JP4580095B2 - 発泡熱可塑性樹脂成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発泡熱可塑性樹脂成形品に関し、詳しくは自動車内装部材等に適した軽量で高剛性であり、かつ表皮材層の触感がソフトである樹脂成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂を射出成形等の方法によって成形し、表皮材を積層した熱可塑性樹脂成形品は従来から自動車部品内装材等の分野において使用されているが、これらの成形品は、密度が高く、従って高重量であり、特に自動車用内装材の分野においてはその軽量化が求められている。
【0003】
自動車部品内装材として、熱可塑性樹脂を使用し、かつその内層を発泡樹脂として軽量化を図るために、雌雄1組の金型間に表皮材をセットし、金型間隔(キャビティークリアランス)を特定の値にし、次いで発泡剤含有ポリプロピレン樹脂組成物を表皮材と雌金型との間に注入すると同時に型を閉じて樹脂を所定形状に賦形すると共に表皮材と一体化し、その後型を所定間隔だけ開いて樹脂のコア部を発泡させた後に冷却することにより成形を行う方法が知られている(特開平6−344362号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の特開平6−344362号公報に開示されるような、表皮材と熱可塑性樹脂基材とを積層一体化した成形体では、軽量化は可能であっても、表皮材のソフト感と成形体としての高剛性化の双方の要請を同時に満足させることはできなかった。
【0005】
すなわち、この公報に開示されているような従来から知られている成形体は、発泡基材層の表皮材側及び裏面側の双方に同一の厚みを有するスキン層(発泡していない固化層)が形成されており、主にこのスキン層の厚みを調整することによって剛性と軽量化をバランスさせたものである。
【0006】
このため、高剛性の成形体を得ようとすると、両面のスキン層が厚くなって成形体の表皮材のソフト感が十分に得られず、一方、表皮材のソフト感を十分に得ようとすると、両面のスキン層が薄くなって成形体としての剛性に劣るという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる問題を解決し、軽量かつ高剛性であって、しかも表皮材層の触感がソフトな、表皮材と熱可塑性樹脂発泡基材とを積層一体化した成形体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、表皮材と熱可塑性樹脂発泡基材とが成形と同時に一体的に積層された発泡熱可塑性樹脂成形体であって、
前記表皮材が裏面に圧縮弾性率が0.3MPa以下のクッション層と前記クッション層に裏打ちされた保護層を有しており、
前記熱可塑性樹脂発泡基材は発泡コア層、表皮材側スキン層、及び裏面側スキン層から構成されており、前記表皮材側スキン層の厚さをA、前記裏面側スキン層の厚さをBとしたとき、A<Bであることを特徴とする。
【0009】
本発明におけるスキン層とは、発泡コア層の厚み方向の両面に形成される非発泡層を示し、表皮材側スキン層厚みA、と裏面側スキン層厚みBの関係A<Bとは、成形体の厚み方向での同一位置における表皮材側のスキン層厚みと裏面側スキン層厚みの関係を示したものである。尚、本願発明の成形体において前記A<Bの関係は、表皮材が積層一体化されている部分において成立していればよく、例えば、表皮材が積層されていない非製品部分を有した成形品や表皮材が部分的に積層一体化された成形品の場合、これら表皮材が積層されていない成形体部分においては前記A<Bの関係が成立していなくてもよい。
【0010】
発泡コア層、表皮材側スキン層、及び裏面側スキン層を有し、表皮材が積層された表皮材側スキン層の厚さAと裏面側スキン層の厚さBとの関係をA<Bを充たす構成とすることにより、高剛性でありしかも軽量であるという要請を充たしつつソフトな表皮材層の触感を有する発泡熱可塑性樹脂成形体が得られる。ここで、発泡コア層の発泡倍率は、成形体の軽量化という観点から2倍以上、特に3倍以上であることが好ましい。
【0011】
上記の発泡熱可塑性樹脂成形体においては、前記表皮材が裏面、即ち樹脂との積層面側に圧縮弾性率が0.3MPa以下のクッション層を有することが好ましい。
【0012】
表皮材と樹脂層の間にクッション層が形成されることにより、さらに表皮材層の触感がソフトな発泡熱可塑性樹脂成形体が簡便に得られる。
【0013】
上述のクッション層の圧縮弾性率は、クッション層構成材料を直径50mmの円板にて1mm/minの圧縮速度で圧縮した際の初期弾性率である。
【0014】
上記の発明においては、前記表皮材側スキン層の厚さAと前記裏面側スキン層の厚さBとの関係が、A≦0.8Bであることが、表皮材層の触感がソフトな発泡熱可塑性樹脂成形体がより確実に形成され、より好ましい。
【0015】
ソフトな表皮材層のソフトな触感を維持するために前記Aは、パネルの厚さにかかわらず1mm以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の発泡熱可塑性樹脂成形体を構成する前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、とりわけポリプロピレン系樹脂であることが、低価格で高強度、高剛性の発泡熱可塑性樹脂成形体を得ることができ、好ましい。
【0017】
