<第1実施形態>
図1は本発明にかかる画像形成装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この画像形成装置は、いわゆるタンデム方式のカラープリンタであり、潜像担持体としてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色の感光体2Y、2M、2C、2Kを装置本体5内に並設している。そして、各感光体2Y、2M、2C、2K上のトナー像を重ね合わせてフルカラー画像を形成したり、ブラック(K)のトナー像のみを用いてモノクロ画像を形成する装置である。すなわち、この画像形成装置では、ユーザからの画像形成要求に応じてホストコンピュータなどの外部装置から印刷指令がメインコントローラ11に与えられると、このメインコントローラ11のCPU111からの印刷指令に応じてエンジンコントローラ10がエンジン部EGの各部を制御して複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシート(記録媒体)Sに印刷指令に対応する画像を印刷する。
このエンジン部EGでは、4つの感光体2Y、2M、2C、2Kのそれぞれに対応して帯電ユニット、現像ユニット、露光ユニットおよびクリーニング部が設けられている。このように、各トナー色ごとに、感光体、帯電ユニット、現像ユニット、露光ユニットおよびクリーニング部を備えて該トナー色のトナー像を形成する画像形成手段が設けられている。なお、これらの画像形成手段(感光体、帯電ユニット、現像ユニット、露光ユニットおよびクリーニング部)の構成はいずれの色成分についても同一であるため、ここではイエローに関する構成について説明し、その他の色成分については相当符号を付して説明を省略する。
感光体2Yは図1の矢印方向(副走査方向)に回転自在に設けられている。より具体的には、感光体2Yの一方端部には、駆動モータMTが機械的に接続されている。そして、この駆動モータMTと電気的に接続されたモータ制御部105にCPU101から駆動指令が与えられると、モータ制御部105が駆動モータMTを駆動制御する。これによって感光体2Yが回転移動する。このように、この実施形態では、感光体2Yの一方端部側のみに駆動モータMTからの駆動力を伝達して感光体2Yを駆動している。また、この実施形態では、駆動モータMTの配設位置、後述する水平同期センサ60および光ビームの走査方向とが所定関係を満たすように設定されている。なお、この点に関しては、後で詳述する。
このようにして駆動される感光体2Yの周りにその回転方向に沿って、帯電ユニット3Y、現像ユニット4Yおよびクリーニング部(図示省略)がそれぞれ配置されている。帯電ユニット3Yは例えばスコロトロン帯電器で構成されており、帯電制御部103からの帯電バイアス印加によって感光体2Yの外周面を所定の表面電位に均一に帯電させる。そして、この帯電ユニット3Yによって帯電された感光体2Yの外周面に向けて露光ユニット6Yから走査光ビームLyが照射される。これによって印刷指令に含まれるイエロー画像データに対応する静電潜像が感光体2Y上に形成される。このように露光ユニット6Yは本発明の「潜像形成部」に相当するものであり、露光制御部102Y(図4)からの制御指令に応じて動作する。なお、露光ユニット6(6Y,6M,6C,6K)および露光制御部102(102Y,102M,102C.102K)の構成および動作については後で詳述する。
こうして形成された静電潜像は現像ユニット4Yによってトナー現像される。この現像ユニット4Yはイエロートナーを内蔵している。そして、現像器制御部104から現像バイアスが現像ローラ41Yに印加されると、現像ローラ41Y上に担持されたトナーが感光体2Yの表面各部にその表面電位に応じて部分的に付着する。その結果、感光体2Y上の静電潜像がイエローのトナー像として顕像化される。なお、現像ローラ41Yに与える現像バイアスとしては、直流電圧、もしくは直流電圧に交流電圧を重畳したもの等を用いることができるが、特に感光体2Yと現像ローラ41Yとを離間配置し、両者の間でトナーを飛翔させることでトナー現像を行う非接触現像方式の画像形成装置では、効率よくトナーを飛翔させるために直流電圧に対して正弦波、三角波、矩形波等の交流電圧を重畳した電圧波形とすることが好ましい。
現像ユニット4Yで現像されたイエロートナー像は、一次転写領域TRy1で転写ユニット7の中間転写ベルト71上に一次転写される。また、イエロー以外の色成分についても、イエローと全く同様に構成されており、感光体2M、2C、2K上にマゼンタトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像がそれぞれ形成されるとともに、一次転写領域TRm1、TRc1、TRk1でそれぞれ中間転写ベルト71上に一次転写される。
