JP4573503B2 - 半導体ウェーハ研磨装置における研磨クロス研削装置 - Google Patents

半導体ウェーハ研磨装置における研磨クロス研削装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はシリコンウェーハなどの半導体ウェーハの表面を研磨する装置に関し、特に研磨装置に用いられる研磨クロスを研削する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコンウェーハなどの半導体ウェーハを製造する工程の1つに、半導体ウェーハの表面を鏡面状に研磨する研磨工程がある。
【0003】
研磨工程は、複数のラフ研磨工程とファイナル研磨工程とからなり、半導体ウェーハの表面が段階的に研磨される。
【0004】
ラフ研磨工程に用いられる研磨装置の構成を図5に示す。
【0005】
図5(a)は研磨装置の側面図で、図5(b)は研磨装置を上面からみた図である。
【0006】
これら図5(a)、(b)に示すように、研磨装置には円盤状の定盤1が回動自在に設けられている。定盤1の上面には研磨クロス2が貼着されている。定盤1の中心にはセンタローラ6が回動自在に設けられ、定盤1の外周には4つのガイドローラ7が回動自在に設けられている。
【0007】
研磨クロス2の上方には、4つの円形状の押圧部材3が上下方向に移動可能に、かつ回動自在に設けられている。
【0008】
押圧部材3と同一径を有する円形状の研磨プレート4が用意され、研磨プレート4に5枚の半導体ウェーハ5が貼着される。半導体ウェーハ5の外周と研磨プレート4の外周との距離をΔXとする。研磨プレート4の直径Dがたとえばφ576mmのとき距離ΔXはたとえば10mmに設定される。
【0009】
半導体ウェーハ5が下側となるように研磨プレート4が研磨クロス2上に載置される。これにより半導体ウェーハ5は研磨プレート4と研磨クロス2との間に介在された状態となる。研磨プレート4の側面はセンタローラ6とガイドローラ7とに当接されることで保持され、研磨クロス2上の所定位置に位置決めされる。研磨プレート4上には押圧部材3が位置される。
【0010】
押圧部材3に上方から荷重がかけられつつ押圧部材3が回転する。また定盤1が回転する。これにより半導体ウェーハ5の表面は、研磨クロス2の表面に押し当てられつつ研磨クロス2上を走行し、半導体ウェーハ5の表面が研磨される。
【0011】
なお研磨の際には研磨クロス2上の半導体ウェーハ5の接触面に砥粒液が流される。
【0012】
半導体ウェーハ5は研磨プレート4に貼着された状態で、研磨プレート4とともに次の工程に搬送される。以下、未研磨状態の半導体ウェーハ5が貼着された研磨プレート4に交換されて、同様にして半導体ウェーハ5の研磨が順次行われる。この研磨装置は、1つの研磨プレート4の交換で複数枚(5枚)の半導体ウェーハ5を一度に研磨できることから、バッチ式の研磨装置と呼ばれる。
【0013】
研磨クロス2は、研磨プレート4の交換回数が増えるにしたがい、つまり研磨クロス2上での半導体ウェーハ5の走行量が増加するに伴い、表面が劣化してくる。
【0014】
研磨クロス2の劣化は、表面の粘弾性の変化、目詰まりといった現象で顕れる。また研磨クロス2が劣化すると、研磨クロス2の目詰まりやクロス表面劣化による研磨レート低下等の現象がみられる。
【0015】
こうした研磨クロスの劣化(粘弾性の変化、目詰まり等)の防止策、研磨クロス表面粗さの半導体ウェーハ表面への転写の防止策として、研磨クロス2の表面をドレッシングする作業(シーズニング)が、一定時間毎に行われる。
【0016】
研磨クロス2の表面を研削することで、クロス表面の劣化、目詰まり部(凹凸)をなくしクロス表面を清浄にかつ平滑にすることができ、クロス表面粗さがウェーハ表面に転写されて半導体ウェーハ5の表面が粗くなってしまうことや研磨レートの低下が防止される。
【0017】
研磨クロス2をドレッシングする方法には、一般的に、ダイヤモンドを電着させたプレートやセラミックの表面を加工したツールが用いられる。
