JP4579362B2 - テストパターン記録方法、及び記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録部に設けられた複数のノズルの出力特性情報を得るため、濃度センサにより光学的に濃度検出されるテストパターンを記録媒体に記録するテストパターン記録方法、並びにそのテストパターンの情報に基づき濃度補正を行うための情報処理装置、及び記録装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、記録方式としては、例えば、熱エネルギーによりインクリボンのインクを紙などの記録媒体に転写させる熱転写方式、飛翔させた液滴を紙などの記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方式などが知られている。
【0003】
これらの中でもインクジェット記録方式は、低騒音、低ランニングコストであると共に、装置の小型化、カラー化の実現等が容易であるといった理由から、プリンタや複写機などに広く利用されている。
【0004】
このようなインクジェット記録方式を用いた記録装置は、記録速度を向上させるために、複数の記録素子が集積配列された記録部を用いることが一般的である。その記録素子としては、例えば、インクを吐出させるノズルやインク吐出口などが含まれる。このようなインクジェット記録装置において、記録部が主走査方向に走査するシリアルスキャン方式の場合は、画質低下の要因の1つとして、主走査方向に沿ってスジ状に現れる記録むら(以下、「スジむら」ともいう)が挙げられる。
【0005】
スジむらは、周期的に現れる場合が多く、その場合には非常に目立ち易いものとなり、画質を著しく劣化させる要因となっている。例えば、インクの吐出口がいわゆるマルチノズルタイプの記録部において、それぞれの吐出口からインクを吐出するために、それぞれの吐出口に連通するインク流路中に位置する発熱ヒータ(電気熱変換体)の発熱エネルギーを利用するものの場合には、次のようなスジむらの発生原因が挙げられる。
【0006】
すなわち、
(1)ノズル単位における発熱ヒータや吐出口の大きさの製作時のばらつきに起因するインクの吐出量や吐出方向のばらつき、
(2)シリアルスキャン方式の場合における記録媒体の搬送量(紙送り量)と記録幅とのずれ、
(3)記録時間のずれに応じて生じるインクの濃度変化の差、
(4)記録媒体上におけるインクの移動、
などがスジむらの発生原因となっている。
【0007】
そこで、現在ではこのようなスジむらの発生を防止して、高画質化を図る方法が種々提案されている。
例えば、特公昭59−31949号公報には、シリアルスキャン方式において、記録部が主走査方向に繰り返し走査を行なって1行分ずつの画像を記録するときに、その1行分ずつの記録領域のつなぎ目部分にスジむらを発生させないようにする方法が記載されている。これは、先の1行分の記録領域の最下端と、次の1行分の記録領域の最上端とを重複させ、それら両者の記録領域のつなぎ目部分に関しては、記録部の2回の走査によって画像を完成させるものとなっている。
【0008】
また、スジむらを除去して高画質化を図る他の方法としては、記録部の複数回の走査によって、記録媒体上の1つの記録領域に対する記録を完成させるようにした分割記録方法(マルチパス記録方法)があり、この分割記録方法は、スジむらの発生をなくす上において有効なものとなっている。しかし、その効果を十分に上げるためには、1つの記録領域に対する記録部の走査回数、つまり分割数を増やさなければならず、その分、スループットの低下を招く虞がある。
【0009】
また、分割記録方法を用いずに、スジむらの発生を抑える他の方法としては、例えば、特開明5−69545号に記載されているようなヘッドシェーディング方法がある。
この方法の場合には、まず、記録部を用いて、予め設定された補正値決定用のテストパターンを記録媒体上に記録し、その記録されたテストパターンの記録濃度をCCDなどの固体撮像素子を備えたスキャナーによって1ライン毎に読み取り、その読み取り画像を適当に位置補正した後、その画像の濃度を、記録部のノズル毎に対応するラスターに割り付ける。記録濃度の変化は、ノズル毎におけるインク吐出量の誤差や、インク吐出方向のずれ、または記録媒体上におけるインクのにじみなどによって生じる。
【0010】
次に、ラスター毎に割り付けられた濃度データから、ノズル毎に対応する記録濃度の補正値を決定する。そして、その補正値に基づいてノズル毎のγテーブルを変更したり、ノズル毎の駆動テーブルを変更して、インクの吐出量などを変える。このような補正により、補正なしの状態において濃く記録されるラスターについては、それが薄くなるように出力γ補正等の濃度補正がなされ、また補正なしの状態において薄く記録されるラスターについては、それが濃くなるように出力γ補正などのように濃度補正がなされて濃度のむら(スジむら)を低減している。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようなテストパターンの読取りデータに基づき濃度補正を行うようにした従来の技術にあっては、テストパターンの濃度を1ライン毎に読み取るものとなっていたため、その読み取り動作にはCCDなどを用いた高価なスキャナが必要であるが、記録装置のユーザ全てが高価なスキャナーを所有しているとは限らず、パーソナルユースとしては不十分なものとなっていた。
【0012】
また、スキャナーによっては、1ライン毎にテストパターンの読み取りを行なうため、その読み取りには多くの時間を要し、しかも、テストパターンの読み取りデータから記録濃度の補正値を算出するための機能も必要となる。
【0013】
さらに、記録装置に、テストパターン読み取り用のスキャナーを一体的に装備した場合には、装置全体の大型化やコスト増大を招く虞がある。
【0014】
本発明の目的はこのような問題を解決し、高価なスキャナーを用いずに、記録部の出力特性の取得と、出力濃度の補正値を決定することができる、テストパターン記録方法、情報処理装置、及び記録装置の提供を目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を有するものとなっている。
【0016】
