JP4576913B2 - 疲労特性および被削性に優れた機械構造用鋼材の製造方法 - Google Patents

疲労特性および被削性に優れた機械構造用鋼材の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4576913B2
JP4576913B2 JP2004210427A JP2004210427A JP4576913B2 JP 4576913 B2 JP4576913 B2 JP 4576913B2 JP 2004210427 A JP2004210427 A JP 2004210427A JP 2004210427 A JP2004210427 A JP 2004210427A JP 4576913 B2 JP4576913 B2 JP 4576913B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mass
less
steel
machinability
effect
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004210427A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005126817A (ja
Inventor
透 林
靖浩 大森
明博 松崎
高明 豊岡
克美 山田
伸隆 黒澤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2004210427A priority Critical patent/JP4576913B2/ja
Publication of JP2005126817A publication Critical patent/JP2005126817A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4576913B2 publication Critical patent/JP4576913B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Description

本発明は、表面に高周波焼入れによる硬化層をそなえる、自動車ドライブシャフト、インプットシャフト、アウトプットシャフト、クランクシャフト、等速ジョイントおよびハブなどに適用して好適な、焼入れ後の疲労特性に優れ、製品を製造する際の被削性にも優れた機械構造用鋼材の製造方法に関するものである
従来、自動車ドライブシャフトや等速ジョイントなどの機械構造用部品は、熱間圧延棒鋼に、熱間鍛造、さらには切削、冷間鍛造などを施して所定の形状に加工したのち、高周波焼入れ−焼戻しを行うことにより、機械構造用部材としての重要な特性であるねじり疲労強度、曲げ疲労強度、転動疲労強度およびすべり転動疲労強度等の疲労強度を確保しているのが一般的である。
他方、近年、環境問題から自動車用部材に対する軽量化の要求が高く、この観点から自動車用部品における疲労強度の一層の向上が要求されている。
ここに、疲労強度を向上させるためには、例えば高周波焼入れによる焼入れ深さを増加させることが考えられる。しかしながら、焼入れ深さを増加してもある深さで疲労強度は飽和する。
また、疲労強度の向上には、粒界強度の向上も有効であり、この観点からTiCを分散させることによって旧オーステナイト粒径を微細化する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
上記特許文献1に記載された技術では、高周波焼入れ加熱時に微細なTiCを多量に分散させることで、旧オーステナイト粒径の微細化を図るものであり、焼入れ前にTiCを溶体化しておく必要があり、熱間圧延工程で1100℃以上に加熱する工程を採用している。そのため、熱延時に加熱温度を高くする必要があり、生産性に劣るという問題があった。また、オーステナイト粒の粒微細化についても、限界があるため、近年の疲労強度に対する要求には十分に応えられないものであった。
さらに、特許文献2には、硬化層深さCDと高周波焼入れ軸部品の半径Rとの比(CD/R)を0.3〜0.7に制限した上で、このCD/Rと高周波焼入れ後の表面から1mmまでのオーステナイト結晶粒径γf、高周波焼入れままの(CD/R)=0.1までの平均ビッカース硬さHcで規定される値Aを、C量に応じて所定の範囲に制御することによって疲労強度を向上させた機械構造用軸部品が提案されている。
しかしながら、上記のCD/Rを制御したとしても回転曲げ疲労の向上には限界があり、近年の疲労強度に対する要求には十分に応えられないものであった。
特開2000−154819号公報(特許請求の範囲、段落〔0008〕) 特開平8−53714号公報(特許請求の範囲)
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたものであり、十分な疲労強度を有し、さらにはドライブシャフトや等速ジョイントなどに加工する際の切削加工性の確保を考慮した、被削性に優れる機械構造用鋼材を提供することを目的とする。
さて、発明者らは、高周波焼入れ後の疲労強度を効果的に向上させるべく、鋭意検討を行った。
通常、疲労強度は材料の強度が上昇するにつれて上昇するが、特に焼き入れ部の硬さがHv500以上の高強度材では粒界破壊または非金属介在物を起点とした疲労破壊が支配的となり、材料の強度を上昇させても疲労強度が上昇しない。
そこで、焼入れ部の粒界強度の向上および非金属介在物の存在状態について検討を行い、以下の知見を得た。
(1)Moは高周波焼入れ前にMo析出物として鋼中に析出し、このMo析出物が高周波焼き入れ時にオーステナイト粒界をピン止めする効果、あるいは固溶Moに起因したソリュートドラッグ効果により、結果として硬化層の旧オーステナイト粒径を微細化するのに有効に寄与する。
(2)高周波焼入れ条件(加熱温度および時間)を適正に制御することによって、硬化層粒径が顕著に微細化し、粒界強度が向上する。具体的には、加熱温度:800〜1000℃、より好ましくは800℃〜950℃で、加熱時間5秒以下とすることにより、旧オーステナイト粒径の微細化が可能である。
(3)高周波焼入れ前の組織を微細なベイナイトおよび/またはマルテンサイトを有するものとしておくことで、高周波焼入れの加熱時に、オーステナイト粒の核生成サイトが増加し、上記(2)との相乗効果で微細な旧オーステナイト粒の硬化層が得られる。
(4)上記のMoの作用を活用し、さらに、高周波焼入れ条件の適正化を行って硬化層の平均旧オーステナイト粒径を微細化、具体的には平均旧オーステナイト粒径:7μm以下とした場合には、硬化層の粒界強度の向上により回転曲げ疲労強度が向上するが、その場合には疲労破壊の起点が非金属介在物となる。そのため、さらなる回転曲げ疲労強度の向上には、非金属介在物の低減が有効となる。そして、非金属介在物を最大直径15μm以下に制御すれば、疲労破壊の起点が表面になり非常に高い疲労強度が得られる。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.C:0.3〜0.7mass%、
Si:0.30mass%以下、
Mn:0.2〜2.0mass%、
Al:0.005〜0.25mass%、
Ti:0.005〜0.1mass%、
Mo:0.05〜0.6mass%、
B:0.0003〜0.006mass%、