【0018】
【従来技術1】
たとえば下記特許文献1には、ブラシを用いて研磨クロスの表面をブラッシングする工程と、半導体ウェーハの表面を研磨する研磨工程とからなる研磨方法が記載されている。
【0019】
【従来技術2】
また研削作業ではないが、下記特許文献2には、研磨装置を改善することにより半導体ウェーハ表面の品質を向上させる技術が記載されている。すなわち特許文献2には、押圧部材3の荷重の偏りによる半導体ウェーハ5の表面のヘイズむらを防止することを目的として、定盤1の上面を凹凸形状にするという発明が記載されている。
【0020】
【特許文献1】
特開2002−210649号公報
【特許文献2】
特開平6−210563号公報
【発明が解決しようとする課題】
ところが、研磨クロス2を通常の方法で研削したとしても、図8に示すように、半導体ウェーハ5の表面のうち研磨プレート4の外周側の部位5Aで、「面ダレ」と呼ばれる半導体ウェーハ5の平坦度を損なう品質上の不具合が発生してしまうことが明らかになった。
【0021】
ここで面ダレとは、半導体ウェーハ5の縁にRがつくとともに、半導体ウェーハ5の外周側の面が傾いて削れてしまい半導体ウェーハ5の平坦度が損なわることである。
【0022】
面ダレは以下のような原因によるものと考察される。
【0023】
▲1▼研磨クロス面内における研磨レート不均一
図5(a)、(b)に示すように、定盤1の半径方向の研磨クロス2の各部を、研磨クロス領域2Aと定義する。またセンタローラ6の外周面を原点とする定盤1の半径方向距離をRとする。
【0024】
図6(a)は横軸に定盤半径方向距離Rをとり、縦軸に研磨クロス2上で半導体ウェーハ5が走行した量Lをとったグラフである。
【0025】
図6(b)は図6(a)の横軸に対応させて研磨クロス領域2Aを示し、図6(c)は図6(a)の横軸に対応させてセンタローラ6、研磨プレート4、半導体ウェーハ5を示している。
【0026】
これら図6(a)、(b)、(c)に示すように、研磨クロス領域2Aのうち定盤1の中心側(センタローラ6側)の内周部2B、定盤1の外周側の外周部2Dは、それら以外の中間部位2Cと比較して、半導体ウェーハ5の走行量Lが少なく(半導体ウェーハ5の存在確率が低く)、研磨クロス2で目詰まりや、つぶれが生じにくく、研磨クロス2が劣化しにくい。このため研磨クロス2の使用時間の増加に伴い、劣化度合いの差が増大し、研磨レートの不均一が生じる。すなわち、ほとんど新品に近いままの研磨クロス内周部2B、研磨クロス外周部2Dによって、半導体ウェーハ5の外周部5Aが、より多く研磨加工され、面ダレが生じる。
【0027】
▲2▼研磨クロスの未使用部分と使用部分との境界でのテーパ状の段差の発生
研磨クロス内周部2B、研磨クロス外周部2Dは研磨で使用されない領域であり圧縮されないのに対して、それ以外の中間部位2Cは研磨で使用され圧縮される。このため図6(d)に示すように研磨クロス未使用部分と研磨クロス使用部分との間で研磨クロスの劣化の違いによる弾性の差が生じテーパ状の段差が生じてしまう。この研磨クロス2の段差が半導体ウェーハ5の外周部5Aに当接されて局部的に研磨されることから、段差のテーパ形状が半導体ウェーハ5の外周部5Aに転写されて、面ダレが生じる。
【0028】
▲3▼研磨クロス中心部での砥粒だまりによるウェーハ面内不均一研磨
研磨時には研磨クロス2と半導体ウェーハ5との間に砥粒液が流される。しかし研磨クロス2と半導体ウェーハ5との間に流れ込まなかった砥粒液は、図5(b)に示すように研磨プレート4の外周部2Eに溜まってしまう。このため半導体ウェーハ5の外周部5Aの研磨レートが上昇し、面ダレが生じる。
【0029】
本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、半導体ウェーハ5の平坦度を損なう面ダレをなくすことを解決課題とするものである。
【0030】
【課題を解決するための手段および効果】
第1発明は、
