JP4581110B2 - ヘモグロビンの精製方法 - Google Patents

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Description

【0001】
関連出願
本願は、1995年3月23日に提出されたU.S.S.N.第08/409,337号の一部継続出願である1995年6月2日に提出されたU.S.S.N.第08/458,916号の一部継続出願である1995年6月7日に提出されたU.S.S.N.第08/473,497号の一部継続出願である1998年7月10日に提出されたU.S.S.N.第09/113,953号の継続出願であって、それらの教示は参照により本明細書に取り込まれる。
【0002】
発明の背景
血液損失(例えば急性出血からまたは外科手術の間に)から、貧血(例えば悪性貧血または鎌状赤血球貧血から)から、あるいはショック(例えば循環血液量減少性ショック、アナフィラキシーショック、敗血症ショックまたはアレルギー性ショック)から生じる低酸素症を治療または予防するために代用血液が求められている。これらの代用血液としての能力を有する血液および血液分画の使用には不利な点が伴う。例えば、全血の使用は、しばしば、患者の回復を悪化させたり、患者を死に至らしめることもある肝炎誘発ウイルスやAIDS誘発ウイルスの伝播の危険性を伴う。さらに全血の使用は、免疫血液学的問題およびドナー間の不適合性を回避するための血液型検査と交差適合試験を必要とする。
【0003】
代用血液としてのヒトヘモグロビンは、浸透作用ならびに酸素を輸送および移入するための能力を有するが、腎経路によっておよび血管壁を通して循環から速やかに除去されるという欠点を持ち、非常に短い、従って一般的には満足できない半減期をもたらす。さらに、ヒトヘモグロビンは、しばしば有毒なレベルのエンドトキシン、細菌および/またはウイルスで汚染されている。
【0004】
非ヒトヘモグロビンもヒトヘモグロビンと同じ欠点を有する。さらに、非ヒト供給源からのヘモグロビンもまた、一般的には抗体などのタンパク質で汚染されており、受容者において免疫系応答を引き起こしうる。
【0005】
これまで、ペルフルオロ化学物質、合成ヘモグロビン類似体、リポソーム被包ヘモグロビンおよび化学修飾ヘモグロビンを含む、少なくとも4種類の他の代用血液が使用されてきた。しかしながら、これらの代用血液の多くが一般的には血管内貯留時間が短く、異物として循環系によって排除されるか若しくは肝臓や脾臓および他の組織に停留してきた。また、これらの代用血液の多くは生体系とは生物学的に不適合であった。
【0006】
発明の要旨
本発明は、精製ヘモグロビン産物の製造方法に関する。
【0007】
一態様では、前記方法は、陰イオン交換クロマトグラフィーカラムにヘモグロビン溶液を負荷する工程を含む。カラムのpHよりも低いpHを有する少なくとも1種のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンアセトン緩衝液をカラムにインジェクトし、それにより、精製ヘモグロビン産物をカラムから溶出する。
【0008】
他の態様では、ヘモグロビン溶液を、最初にカラムを約8.7を超えるpHに平衡させた陰イオン交換カラムに負荷する。次に約8.6未満のpHを有する少なくとも1種の緩衝液をカラムにインジェクトし、それにより、精製ヘモグロビン産物をカラムから溶出する。
【0009】
さらに他の態様は、ヘモグロビン溶液を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに負荷する工程を含む。次に、約8.2〜約8.6の範囲のpHを有する、少なくとも11カラムボイドボリュームの平衡化用緩衝液をカラムにインジェクトする。その後、平衡化用緩衝液のpH未満のpHを有する緩衝液をカラムにインジェクトし、それにより、カラムから精製ヘモグロビン産物が溶出する。
【0010】
さらに他の態様では、最初に約8.7を超えるpHに平衡させた陰イオン交換クロマトグラフィーカラムにヘモグロビン溶液を負荷する。次に、約8.2〜約8.6までの範囲のpHを有する少なくとも11カラムボイドボリュームのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸の平衡化用緩衝液をカラムにインジェクトする。その後約8.2未満のpHを有するトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸の緩衝液をカラムにインジェクトし、それにより、カラムから精製ヘモグロビン産物が溶出する。
【0011】
本発明の方法は、カルボニックアンヒドラーゼのような強固な抵抗性のタンパク質さえも実質的に含まないヘモグロビン産物を有利に実現する。前記方法はまた、多くの夾雑物を含む溶液からヘモグロビンを比較的高い収率で得ることができる。それゆえ、1つの種由来のヘモグロビンを、受容種が重要な副作用を被ることなく、異なる種において代用血液として成功裡に使用することができる。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明の工程の特徴およびその他詳細について、添付の図面を参照しながらより詳しく記載し、請求項において指し示す。本発明の特定の態様は、例示として示すものであり、本発明を制限するものとしてでないことが理解されるであろう。本発明の主要な特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく様々な態様で使用することができる。
【0013】
本発明は、クロマトグラフィーカラムを使用して、他の血液タンパク質成分を実質的に含まない精製ヘモグロビン産物の製造方法に関する。前記方法は、ヘモグロビン成分を溶出するためにpHグラジエントを使用することを特徴とする。
【0014】
赤血球の破壊、分画および/または限外濾過から得られた濃縮Hb溶液を1以上の平行(pallarel)クロマトグラフィーカラムに負荷し、高速液体クロマトグラフィーによって、抗体、エンドトキシン、リン脂質、酵素(カルボニックアンヒドラーゼなど)、ウイルスおよび伝染性海綿状脳症病原因子などのその他の夾雑物から、ヘモグロビンをさらに分離する。クロマトグラフィーカラムとしては、非ヘモグロビンタンパク質からHbを分離するのに適した陰イオン交換担体が挙げられる。適当な陰イオン交換担体としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニアゲル、架橋デキストラン、アガロース、あるいはジエチルアミノエチルまたは第四アミノエチル基のような陽イオン性化学官能基によって誘導体化された、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルメタクリレートまたはスチレンジビニルベンゼンのような誘導体化された部分(moiety)が挙げられる。溶解RBC相に生じやすい他のタンパク質および夾雑物に比してHbの選択的吸着と脱着のために適当な陰イオン交換担体および対応する溶出物は、通常の当業者によって容易に決定できる。
【0015】
より好ましい態様では、熱水処理して孔サイズを増大させ、γ−グリシドキシプロピルシランに曝露して活性エポキシド基を形成し、ついでC3 7 (CH3 2 NClに曝露させて第四アンモニウム陰イオン交換担体を形成する、シリカゲルから陰イオン交換担体を形成するために方法を使用する。この方法は、Journal of Chromatography,120:321〜333(1976)に記載されており、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。ひとつの態様では、1または複数のクロマトグラフィーカラムを最初に約8.7を超えるpHに平衡化する。好ましくは、クロマトグラフィーカラムを約8.7〜約10.0の範囲のpHに平衡化する。特に好ましい態様では、平衡化のpHは、約8.7〜約9.3の範囲であり、最も好ましくは約8.9〜約9.1の範囲である。好ましくは、最初にカラムを平衡化するために用いられる緩衝液は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸(トリス−酢酸)であり、約20ミリモル/リットル(mM/l)の濃度を有する。
【0016】
好ましくは、精製水(U.S.P.)に対して透析したヘモグロビン溶液、さらに好ましくは約280μS/cmの伝導率とpH約6.75〜約7.75を有するヘモグロビン溶液をカラム中の担体にインジェクトして、それにより、カラムをヘモグロビンで負荷する。カラムに負荷するヘモグロビン溶液の濃度は、一般的には約90〜約200グラム/リットルの範囲の濃度である。好ましくは、ヘモグロビン溶液の濃度は、約90〜約110グラム/リットルの範囲である。好ましくは、濃縮Hb溶液のインジェクト後、クロマトグラフィーカラムをトリス−酢酸で約10分間洗浄し(4カラムボイドボリューム)、担体に結合していない非ヘモグロビン成分を溶出して、担体へのヘモグロビンの強力な結合を促進する。
【0017】
酵素カルボニックアンヒドラーゼ、リン脂質、抗体およびエンドトキシンのようなタンパク質夾雑物をHbから分離するために、クロマトグラフィーカラムにおいてpHグラジエントを使用する。pHグラジエントは、連続グラジエントであってもよく、段階的グラジエントであってもよい。異なるpH値を有する緩衝液を逐次的にカラムにインジェクトして、経時的に溶出液のpHグラジエントをつくる。インジェクション前に緩衝液を適当な10,000ダルトンの脱発熱原性化(depyrogenation)膜などで濾過することが好ましい。Hbおよび非ヘモグロビン夾雑物の溶出が一般にpHに依存し、イオン強度には有意に依存しないように、当該緩衝液は低いイオン強度を有する1価緩衝液でなければならない。一般的には、約50mM以下のイオン濃度の緩衝液は、適切な低イオン強度を有する。
【0018】
好ましくは、段階的グラジエントにおいてカラムから溶出することにより、ヘモグロビン溶液の夾雑物とヘモグロビンとを分離し、それにより、ヘモグロビンをカラムに負荷するpHとヘモグロビンとをカラムから溶出する最終pHとの間のpHを有する緩衝液を使用する。1つの態様では、段階的グラジエントは、適当な緩衝液をカラムに注入する工程を含む。緩衝液は、最初にカラムをヘモグロビンで負荷する時点でのカラムのpHより低いpHを有する。カラムを緩衝液で平衡化する。好ましくは、少なくともカラム容積の約6倍の緩衝液をカラムにインジェクトする。本明細書において規定される「カラム容積」とは、いかなる充填物質をも含まないカラムの容積である。一般的には、本発明で使用するための適当なカラム充填物、すなわち交換担体は、カラムの総容積の約0.525のボイド率をカラムに生じさせる。従ってカラム容積の6倍が約11.7倍の「カラムボイドボリューム」に等しい。一般には、少なくとも11カラムボイドボリュームの緩衝液をカラムにインジェクトする。
【0019】
好ましくは、緩衝液のpHは、約8.6より低い。より好ましくは、緩衝液のpHは約8.2〜約8.4の範囲である。特に好ましい態様では、緩衝液はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸(トリス−酢酸)である。このようにしてカラムを平衡化することにより、ヘモグロビン溶液の夾雑物をカラムから溶出する。
【0020】
その後、緩衝液をカラムにインジェクトしてヘモグロビンを溶出する。好ましくは、緩衝液は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸(トリス−酢酸)である。より好ましくは、トリス−酢酸溶液は約6.5〜約7.5の範囲のpHを有する。前記ヘモグロビン溶出液が精製ヘモグロビン産物である。
【0021】
好ましい態様では、Hb溶出物の純度を保証するためにHb溶出物の最初の3%〜4%およびHb溶出物の最後の3%〜4%を廃棄する。Hb溶出物を滅菌フィルターに通すことが好ましい。適当な滅菌フィルターとしては、Sartorius Sartbran Cat #5232507 G1PHフィルターなどの0.22μmフィルターが挙げられる。
【0022】
クロマトグラフィーカラムを再使用する場合には、カラムに残存する夾雑非ヘモグロビンタンパク質とエンドトキシンとを第四の緩衝液によって溶出する。適当な緩衝液の例はNaCl/トリス−酢酸溶液(約1.0M NaClと約20mMトリス−酢酸の濃度;約8.4〜約9.4、好ましくは約8.9〜9.1のpH)である。最も好ましい態様では、緩衝液のすべてが、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸である。一般的には、使用する緩衝液は、約0℃〜約50℃の範囲の温度である。好ましくは、緩衝液の温度は、使用中約12.4±1.0℃である。さらに、緩衝液は、一般的には約9℃〜約11℃の範囲の温度で保存する。
【0023】
本明細書に規定する代用血液は、少なくとも生体器官および組織に酸素を輸送して移入することができ、十分な血管内膨張圧を維持することができる、ヒト、哺乳動物および他の脊椎動物において使用するためのヘモグロビンベースの酸素運搬組成物である。脊椎動物は古典的に定義されている通りであり、ヒトまたは組織に酸素を運ぶために循環系の血液を使用する他のあらゆる脊椎動物を含む。さらに、循環系の定義は、古典的に定義されている通りであり、心臓、動脈、静脈および毛細血管のようなより小さな脈管構造を含む微小循環(microcirculation)からなる。
【0024】
本発明の方法によって形成される代用血液は、好ましくは本発明の1つの態様に従って作製され、顕著な免疫応答をもたらさず、受容者にとって非毒性であるレベルのエンドトキシン、リン脂質、異種タンパク質および他の夾雑物が挙げられるべきであろう。好ましくは、代用血液は、ウルトラピュア(ultrapure)である。本文中で定義する「ウルトラピュア」とは、0.5EU/ml未満のエンドトキシン、3.3nmol/ml未満のリン脂質およびほとんどまたは全く検出できないレベルの血清アルブミンまたは抗体などの非ヘモグロビンタンパク質を含むことを意味する。
