アンチパラレルダイオード型の偶高調波ミキサの周波数変換効率は、局部発振信号の入力電力強度に応じて変化する。特に、局部発振信号の入力電力強度が低いと、ミキサの変換損が極端に増加する。そのため、局部発振信号の電力強度に製品ごとのばらつきがあると、安定した性能の周波数変換装置を提供できなくなる。このような問題は、特許文献1に係る偶高調波ミキサ410においても発生する。
ところが、図7に示す局部発振信号源420の各部品の性能には製品ごとにばらつきがあり、そのために、局部発振信号の電力強度にばらつきが生まれる。例えば、図7に示す帯域通過フィルタ424の性能にばらつきがあると、局部発振信号の電力強度に大きなばらつきが生じる。図9に、帯域通過フィルタ424の周波数特性を模式的に示す。図9を参照して、局部発振信号の周波数が約28GHzであるものとする。ここに理想的な性能のフィルタを実線で示す。理想的なフィルタでは、通過損が28GHz付近で最小となるような通過特性を有する。フィルタの通過特性に点線で示すようなずれが生じた場合、28GHz付近の通過損が大幅に増加し、理想的なフィルタに対し図9中の矢印に示すような差異が生じる。このように通過特性のずれたフィルタを図7に示す帯域通過フィルタ424として使用した場合、ミキサに入力される局部発振信号の強度に大きなばらつきが生じる。
局部発振信号源420の各部品を高精度の加工方法で製造することによって、各ブロックの性能のばらつきをある程度少なくすることは可能かもしれない。実際に、帯域通過フィルタ424に超高精度の薄膜工程で作成されたフィルタを使用することによって、フィルタの性能のばらつきを軽減させている。しかしながら、高精度の加工により製造コストが増大する。その上、このような高精度のフィルタ等を用いて局部発振信号源420を構成しても電力強度のばらつきが無くなるわけではない。局部発振信号の強度が一定になるように局部発信信号源420を製品ごとに調整することは理論的には可能かもしれないが、調整に手間がかかり製造コストが増加する。
局部発振信号の入力電力強度が小さいとミキサの変換損が極端に増加することに鑑みて、本願の発明者は、大きな電力強度の局部発振信号がミキサに入力されるよう局部発振信号源420を構成していた。ところが、電力強度の大きな信号を発生させるように局部発信信号源420を構成すると、各部品のばらつきにより電力強度の極めて大きな局部発振信号が発生する確率が高くなる。このような極端に大きな強度の局部発振信号がミキサに流れると、ミキサの変換損が増加する。さらに悪いことに、ダイオードに非常に大きな直流電流が流れることによってダイオードの劣化が早まり、寿命を縮め製品の信頼性を低下させる結果となる。
それゆえに、本発明の目的は、特に、ミリ波帯通信における周波数変換等に好適で、安定した周波数変換効率で信頼性が高く長寿命のミキサ、低い製造コストで製造できる信頼性の高い周波数変換装置、及び通信装置を提供することである。
本発明の第1の局面に係るリミッタ付ミキサは、所定の局部発振信号端子に接続された入力端、及び出力端を有する電力強度のリミッタ回路と、所定の入力端子に接続された第1の入力端、及び前記リミッタ回路の出力端に接続された第2の入力端を有するミキサ回路とを含む。
局部発振信号端子に局部発振信号が入力されると、リミッタ回路は当該局部発振信号の電力強度を制限する。リミッタ回路の出力端から出力される局部発振信号が第2の入力端よりミキサ回路に入力される。さらに入力端子に周波数変換の対象となる入力信号が入力されると、ミキサ回路は入力信号を第1の入力端で受け、入力信号の周波数変換を、リミッタ回路を介して入力された局部発振信号を用いて行なう。リミッタ回路が、ミキサ回路への局部発振信号の過入力を防ぐため、ミキサ回路にかかる負担を軽減できる。また、ミキサ回路に入力される局部発振信号の電力強度がリミッタ回路による制限によって安定する。このリミッタ付ミキサに入力される局部発振信号の電力強度にばらつきがあっても、ミキサ回路は周波数変換を安定して行なうことができる。そのため、全体として安定した性能で信頼性が高いミキサを提供できる。
