JP4696366B2 - 熱可塑性樹脂発泡成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂発泡成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
家電製品の部品や建材などのほか、ドアトリム、サイドトリムなどの各種トリム類や各種ピラー類、インストルメントパネルなどの自動車等の内装部品においては、断熱性や軽量化が強く望まれており、その手法として、例えば、特開平11―179752公報にはスキン層と発泡層から構成されたオレフィン系樹脂製発泡成形体からなる自動車内装部品が開示されている。
このような発泡成形体は、発泡層を有する発泡基材部に、車両本体や他の部材に取り付けるためのブラケットが該発泡基材部に一体的に取り付けられた構造となっている。
【0003】
しかし、このようなブラケットを高発泡の発泡基材部に取り付けた場合には、一般にその接合部における発泡倍率も高く、機械的強度も弱いため、外力が加わった場合にブラケットが当該接合部から外れやすいという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようなことから、本発明者は、発泡層を有する基材部に、該基材部と一体化されたブラケットが設けられてなる熱可塑性樹脂発泡成形体において、前記ブラケットが基材部から外れにくく、強固に接合されてなる熱可塑性樹脂発泡成形体を開発すべく検討の結果、本発明に至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、基材部に、該基材部と一体化されたブラケットが設けられてなる熱可塑性樹脂発泡成形体において、少なくとも前記基材部が発泡層を有し、該基材部の発泡層の密度ρが0.7g/cm3 以下であり、かつ前記ブラケットと基材部との接合部の発泡倍率が1〜1.3倍であることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡成形体を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について説明する。
本発明の熱可塑性樹脂発泡成形体は、図1にその断面を示すように、発泡層を有する基材部(1)に、該基材部と一体化されたブラケットが設けられた構造となっている。
ブラケット(2)は、基材部と同一材料により一体成形されていてもよいし、別部材として成形されたものを取り付けたものであってもよいが、基材部と同一材料により一体成形されたものであることがより好ましい。
【0007】
基材部(1)は、その内部に発泡層(4)を有しており、また、一般には主要構成部の殆どの部分において、その表面には空隙を全く有さないかあるいは殆ど空隙を有さないスキン層(3)が形成されている。
基材部の意匠面側の表面に形成されるスキン層には各種柄模様やしぼ模様が施されていてもよく、また必要に応じて熱可塑性樹脂からなるシートやフィルムあるいは織布、不織布、編物などの各種表皮材が積層されていてもよい。
ブラケットは、通常、非意匠面側に設けられるが、かかる非意匠面にも必要に応じて熱可塑性樹脂からなるシートやフィルムあるいは織布、不職布、編物などの各種表皮材や裏打ち材が積層されていてもよい。この場合、かかる表皮材や裏打ち材は一般的には、ブラケットの部分を除いて積層されるが、場合によっては、ブラケットも包み込むようにして発泡基材部に積層されていてもよい。
また、基材部の一部にはスピーカーグリルや各種スイッチパネルなどを設けるための開口穴(5)が適宜設けられていてもよく、その構成は任意である。
【0008】
かかる基材部はその内部に発泡層を有していることが必要であり、十分な軽量性を得るためには発泡層の密度は0.7g/cm3 以下、望ましくは0.6g/cm3 以下であり、その下限には特に制限はないが、発泡層の強度低下の面から0.2g/cm3 程度である。
【0009】
ここで、基材部(1)の発泡層の密度は図2に示すように、スキン層(3)を含む発泡成形体の厚みをTとした時、厚み方向のほぼ中央から両表面側に向かってそれぞれ成形体厚みの30%(t=0.3T)の範囲を切り出した中央層(2t)の密度を示すものである。
尚、基材部の表面に表皮材が張り合わされている場合には、表皮材(13)や接着剤層のような表皮材接合層(15)を除いた部分の厚みを発泡成形体の厚みTとする。
【0010】
基材部(1)は平面である必要はなく、それぞれの使用目的に応じて所望の形状になるように曲面や凹部あるいは凸部を有していてもよい。