半導体ウェーハを、円形の研磨プレートと研磨クロスとの間に介在させ研磨プレートを押圧部材で研磨クロス側に押し当てつつ半導体ウェーハを研磨クロス上の所定部位を走行させることにより半導体ウェーハの表面を研磨する半導体ウェーハ研磨装置に適用され、
研磨プレートと略同じ外径を有する円形の研削治具であって、研磨クロス上の半導体ウェーハ走行部位と半導体ウェーハが走行しなかった部位との段差を研削できる幅の研削部材が外周部に円環状に設けられた研削治具が用意され、
研磨プレートに代えて研削治具を押圧部材で研磨クロス側に押し当てつつ、この研削治具を、研磨クロス上で研磨プレートと同一の軌跡を走行させることによって、研磨クロスを研削するようにしたことを特徴とする。
【0031】
第1発明によれば、図1に示すように、研磨プレート4と略同じ大きさDの研削治具10であって、研磨クロス2上の半導体ウェーハ走行部位(図6(d)の2C)と半導体ウェーハ5が走行しなかった部位(図6(d)の2D)との段差を研削できる幅Wの研削部材12が設けられた研削治具10が用意される。
【0032】
この研削治具10を、研磨プレート4の代わりに、研磨クロス2上に載置して、研磨クロス2上で研磨プレート4と同一の軌跡を走行させることによって、研磨クロス2を研削する(図1(c)、(d)参照)。
【0033】
この結果、図4(c)に示すように、研磨クロス中間部2Cに対し、研磨クロス外周部2D(あるいは研磨クロス内周部2B)をある比率をもって選択的に研削することができるため、研磨クロス外周部2Dあるいは内周部2Bの段差が研削されそれらの境界をフラット若しくは過剰に研削することができるので、半導体ウェーハ5の外周部5Aにおける面ダレをなくし半導体ウェーハ5の平坦度を向上させることができる。このため半導体ウェーハ5の品質を飛躍的に向上させることができる。
【0036】
第2発明は、第1発明において、
前記半導体ウェーハ研磨装置は、複数の半導体ウェーハを、円形の研磨プレートと研磨クロスとの間に介在させて研磨を行う装置であること
を特徴とする。
【0037】
第2発明は、研磨装置を、特に複数の半導体ウェーハ5を同時に研磨するバッチ式の研磨装置に限定したものである。
【0038】
第3発明は、第1発明または第2発明において、
前記半導体ウェーハの外周と前記研磨プレートの外周との距離に応じて、前記研削部材の幅が定められていること
を特徴とする。
【0039】
第3発明は、研削部材12の幅Wの大きさを限定したものであり、図1に示す研削部材12の幅Wは、半導体ウェーハ5の外周と研磨プレート4との距離ΔX(図5(b)参照;たとえば10mm)に応じた値(たとえば10mm〜10mm+α(たとえば40mm))の範囲に定められる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明に係る半導体ウェーハ研磨装置における研磨クロス研削装置の実施の形態について説明する。
【0041】
図1は研削装置の構成を示し、図5で説明した研磨装置と共通の構成要素には同一の符号を付与している。
【0042】
図1(a)は研削治具10を正面図で示し、図1(b)は研削治具10を斜視図で示している。
【0043】
図1(c)は研削治具10が取り付けられた図5の研磨装置を上面からみた図であり、図5(b)に対応している。なお図では研削治具10に対する半導体ウェーハ5の相対的な大きさを示すために、半導体ウェーハ5を図示しているが、研削時には実際には半導体ウェーハ5は存在しない。
【0044】
図1(d)は研削治具10が取り付けられた図5の研磨装置を側面から見た図であり、図5(a)に対応している。
【0045】
なお以下の説明では各部の寸法を例示しつつ説明する。
【0046】
研削治具10は、図5で説明した研磨プレート4と同一直径D(たとえばφ576mm)を有した円形状の研削プレート11と、円環状に形成された最外径が研削プレート11と同一径Dの研削部材12とからなる。
【0047】
研削プレート11は、たとえば研磨プレート4と同一の材質、たとえばセラミックで構成されている。
【0048】