【0025】
「エンドトキシン」の語は、多くの条件下で毒性である、グラム陰性菌細胞壁の外層の一部として産生される細胞結合リポ多糖類をさす。動物に注入したとき、エンドトキシンは発熱、下痢、出血性ショック、および他の組織損傷を引き起こしうる。エンドトキシン単位(EU)は、1983年の米国薬局方協約、3014ページにより、米国標準品ロットEC−5の0.1ナノグラムに含まれる活性として定義された。EC−5の1バイアルは、10,000EUを含む。代用血液中のエンドトキシン濃度を測定するための適当な手段の例としては、Associates of Cape Cod,Woods Hole,Massachusettsによって開発された方法「動態/濁度測定リムルスアメーバ様細胞溶解産物〔Kinetic/Turbidimetric Limuus Amebocytic Lystate(LAL)’5000法」が挙げられる。
【0026】
本明細書で規定する「安定重合ヘモグロビン」は、2年以上にわたる適当な保存温度での保存期間中、好ましくは低酸素環境で保存したとき2年以上にわたって、分子量分布および/またはメトヘモグロビン含有量を実質的に上昇または低下させない、ヘモグロビンベースの酸素運搬組成物である。1年以上にわたる保存のための適当な保存温度は:約0℃〜約40℃である。好ましい保存温度範囲は、約0℃〜約25℃である。
【0027】
適当な低酸素環境、あるいは実質的に酸素不含である環境とは、少なくとも約2ヵ月間、好ましくは少なくとも約1年間、あるいはより好ましくは少なくとも約2年間の保存期間にわたって、代用血液中約15重量%未満のメトヘモグロビン濃度をもたらせる、代用血液と接触する酸素の累積量と定義される。酸素の累積量は、代用血液包装内への酸素の侵入および代用血液と包装の最初の酸素含有量を含む。
【0028】
赤血球(RBC)の採集からヘモグロビン重合まで、本方法全体を通して、血液溶液、RBCおよびヘモグロビンは、温度を約20℃未満、0℃を超える温度に保持することなど、細菌増殖あるいは生物負荷量(bioburden)を最小限に抑えるのに十分な条件下に保持する。好ましくは温度を約15℃以下に保持する。より好ましくは、温度を10±2℃に保持する。
【0029】
本方法においては、安定重合ヘモグロビン代用血液を調製する工程のためのコンパートメントの一部は、無菌産物を製造するに十分に衛生的にする。無菌は、当該分野において定義されている通りであり、特に、溶液がUSP XXII、第71章、1483−1488頁に規定されている無菌性についての米国薬局方の必要条件に合致することである。さらに、工程の流れにさらされるコンパートメントの部分は、通常、工程の流れと反応しないまたは工程の流れを汚染しない物質で製造されるかまたはおおわれる。かかる物質としては、ステンレス鋼およびインコネルなどの他の鋼合金が挙げられうる。
【0030】
適当なRBC供給源は、ヒト血液、ウシ血液、ヒツジ血液、ブタ血液、他の脊椎動物由来の血液、BIO/TECHNOLOGY,12:55−59(1994)に述べられているトランスジェニックHbなどの遺伝子導入によって産生されるヘモグロビンなどが挙げられる。
【0031】
血液は、生存ドナーまたは新鮮屠殺したドナーから採集することができる。ウシ全血を採集するための1つの方法が、Rauschらに許諾された米国特許第5,084,558号明細書および同第5,296,465号明細書に述べられている。血液は衛生的に採集することが好ましい。
【0032】
採集時または採集直後に、血液の顕著な凝固を防ぐために血液を少なくとも1つの抗凝固薬と混合する。血液のための適当な抗凝固薬は当該技術において古典的に知られている通りであり、例えば、クエン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、ヘパリンなどが挙げられる。血液と混合する場合、抗凝固薬は、粉末などの固形形態または水溶液でありうる。
【0033】
血液溶液供給源は、新鮮採集されたサンプル由来または血液銀行の使用期間終了後のヒト血液のような古いサンプル由来でありうることが理解される。さらに、血液溶液は、それまで凍結状態および/または液体状態で保持されていたものであってもよい。血液溶液は、本方法において使用する前に凍結されていないことが好ましい。
【0034】
他の態様では、血液溶液に抗凝固薬を導入する前に、ペニシリンなどの血液溶液中の抗生物質のレベルを測定する。血液サンプルのドナーが抗生物質で治療されていなかったことを確認することにより、抗生物質レベルを測定して、血液サンプルが病原菌を含まないというある程度の保証を与える。抗生物質に関する適当なアッセイとしては、例えば、「乳中のペニシリンの迅速検出」と題する方法を用いるペニシリンアッセイキット(Difco,Detroit,MI)などが挙げられる。血液溶液は、約0.008単位/mlまたはそれ以下のペニシリンレベルを含むことが好ましい。一方、ウシにおいて疾患がないことあるいは抗生物質治療が行われていないことをモニターするための牛群管理プログラムを使用してもよい。
【0035】
好ましくは、大きな凝集物や粒子を取り除くために、抗凝固ステップの前またはその間に、例えば、濾過器を通すことによって血液溶液を濾す。600メッシュスクリーンは適当なストレーナーの例である。
【0036】
次に血液溶液中のRBCを透析濾過(ダイアフィルトレーション)または等張液などの少なくとも1種の溶液による個別の希釈と濃縮段階の組合せなどの適当な手段によって洗浄し、血清アルブミンまたは抗体(例えば免疫グロブリン(IgG))などの細胞外血漿タンパク質からRBCを分離する。RBCをバッチでまたは連続的供給モードで洗浄できることが理解できる。
【0037】
許容されうる等張液は、当該分野において知られている通りであり、RBCの細胞膜を破壊せず、かつ全血の血漿部分を置換するpHと浸透圧モル濃度を有する、クエン酸塩/塩類液などの溶液が挙げられる。好ましい等張液は、中性pHと約285−315mOsmの浸透圧モル濃度とを有する。好ましい態様では、等張液はクエン酸ナトリウム二水和物(6.0g/l)と塩化ナトリウム(8.0g/l)との水溶液で構成される。
【0038】
本発明の方法において使用されうる水は、蒸留水、脱イオン水、注射用蒸留水(WFI)および/または低発熱原性水(LPW)などが挙げられる。好ましいWFIは、注射用蒸留水に関する米国薬局方規格に適合する脱イオン化された蒸留水である。WFIはさらにPharmaceutical Engineering,11,15−23(1991)の中に記述されている。好ましいLPWは、0.02EU/ml未満を含む脱イオン水である。
【0039】
等張液は、血液溶液に加える前に濾過することが好ましい。適当なフィルターとしては、例えば、Millipore Cat #CDUF 050 G1フィルターなどのMillipore 10,000ダルトン限外濾過膜あるいはA/G Technology中空糸、10,000ダルトン(Cat #UFP−10−C−85)などが挙げられる。
【0040】
好ましい態様では、血液溶液中のRBCを透析濾過によって洗浄する。適当なダイアフィルターとしては、0.1μm〜0.5μmのフィルター(例えば0.2μm中空糸フィルター、Microgon Krosflo II−マイクロフィルトレーションカートリッジ)などの実質的により小さな血液溶液成分からRBCを分離する孔サイズを備えた微小孔膜などが挙げられる。同時に、ダイアフィルターを通して失われる濾液の割合(または容量)に等しい割合で相殺として濾過した等張液を継続的に(またはバッチで)加える。RBC洗浄の際に、直径がRBCよりも有意に小さい直径であるか、あるいは血漿のように液体である血液溶液の成分はダイアフィルターの壁を通過して濾液中に入る。RBC、血小板および白血球などの希釈血液溶液のより大きな物質が保持され、これらを等張液と混合して、継続的にまたはバッチごとに加えて透析された血液溶液を形成する。
【0041】
より好ましい態様では、最初に一定容量の濾過した等張液を透析濾過タンクに加えて、透析濾過タンク中の血液溶液の容量を希釈する。好ましくは、加える等張液の容量は血液溶液の最初の容量にほぼ等しい。
【0042】
別の態様では、一連の連続的(または逆連続的)希釈と濃縮ステップを通してRBCを洗浄し、ここで、少なくとも1種の等張液を添加することにより血液溶液を希釈し、フィルターを通して濃縮し、それにより、透析された血液溶液を形成する。
【0043】
RBCを汚染する血漿タンパク質のレベルが実質的に低下したとき(一般的には少なくとも約90%)、RBC洗浄を終了する。一般的には、ダイアフィルター34から排出される濾液の容量が、血液溶液を濾過等張液で希釈する前に透析濾過タンク中に入っていた血液溶液の容量の約300%以上になったとき、RBC洗浄を終了する。追加的RBC洗浄によってRBCから細胞外血漿タンパク質をさらに分離してもよい。例えば、6容量の等張液による透析濾過は少なくとも約99%のIgGを血液溶液から除去することができる。
【0044】
次に透析した血液溶液を、遠心分離などによる透析血液溶液中のRBCを白血球および血小板から分離するための手段に供する。
【0045】
RBCを他の血液成分から分離するために、当該分野において一般的に知られる他の方法が使用できることは明白である。例えば沈殿が使用でき、かかる分離方法は、他の血液成分からRBCを分離する前に、RBCの有意の量の細胞膜を破壊しない、例えば約RBCの約30%未満しか破壊しない。
【0046】
RBCの分離後、RBCを溶解するための手段によってRBCを溶解し、RBCからヘモグロビンを放出させてヘモグロビン含有溶液を形成する。溶解手段は、機械的溶解、化学的溶解、低張性溶解、あるいは酸素を運搬して放出するHbの能力を有意に損傷することなくヘモグロビンを放出させる他の既知の溶解方法のように、種々の溶解方法が使用できる。
【0047】
さらに他の態様では、Nature,356:258−260(1992)に述べられている組換えによって生成されたヘモグロビンのような、組換えによって生成されるヘモグロビンをRBCの代わりに本発明の方法において処理することができる。ヘモグロビンを含む細菌細胞を上記に述べられているように洗浄して、夾雑物から分離することができる。次にこれらの細菌細胞をボールミルのような当該技術において既知の手段によって機械的に破壊し、細胞からヘモグロビンを放出させて溶解細胞相を形成する。その後この溶解細胞相を溶解RBC相と同様に処理する。
【0048】
溶解後、溶解RBC相を限外濾過して、分子量約100,000ダルトンを超えるタンパク質のようなより大きな細胞デブリを除去する。一般に細胞デブリは、Hb、より小さな細胞タンパク質、電解質、補酵素および有機代謝中間体を除く、すべての完全なおよび断片化された細胞成分を含む。許容される限外濾過器としては、例えばMillipore(Cat #CDUF 050 H1)およびA/G Technology(Needham,MA.;Model No.UFP100E55)によって製造されている100,000ダルトンのフィルターなどが挙げられる。
【0049】
溶解RBC相中のHbの濃度が8グラム/リットル(g/l)未満になるまで限外濾過を継続し、重合に使用できるヘモグロビンの収率を最大にする。溶解RBCからHbを分離するためには、沈殿、遠心分離あるいはマイクロフィルトレーションを含めた他の方法が使用できる。
【0050】
次にHb限外濾液を限外濾過して、電解質、補酵素、代謝中間体および分子量約30,000ダルトン未満のタンパク質のようなより小さな細胞デブリとHb限外濾液からの水を除去することができる。好適な限外濾過器には、30,000ダルトンの限外濾過器(Millipore Cat #CDUF 050 T1および/またはArmicon,#540 430)が含まれる。
【0051】
その後、上記に詳述したように濃縮Hb溶液を1またはそれ以上の平行クロマトグラフィーカラムに充填することができる。
【0052】
次に、好ましくはクロマトグラフィー工程で得たHb溶出物を、変性あるいは酸化ヘモグロビン(メトヘモグロビン)の形成から生じるであろうような、Hb溶出物中のHbが酸素を運搬し、放出する能力を有意に低下させることなくHbを実質的に脱酸素化する手段によって、重合の前に脱酸素化して脱酸素化されたHb溶液(以下、deoxy−Hbという)を形成することが好ましい。
【0053】
1つの態様では、相の膜を越えて不活性ガスを移動させることによってHb溶出物を脱酸素化する。そのような不活性ガスには、例えば窒素、アルゴンおよびヘリウムが含まれる。当該技術において既知の、ヘモグロビンの溶液を脱酸素化するための他の手段を使用してHb溶出物を脱酸素化できることがわかっている。そのような他の手段は、例えばHb溶出物の窒素スパージング、N−アセチル−L−システイン(NAC)、システイン、亜ジチオン酸ナトリウムまたはアスコルビン酸ナトリウムのような還元剤による化学的除去、あるいは光による光分解を含みうる。
【0054】
クロマトグラフィーカラムからの溶出後、好ましくはHb溶出物を濃縮して工程の効率を高める。Hb溶出物を限外濾過器を通して再循環させてHb溶出物を濃縮し、濃縮Hb溶液を形成する。好適な限外濾過器には、例えば30,000ダルトンまたはそれより小さい限外濾過器(例えばMillipore Helicon,Cat #CDUF050G1またはAmicon Cat #540430)が含まれる。典型的には、Hbの濃度が約100〜約120g/lになったとき、Hb溶出物の濃縮を終了する。Hb溶出物を濃縮する間、好ましくはHb溶出物の温度を約8〜12℃に保持する。
【0055】
次に、好ましくは濃縮されたHb溶液に緩衝液を加えてHb溶液のイオン強度を調整し、Hbの脱酸素化を強化する。イオン強度を約150meq/l〜約200meq/lに調整して、Hb溶液中のHbの酸素親和性を低下させることが好ましい。適当な緩衝液は、Hbタンパク質の有意の変性を生じさせないが、Hbの脱酸素化を促進するうえで十分に高いイオン強度を有するpHの緩衝液を含む。適当な緩衝液としては、例えば、約6.5〜約8.9のpH範囲を有する生理食塩水が挙げられる。好ましい緩衝液は、pH約8.9の1.0M NaCl、20mMトリス−酢酸水溶液である。