ポリプロピレン系樹脂としては、特にメルトフローレート(MFR)値が15以上、より好ましくは25以上のポリプロピレン系樹脂が使用される。
【0018】
MFRが上記範囲のポリプロピレン系樹脂を使用することにより、気泡の破壊が防止され、発泡コア層が確実に形成される結果、高剛性でかつ軽量である発泡熱可塑性成形体であって上述のA<B、好ましくはA≦0.8Bを充たし、ソフトな表皮材層の触感を有した成形体が得られる。
【0019】
本発明の発泡熱可塑性樹脂成形体は、特に自動車内装部品に好適に使用可能であり、具体的には、インストルメントパネル、シートバック、パーティションボード、コンソールボックス、ドアトリム等が例示される。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1には発泡熱可塑性樹脂成形体(以下単にパネルという)の部分断面形状の例を示した。
パネル1は表皮材3と発泡熱可塑性樹脂層10とが積層されており、発泡熱可塑性樹脂層10は、表皮材側スキン層5、裏面側スキン層7、及び発泡コア層9から構成されており、表皮材側スキン層5の厚さをA、裏面側スキン層7の厚さをBとすると、A<Bである。表皮材の厚さはCにて表されている。
【0021】
本発明のパネルの形状は、何ら平面的なものに限定されず、それぞれの用途、目的に応じて曲面状であったり、自動車内装材のように立体的な形状であってもよい。以下、図2に基づいて表面に表皮材層を積層した立体形状のパネルを作製する例を説明する。パネルの製造には雄金型23と基台26に固定された雌金型25から構成され、キャビティークリアランス(t)が任意に設定可能な1組の金型を使用する。
【0022】
本発明の発泡熱可塑性樹脂成形体を成形するに際し、雄金型と雌金型、それぞれの金型の温度設定が重要であり、表皮材側となる雄雌いずれかの金型温度を反表皮材側となる金型温度よりも高く設定する。
【0023】
表皮材側となる金型の温度は、80℃以下とすることが冷却時間短縮の面から好ましく、反表皮材側の金型温度は表皮材側金型温度よりも10℃以上低くするのが好ましく、20℃以上低くするのがより好ましい。
【0024】
表皮材30は雄金型23の端面とクランパー28により保持する(図2(a))。クランパー28による表皮材30の保持は、成形に際して表皮材30が金型凹部に引き込まれる場合に、摺動可能な程度に行われる。
【0025】
次いで雄金型23、雌金型25の少なくとも一方を移動させて樹脂供給開始クリアランスを形成する。樹脂供給開始クリアランスは、適宜設定されるが、広過ぎると樹脂の発泡が急速に起こり、発泡剤がぬけて気泡が十分形成されない場合が有る。表皮材30の厚さをCとしたとき、(C+5)mm未満であることが、発泡剤のいわゆるガス抜けを防止することができ、高発泡倍率の発泡コア層が容易に形成されるため、より好適である。
【0026】
図2(b)に示した工程は、発泡剤を含む溶融熱可塑性樹脂33を樹脂供給通路32を通じて注入する工程である。樹脂供給通路32の分岐通路32Bは、この例においては3本形成されているが、これに限定されるものではなく、成形体の形状、大きさにより任意に設定される。
【0027】
発泡剤を含む溶融熱可塑性樹脂33を所定量注入後、金型のキャビティークリアランスが成形体の設定厚み以下となるように圧縮し、その状態で樹脂表面層を冷却して樹脂のスキン層を形成する。この圧縮工程にて表皮材と樹脂層とが接着される。スキン層を形成するための冷却時間は、成形品の厚み、金型温度等を考慮して適宜設定されるが、成形時間の短縮等の実用的な条件を考慮すると、1〜30秒程度であることが好適である。
【0028】
次いで金型のキャビティークリアランスが成形体の設定厚みとなるように開き、スキン層の間の樹脂を発泡させて発泡コア層を形成することによって、最終製品であるパネル状の発泡熱可塑性樹脂成形体が得られる。
【0029】
成形に際して金型のキャビティークリアランスの圧縮速度は1〜50mm/secであることが好ましく、圧縮は、雌雄の金型を相対的に移動させて行われる。雌雄1組の金型は、一方のみを移動させてもよく、必要に応じて双方を移動させてもよい。また溶融熱可塑性樹脂の注入圧力は、0.5〜50MPaであることが好ましい。
【0030】
本発明に使用する熱可塑性樹脂は、従来から自動車内装部材等に使用されている樹脂は限定なく使用可能であり、具体的には、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリル系樹脂、ABS、ナイロン−6等のポリアミド系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂等が例示される。これらのなかでも、成形性、コスト、物理的強度等の観点からポリプロピレン系樹脂の使用が好ましく、特にメルトフローレート(MFR)値が15以上のポリプロピレン系樹脂であることがより好ましい。
【0031】
上記の熱可塑性樹脂に添加する発泡剤は、熱可塑性樹脂の発泡体を製造する際に使用されている公知の化学発泡剤を使用することができる。具体的には、発泡剤として重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等の無機系発泡剤、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド類、p−トルエンスルホニルセミカルバジド等の発泡剤が使用可能である。必要に応じてサリチル酸、尿素並びにこれらを含む発泡助剤を添加することは好適な態様である。