すなわち、本発明は、記録装置に搭載される記録部に設けられた複数のノズルの出力特性情報を得るため、濃度センサにより光学的に濃度検出されるテストパターンを記録媒体に記録するテストパターン記録方法であって、前記記録部に設けられた複数のノズルからなるノズル列を複数のノズルブロックに分割し、前記複数のノズルブロックの中の少なくとも1つのノズルブロックを、他のノズルブロックとは異なる数のノズルを有するように設定する第1のステップと、前記各ノズルブロックに対応するパッチを同一ノズルブロック内のノズルのみを用い、それぞれ前記濃度センサによって光学的に濃度検出可能な寸法形状に記録する第2のステップとを有し、前記第2のステップは、1回の主走査方向への記録走査によって各ノズルブロックに対応する複数のパッチそれぞれの一部を記録媒体上に形成することと、前記複数のノズルブロックの中で最も少ないノズル数を有するノズルブロックの幅に対応する距離だけ記録媒体を副走査方向に移動させることとを、交互に複数回行うことにより前記パッチを形成し、前記テストパターンは、複数の前記パッチにより構成されることを特徴とする。
【0018】
さらに本発明は、インクを吐出する複数のノズルの出力特性情報を得るため、濃度センサにより光学的に濃度検出されるテストパターンを記録媒体に記録する記録装置であって、前記複数のノズルからなるノズル列を複数のブロックに分割し、前記複数のノズルブロックの中の少なくとも1つのノズルブロックを、他のノズルブロックとは異なる数のノズルを有するように設定する設定手段と、各ブロックに対応するパッチを、同一ブロック内のノズルのみを用いて前記記録媒体に記録する記録部と、を有し、前記記録部による主走査方向への1回の記録走査によって各ノズルブロックに対応する複数のパッチの一部を記録媒体上に形成することと、前記複数のノズルブロックの最小の幅の記録媒体の移動とを交互に複数回行うことにより前記複数のパッチを形成し、前記テストパターンは、複数の前記パッチにより構成されることを特徴とする
【0019】
【発明の実施の形態】
[第1の実施形態]
(概要)
本実施形態では、記録部のノズル列を、隣接する複数のノズルからなる複数のブロックに分け、そのブロック毎にそれに対応した所定の記録パターン(パッチ)を記録するものとなっている。
以下、このブロックのことをノズルブロックと称す。一つのパッチはそれに対応するノズルブロックのノズルのみを用いて記録する。記録装置に搭載された濃度センサにより、そのパッチの光学特性(濃度)を測定することにより、そのパッチを記録したノズルブロックの記録特性のデータを取得する。この後、得られた各データの相対的な関係を求め、その関係に基づき各ブロック毎の濃度むら補正の値を決定する。そして、データと記録に用いるノズルとを対応させ、ノズルに応じた補正値を参照し、記録データの処理に用いるγ補正テーブルを変更して記録画像データの処理を行う。
【0020】
(記録装置における機構的構成)
図1は、本発明を適用したインクジェット記録装置の機構的構成の第1例を示す斜視図である。
【0021】
図1において、記録媒体に対して記録動作を行う記録部は、複数(ここでは4個)のヘッドカートリッジ1A,1B,1C,1Dと、これを交換可能に搭載したキャリッジ2とで構成されている。ヘッドカートリッジ1Aないし1Dのそれぞれは、いずれも記録ヘッド13(図3参照)及びインクタンクを有し、また、記録ヘッド13には、これを駆動するための信号の授受を行なうためのコネクタが設けられている。なお、以下の説明では、ヘッドカートリッジ1Aないし1Dの全体または任意の一つを指す場合、単にヘッドカートリッジ1で示すことにする。
【0022】
前記複数のヘッドカートリッジ1は、それぞれ異なる色のインクで記録を行うものであり、それらに搭載された各インクタンクには、例えばブラック、シアン、マゼンタ、イエローなどの異なるインクがそれぞれ収納されている。各ヘッドカートリッジ1はキャリッジ2の所定位置にそれぞれ交換可能に搭載されており、キャリッジ2には、上記コネクターを介して各ヘッドカートリッジ1に駆動信号等を伝達するためのコネクタホルダ(電気接続部)が設けられている。
【0023】
キャリッジ2は、主走査方向に延出するよう装置本体に設置されたガイド・シャフト3に移動可能に支持され、主走査方向へと往復移動可能となっている。そして、キャリッジ2は主走査モータ4によりモータプーリ5、従動プーリ6及びタイミングベルト7等の駆動機構を介して往復移動されると共に、その位置及び移動は、後述の制御系によって制御される。
【0024】
記録用紙やプラスチック薄板等の記録媒体8は、2組の搬送ローラ9,10、及び11,12の回転により、ヘッドカートリッジ1の吐出口面と対向する位置(記録領域)を通って搬送される。なお、記録媒体8は、記録領域において平坦な記録面を形成するように、その裏面がプラテン(不図示)によって支持される。この場合、キャリッジ2に搭載された各ヘッドカートリッジ1の各吐出口面は、キャリッジ2から下方へと突出して前記2組の搬送ローラの間で保持された記録媒体8と平行するように保持されている。さらに、前記キャリッジ2には、濃度センサとして後述の反射型光学センサ30が設けられている。
【0025】
また、ヘッドカートリッジ1は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェットヘッドカートリッジであって、熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を備えたものとなっている。すなわちヘッドカートリッジ1の記録部は、各ノズルに配設された電気熱変換体に印加される電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、その熱エネルギーによってインクに膜沸騰を発生させて気泡を発生させ、その気泡の圧力を利用して吐出口よりインクを吐出させて記録を行うものとなっている。
【0026】
また、図2は本発明を適用するインクジェット記録装置の機構的構成の第2例を示す斜視図である。なお、図2において、前記図1に示したものと同一または相当部分には同一符号を付し、その説明の詳細は省略する。
図2において、ここに示す記録装置の記録部は、複数(6個)のヘッドカートリッジ41A,41B,41C,41D,41E,41Fと、これに交換可能に搭載されたキャリッジ2により構成されている。カートリッジ41Aないし41Fのそれぞれは、各ヘッドカートリッジ1の記録ヘッド13を駆動する信号を受けるためのコネクターが設けられている。なお、以下の説明では前記ヘッド・カートリッジ41Aないし41Fの全体または任意の1つを指す場合、単に記録ヘッド41またはヘッドカートリッジ41で示すことにする。
【0027】
前記複数のヘッドカートリッジ41は、それぞれ異なる色のインクで記録するものであり、それらのインクタンク部には、例えばブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、淡シアン、淡マゼンタなどの異なるインクが収納されている。各ヘッドカートリッジ41はキャリッジ2の所定位置にそれぞれ交換可能に搭載されており、そのキャリッジ2には、上記コネクターを介して各ヘッドカートリッジ41に駆動信号を伝達するためのコネクタホルダ(電気接続部)が設けられている。なお、その他の構成は、前述の第一例に示したものと同様であり、ここではその説明を省略する。
