JP4574295B2 - 発光装置の作製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、透光性酸化物導電層を電極として利用した表示装置に関し、特に導電層中の珪素又は酸化珪素濃度を制御することにより、発光素子の発光特性の向上、電極の抵抗率の改善、ひいては表示装置の低消費電力化を主眼においたものである。
一対の電極間に主として有機化合物から成るエレクトロルミネセンス(以下「EL」という。)を発現する材料を挟んで形成した発光素子が注目されている。この発光素子は、一方の電極から注入された正孔と、他方の電極から注入された電子とが再結合して、それが基底状態に戻るときに光を放出する現象を利用した素子である。
すなわち、この種の発光素子は、一対の電極間にキャリア輸送特性の異なる有機化合物を積層し、一方の電極からは正孔を注入し、他方の電極からは電子を注入できるように形成されている。有機化合物への正孔及び電子の注入性は、電極を形成する材料の仕事関数(金属や半導体の表面から、一個の電子を取り出すのに必要な最小のエネルギー)の大小をもって一つの指標とされ、正孔を注入する側の電極には仕事関数が高いことが好ましく、電子を注入する側の電極には仕事関数が低い材料が望まれている。
従来、陽極と呼ばれる正孔を注入する側の電極には、仕事関数が約5eVである酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)が用いられ、正孔輸送性の高い有機化合物と接触させていた。また、陰極と呼ばれる電子を注入する側の電極には、仕事関数が低いLi、Na、Mgなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属や、Al、Ag、In、あるいはこれらを含む合金が用いられ、電子輸送性の高い材料と接触を形成していた(以上、特許文献1参照)。
有機又は無機化合物を含む層としては、代表的には、銅フタロシアニン(CuPc)、酸化モリブデン(MoOX)などの正孔注入層、芳香族アミン系材料である4,4'-ビス-[N-(ナフチル)-N-フェニル-アミノ]ビフェニル(α−NPD)などの正孔輸送層、トリス−8−キノリノラトアルミニウム錯体(Alq3)などの電子注入層若しくは電子輸送層の他に、Alq3やルブレンなどの発光材料や、4,4'−ビス(N−カルバゾリル)−ビフェニル(略称:CBP)や、2,2’,2”−(1,3,5−ベンゼントリ−イル)−トリス[1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール](略称:TPBI)などのようなホスト材料にキナクリドンなどのゲスト材料が添加された発光層を挙げることができる。
発光素子の発光特性向上を図るためには、電極から電子及び正孔を効率良く注入し、注入された電荷を効率よく発光層に輸送し、電子と正孔の再結合効率を向上させ、再結合後の発光効率を上げることなどが必要とされている。
特開2000−268954
しかしながら、従来の発光素子、すなわちITO等からなる陽極と、MgAg、Al等からなる陰極間に有機化合物を挟持させた構造の発光素子では、十分な輝度が得られなかった。また、従来の発光素子は消費電力が高く、輝度の半減寿命が短いために、安定性に関して改善すべき課題を有していた。
本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、発光特性が良好で、低消費電力で明るく、安定性の高い表示装置を提供することを目的とする。
本発明は、正孔を注入する側の電極(陽極)(以下「正孔注入電極」という。)として、含有量の異なる珪素又は酸化珪素を含む透光性酸化物導電層の積層構造を採用することを特徴としている。
本発明においていう有機化合物層は、キャリア輸送特性の観点から正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などと呼ぶ。正孔注入層と正孔輸送層との区別は必ずしも厳密なものではなく、これらは正孔輸送性(正孔移動度)が特に重要な特性である意味において同じである。便宜上、陽極に接する側の層を正孔注入層と、正孔注入層に接する層を正孔輸送層と呼んで区別する。電子輸送層、電子注入層についても同様であり、陰極に接する層を電子注入層と呼び、電子注入層に接する層を電子輸送層と呼ぶ。発光層は電子輸送層を兼ねる場合もあり、発光性電子輸送層とも呼ばれる。
また、本発明において適用される発光素子は、有機化合物のみでなく、有機材料と無機材料とを複合化した材料、有機化合物に金属錯体を添加した材料などを用いても、同様な機能を発現するものであれば置換して適用することができる。例えば、正孔注入層として炭素を主成分とする膜にMoOxをドープした膜を用いることができる。
本発明に係る表示装置は、珪素又は酸化珪素を含む複数の導電層を積層してなる正孔注入電極と、前記正孔注入電極に接して形成された有機又は無機化合物を含む層と、を有し、前記有機又は無機化合物を含む層に近接する導電層中の珪素又は酸化珪素濃度は、他の導電層中の珪素又は酸化珪素濃度よりも高いことを特徴としている。
本発明に係る表示装置は、珪素又は酸化珪素を含む複数の導電層を積層してなる正孔注入電極と、前記正孔注入電極に接して形成された有機又は無機化合物を含む層と、を有し、前記有機又は無機化合物を含む層に近接する導電層中の珪素又は酸化珪素濃度は、7〜15原子%であることを特徴としている。
本発明に係る表示装置は、珪素又は酸化珪素を含む複数の導電層を積層してなる正孔注入電極と、前記正孔注入電極に接して形成された有機又は無機化合物を含む層と、を有し、前記有機又は無機化合物を含む層に近接する導電層は7〜15原子%の珪素又は酸化珪素を含んでおり、他の導電層のうち少なくとも一層は1〜6原子%の珪素又は酸化珪素を含んでいることを特徴としている。
本発明に係る表示装置は、珪素又は酸化珪素を含む複数の導電層を積層してなる正孔注入電極と、前記導電層のうち、最上層の導電層の表面又は表面近傍の層内部に形成された、珪素又は珪素又は酸化珪素を主成分とするバリア層と、前記バリア層上に接して形成された有機又は無機化合物を含む層を有することを特徴としている。
本発明に係る表示装置の作製方法は、スパッタリング用ターゲットとして、異なる含有量の珪素又は酸化珪素を含む複数の導電性材料を用いて、珪素又は酸化珪素を含む複数の導電層を積層させることにより正孔注入電極を形成し、前記正孔注入電極に接して有機又は無機化合物を含む層を形成することを特徴としている。
本発明に係る表示装置の作製方法は、スパッタリング用ターゲットとして、少なくとも、1〜6原子%の珪素又は酸化珪素を含む導電性材料と、7〜15原子%の珪素又は酸化珪素を含む導電性材料を用いて、珪素又は酸化珪素を含む複数の導電層を積層させることにより正孔注入電極を形成し、前記正孔注入電極に接して有機又は無機化合物を含む層を形成することを特徴としている。
本発明に係る表示装置の作製方法は、珪素又は酸化珪素を含む導電性材料を用い、複数の導電層を積層させることにより正孔注入電極を形成し、前記複数の導電層のうち、最上層の導電層の表面又は表面近傍の層内部から、前記導電性材料の成分を選択的に除去することにより、残存した珪素又は酸化珪素からなるバリア層を形成し、前記バリア層に接して有機又は無機化合物を含む層を形成することを特徴としている。
上述した本発明において、透光性酸化物導電層は、ITO、酸化亜鉛(ZnO)、ガリウムを添加した酸化亜鉛(GZO)、酸化インジウムに2〜20%の酸化亜鉛(ZnO)を混合したIZO(Indium Zinc Oxide)等の透光性酸化物導電材料に、珪素、酸化珪素、または炭素を含むターゲット材を用いて、スパッタリング法によって形成されるものである。この際、透光性酸化物導電層中に含まれる珪素又は酸化珪素等の含有量を制御するためには、スパッタリング時におけるターゲット中の組成比を変えればよい。
なお、ITOに珪素又は酸化珪素を含有させた透光性酸化物導電層を、以下、便宜上「ITSO」という。
正孔注入電極として、珪素又は酸化珪素を含む透光性酸化物導電層の積層構造を採用し、有機化合物層側の導電層は高濃度の珪素又は酸化珪素を含み、他の導電層は低濃度の珪素又は酸化珪素を含んでいることにより、以下の効果が発揮される。すなわち、有機化合物層側に高濃度の珪素又は酸化珪素を含む導電層を設けることによって、正孔注入電極がもつ本来の仕事関数の効果が発現され、正孔注入層に対する正孔注入効率が向上し、発光特性を高めることができる。加えて、他の導電層として低濃度の珪素又は酸化珪素を含む導電層を設けることによって、正孔注入電極の抵抗率を低く抑えることができる。
ここで、正孔注入電極として、珪素又は酸化珪素を含む透光性酸化物導電層を採用することによって、正孔注入層に対する正孔注入効率が向上するメカニズムは次のように考えられる。
図3は、従来の透光性酸化物導電層(CTO:Conductive Transparent Oxide)と正孔注入層(HIL:Hole Injection Layer)との接触を示すバンドモデルである。接触がうまく形成されていないとき、界面ポテンシャルの影響で正孔注入層のバンドは電子に対して障壁を作る方向に曲がり、正孔がこの界面近傍に蓄積されるようになる。しかも、透光性酸化物導電膜は表面の汚染状態などにより仕事関数が小さくなる方向に変化するので、このような場合には正孔の注入性が低下し、また注入された正孔が発光に寄与する割合が低下するので、電流効率が低下することとなる。