好ましくは、リミッタ回路は、アンチパラレルダイオードペアと、一端がリミッタ回路の入力端に接続され他端がアンチパラレルダイオードペアに接続された第1の局部発振信号伝送経路と、一端が第1の局部発振信号伝送経路とアンチパラレルダイオードペアとの接続点に接続され、他端がリミッタ回路の出力端に接続された第2の局部発振信号伝送経路とを含む。
入力端と出力端との間を結ぶ第1及び第2の局部発振信号伝送経路とアンチパラレルダイオードペアとを含むこのリミッタ回路は、単純な回路構成であり、低コストで製造可能である。よって、低コストで性能のばらつきの少ないミキサを提供できる。
より好ましくは、アンチパラレルダイオードペアは、一端が接続点に接続され他端が接地された第1のダイオードと、第1のダイオードと並列に、かつ第1のダイオードに対して逆極性になるように接続された第2のダイオードとを含む。
接続点の電位が接地点の電位より高くなり、さらに接続点と接地点との電位差がある値以上になると、第1のダイオードにそのダイオードの順方向電圧降下以上の電圧が加わることになり、第1のダイオードが導通する。これにより、接続点の電位がそれ以上高くなることが制限される。逆に、接続点の電位が接地点の電位より低くなり、さらに接続点と接地点との電位差がある値以上になると、第2のダイオードにそのダイオードの順方向電圧降下以上の電圧が加わることになり、第2のダイオードが導通する。これにより、接続点の電位がそれ以上低くなることが制限される。すなわち、第1及び第2の局部発振信号伝送経路を介して入力端から出力端へ通過する局部発振信号の電圧振幅が所定の範囲内に制限される。その結果、第1及び第2の局部発振信号伝送経路を介して入力端から出力端へ通過する局部発振信号の電力強度が制限される。第1及び第2のダイオードとして適切な特性のダイオードを使用することにより、ミキサ回路に適切な電力強度の局部発振信号を入力することが可能になる。
好ましくは、ミキサ回路は、第1のアンチパラレルダイオードペアと、第1の入力端と第1のアンチパラレルダイオードペアとを接続する第1の伝送経路と、第2の入力端と前記第1のアンチパラレルダイオードペアとを接続する第2の伝送経路と、第1のアンチパラレルダイオードペアと所定の出力端子とを接続する第3の伝送経路とを有する偶高調波ミキサ回路を含む。
第1の入力端に入力される信号は第1の伝送経路を介して第1のアンチパラレルダイオードペアに到達する。第2の入力端に入力される局部発振信号は、第2の伝送経路を介して第1のアンチパラレルダイオードペアに到達する。第1のアンチパラレルダイオードペアは、これらの信号を混合することにより周波数の変換された信号を発生し、第3の伝送経路を介して所定の出力端子より出力する。この偶高調波ミキサの周波数変換効率は、局部発振信号の電力強度によって変化するが、この偶高調波ミキサ回路に入力される局部発振信号の電力強度はリミッタ回路により安定化されるため、周波数変換効率を一定に保つことができる。したがってリミッタ付ミキサ全体としての性能のばらつきを低減できる。また、ミキサ回路への局部発振信号の過入力を防ぐことによって、第1のアンチパラレルダイオードペアを構成するダイオードに流れる直流電流を制限できる。アンチパラレルダイオードペアにかかる負担が軽減し、リミッタ付ミキサの長寿命化が実現可能になる。
より好ましくは、リミッタ回路は、第2のアンチパラレルダイオードペアと、一端がリミッタ回路の入力端に接続され他端が第2のアンチパラレルダイオードペアに接続された第1の局部発振信号伝送経路と、一端が第1の局部発振信号伝送経路と第2のアンチパラレルダイオードペアとの接続点に接続され、他端がリミッタ回路の出力端に接続された第2の局部発振信号伝送経路とを含み、第1のアンチパラレルダイオード及び第2のアンチパラレルダイオードは共に、所定の半導体基板上に形成される。
第1及び第2のアンチパラレルダイオードペアを同じ半導体基板上に同じ工程で形成でき、このリミッタ付ミキサの製造工程を簡素化できる。したがって、性能のばらつきが少なく長寿命のミキサを、製造コストを大幅に増やすことなく提供することが可能になる。
ミキサ回路は、第1の入力端に入力される入力信号の周波数を、第2の入力端に入力される局部発振信号を用いて、入力信号の周波数より高い所定の周波数に変換するためのアップコンバータとして動作してもよい。