研削部材12は、たとえば材質がSUSの円環状の部材に、ダイヤモンド粒子を表面に電着させて形成されたものであり、ダイヤモンド粒子電着面の裏側が研削プレート11に貼着される。また電着させる方法以外にダイヤモンドを樹脂に溶かし込むことで研削部材12を形成してもよい。またダイヤモンド以外の研削材料を使用する実施も可能である。
【0049】
ここで研削部材12の幅Wは、後述するように、半導体ウェーハ5の外周と研磨プレート4の外周との距離ΔX(図5(b))に応じて定められる。たとえば半導体ウェーハ5の外周と研磨プレート4の外周との距離ΔXが10mmであれば、研削部材12の幅Wは、距離ΔX(10mm)から距離ΔX+α(たとえば50mm)の範囲に定めることが望ましい。研削部材12の幅Wは、研磨クロス2上の半導体ウェーハ走行部位(研磨クロス中間部位2C)と半導体ウェーハが走行しなかった部位(研磨クロス内周部2Bまたは研磨クロス外周部2D)との段差(図6(d)参照)を研削できる幅として定められる。
【0050】
図1(c)、(d)に示すように、研磨装置には円盤状の定盤1が回動自在に設けられている。定盤1の上面には研磨クロス2が貼着されている。定盤1の中心にはセンタローラ6が回動自在に設けられ、定盤1の外周には4つのガイドローラ7が回動自在に設けられている。
【0051】
研磨クロス2の上方には、4つの円形状の押圧部材3が上下方向に移動可能に、かつ回動自在に設けられている。
【0052】
研削時には、円形状の研削治具10が、図5に示す研磨プレート4の代わりに研磨クロス2上に載置される。研削部材12が下側となるように研削治具10が研磨クロス2上に載置される。研削治具10の側面はセンタローラ6とガイドローラ7とに当接されて保持され、研磨クロス2上の所定位置に位置決めされる。
研削治具10上には押圧部材3が位置される。
【0053】
押圧部材3に上方から荷重がかけられつつ押圧部材3が回転する。また定盤1が回転する。これにより研削部材12は、研磨クロス2の表面に押し当てられつつ研磨クロス2上を走行し、研磨クロス2の表面が研削される。研削治具10は、研磨時に研磨プレート4が走行した軌跡と同一の軌跡を走行する。
【0054】
なお上述した実施形態では、4つの研削治具10を用意して、これらを4つの研磨プレート4の代わりに研磨クロス2上に載置して、研磨クロス2の表面を研削するようにしているが、1つの研削治具10を用意してこれを1つの研磨プレート4と交換して研磨クロス2上に載置して、研磨クロス2の表面を研削する実施も可能である。1つの研削治具10を用いて研削を行う際には4つの研削治具を用いる場合と比較して時間をかけて研削を行うことが望ましい。
【0055】
研削が終了すると、研削治具10の代わりに、半導体ウェーハ5が貼着された研磨プレート4が研磨クロス2上に載置され、図5で説明したのと同様にして、半導体ウェーハ5の研磨が行われる。
【0056】
また上述した実施形態では、押圧部材3に上方から荷重をかけることで、研削部材12を一定の荷重で研磨クロス2の表面に押し当てながら研磨クロス2上を走行させているが、必ずしも荷重をかけながら走行させる必要はなく、研削治具10が研磨プレート4と同一の軌跡を走行して研磨クロス2の表面を研削できればよい。
【0057】
以上説明した本実施形態によれば、研削治具10を研磨プレート4の代わりに研磨クロス2上で同一の軌跡を走行させるようにしたので、従来の通常の研削方法と同様に、粘弾性の変化、目詰まり等といった研磨クロス2の劣化が改善され、研磨クロス表面粗さの半導体ウェーハ表面への転写が抑制される。すなわち研磨クロス2の表面が研削され、クロス表面の毛羽立ち、凹凸がなくなりクロス表面を平滑にすることができ、クロス表面粗さがウェーハ表面に転写されて半導体ウェーハ5の表面が粗くなってしまうことが防止される。
【0058】
また本実施形態によれば、前述した半導体ウェーハ5の外周部5Aで発生する面ダレをなくし半導体ウェーハ5の平坦度を向上させウェーハ品質を向上させることができる。これについて以下説明する。
【0059】
図3(a)は、横軸に定盤半径方向距離Rをとり、縦軸に研削治具10による研磨クロス2の表面の研削量Sをとったグラフである。