一方、図4は、HILに隣接して、珪素又は酸化珪素濃度の高い透光性酸化物導電層(CTO2)を設け、さらにその表面又は表面近傍の層内部に、珪素、酸化珪素、窒化珪素あるいは酸化窒化珪素や窒化酸化珪素等を発光素子作成工程において析出させることにより得られた層、または蒸着法やスパッタリング法によって意図的に珪素、酸化珪素、窒化珪素等を堆積させることにより得られた層(以上、「バリア層」などと呼ばれる。)を設けた場合のバンドモデルである。この場合、図4(A)に示すようにバンドが平坦になるか、図4(B)に示すようにバンドが下側に曲がって、正孔が正孔注入電極とHILの間に蓄積しないようになるので、正孔の注入性が向上し、また注入された正孔が発光に寄与する割合を高める効果を得ることができる。
なお、以下、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素は、それぞれ、SiOx、SiNx、SiOxy(x>y)、SiNxy(x>y)と表記する場合があるが、この組成比はあくまで一例に過ぎない。例えば、窒化珪素として、Si34がある。
以上の効果を有する本発明によって、発光効率が高く、低消費電力で明るく、安定性の高い表示装置を歩留まりよく提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更することができる。例えば、本実施形態及び本実施例の各々を適宜組み合わせて本発明を実施することができる。したがって、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
本発明の表示装置は、基板の上方に、透光性酸化物導電層などで形成される正孔注入電極と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む電子注入性の電極(陰極)(以下「電子注入電極」という。)との間に、ELを発現する有機化合物を含む層(以下、「電界発光層」又は「有機化合物層」という。)を積層させた素子構造を有している。この表示装置は、図1に示すように、基板100上に予めTFTのようなトランジスタ101を形成しておき、トランジスタ101上に正孔注入電極106(陽極)、有機化合物層109及び電子注入電極110からなる積層構造を設けた、いわゆるアクティブマトリクス型表示装置としても良いし、図12に示すように、基板上に直接、透光性酸化物導電層をパターニング形成し、該透光性酸化物導電層とそれに直交する陰極との間に有機化合物層を挟持させた、いわゆるパッシブ型表示装置としても良い。
ここで、基板100としては、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、金属基板(Al等)、ステンレス基板や、後工程の処理温度に耐え得る耐熱性を有するプラスチック基板等を用いることができる。なお、後の工程の処理温度によって変形するプラスチック基板を用いる場合には、トランジスタ群を予め別の基板(ガラス基板、石英基板等)に作成しておき、剥離層を介して、プラスチック基板に転写する方法等を用いれば良い。
有機化合物を含む層はそのキャリア輸送特性から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層を積層させるものである。また、正孔注入電極と正孔輸送層との間に正孔注入層を設けても良いし、電子注入電極と電子輸送層との間に電子注入層を設けても良い。正孔注入層と正孔輸送層、及び電子注入層と電子輸送層との区別は必ずしも厳密なものではなく、これらは正孔輸送性(正孔移動度)及び電子輸送性(電子移動度)が特に重要な特性である意味において同じである。また、電子輸送層と発光層の間に正孔ブロック層を設けた構成としても良い。
発光層は、4,4'−ビス(N−カルバゾリル)−ビフェニル(略称:CBP)や、2,2’,2”−(1,3,5−ベンゼントリ−イル)−トリス[1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール](略称:TPBI)などのようなホスト材料に顔料や金属錯体などのゲスト材料を添加して、発光色を異ならせた構成としても良い。すなわち、発光層は蛍光物質又は燐光物質を含ませて形成すれば良い。
正孔注入電極106は、ITO、ZnO、IZO、GZO等の透光性酸化物導電層に、珪素又は酸化珪素を0〜20原子%含有させたものを積層させて用いる。この場合において、透光性酸化物導電層のうち少なくとも2層の珪素又は酸化珪素濃度はそれぞれ異なっており、好ましくは、有機化合物層に隣接する導電層(「第2導電層106b」という。)中の珪素又は酸化珪素濃度は、他の導電層(「第1導電層106a」という。)中の珪素又は酸化珪素濃度よりも高濃度であるのが良い。さらに好ましくは、有機化合物層に隣接する導電層106b中の珪素又は酸化珪素濃度が、7〜15原子%であるのが良い。これによって、正孔注入電極106と有機化合物層109とのキャリアの移動を容易にすることができ、有機化合物層109への正孔注入効率が向上し、発光効率を高めることができる。
また、正孔注入電極106を、1〜6原子%の珪素又は酸化珪素を含有する第1導電層106a、及び7〜15原子%の珪素又は酸化珪素を含有する第2導電層106bを少なくとも含む積層構造とすることにより、第1導電層106aによって正孔注入電極の低抵抗化を図り、なおかつ第2導電層106bによって有機化合物層109への正孔注入効率を向上させることができる。
透光性酸化物導電層からなる正孔注入電極は、当該透光性酸化物導電材料と珪素又は酸化珪素を含むターゲットを用いたスパッタリング法によって形成することができる。ターゲットにおいて、透光性酸化物導電材料に対する珪素又は酸化珪素の含有率は、1〜20原子%とすれば良いが、珪素又は酸化珪素の割合を高めると正孔注入電極の抵抗率が高くなるので、この範囲で正孔注入電極を適宜形成すれば良い。勿論、同様な組成を得ることができれば、真空蒸着法で共蒸着して形成しても良い。
正孔注入層としては、銅フタロシアニン(CuPc)、酸化モリブデン(MoOX)など、正孔輸送層としては、芳香族アミン系材料である4,4'-ビス-[N-(ナフチル)-N-フェニル-アミノ]ビフェニル(α−NPD)、4,4',4"-トリス(N-3-メチルフェニル-N-フェニル-アミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)などの他に、高分子系有機化合物として、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)水溶液(PEDOT/PSS)などを用いても良い。これらは真空蒸着法、スピン塗布法などで形成すれば良い。
また、正孔注入層を形成する前に、正孔注入電極を100〜300℃の温度で加熱処理しても良いし、平坦性を高めるために拭浄処理や研磨処理を行っても良い。
上記のように構成した発光素子111は、正孔注入電極106として、含有量の異なる珪素又は酸化珪素を含む透光性酸化物導電層の積層構造を採用していることにより、正孔注入電極106がもつ本来の仕事関数の効果が発現され、キャリアの有効利用が図られることにより、正孔注入層に対する正孔注入効率を高め、発光効率を向上させることができる。
次に、図1を用いて、本発明の発光装置の作製方法について説明する。
まず図1(A)に、基板100上に形成されているトランジスタ101を示す。トランジスタ101は、後に形成される発光素子に電流を供給するための駆動用トランジスタに相当する。トランジスタ101は第1の層間絶縁膜102及び第2の層間絶縁膜103で覆われている。またトランジスタ101のソース・ドレイン領域は、第1の層間絶縁膜102及び第2の層間絶縁膜103に形成されたコンタクトホールを介して、第2の層間絶縁膜103に接して形成された配線104、105と接続されている。
また、第1の層間絶縁膜102は、有機樹脂膜、無機絶縁膜、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O結合とSi−CHX結合手を含む絶縁膜等を用いることができる。第2の層間絶縁膜103は、水分や酸素などの発光素子の劣化を促進させる原因となる物質を、他の絶縁膜と比較して透過させにくい膜を用いる。代表的には、RFスパッタ法で形成された窒化珪素膜を用いるが、その他にもダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜や、窒化アルミニウム膜などを用いることができる。
配線104、105としては、公知の材料であるAl、Ti、TiNやそれらの積層構造を採用することができるが、スパッタリングによって成膜された第2層間絶縁膜(酸窒化珪素膜)との密着性を確保するために、Ti中にNを混入させた層(以下、「Ti(N)」と記す。)を含む積層構造を採用することが望ましい。例えば、Ti(N)\TiN\Al−Si\TiN構造や、Ti(N)\Al−Si\Ti(N)構造が用いられる。
次に、第2の層間絶縁膜103及び配線104、105上に、珪素又は酸化珪素が20原子%以下含まれた、又は珪素又は酸化珪素が含まれていないITOからなるターゲットを用いて、スパッタリング法によって第1導電層106a及び第2導電層106bを積層させる。その後、フォトレジストマスクを用いた光露光プロセスを経て、正孔注入電極106を形成する。この際、第2の層間絶縁膜103側の第1導電層106aは1〜6原子%の珪素又は酸化珪素を含み、有機化合物層側の第2導電層106bは7〜15原子%の珪素又は酸化珪素を含んでいるのが望ましい。