S:0.06mass%以下、
P:0.020mass%以下および
O:0.0030mass%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避不純物の組成になる素材の少なくとも一部分に高周波焼入れを少なくとも1回は施して機械構造用鋼材を製造するに当り、
前記高周波焼入れ前の素材に対して、800〜1000℃での総加工率が80%以上となる熱間加工工程と、該熱間加工工程後に700〜500℃の温度域を0.2℃/s以上の冷却速度で冷却する冷却工程とを施し、前記素材の高周波焼入れ前の鋼組織におけるベイナイト組織およびマルテンサイト組織のいずれか一方または両方の合計を10体積%以上に調整し、
前記高周波焼入れ時に、600〜800℃の昇温速度を300℃/s以上とし、800℃以上の滞留時間を5秒以下、到達温度を1000℃以下とすることを特徴とする疲労特性および被削性に優れた機械構造用鋼材の製造方法。
.上記において、さらに、前記冷却工程の前に700〜800℃未満の温度域で20%以上の加工を施すか、あるいは該冷却工程の後にA変態点以下の温度域で20%以上の加工を施す第2加工工程を追加することを特徴とする疲労特性および被削性に優れた機械構造用鋼材の製造方法。
.上記1または2において、前記素材が、さらに
Cr:2.5mass%以下、
Cu:1.0mass%以下、
Ni:3.5mass%以下、
Co:1.0mass%以下、
Nb:0.1mass%以下、
V:0.5mass%以下、
Ta:0.5mass%以下、
Hf:0.5mass%以下および
Sb:0.015mass%以下
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする、疲労特性および被削性に優れた機械構造用鋼材の製造方法。
.上記乃至のいずれかにおいて、前記素材が、さらに
W:1.0mass%以下、
Ca:0.005mass%以下、
Mg:0.005mass%以下、
Te:0.1mass%以下、
Se:0.1mass%以下、
Bi:0.5mass%以下、
Pb:0.5mass%以下、
Zr:0.01mass%以下および
REM:0.1mass%以下
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする、疲労特性および被削性に優れた機械構造用鋼材の製造方法。
かくして、本発明によれば、高周波焼入れ後には高い疲労強度を、優れた被削性と共に有する鋼材を安定して得ることができ、その結果、とりわけ自動車部品の軽量化の要求に対し偉効を奏する。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、鋼材の成分組成を上記範囲に限定した理由について説明する。
C:0.3〜0.7mass%
Cは、焼入れ性への影響が最も大きい元素であり、焼入硬化層の硬さを高くおよび深さを深めて強度の向上に有効に寄与する。しかしながら、含有量が0.3mass%に満たないと必要とされる強度を確保するために焼入れ硬化深さを飛躍的に高めねばならず、その際焼割れの発生が顕著となるため、0.3mass%以上で添加する。一方、0.7mass%を超えて含有させると、粒界強度が低下し、それに伴い疲労強度が低下し、また、切削性、冷間鍛造性および耐焼割れ性も低下する。このため、Cは、0.3〜0.7mass%の範囲に限定した。
Si:0.30mass%以下
Siは、焼入れ加熱時にオーステナイトの核生成サイト数を増加させると共に、オーステナイトの粒成長を抑制し、焼入れ硬化層の粒径を微細化する作用を有する。また、炭化物生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制する作用も有する。このため疲労強度の向上に有効な元素である。しかしながら、Si量の増加に伴い被削性には不利となるため、被削性を確保するために、Siは0.30mass%以下とする。
Mn:0.2〜2.0mass%
Mnは、焼入れ性を向上させ、焼入れ時の硬化深さを確保する上で不可欠の成分であり積極的に添加するが、含有量が0.2mass%未満ではその添加効果に乏しいため、0.2mass%以上とした。好ましくは0.3mass%以上である。一方、Mn量が2.0mass%を超えると、焼入れ後の残留オーステナイトが増加し、かえって表面硬度が低下し、ひいては疲労強度の低下をまねくため、Mnは2.0mass%以下とした。なお、Mnは含有量が多いと、母材の硬質化を招き、被削性に不利となるきらいがあるため、1.2mass%以下とするのが好適である。さらに好ましくは1.0mass%以下である。
Al:0.005〜0.25mass%
Alは、脱酸に有効な元素である。また、焼入れ加熱時におけるオーステナイト粒成長を抑制する作用も有し、焼入れ硬化層の粒径を微細化する上でも有用な元素である。そのため、0.005mass%以上含有させるものとした。しかしながら、0.25mass%を超えて含有させてもその効果は飽和し、むしろ成分コストの上昇を招く不利が生じるので、0.25mass%以下に限定した。
Ti:0.005〜0.1mass%
Tiは、不可避的不純物として混入するNと結合することで、BがBNとなってBの焼入れ性向上効果が焼失するのを防止し、Bの焼入れ性向上効果を十分に発揮させる作用を有する。この効果を得るためには、少なくとも0.005mass%の含有を必要とするが、0.1mass%を超えて含有されるとTiNが多量に形成される結果、これが疲労破壊の起点となって回転曲げ疲労強度の著しい低下を招くので、Tiは0.005〜0.1mass%の範囲に限定した。
Mo:0.05〜0.6mass%
Moは、本発明において非常に重要な元素である。すなわち、Moは、焼入れ加熱時におけるオーステナイト粒径を微細化し、焼入れ硬化層の粒径を細粒化する作用がある。特にこの効果は、高周波焼入れ時の加熱温度を 800〜1000℃、より好ましくは 800〜950 ℃とすることにより、一層顕著となる。さらに、焼入れ性の向上に有用な元素であるため、焼入れ性を調整するために用いられる。加えて、Moは、炭化物の生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を有効に阻止する元素でもある。
このように、Moは、本発明において非常に重要な元素であり、含有量が0.05mass%に満たないと、硬化層全厚にわたって旧オーステナイト粒径を7μm 以下の微細粒とすることが難しく、また、旧オーステナイト粒径が微細となったとしても、Moを0.05mass%以上で添加した程の疲労強度の向上効果は得られない。一方、0.6mass%を超えると、被削性が劣化するため、上限は0.6mass%とした。さらに好ましくは 0.2〜0.4 mass%の範囲である。
なお、発明者等の検討によれば、Moによる旧オーステナイト粒の微細化効果の可能性として、固溶原子による引き摺り効果(ソリュートドラッグ効果:Solute Drug Effect)や析出物によるピンニング効果等が考えられている。両効果あるいはその他の効果がそれぞれどの程度効いているかは、現時点では必ずしも明確ではないが、少なくともピンニング効果が発現する場合があることを確認している。詳細は後述する。
B:0.0003〜0.006mass%
