JP4575586B2 - 成膜装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜堆積用の成膜装置に関するものであり、とりわけ成膜速度を監視する成膜速度モニターに改善が施された成膜装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、半導体デバイスの低コスト化のために、デバイスの高密度化、ウエハの大口径化が加速されている。又半導体の用途としてパソコンに加えて、携帯電話、カーナビゲーション、デジタルテレビ等に代表されるデジタル情報家電といった用途が急増してきた。これらの用途に対するデバイスは少量多品種で、数カ月後には改良されたデバイスに切り替わる、あるいは製品が全く新しいものに切り替わってしまうというような事もありえる市場と言われている。又デバイスコストを下げるために大口径の基板に成膜する装置が求められている。このようなデバイスに応える装置は、少量多品種の製品を、如何に高品質に生産出来るかが問われている。
【0003】
これらのデバイス要求に対する対応策の一つは、プロセスモニターを用いて、in−situで膜厚管理を行い、歩留りを向上させることである。即ち製品ロット完成後に膜厚モニターをしてその時点で不良と分かっても、既に手おくれである。その製品はそのロットだけで終わる場合もあるからである。
【0004】
従来の成膜装置における膜堆積速度のin−situモニターとして種々の方法が提案されてはいるが、いずれも実用化されていなかった。
【0005】
例えば、従来なされている提案の一つとして、プラズマ発光を利用したものがある。しかしながら、この方法においては、発光量と成膜速度との間に厳密な意味での直線性がない。プロセスガス中の発光(これは迷光と呼ばれる)がバックグラウンドとなり、真のスパッタ粒子からの発光に混在してしまうことが誤差を生じる大きな要因となるからである。
【0006】
図6はこれらの関係を概念的に示したものであり、横軸は発光スペクトルの波長を、縦軸は発光強度の相対値を示している。図6中アルゴン分子の発光スペクトルはさまざまな励起準位からの発光があり、幅広く表れている。一方金属の発光スペクトルはアルゴンガスに比較して急峻なスペクトルを有している。したがって、アルミニウムの発光の例を見てもアルゴンガスからの発光スペクトルに埋もれてしまい、S/N比が小さい場合には精度良く検出することがほとんど不可能となってしまう。Ti(チタン)、Ag(銀)、Cu(銅)等の場合も同様な結果になる。
【0007】
又発光スペクトルを厳密にスパッタ粒子からの発光と、バックグラウンドの迷光からの発光とを区別するために、高価なモノクロメータを用いることも可能であるが、発光量が少なすぎてその分S/N比が小さくなることや、量産用としては非常に高価なものとなり、使用には不向きである。又プラズマ発光の強度は空間中のスパッタ粒子密度を表しているが、基板に堆積する膜厚との相関が必ずしも一対一にならないという本質的な問題も存在する。又スパッタ粒子からの発光にも、さまざまなレベル(準位)からの発光が存在して堆積膜と発光量の対応が線形の関係にはならない。とりわけ最近はデバイスの高集積化が進行して堆積膜は非常に薄くなってきており、数10オングストロームから数100オングストロームと従来に比較して5分の1から10分の1程度になってきている。この場合、膜厚が薄くなった分測定誤差が大きくなることとなる。
【0008】
図5はプラズマ発光を利用したプロセスモニターを用いて、in−situで膜厚管理が行われている従来の成膜装置の例(例えば、PVD装置の例)を表すもので、1は真空容器、2は基板ホルダー、3は基板、4は基板ホルダー用防着シールド、5は直流電源、6はターゲット、11は光学窓、12は光導入用の光学路、13は検出器である。40はプラズマ、50はスパッタ粒子からの発光、60はマグネット、70はガスリザーバー、80はカソードハウジング、90は防着シールドである。
【0009】
マグネトロン放電などによりターゲットから放出されたスパッタ粒子14はプラズマ中で励起されて符号50で示すように発光する。この発光を光学窓11と光導入用の光学路12を通して検出器13に導き、光信号を電気信号に変換して信号処理される。
【0010】
