃棄方法に関する分別を容易に行うことが可能な建材の廃棄時分別方法および分別装置を提供することを目的とする。
(1) 本発明の第1の態様は、建築物の一部として利用される建材を廃棄する際に、当該建材の材質に基づいて、廃棄方法に関する分別を行う建材の廃棄時分別装置を、
建材に取り付けるための取付部と、外部に対する無線交信を行うための交信部と、取付対象となった建材に関する情報を記録したメモリ部と、を有するICタグであって、メモリ部には、当該建材を特定する建材特定情報と、当該建材の材質を示す材質情報と、当該建材の寸法もしくは重量を示す量的情報と、が記録されているICタグと、
このICタグと無線交信を行い、メモリ部に書き込まれている各情報を読み出す情報読出手段と、
種々の材質についてそれぞれ特定の廃棄方法を対応づけた廃棄方法テーブルを格納した廃棄方法テーブル格納手段と、
種々の材質についてそれぞれ寸法もしくは重量に応じた廃棄費用を対応づけた廃棄費用テーブルを格納した廃棄費用テーブル格納手段と、
情報読出手段が読み出した材質情報に基づいて、廃棄方法テーブルを参照し、対応する廃棄方法を決定する廃棄方法決定手段と、
情報読出手段が読み出した建材特定情報に基づいて、個々の建材を特定して、個々の建材について廃棄方法決定手段によって決定された廃棄方法をオペレータに提示する廃棄方法提示手段と、
情報読出手段が読み出した材質情報および量的情報に基づいて、廃棄費用テーブルを参照し、廃棄費用の見積りを行う廃棄費用見積手段と、
見積られた廃棄費用をオペレータに提示する廃棄費用提示手段と、
によって構成するようにしたものである。
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係る建材の廃棄時分別装置において、
各建材についての建材特定情報と、当該建材の配置場所を設計図面上に示す情報と、を含むCADデータを入力するCADデータ入力手段を更に設け、
廃棄方法提示手段に、CADデータを利用して設計図面を提示するとともに、この設計図面上に示された各建材についての廃棄方法を提示する機能をもたせたものである。
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第1または第2の態様に係る建材の廃棄時分別装置におけるICタグ以外の構成要素によって構成される分別装置本体部を、コンピュータを利用して実現することができるように、この分別装置本体部の機能を実行するためのプログラムを用意するようにしたものである。
本発明に係る建材の廃棄時分別方法および分別装置によれば、ICタグを利用して個々の建材の材質に関する情報を管理するようにしたため、建材を廃棄する際に、当該建材の材質に基づいて、廃棄方法に関する分別を容易に行うことが可能になる。また、廃棄費用の見積もりが提示されるため、建物を解体したり、リフォームしたりすべきかどうか、経済的な観点から判断する資料を提供することができる。
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
<<< §1.本発明に係る基本的な分別方法 >>>
図1は、本発明に係る基本的な建材の廃棄時分別方法の手順を示す流れ図である。図示のとおり、この手順は、大きく分けて、前半の建築物施工段階における手順(ステップS11〜S14)と、後半の建築物解体段階における手順(ステップS15,S16)と、に分けることができる。本発明の目的は、建築物の一部として利用される建材を廃棄する際に、当該建材の材質に基づいて、廃棄方法に関する分別を容易に行うことにあり、本発明の作用効果は、本来、この流れ図の後半段階である建築物解体段階において発揮されるべきものである。ただ、本発明では、前半段階である建築物施工段階からその準備を行っておくことになる。
図1の流れ図では、建築物施工段階(前半段階)から直ちに建築物解体段階(後半段階)へと移行する手順が示されているが、もちろん、実際には、建築物の施工後、解体に至るまでには、数年〜数十年の歳月が経過するのが一般的であり、図示のステップS14からステップS15の間は、その程度の期間経過が想定されるものである。なお、本願にいう「建築物の解体段階」とは、当該建築物を完全に取り壊してしまう場合だけではなく、ある一部分だけを解体する場合も含むものであり、たとえば、壁紙の張り替え作業といったリフォーム作業も含むものである。