【0060】
図3(b)は図3(a)の横軸に対応させて研磨クロス領域2Aを示している。
【0061】
図3(a)では研削部材12の幅Wを10mm〜100mmの間で10mm毎に変化させたときの研削量Sを示している。
【0062】
同図3に示すように、幅Wの寸法がいずれの場合でも研磨クロス内周部2B側、研磨クロス外周部2D側でそれら以外の中間部位2Cよりも研削量Sが増大し研削能率が増大していることがわかる。また研削部材12の幅Wの寸法が10mmから100mmに増大するに伴い、研削量Sは増大するが、同時に研磨クロス内周部2B側、研磨クロス外周部2D側における研削量のピーク値と、中間部位2C側における研削量との明確な差がなくなっていくことがわかる。また研削部材12の幅Wの寸法が10mmから100mmに増大するに伴い、研磨クロス内周部2B側、研磨クロス外周部2D側における研削量のピーク値は、中間部位2C側に移動していることがわかる。
【0063】
図2(a)は、横軸に定盤半径方向距離Rをとり、縦軸に研削量比Spをとったグラフである。ここで研削量比Spとは、研磨クロス中間部位2Cのうち研削量Sの値がフラットとなっているフラット部位2F(定盤半径方向距離Rで150mm〜450mm)における研削量の最小値に対する研削量の比率のことである。研削量比Spは、研削部材12の研磨クロス2上での最小走行量に対する走行量の比率を示している。
【0064】
図2(b)は図2(a)の横軸に対応させて研磨クロス領域2Aを示している。
【0065】
図2(a)では研削部材12の幅Wを10mm〜100mmの間で10mm毎に変化させたときの研削量比Spを示している。
【0066】
同図2に示すように、研削部材12の幅Wの寸法がいずれの場合でもフラット部位2Fにおける研削量比Spのプロフィールは変化していないことがわかる。
【0067】
また研削部材12の幅Wの寸法が100mmから10mmに減少するに伴い、研磨クロス内周部2B側、研磨クロス外周部2D側における研削量比Spのピーク値が増大していくことがわかる。また研削部材12の幅Wの寸法が100mmから10mmに減少するに伴い、研磨クロス内周部2B側、研磨クロス外周部2D側における研削量比Spのピーク値は、中間部位2C側に移動していることがわかる。
【0068】
たとえば研削部材12の幅Wが10mmの場合には、研削量比Spのピーク値は、定盤半径方向距離Rが560mmで、つまり研磨クロス中間部位2Cと研磨クロス外周部2Dとの段差の近傍で、約12を示しており、フラット部位2Fにおける最小の研削量に対して約12倍多い量だけ研削が行われる。
図4(a)は、図2(a)に対応させて、横軸に定盤半径方向距離Rをとり、縦軸に研削量比Spをとったグラフである。ただし図4(a)では研削部材12の幅Wが10mm、20mm、30mm、50mm、100mmの場合を代表させて示している。
【0069】
図4(b)は図4(a)の横軸に対応させてセンタローラ6、研磨プレート4、半導体ウェーハ5を示している。
【0070】
図4(c)は、幅Wが10mm〜50mmの研削部材12を用いて研磨クロス2を研削したときの研磨クロス中間部2Cと研磨クロス外周部2D(研磨クロス内周部2B)との境界の形状を示している。
【0071】
図4に示すように研削部材12の幅Wが10mm〜50mmの場合には、半導体ウェーハ10の外周部5Aの近傍で研削量比Spのピーク値が顕れ、そのピーク値はフラット部2Fの研削量比値と比較して十分に大きくなる。このため図6(d)に示される研磨クロス中間部2Cと研磨クロス外周部2Dとの段差を削りとることができる。なお同様にして研磨クロス中間部2Cと研磨クロス内周部2Bとの段差についてもこれを削り取ることができる。一方研磨クロス中間部2Cにおける研削量比Spは内周部2B、外周部2Dにおけるピーク値と比較して十分に低いが、研磨クロス2の劣化を改善し研磨クロス表面粗さの半導体ウェーハ表面への転写を抑制する程度の研削を行うには十分である。
【0072】