Bは、微量の添加によって焼入れ性を向上させ、焼入れ時の焼入れ深さを高めることにより回転曲げ疲労強度を向上させる効果がある。さらにBは、粒界に優先的に偏析して、粒界に偏析するPの濃度を低減し、粒界強度を向上させ、もって回転曲げ疲労強度を向上させる作用もある。
このため、本発明では、Bを積極的に添加するが、含有量が0.0003mass%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.006mass%を超えて含有させるとその効果は飽和し、むしろ成分コストの上昇を招くため、Bは0.0003〜0.006mass%の範囲に限定した。好ましくは0.0005〜0.004mass%の範囲である。
S:0.06mass%以下
Sは、鋼中でMnSを形成し、切削性を向上させる有用元素であるが、0.06mass%を超えて含有させると、粒界に偏析して粒界強度を低下させるため、0.06mass%以下に制限した。
P:0.020mass%以下
Pは、オーステナイトの粒界に偏析し、粒界強度を低下させることにより、回転曲げ疲労強度を低下させる。また、焼割れを助長する弊害もある。従って、Pの含有は極力低減することが望ましいが、0.020mass%までは許容される。
O:0.0030mass%以下
Oは、非金属介在物として鋼中に存在し、これが疲労破壊の起点となって回転曲げ疲労強度を低下させる作用を有する。本発明の鋼材では、後述するように硬化層の旧オーステナイト粒径を微細化し、硬化層の粒界強度を向上させて疲労強度を向上させている。しかしながら、硬化層の粒界強度が上昇すると、疲労破壊の起点が非金属介在物となる傾向になる。そこで、本発明ではO含有量を低減し、非金属介在物の粒径を微細化することで、疲労強度の向上をさせる。この意味で、Oの上限は0.0030mass%とする。なお、好ましいO量は0.0010mass%以下、さらに好ましいO含有量は0.0008mass%以下である。
以上、基本成分について説明したが、本発明ではその他にも、以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Cr:2.5mass%以下
Crは、焼入れ性の向上に有効であり、硬化深さを確保する上で有用な元素であるので添加してもよい。しかし、過度に含有されると炭化物を安定化させて残留炭化物の生成を助長し、粒界強度を低下させて疲労強度を劣化させる。従って、Crの含有は極力低減することが望ましいが、2.5mass%までは許容できる。好ましくは1.5mass%以下である。なお、焼入れ性の向上効果を発現させるためには、0.03mass%以上含有させることが好ましい。
Cu:1.0mass%以下
Cuは、焼入れ性の向上に有効であり、またフェライト中に固溶し、この固溶強化によって、疲労強度を向上させる。また炭化物の生成を抑制することにより、炭化物による粒界強度の低下を抑制し、疲労強度を向上させる。しかしながら、含有量が1.0mass%を超えると熱間加工時に割れが発生するため、1.0mass%以下の添加とする。なお好ましくは0.5mass%以下である。なお、0.03mass%未満の添加では焼入れ性の向上効果および粒界強度の低下抑制効果が小さいので、0.03mass%以上含有させることが望ましい。好ましくは0.1〜1.0mass%である。
Ni:3.5mass%以下
Niは、焼入れ性を向上させる元素であるので、焼入れ性を調整する場合に用いる。また、炭化物の生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制して、疲労強度を向上させる元素でもある。しかしながら、Niは極めて高価な元素であり、3.5mass%を超えて添加すると鋼材のコストが上昇するので、3.5mass%以下の添加とする。なお、0.05mass%未満の添加では焼入れ性の向上効果および粒界強度の低下抑制効果が小さいので、0.05mass%以上含有させることが望ましい。好ましくは0.1〜1.0mass%である。
Co:1.0mass%以下
Coは、炭化物の生成を抑制して、炭化物による粒界強度の低下を抑制し、疲労強度を向上させる元素である。しかしながら、Coは極めて高価な元素であり、1.0mass%を超えて添加すると鋼材のコストが上昇するので、1.0mass%以下の添加とする。なお、0.01mass%未満の添加では、粒界強度の低下抑制効果が小さいので、0.01mass%以上添加することが望ましい。好ましくは0.02〜0.5mass%である。
Nb:0.1mass%以下
Nbは、焼入れ性の向上効果があるだけでなく、鋼中でC,Nと結合し析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素でもあり、これらの効果によって疲労強度を向上させる。しかしながら、0.1mass%を超えて含有させても効果は飽和するので、0.1mass%を上限とする。なお、0.005mass%未満の添加では、析出強化作用および焼もどし軟化抵抗性の向上効果が小さいため、0.005mass%以上添加することが望ましい。好ましくは0.01〜0.05mass%である。
V:0.5mass%以下
Vは、鋼中でC,Nと結合し析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素でもあり、これらの効果によって疲労強度を向上させる。しかしながら、0.5mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するので、0.5mass%以下とする。なお、0.01mass%未満の添加では、疲労強度の向上効果が小さいので、0.01mass%以上添加することが望ましい。好ましくは0.03〜0.3mass%である。
Ta:0.5mass%以下
Taは、ミクロ組織変化の遅延に対して効果があり、疲労強度、特に転動疲労の劣化を防止する効果があるので、添加してもよい。しかし、その含有量が0.5mass%を超えて含有量を増加させても、それ以上強度向上に寄与しないので、0.5mass%以下とする。なお、疲労強度の向上作用を発現させるためには、0.02mass%以上とすることが好ましい。
Hf:0.5mass%以下
Hfは、ミクロ組織変化の遅延に対して効果があり、疲労強度、特に転動疲労の劣化を防止する効果があるので、添加してもよい。しかし、その含有量が0.5mass%を超えて含有量を増加させても、それ以上強度向上に寄与しないので、0.5mass%以下とする。なお、疲労強度の向上作用を発現させるためには、0.02mass%以上とすることが好ましい。
Sb:0.015mass%以下
Sbは、ミクロ組織変化の遅延に対して効果があり、疲労強度、特に転動疲労の劣化を防止する効果があるので、添加してもよい。しかし、その含有量が0.015mass%を超えて含有量を増加させると靭性が劣化するので、0.015mass%以下、好ましくは0.010mass%以下とする。なお、疲労強度の向上作用を発現させるためには、0.005mass%以上とすることが好ましい。
W:1.0mass%以下
Wは、脆化作用により被削性を向上させる元素である。しかしながら、1.0mass%を超えて添加しても、効果が飽和する上、コストが上昇し、経済的に不利となるため、1.0mass%以下で含有させることが好ましい。なお、被削性の改善のためには、Wは0.005mass%以上含有させることが好ましい。
Ca:0.005mass%以下