【0056】
好ましくは、得られた緩衝Hb溶液を次いで限外濾過器を通して再循環させ、再びHb溶液を濃縮して工程の効率を高める。好ましい態様では、Hbの濃度が約100g/l〜約120g/lになったとき、濃縮を終了する。
【0057】
脱酸素化の間、適当な相間移動膜を通してHb溶液を循環させる。適切な相間移動膜には、例えば0.05μmポリプロピレン中空ファイバーマイクロフィルター(例えばHoechst−Celanese Cat # 5PCM−107)が含まれる。同時に、相間移動膜を越えて不活性ガスの向流を通過させる。適当な不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられる。相間移動膜を越えたガス交換によりHb溶液から酸素を取り除く。
【0058】
Hb溶液中の酸化Hb(オキシヘモグロビンまたはHbO2 )含有量が約20%またはそれより小さいレベルにHb溶液のpO2 が低下するまで、脱酸素化を続ける。好ましい態様では、Hb溶液中のHbO2 含有量は約10%またはそれより小さい。
【0059】
脱酸素化の間、Hb溶液の温度を、典型的にはメトヘモグロビン形成の速度に対して脱酸素化の速度を釣り合わせるレベルに保持する。メトヘモグロビン含有量を20%未満に制限するように温度を保持する。さらにHb溶液の脱酸素化しながら、至適温度によって約5%未満のメトヘモグロビン含有量、好ましくは約2.5%未満のメトヘモグロビン含有量を生じさせる。典型的には、脱酸素化の間、Hb溶液の温度を約19℃〜約31℃に保持する。
【0060】
脱酸素化の間、そしてその後本発明の方法の残りの段階を通して、Hbを低酸素環境に保持してHbによる酸素吸収を最小限に抑え、約20%未満、好ましくは約10%未満のHbO2 含有量を保持する。
【0061】
次に脱酸素化されたHbを、好ましくは、スルフヒドリル化合物を含む低酸素含有量保存緩衝液で平衡させ、酸化に対して安定化したdeoxy−Hbを形成する。適当なスルフヒドリル化合物には、N−アセチル−L−システイン(NAC)、D,L−システイン、γ−グルタミル−システイン、グルタチオン、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1,4−ブタンジチオール、チオグリコレート、および他の生体適合性スルフヒドリル化合物のような非毒性還元剤が含まれる。低酸素含有量保存緩衝液の酸素含有量は、緩衝液中のスルフヒドリル化合物の濃度を有意に低下させず、酸化に対して安定化したdeoxy−Hb中のオキシヘモグロビン含有量を約20%またはそれより低い、好ましくは約10%未満に制限するのに十分な低さでなければならない。典型的には、保存緩衝液は約50トル未満のpO2 を有する。
【0062】
好ましい態様では、保存緩衝液は、Hb重合とメトヘモグロビン形成を相殺するために適当なpH、典型的には約7.6〜約7.9のpHを有していなければならない。
【0063】
deoxy−Hbと混合するスルフヒドリル化合物の量は、重合の際にHbの分子内架橋を高めるのに十分多く、且つ高いイオン強度によってHb分子の分子間架橋を有意に低下させることがない十分少ない量である。典型的には、約0.25モル〜約5モルのdeoxy−Hbを酸化に対して安定化するために約1モルのスルフヒドリル官能基(−SH)が必要である。
【0064】
好ましい態様では、保存緩衝液は約25〜35mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.7〜7.8)を含み、さらに酸化に対して安定化したdeoxy−Hb中のNAC濃度が約0.003重量%〜約0.3重量%であるような量のNACを含む。より好ましくは、酸化に対して安定化したdeoxy−Hb中のNAC濃度は約0.05重量%〜約0.2重量%である。
【0065】
好ましくは、deoxy−Hbと混合する前に、10,000ダルトンの限外濾過膜(Millipore Helicon Cat #CDUF050G1またはA/G Technology Maxcell Cat #UFP−10−C−75)などを通して、保存緩衝液を濾過する。
【0066】
1つの態様では、酸化に対して安定化したdeoxy−Hbを次いで任意のフィルターに通過させる。適当なフィルターには、0.2μmポリプロピレンプレフィルターおよび0.5μm滅菌マイクロフィルター(Pall Profile II,Cat #ABIY005Z7またはGelman Supor)が含まれる。deoxy−Hbを実質的に酸素不含の大気下に保持する。これは、例えば工程の装置を酸化に対して安定化したdeoxy−Hbの充填前および充填後に窒素のような不活性ガスで清掃し、おおうことによって実現できる。
【0067】
任意に、酸化に対して安定化したdeoxy−Hbを重合に移す前に、適切な量の水を重合反応器に加える。1つの態様では、水の適切な量は、酸化に対して安定化したdeoxy−Hbを重合反応器に加えるとき約10〜約100g/l Hbの濃度の溶液を生じる量である。好ましくは水は酸素除去されている。
【0068】
重合工程で水のpO2 を、HbO2 含有量を約20%に制限するのに十分なレベル、典型的には約50トル未満に低下したあと、重合反応器を窒素のような不活性ガスでおおう。その後、酸化に対して安定化したdeoxy−Hbを重合反応器に移し、同時にそれを適切な流量の不活性ガスでおおう。
【0069】
重合反応器中の酸化に対して安定化したdeoxy−Hb溶液の温度を、架橋剤と接触したとき酸化に対して安定化したdeoxy−Hbの重合を至適にする温度まで上昇させる。典型的には、酸化に対して安定化したdeoxy−Hbの温度は重合の間を通じて約25℃〜約45℃、好ましくは約41℃〜約43℃である。重合反応器を加熱するための許容される熱伝達手段の例は、ジャケットを通して高温のエチレングリコールを適用することによって加熱する、ジャケット式加熱系である。
【0070】
次に酸化に対して安定化したdeoxy−Hbを、約2時間〜約6時間にわたって酸化に対して安定化したdeoxy−Hbを重合させるのに十分な温度で適当な架橋剤に曝し、重合ヘモグロビン(ポリ(Hb))の溶液を形成する。
【0071】
好適な架橋剤としては、例えば、特に、グルタルアルデヒド、スクシンジアルデヒド、活性形態のポリオキシエチレンおよびデキストランのようなHbタンパク質を架橋結合する多官能性薬剤、グリコールアルデヒドのようなα−ヒドロキシアルデヒド、N−マレイミド−6−アミノカプロイル−(2' −ニトロ,4' −スルホン酸)−フェニルエステル、m−マレイミド安息香酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、スルホスクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホスクシニミドエステル、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート、スルホスクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート、スクシンイミジル 4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート、スルホスクシンイミジル 4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド、N,N' −フェニレンジマレイミド、ならびにビス−イミデート類、アシルジアジド類またはアリール二ハロゲン化物類に属する化合物などが挙げられる。
【0072】
架橋剤の好適な量は、分子内架橋がHbを安定化し、また分子間架橋がHbのポリマーを形成して、それによって血管内貯留を高めることができる量である。典型的には、架橋剤の好適な量は、架橋剤対Hbのモル比が約2:1を超える量である。好ましくは架橋剤対Hbのモル比は約20:1〜40:1である。
【0073】
好ましくは、重合は、約35ミリモル未満またはそれと等しい塩化物濃度を有し、pHが約7.6〜約7.9である緩衝液中で実施する。
【0074】
好ましい態様では、適当な量の架橋剤を酸化に対して安定化したdeoxy−Hbに加え、それを次いで低い剪断で混合するための手段によって混合する。好適な低剪断混合手段にはスタティックミキサーが含まれる。好適なスタティックミキサーは、例えばChemineer,Inc.から入手される「Kenics」スタティックミキサーである。
【0075】
1つの態様では、スタティックミキサーを通して酸化に対して安定化したdeoxy−Hbと架橋剤を再循環させると、架橋剤と酸化に対して安定化したdeoxy−Hbの概して均一な混合を伴う乱流状態を生じ、それにより高濃度の架橋剤を含むdeoxy−Hbのポケットを形成する潜在的可能性を低下させる。架橋剤とdeoxy−Hbの概して均一な混合は、高分子量のHbポリマー、すなわち500,000ダルトンより大きい重量のポリマーの形成を低減し、同時に重合の際に架橋剤とdeoxy−Hbのより速やかな混合を可能にする。さらに、スルフヒドリル化合物、好ましくはNACの存在により、Hb重合の間に有意のHb分子内架橋が生じる。スルフヒドリル化合物とグルタルアルデヒドおよび/またはHbの相互作用の正確な機序は不明であるが、スルフヒドリル化合物は、高分子量Hbポリマーの形成を少なくとも部分的に阻害し、安定化された四量体Hbを選択的に形成するようにHb/架橋剤の化学結合に影響を及ぼすと考えられる。
【0076】
ポリ(Hb)は、ポリ(Hb)においてHb分子の実質的な部分(例えば少なくとも約50%)が化学結合しており、約15%未満のような小量だけが高分子量の重合ヘモグロビン鎖内に含まれる場合、有意の分子内架橋を有すると定義される。高分子量のポリ(Hb)分子は、例えば約500,000ダルトンを超える分子量を有する分子である。
【0077】
好ましい態様では、グルタルアルデヒドを架橋剤として使用する。典型的には、酸化に対して安定化したdeoxy−Hb1キログラムにつき約10〜約70グラムのグルタルアルデヒドを使用する。より好ましくは、酸化に対して安定化したdeoxy−Hb1キログラムにつき約29〜31グラムのグルタルアルデヒドが添加されるまで、5時間かけてグルタルアルデヒドを加える。
【0078】
重合後、重合反応器中のポリ(Hb)溶液の温度を典型的には約15℃〜約25℃に低下させる。
【0079】
使用する架橋剤がアルデヒドでない場合には、形成されるポリ(Hb)は一般に安定なポリ(Hb)である。使用する架橋剤がアルデヒドである場合には、形成されるポリ(Hb)は、適当な還元剤と混合してポリ(Hb)中のあまり安定でない結合を低減し、より安定な結合を形成するまでは一般に安定でない。適当な還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(sodium cyanoborohydride)、亜ジチオン酸ナトリウム、トリメチルアミン、t−ブチルアミン、モルホリンボラン、ピリジンボランなどが挙げられる。還元剤を加える前に、任意にポリ(Hb)溶液の濃度が約75〜約85g/lに上昇するまで、限外濾過によってポリ(Hb)溶液を濃縮する。好適な限外濾過器の例は、30,000ダルトンフィルター(例えばMillipore Helicon,Cat #CDUF050LTおよびAmicon,Cat #540430)である。
【0080】
次に、還元剤を保存するため、およびその後の還元の際にHbを変性させることがある水素ガスの発生を防ぐために、ポリ(Hb)溶液のpHをアルカリpHの範囲に調整する。
【0081】
1つの態様では、pHを10より大きく調整する。重合の間または重合後にポリ(Hb)溶液に緩衝液を加えることによってpHを調整することができる。ポリ(Hb)内は、典型的には精製して非重合ヘモグロビンを除去する。これは、透析濾過(dialfiltration)またはヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーによって実施できる(例えば、1997年11月25日発行の同時係属の米国特許第5,691,453号明細書参照、その教示は参照してここに組み込まれる)。
【0082】
pHの調整後、典型的には脱酸素化ループを通して少なくとも1つの還元剤、好ましくは水素化ホウ素ナトリウム溶液を重合工程に加える。典型的には、ポリ(Hb)のHb四量体1モルにつき(64,000ダルトンのHbにつき)約5〜約18モルの還元剤を加える。好ましい態様では、重合サブシステム98においてポリ(Hb)溶液9リットルごとに0.25M水素化ホウ素ナトリウム溶液1リットルを0.1〜0.12lpmの速度で加える。
【0083】
その後、安定なポリ(Hb)を適当なpHと生理的電解質レベルを有する透析濾過液で透析濾過することにより、安定なポリ(Hb)のpHと電解質を生理的レベルに回復させて、安定な重合ヘモグロビン代用血液を形成することができる。好ましくは、透析濾過液は緩衝液である。
【0084】
ポリ(Hb)を還元剤で還元した場合、透析濾過液は酸性pH、好ましくは約4〜約6のpHを有する。
【0085】
また、最終的な重合ヘモグロビン代用血液の安定性を高めるための酸素捕捉剤として非毒性スルフヒドリル化合物を安定なポリ(Hb)溶液に加えることができる。スルフヒドリル化合物は、透析濾過液の一部としておよび/または別途に加えることができる。保存期間中、酸素を捕捉してメトヘモグロビン含有量を約15%未満に保持するスルフヒドリル濃度を確立する量のスルフヒドリル化合物を加える。好ましくは、スルフヒドリル化合物はNACである。典型的には、加えるスルフヒドリル化合物の量は、約0.05重量%〜約0.2重量%のスルフヒドリル濃度を確立するのに十分な量である。
【0086】
好ましい態様では、重合反応器および残りの輸送装置において不活性な実質的に酸素不含の大気で圧を保持しながら、無菌取扱い条件下で代用血液を包装する。