【0028】
また、図3は、上記ヘッドカートリッジ1または41における記録ヘッド13の一部を模式的に示す説明斜視図である。
前述のように記録領域にて支持された記録媒体8と所定の隙間(例えば約0.5ないし2ミリ程度)を介して対向する吐出口面21には、所定のピッチで複数の吐出口22が形成され、共通液室23と各吐出口22とを連通させる各液路24の壁面に沿ってインク吐出用の熱エネルギーを発生させる電気熱変換体(発熱抵抗体など)25が配設されている。
【0029】
ここでは、ヘッドカートリッジ1または41の吐出口22は、キャリッジ2の走査方向と交差する方向に整列するような位置関係でキャリッジ2に搭載されている。こうして、画像信号または吐出信号に基づいて対応する電気熱変換体(以下においては、「吐出ヒータ」ともいう)25を駆動(通電)して、液路24内のインクを膜沸騰させ、その時に発生する圧力によって吐出口22からインクを吐出させる記録部13が構成される。
【0030】
図4は、図1または図2に示した反射光学センサ30の構成を模式的に示す説明側面図である。図4に示すように、反射型光学センサ30はキャリッジ2に取り付けられ、発光部31と受光部32とを有するものとなっており、前記発光部31は記録媒体8へと光(入射光)35を発し、前記受光部32は記録媒体で反射された発光部31からの光(反射光)37を受光し、その受光量に応じた信号を検出信号として出力するようになっている。
【0031】
そして、この受光部32から出力された検出信号はフレキシブルケーブル(不図示)を介して記録装置の電気基板上に形成される制御回路に送出され、その制御回路に設けられたA/D変換器によってデジタル信号に変換される。なお、前記光学センサ30がキャリッジ2に取り付けられる位置は、インク等の飛沫の付着を防ぐため、記録走査時に記録ヘッド13の吐出口部が通過する部分を通らない位置に設定している。また、この光学センサ30は比較的低解像度のものを用いることができるため、CCD等のような高解像度を有するイメージセンサに比べ、大幅に低コストなものとなっている。
【0032】
一方、図5は本発明の実施形態における制御系回路の構成を示すブロック図である。
図5において、コントローラ100は記録装置全体の制御を行なう主制御部であり、例えばマイクロ・コンピュータ形態のCPU101、プログラムや所用のテーブルその他の固定データを格納したROM103、記録データを展開する領域や作業用の領域等を設けたRAM105等を有する。また、ホスト装置110は、記録データの供給源としての機能を有するものとなっており、記録に係わる画像等のデータの作成、処理等を行うコンピュータ等の形態を採るものの他、画像読み取り用のリーダ部等の形態を採るものも適用可能であり、ここから送出される記録データ、その他のコマンド、ステータス信号等は、インタフェース(I/F)112を介してコントローラ100との間で送受信される。
【0033】
また、このコントローラ100の入力側には、操作部120とセンサ群130とが接続されており、前記操作部120は、操作者による指示入力を可能とするスイッチ群と入力設定部とからなる。このうち、前記スイッチ群としては、電源スイッチ122、記録開始を指示するためのスイッチ124、吸引回復の起動を指示するための回復スイッチ126、マニュアルでレジストレーション調整を行うためルジストレーション調整起動スイッチ127等が設けられ、入力設定部としては、マニュアルで前記調整値を入力するためレジストレーション調整値設定入力部129等が設けられている。
【0034】
また、前記センサ群130は、装置の状態を検出するためのセンサ群であり、上述の反射型光学センサ30、キャリッジ2のホームポジションを検出するためのフォトカプラ132及びヘッドカートリッジ1または41周辺の環境温度を検出するために適宜の部位に設けられた温度センサ134等を有している。
【0035】
また、コントローラ100の出力側には、ヘッドドライバ140と、モータドライバ150,160とが接続されている。ヘッドドライバ140は、記録データ等に応じて記録ヘッド13の吐出ヒータ25を駆動するドライバである。ヘッドドライバ140は、記録データを吐出ヒータ25の位置の対応させて配列させるシフトレジスタ、適宜のタイミングでラッチするラッチ回路、駆動タイミング信号に同期して吐出ヒータを作動させる論理回路素子の他、ドット形成位置合わせのために駆動タイミング(吐出タイミング)を適切に設定するタイミング設定部等を有する。
【0036】
さらに、記録ヘッド13には、サブヒータ142が設けられている。このサブヒータ142はインクの吐出特性を安定させるための温度調整を行うものであり、吐出ヒータ25と同時に記録ヘッド基板上に形成する形態、または記録ヘッド本体あるいはヘッド・カートリッジに取り付ける形態を採ることができる。モータドライバ150は主走査モータ152を駆動するためのドライバであり、副走査モータ162は記録媒体8を搬送(副走査)するために用いられるモータであり、モータドライバ160はこのモータ162を駆動するためのドライバである。
【0037】
次に、本実施例に用いる記録装置における画像処理について説明する。
図20は入力画像データを画像処理して記録データを生成するための処理部の構成を示すブロック図である。
本実施例における画像処理部は、1画素あたりR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色について8ビットの画像データ、つまり各色について256階調の画像データを入力し、その画像データを1画素あたりC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各インク色について各1ビットの画像データとして出力する。
【0038】
すなわち、R,G,Bの各色についての8ビットずつの画像データは、まず、色変換処理部210としての3次元のルックアップテーブル(LUT)によって、C,M,Y,Kの各インク色毎に8ビットのデータに変換される。このような処理は、入力系のRGB系カラー信号から、出力系のC,M,Y,Kカラー信号に変換する色変換処理である。
【0039】
入力系からの入力データはディスプレイなどの発光体における加法混色の3原色(RGB)データである場合が多く、一方プリンタなどの出力系において光の反射によって色を表現する場合は、減法混色の3原色(CMY)の色材が用いられる。そのため、このような色変換処理が必要となる。この色変換処理に用いられる3次元LUTは、離散的にデータを保持し、その保持するデータ間は補間処理によって求める。その補間処理は、公知の技術であるため、ここでの説明は省略する。