図4(c)に示すように、研磨クロス中間部2Cと研磨クロス外周部2Dとの段差は削り取られるとともに、これらの境界に凹部が形成される。この凹部は、研磨クロス2の劣化に伴う図6(d)に示す凸状の段差を相殺するように作用して、研磨クロス中間部2Cと研磨クロス外周部2Dとの境界をフラットにする。
【0073】
研磨クロス中間部2Cと研磨クロス内周部2Bとの段差についても同様である。
【0074】
このように本実施形態によれば、研磨クロス中間部2Cと研磨クロス外周部2D(あるいは研磨クロス内周部2B)との段差が研削されそれらの境界をフラットにすることができるので、半導体ウェーハ5の外周部5Aにおける面ダレをなくし半導体ウェーハ5の平坦度を向上させることができる。このため半導体ウェーハ5の品質を飛躍的に向上させることができる。
【0075】
なお実施形態で示した研削治具10の直径D、ウェーハ外周と研磨プレート外周との距離ΔX、研削部材12の幅Wの寸法値は一例であり、D、ΔXの数値の大きさに応じて、Wの数値の大きさを変化させる必要があることはもちろんである。たとえばDがφ576mmよりも小さくなったときには、それに応じてWの値を10mm〜50mmの範囲に対し、より数値が低い範囲に変化させる必要がある。同様にしてΔXの数値が10mmよりも大きくなったときには、それに応じててWの数値の範囲を10mm〜10mm+αの範囲から、より数値が大きい範囲に変化させる必要がある。
【0076】
つぎに参考例と比較した本実施形態の効果について説明する。
【0077】
(参考例1)
研磨プレート4の外周部にリテーナを形成して、半導体ウェーハ5の表面を研磨することで、リテーナにより研磨クロス2上の段差(図6(d))を押さえつけ段差を無くすという方法が考えられる。
【0078】
しかしこの方法は、現状の研磨プレート4の改造を要する。
【0079】
これに対して本実施形態の研削治具10は現状の研磨プレート4と交換するだけで研磨クロス2上の段差(図6(d))をなくすことができ、既存の研磨装置の改造を要しない。
【0080】
(参考例2)
図7(d)、(e)は参考例2の研削装置を示している。
【0081】
図7(d)は側面図であり、研磨プレート4に、円形状の4つの研削治具が周方向に等間隔に配置されている。図7(e)は図7(d)に対応させて研磨プレート4の下面を示している。
【0082】
これら図7(d)、(e)に示すように、研削治具20は研磨プレート4の半径よりも小さい外径を有し、研削プレート21に円環状の研削部材22が貼着されて形成されている。
【0083】
図7(a)は、横軸に定盤半径方向距離Rをとり、縦軸に研削治具20による研磨クロス2の表面の研削量Sをとったグラフである。図7(a)は研磨プレート4の回転数を30rpmとし定盤1の回転数を30rpmとして両者の回転数を同じくしたときの実験結果を示している。
【0084】
図7(b)は、図7(a)と同じく横軸に定盤半径方向距離Rをとり、縦軸に研削治具20による研磨クロス2の表面の研削量Sをとったグラフである。図7(b)は研磨プレート4の回転数を15rpmとし定盤1の回転数を30rpmとして研磨プレート4の回転数を定盤1の回転数よりも低くしたときの実験結果を示している。
【0085】
図7(c)は図7(a)、図7(b)の横軸に対応させて研磨クロス領域2Aを示している。
【0086】
また図7(d)、図7(e)を、図7(a)、図7(b)の横軸、図7(c)の研磨クロス領域2Aに対応させて図示している。
【0087】
図7に示すように、研削治具20を用いて研磨クロス2を研磨したときには、図3にみられるような研磨クロス内周部2B、研磨クロス外周部2Dにおける研削量Sのピーク値はみられない。むしろ研磨クロス中間部2Cの方が研磨クロス内周部2B、研磨クロス外周部2Dよりも研削量Sが大きくなっている。
【0088】
このため、この参考例2による研削治具20を用いて研磨したときには、研磨クロス2上の段差(図6(d))をなくすことはできないと考えられる。
【0089】
つぎに本実施形態の変形例について説明する。
【0090】