【0087】
本発明の方法によって形成される適当な安定な重合ヘモグロビン代用血液に関する規格を表Iに提供する。
【0088】
【表1】
Figure 0004581110
【0089】
その後安定な代用血液を、上記で詳述したような低酸素環境を有する、短期保存容器または滅菌保存容器中で保存する。保存容器はまた、保存期間中の蒸発による代用血液の有意の濃縮を防ぐために、水蒸気通過に対して十分に不透過性でなければならない。代用血液の有意の濃縮とは、代用血液の1またはそれ以上のパラメータが規格から逸脱して高くなる濃縮である。
【0090】
本発明の方法に従って形成される安定な重合ヘモグロビン代用血液の合成は、さらに米国特許第5,296,465号明細書に述べられている。
【0091】
本発明の方法によって形成される代用血液を受容することができる脊椎動物としては、ヒト、ヒト以外の霊長類、イヌ、ネコ、ラット、ウマまたはヒツジなどの哺乳動物が挙げられる。さらに、当該代用血液を受容することができる脊椎動物としては、胎児(出生前脊椎動物)、出生後脊椎動物、出生時の脊椎動物などが挙げられる。
【0092】
本発明の代用血液は、1以上の注入法により、代用血液を直接および/または間接的に脊椎動物の循環系に注入することによって循環系に投与することができる。直接注入法としては、例えば、静脈内および動脈内注射のような血管内注射、ならびに心臓内注射などが挙げられる。間接注入法としては、例えば、腹腔内注射、代用血液がリンパ系によって循環系に輸送される皮下注射、トロカールまたはカテーテルによる骨髄への注射などが挙げられる。好ましくは、代用血液を静脈内投与する。
【0093】
治療する脊椎動物は、代用血液の注入の前、注入中、および/または注入後に正常血液量、血液量過多あるいは血液量減少でありうる。代用血液は、トップローディングのような方法および交換法によって循環系に投与することができる。
【0094】
代用血液は、循環系の一部または全体を通じてのRBC流の低下、貧血およびショックを含めた多くの異なる原因から生じる脊椎動物内の酸素欠乏組織を処置するために治療的に投与することができる。さらに代用血液は、脊椎動物の組織への、あるいは脊椎動物の循環系全体でのRBC流の起こりうるまたは予想される低下から生じうる、脊椎動物内の組織の酸素枯渇を防ぐために予防的に投与することができる。さらに、1995年3月23日出願の同時係属の米国特許出願番号第08/409,337号明細書は、特に部分的動脈閉塞由来または微小循環における部分的遮断由来の低酸素症を処置するために治療的または予防的にヘモグロビンを投与すること、ならびにその場合に使用する用量を記述しており、これはその全体が参照してここに組み込まれる。
【0095】
典型的には、代用血液の好適な用量または用量の組合せは、血漿中に入ったとき、脊椎動物の血液中で約0.1〜約10グラムHb/dl、あるいは大量の血液喪失を補うために必要であればそれ以上の総ヘモグロビン濃度を生じる量である。
【0096】
下記の実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0097】
実施例1
安定な重合Hb代用血液の合成
米国特許第5,296,465号明細書に述べられているように、ウシ全血のサンプルを採集し、クエン酸ナトリウム抗凝固薬と混合して血液溶液を形成し、その後エンドトキシンレベルに関して分析した。
【0098】
各々の血液溶液サンプルは採集後約2℃の温度に保持し、600メッシュスクリーンで漉して大きな凝集物と粒子を除去した。
【0099】
プールする前に、血液溶液中のペニシリンレベルが≦0.008単位/mlであることを確認するため、「乳中のペニシリンの迅速検出(”Rapid Detection of Penicillin in Milk”)」と題する方法を用いる、ミシガン州デトロイトのDifco社から購入したアッセイキットで各血液溶液サンプル中のペニシリンレベルを測定した。
【0100】
その後血液溶液サンプルをプールし、脱発熱原性化した(depyrogenated)クエン酸ナトリウム水溶液と混合して、ウシ全血中0.2重量%クエン酸ナトリウム溶液(以下「0.2%クエン酸ナトリウム血液溶液」)を形成した。
【0101】
次に0.2%クエン酸ナトリウム血液溶液を連続的に800μmと50μmのポリプロピレンフィルターに通して、直径約50μmまたはそれより大きい血液溶液デブリを除去した。
【0102】
次いでRBCを洗浄して、BSAあるいはIgGのような細胞外血漿タンパク質をRBCから分離した。血液溶液に含まれるRBCを洗浄するために、最初に透析濾過タンク中の血液溶液の容量を、等容量の濾過等張液を透析濾過タンクに加えることによって希釈した。等張液をMillipore(Cat #CDUF 050 G1)10,000ダルトン限外濾過膜で濾過した。等張液は、注射用蒸留水(WFI)中6.0g/lのクエン酸ナトリウム二水和物および8.0g/l塩化ナトリウムを含有した。
【0103】
その後、希釈した血液溶液を、0.2μm中空ファイバー(Microgon Krosflo IIマイクロフィルトレーションカートリッジ)ダイアフィルターを通して透析濾過することにより、もとの容量まで濃縮した。同時に、0.2μmダイアフィルターによる濾液損失の割合に等しい割合で、相殺として濾過等張液を継続的に加えた。透析濾過の間に、直径がRBCより有意に小さかった、または血漿のような液体である希釈血液溶液の成分は、濾液と共に0.2μmダイアフィルターの壁を通過した。RBC、血小板、および白血球のような希釈血液溶液のより大きな物質は、継続的に添加する等張液と共に保持され、透析された血液溶液を形成した。
【0104】
RBC洗浄の間、希釈血液溶液を約10〜25℃の温度に保持し、ダイアフィルターの入口での流体圧を約25psi〜約30psiにして工程の効率を高めた。
【0105】
ダイアフィルターから排出される濾液の容量が濾過等張液で希釈する前の血液溶液の容量の約600%に等しくなったとき、RBC洗浄を終了した。
【0106】
次に透析した血液溶液を、#28リングダムを取り付けたSharples Super Centrifuge、#AS−16型に約4lpmの速度で継続的にポンプで送り込んだ。同時に透析血液溶液を供給しながら遠心分離操作を実施し、白血球および血小板からRBCを分離した。操作中、RBCを重いRBC相に分離し、同時に白血球(WBC)と血小板の大部分を軽いWBC相に分離するのに十分な速度、特に約15,000rpmで遠心分離機を回転させた。操作の間、RBC相とWBC相の分画を別々に且つ継続的に遠心分離機から排出した。
【0107】
RBCの分離後、RBCを溶解してヘモグロビン含有溶液を形成した。RBCを遠心分離機から排出しながら、RBCの実質的な部分を機械的に溶解した。RBCの細胞膜を、遠心分離機からのRBC相の流出に対し角度を為してRBC相排出ラインの壁に衝突させて破壊し、それによりRBCからのヘモグロビン(Hb)をRBC相に放出した。
【0108】
次に溶解したRBC相をRBC相排出ラインを通してスタティックミキサー(6エレメントのKenics 1/2インチ、Chemineer,Inc.)に流入した。RBC相のスタティックミキサーへの移動と同時に、等量のWFIもスタティックミキサーに注入して、WFIをRBC相と混合した。RBC相とWFIのスタティックミキサーへの流速は、それぞれ約0.25lpmである。
【0109】
スタティックミキサーにおいてRBC相とWFIを混合すると、溶解RBCコロイドが生じた。溶解RBCコロイドをスタティックミキサーから、Hbを非ヘモグロビンRBC成分から分離するのに適したSharples Super Centrifuge(#AS−16型、Sharples Division of Alfa−Laval Separation,Inc.)に移した。溶解RBCコロイドを軽いHb相と重相に分離するのに十分な速度で遠心分離機を回転させた。軽相はHbを含み、またHbの密度にほぼ等しいかまたはそれより小さい密度を有する非ヘモグロビン成分も含んだ。
【0110】
0.45μm Millipore Pellicon Cassette,Cat #HVLP 000 C5マイクロフィルターを通して、Hb相を遠心分離機からHb精製に備えて保持タンクに連続的に排出した。次いで、細胞支質を濃縮水でマイクロフィルターから保持タンクに戻した。マイクロフィルトレーションの間、保持タンク内の温度を10℃またはそれ以下に保持した。効率を高めるため、マイクロフィルター入口の流体圧が約10psiの初期圧から約25psiに上昇したとき、マイクロフィルトレーションを終了した。その後Hbマイクロフィルトレートをマイクロフィルターからマイクロフィルトレートタンクに移した。
【0111】
その後、Hbマイクロフィルトレートをポンプで100,000Millipore Cat #CDUF 050 H1限外濾過器に通した。Hbマイクロフィルトレートに含まれるHbと水の実質的な部分が100,000ダルトンの限外濾過器を透過してHb限外濾液を形成し、一方分子量約100,000ダルトン以上のタンパク質のような大きな細胞デブリは保持され、マイクロフィルトレートタンク内に再循環された。同時に、限外濾液中に失われた水を補うためにWFIを継続的にマイクロフィルトレートタンクに加えた。一般に細胞デブリは、Hb、より小さな細胞タンパク質、電解質、補酵素および有機代謝中間体を除く、すべての完全なおよび断片化した細胞成分を含む。マイクロフィルトレートタンク中のHb濃度が8グラム/リットル(g/l)未満になるまで限外濾過を継続した。Hbを限外濾過する間、マイクロフィルトレートタンクの内部温度を約10℃に保持した。
【0112】
Hb限外濾液を限外濾液タンクに移し、次いで30,000ダルトンのMillipore Cat #CDUF 050 T1限外濾過器を通してHb限外濾液を再循環させて、電解質、補酵素、代謝中間体および分子量約30,000ダルトン未満のタンパク質と、Hb限外濾液からの水を除去し、それによって約100g Hb/lを含む濃縮Hb溶液を生成した。
【0113】
次に濃縮Hb溶液を限外濾液タンクから、平行するクロマトグラフィーカラム(長さ2フィート、内径8インチ)に含まれる担体に移して、高性能液体クロマトグラフィーによってHbを分離した。クロマトグラフィーカラムは、非ヘモグロビンタンパク質からHbを分離するのに適した陰イオン交換担体を含んだ。陰イオン交換担体はシリカゲルから形成された。シリカゲルをγ−グリシドキシプロピルシランに接触させて活性エポキシド基を形成し、さらにC3 7 (CH3 2 NClに接触させて第四アンモニウム陰イオン交換担体を形成した。シリカゲルを処理するこの方法は、Journal of Chromatography,120:321−333(1976)に述べられている。
【0114】
Hb結合を促進する第一緩衝液(トリス−酢酸)でクロマトグラフィーカラムを洗い流して、各々のカラムを前処理した。緩衝液のpHは約9.0±0.1であった。次に濃縮Hb溶液4.52リットルを各クロマトグラフィーカラムに注入した。濃縮Hb溶液の注入後、クロマトグラフィーカラムに緩衝液を通過させてクロマトグラフィーカラムを洗浄し、カラムからの溶出物の段階的pHグラジェントを作製した。使用時の各緩衝液の温度は約12.4℃であった。クロマトグラフィーカラムに注入する前に、緩衝液を10,000ダルトン限外濾過膜に通して前濾過した。
【0115】
特に、第一緩衝液である20mMトリス−ヒドロキシメチルアミノメタン酢酸(トリス−酢酸)(pH約8.4から約9.4)は、精製水(U.S.P.)中の濃縮Hb溶液をクロマトグラフィーカラムの担体中に運搬し、Hbを結合させた。約8.3のpHを有する第二緩衝液でクロマトグラフィーカラム内のpHを調整し、Hbを保持しながら、夾雑する非ヘモグロビン成分をクロマトグラフィーカラムから溶出した。カラム当り約3.56lpm、または約6.1カラム容積(11.7ボイドボリューム)の流速で約30分間、第二緩衝液との平衡を継続した。第二緩衝液からの溶出物は廃棄した。第三緩衝液の50mMトリス−酢酸(pH約6.5から約7.5)は、クロマトグラフィーカラムからHbを精製ヘモグロビン産物として溶出した。
【0116】
次に滅菌0.22μ Sartobran Cat #5232507 G1PHフィルターを通してHb溶出物をタンクに導入し、そこでHb溶出物を採集した。Hb溶出物の最初の3〜4%とHb溶出物の最後の3〜4%は廃棄した。
【0117】
溶出物が0.05EU/ml未満のエンドトキシンを含み、3.3nmol/ml未満のリン脂質を含む場合には、Hb溶出物をさらに使用した。100g Hb/lの濃度を有するウルトラピュア溶出物60リットルに、1.0M NaCl、20mMトリス(pH8.9)緩衝液9lを加えて160mMのイオン強度を有するHb溶液を形成し、Hb溶液中のHbの酸素親和性を低下させた。その後限外濾過器、特に10,000ダルトンのMillipore Helicon,Cat #CDUF050G1フィルターを通して再循環させることにより、Hb濃度が110g/lになるまでHb溶液を10℃で濃縮した。
【0118】
次に、0.05μm Hoechst−Celanese Corporation Cat #G−240/40)のポリプロピレンマイクロフィルター相転移膜を通して12lpmでHb溶液を再循環させることにより、HbO2 含有量が約10%になるレベルまでHb溶液のpO2 を低下させてHb溶液を脱酸素化し、脱酸素化Hb溶液(以下「deoxy−Hb」)を生成した。同時に相転移膜の反対側を通して60lpm流量の窒素ガスを適用した。脱酸素化の間、Hb溶液の温度を約19℃〜約31℃に保持した。
【0119】
同時に脱酸素化の間およびその後の工程全体を通して、Hbを低酸素環境に保持してHbによる酸素吸収を最小限に抑え、deoxy−Hb中の酸化Hb(オキシヘモグロビンまたはHbO2 )含有量を約10%未満に保った。
【0120】