ミキサ回路がアップコンバータとして動作する際にも、リミッタ回路により安定化された局部発振信号が使用される。局部発振信号の電力強度のばらつきがミキサ回路のアップコンバータとしての動作に与える影響を低減できる。すなわち、リミッタ付ミキサからなる安定した性能のアップコンバータを提供できる。
ミキサ回路は、第1の入力端に入力される入力信号の周波数を、第2の入力端に入力される局部発振信号を用いて、入力信号の周波数より低い所定の周波数に変換するためのダウンコンバータとして動作してもよい。
ミキサ回路がダウンコンバータとして動作する際にも、リミッタ回路により安定化された局部発振信号が使用される。局部発振信号の電力強度のばらつきがミキサ回路のダウンコンバータとしての動作に与える影響を低減できる。すなわちリミッタ付ミキサからなる安定した性能のダウンコンバータを提供できる。
本発明の第2の局面に係る周波数変換装置は、本発明の第1の局面に係るいずれかのリミッタ付ミキサと、局部発振信号端子に接続された局部発振信号源とを含む。
局部発振信号源が発生する局部発振信号は、局部発振信号端子からリミッタ回路に入力される。リミッタ回路は、局部発振信号の電力強度を制限する。ミキサ回路は、入力端子に入力された信号の周波数を、リミッタ回路より電力強度が制限された局部発振信号を用いて変換する。局部発振信号源が発生する局部発振信号の電力強度にばらつきがあっても、この周波数変換装置は安定した性能で動作する。すなわち、製造コストのかかる高精度の部品を局部発振信号源に使用しなくても、安定した性能と高い信頼性を確保できる。したがって、製造コストが低く、安定した性能で、信頼性の高い周波数変換装置を提供することができる。
好ましくは、局部発振信号源は、周波数の成分を含む所定の信号を発生する信号源回路と、信号源回路及び局部発振信号端子に接続された局部発振信号用帯域通過フィルタとを含む。
信号源回路が発生する信号のうち、局部発振信号帯域通過フィルタを通過した成分が、リミッタ付ミキサに入力されるため、リミッタ付ミキサに不要な帯域の信号が局部発振信号として入力されることを抑制できる。この周波数変換装置においては、局部発振信号用帯域通過フィルタを通過した第1の局部発振信号の電力強度にばらつきがあっても、当該第1の局部発振信号を用いて安定した性能で周波数変換を行なうことができる。そのため、製造コストの高い高精度のフィルタを使用しなくても、安定した性能と高い信頼性を確保できる。したがって、製造コストが低く、安定した性能を有し、信頼性の高い周波数変換装置を提供することができる。
本発明の第3の局面に係る通信装置は、本発明の第2の局面に係るいずれかの周波数変換装置を有し、当該周波数変換装置を用いて、高周波信号と中間周波信号との間の周波数変換を行なう。この通信装置は、高価な部品によって構成されなくても、また高精度の調整を行なわなくても、安定した性能での周波数変換を行なうことができる。したがって、製造コストが低く、安定した性能を有し、信頼性の高い通信装置が提供可能になる。
本発明の第4の局面に係るセラミック多層基板のマルチチップモジュールには、本発明の第3の局面に係る通信装置が形成される。マルチチップモジュールに通信装置を形成することにより、部材コストを低減できる。
本発明によれば、ミキサ回路に入力される局部発振信号の電力強度をリミッタ回路が制限することにより、周波数変換効率のばらつきが小さくなり、リミッタ付ミキサに局部発振信号が過入力された場合にミキサ回路にかかる負担が軽減する。そのため、安定した性能でかつ長寿命のミキサを提供することができる。また、リミッタ回路は低コストで形成でき、ミキサの製造コストを増やすことなく、変換効率のばらつきを低減することが可能になる。低価格の部品で構成された局部発振信号源とリミッタ付ミキサとの組合せにより、低価格で高性能の周波数変換装置及び通信装置を構成することができる。さらに通信装置全体をマルチチップモジュール化することにより、高性能の通信装置を低い製造コストで提供することができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施の形態について説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、同一の部品に同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1に、本実施の形態に係るリミッタ付ミキサ70及びそれを用いた周波数変換装置60の概略構成を示す。