正孔注入電極106としては、上記ITSOの他、IZO、GZOなどに珪素又は酸化珪素を含有させた透明導電膜を用いても良い。また、上記ITO、ITSO等の導電膜に珪素や炭素を含有させた透光性酸化物導電層を用いても良い。
フォトレジストマスクを剥離した後、正孔注入電極106の表面が平坦化されるように、CMP法、ポリビニルアルコール系の多孔質体で正孔注入電極106を拭浄又は研磨しても良い。また、CMP法を用いた研磨後に、ヒドロ洗浄(水洗)を行い、さらに正孔注入電極106の表面に紫外線照射、酸素プラズマ処理などを行ってもよい。
ここで、フォトレジストマスク剥離工程、ヒドロ洗浄工程、紫外線照射工程等を行うことによって、ITSO層を含む正孔注入電極106の表面又は表面近傍の層内部に、珪素、酸化珪素、窒化珪素等を主成分とするバリア層112を形成することができる。以下、このバリア層を得る過程について説明する。
表1は、X線光電子分光分析装置(ESCA)を用いてITSO及びITOの表面組成分析を行った結果を示したものである。ITSOには、組成比4%〜5のSiが含まれていることが分かる。
Figure 0004574295
また、図5及び図6は、それぞれのITSOの表面〜1nm、及び表面から見て4〜5nmの測定深さ領域におけるESCAスペクトルデータを示したものである。各図(A)は、In3d5/2のピークを示し、各図(B)は、O1sのピークを示している。これらの図によれば、少なくともITSOの表面から1〜5nmの深さにおいては、表面に吸着した表面汚染物質(炭素、酸素等)の影響をほとんど受けることなく、一定の結合状態を保持していることが分かる。したがって、一定の珪素又は酸化珪素を含むITSOを成膜した場合、少なくともITSOの表面から1〜5nmの深さにおいては、一定のSiが含まれていることが分かる。一方、フォトレジストマスク剥離工程、ヒドロ洗浄工程、紫外線照射工程等において、ITSO膜の表面が、剥離液、洗浄水、紫外線等に曝されることにより、ITSOの表面に含まれるインジウム(In)、スズ(Sn)またはそれらの酸化物(InOx、SnOx)等を除去することができる。その結果、ITSO層を含む正孔注入電極106の表面又は表面近傍の層内部に、珪素、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素等を析出させることができ、それらを主成分とする層(バリア層112)を自己整合的に形成することができる。
また、これらのバリア層は、蒸着法やスパッタリング法によって意図的に珪素、酸化珪素、窒化珪素等を堆積させることにより得ることもできる。このバリア層の存在によって、正孔注入電極の仕事関数が増加し、正孔注入性がより向上する(図4参照)。
次に、図1(B)に示すように、配線104、105、第2の層間絶縁膜103及び正孔注入電極106の一部を覆う絶縁物107(バンク、隔壁、障壁、土手などと呼ばれる。)を形成する。絶縁物107としては、有機樹脂膜、無機絶縁膜、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O結合とSi−CHX結晶手を含む絶縁膜等を用いることができる。
絶縁物107として、例えば、ポジ型(すなわち、光照射部分が可溶化する)の感光性アクリル樹脂を用いる場合には、開口部108となる部分にステッパで光を照射し、絶縁物107のパターンを形成する。その後、アクリル樹脂をオーブンでベーク(例えば、200℃、60分の条件)した後、O2アッシングを行い、開口部108を形成する。
なお、絶縁物107の開口部108における端部は、該端部において後に形成される有機化合物を含む層(以下、単に「有機化合物層109」という。)に穴があかないように、丸みを帯びさせることが望ましい。具体的には、開口部における絶縁物107の断面が描いている曲線の曲率半径が、0.2〜2μm程度であることが望ましい。上記構成により、絶縁物107上に形成される有機化合物層109のステップカバレッジを良好とすることができ、正孔注入電極106と有機化合物層109上に形成される電子注入電極110がショートするのを防ぐことができる。また有機化合物層109の応力を緩和させることで、発光領域が減少するシュリンクとよばれる不良を低減させることができ、信頼性を高めることができる。
なお、絶縁物107としては、他にも、ネガ型(すなわち、光照射部分が不溶化する)の有機樹脂を用いて形成しても良い。例えば、ネガ型のアクリルを用いて絶縁物107を形成した場合、図示しないが、開口部108における端部がS字状の断面形状となる。この場合においても、開口部108の上端部及び下端部における曲率半径は、0.2〜2μmとすることが望ましい。
また、絶縁物107として、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O結合とSi−CHX結晶手を含む絶縁膜等を用いる場合には、フォトレジストマスクを用いた光露光プロセスを経て、絶縁物107を所定の形状にドライエッチングすることによって、開口部108を形成することができる。この場合、エッチング用ガスとしては、CF4、あるいはCF4とO2、He、Arとの混合ガスを用いることが適している。
なお、開口部108を形成するために、絶縁物107をドライエッチングする際、絶縁物107と接しているITSO層の表面又は表面近傍の層内部も、アッシング用ガス(O2)やエッチング用ガス、あるいはその他のエッチャントによる化学反応を受け、ITSO中の成分であるインジウム、スズまたはそれらの酸化物等が、化学反応によって発生するガス中に含まれ、反応空間中へ放出される。その結果、表1及び図5〜図6からも分かるように、少なくともITSO層の表面から1〜5nmの深さには一定のSiが存在しているため、ITSO層の表面又は表面近傍の層内部に、珪素、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素等を析出させ、少なくともそれらのうちの一つを主成分とするバリア層112を形成することができる。
また、これらのバリア層は、開口部108を形成した後に、蒸着法やスパッタリング法によって意図的に珪素、酸化珪素、窒化珪素等を堆積させることにより得ることもできる。このバリア層の存在によって、正孔注入電極の仕事関数が増加し、正孔注入性がより向上する(図4参照)。
また絶縁物107は、有機化合物層109を成膜する前に、吸着した水分や酸素等を除去するために真空雰囲気下で加熱しておく。具体的には、100℃〜200℃、0.5〜1時間程度、真空雰囲気下で加熱処理を行う。望ましくは圧力を4×10-5Torr以下とし、可能であるならば4×10-6Torr以下とするのが最も望ましい。そして、有機樹脂膜に真空雰囲気下で加熱処理を施した後に有機化合物層を成膜する場合、成膜直前まで真空雰囲気下に保つことで、信頼性をより高めることができる。
次に、図1(C)に示すように、正孔注入電極106上に有機化合物層109と電子注入電極110を順に形成する。有機化合物層109は、発光層単独かもしくは発光層を含む複数の層が積層された構成を有している。また電子注入電極110は、仕事関数の小さい導電膜であれば公知の材料を用い、蒸着法で形成することができる。例えば、Ca、Al、CaF、MgAg、AlLi等が望ましい。絶縁物107の開口部108において、正孔注入電極106と、有機化合物層109と、電子注入電極110とが重なる領域に、発光素子111が形成される。
なお、電子注入電極110まで形成したら、発光素子111を覆うように保護膜を成膜しても良い。この場合、保護膜は水分や酸素などの発光素子の劣化を促進させる原因となる物質を、他の絶縁膜と比較して透過させにくい膜を用いる。例えば、DLC膜、窒化炭素膜、RFスパッタ法で形成された窒化珪素膜等を用いるのが望ましい。また、上述した水分や酸素などの物質を透過させにくい膜と、該膜に比べて水分や酸素などの物質を透過させやすい膜とを積層させて、保護膜として用いることも可能である。
そして、さらに外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(ラミネートフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)や透光性の封止用基板でパッケージング(封入)することが好ましい。
以上の工程によって、基板100側に発光素子111からの光を取り出すことのできるボトムエミッション型発光装置が得られる。
なお、陰極として、膜厚1〜10nmのアルミニウム膜、もしくはLiを微量に含むアルミニウム膜等を用いることにより、上下に発光素子111からの光を取り出すことのできるデュアルエミッション型発光装置が得られる。また、正孔注入電極106(陽極)と電子注入電極110(陰極)を入れ替え、逆積みとし、駆動用のトランジスタ101の極性を反転させることにより、基板と反対側(上側)に発光素子111からの光を取り出すことのできるトップエミッション型発光装置が得られる。これらの場合においても、正孔注入電極106として、珪素又は酸化珪素濃度の含有量に高低の差を設けた透光性酸化物導電層の積層構造を採用することにより、発光効率の向上、低消費電力化等の効果により、安定性の高い発光装置を得ることができる。
本発明に係る発光装置の実施の形態について、図7、図8を参照してさらに具体的に説明する。
本実施例では、画素部と駆動回路部とが同一基板上に形成されたアクティブマトリクス型表示装置に、本発明を適用した場合について説明する。