この転写ユニット7は、2つのローラ72、73に掛け渡された中間転写ベルト71と、ローラ72を回転駆動することで中間転写ベルト71を所定の回転方向R2に回転させるベルト駆動部(図示省略)とを備えている。また、中間転写ベルト71を挟んでローラ73と対向する位置には、該ベルト71表面に対して不図示の電磁クラッチにより当接・離間移動可能に構成された二次転写ローラ74が設けられている。そして、カラー画像をシートSに転写する場合には、一次転写タイミングを制御することで各トナー像を重ね合わせてカラー画像を中間転写ベルト71上に形成するとともに、カセット8から取り出されて中間転写ベルト71と二次転写ローラ74との間の二次転写領域TR2に搬送されてくるシートS上にカラー画像を二次転写する。一方、モノクロ画像をシートSに転写する場合には、ブラックトナー像のみを感光体2Kに形成するとともに、二次転写領域TR2に搬送されてくるシートS上にモノクロ画像を二次転写する。また、こうして画像の2次転写を受けたシートSは定着ユニット9を経由して装置本体の上面部に設けられた排出トレイ部に向けて搬送される。
なお、中間転写ベルト71へトナー像を一次転写した後の各感光体2Y、2M、2C、2Kは、不図示の除電手段によりその表面電位がリセットされ、さらに、その表面に残留したトナーがクリーニング部により除去された後、帯電ユニット3Y、3M、3C、3Kにより次の帯電を受ける。
また、ローラ72の近傍には、転写ベルトクリーナ75、濃度センサ76(図2)および垂直同期センサ77(図2)が配置されている。これらのうち、クリーナ75は図示を省略する電磁クラッチによってローラ72に対して近接・離間移動可能となっている。そして、ローラ72側に移動した状態でクリーナ75のブレードがローラ72に掛け渡された中間転写ベルト71の表面に当接し、二次転写後に中間転写ベルト71の外周面に残留付着しているトナーを除去する。また、濃度センサ76は、中間転写ベルト71の表面に対向して設けられており、中間転写ベルト71の外周面に形成されるパッチ画像の光学濃度を測定する。さらに、垂直同期センサ77は、中間転写ベルト71の基準位置を検出するためのセンサであり、中間転写ベルト71の副走査方向への回転駆動に関連して出力される同期信号、つまり垂直同期信号Vsyncを得るための垂直同期センサとして機能する。そして、この装置では、各部の動作タイミングを揃えるとともに各色のトナー像を正確に重ね合わせるために、装置各部の動作はこの垂直同期信号Vsyncに基づいて制御される。また、ローラ72,73の間には、色ずれセンサ78が配置されており、各色のトナー像の色ずれ量を検出する。
なお、図2において、符号113はホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース112を介して与えられた画像データを記憶するためにメインコントローラ11に設けられた画像メモリであり、符号106はCPU101が実行する演算プログラムやエンジン部EGを制御するための制御データなどを記憶するためのROM、また符号107はCPU101における演算結果やその他のデータを一時的に記憶するRAMである。さらに符号108は、エンジン各部の使用状況に関する情報を保存しておくためのFRAM(強誘電体メモリ)である。また、RAM107やFRAM108は本発明の「印刷態様に関連する情報」を記憶する記憶部としても機能する。なお、この点に関しては後で詳述する。
図3は図1の画像形成装置に装備された露光ユニットの構成を示す主走査断面図であり、図4は図3の露光ユニットにおける光ビームの走査領域を示す図であり、図5は図1の画像形成装置における信号処理ブロックを示す図である。以下、これらの図面を参照しつつ、露光ユニット6および露光制御部102の構成および動作について詳述する。なお、露光ユニット6および露光制御部102の構成はいずれの色成分についても同一であるため、ここではイエローに関する構成について説明し、その他の色成分については相当符号を付して説明を省略する。
この露光ユニット6Y(6M,6C,6K)は露光筐体61を有している。そして、露光筐体61に単一のレーザー光源62Yが固着されており、レーザー光源62Yから光ビームを射出可能となっている。このレーザー光源62Yは、図5に示す露光制御部102Yの光源駆動部(図示省略)と電気的に接続されている。そして、次のようにして画像信号に応じて光源駆動部がレーザー光源62YをON/OFF制御してレーザー光源62Yから画像データに対応して変調された光ビームが射出される。以下、図5を参照しつつ説明する。