図1を参照して、周波数変換装置60は、所定の中間周波帯域に対応する中間周波信号端子62、所定の高周波帯域に対応する高周波信号端子64、及び局部発振信号端子106に接続されたリミッタ付ミキサ70と、局部発振信号端子106に接続された局部発振信号源80とを含む。局部発振信号源80は、局部発振信号を発生して局部発振信号端子106を介してリミッタ付ミキサ70に与える機能を持つ。リミッタ付ミキサ70は、中間周波信号端子62と高周波信号端子64との一方よりその端子に対応する帯域の信号の入力を受け、入力された信号の他方の端子に対応する帯域への周波数変換を、局部発振信号端子106に与えられる局部発振信号を用いて行ない、当該他方の端子から出力する機能を持つ。
局部発振信号源80は、局部発振信号として必要な所定の周波数成分を含んだ信号を発生する信号源回路82と、上記所定の周波数に対して通過特性を有する局部発振信号用帯域通過フィルタ84とを含む。信号源回路82は、縦列に接続された誘電体発振器86と、周波数3逓倍器88と、バッファアンプ90とを含む。この信号源回路82の構成は、図7に示す従来の信号源回路422と同様である。
本実施の形態では、局部発振信号用帯域通過フィルタ84に、厚膜印刷工程によって製造されたフィルタを使用する。厚膜印刷工程によって製造された局部発振信号用帯域通過フィルタ84は、超高精度の薄膜工程によって製造された、上記従来技術で使用されているフィルタより製造コストが低い。ただし、厚膜印刷工程の加工精度は、薄膜工程に比べて低いため、局部発振信号用帯域通過フィルタ84のフィルタ特性にばらつきがある。したがって、局部発振信号源80が発生する局部発振信号の電力強度には、従来技術における局部発振信号と同等以上のばらつきが生じる可能性がある。本実施の形態では、局部発振信号の電力強度のばらつきにより生じる問題を、局部発振信号源の高精度化によって解決するのではなく、局部発振信号の電力強度をミキサ内部で制限することによって解決する。
本実施の形態に係るリミッタ付ミキサ70は、中間周波信号端子62に接続された端子、局部発振信号用の端子、及び高調波信号用の端子を有する偶高調波ミキサ回路100と、高周波信号端子64に接続され、高周波信号帯域に対し通過特性を有する高周波信号用帯域通過フィルタ104と、偶高調波ミキサ回路100の高周波信号用の端子及び高周波信号用帯域通過フィルタ104の間を接続する伝送線路102と、局部発振信号端子106を介して局部発振信号用帯域通過フィルタ84に一端が接続された第1局部発振信号用伝送線路108とを含む。ミキサ回路70はさらに、偶高調波ミキサ回路100と第1局部発振信号用伝送線路108の他端との間に設けられたリミッタ回路110を含む。
図2にリミッタ付ミキサ70の回路構成を示す。図2を参照して、偶高調波ミキサ回路100はアンチパラレルダイオード型の偶高調波ミキサ回路である。偶高調波ミキサ回路100は、リミッタ回路110に一端が接続された第2局部発振信号用伝送線路120と、第2局部発振信号用伝送線路120の他端及び伝送線路102の間に互いに他と特性が逆になるよう並列接続された二つのダイオード122及び124からなる第1アンチパラレルダイオードペア126と、一端が接続点128において伝送線路102及び第1アンチパラレルダイオードペア126に接続され他端が接続点136において中間周波信号端子62に接続され、高周波信号のおおむね1/4波長の電気長を有する中間周波信号用伝送線路130とを含む。
偶高調波ミキサ回路100はさらに、一端が接続点132において第2局部発振信号用伝送線路120及び第1アンチパラレルダイオードペア126に接続され他端が接地された伝送線路からなり、局部発振信号の約1/4波長の電気長を有する先端短絡スタブ134と、中間周波信号用伝送線路130の中間周波信号端子62側に一端が接続され他端が接地されたキャパシタ138とを含む。