基材部(1)の厚みは、使用目的によって適宜決定されるが、薄すぎると強度的に劣るため、一般的には2〜10mm、望ましくは2.5mm〜8mm程度である。
基材部の単位面積当たりの質量は、使用する熱可塑性樹脂の種類や発泡基材部の厚みなどによっても変わるが、強度等の物性に特段の悪影響がない限り、軽ければ軽いほど好ましく、一般には2200g/m2 以下、望ましくは、1800g/m2 以下である。
【0011】
本発明において、基材部(1)に一体的に設けられているブラケット(2)は、図3に示されるようなリブ状、ボス状あるいはクリップ座等のような自動車本体(構造部材)あるいは他の部品との嵌合ないしは取り付け目的で設けられる突起状物を意味し、これらのブラケットの厚みはその使用目的に応じて適宜設定されるが、例えば、クリップ座の場合は1〜5mm程度であり、ウエザーストリップが固定されるようなリブ状のブラケットの場合は1〜3mm程度である。また、ビスなどが捻じ込まれるボス状のブラケットの場合はその外径5から10mm程度、内径が2〜8mm程度である。
【0012】
このようなブラケット(2)は基材部(1)に接合され、該基材部(2)と一体的になっている。
【0013】
尚、本発明の熱可塑性樹脂発泡成形体において、ブラケットは基材部にある程度の曲率をもって接合されているのが一般的であり、接合部(6)とは、前記基材部にブラケットが接合された状態において、図3左上図に示されるように、接合に伴うブラケットの曲率部が終了する点において基材部の厚み方向の略垂直の直線およびブラケットの曲率部が終了する点において基材部の幅方向ないしは長さ方向と略平行の直線(境界14)で囲まれたブラケットおよび基材部の領域内を示し(図においては3本の点線で囲まれた領域)、以下の発泡倍率において、前記ブラケットの発泡倍率とはかかる境界からの突き出し部分におけるブラケットの発泡倍率を示し、境界内の部分は含まない。
同様に、接合部の発泡倍率とは、かかる境界(14)で囲まれたブラケットおよび基材部の領域内(図においては3本の点線で囲まれた領域)における発泡倍率を示すものである。
【0014】
また、接合部に曲率部を有さず、例えば、ブラケットが基材部の表面に直角ないしはある角度を持って接合されている場合には、図3右上図のように当該角部が接合部(6)との境界(14)となり、前記ブラケットの発泡倍率とはかかる境界からの突き出し部分におけるブラケットの発泡倍率を示し、境界内の部分は含まない。同様に、接合部の発泡倍率とは、かかる境界(14)で囲まれたブラケットおよび基材部の領域内(図においては3本の点線で囲まれた領域)における発泡倍率を示すものである。
【0015】
基材部に接合されるブラケットは非発泡であるか、1.3倍以下の発泡倍率であることが好ましく、発泡倍率がこれより大きくなると応力集中などによりブラケットが破壊され易くなる。
ブラケット(2)が発泡している場合、発泡部はブラケットの全部であってもよいし、部分的たとえば中央部分あるいは付け根部分のみが発泡していてもよい。発泡倍率は、このブラケット全体における平均発泡倍率を示し、非発泡部を有している場合には非発泡部と発泡部の両方をあわせた平均発泡倍率を示す。
【0016】
ここで、ブラケット(2)の発泡倍率は、ブラケット中の非発泡部の比重とブラケット全体の比重の比(非発泡部の比重/ブラケット全体の比重)で表わすことができる。
ブラケット中に非発泡部がない場合には、ブラケットの一部をその材料に適した温度において一旦溶融状態にし、冷却プレス等によって非発泡体を作成し、その比重を非発泡部の比重として用いてもよい。このプレス時の圧力は、0.1〜5MPaの範囲である。
それぞれの比重は、一般的な水中置換法など公知の手法により測定される。
【0017】
また、本発明の熱可塑性樹脂発泡成形体において、基材部(1)とブラケット部(2)の接合部(6)は、当該部分における発泡倍率が高くなると接合強度が低くなり、ブラケットが破壊され易くなるため、その発泡倍率は1〜1.3倍の範囲内であることが重要である。
接合部(6)の発泡倍率は、前記ブラケットの発泡倍率と同様の方法で測定することができる。すなわち、前記した境界に基づいて接合領域内(接合部)を切り出し、当該領域内における非発泡部の比重と接合部内全体の比重の比(非発泡部の比重/接合部内全体の比重)で表わすことができる。
【0018】
尚、本発明の熱可塑性樹脂発泡成形体において、基材部(1)に複数個のブラケット(2)が点在し、接合部も複数個所に存在しているような場合には、全接合部の内の少なくとも一つの接合部は上記の本発明に特定する発泡倍率であることは必要であるが、全部の接合部が上記の本発明で特定する発泡倍率である必要はなく、どの接合部について本発明に規定する発泡倍率となるようにするかは、本発明の熱可塑性樹脂発泡成形体を他の部材に取り付けたときの応力の集中状態を考慮して決定すればよい。