この画像形成装置では、ホストコンピュータ100などの外部装置から画像信号が入力されると、メインコントローラ11がその画像信号に対し所定の信号処理を施す。メインコントローラ11は、色変換部114、画像処理部115、2種類のラインバッファ116A,116B、方向切換部116C、パルス変調部117、階調補正テーブル118および補正テーブル演算部119などの機能ブロックを備えている。
また、エンジンコントローラ10は、図2に示すCPU101、ROM106、RAM107、露光制御部102以外に、濃度センサ76の検出結果に基づきエンジン部EGのガンマ特性を示す階調特性を検出する階調特性検出部123を備えている。なお、メインコントローラ11およびエンジンコントローラ10においては、これらの各機能ブロックはハードウェアにより構成されてもよく、またCPU111、101により実行されるソフトウェアによって実現されてもよい。
ホストコンピュータ100から画像信号が与えられたメインコントローラ11では、色変換部114がその画像信号に対応する画像内の各画素のRGB成分の階調レベルを示したRGB階調データを、対応するCMYK成分の階調レベルを示したCMYK階調データへ変換する。この色変換部114では、入力RGB階調データは例えば1画素1色成分当たり8ビット(つまり256階調を表す)であり、出力CMYK階調データも同様に1画素1色成分当たり8ビット(つまり256階調を表す)である。色変換部114から出力されるCMYK階調データは画像処理部115に入力される。
この画像処理部115は、各色成分ごとに以下の処理を実行する。すなわち、色変換部114から入力された各画素の階調データに対し階調補正およびハーフトーニング処理を行う。すなわち、画像処理部115は、不揮発性メモリに予め登録されている階調補正テーブル118を参照し、その階調補正テーブル118にしたがい、色変換部114からの各画素の入力階調データを、補正された階調レベルを示す補正階調データに変換する。この階調補正の目的は、上記のように構成されたエンジン部EGのガンマ特性変化を補償して、この画像形成装置の全体的ガンマ特性を常に理想的なものに維持することにある。すなわち、この種の画像形成装置では、装置のガンマ特性が装置個体ごとに、また同一の装置においてもその使用状況によって変化する。そこで、このようなガンマ特性のばらつきが画像品質に及ぼす影響を除くため、所定のタイミングで、前記した階調補正テーブル118の内容を画像濃度の実測結果に基づいて更新する階調制御処理を実行する。
この階調制御処理では、各トナー色毎に、ガンマ特性を測定するために予め用意された階調補正用の階調パッチ画像がエンジン部EGによって中間転写ベルト71上に形成され、各階調パッチ画像の画像濃度を濃度センサ76が読み取り、その濃度センサ76からの信号に基づき階調特性検出部123が各階調パッチ画像の階調レベルと、検出した画像濃度とを対応させた階調特性(エンジン部EGのガンマ特性)を作成し、メインコントローラ11の補正テーブル演算部119に出力する。そして、補正テーブル演算部119が、階調特性検出部123から与えられた階調特性に基づき、実測されたエンジン部EGの階調特性を補償して理想的な階調特性を得るための階調補正テーブルデータを計算し、階調補正テーブル118の内容をその計算結果に更新する。こうして階調補正テーブル118を変更設定する。こうすることで、この画像形成装置では、装置のガンマ特性のばらつきや経時変化によらず、安定した品質で画像を形成することができる。
こうして補正された補正階調データに対して、画像処理部115は誤差拡散法、ディザ法、スクリーン法などのハーフトーニング処理を行い、1画素1色当たり8ビットのハーフトーン階調データを2種類のラインバッファ116A,116Bに入力する。なお、ハーフトーニング処理の内容は、形成すべき画像の種類により異なる。すなわち、その画像がモノクロ画像かカラー画像か、あるいは線画かグラフィック像かなどの判定基準に基づき、その画像に最適な処理内容が選択され実行される。
これらのラインバッファ116A,116Bは画像処理部115から出力される1ライン画像データを構成するハーフトーン階調データ(画像情報)を記憶するものである点で共通するが、階調データの読出し順序が相違する。すなわち、順方向ラインバッファ116Aは1ライン画像データを構成するハーフトーン階調データを先頭から順方向に出力するものであるのに対し、逆方向ラインバッファ116Bは最後から逆方向に出力するものである。
そして、こうして出力されるハーフトーン階調データは方向切換部116Cに入力され、方向切換信号に基づき一方のラインバッファから出力されるハーフトーン階調データのみが適当なタイミングで方向切換部116Cからパルス変調部117に出力される。このように2種類のラインバッファ116A,116Bを設けた主たる理由は、後述するように印刷態様に応じて潜像形成用光ビームの走査モードが相違することに対応するためである。また、方向切換部116Cによって各色成分に対応したタイミングおよび順序で階調データがパルス変調部117に入力される。このように、この実施形態では、ラインバッファ116A,116Bおよび方向切換部116Cが本発明の「方向制御部」に相当している。