この発光量を電気信号に変換したものの時間変化と基板への膜堆積速度が比例関係に有るとして、間接的に膜堆積速度をモニターするのが従来技術である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前記スパッタ粒子からの発光50を光学窓11を通して検出器13に導くのであるが、プラズマ発光しているプロセスガスからの発光がバックグラウンドとして混入してS/N比が悪くなることは図6で説明を行った通りである。
【0012】
又スパッタされる粒子の数が増えれば発光量は増加するが、発光に寄与するプラズマ密度もスパッタパワーの増加と共に増えるために、スパッタ粒子の数とそれに起因する発光量は必ずしも一致しないのが現状である。
【0013】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点にかんがみ、成膜速度のin−situモニターの改善を行い、成膜装置内の基板に堆積した薄膜をin−situでモニターして、プロセス中の膜堆積速度を正確に管理し、製品不良を最小限に抑えることのできる成膜装置、すなわち、量産対応可能な程に膜堆積速度のモニター精度が向上されているプロセスモニターを具備する成膜装置を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明が提案する成膜装置は、上記課題を解決するために、以下のように構成されている。
【0015】
まず、成膜装置の真空容器中で膜が堆積される基板の近傍に、複数個の水晶式膜堆積速度モニターが配置されているが、その検出精度を向上させるために、基板近傍の部品に、例えば、基板用防着シールドに、前記水晶式膜堆積速度モニターを少なくとも2個配置して、この中の一つが基板への膜堆積速度を検出し、他の一つが水晶式膜堆積速度モニターの周囲温度の変化に対する補正用に用いられるように構成する。そして、成膜処理の間に、前者の水晶式膜堆積速度モニターから得られる信号を、後者の水晶式膜堆積速度モニターから得られる信号で補正することによって、前者の水晶式膜堆積速度モニターから得られる信号に含まれる周囲温度の変化に起因する誤差を差し引き、膜堆積速度のモニター精度向上を図ったのである。
【0016】
そして、前記補正によって得られた信号に基づいて、成膜装置に印加する電源をフィードバック制御することによって、膜の堆積速度を、水晶式膜堆積速度モニターの周囲の温度変化によらず、常に一定に制御することが可能な成膜装置を実現したものである。
【0017】
本発明が提案する成膜装置を更に具体的に説明すると、この成膜装置は、真空容器中に放電用ガスを導入すると共に、当該真空容器内の電極に成膜用の電源から電圧を印加して、当該真空容器内に配置されている基板に薄膜を堆積させる成膜装置である。
【0018】
本発明の成膜装置においては、薄膜が堆積される基板と同等の垂直方向位置に複数個の水晶式膜堆積速度モニターが配置されていて、当該複数個の水晶式膜堆積速度モニター中、少なくとも一個の水晶式膜堆積速度モニターはそのモニター表面に、薄膜の堆積を防止するシールドを備え、他は前記シールドをそのモニター表面に備えていない水晶式膜堆積速度モニターとされている。
【0019】
そして、成膜処理の間に、前記シールドをそのモニター表面に備えていない水晶式膜堆積速度モニターから得られる信号を、前記シールドをそのモニター表面に備えている水晶式膜堆積速度モニターから得られる信号で補正し、当該補正して得られた信号に基づいて、前記成膜用の電源から真空容器内の電極に印加する電圧のフィードバック制御が行われることを特徴とする成膜装置である。
【0020】
以下、添付図面を参照して、前記の構成からなる本発明の成膜装置の具体的な作用、機能について説明する。
【0021】
【実施例】
本発明の好ましい実施例を図1を用いて説明する。
【0022】
図1は本発明の提案する膜堆積速度モニターを備えた成膜装置がPVD装置として実現されている場合を示すものである。
【0023】
1は真空容器、2は基板ホルダー、3は基板、4は基板ホルダー用防着シールド、6はターゲットである。7は水晶式の膜堆積速度モニター、8はモニターホルダー、9は発振回路と信号検出回路等から構成されるモニター用制御電源、10は信号線である。なお、図5図示の従来のPVD装置における構成部品と共通する部分には共通の符号をつけて、その具体的な説明は省略する。
【0024】