Caは、MnSと共に硫化物を形成し、これがチップブレーカーとして作用することにより被削性を改善するので必要に応じて添加することができる。しかしながら、0.005mass%を超えて含有させても、効果が飽和する上、成分コストの上昇を招くので、0.005mass%以下とした。なお、0.0001mass%未満では、含有されていても被削性改善効果が小さいので、0.0001mass%以上含有させることが好ましい。
Mg:0.005mass%以下
Mgは、脱酸元素であるだけでなく、応力集中源となって被削性を改善する効果があるので、必要に応じて添加することができる。しかしながら、過剰に添加すると効果が飽和する上、成分コストが上昇するため、0.005mass%以下とした。なお、0.0001mass%未満では、含有されていても被削性改善効果が小さいので、0.0001mass%以上含有させることが好ましい。
Te:0.1mass%以下
Se:0.1mass%以下
SeおよびTeはそれぞれ、Mnと結合してMnSeおよびMnTeを形成し、これがチップブレーカーとして作用することにより被削性を改善する。しかしながら、含有量が0.1 mass%を超えると、効果が飽和する上、成分コストの上昇を招くので、いずれも0.1 mass%以下で含有させるものとした。また、被削性の改善のためには、Seを 0.003mass%以上およびTeを0.003mass%以上で含有させることが好ましい。
Bi:0.5mass%以下
Biは、切削時の溶融、潤滑および脆化作用により、被削性を向上させるので、この目的で添加することができる。しかしながら、0.5mass%を超えて添加しても効果が飽和するばかりか、成分コストが上昇するため、0.5mass%以下とした。なお、0.01mass%未満では、含有されていても被削性改善効果が小さいので、0.01mass%以上含有させることが好ましい。
Pb:0.5mass%以下
Pbは、切削時の溶融、潤滑および脆化作用により、被削性を向上させるので、この目的で添加することができる。しかしながら、0.5mass%を超えて添加しても効果が飽和するばかりか、成分コストが上昇するため、0.5mass%以下とした。なお、0.01mass%未満では、含有されていても被削性改善効果が小さいので、0.01mass%以上含有させることが好ましい。
Zr:0.01mass%以下
Zrは、MnSと共に硫化物を形成し、これがチップブレーカーとして作用することにより被削性を改善する。しかしながら、0.01mass%を超えて含有させても、効果が飽和する上成分コストの上昇を招くので、0.01mass%以下とした。なお、0.003mass%未満では、含有されていても被削性改善効果が小さいので、0.003mass%以上含有させることが好ましい。
REM:0.1mass%以下
REMは、MnSと共に硫化物を形成し、これがチップブレーカーとして作用することにより被削性を改善する。しかしながら、REMを0.1mass%を超えて含有させても、効果が飽和する上、成分コストの上昇を招くので、それぞれ上記の範囲で含有させるものとした。なお、被削性の改善のためには、REM は0.0001mass%以上含有させることが好ましい。
以上、好適成分組成範囲について説明したが、本発明では、成分組成を上記の範囲に限定するだけでは不十分で、鋼材の少なくとも一部表面に施す、高周波焼入れ後の硬化層の旧オーステナイト粒径を調整することも重要である。
すなわち、高周波焼入れ後の硬化層に関し、その平均旧オーステナイト粒径を7μm以下とする必要がある。というのは、焼入れ硬化層の平均旧オーステナイト粒径が7μmを超えると、十分な粒界強度が得られず、満足いくほどの疲労強度の向上が望めないからである。なお、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。
ここに、焼入れ硬化層の旧オーステナイト粒径の測定は、次のようにして行う。
高周波焼入れ後の本発明の鋼材では、高周波焼入れした部分の鋼材最表面は面積率で100%のマルテンサイト組織を有する。そして、表面から内部にいくに従い、ある深さまでは100%マルテンサイト組織の領域が続くが、ある深さから急激にマルテンサイト組織の面積率が減少する。
本発明では、高周波焼入れした部分について、鋼材表面から、マルテンサイト組織の面積率が98%に減少するまでの深さ領域を硬化層と定義する。
そして、この硬化層について、表面から硬化層の1/5位置、1/2位置、4/5位置それぞれの位置について同視野数の組織観察を行い、それぞれの平均旧オーステナイト粒径を測定し、これら各位置での平均旧オーステナイト粒径の平均値が7μm以下である場合に、硬化層の平均旧オーステナイト粒径が7μm以下であるとする。
なお、平均旧オーステナイト粒径の測定は、光学顕微鏡により、400倍(1視野の面積:0.25mm×0.225mm)から1000倍(1視野の面積:0.10mm×0.09mm)で、各位置毎に5視野観察し、画像解析装置により平均粒径を測定することにより行う。
また、本発明において、高周波焼入れによる硬化層厚みは2mm以上とすることが好適である。というのは、所望特性が転動疲労寿命のような極表層付近の組織のみに依存するような場合には、硬化層厚みが1mm程度でもそれなりの効果は得られるが、曲げ疲労強度やねじり疲労強度を問題とする場合には、硬化層厚みは厚いほど好ましいからである。従って、より好ましい硬化層厚みは2.5mm以上、さらに好ましくは3mm以上である。
さらに、本発明では、鋼材中の酸化物系非金属介在物の最大直径が15μm以下であることが重要である。この酸化物系非金属介在物を微細化することにより、酸化物系非金属介在物が疲労破壊の起点となる確率を減少させることができる。そして、その最大直径が15μm以下であれば疲労破壊の起点を表面とすることができ、表面は高周波焼入れにより粒界強度の高い硬化層となっているから、結果として回転曲げ疲労強度の飛躍的な向上が図れるのである。酸化物系非金属介在物の最大直径は、好ましくは12μm以下、さらに好ましくは8μm以下である。ここで、酸化物系非金属介在物の最大直径は、光学顕微鏡により、400倍で800視野の観察を行い、各視野での酸化物系介在物の最大径をGumble確率紙上にまとめ、50000mm2相当の極値を算出し、鋼中に存在する酸化物系非金属介在物の最大粒径とする。なお、酸化物系非金属介在物の最大直径を15μm以下とするには、鋼中のOの低減により達成でき、前述のとおり、O量を0.0030mass%以下とすればよい。
さらに発明者等は、Moを含有させた鋼において、高周波焼入れによる硬化層の平均旧オーステナイト粒をより微細化し疲労強度を向上できるのは、微細なMo系析出物が高密度に分散していて、前述したピンニング効果が大きくなるのではないかと推定した。
そこで後述する実施例の表1における鋼1の成分に従う鋼材を圧延後、850℃で80%、750℃で25%の鍛造を行い空冷(冷却速度:0.8℃/s)した高周波焼入れ前の素材から透過電子顕微鏡観察用の試料を採取し、微細析出物の状況について観察を実施した。透過電子顕微鏡観察用の試料は、素材中央部より平板試料を採取し、過塩素酸―メタノール系の電解液を用いた電解研磨により薄膜化して準備した。観察領域が薄すぎると析出粒子の脱落頻度が高まり、厚すぎると析出粒子の認識が困難になるため、観察領域の厚みが50〜100nmの範囲となるようにした。ここで、試料厚みは電子エネルギー損失スペクトルから見積もった。図1に実際に得られた透過電子顕微鏡像の一例を示す。この視野の試料厚み約0.1μmを考慮すると、直径5〜10nm程度の微細な析出物が1μm3当たり約3000個の高密度で分散していることが判明した。