このパルス変調部117に入力されたハーフトーニング後の階調データは、各画素に付着させるべき各色のトナードットのサイズおよびその配列を示す多値信号であり、かかるデータを受け取ったパルス変調部117は、そのハーフトーン階調データを用いて、エンジン部EGの各色画像の露光レーザパルスをパルス幅変調するためのビデオ信号を作成し、図示を省略するビデオインターフェースを介してエンジンコントローラ10に出力する。そして、このビデオ信号を受けた露光制御部102Yの光源駆動部(図示省略)が露光ユニット6のレーザー光源62YをON/OFF制御する。また、他の色成分についても同様である。
次に、図3および図4に戻って説明を続ける。露光筐体61の内部には、レーザー光源62Yからの光ビームを感光体2Yの表面(図示省略)に走査露光するために、コリメータレンズ631、シリンドリカルレンズ632、偏向器65、走査レンズ66が設けられている。すなわち、レーザー光源62Yからの光ビームは、コリメータレンズ631により適当な大きさのコリメート光にビーム整形された後、副走査方向Yにのみパワーを有するシリンドリカルレンズ632に入射される。そして、シリンドリカルレンズ632を調整することでコリメート光は副走査方向Yにおいて偏向器65の偏向ミラー面651付近で結像される。このように、この実施形態では、コリメータレンズ631およびシリンドリカルレンズ632がレーザー光源62Yからの光ビームを整形するビーム整形系63として機能している。
この偏向器65は半導体製造技術を応用して微小機械を半導体基板上に一体形成するマイクロマシニング技術を用いて形成されるものであり、共振振動する振動ミラーで構成されている。すなわち、偏向器65では、共振振動する偏向ミラー面651により光ビームを主走査方向Xに偏向可能となっている。より具体的には、偏向ミラー面651は主走査方向Xとほぼ直交する揺動軸(ねじりバネ)周りに揺動自在に軸支されるとともに、作動部(図示省略)から与えられる外力に応じて揺動軸周りに正弦揺動する。この作動部は露光制御部102のミラー駆動部(図示省略)からのミラー駆動信号に基づき偏向ミラー面651に対して静電気的、電磁気的あるいは機械的な外力を作用させて偏向ミラー面651をミラー駆動信号の周波数で揺動させる。なお、作動部による駆動方式は静電吸着、電磁気力あるいは機械力などのいずれの方式を採用してもよく、それらの駆動方式は周知であるため、ここでは説明を省略する。
偏向器65の偏向ミラー面651で偏向された光ビームは図4に示すように最大振幅角θmaxで走査レンズ66に向けて偏向される。この実施形態では、走査レンズ66は、感光体2の有効画像領域IRの全域においてF値が略同一となるように構成されている。したがって、走査レンズ66に向けて偏向された光ビームは、走査レンズ66を介して感光体2の表面の有効画像領域IRに略同一のスポット径で結像される。これにより、光ビームが主走査方向Xと平行に走査して主走査方向Xに伸びるライン状の潜像が感光体2の有効画像領域IR上に形成される。なお、この実施形態では、偏向器65により走査可能な第2走査領域SR2は、図4に示すように、有効画像領域IR上で光ビームを走査させるための第1走査領域(本発明の「走査領域」に相当)SR1よりも広く設定されている。また、第1走査領域SR1が第2走査領域SR2の略中央部に位置しており、光軸に対してほぼ対称となっている。さらに、同図中の符号θirは有効画像領域IRの端部に対応する偏向ミラー面651の振幅角を示し、符号θsは次に説明する水平同期センサに対応する偏向ミラー面651の振幅角を示している。
また、上記のように構成された装置では、光ビームを主走査方向に往復走査することができる、つまり光ビームを(+X)方向にも、(−X)方向にも走査可能となっている。そして、上記したように1ライン画像データを構成する階調データを記憶部(ラインバッファ116A,116B)に一時的に記憶しておき、方向切換部116Cが適当なタイミングおよび順序で階調データをパルス変調部117に与える。例えば(+X)方向に切り換えられた場合には、図6(a)に示すように、ラインバッファ116Aから階調データDT1,DT2,…DTnの順序で読み出され、各階調データに基づきビームスポットが第1方向(+X)に感光体2上に照射されてライン潜像LI(+X)が形成される。一方、(−X)方向に切り換えられた場合には、図6(b)に示すように、ラインバッファ116Bから階調データDTn,DT(n-1),…DT1の順序で読み出され、各階調データに基づきビームスポットが第2方向(−X)に感光体2上に照射されてライン潜像LI(-X)が形成される。