次に、0.2重量%のN−アセチルシステイン、50torr未満のpO2 を有する33mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.8)を含む保存緩衝液180lにより、限外濾過器を通してdeoxy−Hb 60lを透析濾過し、酸化に対して安定化したdeoxy−Hbを生成した。deoxy−Hbと混合する前に、保存緩衝液を10,000ダルトンのMillipore Helicon,Cat #CDUF050G1脱発熱原性フィルターで脱発熱原性化した。
【0121】
限外濾過器を通しての液体損失にほぼ等しい割合で保存緩衝液を継続的に加えた。限外濾過器での透析濾過を通して失われた液体の容量がdeoxy−Hbの初期容量の約3倍になるまで透析濾過を継続した。この時点で物質を保存してもよい。
【0122】
酸化安定化したdeoxy−Hbを重合装置に移す前に、酸素除去WFIを重合反応器に加えて、酸化安定化deoxy−Hbの酸化を防ぐために重合装置から酸素を一掃した。重合装置に加えたWFIの量は、酸化安定化deoxy−Hbを重合反応器に加えたとき、約40g Hb/lの濃度を有するHb溶液を生じる量であった。その後重合装置全体を通してWFIを再循環させ、0.05μmポリプロピレンマイクロフィルター相転移膜(Hoechst−Celanese Corporation Cat #5PCM−108,80平方フィート)を通して加圧窒素の向流に対して流すことによりWFIを脱酸素化した。相転移膜を通るWFIと窒素ガスの流速は、それぞれ約18〜20lpmと40〜60lpmであった。
【0123】
重合装置中のWFIのpO2 を約2torr pO2 未満に低下させたあと、約20lpmの窒素を重合装置の上方空隙に流入して重合反応器を窒素でおおった。その後酸化安定化したdeoxy−Hbを重合反応器に移した。
【0124】
Hb溶液をWFIと混合して作製した、約35mmolまたはそれ以下の塩化物濃度を有するpH7.8の12mMリン酸緩衝液において重合を実施した。
【0125】
その後、Hb溶液を42℃に加熱し、6エレメントのKenics 1−1/2インチスタティックミキサー(Chemineer,Inc.)を通して再循環させながら、酸化安定化deoxy−HbとN−アセチルシステインを架橋剤であるグルタルアルデヒドと5時間にわたってゆっくり混合し、明細にはHb1キログラムにつきグルタルアルデヒド29.4グラムと混合して、重合Hb(ポリ(Hb))溶液を生成した。
【0126】
酸化安定化deoxy−Hbとグルタルアルデヒドをスタティックミキサーを通して再循環させることにより、酸化安定化deoxy−Hbとグルタルアルデヒドの概して均一な混合を伴う乱流条件を生じさせ、それによって高濃度のグルタルアルデヒドを含むdeoxy−Hbのポケットを形成する潜在的可能性を低下させた。グルタルアルデヒドとdeoxy−Hbの概して均一な混合は、高分子量のポリ(Hb)(500,000ダルトン以上の分子量を有する)の形成を低減し、同時に重合の際にグルタルアルデヒドとdeoxy−Hbのより速やかな混合を可能にした。
【0127】
さらに、Hbの重合の際にN−アセチルシステインが存在することの結果として、Hb重合の間に有意のHb分子内架橋が生じた。
【0128】
重合後、重合反応器中のポリ(Hb)溶液の温度を約15℃から約25℃の温度に低下した。
【0129】
次に、ポリ(Hb)の濃度が約85g/lに上昇するまで限外濾過器を通してポリ(Hb)溶液を再循環させることにより、ポリ(Hb)溶液を濃縮した。適切な限外濾過器は、30,000ダルトンフィルター(例えばMillipore Helicon,Cat #CDUF050LT)である。
【0130】
その後、ポリ(Hb)溶液を水素化ホウ素ナトリウム66.75gと混合して再びスタティックミキサーで再循環させた。明細には、ポリ(Hb)溶液9リットルごとに、0.25M水素化ホウ素ナトリウム溶液1リットルを0.1から0.12lpmの速度で加えた。
【0131】
ポリ(Hb)溶液に水素化ホウ素ナトリウムを加える前に、水素化ホウ素ナトリウムを保存し、水素ガスの発生を防ぐために、pHを約pH10に調整することによってポリ(Hb)溶液のpHを塩基性にした。ポリ(Hb)溶液のpHは、約10.4から約10.6のpHを有する、脱発熱原性化し、脱酸素化した12mMホウ酸ナトリウム緩衝液約215lでポリ(Hb)溶液を透析濾過することによって調整した。ポリ(Hb)溶液を30kD限外濾過器を通して重合反応器から再循環させることにより、ポリ(Hb)溶液を透析濾過した。透析濾過による限外濾過器を通しての液体損失の割合にほぼ等しい割合で、ホウ酸ナトリウム緩衝液をポリ(Hb)溶液に加えた。透析濾過により限外濾過器を通して失われた液体の容量が重合反応器中のポリ(Hb)溶液の初期容量の約3倍になるまで透析濾過を継続した。
【0132】
pH調整後、水素化ホウ素ナトリウム溶液を重合反応器に加え、ポリ(Hb)溶液中のイミン結合をケチミン結合に還元して、(Hb)溶液中に安定なポリを生成した。水素化ホウ素ナトリウムを添加する間、重合反応器中のポリ(Hb)溶液をスタティックミキサーと0.05μmポリプロピレンマイクロフィルター相転移膜を通して継続的に再循環させ、溶解した酸素および水素を除去した。スタティックミキサーを通して流すことはまた、水素化ホウ素ナトリウムとポリ(Hb)溶液を速やかに且つ有効に混合する水素化ホウ素ナトリウム乱流条件を提供した。0.05μm相転移膜を通るポリ(Hb)溶液と窒素ガスの流速は、それぞれ約2.0〜4.0lpmと約12〜18lpmであった。ホウ酸ナトリウムの添加が完了したあと、重合反応器において、その中に含まれる撹拌器を約75回転/分で回転させながら、還元を継続した。
【0133】
水素化ホウ素ナトリウムの添加から約1時間後に、安定なポリ(Hb)溶液の濃度が110g/lになるまで、30,000ダルトンの限外濾過器を通して重合反応器から安定ポリ(Hb)溶液を再循環させた。濃縮後、WFI中27mM乳酸ナトリウム、12mM NAC、115mM NaCl、4mM KClおよび1.36mM CaCl2 を含む、濾過して脱酸素化した低pH緩衝液(pH5.0)で、30,000ダルトンの限外濾過器を通して安定ポリ(Hb)溶液を透析濾過することにより、安定ポリ(Hb)溶液のpHと電解質を生理的レベルに回復させて、安定な重合Hb代用血液を生成した。限外濾過器での透析濾過を通して失われた液体の容量が、濃縮Hb産物の透析濾過前の容量の約6倍になるまで透析濾過を継続した。
【0134】
pHと電解質を生理的レベルに回復させたあと、濾過して脱酸素化した低pH緩衝液を重合反応器に加えて、安定な重合Hb代用血液を5.0g/dlの濃度に希釈した。希釈した代用血液を、WFI中27mM乳酸ナトリウム、12mM NAC、115mM NaCl、4mM KClおよび1.36mM CaCl2 を含む、濾過して脱酸素化した緩衝液(pH7.8)に対してスタティックミキサーと100,000ダルトンの精製フィルターを通して重合反応器から再循環させることによって透析濾過した。代用血液が、解離条件下で実施したGPCにより約10%またはそれ以下の改変四量体および非改変四量体種を含むまで、透析濾過を継続した。
【0135】
精製フィルターは、制限透過ラインを有する低い膜内外圧の条件下で操作した。実質的な量の改変四量体Hbと非改変四量体Hbを除去したあと、代用血液の濃度が約130g/lになるまで30,000ダルトンの限外濾過器を通して代用血液の再循環を継続した。
【0136】
その後、低い酸素環境で且つ酸素侵入の少ない適切な容器中で安定な代用血液を保存した。
【0137】
実施例2
重合ヘモグロビンの分析
ヘモグロビン産物中のエンドトキシン濃度を、Associates of Cape Cod,Woods Hole,Massachusetts,J.Levinら、J.Lab.Clin.Med.,75:903−911(1970)によって開発された「動態/濁度測定LAL5000法」という方法によって測定する。極微量の支質を調べるために様々な方法、例えば沈殿アッセイ、免疫ブロッティング、および当業者に既知の特異的細胞膜タンパク質あるいは糖脂質に関する酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を使用した。
【0138】
「注入液中の微粒子物:単回用量輸注のための大容量注入液」、米国薬局方、22:1596、1990の方法によって微粒子数を測定した。
【0139】
グルタルアルデヒド濃度を調べるため、ヘモグロビン産物の一般的サンプル400μlをジニトロフェニルヒドラジンで誘導体化し、その後誘導体溶液の100μlアリコートを、グラジエントに沿って1ml/分の速度で、27℃でYMC AQ−303 ODSカラムに注入した。グラジエントは2つの移動相、水中0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)およびアセトニトリル中0.08%TFAから成った。グラジエントの流れは、一定な60%のアセトニトリル中0.08%TFAを6分間、85%のアセトニトリル中0.08%TFAまでのリニアグラジェントを12分間以上、100%のアセトニトリル中0.08%TFAまでのリニアグラジェントを4分間以上から成り、100%のアセトニトリル中0.08%TFAで2分間保持し、45%の水中0.1%TFAで再平衡させた。360nmで紫外線検出を測定した。
【0140】
NAC濃度を調べるため、ヘモグロビン産物のアリコートを脱気したリン酸ナトリウム水溶液で1:100に希釈し、50μlを、グラジエントを含むYMC AQ−303ODSカラムに注入した。グラジエント緩衝液は、リン酸ナトリウム水溶液および水中80%アセトニトリルと0.05%TFAの混合物から成った。グラジエントの流れは、100%の水中リン酸ナトリウムを15分間、次に100%の80%アセトニトリルと0.05%TFA混合物までのリニアグラジエントを5分間以上から成り、5分間保持した。その後系を100%リン酸ナトリウムで20分間再平衡させた。
【0141】
次の2つの論文に述べられている手順に基づく方法によってリン脂質分析を実施した:Kolarovicら、「生物学的供給源からリン脂質を分離するための抽出法の比較」Anal.Biochem.,156:244−250,1986およびDuck−Chong,C.G.、「硝酸マグネシウムによる消化を含む、リン脂質のリンを測定するための速やかで感受性の高い方法」Lipids,14:492−497,1979。
【0142】
Advanced Cryomatic Osmometer,#3C2型、Advanced Instruments,Inc.,Needham,Massachusettsでの分析により、浸透圧モル濃度を測定した。
【0143】
Instrumentation Laboratory,Lexington,MassachusettsからのCo−Oximeter #482型で、総ヘモグロビン、メトヘモグロビンおよびオキシヘモグロビン濃度を測定した。
【0144】
Na+ 、K+ 、Cl- 、Ca+ + 、pO2 濃度は、Novastat Profile 4,Nova Biomedical Corporation,Waltham,Massachusettsによって測定した。
【0145】
酸素結合定数P50は、Hemox−Analyzer,TCS Corporation,Southhampton,Pennsylvaniaによって測定した。
【0146】
温度とpHは、当業者に既知の標準的方法によって測定した。
【0147】
解離条件下でヘモグロビン産物に関するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を実施することにより分子量(M.W.)を決定した。ヘモグロビン産物の一般的サンプルを分子量分布に関して分析した。50mM ビス−トリス(pH6.5)、750mM MgCl2 および0.1mM EDTAの移動相内でヘモグロビン産物を4mg/mlに希釈した。この緩衝液は、ポリ(Hb)からHb四量体を、分子内あるいは分子間架橋を通して他のHb 2量体に架橋結合していない2量体に解離するのに役立つ。希釈したサンプルをTosoHaas G3000SWカラムに注入した。流速は0.5ml/分で、280nmで紫外線検出を記録した。
【0148】
本発明の方法に従って作製した動物用(OXYGLOBINTM)および人体用(HEMOPURETM2)Hb代用血液に関する上記の試験の結果をそれぞれ表IIとIIIに要約する。
【0149】
【表2】
Figure 0004581110
【0150】
【表3】
Figure 0004581110
【0151】
実施例3
イヌにおけるインビボでの膨張作用の測定
この試験の目的は、脾摘出したビーグル犬において動物用(OXYGLOBINTM)Hb代用血液のインビボでの膨張作用、特に投与したヘモグロビン1グラムについて血管内空隙に流入する水の容量を、トップローディング投与後の血漿容量の膨張を測定して調べることであった。さらに、Pharmaciaによって製造されている、10%デキストラン40と0.9%生理食塩水の(RHEOMACRODEXTM−生理食塩水)の同等用量も測定した。
【0152】
2匹のイヌを、常套的な健康スクリーニングと少なくとも4週間の順化期間後に本試験に登録した。処置の少なくとも3日前にイヌを脾摘出した。アトロピンとメペリジンHClの組合せでイヌを前麻酔し、イソフルオラン(influorane)の吸入によって麻酔した。手術処置の間、乳酸加リンガー液を10〜20ml/kg/時で注入した。
【0153】
使い捨て頭部カテーテルを通してHb代用血液(40ml/kg)を20ml/kg/時でイヌに投与した。投与前および投与から1/4、1/2、1、2、3、4時間後またはそれ以上にわたってヘマトクリットの最低点が確立されるまで、ヘマトクリットを測定した。
【0154】
投与後の血漿容量の変化が正確に測定できるように、一定な血漿容量とRBC質量を確保するためイヌを脾摘出した。
【0155】
血漿容量の変化の計算は、次の式を用いて行った:
【0156】
【数1】
Figure 0004581110
【0157】