上述した実施形態では、研磨プレート4と同じ円形状の研削治具10を用いて研削を行う場合を想定したが、研削治具10としては、研磨プレート4と交換可能で研磨クロス2上で研磨プレート4と同一の軌跡を走行でき研削部材12によって研磨クロス2上の段差(図6(d))をなくすことができるものであればよく、その形状は任意である。
【0091】
たとえば図9に示すように、矩形状の研磨プレート4を研磨クロス2上で走行させて半導体ウェーハ5の表面を研磨する装置に対しては、研磨プレート4と同じく矩形状の研削治具10を用意して研削を行うような実施も可能である。
【0092】
また上述した実施形態では、バッチ式の研磨装置を想定して説明したが、図10に示すように、研磨プレート4に1枚の半導体ウェーハ5を貼着して1枚づつ半導体ウェーハ5の研磨を行う枚葉式の研磨装置に対して、本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)、(b)、(c)、(d)は実施形態の研磨クロス研削装置の構成を示す図である。
【図2】図2(a)、(b)は研削部材の幅を変化させたときの研磨クロス各部の研削量比の分布の変化を説明する図である。
【図3】図3(a)、(b)は研削部材の幅を変化させたときの研磨クロス各部の研削量の分布の変化を説明する図である。
【図4】図4(a)、(b)、(c)は研削部材の幅を変化させたときの研磨クロス各部の研削量比の分布の変化を説明するとともに、研削部材の幅を特定の範囲にすることでよって面ダレがなくなることを説明する図である。。
【図5】図5(a)、(b)は実施形態で想定する研磨装置の構成を示すとともに、従来技術を説明するために用いた図である。
【図6】図6(a)、(b)、(c)、(d)は従来技術の問題点を説明するとともに面ダレを説明するために用いた図である。
【図7】図7(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は参考例を説明する図である。
【図8】図8は従来技術を説明するために用いた図で、面ダレが発生する部位を説明する図である。
【図9】図9は研磨装置の他の構成例を例示する図である。
【図10】図10は枚葉式の研磨装置を例示した図である。
【符号の説明】
2 研磨クロス
4 研磨プレート
5 半導体ウェーハ
10 研削治具
12 研削部材

Claims (4)

  1. 半導体ウェーハを、円形の研磨プレートと研磨クロスとの間に介在させ研磨プレートを押圧部材で研磨クロス側に押し当てつつ半導体ウェーハを研磨クロス上の所定部位を走行させることにより半導体ウェーハの表面を研磨する半導体ウェーハ研磨装置に適用され、
    研磨プレートと略同じ外径を有する円形の研削治具であって、研磨クロス上の半導体ウェーハ走行部位と半導体ウェーハが走行しなかった部位との段差を研削できる幅の研削部材が外周部に円環状に設けられた研削治具が用意され、
    研磨プレートに代えて研削治具を押圧部材で研磨クロス側に押し当てつつ、この研削治具を、研磨クロス上で研磨プレートと同一の軌跡を走行させることによって、研磨クロスを研削するようにした
    半導体ウェーハ研磨装置における研磨クロス研削装置。
  2. 前記半導体ウェーハ研磨装置は、複数の半導体ウェーハを、円形の研磨プレートと研磨クロスとの間に介在させて研磨を行う装置であること
    を特徴とする請求項1記載の半導体ウェーハ研磨装置における研磨クロス研削装置。
  3. 前記半導体ウェーハの外周と前記研磨プレートの外周との距離に応じて、前記研削部材の幅が定められていること
    を特徴とする請求項1または2記載の半導体ウェーハ研磨装置における研磨クロス研削装置。
  4. 前記半導体ウェーハの外周と前記研磨プレートの外周との距離をΔXとした場合に、前記研削部材の幅は少なくともΔX以上であること
    を特徴とする請求項1または2記載の半導体ウェーハ研磨装置における研磨クロス研削装置。
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