【0040】
このように色変換処理が施されたC,M,Y,Kの各インク色の8ビットデータは、出力γ補正部(出力濃度補正部)220としての1次元ルックアップテーブル(LUT)により、出力γ補正が施される。記録媒体上において、単位面積当たりのドット数と、反射濃度などの出力特性との関係は、多くの場合は、線形関係とはならない。そこで、出力γ補正を施すことによって、C,M,Y,Kの各インク色の8ビットの入力レベルと、C,M,Y,Kの各インクによる出力特性との関係を線形関係に保障するようになっている。出力γ補正テーブルとしての1次元LUTは、記録ヘッドのそれぞれにおける全ノズルに対応して備えられており、後述する濃度むらの補正値によって変更されるようになっている。
【0041】
このようにして、R,G,Bの各色の8ビットの入力データは、記録装置におけるC,M,Y,Kの各インク色毎に8ビットデータに変換され、その後各インク色の8ビットデータは、それぞれ二値化処理部にて1ビットの二値データに変換され、1ヘッドドライバ140に供給される。
【0042】
(処理のフロー)
図6は本発明の実施形態において実行される濃度むら補正値の取得を行う処理の概略を示すフローチャートである。
【0043】
まず、所定のパターンの記録を行う(ステップ1)。このパターンは、少なくとも各ノズルブロックに対応した、後述の複数のパッチからなっている。次に、キャリッジ2に搭載された濃度センサ30で、それらのパッチの光学特性を測定する(ステップ2)。その後、それらの値の相対関係を求め、その相対関係から濃度むら補正の補正値を算出する(ステップ3)。そして、算出した補正値に基づき前記出力γ補正部220にて出力γテーブルを変更する(ステップ4)。
【0044】
(パターンの記録)
図7はむら補正を行う処理に使用する本発明の第1の実施形態における記録パターン及びその作成手順を説明するための模式図である。ここでは説明を簡明化する上で、単色のノズル列を使用する場合について説明する。本実施形態では、記録ヘッド13ノズル列を4つのノズルブロックに分割してテストパターンの記録を行う場合について説明する。図中、記録媒体上に記録されているパターンのうち(A)〜(D)は往動走査による記録で形成するパターンを示しており、また(E)〜(H)は復動走査による記録で形成するパターンを示している。
【0045】
図7において、(イ)は1回目〜4回目の記録走査における、記録媒体に対する記録ヘッド13の位置を示している。ここで、▲1▼の記号を付したものが1回目の記録走査の記録ヘッド13の位置を示し、図中、その記録ヘッド13の中に記載された破線が、ノズル列の配列位置を示している。また、同図(イ)に記載の(a)〜(d)が、本実施例における各ノズルブロックをそれぞれ示している。本実施形態における各ノズルブロック(a)〜(d)はノズル数が同一に設定されると共に、ブロックの長さも同一となっている。
【0046】
まず、第1回目の記録走査により、図7(ロ)に示すように、記録媒体に対し、パッチ(A)から(D)の、▲1▼の符号が付けられている部分を記録する。その際、ノズル列のノズルブロック(a)でパッチ(A)の一部を、ノズルブロック(b)でパッチ(B)の一部を、ノズルブロック(c)でパッチ(C)の一部を、ノズルブロック(d)でパッチ(D)の一部をそれぞれ記録する。
【0047】
その後、記録媒体をノズルブロックの長さだけ移動させる。すると記録媒体に対する記録ヘッドの位置は、図7(イ)の▲2▼で示される位置に達する。そして、1回目の記録走査時と同様にパッチ(A)からパッチ(D)の一部の記録を行なう。そして、記録媒体を再びノズルブロックの長さだけ移動させ3回目の記録走査を同様に行った後、さらに記録媒体の移動と4回目の記録走査を行う。これで、図中に示されるパッチ(A)からパッチ(D)の記録が完了する。これらの記録走査によりパッチ(A)はノズルブロック(a)のノズルのみを使用して形成され、同様にそれぞれ、パッチ(B)はノズルブロック(b)、パッチ(C)はノズルブロック(c)、パッチ(D)はノズルブロック(d)のノズルのみによって形成される。
【0048】
次に同じような記録走査を図7(ハ)の▲5▼から▲8▼で示されるように記録媒体の副搬送方向への搬送を行ないつつ記録ヘッドを主走査方向へと復動方向へと移動させて行なう。これによりパッチ(E)からパッチ(H)が形成される。
【0049】
ここで、パッチ(E)はノズルブロック(a)のノズルのみを使用して形成され、同様に、パッチ(F)はノズルブロック(b)、パッチ(G)はノズルブロック(c)、パッチ(H)はノズルブロック(d)のノズルのみによってそれぞれ4ライン分の縦幅で形成される。
【0050】
(光学特性の測定)
ノズルブロックの特性をパッチの光学特性に敏感に反映させるためには、パッチのパターンはハーフデューティーのパターンが望ましい。例えば、このハーフデューティーのパターンとしては、例えば図8に示すような千鳥パターンなどが望ましい。その理由は、ドットの大きさや形状が、パッチの面積被覆率(記録されたドットがどれくらい記録媒体の記録すべき領域を覆っているかを示す割合であって、エリアファクターともいう)に与える影響が大きいためと考えられる。また、この実施形態においては、全てのパッチが4ラスタ分の縦幅を有するものとなっているため、CCDのような高解像度を有するセンサでなくとも、前述のような安価な構成の濃度センサによって十分にその濃度値を検出することができる。
【0051】
図9は、上記のようにして記録したパッチの光学特性の測定を模式的に示す平面図である。図示のように、キャリッジに搭載された前述の濃度センサは、パッチに対応する位置に来るように、記録媒体及びキャリッジを移動する。そして、図9中(a)から(c)に示される位置で光学特性の測定を行う。図中、点線は濃度センサが濃度を測定する範囲をそれぞれ示している。測定する光学特性としては、反射光強度、反射率、反射光学濃度などが考えられ、この実施の形態においては、反射光学濃度(以下、ODと称す)を検出するものとなっているが、入射光に対して記録されたパッチがどの程度、光を反射させるかの特性を検出し得るものであれば検出すべき光学特性としては、その他のものでも良い。
【0052】
(補正値の算出)
上記のように、各パッチにおける光学特性値を比較することにより、それぞれのパッチに対応したノズルブロック(a)〜(d)の各々のノズル列がどの程度の濃度を発生させる能力を有するかを表す相対関係を算出することができる。
【0053】
すなわち、図10は光学測定の結果得られた結果の一例を示す模式図である。図中、パッチ(A)〜(H)(図7で示した)に対応した、ODの測定値を示している。このうち、(A)〜(D)は往走査で記録した各ノズルブロック(a)〜(d)に対応するパッチであり、(E)〜(H)は復走査で記録されたノズルブロック(a)〜(d)に対応するパッチである。
本実施形態ではそれぞれのパッチに対応するOD値を、最も低いODの検出値で除した値(以下、RODと呼ぶ)を算出し、その値を基に補正値を計算している。なお、図10において、最も低いOD値レベルを破線で示した。
【0054】
また、図11は本実施形態におけるRODの値とそれに対応する前記補正値の曲線を示す線図であり、この曲線に従って前記RODに適した補正値を得ることができるようになっている。すなわち、RODが図中の(x)に示される値であった場合、それに対応する補正値αは、図中の曲線より求めると、補正値0.8と補正値0.7との間の値となる。その値を本実施形態では小数点2位以下で4捨5入を行う。このようにして、RODに対応する補正値αを1.0から0.6までの値に割り振る。なお、図12に各ノズルブロック及び記録ヘッドの各ノズルに対応する補正値の一例を示す。なお、図11に示されるROD値と補正値との関係を決める曲線(変換カーブ)は、ROD=1.0のときの補正値が1.0となるようなポイントを通る反比例のカーブとする。
【0055】
(出力γ補正テーブルの変更)
上記のようにして設定した補正値αに基づき、本実施形態では予めRAMに格納した出力γ補正テーブルをノズル毎に選択し、その出力γ補正テーブルによって記録濃度値に応じた濃度値を読み出すようになっている。
ここで、本実施形態に用いる出力γ補正テーブルは、図13の線図に示すようなものとなっている。すなわち、本実施形態においては、前述のようにRODに対応して求められる補正値0.6,0.7,0.8,0.9,1.0の各値に対応して出力γ曲線が設定され、これがRAM105に格納される。なお、補正値が0.8の場合に、それに応じて選択された出力γ補正テーブルにより得られる記録濃度は、前記補正値によって補正しない場合よりも記録濃度が20%薄くなるものとなっている。
【0056】
(記録動作)
上記のように、ノズル特性に合わせて選択された出力γ補正テーブルを用いて、入力記録データのデータ処理を行なって記録データを生成し、その記録データに基づき記録領域にて記録動作を行う。
【0057】
上記のように、この第1の実施形態においては、前記記録ヘッド13に設けられた複数のノズルからなるノズル列をノズルブロック(a)〜(d)に分割すると共に、前記前記各ノズルブロックに対応する各パッチを同一ノズルブロック内のノズルのみを用い、それぞれ前記濃度センサによって光学的に濃度検出可能な寸法形状に記録するようにしたため、CCDなどのような高価なスキャナーを用いなくとも、安価かつ小型に構成し得る濃度センサを用いて記録ヘッドの出力特性を取得することができ、その出力特性に応じた出力濃度の補正を安価かつ容易に実現することができる。このため、本発明を適用することにより、出力特性設定機能を有する記録装置を構成する場合、その装置全体を安価かつ低コストに構成することができ、
なお、上記第1の実施形態においては、4回の記録走査によって1つのパッチを形成する場合を例に採り説明したが、形成すべきパッチは4回以上、あるいはそれ以下の走査回数によって形成することも可能であり、各パッチは、同一ノズルブロックにて形成でき、かつ濃度センサによって読み取り得るものであれば如何なる寸法形状であっても良く、ノズルブロックを構成するノズル数も形成すべきパッチの寸法形状、及びパッチ記録に要する走査回数等に応じて適宜設定すれば良い。
【0058】
[第2の実施形態]
(概要)
前記第1の実施形態では、全てのノズルブロックについて、その幅(ノズル数)を同一のものとしたが、この第2の実施形態では、必ずしもノズルブロック幅が均一なものとはなっておらず、記録ヘッドや記録装置の特性に応じてノズルブロックの幅(ノズル数)を適宜異なるものとしている。すなわち、この第2の実施形態においては、ノズル列の両側のノズルブロックの幅を短くし、中央部のノズルブロックの幅を比較的長くするものとなっており、これによって、記録ヘッドや記録装置の特性として、記録走査の端部の濃度が増減する場合に、それに対応するものとなっている。つまり、ノズルブロックの長さを、記録ヘッドや記録装置の特性に応じて変化させることにより、濃度むらの補正の精度を上げつつ、ノズルブロックの数を抑えて測定にかかる時間の短縮を図ることができるものとなっている。
【0059】
ここで、この第2の実施形態において解消しようとする濃度むらの発生状況の一例を図14及び図15にて説明する。
【0060】
この濃度むらは、隣接する前後の記録走査の間に行なわれる副搬送方向における記録媒体の移動量(紙送り量)と1回の記録走査によって実行される記録ヘッドのノズル列の長さとの関係によって生じる。
【0061】
つまり、濃度むらが発生しない場合には、図14に示すように、各ノズル列の長さと、記録走査と次の記録走査との間に記録媒体の移動量(紙送り量)が一致する。この場合、前後の隣接する記録走査において、記録媒体に対する記録ヘッドの相対位置は、同図(a)に示すように、先の記録走査のノズル列の後端の位置と、次の記録走査のノズル列の先端の位置とが完全に一致した状態となっている。その結果、両記録走査によって記録媒体上に記録される濃度は図14(b)に示すように均一なものとなる。
【0062】
これに対し、前記記録媒体の移動量が、ノズル列の長さより短かった場合には、図15(a)に示すように、前後の隣接する記録走査において、先の記録走査でのノズル列の後端の位置と、後の記録走査でのノズル列の先端の位置とが重なる。このため、その位置の記録媒体上には他の場所と比較してより多くのインクが打ち込まれ、その部分の濃度は他の場所と比較して増大することとなる。また、打ち込まれたインク量がある一定量を超えると、記録媒体に着弾した直後のインクが周辺へと流出するので、その周辺の濃度も上昇するといった現象が発生する。図15(b)はその様子を示している。
【0063】
この第2の実施形態では、上記のような紙送りに起因する濃度むらにも対応し得るものとなっており、以下、その濃度むら処理を説明する。なお、本実施形態の記録装置の構成や、処理動作の手順は前記第1の実施形態と同様である。また、この実施形態では、片方向記録で画像を形成する場合の濃度むら補正処理について説明する。
【0064】
(パターンの記録)
図16は本実施形態における、テストパターン及びその作成手順を説明するための模式図である。ここでは説明の都合上、図16に示すものは、実際のものよりも縦方向における寸法を長くしたものとなっている。
この第2の実施形態では、記録ヘッドのノズル列を5つのノズルブロックに分割してテストパターンの記録を行なう場合を例に採り説明する。
図16において、(イ)は、1回から4回目の記録走査における、記録媒体に対する記録ヘッド13の位置を示している。なお、ここに示す記録パターン[A]〜[E]は8回の記録走査で完成するが、紙面の関係上、図16(イ)においては、5回目以降の記録走査の記録ヘッド13の位置の記載は省略した。
【0065】
ここで、▲1▼の符号が付いているものが1回目の記録走査の記録ヘッドの位置を示しており、その記録ヘッド13の中に記載された破線がノズル列の配列位置を示している。また、図16(イ)に記載の[a]〜[e]がそれぞれ本実施形態における各ノズルブロックを示している。本実施形態においては、記録ヘッドの両端部に位置するブロック(図中最も上側のノズルブロック[a]と、最も下側のノズルブロック[e])を、他のノズルブロックの半分の幅に設定している。
【0066】
そして、この第2の実施形態においても、前記記第1実施例と同様に、それぞれノズルブロックのみのノズルを用いて対応するパッチを記録する。すなわち、ノズルブロック[a]のみでパッチ[A]を、ノズルブロック[b]のみでパッチ[B]を、ノズルブロック[c]のみでパッチ[C]を、ノズルブロック[d]のみでパッチ[D]を、ノズルブロック[e]のみでパッチ[E]をそれぞれ記録する。但し、ノズルブロック[a]とノズルブロック[e]は、ノズル列の幅、ノズル列の数が他と比べ半分なので、ノズルブロック[a]とノズルブロック[e]は、8回のうち全ての記録走査において記録動作を行うことにより、パッチ[A]、パッチ[E]を記録し、ノズルブロック[b]〜[d]は8回の記録走査のうち、奇数回目の記録走査においてのみ記録動作を行ってパッチ[B]〜[D]を形成する。この際、記録走査と記録走査との間で行なわれる記録媒体の移動量は、ノズルブロック[a]及び[e]の幅と同一の長さ、すなわち、ノズルブロック[b]〜[d]の幅の半分の長さに設定されている。
【0067】
(光学特性の測定)
前記第1の実施形態と同様に、それぞれのパッチに対応する位置にキャリッジに搭載された濃度センサを移動させて、光学特性の測定を行う。光学特性は第1の実施形態と同様に、反射光学濃度(OD)で扱うことにする。図17に測定された値の例を示した。図17には、パッチ[A]からパッチ[E]に対応した、測定された反射光学濃度(OD)のレベルがそれぞれ示されている。
【0068】
(補正値の算出)
この第2の実施形態では、記録ヘッド13の両端のノズルブロックに対応するデータを除き、それ以外のノズルブロックに対応する測定値の中の最も小さい値を基準として、それに対応する反射光学的濃度の比率を計算する。より具体的には、図10においてパッチ[A]、パッチ[E]を除き、最も反射光学濃度が小さいものは、パッチ[B]とパッチ[C]である。従って、測定された各パッチ[A]〜[E]の各反射光学濃度を、パッチ[B]の反射光学濃度で除した値を各パッチのRODとする。なお、図10において、計算の基準とするパッチ[B]、パッチ[C]のレベルを破線で示した。
【0069】
上記のように示て得られたRODに対して、前記第1の実施形態と同様に補正値を計算する。すなわち、この第2の実施形態においても図11に示す変換カーブを用いて補正値αを算出する。本実施形態では、算出されるRODは、1.0より大きな場合もあり、前記変換カーブによって変換した値を四捨五入して、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2のいずれかの補正値に割り付ける。なお、RODが補正値0.8に対応するレベルより大きい場合には、全て補正値0.8に割り付け、また、RODが補正値1.2に対応するレベルより小さい場合には、全て補正値1.2に割り付ける。上記のようにして、決定された補正値の例を図18に示す。
【0070】
(出力γ補正テーブルの変更)
この第2の実施形態においても、上記補正値に応じた出力γ補正テーブルがRAMに格納されている。すなわち、図19に示されるような、補正値0.8、0.9、1.0、1.1、1.2に対応する出力γ補正カーブがテーブルとして格納されており、算出された補正値に応じて各補正テーブルが各ノズル毎に選択される。ここで、補正値が0.8の場合は、補正しない場合よりも記録濃度が20%薄くなり、また、補正値が、1.2の場合は、記録濃度が20%高くなる。
【0071】
このように、この第2の実施形態においては、前記記録ヘッドの両端部に位置するノズルブロックのノズル数を他のノズル数より少ない値に設定し、そのノズルにおける出力濃度を所定の値に設定するようになっているため、図15に示すように、記録媒体の搬送誤差に起因する濃度むら(スジむら)が発生する場合にも、その発生部分の濃度の読み取り及び補正によって、スジむらの発生を防止することができ、良好な品質の画像を得ることができる。
【0072】
(記録動作)
上記のように、ノズル特性に合わせて変更された、出力γ補正デーブルを用いて、入力記録データを処理して記録データを生成し、その記録データに基づき記録領域にて記録動作を行なう。
【0073】
なお、この第2の実施形態においても、パッチを形成するに要する記録走査回数は必要に応じて適宜設定可能であり、また、各ノズルブロックにおけるノズル数も変更可能である。この第2の実施形態においては、記録ヘッドの両端に位置するノズルブロックを2ノズルにて構成し、その他のノズルを4ノズルによって構成するものとしたが、各ノズルブロックの設定数は適宜変更可能であり、場合によっては両端のノズルブロックを単一のノズルによって構成するようにすることも考えられる。
【0074】
(その他)
なお、本発明は、特にインクジェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために利用されるエネルギとして熱エネルギを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、前記熱エネルギによりインクの状態変化を生起させる方式の記録ヘッド、記録装置において優れた効果をもたらすものである。かかる方式によれば記録の高密度化,高精細化が達成できるからである。
【0075】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書,同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は所謂オンデマンド型,コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長,収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書,同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことができる。