まず、基板600上に下地絶縁膜601を形成する。基板600としては、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、金属基板(Al等)、ステンレス基板や、後工程の処理温度に耐え得る耐熱性を有するプラスチック基板等を用いることができる。なお、後工程の処理温度によって変形するプラスチック基板を用いる場合には、TFT607、609、610を予め別の基板(ガラス基板、石英基板等)に作成しておき、剥離層を介して、プラスチック基板に転写する方法等を用いれば良い。ここで、剥離層としては、W(タングステン)や、SiO2を含む膜(例えば、W\WO3\SiO2からなる積層構造等)を用いることができる。
下地絶縁膜601としては、膜厚10〜100nmの窒化酸化珪素膜(SiNO)をプラズマCVD法によって形成すればよいが、他にも酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜あるいはそれらを積層させた構造としても用いても良い。なお、特に下地絶縁膜を形成しなくてもよい。
次に、下地絶縁膜上に膜厚10〜80nmの半導体層を形成する。さらにその表面を、ニッケルを含む溶液で処理した後、500〜750℃の熱結晶化工程によって結晶質シリコン半導体膜を得、さらにレーザー結晶化を行って結晶性の改善を施した。なお、半導体層としては、シリコンゲルマニウム(SiGe)合金など、他の非晶質構造を有する半導体膜を用いても良い。また、成膜方法としては、スパッタ法、LPCVD法などを用いても良いし、結晶化方法としては、レーザー結晶化法、熱結晶化法、他の触媒(Fe,Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Pt,Cu,Au等)を用いた熱結晶化法、あるいはそれらを組み合わせて行っても良い。
また、非晶質構造を有する半導体膜の結晶化処理としては、連続発振のレーザーを用いても良く、結晶化に際し大粒径の結晶を得るためには、連続発振が可能な固体レーザーを用い、基本波の第2高調波〜第4高調波を適用するのが好ましい。代表的には、Nd:YVO4レーザー(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(355nm)を適用すればよい。連続発振のレーザーを用いる場合には、出力10Wの連続発振のYVO4レーザーから射出されたレーザー光を非線形光学素子により高調波に変換する。また、共振器の中にYVO4結晶と非線形光学素子を入れて、高調波を射出する方法もある。そして、好ましくは光学系により照射面にて矩形状または楕円形状のレーザー光に成形して、被処理体に照射する。このときのエネルギー密度は0.01〜100MW/cm2程度(好ましくは0.1〜10MW/cm2)が必要である。そして、10〜2000cm/s程度の速度でレーザー光に対して相対的に半導体膜を移動させて照射すればよい。
上記の方法によって結晶性シリコン半導体膜を得た後、半導体膜上に酸化膜を介して、金属触媒をゲッタリングするためのアモルファスシリコン膜を成膜し、500〜750℃の熱処理によってゲッタリング処理を行った。
さらに、TFT素子としての閾値を制御するために、結晶性シリコン半導体膜に対し、1〜3×1013atoms/cm2程度の濃度のホウ素イオンを注入した。
その後、結晶性シリコン半導体膜を第1のフォトマスクを用いてパターニングを行い、エッチングによって島状結晶性シリコン半導体膜602を形成した。
なお、TFT素子を構成する半導体膜としては、画素部のTFT609、駆動回路部のTFT607、610ともに結晶性シリコン半導体膜を用いても良いし、画素TFTにおいては非晶質半導体膜を用い、高速動作が要求される駆動回路部においては結晶性半導体膜を用いても良い。ここで、非晶質半導体膜としては、アモルファスシリコン、シリコンゲルマニウム(SiGe)合金をはじめ、他の非晶質構造を有する半導体膜を用いることができる。また、駆動回路部における結晶性半導体膜としては、セミアモルファスシリコン(SAS)を用いても良い。
次に、第1のフォトマスクを除去した後、島状結晶性シリコン半導体膜602上に絶縁膜603を形成する。絶縁膜603は、プラズマCVD法またはスパッタ法を用い、厚さを1〜200nmに成膜した。好ましくは、10〜50nmと薄くしてシリコンを含む絶縁膜の単層または積層構造で形成した後に、マイクロ波によるプラズマを用いた表面窒化処理を行う。
このように膜厚の薄い絶縁膜を、プラズマCVD法を用いて成膜する場合、成膜レートを遅くして薄い膜厚を制御性よく得る必要がある。例えば、RFパワーを100W、周波数10kHz、圧力0.3Torr、N2Oガス流量400sccm、SiH4ガス流量1sccm、とすれば酸化珪素膜の成膜速度を6nm/minとすることができる。また、マイクロ波によるプラズマを用いた窒化処理は、マイクロ波源(2.45GHz)、および反応ガスである窒素ガスを用いて行う。
なお、絶縁膜603表面から離れるにつれて窒素濃度は減少する。これにより酸化珪素膜表面を高濃度に窒化できるだけでなく、酸化珪素膜と活性層の界面の窒素を低減し、デバイス特性の劣化を防ぐ。
次に、絶縁膜603上に膜厚100〜600nmの導電膜を形成する。ここでは、スパッタ法を用い、TaN膜とW膜との積層からなる導電膜を形成するが、特にこれに限定されるものではなく、Ta、W、Ti、Mo、Al、Cuから選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料の単層、またはこれらの積層で形成してもよい。また、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜を用いてもよい。
次に、第2のフォトマスクを用いてレジストマスクを形成し、ドライエッチング法またはウェットエッチング法を用いてエッチングを行う。このエッチング工程によって、画素部TFTのゲート電極604a、604b、及び駆動回路部TFTのゲート電極605a、605b、606a、606bを得る。
次に、レジストマスクを除去した後、基板全面にn型を付与する不純物元素(代表的にはリン又は砒素)を低濃度にドープした(第1のドーピング工程)。その後、第3のフォトマスクを用いてレジストマスクを新たに形成し、ここでは駆動回路部を形成する相補型トランジスタのうち、nチャネル型TFT607を形成するため、半導体にn型を付与する不純物元素を高濃度にドープした(第2のドーピング工程)。レジストマスクは、pチャネル型TFTとなる領域と、nチャネル型TFTとなる領域中、導電層の近傍とを覆う。この第2のドーピング工程によって、絶縁膜603を介してスルードープを行い、高濃度不純物領域613を形成し、このドープがなされなかったnチャネル型TFTとなる領域中の導電層の近傍に低濃度不純物領域608が形成される。一つの発光素子は、複数のTFTを用いて駆動させるが、pチャネル型TFTのみで駆動させる場合には、上記ドーピング工程は特に必要ない。
次に、レジストマスクを除去した後、第4のフォトマスクを用いてレジストマスクを新たに形成し、pチャネル型TFT609、610を形成するため、半導体にp型を付与する不純物元素(代表的には硼素)を高濃度にドープする(第3のドーピング工程)。この第3のドーピング工程によって、絶縁膜603を介してスルードープを行い、一対のp型の高濃度不純物領域611、612を形成する(以上、図7(A)参照)。
この後、レジストマスクを除去し、水素を含む絶縁膜614を成膜した後、半導体層に添加された不純物元素の活性化および半導体膜の水素化を行う。水素を含む絶縁膜614は、PCVD法により得られる窒化酸化珪素膜(SiNO膜)を用いる。
次に、層間絶縁膜となる平坦化膜615を形成する。これは、後に発光素子の下地膜となる膜である。平坦化膜615としては、塗布法によって得られるシリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される絶縁膜を用いる。例えば、シロキサン系ポリマーを用いることができる。また、平坦化膜615としては、無機材料(酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素など)、感光性または非感光性の有機材料(ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジストまたはベンゾシクロブテン)、あるいは塗布法により得られるSOG膜(例えば、アルキル基を含むSiOX膜)、またはこれらの積層などを用いても良い。
また、インクジェット法により平坦化膜615を形成してもよい。インクジェット法を用いた場合には材料液を節約することができる。
このようにして形成された平坦化膜615において、端部または開口部をテーパー形状とし、さらに、比較的原子半径の大きい不活性元素を添加することによって歪みを与え、表面(側壁を含む)を改質、または高密度化して水分や酸素の侵入を防止する構造として、発光装置の信頼性を向上させている。
次に、第5のフォトマスクを用いて平坦化膜615にコンタクトホールを形成すると同時に周縁部の平坦化膜をエッチングによって除去する。用いるエッチング用ガスに限定はないが、ここではCF4、O2、He、Arとを用いることが適している。CF4の流量を380sccm、O2の流量を290sccm、Heの流量を500sccm、Arの流量を500sccm、RFパワーを3000W、圧力を25Paとし、ドライエッチングを行う。なお、図7(B)に示すように、平坦化膜615はテーパー形状としてもよい。平坦化膜615は1回のエッチングでテーパー形状としてもよいし、複数のエッチングによってテーパー形状にしてもよい。ここでは、さらにCF4、O2、Heを用いて、CF4の流量を550sccm、O2の流量を450sccm、Heの流量を350sccm、RFパワーを3000W、圧力を25Paとし、2回目のドライエッチングを行ってテーパー形状とする(図7(B))。