高周波焼入れ時、オーステナイトはベイナイトあるいはマルテンサイトの粒界、パケット境界、炭化物などから核生成し、粒成長する。上記した微細な析出物はオーステナイト粒界面が析出物に到達しその向こう側へ行くときに、風船(粒界面)を指(析出物)で押し込んだときのように粒界面の移動を抑制する。このような界面移動抑制をピンニングという。ピンニング力は全析出量が一定であれば析出物が小さいほど大きく、また析出物径が一定であれば析出物の量が多いほど強くなる。
本発明における高周波加熱時には、図1に示すような微細析出物によってピンニングが生じ、平均旧オーステナイト粒径の微細化がより促進されていると推定される。さらに図1に例示した微細析出物は、1000℃以下の高周波焼入れ処理後の素材においても存在することを確認しており、高温かつ短時間の熱処理に対して溶解しにくいことが高周波焼入れ時のオーステナイト粒成長抑制に有効に作用しているものと考えられる。
次に、発明者らは、高周波加熱処理時の平均旧オーステナイト粒径に及ぼす析出分散状態の影響を見るため、Moの析出体積率を変動させたモデル計算を実施した。すなわち、Moの他の析出相への固溶が微量であることを仮定すると、Mo系微細析出物の析出体積率:fと平均粒子径:dが決まれば、均一分散析出の場合の1μm3当たりのMo系微細析出物数(析出密度)が試算される。平均旧オーステナイト粒径が微細析出のピンニングによって支配されるならば、そのサイズは析出密度に反比例する。そこで、図1における析出物の粒径及びその密度が平均旧オーステナイト粒径2μmを達成することを考慮し、ピンニング効果を発現する粒径及び析出物密度を検討した。その結果、平均旧オーステナイト粒径制御に直接的に効果のある1μm3当たりの析出物数は析出物の体積率によって変動するものの、例えば、体積率が0.2〜0.4%程度の場合に、十分なピンニング効果を発現させ、旧オーステナイト粒の微細化を実現できる好適範囲は以下の通りであることがわかった。
すなわち、旧オーステナイト粒のより一層の微細化を達成するには、平均粒径20nm以下の微細析出粒子を500個以上確保することが好ましい。さらには、平均粒径15nm以下の微細析出粒子を1000個以上確保すること、さらに好適には平均粒径12nm以下の析出粒子を2000個以上確保することが望ましい。
さらに、この析出物を母材から抽出して、残渣をX線回折法により同定したところ、主としてhcp型の(Mo,Ti)2(C,N)であると推定された。さらに、透過電子顕微鏡に付属のEDX分析の結果から、MoとTiの原子比は約8:2であり、Moが主成分であることも判明した。なお、ここでいう析出物には完全な(Mo,Ti)2(C,N)の化学量論組成から外れたものも含まれる。何れにしてもMoとTiを含んだ複合炭窒化物と考えられる。
(Mo,Ti)2(C,N)析出物は、Cuなどの析出物と異なり、比較的硬いことが知られており、粒界面通過を阻止する能力が高いと考えられる。また、成分構成比はMoがTiに対して圧倒的に多いことおよびMoが拡散しにくい元素であることを勘案すれば、このような(Mo,Ti)2(C,N)は(Mo,Ti)2(C,N)の析出温度である600から700℃程度の温度範囲に短時間保持しても、急速に大きくなるとは考えられない。従って、(Mo,Ti)2(C,N)の析出量を増加し分布密度を高めるために、後述のベイナイトおよび/またはマルテンサイトの組織分率を得られる範囲内で、この温度範囲で短時間の等温保持することにより、既に析出している(Mo,Ti)2(C,N)の粗大化を最小限に抑制しつつ、新たな(Mo,Ti)2(C,N)の析出を期待できる。
次に、本発明の製造方法について説明する。
上記した所定の成分組成に調整した鋼材を、棒鋼圧延または熱間鍛造などの熱間加工後、必要に応じて冷間圧延や冷間鍛造を施し、次いで切削加工を施したのち、高周波焼入れを施して鋼材製品とする。
この一連の工程において、まず、熱間加工を800〜1000℃の温度域の総加工率を80%以上として行った後、700〜500℃の温度域を0.2℃/s以上の速度で冷却し、さらに以下に詳述する高周波焼入れ条件を採用することにより、旧オーステナイト粒の平均粒径を7μm以下とすることが可能となる。
以下、各規制について詳しく説明する。
[加工条件]
熱間加工の際の800〜1000℃での総加工率を80%以上とし、その後700〜500℃の温度域を0.2℃/s以上の速度で冷却する。この条件により、焼入れ前の組織を均一微細なベイナイトおよび/またはマルテンサイト組織とすることができ、その後の高周波焼入の加熱時にオーステナイト粒が微細化する。
ベイナイト並びにマルテンサイトは、フェライト−パーライト組織に比べて炭化物が微細に分散した組織であるため、高周波焼入れ加熱時にオーステナイトの核生成サイトであるフェライト/炭化物の界面の面積が増えて、生成したオーステナイトが微細化する。このため、ベイナイトとマルテンサイトとの合計の組織分率は10体積%以上、好ましくは20体積%以上が必要であるが、700〜500℃の温度域の冷却速度が0.2℃/s未満では、ベイナイトとマルテンサイトとの合計の組織分率を10体積%以上とすることができず、より好ましくは、冷却速度を0.5℃/s以上とする。なお、ベイナイトとマルテンサイトの体積分率の比はおおむねベイナイト:マルテンサイト=100:0〜40:60が好ましい。焼入れ前の組織は、高周波焼入れ後による硬化層のマルテンサイトの旧オーステナイト粒径微細化のためにはマルテンサイト組織が好適である。しかし、マルテンサイトは硬質であるため母相に多量に含まれると被削性が低下する。従って、ベイナイトとマルテンサイトの分率比はベイナイト:マルテンサイト=100:0〜40:60が好ましい。
さらに、高周波焼入れ前に、800℃未満の温度域で20%以上の加工(以下、第2加工工程という)を施すことで、高周波焼入れ前のベイナイトおよび/またはマルテンサイト組織をさらに微細にでき、高周波焼入れ後の旧オーステナイト粒のさらなる微細化が達成できるので、第2加工工程を付け加えることが好ましい。800℃未満の温度域での加工は、熱間加工工程で、前記冷却速度の冷却の前(700〜800℃の温度域)で行ってもよいし、冷却後に別途冷間加工を施すか、あるいは、A1変態点以下の温度で再加熱して温間加工を施しても良い。800℃以下での加工は、30%以上とする事が好ましい。なお、加工法としては、例えば、冷間鍛造、冷間しごき、転造加工、ショット等が挙げられる。800℃未満で加工を施すことにより、高周波焼入れ前のベイナイトあるいはマルテンサイト組織が微細化し、結果として高周波焼入れ後に得られる硬化層における旧オーステナイト粒の平均粒径がより微細なものとなり、これにより、疲労強度がより向上する。
[高周波焼入条件]