まず、図1の前半段階、すなわち、建築物施工段階に行う手順を説明する。はじめに、ステップS11において、出荷する建材にICタグを取り付ける作業が行われる。通常、このような作業を行うためには、建材メーカの協力が必要になろう。すなわち、建材メーカから建材を出荷する時点において、当該建材にICタグを取り付けてもらうことになる。ここでは、無線交信機能を有するICタグを用いるようにする。ICタグは、メモリを内蔵した小型のICであり、外部との交信機能を有し、外部のリーダライタ装置によって、ICタグ内のメモリに所望のデータを書き込んだり、書き込まれたデータを読み出したりすることが可能である。
現在、このようなICタグは、大幅なコストダウンにより、種々の製品に利用されている。製造メーカから製品を出荷する際に、個々の製品にこのICタグを取り付けておき、当該製品に関する種々の情報をデータとして書き込んでおけば、流通過程や販売過程において、このデータを利用した種々の管理を行うことができる。一部の建材メーカでは、既に、建材を出荷する際に、このようなICタグを取り付ける運用が行われているので、そのような建材メーカ製品については、本発明に係る分別方法を直ちに適用することが可能である。
続くステップS12では、このICタグに、当該建材の材質情報を記録する作業が行われる。製造メーカであれば、自社の製品がどのような材質で構成されているか、という情報を当然有しているので、出荷する建材に付されたICタグに、当該建材の材質情報を書き込む処理は容易に行うことができる。具体的には、リーダライタ装置を用いて、個々の建材に取り付けられたICタグ内のメモリに、当該建材の材質情報を書き込む処理を行えばよい。材質情報としては、たとえば、「天然木材」,「プラスチック」,「ガラス」,「金属」,「塩化ビニル」,「ポリカーボネート」など、廃棄方法の分別に有用となる情報を用いるようにする。
次のステップS13で、この建材の出荷が行われる。出荷された各建材には、それぞれICタグが取り付けられており、このICタグ内には、当該建材の材質情報が記録されていることになる。なお、ステップS11とステップS12の手順は、順序を入れ替えてもかまわない。すなわち、先にステップS12を実施して、ICタグに建材情報を記録し、次にステップS11を実施して、この建材情報が記録されたICタグを出荷する建材に取り付けるようにしてもかまわない。こうして、建材メーカから出荷されたICタグ付きの建材は、流通過程を経て、施工対象となる建築現場へと納品されることになる。
ステップS14では、こうして納品された、ICタグを取り付けたままの建材が施工に供せられる。現在、一般に利用されているICタグは、数ミリ角程度の大きさのものが多く、このようなICタグを取り付けた状態のまま、建材を施工に供しても、通常、大きな問題は生じない。もっとも、施工後に、ICタグが建材の表面に露出した状態であると、建築意匠上は好ましくないので、ステップS11における出荷時のICタグの取付箇所は、施工後に意匠上の効果を損なわないような箇所となるように配慮する必要がある。ICタグは、無線交信機能を有しているため、一般的な材質からなる壁材や床材などの場合、ICタグが裏側面に取り付けられていたとしても、リーダライタ装置との間の交信が妨げられることはない。したがって、ICタグが外観上は見えずに埋め込まれてしまうような態様で施工を行ってもかまわない。
図2は、建材10(この例は床材)の側面部分にICタグ100を取り付けた例を示す斜視図である。図では、このICタグ100のメモリに、建材特定情報として「床材No.123456」なるデータ、材質情報として「天然木材」なるデータが、それぞれ記録されている例が示されている。これは、当該建材10が、「床材No.123456」なる建材特定情報で特定される建材であり、材質が「天然木材」であることを示している。実用上は、この他、建材メーカ名、ロット番号、製造もしくは出荷年月日、発注者、流通経路に関する情報などが、ICタグ100内に併せて記録されるのが一般的であるが、ここではこれらの付加的な情報に関する説明は省略する。図示の例のように、床材の側面部分にICタグ100を取り付けておけば、施工後には、ICタグ100は床に埋め込まれた状態になり、意匠上の効果の妨げにはならない。