このため、次のように潜像形成のための光ビーム(本発明の「潜像形成用光ビーム」に相当)が印刷態様ごとに、あるいはラインごとに相違させることができる。より具体的には、この実施形態では、印刷指令に含まれる印刷実行時に使用するトナー量に関する情報(使用トナー量情報)が本発明の「印刷態様に関連する情報」としてRAM107に一時的に記憶される。すなわち、この情報により、トナー消費量を抑制するトナーセーブ印刷とトナー消費量を抑制しない通常トナー量印刷とが指令される。そして、通常トナー量印刷が指令された場合には、(+X)方向でかつ第1走査領域SR1を走査する光ビームSL1を潜像形成用光ビームとして有効画像領域IRに導いて有効画像領域IRに潜像を形成する動作と、(−X)方向でかつ第1走査領域SR1を走査する光ビームSL2を潜像形成用光ビームとして有効画像領域IRに導いて有効画像領域IRに潜像を形成する動作とを交互に繰り返す、いわゆる往復走査モードを実行して潜像を形成する。一方、トナーセーブ印刷が指令された場合には、潜像形成用光ビームSL1のみを繰り返す、いわゆる片方向走査モードを実行して潜像を形成する。すなわち、トナーセーブ印刷では、通常トナー量印刷で印刷される通常印刷画像のドットの形成を1ライン単位で省略している。このように、この実施形態では、使用トナー量情報に基づき通常トナー量印刷とトナーセーブ印刷とで潜像形成用光ビームの走査モードを切り換えている。なお、この点に関しては後で詳述する。
さらに、この実施形態では、通常トナー量印刷およびトナーセーブ印刷のいずれの印刷態様においても、潜像形成用光ビームの光量を同一値に設定している。すなわち、通常トナー量印刷で実行される往復走査モードと、トナーセーブ印刷で実行される片方向走査モードとのいずれの走査モードにおいても、潜像形成用光ビームの光量は同じ値に設定されている。
また、この実施形態では、該走査方向と駆動モータMTの配設位置とは次の関係を満足するように予め設定されている。すなわち、駆動モータMTは走査方向(+X)の下流側に配置されている。また、図3に示すように、走査方向(+X)の上流側において走査光ビームの走査経路の端部を折り返しミラー69により水平同期センサ60に導いている。この折り返しミラー69は走査方向(+X)の上流側における第2走査領域SR2の端部に配置され、走査方向(+X)の上流側において第2走査領域SR2内で、かつ第1走査領域SR1を外れた位置を移動する走査光ビームを水平同期センサ60に導光する。そして、水平同期センサ60により該走査光ビームが受光されてセンサ位置(振幅角θs)を通過するタイミングで信号が水平同期センサ60から出力される。このように、本実施形態では、水平同期センサ60を、光ビームが有効画像領域IRを主走査方向Xに走査する際の同期信号、つまり水平同期信号Hsyncを得るための水平同期用読取センサとして機能させており、水平同期信号Hsyncに基づき潜像形成動作を制御する。以下、本実施形態にかかる装置での潜像形成動作について説明する。
図7は第1実施形態における画像形成装置の動作を示すフローチャートである。また、図8は本実施形態の潜像形成動作により形成される潜像を示す図である。なお、図8(および後で説明する図10,12)中の1点鎖線は走査線の軌跡を示す仮想線であり、太線矢印は潜像形成用の走査光ビームを示している。
ホストコンピュータ100などの外部装置から印刷指令が入力されると、図7に示すフローチャートにしたがって各感光体に潜像が形成されるとともに、各潜像に基づきカラー画像が形成される。すなわち、ステップS11では、印刷指令に含まれる使用トナー量情報を本発明の「印刷態様に関連する情報」として取得する(情報取得工程)。そして、その使用トナー量情報に基づき印刷指令が所定のトナー量(本発明の「第1トナー量」に相当)を使用して画像を印刷する通常トナー量印刷であるのか、通常トナー量印刷時のトナー量よりも少ないトナー量(本発明の「第2トナー量」に相当)で印刷するトナーセーブ印刷であるのかを判断する(ステップS12)。
ステップS12で「通常トナー量印刷」と判断されたときには、ステップS13〜S15を実行して所定のトナー量を使用して画像を形成し、本発明の「記録媒体」たるシートSに転写して印刷処理を終了する。まずステップS13で、往復走査モードが設定される(走査モード決定工程)。次に、上記のように決定された往復走査モードに対応する方向切換信号がメインコントローラ11の方向切換部116Cに与えられる(ステップS14)。一方、これらの指示を受けた方向切換部116Cはラインバッファからの階調データの読み出しタイミングおよび順序を1ラインごとに交互に切り換える。これにより、次のようにして潜像が形成される。すなわち、図8の上段部に示すように、(+X)方向でかつ第1走査領域SR1を走査する光ビームSL1を潜像形成用光ビームとして有効画像領域IRに導いて有効画像領域IRに潜像を形成する動作と、(−X)方向でかつ第1走査領域SR1を走査する光ビームSL2を潜像形成用光ビームとして有効画像領域IRに導いて有効画像領域IRに潜像を形成する動作とが交互に繰り返される(ステップS15)。こうして、いわゆる往復走査モードが実行されて潜像が形成される。なお、こうして形成された潜像については、各画像形成手段において現像されて4色のトナー像が形成されるとともに、中間転写ベルト71上で重ね合わされてカラー画像が形成された後、該カラー画像がシートSに転写されて通常トナー量印刷が終了する。