加熱温度を800〜1000℃とし、600〜800℃を300℃/s以上の昇温速度で昇温する。加熱温度が800℃未満の場合、オーステナイト組織の生成が不充分となり、硬化層を得ることができない。一方、加熱時の到達温度が1000℃を超える場合と600〜800℃の昇温速度が300℃/s未満の場合にはオーステナイト粒の成長が促進されると同時に粒の大きさのばらつきが大きくなり、疲労強度の低下を招く。すなわち、最終的に得られる硬化層の旧オーステナイト粒径は、焼入れ加熱時にオーステナイト域でいかに粒成長を防止するかが重要となる。前組織を上述のように微細なベイナイトあるいはマルテンサイトを有する組織としておくことで、オーステナイトへの逆変態の核生成サイトは多数あるので、多数生成したオーステナイト粒が成長しないうちに冷却を開始することで、焼入れ組織の平均旧オーステナイト粒径を微細化できる。オーステナイト粒の成長は高温であればあるほど、またオーステナイト域における保持時間が長ければ長いほど進行するので、粒成長を防止して、最終的に平均粒径が7μm以下の旧オーステナイト粒を得るためには、加熱時の到達温度は1000℃以下、600〜800℃の昇温速度は300℃/s以上とする。
なお、加熱温度は800〜950℃とすることが好ましく、600〜800℃の昇温速度は700℃/s以上であることが好ましい。より好ましくは1000℃/s以上である。
また、高周波加熱時において800℃以上の滞留時間が長くなるとオーステナイト粒が粒成長して、最終の旧オーステナイト粒径が7μm超にまで大きくなる傾向にあるので、800℃以上の滞留時間は5秒以下とすることが好ましい。より好ましい加熱時間は3秒以下である。
なお、上記の効果は、Moを本発明範囲で含有させた鋼において、より顕著に発現する。すなわち、図2に、Mo添加鋼とMo無添加鋼について、高周波焼入れ時の加熱温度と硬化層の旧オーステナイト粒径との関係について調べた結果を示す。
ここで、図2に示した結果は以下のようにして得られたものである。
すなわち、下記(a)または(b)に示す成分組成の鋼素材を150kg真空溶解炉にて溶製し、150mm角に熱間鍛造後、ダミービレットを製造し、850℃で80%の熱間加工を行った後、700℃〜500℃の温度範囲を0.7℃/sで冷却し、棒鋼圧延材を製造した。さらに、一部の棒鋼には、第2加工として、前記冷却の前に750℃で20%の加工、あるいは、前記冷却の後に冷間で20%の加工を施した。
(a)C:0.48mass%、Si:0.2mass%、Mn:0.78mass%、P:0.011mass%、S:0.019mass%、Al:0.024mass%、Ti:0.017mass%、B:0.0013mass%、N:0.0043mass%、O:0.0015mass%、残部Feおよび不可避不純物。
(b)C:0.48mass%、Si:0.2mass%、Mn:0.79mass%、P:0.011mass%、S:0.021mass%、Al:0.024mass%、N:0.0039mass%、Mo:0.45mass%、Ti:0.021mass%、B:0.0024mass%、O:0.0015mass%、残部Feおよび不可避不純物。
得られた棒鋼から、回転曲げ疲労試験片を採取し、周波数:10〜200kHz、加熱温度870〜1050℃として高周波焼入れを施し、さらに、加熱炉を用いて170℃×30分の条件で焼もどしを行い供試材とした。高周波焼入れ条件は昇温速度を300℃/s以上、800℃以上での滞留時間は1秒以下となるように調整した。得られた供試材について、回転曲げ疲労試験を行い、1×108回で破断しない限界応力を疲労強度として評価した。また、高周波焼入れによる硬化層の平均旧オーステナイト粒径を前述の方法により測定した。
図2に示したとおり、Mo添加鋼およびMo無添加鋼いずれにおいても、高周波焼入れ時の加熱温度を低下させることで硬化層の旧オーステナイト粒径を小さくできるが、Mo添加鋼においては、加熱時の到達温度を1000℃以下好ましくは 950℃以下とすることにより、特に顕著に硬化層粒径の微細化が達成される。
この現象は、明確にはわかっていないが、上記したMoとTiとを含む炭窒化物との関係で以下のように推定されている。すなわち、Mo添加鋼では前述のMo系微細炭窒化物が析出し、強力なピンニング力によりオーステナイト粒を微細化するためMo無添加鋼に対して微細になると考えられる。しかし、たとえ短時間の高周波焼入れであっても加熱時の到達温度が1000℃を大きく超えると微細な(Mo,Ti)2(C,N)は溶解してしまい、ピンニングの効果が薄れてしまうと考えられる。
なお、図2から、Mo添加鋼において、第2加工工程(冷間加工あるいは700〜800℃未満での加工)を追加した場合のほうが、旧オーステナイト粒径をより微細化できることがわかる。
また、図3には、硬化層の旧オーステナイト粒径と回転曲げ疲労特性の関係示す。Mo添加鋼では、旧オーステナイト粒径が7μm以下の領域においても粒径が小さくなるとともに、疲労特性が向上することがわかる。これに対し、Mo無添加鋼では、粒径が7μm以下になると、それ以上粒径を小さくしても疲労強度が向上していないことがわかる。これは、Mo無添加鋼では、Mo添加鋼に比較して硬化層の硬度が低いため、旧オーステナイト粒径がある程度以上微細化してしまうと、疲労破壊が粒内破壊となり、旧オーステナイト粒径に影響されなくなるためと考えられる。
表1に示す成分組成になる鋼素材を100kgづつ溶製し、表2に示す熱間加工条件に従って60mmφの棒状体に鍛造した。ここで熱間加工の仕上温度は700℃以上とした。得られた棒状体を被削性試験に供するとともに、JIS Z 2274に準拠した1号試験片(平行部径8mmφ)を採取した。なお、表2のNo.10の条件以外は高周波焼入は2段焼入とし、1段目は最高加熱温度1050℃の焼入を行っている。
被削性試験は、超工具(P10)を用い、切削速度:200m/min、送り:0.25mm/rev、切込み:2.0mmおよび無潤滑の条件で外周旋削試験により行い、工具寿命で判定した。なお、工具寿命の判定は超硬工具逃げ面摩擦が0.2mmに達するまでの総切削時間で評価した。
回転曲げ疲労試験片には、周波数:200kHz、出力120kWで、表2に示す昇温速度、加熱温度および滞留時間の各条件にて高周波焼入れを行った後、170℃で30minの焼戻しを行ったものに対し、回転曲げ疲労試験を実施した。そして、1×108回で破断しない限界応力を疲労強度として評価した。
また、高周波焼入れを行った回転曲げ疲労試験片について、組織観察を行い、硬化層の旧オーステナイト粒径、硬化層の厚さ、および酸化物系介在物の最大径を測定した。ここで、旧オーステナイト粒径は、前述したとおりの方法で平均粒径を測定した。酸化物系介在物の最大径の測定方法についても前述のとおりである。また、硬化層の厚さは、試料表面からマルテンサイト面積率が98%に減少する深さまでとした。
表1および表2より、成分組成、硬化層粒径、および酸化物系介在物の最大径のいずれもが本発明の範囲を満たす場合には、回転曲げ疲労強度および被削性に優れていることがわかる。
これに対し、成分組成、硬化層粒径、および酸化物系介在物の最大径のいずれかが本発明の条件を満足しない比較例は、回転曲げ疲労強度あるいは被削性が劣っている。
本発明によって得られる、優れた疲労強度、被削性を兼備した機械構造用鋼材は、自動車ドライブシャフトや等速ジョイントなどは勿論、その他の機械構造用部品にも良好に利用し得る。
γ粒を超微細化するのに有効な微細析出物(Mo系析出物)の透過型電子顕微鏡写真である。 Mo添加鋼とMo無添加鋼について、高周波焼入れ時の加熱温度が硬化層の旧オーステナイト粒径に及ぼす影響を示したグラフである。 Mo添加鋼とMo無添加鋼について、高周波焼入れによる硬化層の平均旧オーステナイト粒径が疲労強度に及ぼす影響を示したグラフである。