式中、PVは血漿容量であり、Hct1 は最初のヘマトクリット、Hct2 は最後のヘマトクリットである。この計算は、循環血液量中のRBCの数と平均血球量が一定なままであると仮定して、ヘマトクリットの変化に基づいた。
【0158】
表IVに示すように、ヘマトクリットの最低点は両方のイヌにおいて投与後2時間目に生じた。平均血球量(MCV)は試験全体を通じて安定なままであった。
【0159】
【表4】
Figure 0004581110
【0160】
投与後血管内に流入する液体の容量は、イヌ3503Cおよび14雄性に関してそれぞれ6ml/gヘモグロビンと9ml/gヘモグロビンであった。合成コロイド溶液(Rheomacrodex(登録商標)−生理食塩水)の用量は、同様の膨張作用を生じさせる用量に基づいて計算した。Rheomacrodexは、静脈内投与した1グラムにつき空隙から約22mlの液体を流入させる。
【0161】
計算したRheomacrodexの同等用量は、30ml/kgおよび15ml/kgのHb代用血液についてそれぞれ14ml/kgおよび7ml/kgであった。
【0162】
(OxyglobinTM)Hb代用血液によって血管内に流入する液体の量は、8ml H2O/gヘモグロビンであった。投与量の容量は30ml/kgで、投与量中のヘモグロビン濃度は13g/dlであったので、1回投与量当りのヘモグロビンの総量は3.9g/kgであり、Hb代用血液による1回の投与について血管内空隙に流入した液体の総容量は31.2mlであった。
【0163】
合成コロイド溶液はデキストラン1g当たり約22mlの水の割合で流入する。同等用量のHb代用血液当たりのコロイド溶液中のデキストランの総量は1.4gである。従って、同等用量のコロイド溶液当たりの血管内空隙に流入する液体の総容量は14mlである。
【0164】
実施例4
イヌの用量応答試験
本試験は、急性正常血液量性血液希釈した後60分および24時間における脾摘出ビーグル犬におけるイヌ赤血球ヘモグロビンに対する動脈酸素含有量および酸素供給に関して、10%デキストラン40と0.9%食塩水との(RHEOMACRODEXTM−生理食塩水,Pharmacia)合成コロイド溶液と比較して、本発明の獣医学用(OXYGLOBINTM)Hb代用血液の薬剤効果と用量応答とを調べるために実施した。
【0165】
急性正常血液量性血液希釈は、手術による血液損失による貧血の臨床状態を模倣する実験モデルである。この方法によって、重度の貧血(Hct=9%、Hb=3g/dl)を引き起こし、酸素運搬サポートの絶対的必要性を生じさせた。大量の出血に伴って酸素供給送達と酸素含有量とは急激に低下した。
【0166】
正常血液量性血液希釈モデルを開発する際に、対照のイヌに関して実施したような容積膨張だけによって酸素供給送達を回復させるための処置、あるいはヘモグロビン溶液で処置したイヌの場合のように動脈酸素含有量の増加に関連した容積膨張によって酸素供給送達を回復させるための処置は、死に至る血圧および心拍出量の不可逆的な低下を避けるためにヘマトクリットが9%に達する約10分以内に実施しなければならないことが見出された。
【0167】
標的ヘマトクリットに達して5分以内にデキストラン40溶液で血管容積を膨張させたにもかかわらず、この試験において12匹の対照イヌのうち2匹が、投与中または投与後に死亡した。これらのイヌの死亡は、実験モデルの重症度の反映であり、また重篤な急性血液損失の臨床状態を表わすものである。
【0168】
30匹のイヌを常套的な健康スクリーニングと少なくとも4週間の順化期間後、本試験に登録した。処置は、各々のレプリケートが1匹のイヌ/性別/群を含む3匹のイヌのレプリケート(A、BおよびC)を使用して交互に実施した。処置の第1日目の32日前に、イヌを5群に無作為に割り付けた(雄性3匹と雌性3匹の1群あたり6匹のイヌ)。群間の等しい分布を保証する方法を用いて、体重に基づくブロックランダム化によってイヌをそれぞれの群に割り当てた。雄性と雌性は別々に無作為化した。臨床徴候の異常あるいは臨床病理学的データの異常のような許容されない治療前データを示したイヌは、同じ環境条件下に保持した予備のイヌに取り替えた。
【0169】
被験/対照物質は、単回静脈内注入によって投与した。注入ポンプによって注入の速度を調節した。1時間あたりに注入された実際の容量は、各々のイヌの最も新しい体重に依存した。
【0170】
ヘモグロビン溶液の最高用量は、正常血液量のイヌでの容積膨張による急性心臓血管作用の安全上限に基づいた。中用量は、用量応答曲線の形を定義するために選択した。最低用量は、イヌにおいて容積および血行力学的効果によって定義されるような臨床上適切な用量の下限に基づいた。
【0171】
実験モデルに対する脾収縮による循環RBC増加の影響を避けるため、処置の少なくとも7日前に各々のイヌを脾摘出した。ヘモグロビン溶液による処置の当日、イソフルランの吸入によって各々のイヌを麻酔し、20−25ml/kgの一回換気量で室内の空気を使用して機械的に換気した。手技の間、動脈pCO2 を約40mmHgに保持するように換気の割合を調節した。イソフルランの呼気終期濃度を測定し、各イヌごとに麻酔相の有効な比較を提供するように調節した。血行力学的機能と酸素輸送パラメータをモニターするためにイヌに器具を装着した。圧の分析と圧の追跡によって肺動脈内へのフローディレクティド(flow−directed)カテーテルの設置を確認した。熱希釈心拍出量能力を備えた二管腔カテーテルを大腿動脈に設置し、血圧モニタリングと採血のための動脈系を提供した。容積置換と被験/対照物質の投与のため、橈側皮静脈あるいは必要に応じて他の静脈にカテーテルを設置した。
【0172】
手術の前日、手術当日および脾摘出後3日間、各々のイヌに予防的に1日1回抗生物質(プロカインペニシリンG)の筋肉内注射を実施した。必要に応じて、局所抗生物質、V−Sporin(ポリミキシンB、バシトラシン、ネオマイシン)を1日1回手術部位に適用した。
【0173】
器具装着後、pCO2 が約40mmHgに達するよう血行力学的安定化を実施し、ベースライン測定を行なった。その後、イヌを出血させ、同時に等血液量状態を維持するために回収した容積の約1.6から2.3倍を乳酸加(lactated)リンガー液で置換して、急性正常血液量性血液希釈のモデルを作製した。肺動脈楔入圧をほぼベースライン値に保持することによって等血液量状態を実現した。血液の回収/容積置換は、ヘモグロビン濃度が約30g/l(3.0g/dl)になるまで約45から90分を要した。重力静脈内注入セットと注入バッグの周囲の圧カフを使用して乳酸加リンガー液を速やかに注入した。急性貧血の誘発後および投与開始前に5分間以上にわたって動脈収縮期血圧が≦50mmHgであった場合にはそのイヌを除外し、同じ環境条件下に保持した予備のイヌに取り替えた。
【0174】
コロイド対照とヘモグロビン溶液との用量を表Vに示すように投与した。出血前、投与前、投与直後、および投与後60分と24時間目に血行力学的測定を行った。60分の測定後、イヌを麻酔から回復させ、投与後24時間目に実施する血行力学的測定のために再び器具を装着した。
【0175】
【表5】
Figure 0004581110
【0176】
分散分析(ANOVA)あるいは出血前または投与前の数値を共変量とする共分散分析(ANCOVA)のいずれかによって、すべての血行力学的パラメータを統計的に解析した。投与した溶液の容積効果、Hb代用血液の作用(薬剤効果)、およびHb代用血液の用量応答(用量効果)を調べるために比リニア対比を構築した。これらの試験は、実験群間の差が0.05レベルで統計学的に有意であるパラメータに関してのみ実施した。選択した時点での特定変数の比較を、各群における対応あるt検定によって実施した。
【0177】
動脈酸素含有量は、本試験における効果の1つの判定基準であった。動脈酸素含有量は、細胞および血漿ヘモグロビンの酸素運搬能力と血漿中の溶解酸素の測定値である。血漿ヘモグロビンが存在しない場合は、飽和細胞ヘモグロビンによって運搬される酸素の量と吸気酸素の分圧とから動脈酸素含有量を計算する。血漿ヘモグロビンは、本試験における酸素含有量に有意に寄与すると予想されたので、LexO2Con−K装置(Chestnut Hill,MA)を使用して直接酸素含有量を測定した。実験の間酸素強化空気は投与しなかった。これは、その必要がなく、吸気酸素濃度の上昇が動脈酸素含有量の測定に及ぼしうる紛らわしい影響を避けるためであった。
【0178】
貧血の誘発後、平均動脈および静脈酸素含有量はすべての群においてそれぞれ約4倍と8倍に低下した。すべてのHb代用血液処置群において、投与前の数値に比して投与後60分で動脈酸素含有量が有意に上昇し、中用量と高用量群では投与後24時間においても有意に上昇したままであった。いずれの対照群でも、投与後に動脈酸素含有量あるいは静脈酸素含有量は変化しなかった。
【0179】
図2に示すように、投与後60分と24時間において、対照群と比較してHb代用血液処置群では動脈酸素含有量が有意に上昇した。投与後60分と24時間では線形用量応答が認められた。投与後60分に、動脈酸素含有量に関して有意の容積効果が検出された。
【0180】
投与後60分と24時間において、対照群と比較してHb代用血液処置群では静脈酸素含有量も有意に上昇した。上昇は投与後60分には線形用量応答を示したが、24時間目には線形用量応答を示さなかった。
【0181】
投与後60分にHb代用血液で処置した群に関して認められた動脈−静脈(A−V)酸素含有量の差における用量効果は、薬剤効果が存在しないことに基づく有意の容積効果と、投与後60分の対照群における容積効果の同様の所見に帰せられた。Hb代用血液処置群は、コロイド対照に比して24時間後にも有意の線形用量応答を伴ってA−V酸素差の有意の上昇を示した。A−V差は心拍出量の観点から解釈しなければならない。投与後24時間目に、対照群におけるA−V差はHb代用血液処置群よりも有意に低かった。この相違についての1つの可能な説明は、対照群のイヌが末梢組織の酸素消費要求を満たすためにより高い心拍出量に依存しなければならなかったということである。Hb代用血液処置群は、心拍出量の上昇を必要とせずに、投与後24時間目に末梢組織の要求を満たすのに十分なA−V差を維持していた。
【0182】
この試験では動脈酸素含有量に加えて、イヌのRBCヘモグロビンの寄与率に関して規準化した総動脈酸素含有量(CaO2 /g RBC Hb)も検討した。RBCヘモグロビンはすべての群で一定であるので、投与群間での動脈酸素含有量の差を明らかにすることによってこの比較を行った。血漿または総ヘモグロビン濃度と動脈酸素含有量の潜在的な相関は、効果についての有用な臨床測定を提供する。図3に示すように、投与後60分と24時間目に、すべてのHb代用血液処置群(24時間での低用量群を除く)が投与前の数値に比べてCaO2 /gRBCヘモグロビンの有意の上昇を示した。コロイド対照では、RBCヘモグロビンの寄与率に対する動脈酸素含有量は、投与前と投与後60分または24時間との間で有意差がなかった。
【0183】
赤血球ヘモグロビンの寄与率に対する総動脈酸素含有量は、投与後60分にコロイド対照と比較してHb代用血液処置群では有意に上昇し、有意の線形用量応答を示した。投与後24時間目にも有意の線形用量応答を伴って有意の用量効果が生じたが、薬剤効果はそれほど有意ではなかった(P<0.06)。
【0184】
酸素供給送達は効果のもうひとつの判定基準である。酸素供給送達は動脈酸素含有量と心拍出量に基づいて計算される。それ故酸素供給送達は、心拍出量に作用するすべての生理的因子によって影響される。この試験のために選択した対照は合成コロイド(RHEOMACRODEXTM−生理食塩水,Pharmacia)であり、これは静脈内容積を膨張させ、酸素を運搬しないことが知られている。かかる対照は、Hb代用血液中のヘモグロビンのコロイド特性との等容積膨張の比較を提供した。
【0185】
Hb代用血液の各々の用量は、異なる容積効果を示すと予想されたので、2つの用量のデキストラン溶液を容積効果についての対照として使用し、従ってデータは異なる用量の薬剤効果だけを反映することになる。この比較は低用量と中用量に関して行った。コロイド対照の用量は、実施例2の結果から決定した、低および中用量被験物質のin vivoでの膨張作用の等しい比較を提供するデキストラン40の用量に基づいて選択した。
【0186】
容積効果は、コロイド中用量(14ml/kg)とコロイド低用量(7ml/kg)間の平均値の差を用いて統計的に定義した。薬剤効果は、各々のHb代用血液処置群とその対応するコロイド対照を比較することによって決定した。低用量と高用量のHb代用血液処置群間で統計的な有意差が認められたとき、線形用量応答を確認した。
【0187】
次の式に従って酸素供給送達を計算した:DO2 =CO×CaO2 ×10/kg。式中、COは心拍出量、CaO2 は動脈酸素含有量である。予想されたように、すべての処置群における貧血の誘発後、DO2 の2倍から3倍の平均値低下が全群で起こった。酸素含有量は、心拍出量の増加と酸素抽出の増加によってベースライン酸素消費量を維持しなければならないほどに低下し、その結果、より低い静脈酸素含有量を生じた。図4に示すように、酸素供給送達は、投与前の数値に比して投与後60分に低用量Hb代用血液処置群では約30%上昇し、中および高Hb代用血液処置群では100%以上上昇した。その差は3つの投与群すべてについて有意であった(p<0.05)。対照群はこの時点で有意差を示さなかった。投与後60分には、DO2 はすべての群間で有意に異なり、有意の薬剤効果と線形用量応答を伴う用量効果を示した。24時間目には、群間で酸素供給送達に差を認めなかった。すべてのHb代用血液処置群に関する投与後60分での酸素供給送達の改善は、それらの対応するコロイド対照と比較して、心拍出量の中等度の増加に加えて、主として動脈酸素含有量の用量関連性の上昇によるものであった。
【0188】
酸素消費量は次の式に従って計算した:VO2 =CO×CaO2 ×10kg。貧血の誘発後すべての群において2から3倍のDO2 の平均低下が起こった。Hb代用血液処置群または対照群間で、あるいは投与前と投与後の数値を比較したとき群内で、統計的な有意差を認めなかった。