一方、ステップS12で「トナーセーブ印刷」と判断されたときには、ステップS16〜S18を実行して通常トナー量印刷で形成される画像から1ライン間隔でドット形成を省略した画像を形成した後、シートSに転写して印刷処理を終了する。まずステップS16で、片方向走査モードが設定される(走査モード決定工程)。次に、上記のように決定された片方向走査モードに対応する方向切換信号がメインコントローラ11の方向切換部116Cに与えられる(ステップS17)。次に、潜像形成用光ビームの走査方向として第1方向(+X)が設定されている際には、方向切換部116Cは順方向ラインバッファ116Aから適当なタイミングおよび順方向(つまり階調データDT1,DT2,…DTnの順序)で読み出して各階調データに基づき光変調されながら第1方向(+X)に走査される潜像形成用光ビームSL1を感光体2上に走査させてライン潜像LI(+X)を形成する(ステップS18)。一方、潜像形成用光ビームの走査方向として第2方向(−X)が設定されている際には、方向切換部116Cは逆方向ラインバッファ116Bからの階調データの読出しを行わず、感光体2への潜像形成用光ビームSL2の走査は禁止され、潜像形成が行われない。すなわち、図8の下段部に示すように、第1方向(+X)に感光体2上に照射されてライン潜像LI(+X)のみからなる潜像が形成される。なお、こうして形成された潜像については、通常トナー量印刷と同様に、トナー現像されて4色のトナー像が形成されるとともに、中間転写ベルト71上で重ね合わされてカラー画像が形成された後、該カラー画像がシートSに転写される。こうして得られる画像は通常トナー量印刷に比べて1ライン単位でドット形成を省略された画像となり、トナー消費量が抑制されることとなる。
そして、通常トナー量印刷およびトナーセーブ印刷のいずれにおいても、潜像形成用光ビームの光量を同一値に設定している。すなわち、通常トナー量印刷で実行される往復走査モードと、トナーセーブ印刷で実行される片方向走査モードとのいずれの走査モードにおいても、潜像形成用光ビームの光量は同じ値に設定されている。
以上のように、第1実施形態によれば、使用トナー量情報に基づき往復走査モード(ステップS13〜S15)と片方向走査モード(ステップS16〜S18)とに選択的に切り換えることによって通常トナー量印刷とトナーセーブ印刷の切換を実行している。このように、偏向ミラー面651の振動動作および潜像形成用光ビームの光量を変化させることなく、単に潜像形成用光ビームの走査モードを切り換えることのみで通常トナー量印刷またはトナーセーブ印刷を選択的に実行することができる。したがって、トナー消費量調整の切換え、すなわち通常トナー量印刷からトナーセーブ印刷への変更やその逆の変更を迅速に行うことができる。
また、第1実施形態によれば、通常トナー量印刷で実行される往復走査モードとトナーセーブ印刷で実行される片方向走査モードとのいずれの走査モードにおいても潜像形成用光ビームの光量を同一値に設定しているため、トナーセーブ印刷でのトナー消費量を通常トナー量印刷の場合に比べてほぼ半分に低減することができる。すなわち、片方向走査モードでの潜像形成用光ビームの光量を往復走査モードと異なる値に設定すると、トナーセーブ印刷でのトナー消費量が通常トナー量印刷に比べて十分に低減しなかったり、逆に過剰に低減することが考えられるが、往復走査モードと同一値に設定することによって、このような問題が生じるのを回避することができる。
<第2実施形態>
ところで、画像形成装置において形成される画像としては、例えば写真などの中間階調を含む階調画像や、例えば文字や線画、べたなどの中間階調を含まない2値画像などがある。このうち階調画像の場合には、印刷指令がトナーセーブ印刷であることを条件として片方向走査モードに画一的に設定すると、画質を著しく低下させてしまうことがある。というのは、階調画像の場合には、トナー消費量を抑制すると、特に低濃度の部分で目立ってしまうからである。これに対して、2値画像の場合には、画像が高濃度であるため、トナー消費量を抑制しても目立つことがない。