次に、不活性元素のドーピング処理を行い、平坦化膜615の表面に高密度化した部分616を形成する。ドーピング処理はイオンドープ法、もしくはイオン注入法で行えば良い。不活性元素として、典型的にはアルゴン(Ar)を用いる。比較的原子半径の大きい不活性元素を添加することによって歪みを与え、表面(開口部の側壁を含む)を改質、または高密度化して水分や酸素の侵入を防止する。また、高密度化した部分616に含まれる不活性元素は、1×1019〜5×1021atoms/cm3、代表的には2×1019〜2×1021atoms/cm3の濃度範囲とする。なお、平坦化膜615の表面にドーピングされるように平坦化膜615の開口部をテーパー形状としている。テーパー角θは、30〜75°とすることが望ましい。
また、次に形成する膜との密着性を向上させるために、平坦化膜615の成膜前後にコロナ放電処理、プラズマ処理、またはカップリング剤処理を行ってもよい。また、コロナ放電処理、プラズマ処理、カップリング剤処理は、2種類以上を組み合わせて行うことができ、その場合、処理順序は特に制限されるものではない。
次に、平坦化膜615をマスクとしてエッチングを行い、露呈している絶縁膜603、614を選択的に除去する。エッチング用ガスとしては、CHF3とArを用いる。なお、半導体層上に残渣を残すことなくエッチングするためには、10〜20%程度の割合でエッチング時間を増加させると良い。
次に、平坦化膜615上に導電膜を形成した後、第6のフォトマスクを用いてエッチングを行い、配線617a〜619bを形成し、TFT607、609、610のソース領域及びドレイン領域とそれぞれ接続させた(以上、図7(B))。
次に、異なる濃度の珪素又は酸化珪素を含有する透光性酸化物導電材料をターゲットとして、スパッタリング法によって、平坦化膜615及び配線617a上に導電層を積層する。まず、スパッタガスをArとし、直流電力を導入して、1〜6原子%の低濃度の珪素又は酸化珪素を含むITSO層620aをスパッタリング形成する。その後ターゲットを変えて、7〜15原子%の高濃度の珪素又は酸化珪素を含むITSO層620bを形成する。積層構造は、正孔注入層、正孔輸送層または発光層となる有機化合物に隣接するITSO層620b中の珪素又は酸化珪素が高濃度であれば、異なるターゲットを用いて、2層以上に積層させても良い。この際、積層膜の総膜厚が100〜800nmとなるようにするのが望ましい。また、透光性酸化物導電材料としては、ITSOのみを用いても良いし、積層膜の一部にITO、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムに2〜20原子%の酸化亜鉛(ZnO)を混合したIZO等の透明導電膜を用いても良い。例えば、配線617aに接する側の導電層は低抵抗のITO等で形成し、有機化合物層と接する側の導電層は珪素又は酸化珪素を高濃度に含んだITSOで形成しても良い。
次に、第7のフォトマスクを用いた光露光プロセスを経て、積層されたITSO層620a、620bを所定の形状にウェットエッチングすることによって第1の電極620(正孔注入電極)を形成する。エッチャントとしては、有機弱酸である蓚酸(HOCO−COOH)に添加剤や水(H2O)を加えた溶液等を用いることができる。さらに、フォトレジストマスクを剥離した後、オーブンを用い200℃で60分の熱処理を行った。
次に、第8のフォトマスクを用いて第1の電極620の端部を覆う絶縁物621(バンク、隔壁、障壁、土手などと呼ばれる。)を形成する。絶縁物621は、シロキサン系ポリマーのような、塗布法によって得られるシリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される絶縁膜を用いる。シロキサン系ポリマーを用いた絶縁膜621は、上述した層間絶縁膜と同様の方法によって得ることができる。また、絶縁物621としては、無機材料(酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコンなど)、感光性または非感光性の有機材料(ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジストまたはベンゾシクロブテン)、あるいは塗布法により得られるSOG膜(例えば、アルキル基を含むSiOX膜)、またはこれらの積層などを用いても良い。
次に、フォトレジストマスクを用いた光露光プロセスを経て、絶縁物621を所定の形状にパターニングすることによって、後に発光素子部が形成される開口部を形成する。
ここで、絶縁物621として非感光性材料を用い、エッチングを行う場合には、該エッチングを行う際に、絶縁物621と接しているITSO層の表面又は表面近傍の層内部もエッチャントによる化学反応を受け、ITSO中の成分であるインジウム(In)、スズ(Sn)またはそれらの酸化物等が、化学反応によって発生するガス中に含まれ、反応空間中へ放出される。その結果、ITSO層の表面又は表面近傍の内部に存在する珪素(Si)や、珪素とエッチャント、添加剤、水分、大気成分等との反応によって、酸化珪素(SiOx)、窒化珪素(SiNx)あるいは酸化窒化珪素(SiOxNy)や窒化酸化珪素(SiNxOy)等を析出させることができ、それらを主成分とする層(バリア層)を自己整合的に形成することができる。また、これらのバリア層は、蒸着法やスパッタリング法によって意図的に珪素、酸化珪素、窒化珪素等を堆積させることにより得ることもできる。このバリア層の存在によって、正孔注入電極の仕事関数を増加させ、正孔注入性をより向上させることができる。
ここで、有機樹脂の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物の上端部のみに曲率半径を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物として、感光性の光によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、あるいは光によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
次に、有機化合物を含む層(電界発光層ともいう。以下、単に「有機化合物層622」という。)を、蒸着法または塗布法を用いて形成する。なお、信頼性を向上させるため、有機化合物層622の形成前に、水銀ランプを光源として用い、紫外線(UV)照射処理を行い、さらに真空加熱を行って脱気を行うことが好ましい。例えば、有機化合物材料の蒸着を行う前に、基板に含まれるガスを除去するために減圧雰囲気や不活性雰囲気で200〜300℃の加熱処理を行うことが望ましい。有機化合物層622の形成に蒸着法を用いる場合、真空度が5×10-3Torr(0.665Pa)以下、好ましくは10-4〜10-6Torrまで真空排気された成膜室で蒸着を行う。蒸着の際、予め、抵抗加熱により有機化合物は気化されており、蒸着時にシャッターが開くことにより基板の方向へ飛散する。気化された有機化合物は、上方に飛散し、メタルマスクに設けられた開口部を通って基板に蒸着される。
例えば、Alq3、部分的に赤色発光色素であるナイルレッドをドープしたAlq3、Alq3、p−EtTAZ、TPD(芳香族ジアミン)を蒸着法により順次積層することで白色を得ることができる。
また、有機化合物層622として例えば、正孔注入層としてCuPc(20nm)、正孔輸送層として酸化モリブデン(MoOX)、α−NPD(40nm)、発光層としてAlq3:DMQd(375nm)(DMQd:キナクリドン誘導体)、電子輸送層としてAlq3(375nm)を形成しても良い。
また、スピンコートを用いた塗布法により有機化合物層622を形成する場合、塗布した後、真空加熱で焼成することが好ましい。例えば、正孔注入層として作用するポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)水溶液(PEDOT/PSS)を全面に塗布、焼成し、その後、発光層として作用する発光中心色素(1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン(TPB)、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノ−スチリル)−4H−ピラン(DCM1)、ナイルレッド、クマリン6など)ドープしたポリビニルカルバゾール(PVK)溶液を全面に塗布、焼成すればよい。なお、PEDOT/PSSは溶媒に水を用いており、有機溶剤には溶けない。従って、PVKをその上から塗布する場合にも、PEDOT/PSSが再溶解する心配はない。また、PEDOT/PSSとPVKは溶媒が異なるため、成膜室は同一のものを使用しないことが好ましい。また、有機化合物層622を単層とすることもでき、ホール輸送性のポリビニルカルバゾール(PVK)に電子輸送性の1,3,4−オキサジアゾール誘導体(PBD)を分散させてもよい。また、30wt%のPBDを電子輸送剤として分散し、4種類の色素(TPB、クマリン6、DCM1、ナイルレッド)を適当量分散することで白色発光が得られる。
また、1枚のパネルでフルカラー表示させるためにR、G、Bごとに有機化合物層622の塗りわけを行ってもよい。
次に、導電膜からなる第2の電極623(電子注入電極、陰極)を形成する。第2の電極623としては、MgAg、MgIn、AlLi、CaF2、CaNなどの合金、または該合金からなる膜上にAlを積層させた膜を用いることができる。あるいは、周期表の1族もしくは2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着法により形成した膜を用いても良い。
図9(A)に示すような第2の電極801を通過させて発光させるトップエミッション型発光装置とする場合、あるいは図9(C)に示すデュアルエミッション型発光装置とする場合には、第2の電極として、膜厚1〜10nmのアルミニウム膜、もしくはLiを微量に含むアルミニウム膜を用いる。また、膜厚1〜10nmのアルミニウム膜を形成する前に陰極バッファ層としてCaF2、MgF2、またはBaF2からなる透光性を有する層(膜厚1〜5nm)を形成してもよい。
次に、蒸着法またはスパッタ法により透明保護層624を形成する。透明保護層624は、第2の電極623を保護する役割を果たす(以上、図7(C))。
次に、封止基板700をシール材701で貼り合わせて発光素子を封止する。シール材701が平坦化膜615の端部(テーパー部)を覆うように貼りあわせる。なお、シール材701で囲まれた領域には透明な充填材702を充填する。充填材702としては、透光性を有している材料であれば特に限定されず、代表的には紫外線硬化または熱硬化のエポキシ樹脂を用いればよい。ここでは屈折率1.50、粘度500cps、ショアD硬度90、テンシル強度3000psi、Tg点150℃、体積抵抗1×1015Ω・cm、耐電圧450V/milである高耐熱のUVエポキシ樹脂(エレクトロライト社製:2500Clear)を用いる。また、充填材702を一対の基板間に充填することによって、全体の透過率を向上させることができる。なお、これらの図番は図9においても同様である。
最後にFPC703(Flexible Print Circuit)を異方性導電膜704により公知の方法で端子電極705と貼りつける。端子電極705は、透明導電膜を用いることが好ましく、ゲート配線と同時に形成された電極706a、706b上に形成する(図8)。
また、nチャネル型TFT607とpチャネル型TFT610とで構成される駆動回路部の一部を図8(A)に示す。また、第2の電極623と配線707との接続の様子を図8(B)に示す。配線707は、電極706a、706bと接続されている。
このようにして作製されたアクティブマトリクス型発光装置は、第1の電極620として、珪素又は酸化珪素を含む透光性酸化物導電層の積層構造を採用し、有機化合物層622側の導電層の珪素又は酸化珪素濃度を高濃度(好ましくは、7〜15原子%)にすることにより、正孔注入層に対する正孔注入効率を高め、発光効率を向上させることができ、安定性の高い表示装置を提供することができる。また、配線617a側の導電層の珪素又は酸化珪素濃度を低濃度(好ましくは、1〜6原子%)にすることにより、低抵抗化を図ることができ、安定性の高い表示装置を提供することができる。
実施例1では、図9(B)に示すボトムエミッション型発光装置において、本発明を適用した場合について説明したが、本実施例では、図9(A)に示すトップエミッション型発光装置、図9(C)に示すデュアルエミッション型発光装置において、本発明を適用した場合について説明する。
まず、デュアルエミッション型発光装置の場合について説明する。この場合、正孔注入電極620の材料としては、実施例1と同様に、珪素又は酸化珪素を含むITO、酸化亜鉛(ZnO)、IZO等の透光性酸化物導電層を積層させて用いることができる。好ましくは、0〜20原子%の濃度の珪素又は酸化珪素を含んだITSOを用い、珪素又は酸化珪素を低濃度(さらに好ましくは、1〜6原子%)に含むITSO層と、高濃度(さらに好ましくは、7〜15原子%)に含むITSO層を積層させて用いるのが良い。ここで、珪素又は酸化珪素を含まない、若しくは分析によって検出されない(0原子%の)ITSOとは、純粋なITOを意味する。
一方、電子注入電極623としては、有機化合物層622からの光を透過させるべく、膜厚1〜10nmの薄アルミニウム膜、もしくはLiを微量に含むアルミニウム膜等を用いることにより、上下に発光素子からの光を取り出すことのできるデュアルエミッション型発光装置が得られる(図9(C))。
なお、電子注入電極623として、正孔注入電極620と同様の材料、すなわちITSO等の透光性酸化物導電層を採用しても、デュアルエミッション型発光装置を得ることができる。この場合において、透光性酸化物導電層に珪素又は酸化珪素を含有させて用いても良いし、正孔注入電極620と同様に積層構造を採用しても良い。
次に、トップエミッション型発光装置の場合について、図9(A)を参照して説明する。一般的には、第1の電極620(陽極)と第2の電極623(陰極)を入れ替え、さらに有機化合物層を逆積みとし、駆動用のトランジスタの極性を反転させることにより(ここでは、nチャネル型TFTを用いる。)、基板と反対側(上側)に発光素子からの光を取り出すことのできるトップエミッション型発光装置が得られる。また図9(A)のように、電極及び有機化合物層を逆積みとした場合、正孔注入電極801として、珪素又は酸化珪素濃度の含有量に高低の差を設けた透光性酸化物導電層の積層構造を採用することにより、発光効率の向上、低消費電力化等の効果により、安定性の高い発光装置を得ることができる。ここで、電子注入電極800(陰極)としては、光反射性のある金属電極等を用いればよい。
なお、第1の電極620と第2の電極623を入れ替えずとも、第2の電極623としてITSO等の透光性酸化物導電層を採用することにより、トップエミッション型発光装置を得ることもできる。この陰極に用いられる透光性酸化物導電層としては、珪素又は酸化珪素を含有したものを用いても良いし、それらを積層させた構造としても良い。
本実施例では、本発明を逆スタガ構造を有するアクティブマトリクス型発光装置に適用した場合について、図10及び図11を用いて説明する。
実施例1と同様の材質からなる基板1100上に、ゲート電極及びゲート配線(走査線)を形成するための導電膜を形成する。導電膜にはクロム、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウムなどの金属材料またはその合金材料を用いる。この導電膜はスパッタリング法や真空蒸着法で形成することができる。
導電膜をエッチング加工してゲート電極1101、1102を形成する。ゲート電極1101、1102上には第1の半導体膜や配線層を形成するので、その端部がテーパー状になるように導電膜を加工することが望ましい。また導電膜を、アルミニウムを主成分とする材料で形成する場合には、エッチング加工後に陽極酸化処理などをして表面を絶縁化しておくと良い。また、図示しないがこの工程でゲート電極に接続する配線も同時に形成することができる。
第1絶縁膜1103と第2絶縁膜1104は、ゲート電極1101、1102の上に形成することでゲート絶縁膜として機能させることができる。この場合、第1絶縁膜1103として酸化珪素膜、第2絶縁膜1104として窒化珪素膜を形成することが好ましい。これらの絶縁膜はグロー放電分解法やスパッタリング法で形成することができる。特に、低い成膜温度でゲートリーク電流に少ない緻密な絶縁膜を形成するには、アルゴンなどの希ガス元素を反応ガスに含ませ、形成される絶縁膜中に混入させると良い。
次に、第1絶縁膜1103及び第2絶縁膜1104上に、第1の半導体膜1105を形成する。第1の半導体膜1105は、セミアモルファス半導体(SAS)で形成する。
このSASは珪化物気体をグロー放電分解することにより得ることができる。代表的な珪化物気体としては、SiH4であり、その他にもSi26、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4などを用いることができる。この珪化物気体を水素、水素とヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈して用いることでSASの形成を容易なものとすることができる。希釈率は10倍〜1000倍の範囲で珪化物気体を希釈することが好ましい。勿論、グロー放電分解による被膜の反応生成は減圧下で行うが、圧力は概略0.1Pa〜133Paの範囲で行えば良い。グロー放電を形成するための電力は1MHz〜120MHz、好ましくは13MHz〜60MHzの高周波電力を供給すれば良い。基板加熱温度は300度以下が好ましく、100〜200度の基板加熱温度が推奨される。
また、珪化物気体中に、CH4、C26などの炭化物気体、GeH4、GeF4などのゲルマニウム化気体を混入させて、エネルギーバンド幅を1.5〜2.4eV、若しくは0.9〜1.1eVに調節しても良い。
また、SASは、価電子制御を目的とした不純物元素を意図的に添加しないときに弱いn型の電気伝導性を示す。これは、アモルファス半導体を成膜するときよりも高い電力のグロー放電を行なうため酸素が半導体膜中に混入しやすいためである。そこで、TFTのチャネル形成領域を設ける第1の半導体膜に対しては、p型を付与する不純物元素を、この成膜と同時に、或いは成膜後に添加することで、しきい値制御をすることが可能となる。p型を付与する不純物元素としては、代表的には硼素であり、B26、BF3などの不純物気体を1ppm〜1000ppmの割合で珪化物気体に混入させると良い。例えば、p型を付与する不純物元素としてボロンを用いる場合、該ボロンの濃度を1×1014〜6×1016atoms/cm3とすると良い。
次に、第2の半導体膜1106、第3の半導体膜1107を形成する。第2の半導体膜1106は、価電子制御を目的とした不純物元素を意図的に添加しないで形成したものであり、第1の半導体膜1105と同様にSASで形成することが好ましい。この第2の半導体膜1106は、ソース及びドレインを形成する一導電型を有する第3の半導体膜1107と第1の半導体膜1105との間に形成することで、バッファ層(緩衝層)のような働きを持っている。従って、弱n型の電気伝導性を持つ第1の半導体膜1105に対して、同じ導電型で一導電型を有する第3の半導体膜1107を形成する場合には、第2の半導体膜1106は必ずしも必要ない。しきい値制御をする目的において、p型を付与する不純物元素を添加する場合には、第2の半導体膜1106は段階的に不純物濃度を変化させる効果を持ち、接合形成を良好にする上で好ましい形態となる。すなわち、形成されるTFTに、チャネル形成領域とソースまたはドレイン領域の間に形成される低濃度不純物領域(LDD領域)としての機能を持たせることが可能となる。
一導電型を有する第3の半導体膜1107はnチャネル型のTFTを形成する場合には、代表的な不純物元素としてリンを添加すれば良く、珪化物気体にPH3などの不純物気体を加えれば良い。一導電型を有する第3の半導体膜1107は、価電子制御がされていることを除けば、SASのような半導体、非晶質半導体で形成されるものである。
以上、第1絶縁膜1103から一導電型を有する第3の半導体膜1107までは大気に触れさせることなく連続して形成することが可能である。すなわち、大気成分や大気中に浮遊する汚染不純物元素に汚染されることなく各積層界面を形成することができるので、TFT特性のばらつきを低減することができる(以上、図10(A))。
次に、フォトレジストマスクを形成し、第1の半導体膜1105、第2の半導体膜1106、一導電型を有する第3の半導体膜1107をエッチングして島状に分離形成する。
その後、ソース及びドレインに接続する配線を形成するための第2導電膜を形成する。第2導電膜はアルミニウム、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料で形成するが、半導体膜と接する側の層をチタン、タンタル、モリブデン、タングステン、銅またはこれらの元素の窒化物で形成した積層構造としても良い。例えば1層目がTaで2層目がW、1層目がTaNで2層目がAl、1層目がTaNで2層目がCu、1層目がTiで2層目がAlで3層目がTiといった組み合わせも考えられる。また1層目と2層目のいずれか一方にAgPdCu合金を用いても良い。W、AlとSiの合金(Al−Si)、TiNを順次積層した3層構造としてもよい。Wの代わりに窒化タングステンを用いてもよいし、AlとSiの合金(Al−Si)に代えてAlとTiの合金膜(Al−Ti)を用いてもよいし、TiNに代えてTiを用いてもよい。アルミニウムには耐熱性を向上させるためにチタン、シリコン、スカンジウム、ネオジウム、銅などの元素を0.5〜5原子%添加させても良い。
次にマスク1108を形成する。マスク1108はソースおよびドレインと接続する配線を形成するためにパターン形成されたマスクであり、同時に一導電型を有する第3の半導体膜1107を取り除きチャネル形成領域を形成するためのエッチングマスクとして併用されるものである。アルミニウムまたはこれを主成分とする導電膜のエッチングはBCl3、Cl2などの塩化物気体を用いて行えば良い。このエッチング加工で配線1109〜1112を形成する。また、チャネル形成領域を形成するためのエッチングにはSF6、NF3、CF4などのフッ化物気体を用いてエッチングを行うが、この場合には下地となる第1の半導体膜1105とのエッチング選択比をとれないので、処理時間を適宜調整して行うこととなる。以上のようにして、チャネルエッチ型のTFTの構造を形成することができる(以上、図10(B))。
次に、チャネル形成領域の保護を目的とした第3絶縁膜1113を、窒化珪素膜で形成する。この窒化珪素膜はスパッタリング法やグロー放電分解法で形成可能であるが、大気中に浮遊する有機物や金属物、水蒸気などの汚染不純物の侵入を防ぐためのものであり、緻密な膜であることが要求される。第3絶縁膜1113に窒化珪素膜を用いることで、第1の半導体膜1105中の酸素濃度を5×1019atoms/cm3以下、好ましくは1×1019atoms/cm3以下に抑えることができる。この目的において、珪素をターゲットとして、窒素とアルゴンなどの希ガス元素を混合させたスパッタガスで高周波スパッタリングされた窒化珪素膜で、膜中の希ガス元素を含ませることにより緻密化が促進されることとなる。また、グロー放電分解法においても、珪化物気体をアルゴンなどの珪化物気体で100倍〜500倍に希釈して形成された窒化珪素膜は、100度以下の低温においても緻密な膜を形成可能であり好ましい。さらに必要があれば第4絶縁膜1114を酸化珪素膜で積層形成しても良い。第3絶縁膜1113と第4絶縁膜1114はパッシベーション膜に相当する。
第3絶縁膜113および/または第4絶縁膜1114上には、好ましい形態として第5絶縁膜である平坦化膜1115を形成する。平坦化膜は、アクリル、ポリイミド、ポリアミドなどの有機樹脂、またはシロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O結合とSi−CHX結合手を含む絶縁膜で形成することが好ましい。これらの材料は含水性があるので、水分の侵入及び放出を防ぐバリア膜として第6絶縁膜1116を併設することが好ましい。第6絶縁膜1116としては上述のような窒化珪素膜を適用すれば良い。
配線1117は、第6絶縁膜1116、平坦化膜1115、第3絶縁膜1113、第4絶縁膜1114にコンタクトホールを形成した後に、所望の形状にエッチング形成する。
以上のようにして形成されたチャネルエッチ型のTFTは、SASでチャネル形成領域を構成することにより2〜10cm2/V・secの電界効果移動度を得ることができる。
次に、配線1117に接するように、第6絶縁膜1116上に珪素又は酸化珪素を含む導電層1118a、1118bを積層させ、所望の形状にエッチングすることにより、正孔注入電極(陽極)1118を形成する。好ましくは、導電層1118aの珪素又は酸化珪素濃度を低濃度(1〜6原子%)に、導電層1118bの珪素又は酸化珪素濃度を高濃度(7〜15原子%)にするのが良い。また、珪素又は酸化珪素を含む導電層としては、ITSOの他、珪素又は酸化珪素を含むIZO等を用いても良いし、配線1117に接する導電層1118aはITOで形成しても良い。正孔注入電極1118は、その表面が平坦化されるように、CMP法、ポリビニルアルコール系の多孔質体で拭浄し、研磨しても良い。またCMP法を用いた研磨後に、正孔注入電極1118の表面に紫外線照射、酸素プラズマ処理などを行ってもよい(以上、図10(C))。
なお、正孔注入電極1118をエッチング形成した後の、レジスト剥離工程、ヒドロ洗浄(水洗)工程、紫外線照射工程等によって、導電層1118b内部からインジウム、スズ又はそれらの酸化物を放出させることにより、導電層1118bの表面又は表面近傍の層内部に、珪素、酸化珪素、窒化珪素等と析出させ、それらを主成分とするバリア層を形成することができる(図2参照)。また、このバリア層は、珪素、酸化珪素、窒化珪素等を意図的に蒸着法、スパッタリング法等によって形成しても良い。これらのバリア層の存在によって、正孔注入電極の仕事関数が増加し、正孔注入性をより向上させることができる(図4参照)。
次に図10(D)に示すように、第6絶縁膜1116上に、有機樹脂膜、無機絶縁膜またはシロキサンを用いて形成された隔壁1119を形成する。なおシロキサンとは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成され、置換基に少なくとも水素を含む材料である。また上記構成に加えて、置換基にフッ素、アルキル基、または芳香族炭化水素のうち少なくとも1種を有していても良い。隔壁1119は開口部を有しており、該開口部において正孔注入電極1118が露出している。次に、隔壁1119の開口部において正孔注入電極1118と接するように、有機化合物を含む層(電界発光層ともいう。以下、単に「有機化合物層1120」という。)を形成する。有機化合物層1120は、単数の層で構成しても良いし、複数の層を積層させて構成しても良い。複数の層で構成する場合、正孔注入電極1118上に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の順に積層する。
次に、有機化合物層1120を覆うように、電子注入電極1121(陰極)を形成する。電子注入電極1121は、仕事関数が小さい公知の材料、例えば、Ca、Al、CaF、MgAg、AlLi等を用いることができる。隔壁1119の開口部において、正孔注入電極1118と有機化合物層1120と電子注入電極1121が重なり合うことで、発光素子1122が形成される(以上、図10(D))。
なお実際には、図10(D)の状態まで完成したら、さらに外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(ラミネートフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
このような、画素部と駆動回路で同じ極性のTFTを用いた素子基板は、ゲート電極形成用マスク、半導体領域形成用マスク、配線形成用マスク、コンタクトホール形成用マスク、正孔注入電極形成用マスクの合計5枚のマスクで形成することができる。
なお本実施例では、セミアモルファス半導体を用いたTFTで発光装置の駆動回路と画
素部を同じ基板上に形成した例について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。
アモルファス半導体を用いたTFTで画素部を形成し、該画素部が形成された基板に別途
形成された駆動回路を貼り付けても良い。
なお、ゲート電極1101、1102に重畳させて、SASで形成された第1の半導体膜1105上にチャネル保護膜1201、1202を形成すれば、図11に示した構成を有する、いわゆるチャネルストップ型TFT1203、1204を用いた発光装置も同様に作製することができる。
本実施例では、図12を参照して、本発明をパッシブ型表示装置に用いた場合について説明する。
まず、基板900上に、ITOに珪素又は酸化珪素が0〜20原子%含まれた2以上のターゲットを用いて、スパッタリング法によって導電層を積層する。この際、有機化合物層側の導電層901bは、他の導電層901aよりも高濃度の珪素又は酸化珪素を含むようにターゲットを選択する。好ましくは、基板900側の導電層201aは1〜6原子%の珪素又は酸化珪素を含み、有機化合物層側の導電層901bは7〜15%の珪素又は酸化珪素を含んでいるのが良い。
次に、積層された導電層に対しマスクを用いてエッチングを行い、縞(ストライプ)状の正孔注入電極901(陽極)を形成する。
ここで、基板900としては、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、金属基板、ステンレス基板や、後工程の処理温度に耐え得る耐熱性を有するプラスチック基板等を用いることができる。
また、正孔注入電極901の材料としては、上記ITSOの他、IZO、GZOなどに珪素又は酸化珪素を含有させた透明導電膜を用いても良い。なお、正孔注入電極901は、その表面が平坦化されるように、CMP法、ポリビニルアルコール系の多孔質体で拭浄又は研磨しても良い。また、CMP法を用いた研磨後に、正孔注入電極901の表面に紫外線照射、酸素プラズマ処理などを行ってもよい。
次に、正孔注入電極901上に、有機化合物を含む層902(以下、単に「有機化合物層902」という。)を、蒸着法または塗布法を用いて形成する。なお、信頼性を向上させるため、有機化合物層902の形成前に、水銀ランプを光源として用い、紫外線(UV)照射処理を行い、さらに真空加熱を行って脱気を行うことが好ましい。例えば、有機化合物材料の蒸着を行う前に、基板に含まれるガスを除去するために、減圧雰囲気や不活性雰囲気で200〜300℃の加熱処理を行うことが望ましい。有機化合物層902の形成に蒸着法を用いる場合、真空度が5×10-3Torr(0.665Pa)以下、好ましくは10-4〜10-6Torrまで真空排気された成膜室で蒸着を行う。蒸着の際、予め、抵抗加熱により有機化合物は気化されており、蒸着時にシャッターが開くことにより基板の方向へ飛散する。気化された有機化合物は、上方に飛散し、メタルマスクに設けられた開口部を通って基板に蒸着される。
例えば、Alq3、部分的に赤色発光色素であるナイルレッドをドープしたAlq3、Alq3、p−EtTAZ、TPD(芳香族ジアミン)を蒸着法により順次積層することで白色を得ることができる。
また、有機化合物層902として例えば、正孔注入層としてCuPc(20nm)、正孔輸送層として酸化モリブデン(MoOX)、α−NPD(40nm)、発光層としてAlq3:DMQd(375nm)(DMQd:キナクリドン誘導体)、電子輸送層としてAlq3(375nm)を形成しても良い。
また、スピンコートを用いた塗布法により有機化合物層902を形成する場合、塗布した後、真空加熱で焼成することが好ましい。また、有機化合物層902を単層とすることもでき、ホール輸送性のポリビニルカルバゾール(PVK)に電子輸送性の1,3,4−オキサジアゾール誘導体(PBD)を分散させてもよい。また、30wt%のPBDを電子輸送剤として分散し、4種類の色素(TPB、クマリン6、DCM1、ナイルレッド)を適当量分散することで白色発光が得られる。
また、1枚のパネルでフルカラー表示させるためにR、G、Bごとに有機化合物層の塗り分けを行ってもよい。
次に、対向基板904に正孔注入電極901に直交する縞(ストライプ)状の電子注入電極903(陰極)をエッチング形成し、正孔注入電極901および有機化合物層902が形成された基板900と貼り合わせる。電子注入電極903としては、MgAg、MgIn、AlLi、CaF2、CaNなどの合金、または該合金からなる膜上にAlを積層させた膜を用いることができる。あるいは、周期表の1族もしくは2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着法により形成した膜を用いても良い。
次に、陽極と陰極とをコントロールするためのドライバーICを接続し、線順次スキャンによる表示を可能とするパッシブ型表示装置が得られる。
なお、パッシブ型表示装置は、表示装置全体において所望の輝度を維持するために、すべての画素の輝度をその輝度に保つ必要があることから、瞬間輝度が非常に高くなり、消費電力が大きくなると言う欠点を有している。また、それに伴い、パッシブ型表示装置においては、発光素子の寿命が短くなる傾向がある。しかし、本発明のごとく、珪素又は酸化珪素を含有させた透光性酸化物導電層を正孔注入電極901として用いることにより、パッシブ型表示装置における上記欠点を緩和することができ、低消費電力、長寿命で安定性の高い表示装置を得ることができる。
本発明は、発光素子の正孔注入電極として、異なる珪素又は酸化珪素濃度を含むITSO等の導電層の積層構造を採用することにより、発光効率が高く、かつ低消費電力で明るく、安定性の高い表示装置を歩留まりよく提供することができる。また、他の処理工程を行うと同時に導電層上に珪素、酸化珪素、窒化珪素等を主成分とするバリア層を形成することにより、より発光効率の高い表示装置を提供することができる。
これらの効果を有する本発明は、実施例でも挙げたように、アクティブマトリクス型表示装置、パッシブ型表示装置いずれにも適用することができる。また、トップエミッション型、ボトムエミッション型、デュアルエミッション型の種類を問わず本発明を適用することができ、その応用範囲は極めて広い。
本発明を用いた表示装置の工程概略図 本発明を用いた表示装置の発光素子部を拡大した図 従来の導電層と正孔注入層との接触状態を示すバンドモデル図 導電層を積層させた場合の導電層と正孔注入層との接触状態を説明するバンドモデル図 ITSOにおけるESCA分析のピーク(測定深さ領域:表面〜1nm)を示す図 ITSOにおけるESCA分析のピーク(測定深さ領域:4〜5nm)を示す図 本発明を用いた周辺一体型アクティブマトリクス表示装置の工程概略図 本発明を用いた周辺一体型アクティブマトリクス表示装置の完成概略図 本発明を用いたトップエミッション型、ボトムエミッション型、デュアルエミッション型表示装置の概略図 本発明をチャネルエッチ型トランジスタを用いた表示装置に適用した場合の工程概略図 本発明をチャネルストップ型トランジスタを用いた表示装置に適用した場合の工程概略図 本発明を用いたパッシブ型表示装置の概略図
符号の説明
106a: 第1導電層
106b: 第2導電層
620a、901a、1118a: 珪素又は酸化珪素を低濃度に含む導電層
106b、620b、902a、1118b: 珪素又は酸化珪素を高濃度に含む導電層
106、901、1118: 正孔注入電極
112: バリア層
620: 第1の電極
623: 第2の電極

Claims (3)

  1. 珪素又は酸化珪素を含む透明導電性材料を用い、最上層の導電層の珪素又は酸化珪素の濃度が他の導電層の珪素又は酸化珪素の濃度よりも高くなるように、複数の導電層を積層させることにより正孔注入電極を形成し、
    前記複数の導電層のうち、前記最上層の導電層の表面から、前記透明導電性材料の成分を選択的に除去することにより、残存した珪素又は酸化珪素からなるバリア層を形成し、
    前記バリア層に接して有機化合物からなるEL材料を用いた発光層を含む層を形成することを特徴とする発光装置の作製方法。
  2. 珪素又は酸化珪素を含む透明導電性材料を用い、最上層の導電層は7〜15原子%の珪素又は酸化珪素を含み、他の導電層のうち少なくとも一層が1〜6原子%の珪素又は酸化珪素を含むように、複数の導電層を積層させることにより正孔注入電極を形成し、
    前記複数の導電層のうち、前記最上層の導電層の表面から、前記透明導電性材料の成分を選択的に除去することにより、残存した珪素又は酸化珪素からなるバリア層を形成し、
    前記バリア層に接して有機化合物からなるEL材料を用いた発光層を含む層を形成することを特徴とする発光装置の作製方法。
  3. 請求項1又は請求項2において、
    前記透明導電性材料は、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛から選ばれた一種に珪素又は酸化珪素が含まれてなることを特徴とする発光装置の作製方法。
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