また、ブラケットがリブ状ブラケットのように連続的に設けられているような場合には、その長さ全部にわたる接合部で上記の本発明で特定する発泡倍率である必要はなく、連続もしくは不連続で少なくともその長さ方向の合計10%の部分で上記の本発明で特定する発泡倍率になっておればよい。
【0019】
このような発泡成形体に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリルスチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルブタジエンスチレンターポリマー(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS樹脂)、ポリカーボネイト(PC樹脂)、ポリアミド等の熱可塑性樹脂あるいはこれらからなるポリマーアロイ、あるいはこれらの混合物が用いられ、本発明における熱可塑性樹脂とはこれらを全て含むものである。
このような熱可塑性樹脂は、各種フィラーや繊維等の強化用充填剤、着色用の顔料や不均一柄用の各種着色剤、ポリエステル繊維等あるいは柔軟性付与のためのエラストマー等を含んでいてもよい。また、帯電防止剤や耐候剤、滑剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0020】
このような熱可塑性樹脂のうち、成形性や軽量性に優れる点でプロピレン系樹脂単独あるいはこれと他の熱可塑性樹脂やエラストマーとの混合物が好ましく使用される。ここで、プロピレン系樹脂としてはポリプロピレン単独重合体であってもよいし、プロピレンを主成分として他のオレフィン成分例えばエチレンを共重合させた共重合体であってもよい。
【0021】
プロピレン系樹脂を使用する場合には、23℃におけるアイゾット衝撃値が10kJ/m2 、好ましくは15〜60kJ/m2(JIS K6758 ノッチ有り)となるように各種配合材を加えることが望ましい。
本発明においては、プロピレン系樹脂に柔軟性を与えるためのエラストマーを混合した混合物がより好ましく用いられる。
【0022】
かかる目的で使用されるエラストマーとしては天然ゴムやイソプレンゴム、スチレンーブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、あるいはエチレンープロピレンゴム、エチレンーブテンゴム、エチレンーオクテンゴム等のオレフィン系ゴム、フッ素ゴムなどが挙げられ、その中でも耐熱性に優れる点で、DSCのPEAK値が40〜100℃(昇温速度10℃/min)程度、ショアA硬度が70〜90(JIS−K6301、23℃)、引っ張り延びが600%(JIS−K6301、23℃)以上のオレフィン系ゴムが望ましい。
【0023】
このようなエラストマーを混合使用する場合に、その添加量は使用する熱可塑性樹脂の種類、目的とする成形体の必要とする諸性質により適宜選択されるが、プロピレン系樹脂にオレフィン系ゴムを添加する場合、その比は重量比で7:3〜9:1程度である。
【0024】
本発明の熱可塑性樹脂発泡成形体を製造する方法としては、ブラケットを基材部と同一材料により一体成形して取り付けてもよいし、別部材として予め成形されたブラケットを基材部に熱融着等により取り付けてもよいが、基材部とブラケットとを同一材料により一体成形したものであることがより好ましい。
前者の方法による場合には、金型成形面の一部がスライドコア構造となっている雌雄一対からなる金型を使用し、金型キャビティ内に、発泡成分を含む溶融状熱可塑性樹脂を供給、充填した後、金型の一部もしくは全部の金型キャビティを拡大し、前記溶融状熱可塑性樹脂を発泡させる方法が適用される。
【0025】
熱可塑性樹脂中に配合される発泡成分としては、従来より公知の化学発泡剤を用いてもよいし、溶融状熱可塑性樹脂中に炭酸ガスや窒素ガス等のガス体やこれらのガスを液化させたものを直接圧入してもよい。
化学発泡剤を用いる場合、その種類は特に制限ないが、金型を腐食させ難いことから重曹等を主成分とする無機系発泡剤が好適に使用される。
このような化学発泡剤は、熱可塑性樹脂との溶融混練時にそのまま添加、配合してもよいが、一般的にはこれら発泡剤をその含量が20〜80重量%になるように熱可塑性樹脂に練り込んだマスタ−バッチとして使用される。
【0026】