Claims (4)

  1. C:0.3〜0.7mass%、
    Si:0.30mass%以下、
    Mn:0.2〜2.0mass%、
    Al:0.005〜0.25mass%、
    Ti:0.005〜0.1mass%、
    Mo:0.05〜0.6mass%、
    B:0.0003〜0.006mass%、
    S:0.06mass%以下、
    P:0.020mass%以下および
    O:0.0030mass%以下
    を含有し、残部はFeおよび不可避不純物の組成になる素材の少なくとも一部分に高周波焼入れを少なくとも1回は施して機械構造用鋼材を製造するに当り、
    前記高周波焼入れ前の素材に対して、800〜1000℃での総加工率が80%以上となる熱間加工工程と、該熱間加工工程後に700〜500℃の温度域を0.2℃/s以上の冷却速度で冷却する冷却工程とを施し、前記素材の高周波焼入れ前の鋼組織におけるベイナイト組織およびマルテンサイト組織のいずれか一方または両方の合計を10体積%以上に調整し、
    前記高周波焼入れ時に、600〜800℃の昇温速度を300℃/s以上とし、800℃以上の滞留時間を5秒以下、到達温度を1000℃以下とすることを特徴とする疲労特性および被削性に優れた機械構造用鋼材の製造方法。
  2. 請求項において、さらに、前記冷却工程の前に700〜800℃未満の温度域で20%以上の加工を施すか、あるいは該冷却工程の後にA変態点以下の温度域で20%以上の加工を施す第2加工工程を追加することを特徴とする疲労特性および被削性に優れた機械構造用鋼材の製造方法。
  3. 請求項1または2のいずれかにおいて、前記素材が、さらに
    Cr:2.5mass%以下、
    Cu:1.0mass%以下、
    Ni:3.5mass%以下、
    Co:1.0mass%以下、
    Nb:0.1mass%以下、
    V:0.5mass%以下、
    Ta:0.5mass%以下、
    Hf:0.5mass%以下および
    Sb:0.015mass%以下
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする、疲労特性および被削性に優れた機械構造用鋼材の製造方法。
  4. 請求項乃至のいずれかにおいて、前記素材が、さらに
    W:1.0mass%以下、
    Ca:0.005mass%以下、
    Mg:0.005mass%以下、
    Te:0.1mass%以下、
    Se:0.1mass%以下、
    Bi:0.5mass%以下、
    Pb:0.5mass%以下、
    Zr:0.01mass%以下および
    REM:0.1mass%以下
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする、疲労特性および被削性に優れた機械構造用鋼材の製造方法。
JP2004210427A 2003-09-29 2004-07-16 疲労特性および被削性に優れた機械構造用鋼材の製造方法 Expired - Fee Related JP4576913B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004210427A JP4576913B2 (ja) 2003-09-29 2004-07-16 疲労特性および被削性に優れた機械構造用鋼材の製造方法