【0076】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口,液路,電気熱変換体の組合せ構成(直線状液流路または直角液流路)の他に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書,米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基いた構成としても本発明の効果は有効である。すなわち、記録ヘッドの形態がどのようなものであっても、本発明によれば記録を確実に効率よく行うことができるようになるからである。
【0077】
さらに、記録装置が記録できる記録媒体の最大幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドに対しても本発明は有効に適用できる。そのような記録ヘッドとしては、複数記録ヘッドの組合せによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個の記録ヘッドとしての構成のいずれでも良い。
【0078】
加えて、上例のようなシリアルタイプのものでも、装置本体に固定された記録ヘッド、あるいは装置本体に装着されることで装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、あるいは記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。
【0079】
また、本発明の記録装置の構成として、記録ヘッドの吐出回復手段、予備的な補助手段等を付加することは本発明の効果を一層安定できるので、好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧或は吸引手段、電気熱変換体或はこれとは別の加熱素子或はこれらの組み合わせを用いて加熱を行う予備加熱手段、記録とは別の吐出を行なう予備吐出手段を挙げることができる。
【0080】
また、搭載される記録ヘッドの種類ないし個数についても、例えば単色のインクに対応して1個のみが設けられたものの他、記録色や濃度を異にする複数のインクに対応して複数個数設けられるものであっても良い。すなわち、例えば記録装置の記録モードとしては黒色等の主流色のみの記録モードだけではなく、記録ヘッドを一体的に構成するか複数個の組み合わせによるかいずれでも良いが、異なる色の複色カラー、または混色によるフルカラーの各記録モードの少なくとも一つを備えた装置にも本発明は極めて有効である。
【0081】
さらに加えて、以上説明した本発明実施例においては、インクを液体として説明しているが、室温やそれ以下で固化するインクであって、室温で軟化もしくは液化するものを用いてもよく、あるいはインクジェット方式ではインク自体を30℃以上70℃以下の範囲内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように温度制御するものが一般的であるから、使用記録信号付与時にインクが液状をなすものを用いても良い。加えて、熱エネルギによる昇温を、インクの固形状態から液体状態への状態変化のエネルギとして使用せしめることで積極的に防止するため、またはインクの蒸発を防止するため、放置状態で固化し加熱によって液化するインクを用いても良い。いずれにしても熱エネルギの記録信号に応じた付与によってインクが液化し、液状インクが吐出されるものや、記録媒体に到達する時点ではすでに固化し始めるもの等のような、熱エネルギの付与によって初めて液化する性質のインクを使用する場合も本発明は適用可能である。このような場合のインクは、特開昭54−56847号公報あるいは特開昭60−71260号公報に記載されるような、多孔質シート凹部または貫通孔に液状又は固形物として保持された状態で、電気熱変換体に対して対向するような形態としても良い。本発明においては、上述した各インクに対して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0082】
さらに加えて、本発明インクジェット記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として用いられるものの他、リーダ等と組合せた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を採るもの等であっても良い。
【0083】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、前記記録ヘッドに設けられた複数のノズルからなるノズル列を複数のノズルブロックに分割すると共に、前記前記各ノズルブロックに対応する各パッチを同一ノズルブロック内のノズルのみを用い、それぞれ前記濃度センサによって光学的に濃度検出可能な寸法形状に記録するようにしたため、CCDなどのような高価なスキャナーを用いなくとも、安価かつ小型に構成し得る濃度センサを用いて記録ヘッドの出力特性を取得することができ、その出力特性に応じた出力濃度の補正を安価かつ容易に実現することができる。このため、本発明を適用することにより、出力特性設定機能を有する記録装置を構成する場合、その装置全体を安価かつ低コストに構成することができ、この種の記録装置に求められるパーソナルユース化にも十分に対応することができる。
【0084】
また、前記ノズルブロックを構成するノズル数を複数に設定することにより、従来のような1ライン毎にテストパターンの濃度を読み取る場合に比べて、高速に読み取り動作を行うことができ、出力特性の補正を短時間にて行うことができる。
【0085】
また、前記記録ヘッドの両端部に位置するノズルブロックのノズル数を他のノズル数より少ない値に設定し、そのノズルにおける出力濃度を所定の値に設定するようにすれば、記録媒体の搬送誤差によって生じる濃度むらの発生を防止することも可能となり、記録画像の品質を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したインクジェット記録装置の機構的構成の第1例を示す斜視図である。
【図2】本発明を適用するインクジェット記録装置の機構的構成の第2例を示す斜視図である。
【図3】ヘッドカートリッジの記録ヘッドの一部を模式的に示す説明斜視図である。
【図4】図1または図2に示した反射光学センサ30の構成を模式的に示す説明側面図である。
【図5】本発明の各実施形態における制御系回路の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の各実施形態において実行される濃度むら補正値の取得を行う処理の概略を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施形態における記録パターン及びその作成手順を説明するための模式図である。