以下に、その代表的な方法について述べる。
図4は、かかる方法で使用する金型の例をその概略断面図で示したものである。この金型は、雄型(7)および雌型(8)の雌雄一対からなり、両金型は通常そのいずれか一方がプレス装置等の型締め装置に接続され、他方は固定されて縦方向または横方向に両金型が開閉可能となっている。
図では、雄型(7)が固定され、雌型(8)がプレス装置(図示せず)に接続されて、両金型が縦方向に開閉するようになっている。
このような金型の所定の位置には、ブラケットを形成するための掘り込みが形成されたスライドコア(18)が設けられている。図では下方に配置された金型に掘り込みおよびスライドコア(18)が設けられているが、これらは上方に配置された金型に設けてもよいし、両方の金型に設けてもよい。
また、基材を形成する金型面とブラケットを形成する掘り込みの接合部は所定の曲率Rや面取りが施されていてもよい。
ここで、スライドコア(18)は、金型の開閉方向に任意にかつ制御可能に移動できることが必要であり、そのための移動手段としては油圧やエアー圧を利用したシリンダー等(19)であってもよいし、バネ等によるものであってもよい。
【0027】
金型キャビティ内への溶融状熱可塑性樹脂(9)の供給方法は任意であるが、一般的には金型内に設けた樹脂供給路(10)を介して樹脂供給装置(11)と結ばれた樹脂供給口(12)を雌雄いずれかもしくは両方の金型の成形面に設け、該樹脂供給口から供給する方法が好ましい。
この場合、樹脂供給口(12)近傍の樹脂供給路(10)には任意に制御可能な開閉弁を設け、射出機等の樹脂供給装置(11)に貯えられた溶融状熱可塑性樹脂の供給、停止が任意に制御できるようになっていることが好ましい。
【0028】
金型キャビティ内への溶融状熱可塑性樹脂(9)の充填は、両金型を閉じた状態での射出充填による方法であってもよいし、開放状態にある両金型間に溶融状熱可塑性樹脂を供給したのち両金型の型締め動作によって充填してもよく、その方法は、所望とする製品形態等によって適宜選択される。
【0029】
いずれの方法においても、供給する溶融状熱可塑性樹脂の温度は使用する熱可塑性樹脂の種類によって異なり、それぞれの樹脂によって最適の温度が設定されるが、例えば、プロピレン系樹脂にオレフィン系ゴムを添加した熱可塑性樹脂を用いる場合には温度は170〜260℃程度、好ましくは190〜230℃程度である。
【0030】
前者の射出充填法により金型キャビティ内に溶融状熱可塑性樹脂を充填する方法としては、発泡前の成形体厚みより小さいキャビティクリアランスになるように両金型を位置させた状態で、溶融状熱可塑性樹脂(9)の供給を開始し(図5)、溶融状熱可塑性樹脂の供給を行ないつつ金型を開いて(図6)、溶融状熱可塑性樹脂の供給が完了すると同時にキャビティクリアランスが発泡前の成形体厚みと一致するようにキャビティ内に充填する(図7)方法や、発泡前の成形体厚みと同じキャビティクリアランスになるように両金型を位置させた状態で溶融状熱可塑性樹脂を供給してキャビティないに供給する方法が挙げられる。
【0031】
前者の、発泡前の成形体厚みより小さいキャビティクリアランスになるように両金型を位置させた状態で、溶融状熱可塑性樹脂(9)の供給を開始する場合、供給開始時のキャビティクリアランスは、そのときのキャビティ容積が発泡前の成形体の容積に対して通常5容量%以上、100容量%未満となる範囲、望ましくは30容量%〜70容量%となる範囲である。
【0032】
このような状態で溶融状熱可塑性樹脂(9)の供給を開始すると、溶融状熱可塑性樹脂の供給が進むにつれて可動型が後退してキャビティクリアランスは拡大され、所要量の溶融状熱可塑性樹脂の供給が完了した時点で、供給した溶融状熱可塑性樹脂の容積とキャビティ容積が略等しくなり、キャビティ内に溶融状熱可塑性樹脂が充填される。
【0033】
このとき、キャビティクリアランスの拡大は、拡大量を制御しながら金型に取り付けたプレス装置などによって積極的に行なってもよいし、供給する溶融状熱可塑性樹脂の供給圧力を利用して拡大してもよいが、この際に樹脂にかかる圧力が2〜50MPa程度となるようにキャビティクリアランスの拡大を制御することが望ましい。
また、キャビティクリアランスの拡大過程では、キャビティ容積が供給された溶融状熱可塑性樹脂(9)の容量よりも大きくなる場合もあるが、この場合、溶融状熱可塑性樹脂の供給完了前あるいは完了とほぼ同時に、所定のキャビティクリアランスになるように型締めを行えばよく、特に問題とはならない。この際も樹脂にかかる圧力が上記の範囲から外れないようにすることが望ましい。
【0034】