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003338637 2003-09-29
JP2004210427A JP4576913B2 (ja) 2003-09-29 2004-07-16 疲労特性および被削性に優れた機械構造用鋼材の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005126817A JP2005126817A (ja) 2005-05-19
JP4576913B2 true JP4576913B2 (ja) 2010-11-10

Family

ID=34655534

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004210427A Expired - Fee Related JP4576913B2 (ja) 2003-09-29 2004-07-16 疲労特性および被削性に優れた機械構造用鋼材の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4576913B2 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007154305A (ja) * 2005-07-05 2007-06-21 Jfe Steel Kk 強度、延性及び靱性に優れた機械構造用鋼およびその製造方法
JP5439735B2 (ja) * 2008-03-31 2014-03-12 Jfeスチール株式会社 転動疲労特性に優れた機械構造用部品およびその製造方法
KR101108838B1 (ko) * 2011-06-30 2012-01-31 현대하이스코 주식회사 충돌성능이 우수한 열처리 경화강 및 이를 이용한 열처리 경화형 부품 제조 방법
JP5868099B2 (ja) * 2011-09-27 2016-02-24 山陽特殊製鋼株式会社 靭性、耐磨耗性に優れる鋼
CN104603315B (zh) * 2012-10-19 2016-11-09 新日铁住金株式会社 疲劳特性优异的表面渗碳钢
CN104164628A (zh) * 2014-07-25 2014-11-26 合肥市瑞宏重型机械有限公司 一种高强度汽车发动机盖钢材料及其制造工艺
JP6354455B2 (ja) * 2014-08-27 2018-07-11 愛知製鋼株式会社 クランクシャフト及びクランクシャフト用鋼材
CN104532142A (zh) * 2014-10-27 2015-04-22 内蒙古北方重工业集团有限公司 40CrNi3MoV标准物质
JP6606978B2 (ja) * 2015-10-29 2019-11-20 日本製鉄株式会社 製品部材の製造方法及び製品部材

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001026836A (ja) * 1999-07-13 2001-01-30 Daido Steel Co Ltd 冷間加工性、転動疲労強度およびねじり疲労強度に優れた高周波焼入用鋼ならびに機械構造用部品

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3208960B2 (ja) * 1993-10-20 2001-09-17 株式会社神戸製鋼所 高面疲労強度機械構造用部品及びその製法
JPH0853714A (ja) * 1994-08-09 1996-02-27 Kobe Steel Ltd ねじり疲労強度に優れた機械構造用軸物部品

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001026836A (ja) * 1999-07-13 2001-01-30 Daido Steel Co Ltd 冷間加工性、転動疲労強度およびねじり疲労強度に優れた高周波焼入用鋼ならびに機械構造用部品

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005126817A (ja) 2005-05-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4645593B2 (ja) 機械構造用部品およびその製造方法
KR100726252B1 (ko) 강제의 기계구조용 부품, 그 소재, 및 그 제조방법
JP5231101B2 (ja) 疲労限度比と被削性に優れた機械構造用鋼
JP5458048B2 (ja) 肌焼鋼およびその製造方法、並びに肌焼鋼を用いた機械構造部品
JP5484103B2 (ja) 高強度機械部品用素材鋼板およびその製造方法並びに高強度機械部品製造方法
WO2008032816A1 (fr) Acier à outils pour formage à chaud présentant d'excellentes qualités de rigidité et de résistance à des températures élevées, et son procédé de production
JP3562192B2 (ja) 高周波焼入用部品およびその製造方法
WO2012161321A1 (ja) 機械構造用鋼部品およびその製造方法
JPWO2012161323A1 (ja) 機械構造用鋼部品およびその製造方法
JP4983099B2 (ja) 衝撃特性と疲労特性に優れた鋼軸部品とその製造方法
JP4576913B2 (ja) 疲労特性および被削性に優れた機械構造用鋼材の製造方法
JP4608979B2 (ja) 疲労特性に優れた鋼材および高周波焼入れ用鋼素材
KR100883716B1 (ko) 기계구조용 부품 및 그 제조방법과 고주파 담금질용 소재
JP6029949B2 (ja) 熱間鍛造後の焼ならし省略可能で、高温浸炭性に優れた肌焼鋼および部品の製造方法
JP5152440B2 (ja) 機械構造用鋼部品およびその製造方法
JP2005273012A (ja) 疲労特性に優れた機械構造用棒状部品およびその製造方法
JP2009197314A (ja) 機械構造用部品
JP2007231337A (ja) 熱延鋼板および鋼部品
JP4369250B2 (ja) 高温浸炭用鋼およびその製造方法
JP3978111B2 (ja) 捻り疲労特性に優れた浸炭用鋼
JP6029950B2 (ja) 熱間鍛造後、焼ならし省略可能で、高温浸炭性に優れた肌焼鋼および部品の製造方法
JP5206911B1 (ja) 熱間鍛造用非調質鋼および熱間鍛造非調質品、ならびにその製造方法
JP4196766B2 (ja) 耐遅れ破壊特性および疲労特性に優れた鋼材およびその製造方法
JP4807949B2 (ja) 高温浸炭特性に優れた肌焼用圧延棒鋼
JP4507731B2 (ja) 被削性および疲労特性に優れた鋼材並びに鋼製品とそれらの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070528

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090730

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090929

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20091130

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20091130

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100727

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100809

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130903

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4576913

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees