JP4573720B2 - Vベルト式無段変速機 - Google Patents

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Description

本発明は、Vベルト式無段変速機の変速比可変機構に関するものである。
従来技術の1例として、駆動プーリの、固定半体と可動半体との間隔を、電動モータを備えた変速アクチュエータによって制御し、従動プーリの固定半体と可動半体との間隔は、歯車機構を介して、駆動プーリと連動させて設定する例が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この例では連動機構が複雑となっていた。
特開2001−330093号公報(図6)。
本発明は、従来のような複雑な歯車機構による駆動プーリと従動プーリの連動をやめ、駆動プーリと従動プーリにそれぞれ電動モータで駆動される変速アクチュエータを設けて、変速比可変機構の構造を簡単化しようとするものである。
本発明は上記課題を解決したものであって、請求項1に記載の発明は、固定半体(48)と可動半体(49)とを備えて構成される駆動プーリ(47)と、固定半体(53)と可動半体(54)とを備えて構成される従動プーリ(52)とを備えたVベルト式無段変速機において、上記駆動プーリ(47)と従動プーリ(52)の双方に変速アクチュエータ(90,130)がそれぞれ配置され、上記変速アクチュエータ(90,130)は、上記駆動プーリ(47)と従動プーリ(52)とのそれぞれの可動半体(49;54)を軸方向に移動させる送り機構(79,83;120,125)とそれを動かす電動モータ(91;131)からなり、上記駆動プーリ(47)と従動プーリ(52)とが互いに独立して制御され、上記両送り機構(79,83;120,125)はネジ式送り機構であって、上記変速アクチュエータ(90,130)の作動を減速歯車を介してそれぞれの可動半体(49;54)に伝達して該可動半体(49;54)をプーリ軸線方向に移動させるように配設され、上記従動プーリ(52)の送り機構(120,125)に関係する従動プーリ(52)の固定半体(53)は、該固定半体(53)と対をなす可動半体(54)を貫通する筒状部(53B)を備え、上記従動プーリ(52)の送り機構(120,125)は、上記筒状部(53B)の周りに支持され、上記従動プーリ(52)の送り機構((120,125)とそれに関係する可動半体(54)との間には、該可動半体(54)を固定半体(53)に対し押圧する推力を調整する推力調整手段(126)が介装されたことを特徴とするVベルト式無段変速機である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のVベルト式無段変速機において、
上記従動プーリ用送り機構は、従動軸に支持されるクラッチ部材に対して従動プーリ固定半体及び従動プーリ可動半体を挟んで反対側に配置されていることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のVベルト式無段変速機において、上記従動プーリ(52)の送り機構(120,125)に設けられる上記推力調整手段(126)は、ばね(126)からなり、該ばね(126)は、上記従動プーリ(52)の送り機構(120,125)とそれに関係する可動半体(54)との間で、回転軸方向に弾発的に設けられることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のVベルト式無段変速機において、上記推力調整手段は、ばねと該ばねの伸縮を検出するストロークセンサからなり、該ストロークセンサの検出値により、関係するプーリが制御されることを特徴とする。
請求項1の発明によって、送り機構の配置スペース確保が容易になり、また、電動モータの冷却性の確保が可能となる。
請求項2の発明によって、従動プーリの互いに向き合う両傘状部の外面側のスペースを有効利用することが可能となる。
請求項の発明によって、ばねからなる簡単な構造により、推力を調整することができるため、ベルトの側圧を常に最適化することが容易に可能となる。
請求項の発明によって、ベルトの側圧調整量に応じたプーリ制御を容易に行うことが出来る。
図1は本発明に係るパワーユニット1の側面図である。このパワーユニットは自動二輪車に搭載されるもので、車両に固定された頭上弁式4ストロークサイクル2気筒の水冷式内燃機関2と、これに対してクランク軸11を中心として上下揺動可能に支持される変速機3と後輪支持部4と後輪とを一体化した部分から構成されている。矢印Fは内燃機関2の前方を指している。
このパワーユニット1の内燃機関2は、クランクケース6と、シリンダブロック7と、シリンダヘッド8と、シリンダヘッドカバー9とに囲まれた部分よりなり、クランクケース6の前端に、前方やや上向きに指向したシリンダブロック7が結合され、同シリンダブロック7の前端にシリンダヘッド8が結合され、同シリンダヘッド8の前端にシリンダヘッドカバー9が結合されている。また後輪支持部4には後輪軸60が組み込まれており、内燃機関の動力を後輪に伝達する。
図2は、図1のA−A断面、B−B断面、およびC−C断面を一平面上に描いた断面展開図である。クランクケース6は左クランクケース6L、右クランクケース6Rとからなっている。左右のクランクケース6L、6Rのジャーナル軸受部10L、10Rに、クランク軸11が回転可能に支持されている。一方、シリンダブロック7に形成されたシリンダ穴12にピストン13が摺動可能に嵌装されている。クランク軸11およびピストン13に、それぞれクランクピン14およびピストンピン15を介して、コンロッド16の両端が枢支されている。ピストン13が往復動すると、それに伴ってクランク軸11が回転する。ピストン13の端面に向き合うシリンダヘッド8の底面には燃焼室20が形成され、点火プラグ21がシリンダヘッドカバー9の頂部から装着され、その先端が上記燃焼室20に臨んでいる。
シリンダヘッド8には上記燃焼室20に連なる吸気ポートおよび排気ポートが形成されている。吸気ポートの燃焼室側開口を開閉する吸気弁と、排気ポートの燃焼室側開口を開閉する排気弁が、シリンダヘッド8に摺動可能に嵌挿されている。図2には右側燃焼室の排気弁27が図示してある。
図2において、シリンダヘッド8とシリンダヘッドカバー9の間にクランク軸11と平行にカム軸28が支承され、カム軸28に設けられたカムによって、吸気弁、排気弁が開閉駆動される。図2には排気用カム29が示されている。クランク軸11の右部に設けられた駆動スプロケット30とカム軸28の右端に設けられた従動スプロケット31との間に巻き掛けられた無端状チェーン32によって、カム軸28はクランク軸11によって、クランク軸11の1/2の回転数で、回転駆動される。
右クランクケース6Rの外側に右クランクケースカバー33が設けてあり、その内面に固定されたステータ34と、クランク軸11に固定され上記ステータ34を囲むロータ35とから、発電機36が構成されている。発電機36に隣接して設けてある従動歯車37は図示していないスタータモータからの回転駆動を受けるための歯車である。
パワーユニット1における変速機3を収納する変速機ケース38は、右変速機ケース38R、左変速機ケース38Lおよび仕切り壁38Sから構成されている。右変速機ケース38Rはクランクケース6の左右で回動可能に支持されている。クランクケースの左側では、図5に示されるように、左クランクケース6Lに、ボルト22によって取り付けられた支持金物39に保持されたボールベアリング40によって回動可能に支持され、クランクケースの右側では、右クランクケースカバー33に取り付けられた支持金物41に保持されたローラベアリング42によって支持された接続金物43A、43Bによって回動可能に支持されている。接続金物43A、43Bはボルトで一体化されている。左変速機ケース38Lの外側に変速機ケースカバー23が設けてある。
左変速機ケース38Lと仕切り壁38Sは、いずれも右変速機ケース38Rにボルトによって結合されている。変速機3の変速機ケース38の後端部は後輪支持部4となっている。変速機3は、Vベルト式無段変速機45と歯車減速機46とからなっている。Vベルト式無段変速機45は、前半部が、左変速機ケース38Lと右変速機ケース38Rとの間、後半部が、左変速機ケース38Lと仕切り壁38Sとの間に設けられ、歯車減速機46は、仕切り壁38Sと右変速機ケース38Rとの間に設けられている。
Vベルト式無段変速機45の駆動軸は、クランク軸11そのものであり、同クランク軸11の左端部にVベルト式無段変速機45の駆動プーリ47が設けてある。駆動プーリ47は固定半体48と可動半体49とを備えて構成されている。Vベルト式無段変速機45の従動軸50は、左変速機ケース38Lと仕切り壁38Sと右変速機ケース38Rとに回転自在に支持されている。この従動軸50に遠心クラッチ51を介してVベルト式無段変速機45の従動プーリ52が設けてある。従動プーリ52は固定半体53と可動半体54とを備えて構成されている。駆動プーリ47と従動プーリ52とに無端状Vベルト55が架渡され、駆動プーリ47の回転が従動プーリ52に伝達される。従動プーリ52の回転数が所定回転数を越えると、従動プーリ52と従動軸50との間に設けられている遠心クラッチ51が接続状態となり、従動軸50が回転を始める。
歯車減速機46は3本の回転軸に設けられた歯車群によって構成されている。第1の軸は、右変速機ケース38Rと仕切り壁38Sとに支持されているVベルト式無段変速機45の従動軸50の右半部であり、小径歯車56が形成されている。第2の軸は、右変速機ケース38Rと仕切り壁38Sとに回転自在に支持されている中間軸57であり、上記従動軸50の小径歯車56に噛合う大径歯車58が一体に嵌着されるとともに、それに隣接して小径歯車59が形成されている。第3の軸は、仕切り壁38Sと右変速機ケース38Rと前記接続金物43Aに結合されているアーム62とに回転自在に支持されている後輪軸60である。後輪軸60には上記中間軸57の小径歯車59に噛合う大径歯車61が嵌着されている。この構成によって、従動軸50のトルクは、上記減速歯車群を介して減速されて後輪軸60に伝達される。後輪軸60には、後輪5が一体的に固定されている。
図3は駆動プーリ47とその周辺部材のクランク軸11への組み付け状態を示す拡大断面図である。駆動プーリ47は、駆動プーリ固定半体48と駆動プーリ可動半体49とから構成されている。クランク軸11の左半部には、段差11aと段差11bで区切られた第1の小径部11Aと、段差11bとクランク軸端面部11cで区切られた第2の小径部11Bが形成されている。第1の小径部11Aの端にはスプライン11d、第2の小径部11Bの端にはスプライン11eが設けてある。
第1の小径部11Aには、ボールベアリング63の内輪、第1の支持スリーブ64、およびガイドスリーブ65が嵌挿され、第2の小径部11Bには、第2の支持スリーブ66と駆動プーリ固定半体48が嵌装されている。スリーブ64、65、66はスチール製、駆動プーリ固定半体48はアルミ製である。上記各部材は、クランク軸11の端部のねじ孔に、ワッシャ67を介して螺入されたボルト68で締められ、クランク軸11方向に移動不能に固定される。上記部材のうち、ガイドスリーブ65はその内側のスプライン65aを介して第1の小径部11Aのスプライン11dに嵌装されている。駆動プーリ固定半体48はその中心孔の内側のスプライン48aを介して第2の小径部11Bのスプライン11eに嵌装されている。したがって、これらの部材はクランク軸11に対して相対回転不能に固定される。駆動プーリ固定半体48はクランク軸11と共に回転する。
駆動プーリ可動半体49は、上記固定半体に対向する傘状部49Aと、上記スリーブ64、65、66を囲み、上記傘状部49Aと一体に形成された筒状部49Bとからなっている。傘状部49Aはアルミ合金製、筒状部49Bはスチール製である。傘状部49Aは、筒状部49Bのフランジ部にリベット44によって一体的に結合されている。駆動プーリ可動半体49の筒状部49Bの内側には、内方へ突出する突起状スプライン49Baが形成され、上記ガイドスリーブ65の外周に形成された外側スプライン65bに嵌合している。上記ガイドスリーブ65の外側スプライン65bは軸方向に長いスプラインであるから、上記突起状スプライン49Baは、そのガイド溝の中で軸方向に摺動可能である。したがって、駆動プーリ可動半体49は、クランク軸11に対しては相対回転不可であるが、軸方向には移動可能に保持される。スプライン11d、65a、65b、49Baによって、駆動プーリ可動半体49はクランク軸11からトルクを受けてクランク軸11と共に回転する。ガイドスリーブ65の外側スプライン65bの溝にはグリースが塗布され、可動半体筒状部49Bの突起状スプライン49Baの摺動を円滑化している。可動半体筒状部49Bの両端部には、上記グリースの漏出防止と埃の侵入防止のためのシール69が設けてある。
図4は図3のIV−IV断面の軸部のみ(ボールベアリング等を除く)の拡大断面図である。互いに噛み合っているクランク軸11のスプライン11dとガイドスリーブ65の内側スプライン65aはインボリュートスプラインであり、ガイドスリーブ65の外側スプライン65bとこれに噛み合う突起状スプライン49Baもインボリュートスプラインである。突起状スプラインの移動に伴う空気やグリースの移動を可能にするために、ガイドスリーブの外周面と可動半体筒状軸部49Bの内周面との間には隙間70が設けてある。
図3において、円筒状のボールベアリング外輪保持部材75が、上記クランク軸11に装着されているボールベアリング63の外輪を軸方向相対移動不能に保持している。ボールベアリング外輪保持部材75の外周のフランジ部75aに雌ネジ円筒部材76が溶接によって一体化されている。雌ネジ円筒部材76の外周のフランジ部76aには、環状歯車77がボルト78によって結合されている。ボールベアリング外輪保持部材75と雌ネジ円筒部材76と環状歯車77とは一体化して雌ネジ組立体79を形成し、ボールベアリング63によってクランク軸11に支持され、軸方向移動不可の状態で、クランク軸11とは独立の回転を行うことが出来る。雌ネジ組立体79の環状歯車77は後述の変速アクチュエータ90の一部をなす第2中間歯車104の小径歯車102によって回転駆動される。
駆動プーリ可動半体49の筒状部49Bの外周にはボールベアリング72の内輪が軸方向相対移動不能に装着され、雄ネジ円筒部材80が、その内周で、上記ボールベアリング72の外輪を一体的に保持している。雄ネジ円筒部材80の外周のネジ部は、上記雌ネジ円筒部材の内周のネジ部に係合している。雄ネジ円筒部材80の端部のフランジ部80aには回り止め部材81がボルト82によって結合されている。雄ネジ円筒部材80と回り止め部材81とボルト82は一体化して雄ネジ組立体83を形成している。回り止め部材81はその回り止め軸部81aの両側部に突出形成されている突出部81bが、図6(側面図)に示す右変速機ケース38Rに設けられた回り止めガイドレール84に係合している。これによって、雌ネジ組立体79が回転したとき、雄ネジ組立体83は、クランク軸周りの回動が阻止された状態で、クランク軸軸線方向の移動のみが可能となっている。上記雌ネジ組立体79と雄ネジ組立体83とによって、ネジ式送り機構が構成されている。
回り止め部材81のアーム部には前部ストッパ81cが一体成形されている。これは、雄ネジ組立体83の後方移動の限界を検知するためのものである。回り止め部材81の軸部81aの後端には後部ストッパ85がボルト86によって取り付けてある。これは、雄ネジ組立体83の前方移動の限界を検知するためのものである。回り止め部材81と回り止めガイドレール84とによって回り止め機構88が構成されている。
回り止め部材81には、その軸部外方に延長部81dが形成されている。この延長部81dは可動半体の現在位置を検知するためのストロークセンサ87の端部から突出している棒状部材の先端部に当接している。ストローク検知はストロークセンサ87の端部からバネで押し出されている棒状部材の変位を検知することによって行われる。棒状部材の周囲部はゴム製のベロウズで覆われている。ストロークセンサ87の基部は、右変速機ケース38Rに接続されている。
図5は、変速機3の前半部の断面展開図である。図6は変速機の前半部を側面から見た歯車等の配置図である。雌ネジ組立体79は変速アクチュエータ90によって回転駆動される。変速アクチュエータ90は、電動モータ91と歯車減速機構92とによって構成されている。上記電動モータ91は車速とスロットル開度と内燃機関の回転数に応じて自動的に回転が制御されるものである。右変速機ケース38Rに減速歯車ケース93が取り付けられている。このケースは、右側ケース部材93Rと左側ケース部材93Lと端部ケース部材93Eとからなっている。これらのケース部材に挟まれた部分に減速歯車室94が形成されている。取付け板95を介して、電動モータ91が減速歯車ケース93の右側ケース部材93Rに取付けられ、同モータの回転軸に刻設されたピニオン96が減速歯車室94の中に突入している。
上記ピニオン96に噛み合う大径歯車97と、これに隣接する小径歯車98とが一体に構成された第1中間歯車99が減速歯車ケース93にボールベアリング100を介して回転可能に支持されている。
上記小径歯車98に噛み合う大径歯車101と、これに一体的に隣接する小径歯車102とが、回転軸103に嵌挿されて一体となっている第2中間歯車104が減速歯車ケース93にボールベアリング105を介して回転可能に支持されている。上記小径歯車102に、前述の雌ネジ組立体79の環状歯車77が噛み合っている。
電動モータ91が制御指令に応じて正方向に回転すると、第1、第2中間歯車99、104を経由して動力が伝達され、雌ネジ組立体79が回転し、雌ネジ円筒部材76のねじ部に噛み合っている回転不能の雄ネジ組立体83の雄ネジ円筒部材80のネジ部が、上記雌ネジ円筒部材76のねじ部からクランク軸方向の推力を受け、雄ネジ組立体83はクランク軸軸線方向へ移動する。上記雄ネジ円筒部材80のネジ部が受ける推力は、ボールベアリング72をを介して可動半体に伝わり、駆動プーリ可動半体49はクランク軸軸線方向へ移動し、駆動プーリ固定半体48との間隔を狭め、Vベルトを外周方向へ移動させる。電動モータ91が制御指令に応じて逆方向に回転すると、上記とは逆の過程によって、駆動プーリ固定半体48と駆動プーリ可動半体49との間隔が広がり、Vベルトは中心方向へ移動する。
図7は変速機3の後半部の断面展開図である。従動プーリ52は従動プーリ固定半体53と従動プーリ可動半体54とからなっている。従動プーリ固定半体53はアルミ製の傘状部53Aとスチール製の筒状部53Bとからなる。従動プーリ可動半体54もアルミ製の傘状部54Aとスチール製の筒状部54Bとからなる。固定半体53の傘状部は筒状部の端にボルト147によって締結され、可動半体54の傘状部は筒状部の端に鋳造によって一体形成されている。
従動軸50には段差部50a、50b、50cが設けてある。段差部50aの外周に設けられたボールベアリング110と段差部50bの外周に設けられたローラベアリング111とに、従動プーリ固定半体53の筒状部53Bが、従動軸50に対して回転可能に支持されている。
上記固定半体の筒状部53Bの外周に可動半体の筒状部54Bが摺動可能に嵌挿されている。固定半体の筒状部53Bの外周の4ヶ所にピン112が植設されている。可動半体の筒状部54Bには周方向4箇所に筒状部54Bの半径方向に貫通し、かつ軸線方向に対して傾斜して延びるカム溝113が設けてあり、このカム溝113に上記ピン112の頭部が嵌挿されている。これによって従動プーリ可動半体54は、ピン112に規制されて、従動プーリ固定半体53に対して、軸線方向の相対移動が可能であり、かつ上記カム溝の角度分の周方向相対移動が可能である。
従動プーリ可動半体54の筒状部54Bの外周に円筒部材114が、軸方向に移動出来ないように固定され、筒状部54Bのカム溝113を覆っている。従動プーリ可動半体54の、ピン112に規制された摺動を助けるために、カム溝113内にはグリースが塗布され、円筒部材114の両端部内側には油漏れ防止のためのシール材が設けてある。円筒部材114の右端外周にボールベアリング115の内輪が保持されている。ボールベアリング115の外輪には、これに当接する環状部材116が設けてある。
従動プーリ固定半体53の筒状部53Bの左端外周の段差部にボールベアリング117の内輪がナット118によって固定されている。ボールベアリング117の外輪に雄ネジ円筒部材120が軸方向移動不可に固定されている。雄ネジ円筒部材120は、従動プーリ52に対して、ボールベアリング117によって回転が遮断されている。雄ネジ円筒部材120には、回り止め部材121が固定されており、その端部は変速機ケース38に固定されている(図示なし)。したがって、雄ネジ円筒部材120は、軸線方向、回転方向共に、従動軸50および従動プーリ52とは独立して、変速機ケース38に対して静止状態を保つことができる。
雄ネジ円筒部材120の雄ネジ部を、雌ネジ円筒部材122が螺合状態で覆っている。雌ネジ円筒部材122のフランジ部122aに環状歯車123がボルト124によって固定されている。雌ネジ円筒部材122と環状歯車123とボルト124によって、雌ネジ組立体125が形成されている。
環状歯車123が、後述の第2中間歯車144の小径歯車142に駆動されて回転し、固定している雄ネジ円筒部材120の雄ネジ部から雌ネジ円筒部材122の雌ネジ部が推力を受け、雌ネジ円筒部材122は回転しながら軸方向に駆動される。雌ネジ円筒部材122の端とボールベアリング115の外周に固定してある環状部材116との間に皿ばね126が介装してある。これによって、雌ネジ円筒部材122の軸方向移動によって、皿ばね126、環状部材116、ボールベアリング115、および円筒部材114を経由して従動プーリ可動半体54が軸方向に駆動される。上記雄ネジ円筒部材120と雌ネジ組立体125とによってネジ式送り機構が構成される。
上記雌ネジ組立体125は、変速アクチュエータ130によって回転駆動される。変速アクチュエータ130は、電動モータ131と歯車減速機構132とによって構成されている。上記電動モータ131は車速とスロットル開度と内燃機関の回転数に応じて自動的に回転が制御されるものである。前記皿ばね126のストレインを計測して、従動プーリ可動半体のVベルトに対する押圧力を検知し、制御のためにフィードバックされる。
左変速機ケース38Lに減速歯車ケース133が取り付けられ、減速歯車室134が形成されている。取付け板135を介して、電動モータ131が減速歯車ケース133に取付けられ、同モータの回転軸に刻設されたピニオン136が減速歯車室134の中に突入している。上記ピニオン136に噛み合う大径歯車137と、これに隣接する小径歯車138とが一体に構成された第1中間歯車139が、左変速機ケース38Lと減速歯車ケース133にボールベアリング140を介して回転可能に支持されている。
上記小径歯車138に噛み合う大径歯車141と、これに一体的に隣接する小径歯車142とが、回転軸143に嵌挿されて一体となっている第2中間歯車144が、左変速機ケース38Lと減速歯車ケース133にボールベアリング145を介して回転可能に支持されている。上記小径歯車142は軸方向寸法の長い歯車で、この軸方向の任意の位置で、上記雌ネジ組立体125の環状歯車123との噛合いが可能となっている。
図8は変速機の後半部を側面から見た歯車等の配置図である。図7の状態において、電動モータ131が制御指令に応じて正方向に回転すると、第1、第2中間歯車139、144を経由して動力が伝達され、雄ネジ円筒部材120のねじ部に噛み合っている雌ネジ組立体125が回転し、雌ネジ組立体125自体が従動軸50の軸線方向へ移動し、皿ばね126と環状部材116とボールベアリング115と円筒部材114とを介して従動プーリ可動半体54を押し、駆動プーリ固定半体53との間隔を狭め、Vベルトを外周方向へ移動させる。電動モータ131が制御指令に応じて逆方向に回転すると、上記とは逆の過程によって、従動プーリ固定半体53と従動プーリ可動半体54との間隔が広がり、Vベルトは中心方向へ移動する。なお、雌ネジ組立体の左側ストッパ121aは、前記回り止め部材121の他端に設けてあり、雌ネジ組立体の左方移動の限界を検知する。
従動プーリ固定半体の右端面に遠心クラッチ51の内側回転部材51Aがボルト147で固定されている。遠心クラッチ51の外側回転部材51Bは、上記内側回転部材51Aに対向する位置で従動軸50にスプライン148を介して相対回転不能に嵌挿されている。外側回転部材51Bの外周部は上記内側回転部材51Aを覆っている。従動プーリが所定回転数に達すると、その回転が、内側回転部材51A、外側回転部材51Bを経て伝達され、従動軸50が回転を始める。従動軸50の回転は、図2に関連して述べたように、歯車減速機46の歯車を経由して減速され、後輪軸60に伝達され、後輪5が駆動される。
以上に詳述したように、本実施形態の無段変速機では、従来のような複雑な歯車機構による駆動プーリと従動プーリの連動をやめ、駆動プーリと従動プーリにそれぞれ電動モータで駆動される変速アクチュエータを設けて、構造を簡単化している。本実施形態の構成によって次の効果がもたらされる。
(1)送り機構の配置スペース確保が容易になり、また、電動モータの冷却性の確保が可能となる。
(2)従動プーリの互いに向き合う両傘状部の外面側のスペースを有効利用することが可能となる。
(3)Vベルトの側圧の調節が可能となり、ベルトの耐久性を向上させることができる。
(4)ばねからなる簡単な構造により、推力を調整することができるため、ベルトの側圧を常に最適化することが容易に可能となる。
(5)ベルトの側圧調整量に応じたプーリ制御を容易に行うことが出来る。
本発明に係るパワーユニット1の側面図である。 図1のA−A断面、B−B断面、およびC−C断面を一平面上に描いた断面展開図である。 駆動プーリ47とその周辺部材のクランク軸11への組み付け状態を示す拡大断面図である。 図3のIV−IV断面の軸部のみの拡大断面図である。 変速機3の前半部の断面展開図である。 変速機の前半部を側面から見た歯車等の配置図である。 変速機3の後半部の断面展開図である。 変速機の後半部を側面から見た歯車等の配置図である。
符号の説明
、11…クランク軸、45…Vベルト式無段変速機、47…駆動プーリ、48…駆動プーリ固定半体、49…駆動プーリ可動半体、50…従動軸、51…遠心クラッチ、52…従動プーリ、53…従動プーリ固定半体、54…従動プーリ可動半体、55…無端状Vベルト、76…雌ネジ円筒部材、79…雌ネジ組立体、80…雄ネジ円筒部材、83…雄ネジ組立体、87…ストロークセンサ、90…変速アクチュエータ、91…電動モータ、120…雄ネジ円筒部材、122…雌ネジ円筒部材、125…雌ネジ組立体、126…皿ばね、130…変速アクチュエータ、131…電動モータ

Claims (4)

  1. 固定半体(48)と可動半体(49)とを備えて構成される駆動プーリ(47)と、
    固定半体(53)と可動半体(54)とを備えて構成される従動プーリ(52)とを備えたVベルト式無段変速機において、
    上記駆動プーリ(47)と従動プーリ(52)の双方に変速アクチュエータ(90,130)がそれぞれ配置され、
    上記変速アクチュエータ(90,130)は、上記駆動プーリ(47)と従動プーリ(52)とのそれぞれの可動半体(49;54)を軸方向に移動させる送り機構(79,83;120,125)とそれを動かす電動モータ(91;131)からなり、
    上記駆動プーリ(47)と従動プーリ(52)とが互いに独立して制御され、
    上記両送り機構(79,83;120,125)はネジ式送り機構であって、上記変速アクチュエータ(90,130)の作動を減速歯車を介してそれぞれの可動半体(49;54)に伝達して該可動半体(49;54)をプーリ軸線方向に移動させるように配設され、
    上記従動プーリ(52)の送り機構(120,125)に関係する従動プーリ(52)の固定半体(53)は、該固定半体(53)と対をなす可動半体(54)を貫通する筒状部(53B)を備え、
    上記従動プーリ(52)の送り機構(120,125)は、上記筒状部(53B)の周りに支持され、
    上記従動プーリ(52)の送り機構((120,125)とそれに関係する可動半体(54)との間には、該可動半体(54)を固定半体(53)に対し押圧する推力を調整する推力調整手段(126)が介装された
    ことを特徴とするVベルト式無段変速機。
  2. 上記従動プーリ用送り機構(120,125)は、従動軸(50)に支持されるクラッチ部材(51)に対して従動プーリ固定半体(53)及び従動プーリ可動半体(54)を挟んで反対側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のVベルト式無段変速機。
  3. 上記従動プーリ(52)の送り機構(120,125)に設けられる上記推力調整手段(126)は、ばね(126)からなり、該ばね(126)は、上記従動プーリ(52)の送り機構(120,125)とそれに関係する可動半体(54)との間で、回転軸方向に弾発的に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のVベルト式無段変速機。
  4. 上記推力調整手段(126)は、ばねと該ばねの伸縮を検出するストロークセンサ(87)からなり、該ストロークセンサ(87)の検出値により、関係するプーリ(47)が制御されることを特徴とする請求項1に記載のVベルト式無段変速機。
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