後者の、発泡前の成形体厚みと同じキャビティクリアランスになるように両金型を位置させた状態で溶融状熱可塑性樹脂(9)を供給してキャビティ内に充填する場合には、通常の射出成形における場合と同様に、溶融状熱可塑性樹脂の供給開始から供給完了までキャビティクリアランスを発泡前の成形体厚みと同じになるように保持しておけばよい。
【0035】
両金型の型締め動作により溶融状熱可塑性樹脂をキャビティ内に充填する方法としては、キャビティクリアランスが発泡前の成形体厚み以上になるように両金型を予め開放した状態で所要量の溶融状熱可塑性樹脂を供給し(図10)、溶融状熱可塑性樹脂を供給した後または供給完了と同時にキャビティクリアランスが発泡前の成形体厚みと同じになるように型締めして充填する(図11)方法や、キャビティクリアランスが発泡前の成形体厚み以上になるように予め両金型を開放した状態で溶融状熱可塑性樹脂の供給を開始し、溶融状熱可塑性樹脂を供給しつつ型締めを開始して、溶融状熱可塑性樹脂の供給と型締めを平行して行ないつつ溶融状熱可塑性樹脂の供給完了とほぼ同時または供給完了後にキャビティクリアランスが発泡前の成形体厚みと同じになるようにしてもよい。
【0036】
このような方法により溶融樹脂状熱可塑性樹脂(9)を金型キャビティ内に供給充填する間、スライドコア(18)が金型キャビティ面よりも前進した位置にあるとスライドコアが対向する金型のキャビティ面と接触したり、あるいは、スライドコアの表面部分にあたる成形体厚みが薄くなったりするため、スライドコアの表面は、金型のキャビティ面に連続的に接続する位置にあるか、あるいは、金型キャビティ面よりも若干後退した位置にあることが望ましい。また、場合によっては、溶融状熱可塑性樹脂(9)の充填とともにスライドコア(18)を後退あるいは前進させるなど、適宜移動させても良い。
【0037】
溶融状熱可塑性樹脂(9)が充填された金型キャビティは、殆ど空隙が存在しない状態にある。
この状態で、金型成形面に接する溶融状熱可塑性樹脂表面にスキン層(3)が形成される、一般に金型温度は使用する熱可塑性樹脂の融点または軟化点よりも低い温度に設定されているため、この状態を保持して冷却を行なうと、供給された溶融状熱可塑性樹脂は金型成形面に接する表面部分より固化しはじめ、やがて空隙の殆どないスキン層(3)が形成される。
金型の温度は用いる熱可塑性樹脂の種類により適宜決定されるが、例えば、プロピレン系樹脂にオレフィン系エラストマーを添加した樹脂材料を用いる場合は、40℃〜80℃程度、望ましくは50〜70℃程度である。
【0038】
このときの冷却時間、すなわち溶融状熱可塑性樹脂がキャビティ内に充填されてから次工程の金型を開放するまでの時間はスキン層の形成に大きく影響するため、冷却時間は、所望のスキン層厚みとなるように適宜設定される。
この時の冷却時間は、金型温度、溶融状熱可塑性樹脂の温度、樹脂の種類等の諸条件によって変わるが、通常0.1〜20秒程度である。
【0039】
所定のスキン層が形成された後、金型キャビティを成形体の厚み方向に開放すると、供給された溶融状熱可塑性樹脂の未固化部分に閉じ込められていた発泡成分が膨張し、発泡状態となりながら全体として金型の開き方向、すなわち厚み方向に厚みを増す(図8)。
【0040】
この時、スライドコア(18)を、対向する金型の開放量にあわせて、開放量と同等かあるいは開放量よりもわずかに少ない量だけ、金型の開放方向に移動させることで、ほとんど発泡していないかあるいはわずかに発泡した部分を形成することができる。
【0041】
キャビティクリアランスが発泡後の最終成形体厚みになった時点で金型の開放動作を停止し、キャビティクリアランスをこの厚みに保持しつつ、成形体を冷却する。
【0042】
このとき、キャビティクリアランスを一旦最終成形体厚みより僅かに大きくなるように金型を開放し、熱可塑性樹脂の発泡層の一部がまだ溶融状態にある間に最終成形体厚みになるまで型締めしてもよい。
この場合には、発泡成形体表面と金型成形面との密着性をよりよくすることができ、金型形状をより忠実に再現するとともに、冷却効率を上げることもできる。このときの型締め動作は、機械的に制御してもよいし、両金型が上下方向に開放される場合には上型の自重によりキャビティを縮小してもよい。
【0043】
更には、少なくとも意匠面側となる金型キャビティ面に微細な孔径からなる真空吸引口を設けた金型を用い、溶融状熱可塑性樹脂の供給開始前あるいは供給後に真空吸引口に繋がる吸引装置により真空吸引を行い、形成されたスキン層をキャビティ面に吸着させることでも発泡成形体表面と金型成形面との密着性をよりよくすることができ、金型形状をより忠実に再現するとともに、冷却効率を上げることができる。