以上で、図1の前半の建築物施工段階は完了である。このような手順を行えば、建築物に利用されている各建材は、それぞれICタグが取り付けられたままの状態となっており、各ICタグには、それぞれ各建材の材質情報が記録されている。一般的なICタグは、リーダライタ装置側から与えられる電磁波によって電力供給を受ける構造となっており、電池などは内蔵していない。したがって、建築物施工後、数年〜数十年経過しても、その機能が損なわれることはない。
続いて、図1の後半段階、すなわち、建築物解体段階に行う手順を説明する。建築物の解体時には、まず、ステップS15において、各建材に取り付けられているICタグから無線交信により材質情報を読み出す処理が実行される。たとえば、図2に示すような建材10であれば、ICタグ100から「天然木材」なる材質情報が読み出されることになる。具体的には、ICタグ用のリーダライタ装置を、個々の建材に近づけ、ICタグ100と無線交信できる状態にし、メモリ内に記録されていた情報を読み出す操作を行えばよい。
続くステップS16では、読み出した材質情報に基づいて、読出対象となった建材についての廃棄方法に関する分別を行う。このような分別を行うためには、図3に例示するような廃棄方法テーブルを予め用意しておくのが好ましい。前述したように、建材の廃棄方法としては、一般に、次の4通りの方法が知られている。図3の廃棄方法テーブルは、各材質からなる建材を、この4通りの廃棄方法のいずれに分別するかを示すためのものである。
まず、第1の方法「再利用」は、ほぼそのままの状態で再利用が可能な材質からなる建材に適用される廃棄方法であり、文字通り、そのまま新品の部品として再利用されることになる。第2の方法「リサイクル」は、何らかの加工プロセスを経ることにより利用することが可能な材質からなる建材に適用される方法であり、粉砕加工や溶融加工などを経て、新しい部品に生まれ変わることになる。第3の方法「焼却」は、再利用やリサイクルを行うことはできないが、燃やすことが可能な材質からなる建材に適用される。第4の方法「埋めたて」は、再利用やリサイクルはもちろん、燃やすこともできない材質からなる建材に適用される方法であり、埋め立て地へ運ばれて埋められることになる。
このような廃棄方法テーブルを用意しておけば、ステップS15で読み出した材質情報に基づいて、このテーブルを参照することにより、個々の建材についての廃棄方法を確認して分別することが可能になる。たとえば、図2に示す建材10について、ICタグ100から「天然木材」なる材質情報が読み出された場合、図3に示すテーブルを参照すれば、この建材10は再利用に分別されることが認識できる。なお、図3に示す廃棄方法テーブルは、説明の便宜上、わかりやすい一例を示したものであり、必ずしも現在の法令で定められた廃棄方法に合致した廃棄方法を示すものではない。実用上は、個々の自治体ごとに異なる廃棄方法を定めている場合も少なくないので、各自治体の定める基準に応じて、廃棄方法テーブルを用意する必要がある。
なお、ステップS15において、個々の建材に取り付けられたICタグから、それぞれ材質情報を読み出す際には、ICタグ用のリーダライタ装置を、個々の建材に近づけて読み取ってゆく作業を行うことになるが、近接した場所に複数の建材が存在する場合、複数の建材についての材質情報が同時に読み取られてしまう可能性がある。このような場合、同時に読み取られた複数の材質情報が、どの建材に対応する情報であるのか区別がつかなくなる可能性もある。そこで、実用上は、個々の建材に取り付けられた各ICタグに、当該建材を特定する建材特定情報を記録しておくのが好ましい。
たとえば、図2に示す例の場合、建材10用のICタグ100には、「床材No.123456」なる建材特定情報とともに「天然木材」なる材質情報が記録されている。「床材No.123456」として、たとえば、各建材の商品コードを用いれば、建材の商品カタログを参照することにより、「床材No.123456」なる商品コードで特定される建材がどの床材であるのかを正確に認識することが可能である。したがって、複数の建材についての材質情報が同時に読み取られたとしても、建材特定情報と材質情報とが対になって読み出されるようにしておけば、個々の建材と材質情報とを取り違えるおそれはなくなる。かくして、建材を廃棄する際に、当該建材の材質に基づいて、廃棄方法に関する分別を容易に行うことが可能になる。
なお、1つの建材に材質の異なる複数の部品が用いられている場合には、ICタグ内には、個々の部品ごとにそれぞれ材質情報を記録しておくようにし、部品との対応づけも記録しておくようにするのが好ましい。たとえば、材質情報として「フレーム部:金属、本体板状部:天然木材、表皮部:塩化ビニル」のような情報を記録しておくようにすれば、廃棄時には、当該建材を、フレーム部と、本体板状部と、表皮部と、に分解して、各部をそれぞれ材質に基づいて分別するようにすればよい。
<<< §2.ICタグを取り外して保管する実施形態 >>>
上述した§1では、建築物施工段階において、材質情報が記録されたICタグを取り付けたままの状態で、建材を施工に供する実施形態を述べた。しかしながら、ICタグは、必ずしも建材に取り付けたままの状態にする必要はなく、施工時に、建材から取り外し、別個に保管するようにしてもかまわない。もっとも、個々の建材から各ICタグを取り外してしまうと、各建材と各ICタグとの対応関係が不明となってしまうので、実用上は、図2に示す例のように、建材10に取り付けたICタグ100に、当該建材を特定する建材特定情報「床材No.123456」を、当該建材の材質を示す材質情報「天然木材」とともに記録しておくようにし、ICタグ100が建材10から取り外されたとしても、両者の対応関係を認識できるようにしておくのが好ましい。
図4は、このように、ICタグを建材から取り外して保管する実施形態の手順を示す流れ図である。この手順も、大きく分けて、前半の建築物施工段階における手順(ステップS21〜S26)と、後半の建築物解体段階における手順(ステップS27,S28)と、に分けることができ、実用上は、建築物施工段階(前半段階)から建築物解体段階(後半段階)へと移行するまでには、数年〜数十年の歳月が経過するのが一般的である。
まず、図4の前半段階、すなわち、建築物施工段階に行う手順を説明する。はじめに、ステップS21において、出荷する建材に、無線交信機能をもったICタグを取り付ける作業が行われる。これは、図1のステップS11と全く同様の手順であり、建材メーカから建材を出荷する時点において、当該建材にICタグを取り付ける作業を行うことになる。もっとも、この§2で述べる実施形態では、施工時にICタグは建材から取り外されてしまうため、ICタグは必ずしも建材自体に取り付ける必要はなく、建材の梱包材に取り付けてもかまわない。本願において、「建材にICタグを取り付ける」という文言の意味は、建材自体にICタグを取り付ける態様のみを指すものではなく、場合に応じて、建材の梱包材などにICタグを取り付ける態様も含むものである。
続いて、ステップS22において、このICタグに、当該建材を特定する建材特定情報および当該建材の材質を示す材質情報を記録する作業が行われる。図2に示す例の場合、建材10に取り付けたICタグ100に、当該建材を特定する建材特定情報「床材No.123456」および当該建材の材質を示す材質情報「天然木材」が書き込まれることになる。
次のステップS23で、この建材の出荷が行われる。出荷された各建材には、それぞれICタグが取り付けられたままの状態となっており、このICタグ内には、当該建材についての建材特定情報および材質情報が記録されていることになる。建材特定情報は、流通過程において、特定の製品の入庫や出庫の状況を確認する処理にも利用することが可能であるが、ここでは、発明の本旨ではないので、詳しい説明は省略する。なお、この実施形態においても、ステップS21とステップS22の手順を入れ替えてもかまわない。こうして、建材メーカから出荷されたICタグ付きの建材は、流通過程を経て、施工対象となる建築現場へと納品されることになる。
ステップS24は、こうして建築現場に納品された建材から、ICタグを取り外す処理である。このように、この§2で述べる実施形態の場合、施工現場においてICタグを建材から取り外す便宜を考慮して、ステップS21では、取り外しが容易な態様で、ICタグの取付を行うようにするのが好ましい。具体的には、ICタグを粘着シールで建材に貼り付けておくとか、上述したように、建材自体ではなく建材の梱包材にICタグを取り付けておくようにすればよい。
続くステップS25では、こうしてICタグを取り外した状態の建材が、施工に供されることになる。施工後には、ICタグは建材上には付着していないので、建築意匠上の問題は何ら生じない。
そしてステップS26において、取り外したICタグの保管が行われる。通常、1つの建築物の施工には、多数の建材が用いられるので、取り外されたICタグも多数に及ぶことになる。そこで、これら多数のICタグを、一括して封筒や箱などに入れて保管しておくのが好ましい。このICタグは、数年もしくは数十年後の建築物解体時やリフォーム時に必要になるので、長期間の保管に耐えるような保管方法を考慮すべきである。たとえば、家を新築したような場合には、家の権利証などとともに保管しておくとよい。前述したとおり、一般的なICタグは、リーダライタ装置側から与えられる電磁波によって電力供給を受ける構造となっているので、長期間保管しておいても、その機能が損なわれることはない。
続いて、図4の後半段階、すなわち、建築物解体段階に行う手順を説明する。建築物の解体時には、まず、ステップS27において、保管しておいた個々のICタグから無線交信により建材特定情報および材質情報を読み出す。ICタグ用のリーダライタ装置を用いれば、所定の距離範囲内に存在するICタグ内の情報を一括して読み出すことが可能である。しかも、読み出した情報は、「床材No.123456」なる建材特定情報と「天然木材」なる材質情報とが対になっているので、複数の建材についての材質情報が同時に読み取られたとしても、どの材質情報がどの建材についてのものかを認識することが可能である。
最後にステップS28において、読み出した個々の材質情報に基づいて、読み出した個々の建材特定情報で特定される建材についての廃棄方法に関する分別を行う。このような分別を行うために、図3に例示するような廃棄方法テーブルを利用する点は、§1で述べた基本的実施形態と同じである。たとえば、「床材No.123456」なる建材特定情報によって特定される床材に関しては、「天然木材」なる材質情報に基づいて「再利用」なる分別がなされる。
<<< §3.CADデータを利用する変形例 >>>
コンピュータの普及とともに、建築物の設計時に、CADシステムを利用した設計作業が行われることが一般的になってきている。このようなCADシステムを利用した設計が行われた場合、CADデータを利用することにより、本発明の更に効果的な運用が可能になる。
すなわち、建築物の施工時に、各建材の配置場所を設計図面上で示すことができるように、各建材についての建材特定情報と設計図面上の特定位置との対応関係を示す情報を含むCADデータを作成するようにし、このCADデータを保管しておくようにする。たとえば、図5は、CADシステムで作成された1つの部屋に関する設計図面を示す平面図である。この設計図面には、各建材の配置場所が示されている。すなわち、「床材No.123456」なる建材特定情報によって特定される4枚の床材が、それぞれ図示された平面位置に配置されることが示されており、「壁材No.77777」なる建材特定情報によって特定される合計6枚の壁材が、それぞれ図の左右位置の壁として配置されることが示されており、「壁材No.99999」なる建材特定情報によって特定される合計6枚の壁材が、それぞれ図の上下位置の壁として配置されることが示されている。このように、各建材についての建材特定情報と設計図面上の特定位置との対応関係を示す情報を含むCADデータを作成しておけば、ディスプレイ画面上に、図5に示すような平面図を表示することが可能であり、どの建材がどの位置に配置されるのかを一目で確認することができる。
一方、建築物の解体時には、保管しておいたこのCADデータを利用して、設計図面上の個々の位置に配置されている建材についての廃棄方法に関する分別を行うことができる。たとえば、図6は、図5に示す設計図面上に、個々の建材についての廃棄方法に関する分別情報を加えた表示例を示す図である。図示の例の場合、「床材No.123456」なる建材特定情報によって特定される4枚の床材については「再利用」、「壁材No.77777」なる建材特定情報によって特定される合計6枚の壁材については「埋めたて」、「壁材No.99999」なる建材特定情報によって特定される合計6枚の壁材については「リサイクル」なる分別を行うことが一目瞭然である。
この図6に示す設計図面は、当然ながら、実際の建築物の間取りに対応したものであり、この図面上の個々の位置に配置されている建材は、実際の建築物上の実在の建材として直ちに認識可能である。したがって、この設計図面上に示された各建材について、図面上で廃棄方法に関する分別を示すことにより、実際の解体作業者に対して、直観的な分別情報を提示できるという大きなメリットが得られる。
<<< §4.廃棄費用を算出する変形例 >>>
続いて、ここでは、廃棄費用の算出までも行うことが可能な変形例を述べておく。個々の建材を廃棄する場合、それぞれ所定の廃棄費用がかかる。この廃棄費用は、廃棄方法によっても異なるし、廃棄対象となる建材の量(寸法や重量)によっても異なる。
そこで、ここに示す変形例では、建材に取り付けられたICタグに、当該建材の寸法もしくは重量を示す量的情報を更に記録しておくようにする。これは、建材メーカの出荷時に、この量的情報を書き込む処理を付加するようにすればよい。結局、各建材に取り付けられたICタグには、建材特定情報および材質情報の他に、量的情報が書き込まれることになる。
図7は、ICタグに書き込まれた具体的な情報のいくつかの例を示す図である。図7(a) に示す例では、「床材No.123456」なる建材特定情報および「天然木材」なる材質情報の他に、「900×1600×20mm」なる量的情報(床材の縦横高さの寸法値)が記録されている。この量的情報を参考にすることにより、廃棄対象となる床材の体積を認識することができる。一方、図7(b) に示す例では、「壁材No.77777」なる建材特定情報および「塩化ビニル」なる材質情報の他に、「20kg」なる量的情報(壁材の重量値)が記録されており、図7(c) に示す例では、「壁材No.99999」なる建材特定情報および「金属」なる材質情報の他に、「70kg」なる量的情報(壁材の重量値)が記録されている。この量的情報を参考にすることにより、廃棄対象となる壁材の重量を認識することができる
建築物の解体時に、ICタグから材質情報を読み出す際に、この量的情報も併せて読み出すようにすれば、この量的情報を利用して、各建材の廃棄費用を算出することが可能になる。この廃棄費用算出には、たとえば、図8に示すような廃棄費用テーブルを用意しておけばよい。このテーブルは、種々の材質についてそれぞれ寸法もしくは重量に応じた廃棄費用を対応づけたものであり、材質情報で示される個々の材質ごとに、単位量あたりの廃棄費用単価が記されている。たとえば、「天然木材」の場合、100cmあたりの廃棄費用が1円、「塩化ビニル」の場合、1kgあたりの廃棄費用が40円、「金属」の場合、10kgあたりの廃棄費用が10円、…といった具合である。
このような廃棄費用テーブルを用意しておけば、ICタグから読み出した材質情報および量的情報に基づいて、この廃棄費用テーブルを参照することにより、廃棄費用の見積りを行うことができる。たとえば、図7(a) に示すような情報に基づいて、当該床材(天然木材のため、図3に示す分別に従うと再利用される)の廃棄費用は288円、図7(b) に示すような情報に基づいて、当該壁材(塩化ビニルのため、図3に示す分別に従うと埋めたてされる)の廃棄費用は800円、図7(c) に示すような情報に基づいて、当該壁材(金属のため、図3に示す分別に従うとリサイクルされる)の廃棄費用は70円、という廃棄費用が算出されることになる。
もちろん、このような廃棄費用の算出は、実際に建築物を解体する前に行うことができるので、実際に建物を解体したり、部屋をリフォームする前に、解体費用やリフォーム費用の見積りを行う上で役に立つ。§2で述べたように、ICタグを建材から取り外して別個に保管している場合には、この保管中のICタグから必要な情報を読み出すだけで、各建材の廃棄費用を算出することができるので、建物を解体したり、リフォームしたりすべきかどうか、経済的な観点から判断する資料を提供することができる。
<<< §5.本発明に係る分別装置の好ましい実施例 >>>
最後に、本発明に係る分別装置の好ましい実施例を、図9のブロック図を参照しながら説明する。この分別装置は、これまで述べてきた分別方法を実行するために利用できる装置であり、建築物の一部として利用される建材10(図では、破線のブロックで示す)を廃棄する際に、当該建材の材質に基づいて、廃棄方法に関する分別を行う機能を有している。
この装置は、ICタグ100と、図に一点鎖線で囲って示す部分からなる分別装置本体部200と、によって構成されている。ICタグ100は、これまで説明してきたように、少なくとも建材メーカから建材10が出荷される時点において、建材10に取り付けられる構成要素であり、建材特定情報、材質情報、量的情報などのデータを記録することができる。
図示のように、ICタグ100は、外部に対する無線交信を行うための交信部110と、取付対象となった建材10を特定するための建材特定情報、その材質を示す材質情報、その寸法や重量を示す量的情報などのデータDiを記録したメモリ部120と、建材10に取り付けるための取付部130とを有する。取付部130は、ICタグ100を建材10に取り付ける機能をもった構成要素であれば、どのような構成要素であってもかまわない。一般的には、粘着剤などからなる層を取付部130として利用すれば十分である。既に述べたとおり、メモリ部120内には、建材メーカから建材10が出荷される際に、上記データDiが書き込まれることになる。
§1で述べた実施形態の場合、ICタグ100は、建材10に取り付けられたままの状態で施工に供せられることになるが、§2で述べた実施形態の場合、ICタグ100は、建材10から取り外され、別個に保管されることになる。
分別装置本体部200は、建築物の解体時に利用される構成要素であり、図1のステップS15,S16や、図4のステップS27,S28の処理を実行する機能を有している。また、図示の実施例の場合、分別装置本体部200は、§3で述べたように、CADデータDcを利用した処理や、§4で述べたように、廃棄費用の見積処理を行う機能も有している。
図示のとおり、分別装置本体部200は、CADデータ入力手段210,廃棄方法テーブル220,廃棄費用テーブル230,廃棄方法決定手段240,廃棄費用見積手段250,廃棄方法提示手段260,情報読出手段270,廃棄費用提示手段280なる構成要素からなる。もっとも、実際には、この分別装置本体部200は、コンピュータ(付属機器を含む)に所定の処理プログラムを組み込むことにより実現される構成要素であり、上記各構成要素210〜280は、このコンピュータを構成するハードウエアと、このコンピュータに組み込まれたソフトウエアとの組み合わせによって実現されることになる。
情報読出手段270は、ICタグ100の交信部110と無線交信を行い、メモリ部120に書き込まれているデータDi(建材特定情報、材質情報、量的情報)を読み出す機能をもった構成要素であり、実用上は、ICタグ用のリーダライタ装置を用いて構成することができる。なお、ここでは、データDiを読み出す機能をもった構成要素という意味で、情報読出手段270と呼ぶが、もちろん、メモリ部120に対して情報を書き込む機能を有していてもかまわない。
廃棄方法テーブル220は、たとえば、図3に示すように、種々の材質についてそれぞれ特定の廃棄方法を対応づけたテーブルであり、実際には、コンピュータに格納されたデータテーブルとして用意される。廃棄方法決定手段240は、情報読出手段270が読み出した材質情報に基づいて、この廃棄方法テーブル220を参照し、建材10に対応する廃棄方法を決定する処理を行う。廃棄方法提示手段260は、こうして決定された廃棄方法をオペレータに提示する機能を果たす。
このような廃棄方法の決定手法は、既に§1および§2で述べたとおりである。なお、この図9の実施形態では、ICタグ100のメモリ部120に、取付対象となった建材10の材質を示す材質情報とともに、当該建材を特定する建材特定情報が記録されており、情報読出手段270は、材質情報とともに建材特定情報を読み出すことができる。したがって、廃棄方法提示手段260は、この材質情報と建材特定情報との対応関係に基づいて、個々の建材を特定して、その廃棄方法を提示する機能を果たすことができる。たとえば、廃棄方法提示手段260は、ディスプレイ画面上に、「床材No.123456→再利用」、「壁材No.77777→埋めたて」、「壁材No.99999→リサイクル」のような表示を行い、廃棄方法の分別結果を示すことができる。
また、CADデータDcが用意されていた場合には、CADデータ入力手段210により、これを入力して、廃棄方法提示手段260に与えるようにすることにより、§3で述べた変形例の処理を追加することができる。前述したとおり、CADデータDcとして、各建材についての建材特定情報と、当該建材の配置場所を設計図面上に示す情報と、を含むデータを用意しておけば、廃棄方法提示手段260は、このCADデータを利用して設計図面を提示するとともに、この設計図面上に示された各建材についての廃棄方法を提示することが可能になる。具体的な提示例は、図6に示すとおりである。