リミッタ回路110は、第1局部発振信号用伝送線路108及び第2局部発振信号用伝送線路120の間に直列に接続された一対の整合用伝送線路142及び144と、整合用伝送線路142及び144の接続点140に接続された第2アンチパラレルダイオードペア150とを含む。第2アンチパラレルダイオードペア150は、互いに他と逆極性になるよう並列接続された二つのダイオード146及び148からなり、ダイオード146及び148の接点の一方が接続点140に接続され、他方が接地される。
リミッタ付ミキサ70の構成要素はすべて、例えば一つの砒化ガリウム基板上に形成される。リミッタ付ミキサ70の各構成要素は、同一の基板上に同一の半導体プロセスによって一括して形成される。具体的には、偶高調波ミキサ回路100のダイオード122及び124の各々は、1um×7umのショットキー電極を有するダイオードとして、砒化ガリウム基板上に形成される。また例えば、リミッタ回路110のダイオード146及び148の各々は、1um×10umのショットキー電極を有するダイオードとして、砒化ガリウム基板上に形成される。
リミッタ回路110は、次のように動作し、偶高調波ミキサ回路100に入力される局部発振信号の電力強度を制限する機能を持つ。接地点に対する接続点140の電位がダイオード148の順方向電圧降下以上になると、ダイオード148が導通する。これにより、接続点140の電位がそれ以上高くなることが制限される。接続点の電位が低くなり、接続点140に対する接地点の電位がダイオード146の順方向電圧降下以上になると、ダイオード146が導通する。これにより、接続点140の電位がそれ以上低くなることが制限される。すなわち、リミッタ回路110により、局部発振信号の電圧振幅が所定の範囲内に制限される。その結果、リミッタ回路110を介してミキサ回路100に入力される局部発振信号の電力強度が制限される。
図3に、砒化ガリウム基板上に形成され、1um×10umのショットキー電極を有するダイオード146及び148からなるリミッタ回路110の入出力特性を示す。なお図3では、リミッタ回路110への入力電力を横軸にとり、対応するリミッタ回路110からの出力電力を縦軸にとり、リミッタ回路110への入力電力と出力電力との関係を示している。図3を参照して、入力電力が7dBmに満たない場合、入力電力と出力電力とほぼ等しくなっている。これに対し、入力電力が7dBm以上になると、出力電力が入力電力を下回るようになっている。例えば、入力電力が15dBmのときの出力電力は約9dBmとなっている。したがってこのリミッタ回路110は、7dBm以上の入力電力に対し、出力電力を制限する特性を有する。リミッタ回路110により局部発信信号がその後段にある回路に過入力されることが回避される。また、入力電力が7dBm以上の領域においては、出力電力の変化が入力電力の変化に比べて緩やかになるため、入力される信号の電力強度にばらつきがあっても、リミッタ回路110からは、安定した電力強度の信号が出力されることになる。
以下、局部発振信号と中間周波信号とを入力し、高周波信号を出力する、いわゆるアップコンバートを例に、周波数変換装置60及びリミッタ付ミキサ70の動作について説明する。
なお、以下の説明では、局部発振信号の周波数、中間周波信号の周波数、高周波信号の周波数をそれぞれfLO、fIF、fRFとする。また、以下に説明する動作において、fLO、fIF、及びfRFの間には、fRF=2×fLO+fIFという関係が成立するものとする。より具体的には、周波数fIFは4GHz、fLOは28GHz、fRFは60GHzであるものとする。
図1を参照して、周波数fLOの局部発振信号を発生するために、まず信号源回路82の誘電体発振器86が9.33GHzの信号を発生する。周波数3逓倍器88が、当該発生した信号の周波数を3倍に逓倍する。その結果、周波数3逓倍器88から、9.33GHz×3=28GHzの成分を含む信号が出力される。バッファアンプ90は、周波数3逓倍器88からの出力信号を増幅する。局部発振信号用帯域通過フィルタ84は、増幅された信号のうち28GHzの成分をリミッタ付ミキサ70へと通過させ、上記一連の動作によって発生する不要な信号を減衰させる。局部発振信号用帯域通過フィルタ84を通過した信号は、局部発振信号端子106よりリミッタ付ミキサ70へ、fLO=28GHzの局部発振信号として入力される。この局部発振信号の電力強度は、局部発振信号源80を構成する上記各ブロックのばらつきにより、製品ごとに異なる値となる可能性が高い。