本発明の成膜装置(図1の例ではPVD装置)では、水晶式の膜堆積速度モニター7は、基板3と同等の垂直方向位置に配置されている。具体的には、基板3の近傍に配置されている基板ホルダー用防着シールド4に複数個の水晶式膜堆積速度モニター7が配備されている。このように、例えば、基板ホルダー用防着シールド4に水晶式膜堆積速度モニター7を複数個配備する等して、水晶式の膜堆積速度モニター7を基板3と同等の垂直方向位置に配置することにより、ターゲット6から水晶式膜堆積速度モニター7への縦方向距離を、ターゲット6から基板3への縦方向距離と同等にし、水晶式膜堆積速度モニター7にて把握される、水晶式膜堆積速度モニター7上に堆積する膜の重量の変化が、基板3上に実際に堆積される膜の重量の変化に相当するようにさせているものである。
【0025】
そこで、水晶式膜堆積速度モニター7から、基板3上に実際に堆積される膜の重量の変化に相当する信号、すなわち、基板3上への膜の堆積速度に比例した信号を得ることが出来る。
【0026】
しかしながら、水晶式膜堆積速度モニターは周囲の温度変化に敏感であり、水晶式膜堆積速度モニター7から得られる信号には、プラズマからの入熱による基板ホルダー用防着シールド4の温度上昇によって生じる誤差が含まれてしまう。
【0027】
本発明では、これを解決するために、図2図示の構成が採用されている。すなわち、基板3と同等の垂直方向位置に配置する複数個の水晶式の膜堆積速度モニター7中、少なくとも一個の水晶式膜堆積速度モニター7b(図2(b))は、そのモニター表面に、膜の堆積を防止するシールド30を備えている(以下、このモニターを「ダミーモニター7b」という)。そして、他の水晶式膜堆積速度モニター(図2(a)、(b)の例では、ダミーモニター7bに隣り合った位置に配置されている水晶式膜堆積速度モニター7a)は、シールドをそのモニター表面に備えていない構成にされている。
【0028】
すなわち、水晶式膜堆積速度モニター7aは、この上に堆積する膜の重量の変化が、基板3上に実際に堆積される膜の重量の変化に相当するように、モニター表面がシールドによって覆われておらず、モニター表面がターゲット6に対して露出しているが、複数個の水晶式膜堆積速度モニター7中、少なくとも一個の水晶式膜堆積速度モニター(図2(a)、(b)の例では、水晶式膜堆積速度モニター7b)は、その表面が、シールド30によって覆われている構造のダミーモニターになっている。
【0029】
ダミーモニター7bを使用する目的は、水晶式膜堆積速度モニターが周囲温度に応じた疑似信号を出力することを利用して、これを温度補償に利用する為である。
【0030】
この温度補償機能は水晶式膜堆積速度モニターの測定精度を大幅に向上させるものである。すなわち、ダミーモニター7bは、プラズマからの入熱による基板ホルダー用防着シールド4の温度上昇のみによって受ける影響を信号として出力するので、基板3上に実際に堆積される膜の重量の変化に相当する信号を出力する水晶式膜堆積速度モニター7aの信号分から、ダミーモニター7bの信号分を差し引くことによって、周囲温度による誤差分が取り除かれた、精度の高い、膜堆積速度信号を得ることができる。
【0031】
図3は温度補償機能の説明図である。横軸は電源出力、縦紬は堆積速度を表しており、本例はスパッタの場合で、ターゲット材料としてチタンを用いた例である。2kW電力投入で、水晶式膜堆積速度モニター7aから検出される見かけの堆積速度は2100オングストローム/Mと表示される。
【0032】
しかしながらこの信号には水晶式膜堆積速度モニターに対する周囲温度の影響が含まれており、例えば、基板ホルダー用防着シールド4の温度が100度前後の場合、約100オングストローム/Mの信号分が上乗せされている。この上乗せされる分の信号は、シールド30によってモニター表面が覆われていて、周囲温度からの影響のみによる信号を出力するダミーモニター7bから得られる。
【0033】
そこで、ダミーモニター7bからの信号Bを、水晶式膜堆積速度モニター7aからの信号Aから差し引くことで、すなわち、成膜処理の間に、水晶式膜堆積速度モニター7aから得られる信号を、ダミーモニター7bから得られる信号で補正することにより、真の膜堆積速度に比例する信号「A−B」が得られるのである。
【0034】
発明者の実験によると、この数値「A−B」は、基板3上に堆積された膜の実際の数値とよく一致することが確認された。