そこで、第2実施形態では、情報がトナーセーブ印刷で、かつ中間階調を含まない2値画像を印刷する2値印刷を実行する旨の情報である場合には、片方向走査モードに設定する一方、情報がトナーセーブ印刷で、かつ中間階調を含む階調画像を印刷する階調印刷を実行する旨の情報である場合には、往復走査モードに設定することで、階調印刷を適切に行っている。以下、図9および図10を参照しつつ、通常トナー量印刷およびトナーセーブ印刷に加えて、階調印刷および2値印刷の切換を行う装置の動作について詳述する。なお、第2実施形態にかかる装置の基本的な構成は第1実施形態と同一であるため、同一および相当符号を付して説明を省略する。
図9は第2実施形態における画像形成装置の動作を示すフローチャートである。また、図10は本実施形態の潜像形成動作により形成される潜像を示す図である。この第2実施形態では、ホストコンピュータ100などの外部装置から印刷指令が入力されると、図9に示すフローチャートにしたがって各感光体に潜像が形成されるとともに、各潜像に基づきカラー画像が形成される。ここで、ステップS21〜S25は第1実施形態の図7のステップS11〜S15と同一動作であるため、説明を省略する。
ステップS22の印刷指令の判断において、「トナーセーブ印刷」と判断されたときには、ステップS26において、印刷指令に含まれる階調情報を本発明の「印刷態様に関連する情報」として取得する(情報取得工程)。そして、その階調情報に基づき印刷指令が2値印刷であるのか、階調印刷であるのかを判断する(ステップS27)。このように、この実施形態では、ステップS27の判断のために、印刷しようとする画像が中間階調を含む階調画像か含まない2値画像かを示す階調情報を印刷指令に含めるように構成している。なお、例えば、色変換部114から出力されるCMYK階調データまたはこれから変換した補正階調データに基づき、画像処理部115がステップS27の判断を行うようにしてもよい。この場合、画像処理部115は、例えば中間階調のデータ数が所定レベル未満のときは中間階調を含まない2値画像と判断する一方、所定レベル以上のときは中間階調を含む階調画像と判断するように構成してもよい。
そして、ステップS27で「2値印刷」と判断されたときには、ステップS28〜S30を実行して片方向走査モードで潜像を形成するとともに、該潜像を現像して形成されたトナー像を中間転写ベルト71で重ね合わせてカラー画像を形成した後、本発明の「記録媒体」たるシートSに転写し、さらに定着して印刷処理を終了する。なお、これらステップS28〜S30は第1実施形態の図7のステップS16〜S18と同一動作であるため、説明を省略する。
一方、ステップS27で「階調印刷」と判断されたときには、ステップS23〜S25を実行して往復走査モードで潜像を形成するとともに、該潜像を現像して形成されたトナー像を中間転写ベルト71で重ね合わせてカラー画像を形成した後、本発明の「記録媒体」たるシートSに転写し、さらに定着して印刷処理を終了する。なお、これらステップS23〜S25は第1実施形態の図7のステップS13〜S15と同一動作であるため、説明を省略する。
以上のように、第2実施形態によれば、使用トナー量情報がトナーセーブ印刷で、かつ階調情報が2値印刷であれば片方向走査モード(ステップS28〜S30)に切り換える一方、使用トナー量情報がトナーセーブ印刷で、かつ階調情報が階調印刷であれば往復走査モード(ステップS23〜S25)に切り換えて、通常トナー量印刷とトナーセーブ印刷の切換を実行している。このように、使用トナー量情報がトナーセーブ印刷であっても画一的に片方向走査モードに設定することなく、階調情報に基づき階調印刷であれば往復走査モードに設定している。したがって、写真などの中間階調を含む階調画像の階調印刷を片方向走査モードで行うことにより、低濃度部分が目立つなどの画像品質が著しく低下するのを防止し、画像の再現性を向上することができる。
<第3実施形態>
図11は本発明にかかる画像形成装置の第3実施形態を説明するための図である。また図12は第3実施形態にかかる画像形成装置により形成されるライン潜像を示す図である。例えば図11に示すように、画像形成装置により印刷すべき画像には、写真、線画およびグラフなど複数種類が含まれることがある。図11に示すシートSには、写真PT、線画LM、表計算ソフトなどによるグラフGFが混在して印刷されている。ここで、写真PT、線画LM、グラフGFでは、上記したようにトナーセーブ印刷による画像品質への影響が互いに相違する。したがって、1枚のシートSについてのトナーセーブ印刷実行中においても、各画像に対応した走査モードで印刷を行うのが望まれる。そこで、第3実施形態では、1枚のトナーセーブ印刷実行中において走査モードを切り換えている。
図11では、写真画像PTが形成される写真領域AR1と、線画LMが形成される線画領域AR2と、グラフGFが形成されるグラフ領域AR3とが示されている。したがって、写真領域AR1に対応する潜像形成動作については、トナーセーブ印刷実行中であるにも拘らず第2実施形態と同様に図12(a)に示すように往復走査モードにより潜像形成を行う一方、線画領域AR2に入ると、図12(b)に示すように走査モードを片方向走査モードに切り換えている。これによって、各領域に適した走査モードで潜像を形成することができる。
ところで、グラフGFは、画像の種類としては階調画像に相当するため、第2実施形態で説明したように往復走査モードで印刷するのが好ましい。しかしながら、グラフGFでは、1つの数値を表わす領域内では階調に変化がなく、一定階調の集合になっている。このような画像では、トナー消費量を抑制しても目立たない。特に濃度が高い場合にはトナー消費量を抑制してもユーザに分かりにくい。そこで、この第3実施形態では、例えばグラフGFのように一定階調の集合となる画像を中間階調を含まない2値画像とみなしている。そして、グラフ領域AR3に入っても、図12(c)に示すように走査モードを片方向走査モードのまま継続させている。これによって、トナー消費量を効果的に抑制することができる。
以上のように、第3実施形態によれば、偏向ミラー面651の振動動作および潜像形成用光ビームの光量を変化させることなく、単に潜像形成用光ビームの走査モードを切り換えることのみで階調印刷または2値印刷を選択的に実行可能となっているため、1枚のシートSに対するトナーセーブ印刷実行中においても、走査モードを迅速に切り換えることができる。したがって、トナー消費量抑制による画像品質への影響が互いに異なる画像を1枚のシートSに混在して印刷するという特殊な印刷要求に対して柔軟に、しかも高品質で対応することができる。
さらに、第3実施形態によれば、トナーセーブ印刷中において、階調画像に相当する画像であっても、例えばグラフGFのように一定階調の集合となる画像については、中間階調を含まない2値画像とみなして片方向走査モードで潜像形成を行っているため、トナー消費量を効果的に抑制することができる。
<その他>
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記第2実施形態では、図9に示すように、使用トナー量情報を取得し(ステップS21)、印刷指令の判断(ステップS22)において「トナーセーブ印刷」と判断したときに、階調情報を取得している(ステップS26)が、これに限られない。例えばステップS21の情報取得工程において、使用トナー量情報および階調情報の双方を取得してもよい。この場合には、ステップS22の印刷指令の判断工程において、それらの情報に基づき、印刷指令がトナーセーブ印刷、かつ2値印刷であるか否かを判断すればよい。そして、「NO」と判断される、つまり通常トナー量印刷であるか、またはトナーセーブ印刷、かつ階調印刷であると判断されたときには、ステップS23〜S25を実行して往復走査モードで潜像を形成する一方、「YES」と判断される、つまりトナーセーブ印刷、かつ2値印刷であると判断されたときには、ステップS28〜S30を実行して片方向走査モードで潜像を形成する。このような動作でも、上記第2実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、上記第1ないし第3実施形態では、片方向走査モードにおいて潜像形成用光ビームとして(+X)方向に走査する光ビームSL1のみを用いているが、(−X)方向に走査する光ビームSL2を用いるようにしてもよい。要は、潜像形成用光ビームを主走査方向Xの第1方向(+X)または第2方向(−X)に片方向走査させるように構成すればよい。
また、上記第1ないし第3実施形態では、中間転写ベルト71などの中間転写媒体に一時的にカラー画像を形成した後に該カラー画像をシートSに転写する画像形成装置に対して本発明を適用しているが、各トナー像を直接シート上で重ね合わせてカラー画像を形成する装置に対しても適用可能である。
また、上記第1ないし第3実施形態では、振動する偏向ミラー面651をマイクロマシニング技術を用いて形成しているが、偏向ミラー面の製造方法はこれに限定されるものではなく、振動する偏向ミラー面を用いて光ビームを偏向して潜像担持体上に光ビームを走査させる、いわゆる画像形成装置全般に本発明を適用することができる。
2,2Y,2M,2C,2K…感光体(潜像担持体)、 6,6Y,6M,6C,6K…露光ユニット(潜像形成部)、 62,62Y,62M,62C,62K…レーザー光源(光源)、 651…偏向ミラー面、 IR…有効画像領域、 Ly,Lm,Lc,Lk…走査光ビーム、 LI(+X),LI(-X)…ライン潜像、 S…シート(記録媒体)、 SL1,SL2…走査光ビーム(潜像形成用光ビーム)、 SR1…第1走査領域(走査領域) X…主走査方向、 Y…副走査方向