【0032】
発泡剤の種類は、使用する熱可塑性樹脂の溶融温度や目的とする発泡倍率等を考慮して選択される。またその添加量は、目的とする成形品の強度、密度等を考慮して調整されるが、一般的に樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部である。
【0033】
また、前記化学発泡剤の他、液状またはガス状の二酸化炭素および/または窒素等を直接溶融樹脂中に圧入してもよい。
【0034】
本発明のパネル状の発泡熱可塑性樹脂成形体の表皮材としては、公知の表皮材は限定なく使用可能である。具体的な表皮材としては、織布、不織布、編布、熱可塑性樹脂ないし熱可塑性エラストマーにて形成されたフィルム、シート等が例示される。さらにこれらの表皮材に、ポリウレタン、ゴム、熱可塑性エラストマー等の非発泡シートや発泡体シートを積層した複合表皮材を使用してもよい。
【0035】
クッション層を構成する材料は、ポリウレタンフォーム、EVAフォーム、PPフォーム、PEフォーム等が例示されるが、圧縮永久歪が小さく、しかも圧縮弾性率が0.3MPa以下の材料が容易に形成可能であることから、ポリウレタンフォームが最も好ましい。またクッション層の保護層として、織布、不織布、編布、熱可塑性樹脂もしくは熱可塑性エラストマー等のシートもしくはフィルムがクッション層に裏打ちされていてもよい。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例を、500トンの型締め力を有するプレス機に図2に示す雌雄1組の金型を取り付けて行った成形を例として以下に説明する。
【0037】
表皮材としては、厚み0.5mmのポリオレフィン系熱可塑性エラストマーシ−トに、厚み4mm、圧縮弾性率0.2MPaのポリウレタン発泡層が積層され、裏打ち層として厚み0.2mm、目付け50g/m2 の不織布を有する3層構成の表皮材を用いた。
【0038】
また、芯材となる発泡熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン(住友化学工業株式会社製、住友ノーブレンAZ564:メルトフローレート30g/10分)100重量部に無機系化学発泡マスターバッチ(三協化成株式会社製、セルマイクMB3072)を3重量部添加し200℃で加熱溶融して用いた。
【0039】
成形工程は以下の通りである。
(1)60℃に温度設定された雌金型(23)と30℃に温度設定された雄金型(25)間に前記表皮材(30)を配置し、雌金型(25)を移動させて金型キャビティークリアランス(t)が8mmとなったところでプレスを停止させ、雄金型(25)内に設けられた樹脂供給通路(32)より加熱溶融された上記発泡熱可塑性樹脂を表皮材(30)と雄金型(25)間に供給し、圧縮速度10mm/secで型締めして表皮材(30)と溶融状発泡熱可塑性樹脂芯材(33)とを加圧賦形し積層一体化するとともに該芯材の表面にスキン層を形成させた。この時の加圧賦形条件は5MPaの面圧で2秒間の加圧であり、加圧時のキャビティークリアランスは2.5mmであった。
【0040】
(2)前記加圧賦形後、すぐに雌金型(23)を型開き方向に1.5mm移動させることにより冷却固化が進んでいない溶融状態の芯材コア部分を発泡させるとともに、この状態で50秒間冷却した。
【0041】
(3)冷却後、取り出した成形品の発泡樹脂芯材厚みは3.3mmであり、表皮材側の芯材スキン層厚みが0.2mm、反表皮材側の芯材スキン層厚みは1mmで芯材中央部の宛泡コア層厚みは2.1mmで約2倍の発泡倍率を有しており、表皮一体積層体として表皮材ソフト感に非常に優れ、かつ製品剛性にも優れた成形品であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパネル状の発泡熱可塑性樹脂成形体の例の部分断面形状を示した図
【図2】本発明のパネル状の発泡熱可塑性樹脂成形体の製造工程の例を示した図
【符号の説明】
1 発泡熱可塑性樹脂成形体
3 表皮材
5 表皮材側スキン層
7 裏面側スキン層
9 発泡コア層
10 熱可塑性樹脂発泡体
Claims (5)
- 表皮材と熱可塑性樹脂発泡基材とが成形と同時に一体的に積層された発泡熱可塑性樹脂成形体であって、
前記表皮材が裏面に圧縮弾性率が0.3MPa以下のクッション層と前記クッション層に裏打ちされた保護層を有しており、
前記熱可塑性樹脂発泡基材は発泡コア層、表皮材側スキン層、及び裏面側スキン層から構成されており、前記表皮材側スキン層の厚さをA、前記裏面側スキン層の厚さをBとしたとき、A<Bであることを特徴とする発泡熱可塑性樹脂成形体。 - 前記表皮材側スキン層の厚さAと前記裏面側スキン層の厚さBとの関係が、A≦0.8Bであることを特徴とする請求項1に記載の発泡熱可塑性樹脂成形体。
- 前記Aが1mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡熱可塑性樹脂成形体。
- 前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発泡熱可塑性樹脂成形体。
- 前記ポリプロピレン系樹脂がメルトフローレート(MFR)が15以上である請求項4に記載の発泡熱可塑性樹脂成形体。
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