【図8】ハーフトーン形成に好適なパターンを示す説明平面図である。
【図9】パッチの光学特性の測定を模式的に示す平面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態において光学測定の結果得られたODの一例を示す線図である。
【図11】本発明の第1の実施形態におけるRODの値とそれに対応する前記補正値の曲線を示す線図である。
【図12】本発明の第1の実施形態において設定された各ノズルに対応する補正値の一例を示す図である。
【図13】本発明の第1の実施形態に用いる出力γ補正テーブルの内容を示す線図である。
【図14】(a)は記録媒体の搬送誤差が存在しない場合の記録媒体に対する記録ヘッドの相対位置を示す図であり、(b)は同図(a)に示す場合において、記録位置と記録濃度との関係を示す線図である。
【図15】(a)は記録媒体の搬送誤差が存在する場合の記録媒体に対する記録ヘッドの相対位置を示す図であり、(b)は同図(a)に示す場合において、記録位置と記録濃度との関係を示す線図である。
【図16】本発明の第の実施形態におけるテストパターン及びその作成手順を説明するための模式図である。
【図17】本発明の第2の実施形態においてキャリッジに搭載された濃度センサにより検出された各パッチODを示す線図である。
【図18】本発明の第2実施形態において設定された各ノズルに対応する補正値の一例を示す図である。
【図19】本発明の第2の実施形態に用いる出力γ補正テーブルの内容を示す線図である。
【図20】入力画像データを画像処理して記録データを生成するための処理部の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1,41 ヘッドカートリッジ(記録部)
8 記録媒体
13 記録ヘッド
30 濃度センサ
101 CPU
(a)〜(d) ノズルブロック
[a]〜[e] ノズルブロック
(A)〜(H) パッチ
[A]〜[E] パッチ
Claims (9)
- 記録装置に搭載される記録部に設けられた複数のノズルの出力特性情報を得るため、濃度センサにより光学的に濃度検出されるテストパターンを記録媒体に記録するテストパターン記録方法であって、
前記記録部に設けられた複数のノズルからなるノズル列を複数のノズルブロックに分割し、前記複数のノズルブロックの中の少なくとも1つのノズルブロックを、他のノズルブロックとは異なる数のノズルを有するように設定する第1のステップと、
前記各ノズルブロックに対応するパッチを同一ノズルブロック内のノズルのみを用い、それぞれ前記濃度センサによって光学的に濃度検出可能な寸法形状に記録する第2のステップとを有し、
前記第2のステップは、1回の主走査方向への記録走査によって各ノズルブロックに対応する複数のパッチそれぞれの一部を記録媒体上に形成することと、前記複数のノズルブロックの中で最も少ないノズル数を有するノズルブロックの幅に対応する距離だけ記録媒体を副走査方向に移動させることとを、交互に複数回行うことにより前記パッチを形成し、
前記テストパターンは、複数の前記パッチにより構成されることを特徴とするテストパターン記録方法。 - 前記記録装置は、記録部を主走査方向に往復動させると共に、記録媒体を前記主走査方向と交叉する副走査方向へと移動させることによって記録媒体の所定の領域に記録を行なうよう構成され、
前記テストパターンは、記録部の往動時に前記各ノズルブロックに対応して形成される往動記録用パッチと、復動時に前記各ノズルブロックに対応して形成される復動記録用パッチとにより形成されることを特徴とする請求項1に記載のテストパターン記録方法。 - 前記記録装置は、記録部を主走査方向に往復動させると共に、記録媒体を前記主走査方向と交叉する副走査方向へと移動させることによって記録媒体の所定の領域に記録を行なうよう構成され、
前記テストパターンは記録部の往動時に前記各ノズルブロックに対応して記録される往動記録用パッチのみから形成されることを特徴とする請求項1に記載のテストパターン記録方法。 - 前記複数のノズルブロックの中の両端部に位置するノズルブロックのみが他のブロックより少数のノズルによって構成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のテストパターン記録方法。
- インクを吐出する複数のノズルの出力特性情報を得るため、濃度センサにより光学的に濃度検出されるテストパターンを記録媒体に記録する記録装置であって、
前記複数のノズルからなるノズル列を複数のブロックに分割し、前記複数のノズルブロックの中の少なくとも1つのノズルブロックを、他のノズルブロックとは異なる数のノズルを有するように設定する設定手段と、
各ブロックに対応するパッチを、同一ブロック内のノズルのみを用いて前記記録媒体に記録する記録部と、を有し、
前記記録部による主走査方向への1回の記録走査によって各ノズルブロックに対応する複数のパッチの一部を記録媒体上に形成することと、前記複数のノズルブロックの最小の幅の記録媒体の移動とを交互に複数回行うことにより前記複数のパッチを形成し、
前記テストパターンは、複数の前記パッチにより構成されることを特徴とする記録装置。 - 前記記録部は、前記ノズル列を主走査方向に往復動させると共に、記録媒体を前記主走査方向と交叉する副走査方向へと移動させることによって記録媒体の所定の領域に記録を行なうよう構成され、
前記記録媒体前記テストパターンは、前記ノズル列の往動時に前記各ノズルブロックに対応する往動記録用パッチを形成し、復動時に前記各ノズルブロックに対応する復動記録用パッチを形成することを特徴とする請求項5に記載の記録装置。 - 前記記録部は、前記ノズル列を主走査方向に往復動させると共に、記録媒体を前記主走査方向と交叉する副走査方向へと移動させることによって記録媒体の所定の領域に記録を行なうよう構成され、
前記テストパターンは前記ノズル列の往動時に前記各ノズルブロックに対応する往動記録用パッチのみにより形成されることを特徴とする請求項5に記載の記録装置。 - 前記複数のノズルブロックは、前記ノズル列の両端部に位置するノズルブロックのみが他のノズルブロックより少数のノズルによって形成されることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の記録装置。
- 記録手段は、インクに熱エネルギーを加えて気泡を発生させ、その気泡の発生エネルギーによってインクを吐出させるものであることを特徴とする請求項5ないし8のいずれか1項に記載の記録装置。
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