【0189】
すべての群について酸素抽出率(VO2 /DO2 )は貧血の誘発後約3倍の上昇を示した。投与後60分に、対照群に比してすべてのHb代用血液処置群において酸素抽出率が用量依存的に有意に低下した。投与後24時間目にはHb代用血液処置群と対照群間で有意差を認めなかった。
【0190】
貧血の誘発後すべての群で平均心拍出量が10%から39%上昇した。コロイド対照群では出血前の数値に比べて投与後24時間目に心拍出量が有意に上昇したが、Hb代用血液処置群では心拍出量は有意に上昇しなかった。投与後60分には、コロイド低用量群と中用量群との間での心拍出量の有意差に寄与する有意の容積効果が明白であった。心拍出量の上昇は、投与後の血管内容積の膨張による一回拍出量の増加あるいは重篤な貧血のストレスによる交感神経緊張の上昇に関連すると考えられた。Hb代用血液低用量群から高用量群までの有意の用量応答が投与後60分には明白であったが、24時間後には明らかではなかった。投与後60分あるいは24時間目に、Hb代用血液処置群とコロイド対照群との間で心拍出量に差を認めなかった。
【0191】
肺動脈楔入圧(wedge pressure;PAWP)は貧血誘発の間有意に変化しなかった。PAWPは、投与前の数値に比して投与後60分に低用量コロイド群で有意に低下し、中用量コロイド群では不変のままであった。中用量と高用量Hb代用血液処置群におけるPAWPは、投与後60分に投与前の数値に比べて、線形用量応答として有意に上昇した。PAWPの上昇は投与後60分の血管内容積の用量依存的上昇を反映した。投与後60分あるいは24時間目にHb代用血液処置群と対照群との間で有意の薬物効果は検出されなかった。投与後60分にコロイド対照群において有意の容積効果が検出された。
【0192】
収縮期、拡張期および平均動脈血圧は、貧血の誘発後全群において有意に低下し、投与直後に有意に上昇した。貧血誘発後の収縮期動脈血圧の低下は、おそらく貧血の結果として、血液粘性の低下による末梢血管抵抗の低下に関連すると考えられた。投与後60分には、両方のコロイド対照群の収縮期、拡張期および平均動脈血圧は投与前の数値と有意差がなかった。低用量コロイド対照の収縮期、拡張期および平均血圧は、投与後24時間目に投与前の数値と比較して有意に上昇した。これに対し、すべてのHb代用血液処置群において、投与前の数値と比較して投与後60分および24時間目の収縮期、拡張期および平均血圧の上昇は統計的に有意であった。Hb代用血液処置群の収縮期、拡張期および平均血圧は、投与後60分には対応するコロイド対照群よりも有意に高かったが、24時間目には有意差がなかった。
【0193】
投与前の数値と比較して投与後60分に中および高用量Hb代用血液処置群において収縮期、拡張期および平均肺動脈圧の有意の上昇を認めた。中用量Hb代用血液処置群では肺拡張期動脈圧に関して投与後24時間目にも上昇が持続した。さらに低用量コロイド群は、平均肺動脈圧に関して投与前の数値に比べて投与後24時間目に統計的に有意の上昇を示した。この上昇は臨床的に重要であると考えられた。投与前の数値と比較して、Hb代用血液の投与後60分の全身動脈収縮期および拡張期血圧の上昇は、Hb代用血液の直接の薬剤効果であった。コロイド対照群では拡張期血圧は不変のままであり、これはおそらく末梢血管抵抗の低下の結果であった。
【0194】
投与後60分あるいは24時間目にも、肺収縮期動脈圧に関してはHb代用血液処置群と対照群との間で有意差を認めなかった。これに対し、肺拡張期および平均動脈圧は投与後60分に容積、薬剤および用量効果に関して有意に異なったが、投与後24時間目には有意差がなかった。
【0195】
総ヘモグロビンは出血によって約4倍以上低下した。Hb代用血液処置群は、投与後60分および24時間目に対応するコロイド対照群に比して総ヘモグロビンの用量依存的上昇を示した。
【0196】
血漿ヘモグロビン濃度は、投与後60分と24時間目に対応するコロイド対照群に比してHb代用血液処置群では用量依存的に有意に上昇した。対応するコロイド対照と比べて、すべてのHb代用血液処置群での投与後の血漿および総ヘモグロビン濃度の上昇は、Hb代用血液のヘモグロビン含有量をもたらした。用量依存的な有意の上昇は、動脈酸素含有量の持続的な上昇に相関して24時間持続した。
【0197】
要するに、Hb代用血液による処置への反応はリニアであった。すなわち対応するコロイド対照と比較して、投与後60分でのHb代用血液の用量が高いほど酸素供給送達および血行力学の改善が大きかった。室内の空気を呼吸しながら、動脈酸素含有量と正常な臨床徴候が持続したことは、30ml/kgおよび45ml/kg用量のHb代用血液処置群での24時間持続するHb代用血液の有益な生物学的作用を裏付ける。Hb代用血液のクリアランスが、投与後24時間目に酸素供給送達と血行力学的作用に関して認められた変化を説明すると考えられる。結論として、この試験からの結果は、30から45ml/kgの範囲の用量選択を裏付けている。これらの投与群のいずれもが、対応するコロイド対照群と統計的な有意差を示し、効果と用量応答パラメーターはリニアであった。
【0198】
この用量範囲の臨床的根拠は、重度の貧血イヌ(例えば著明な臨床徴候を伴ってヘマトクリット<15%)が、動脈酸素含有量および酸素供給送達の改善の線形用量応答によって明らかにされたように、より高用量から恩恵を受けるという事実に基づく。しかし、血管内容積過負荷の素因があると考えられるイヌについては、より保存的な用量が指示されるであろう。Hb代用血液処置群において投与後60分に肺動脈楔入圧と肺動脈圧の用量依存的な一過性の上昇が見られたことから、この個体群のイヌではより高用量の使用が制限されるであろう。それ故、貧血の程度と血管内容積状態が明らかにされている広範囲のイヌの個体群において、30〜45ml/kgの用量範囲が有効であろう。
【0199】
実施例5
ヒト用量応答試験
この試験は、ヒトにおける血行力学、神経内分泌および血液学的パラメーターに関して、Hb代用血液(以下HBOL)の漸増速度での静脈内投与の安全性と耐容性を評価するために実施した。被験者は、年齢18〜45歳の健常成人男性(70〜90kg)であった。試験中、被験者には、1日当り炭水化物55%、脂肪30%(ポリ不飽和脂肪対飽和脂肪比 2:1)、タンパク質15%およびナトリウム150mEqの管理された等カロリー食を実施した。水分摂取量は、カフェイン含有飲料を避けて少なくとも3000ml/日とした。また薬剤の併用も禁止した。さらに試験期間中、被験者は、アルコールまたはタバコも摂取しなかった。
【0200】
検討した12名の被験者を3つの試験群に分けた。各試験群では、3名の被験者にHBOLを投与し、1名には対照として乳酸加リンガー液を投与した。各試験群は、HBOL注入の速度が異なった。試験は30日間の間隔で一重盲検速度上昇試験として実施した。
【0201】
入院期間である試験の1日目に、各被験者の利き腕でない方の橈骨動脈に小さなゲージの動脈カテーテルを挿入した。挿入部位を防腐液(アルコールおよび/またはヨウ素)で清浄し、橈骨動脈の部位より上に少量の1%〜2%リドカイン麻酔液を皮下注射した。血圧を監視し、血液ガスの評価を容易にするために動脈カテーテルを挿入した。1から2時間後、すべての被験者に対し、片方の上腕の静脈内に1つの大口径静脈内カテーテル(肘前窩に16ゲージの針)を設置した。各被験者に瀉血を実施して、15分以内で750ml(1.5単位)の全血を採取し、その後2時間にわたって乳酸加リンガー液2250mlを持続注入して等血液量血液希釈を行なった。
【0202】
その後、滅菌手法を使用して、標準的な80マイクロメートル血液フィルター、5マイクロメートルフィルター、および上腕静脈内の大口径静脈内カテーテルを通して連続的に、試験群1、2および3においてそれぞれ0.5g/分、0.75g/分および1.0g/分の速度で45g(346ml)のHBOLを各被験者に静脈内注入した。
【0203】
同時に、HBOLの注入開始後最初の28時間にわたって、橈骨動脈カテーテルによる侵襲性モニター、連続的肺機能試験、心機能評価ならびに常套的で頻繁に実施される多数の血液学、化学および尿実験(laboratory)検査を各被験者に実施した。
【0204】
その後外来期間には(2日目〜29日目)、退院後最初の4日間は毎日、その後1ヵ月間は週に1回のベースで、実験(laboratory)検査、生命徴候、ECGおよび医学的事象を調べた。
【0205】
血行動態は顕著で、1日目にHBOL処置群において(注入後)対照群よりも収縮期、拡張期および平均動脈圧の数値が一般的に高かった。患者の活動(例えば食事中あるいは入浴時)および日周期に対応して血圧データには著しい変動があったが、1日目だけはHBOL処置被験者は概して対照群よりも収縮期血圧(約5〜15mmHg)、拡張期血圧(約5〜10mmHg)および平均動脈圧(約10mmHg)の数値が高かった。数値は8〜12時間でピーク効果に達する傾向にあり、睡眠中および動脈カテーテルを除去したときにはベースライン値に戻った。脈拍は、1日目には対照群と比べてすべてのHBOL処置群で一般に約10拍動低かった。脈拍低下の最低点は注入の最初の15分以内に認められた。24時間後にはすべての試験群で同等の数値であった。
【0206】
心係数は、注入の最初の1時間に約1〜2l/分/m2 低下し、4時間目まで対照よりも1l/分/m2 低いままであり、その後4時間目までにベースライン値に回復した。心係数も患者の活動時間(上記のような)には上昇した。
【0207】
総末梢抵抗は血圧の変化と平行したが、数値は2時間以内にベースライン値に戻った。総末梢抵抗の上昇と心係数の低下に伴う全身性血圧の一過性の上昇は予想外のものではない。投与速度およびこれらの血行力学的反応の大きさに差がなかったこと、そして介入処置が全く指示されなかった点に注目することが重要である。
【0208】
肺機能試験(肺活量および肺用量の多回測定を含む)および動脈血液ガスの測定には特に留意すべき点がなかった。注目すべきであったのは、HBOL処置群で認められた拡散能の増強であった。24時間までの拡散能の10〜15%の上昇は、対照群での10%低下と比べて統計的に有意であった。これらの所見は、すべての群で実施した瀉血と血液希釈の度合を考えると特に重要である。
【0209】
血液学的試験では、予想された瀉血と血液希釈処置によるヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球数および血清タンパク質の一過性の低下以外には、血液学的および血清化学的検体検査に注目すべき点はなかった。例外は血清鉄とフェリチンで、これらはHBOLの投与後それぞれ6時間目と48時間目までにピーク値を示した。
【0210】
血清化学測定は、血清トランスアミナーゼとリパーゼの一過性の上昇を示した1名の被験者(#10)を除いて、留意すべきものではなかった。この被験者が、これらの酵素上昇の時点に対応する臨床的に重要な併発医学事象(例えば嚥下困難あるいは腹痛)を生じなかったことは重要である。これらの検査値異常の正確な原因は明らかではないが、これまでの試験は、オッディ括約筋あるいは肝胆管および膵管系の他の部分の一過性の無症状痙縮が関わっていると考えられることを示唆している。これらの変化が一過性であり(そして腹部不快を伴わない)、明らかな続発症がなかった点に注目することが重要である。被験者#10における投与後の胆嚢超音波では有意の変化を認めなかった。
【0211】
尿検査は試験期間を通じて著明な点がなかった。試験期間中被験者において尿ヘモグロビンは検出されなかった。さらに、血液希釈の間、予想されたようにクレアチニンクリアランスがわずかに高く、尿アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質、電解質(ナトリウム、カリウム、塩化物)、鉄、ミクロアルブミン、NAG(N−アセチル−β−グルコサミニダーゼ)および尿の尿素窒素は異常を認めなかった。
【0212】
投与速度の関数として大部分の薬物動態学的パラメータには明らかな変化を認めなかった。総ヘモグロビンおよびヘモグロビンの見かけ分子量分画のサイズ排除(ゲル濾過)クロマトグラフィー(SEC)分析のために、HBOL注入の開始前と開始後に連続的な血液生検と累積尿生検を採集した。わずかに散在性の血漿2量体分画濃度が認められ、薬物動態分析から除外した。4量体の分布容積(速度上昇に伴い低下)、達成された4量体の最大濃度(速度上昇に伴い上昇)および4量体最大濃度の発生時間(速度上昇に伴い低下)においてのみ統計的な有意差(p<0.05)を認めた。
【0213】
認められた医学的事象は、瀉血(例えば血管迷走神経エピソード)、多回のマルチプル(multiple)肺機能試験(空気嚥下、おくびまたは腹部「ガス」)、動脈ライン挿入(例えば部位の痛みまたは刺痛)、あるいは腹部不快(例えば鉄補助剤の摂取に結びつくもの)に関連する予想された所見と一致した。非特異的な一過性の腹部「ガス」の背景が存在すると思われたが、明白な腹痛あるいは嚥下困難の症例はなかった。さらに、これらの症状と血清トランスアミナーゼあるいはリパーゼの変化に相関はなかった。
【0214】
要約すると、HBOLは良好に耐容された。注入の最初の2時間の心係数低下に対応する血圧および総末梢抵抗の小さな一過性の上昇が認められたが、血行力学は正常であった。最初の24時間において、HBOL処置群では対照群よりも拡散能の上昇が有意に高かった。
【0215】
実施例6
段階的自転車運動試験におけるヒトへのHBOLの作用
この試験は、HBOLの自家輸血を実施した被験者の運動能を評価するために実施した。特定エンドポイントには肺機能(例えば拡散能、乳酸レベルおよびpO2 )、血行力学(例えば心拍数、心係数および血圧)ならびに運動耐性(例えば期間、作業負荷および無酸素閾値)が含まれた。被験者は18〜45歳の健常男性であった。1名の被験者は、15分以内に瀉血容量が得られなかったため、試験中に交替した。試験は無作為化、一重盲検、二元(two−way)交差試験として実施した。
【0216】