【0035】
図4は本発明の成膜装置における制御系統図を示すものである。本発明の成膜装置においては、前述した真の膜堆積速度に比例する信号「A−B」に基づいて、成膜用の直流電源5から真空容器1内の電極に印加する電圧のフィードバック制御が行われる。そこで、前記の水晶式膜堆積速度モニター7aから得られる信号を、ダミーモニター7bから得られる信号で補正して得られる信号が一定になるように、モニター7a、ダミーモニター7bから、発振回路と信号検出回路等によって構成されるそれぞれの制御用電源9a、9b、比較器100を介して、直流電源5に膜堆積速度をフィードバックしたものである。
【0036】
モニター表面がシールドによって覆われず、ターゲット6に対して露出している水晶式膜堆積速度モニター7aからの信号を、ダミーモニター7bから得られる信号で補正して得られる信号に基づいて、前記のようなフィードバック制御を行うことにより、ターゲット6からのスパッタ粒子の堆積速度を、水晶式膜堆積速度モニターの周囲の温度変化によらず、常に一定に制御することが可能となる。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施例を添付図面を参照して説明したが、本発明はかかる実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々の形態に変更可能である。
【0038】
【発明の効果】
本発明の成膜装置は、以上に説明したように構成されているので、in−situで高精度の膜堆積速度管理が可能となり、今後の高密度、多品種少量生産デバイスの高品質製品の生産が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置の好ましい実施例の構成を表す断面図。
【図2】(a)図1図示の装置における防着シールド4の部分の一例を説明する平面図、(b)図2(a)のA−A断面図。
【図3】本発明の成膜装置における温度補償機能を説明するグラフ。
【図4】本発明の成膜装置における制御系統図。
【図5】従来の成膜装置の構成を表す断面図。
【図6】金属及び気体からの発光スペクトル。
【符号の説明】
1 真空容器
2 基板ホルダー
3 基板
4 基板ホルダー用防着シールド
5 直流電源
6 ターゲット
7a 水晶式膜堆積速度モニター
7b 水晶式膜堆積速度モニター(ダミーモニター)
8 モニターホルダー
9 制御電源
9a モニター用制御電源
9b ダミーモニター用制御電瀬
10 信号線
11 光学窓
12 光導入路
13 検出器
14 スパッタ粒子
20 真空気密式の導入端子
30 シールド
40 プラズマ
50 スパッタ粒子の発光
60 マグネット
70 ガスリザーバー
80 カソードハウジング
90 シールド
100 比較器
101 絶縁リング
Claims (1)
- 真空容器と、当該真空容器内で基板を支持する基板ホルダーと、当該基板ホルダーの近傍に配設される基板ホルダー用防着シールドと、複数個の水晶式膜堆積速度モニターとを備え、前記真空容器中に放電用ガスを導入すると共に、前記真空容器内の電極に成膜用の電源から電圧を印加して、前記基板ホルダーに配置されている前記基板に薄膜を堆積させる成膜装置であって、
前記複数個の水晶式膜堆積速度モニターは、いずれも前記基板と同等の垂直方向位置で、かつ前記複数個の水晶式膜堆積速度モニターの表面を成膜物質が飛んでくる方向に向けた姿勢になるように基板ホルダー用防着シールドに配置され、
前記複数個の水晶式膜堆積速度モニター中、少なくとも一個の水晶式膜堆積速度モニターはそのモニター表面に、薄膜の堆積を防止するシールドを備え、他は前記シールドをそのモニター表面に備えていない水晶式膜堆積速度モニターとされており、
前記シールドは、前記基板ホルダー用防着シールドの表面に配置され、
成膜処理の間に、前記シールドをそのモニター表面に備えていない水晶式膜堆積速度モニターから得られる信号を、前記シールドをそのモニター表面に備えている水晶式膜堆積速度モニターから得られる信号で補正し、
当該補正して得られた信号に基づいて、前記成膜用の電源から真空容器内の電極に印加する電圧のフィードバック制御がなされることを特徴とする成膜装置。
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