一方、この実施例では、ICタグ100のメモリ部120に、取付対象となった建材10の寸法もしくは重量を示す量的情報が記録されており、情報読出手段270は、この量的情報を読み出して廃棄費用見積手段250に与える機能を有している。廃棄費用テーブル230は、たとえば、図8に示すように、種々の材質についてそれぞれ寸法もしくは重量に応じた廃棄費用を対応づけたテーブルであり、実際には、コンピュータに格納されたデータテーブルとして用意される。廃棄費用見積手段250は、情報読出手段270が読み出した材質情報および量的情報に基づいて、この廃棄費用テーブル230を参照し、建材10に対応する廃棄費用の見積りを行う。廃棄費用提示手段280は、こうして見積られた廃棄費用をオペレータに提示する機能を果たす。たとえば、ディスプレイ画面上に、個々の建材ごとの廃棄費用を提示したり、複数の建材の廃棄費用の合計を提示したりすることができる。
本発明に係る基本的な建材の廃棄時分別方法の手順を示す流れ図である。 建材10(この例は床材)の側面部分にICタグ100を取り付けた例を示す斜視図である。 各材質情報に対応する廃棄方法を示す廃棄方法テーブルの一例を示す図である。 ICタグを建材から取り外して保管する実施形態の手順を示す流れ図である。 CADシステムで作成された1つの部屋に関する設計図面を示す平面図である。 図5に示す設計図面上に、個々の建材についての廃棄方法に関する分別情報を加えた表示例を示す図である。 ICタグに書き込まれた具体的な情報のいくつかの例を示す図である。 廃棄費用算出に用いる廃棄費用テーブルの一例を示す図である。 本発明に係る分別装置の好ましい実施例を示すブロック図である。
符号の説明
10…建材
100…ICタグ
110…交信部
120…メモリ部
130…取付部
200…分別装置本体部
210…CADデータ入力手段
220…廃棄方法テーブル
230…廃棄費用テーブル
240…廃棄方法決定手段
250…廃棄費用見積手段
260…廃棄方法提示手段
270…情報読出手段
280…廃棄費用提示手段
Dc…CADデータ
Di…メモリ部に書き込まれたデータ
S11〜S28…流れ図の各ステップ

Claims (3)

  1. 建築物の一部として利用される建材を廃棄する際に、当該建材の材質に基づいて、廃棄方法に関する分別を行う建材の廃棄時分別装置であって、
    建材に取り付けるための取付部と、外部に対する無線交信を行うための交信部と、取付対象となった建材に関する情報を記録したメモリ部と、を有し、前記メモリ部には、当該建材を特定する建材特定情報と、当該建材の材質を示す材質情報と、当該建材の寸法もしくは重量を示す量的情報と、が記録されているICタグと、
    前記ICタグと無線交信を行い、前記メモリ部に書き込まれている各情報を読み出す情報読出手段と、
    種々の材質についてそれぞれ特定の廃棄方法を対応づけた廃棄方法テーブルを格納した廃棄方法テーブル格納手段と、
    種々の材質についてそれぞれ寸法もしくは重量に応じた廃棄費用を対応づけた廃棄費用テーブルを格納した廃棄費用テーブル格納手段と、
    前記情報読出手段が読み出した材質情報に基づいて、前記廃棄方法テーブルを参照し、対応する廃棄方法を決定する廃棄方法決定手段と、
    前記情報読出手段が読み出した建材特定情報に基づいて、個々の建材を特定して、個々の建材について前記廃棄方法決定手段によって決定された廃棄方法をオペレータに提示する廃棄方法提示手段と、
    前記情報読出手段が読み出した材質情報および量的情報に基づいて、前記廃棄費用テーブルを参照し、廃棄費用の見積りを行う廃棄費用見積手段と、
    見積られた廃棄費用をオペレータに提示する廃棄費用提示手段と、
    を備えることを特徴とする建材の廃棄時分別装置。
  2. 請求項1に記載の分別装置において、
    各建材についての建材特定情報と、当該建材の配置場所を設計図面上に示す情報と、を含むCADデータを入力するCADデータ入力手段を更に備え、
    廃棄方法提示手段が、前記CADデータを利用して設計図面を提示するとともに、この設計図面上に示された各建材についての廃棄方法を提示する機能を有することを特徴とする建材の廃棄時分別装置。
  3. 請求項1または2に記載の分別装置におけるICタグ以外の構成要素としてコンピュータを機能させるプログラム。
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