すべての被験者に750mlの瀉血を実施し、それに続いて乳酸加リンガー液[3:1]および自家輸血(ATX)またはHBOLを45g注入した。ATXあるいはHBOLは90分間にわたって0.5g/分で投与した。瀉血の前日およびATXまたはHBOLの注入後約45分に自転車運動ストレス試験を実施した。1週間後に同じ手順を繰り返して、被験者を反対の処置に切り替えた。
【0217】
投与の当日(1日目と8日目)、すべての被験者に対し、一方の橈骨動脈に動脈ラインを挿入し、心電図遠隔測定およびインピーダンスカルジオグラフィーを装着して、その後750mlの全血の瀉血(PBX)(<15分間)を実施した。このあと2時間かけて乳酸加リンガー液(RL)2250mlを注入した(等容血液希釈期)。次に被験者にHBOL(90分間0.5g/分の速度で45g[約346−360ml])あるいはATX(HBOLと同じ速度と期間でヘモグロビン110−120g[約750ml])を注入した。各々の注入終了後約45分にBESTを実施した。1日目と8日目に24時間にわたって動脈血液ガス、血液学、化学および尿検査の連続的測定を集中的に行った。投与からすべての投与終了後1ヵ月目まで外来患者ベースで連続的な追跡調査を実施した。
【0218】
被験者は、HBOLとATXの期間中同様のレベルで運動することができた。無酸素閾値での酸素摂取(VO2 )と炭酸ガス放出(VCO2 )はほぼ同じであった。METSでの実際の作業負荷、ワット、脈拍(最大脈拍の%として)、無酸素閾値までの時間、一回換気量(VT)および1分換気量(VE)も同様であった。HBOLとATXの期間中、動脈血液ガス値は同様であった。乳酸の上昇を伴ったpHと重炭酸イオンの小さな低下は無酸素閾値での予想された所見と一致する。これらの自転車試験の結果は、運動能(無酸素閾値に達するまでの時間と作業負荷として定義される)がベースラインと自家輸血あるいはHBOLの注入後で同様であることを示した。具体的には、血行力学が、収縮期、拡張期および平均動脈圧に関してHBOL期間中わずかに高い数値(約5mmHg)であったことが注目された。血圧の上昇は、一般に最初の4時間以内の総末梢抵抗の上昇に対応した。心係数はHBOL期間中に低下した(約0.5l/分/M2 )。脈拍は、HBOL期間中にはATX期間よりも約5〜10拍低かった。これらの所見がHBOL試験において認められ、臨床的な関係はほとんどなかった。
【0219】
肺機能試験は、ATXとHBOLの注入後に拡散能がベースラインより14%上昇したことを除いて、注目すべき点はなかった。被験者は、HBOLとATXの期間中同様の運動能を達成することができた。ピーク運動(無酸素閾値)の際の動脈血液ガス測定は両方の期間で同様であったが、動脈pO2 は、HBOL期間の方が高い傾向にあった。血漿乳酸レベルは、ATX期間よりもHBOL期間中の方が低かった。安静代謝項目(art)測定は、酸素消費、炭酸ガス産生および代謝エネルギー消費がHBOL期間中ATX期間よりも大きいことを示した。上述したような比較はざっとHBOL、1g対ATX、3gである。VO2 とVCO2 についての観察と拡散能を合わせると、ATXよりもHBOL、1グラムについてより多くの酸素が組織レベルに供給送達されていることが示唆されている。一般に拡散能は直接ヘモグロビンレベルによって変動すると考えられているが、血漿へモグロビン1グラムはRBCヘモグロビン3グラムと同じだけ拡散能を上昇させうるとの示唆がある。
【0220】
実験検査(laboratory studies)では、HBOL期間中のALT、AST、5' −ヌクレオチダーゼ、リパーゼおよびクレアチンキナーゼの小さいが一過性の上昇が注目された。尿所見の異常は認めなかった。
【0221】
血液学的試験は実施例5におけるものと一致した。
【0222】
認められた医学的事象は、瀉血(例えば血管迷走神経エピソード)、多回の肺機能試験(おくびまたは腹部「ガス」)、動脈ライン挿入(例えば、挿入部位の痛みまたは刺痛)、あるいは1ヵ月の経過中に正常な被験者で認められることがある数多くの日常的な愁訴(例えば頭痛、上気道感染あるいは感冒)に関連する、予想された所見と一致した。腹部「ガス」と中上腹部(mid−epigastrium)に圧迫があったが、嚥下困難を伴わない、1名の被験者(被験者#105)は、これまでのHBOL試験で認められている他の消化器系愁訴を示唆している。ヘモグロビンは内因性酸化窒素機能(酸化窒素は特に食道と腸における胃腸平滑筋の弛緩に必須である)に妨げうるという概念に基づいて、L−アルギニンを治療手段として使用した。L−アルギニンは、酸化窒素シンターゼが酸化窒素を産生する基質である。理論的には、ヘモグロビンによって酸化窒素が低下している人の場合(おそらく酸化窒素へのヘムの結合)、L−アルギニンの投与は有益であると考えられる。明らかに被験者は、約2時間L−アルギニンにより症状の一過性の軽減を示した。L−アルギニンの血漿半減期は約1時間であるので、これは予想外の所見ではない。残念ながら、いくつかの副作用(吐気と嘔吐)が生じ、注入を中止した。我々はこの被験者に抗コリン作動性鎮痙薬、ヒヨスチアミンを2回投与することを選択した。これは明らかに腹部「ガス」と圧迫の症状を軽減し続けた。被験者はさらなる愁訴あるいは続発症を生じなかった。
【0223】
要約すると、HBOLは運動中および安静時の酸素の供給送達と利用の改善に関連した。HBOLは、これまでに認められたのと同様の血行力学の範囲(spectrum)、安全性検体検査結果、薬物動態および医学的事象を生じた。L−アルギニンによる介入は消化器症状の逆転をもたらしうるが、吐気と嘔吐によりその使用は制限された。しかし、抗コリン作用療法の使用は、現れた消化器症状の治療において有用であると考えられる。
【0224】
均等物
当業者は、単なる常套的な実験を使用して、ここで述べた本発明の特定態様の多くの均等物を認識し、確認することができるであろう。これらやその他すべてのそのような均等物は、下記の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。

Claims (34)

  1. a)ヘモグロビン溶液を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに負荷する工程;および
    b)該カラムのpHよりも低いpHを有するトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸緩衝液の少なくとも1種を該カラムにインジェクトし、それにより該カラムから精製ヘモグロビン産物を溶出する工程
    を含む、精製ヘモグロビン産物の製造方法。
  2. それぞれ異なるpHを有するトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸緩衝液の少なくとも2種を逐次的にカラムにインジェクトし、それにより該カラムを段階的pHグラジエントに供する、請求項1記載の方法。
  3. ヘモグロビン産物の溶出前に、該トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸緩衝液の少なくとも1種を用いてカラムを平衡化する、請求項2記載の方法。
  4. .2〜8.6の範囲のpHにカラムを平衡化する、請求項3記載の方法。
  5. 該緩衝液をインジェクトする前に、8.7を超えるpHに最初にカラムを平衡化する、請求項4記載の方法。
  6. トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸緩衝液を用いて最初に該カラムを平衡化する、請求項5記載の方法。
  7. 最初の平衡化のpHが、8.7〜10.0の範囲である、請求項6記載の方法。
  8. 該カラム平衡化の間、少なくとも11カラムボイドボリュームの緩衝液をカラムにインジェクトする、請求項4記載の方法。
  9. 該平衡化が、8.2〜8.4の範囲のpHにおけるものである、請求項8記載の方法。
  10. .5〜7.5の範囲のpHの緩衝液を用いてヘモグロビン産物を溶出する、請求項9記載の方法。
  11. a)ヘモグロビン溶液を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに負荷し、該負荷カラムを最初に8.7よりも高いpHに平衡化する工程;および
    )8.2よりも低いpHを有するトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸緩衝液の少なくとも1種を該カラムにインジェクトし、それにより該カラムから精製ヘモグロビン産物を溶出する工程
    を含む、精製ヘモグロビン産物の製造方法。
  12. 該最初の平衡化が、8.7〜10.0の範囲のpHにおけるものである、請求項11記載の方法。
  13. トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸を用いて最初に該カラムを平衡化する、請求項12記載の方法。
  14. ヘモグロビン溶液を該カラムに負荷するpHと該カラムから精製ヘモグロビンが溶出する最終pHとの間のpHを有し、8.6未満のpHを有するトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸緩衝液の少なくとも1種を該カラムにインジェクトし、それにより該カラムを段階的pHグラジエントに供する工程をさらに含む、請求項11記載の方法。
  15. ヘモグロビン産物の溶出前に、該トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸緩衝液の少なくとも1種を用いて該カラムを平衡化する、請求項14記載の方法。
  16. 該トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸緩衝液を用いて8.2〜8.6の範囲のpHにカラムを平衡化する、請求項15記載の方法。
  17. 該カラム平衡化の間、少なくとも11カラムボイドボリュームの該緩衝液をカラムにインジェクトする、請求項16記載の方法。
  18. 該トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸を用いる該平衡化が、8.2〜8.4の範囲のpHにおけるものである、請求項17記載の方法。
  19. .5〜7.5の範囲のpHでヘモグロビン産物を溶出する、請求項18記載の方法。
  20. a)ヘモグロビン溶液を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに負荷する工程;
    )8.2〜8.6の範囲のpHを有する少なくとも11カラムボイドボリュームの平衡化用緩衝液をカラムにインジェクトする工程;および
    c)平衡化用緩衝液のpHよりも低いpHを有するトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸緩衝液をカラムにインジェクトし、それにより該カラムから精製ヘモグロビン産物が溶出する工程
    を含む、精製ヘモグロビン産物の製造方法。
  21. 平衡化用緩衝液が、8.3のpHを有する、請求項20記載の方法。
  22. それぞれ異なるpHを有するトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸緩衝液の少なくとも2種を逐次的にカラムにインジェクトし、それにより該カラムを段階的pHグラジエントに供する、請求項20記載の方法。
  23. 該緩衝液をインジェクトする前に、8.7を超えるpHに最初にカラムを平衡化する、請求項22記載の方法。
  24. トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸緩衝液を用いて最初に該カラムを平衡化する、請求項23記載の方法。
  25. 最初の平衡化のpHが、8.7〜10.0の範囲である、請求項24記載の方法。
  26. .5〜7.5の範囲のpHでヘモグロビン産物を溶出する、請求項25記載の方法。
  27. a)陰イオン交換クロマトグラフィーカラムにヘモグロビン溶液を負荷し、該負荷カラムを最初に8.7よりも高いpHに平衡化する工程;
    )8.2〜8.6の範囲のpHを有する少なくとも11カラムボイドボリュームのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸の平衡化用緩衝液を該カラムにインジェクトする工程;および
    )8.2よりも低いpHを有するトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸緩衝液の少なくとも1種をカラムにインジェクトし、それにより該カラムから精製ヘモグロビン産物が溶出する工程
    を含む、精製ヘモグロビン産物の製造方法。
  28. トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸緩衝液を用いて最初に該カラムを平衡化する、請求項27記載の方法。
  29. 最初の平衡化のpHが、8.7〜10.0の範囲である、請求項28記載の方法。
  30. 該平衡化用緩衝液が、8.2〜8.4の範囲のpHを有する、請求項29記載の方法。
  31. .5〜7.5の範囲のpHの緩衝液を用いてヘモグロビン産物を溶出する、請求項30記載の方法。
  32. クロマトグラフィーカラムが、陰イオン交換担体で充填されたものである、請求項27記載の方法。
  33. 陰イオン交換担体が、アミンまたはアンモニウム含有シリカゲル、アルミナゲル、チタニアゲル、架橋デキストラン、アガロース、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルメタクリレートおよびスチレンジビニルベンゼンからなる群より選ばれたものである、請求項32記載の方法。
  34. 陰イオン交換担体が、アミンまたはアンモニウム含有シリカゲルである、請求項33記載の方法。
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