【0044】
冷却が完了した後、金型を完全に開放し、最終成形体である熱可塑性樹脂発泡成形体を金型より取り出せば(図9)、図1に例示されるような表面に緻密なスキン層(3)を有し、その内部に発泡層(4)を有し、ブラケットが一体的に成形された熱可塑性樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0045】
また、予め金型内の所望の位置にシートやフィルム等の表皮材(16)を供給した後、上記したような方法で成形することにより、図12にその断面が例示されるような成形体表面の一部または全部にシートやフィルム等の表皮材を貼合した表皮材貼合の熱可塑性樹脂発泡成形体を製造することができる。
【0046】
かかる方法において、発泡剤の使用量や溶融状熱可塑性樹脂の金型キャビティ内への充填後の金型の開き量(拡大量)、あるいはブラケット形成のための掘り込みの幅、長さなどの成形条件を調整することにより、本発明に規定する各種要件を満たす熱可塑性樹脂発泡成形体を容易に製造することができる。
【0047】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂発泡成形体は、軽量、高剛性で、しかも発泡基材部とリブもしくはボス状突起部との接合強度にも優れているため、自動車内装用、家電製品用、建材などとして幅広く使用することができ、とりわけ、自動車内装部用の熱可塑性樹脂発泡成形体として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の成形体例の概略断面図である。
【図2】本発明の成形体における基材部の密度測定を示すための概略断面図である。
【図3】本発明の成形体において、基材部とブラケットの接合部を示す概略断面図であり、それぞれの図はブラケットの形状の相違または取り付け方法の相違を示すものである。
【図4】本発明の方法で使用される金型例をその概略断面図で示したものである。
【図5】本発明の熱可塑性樹脂発泡成形体を製造する工程を金型の概略断面図で示したものである。
【図6】本発明の熱可塑性樹脂発泡成形体を製造する工程を金型の概略断面図で示したものである。
【図7】本発明の熱可塑性樹脂発泡成形体を製造する工程を金型の概略断面図で示したものである。
【図8】本発明の熱可塑性樹脂発泡成形体を製造する工程を金型の概略断面図で示したものである。
【図9】本発明の熱可塑性樹脂発泡成形体を製造する工程を金型の概略断面図で示したものである。
【図10】本発明の熱可塑性樹脂発泡成形体を製造する工程を金型の概略断面図で示したものである。
【図11】本発明の熱可塑性樹脂発泡成形体を製造する工程を金型の概略断面図で示したものである。
【図12】本発明の熱可塑性樹脂発泡成形体において、表皮材が貼合された発泡成形体例を示したものである。
【符号の説明】
1:基材部
2:ブラケット
3:スキン層
4:発泡層
5:開口穴
6:接合部
7:雄型
8:雌型
9:溶融状熱可塑性樹脂
10:樹脂供給路
11:樹脂供給装置
12:樹脂供給口
13:表皮材
14: 接合部の境界
15:表皮材接合層
16:成形体表面
17:気泡
18:スライドコア
19:シリンダー
Claims (3)
- 基材部に、該基材部と一体化されたブラケットが設けられてなる熱可塑性樹脂発泡成形体において、
前記基材部は、密度ρが0.6g/cm 3 以下の発泡層と、前記ブラケットの曲率部が終了する点又は角部において基材部の厚み方向に略垂直な方向、及び前記ブラケットの曲率部が終了する点又は角部において基材部の幅方向ないし長さ方向と略平行な直線で囲まれた接合部とを有し、
前記接合部の発泡倍率は、前記基材部の発泡層よりも小さく、1〜1.3倍であることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡成形体。 - 前記熱可塑性樹脂が、23℃におけるアイゾット衝撃値が10KJ/m2以上であるプロピレン系樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡成成形体。
- 熱可塑性樹脂発泡成形体が自動車内装用成形体である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂発泡成形体。
Priority Applications (4)
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