図2を参照して、局部発振信号は、局部発振信号端子106から第1局部発振信号用伝送線路108を介して、リミッタ回路110に入力される。入力される局部発振信号の電力強度が7dBmに満たない場合、リミッタ回路110の第2アンチパラレルダイオードペア150に電流が流れず、局部発振信号はほぼそのままリミッタ回路110から出力される。局部発振信号の電力強度は、入力された信号の電力強度とおおむね等しくなる。入力される局部発振信号の電力強度が7dBm以上である場合、第2アンチパラレルダイオードペア150が通電状態となり、入力された局部発振信号の一部が、アンチパラレルダイオードペア150に流入する。これによりリミッタ回路110から出力される局部発振信号の電力強度は、入力された信号の電力強度より低下する。
リミッタ回路110より出力された局部発振信号は、偶高調波ミキサ回路100の第2局部発振信号伝送線路120を介して接続点132に印加される。接続点132には先端短絡スタブ134が接続されている。先端短絡スタブ134は、周波数fLOの信号の1/4波長にあたる電気長を有しており、周波数fLOの信号に対して電気的に開放と等価となる。すなわち局部発振信号についてみた場合、先端短絡スタブ134の位置に何も接続されていないに等しい状態となる。そのため、リミッタ回路110から出力された局部発振信号は、接続点132からそのまま第1アンチパラレルダイオードペア126に入力される。すなわち、リミッタ付ミキサ70に入力された局部発振信号の電力強度が7dBm未満であれば、局部発振信号は入力されたときとほぼ同じ電力強度で第1アンチパラレルダイオードペア126に入力され、リミッタ付ミキサ70に入力された局部発振信号の電力強度が7dBm以上であれば、局部発振信号は、入力されたときより低い電力強度で第1アンチパラレルダイオードペア126に入力される。
第1アンチパラレルダイオードペア126に局部発振信号が入力されると、第1アンチパラレルダイオードペア126内に局部発振信号の変化に合わせて時間的に変化する直流電流が発生する。それに伴い、第1アンチパラレルダイオードペア126の接合抵抗及び接合容量が、局部発振信号に応じて時間的に変化する。
この状態で、中間周波信号が中間周波信号端子62から入力されると、中間周波信号は、中間周波信号用伝送線路130を経由して、そのまま接続点128まで伝送される。接続点128より高周波信号端子64側には高周波信号用帯域通過フィルタ104があり、高周波信号用帯域通過フィルタ104により中間周波信号は反射される。そのため、中間周波信号は、接続点128から第1アンチパラレルダイオードペア126に入力されることになる。
以上の一連の動作により、第1アンチパラレルダイオードペア126において局部発振信号と中間周波信号とが混合され、第1アンチパラレルダイオードペア126の両端(すなわち接続点128及び132)に、周波数fRF=2fLO+fIFの成分を含む様々な周波数成分をもつ信号が発生する。
中間周波信号の周波数fIFが、局部発振信号の周波数fLO及び高周波信号の周波数fRFのいずれと比べても十分に低ければ、高周波信号の周波数fRFは、局部発振信号の周波数fLOのおよそ2倍となる。ここでまず、接続点132側で発生した周波数fRFの信号に注目する。接続点132側に接続された先端短絡スタブ134は周波数fLOの信号の1/4波長にあたる電気長を有する。すなわち、先端短絡スタブ134は、周波数fRFの信号のおよそ1/2波長の電気長を有することになるため、接続点132は、周波数fRFの信号に対しておおむね接地と等価となる。したがって、周波数fRFの高周波信号が接続点132からリミッタ回路110及びその先の局部発振信号端子106に向かって流れることはない。
接続点128側で発生した周波数fRFの信号に注目する。中間周波信号用伝送線路130は、周波数fRFの信号の1/4波長にあたる電気長を有しており、周波数fRFの信号に対して電気的に開放と等価となる。すなわち周波数fRFの信号について見た場合、中間周波信号用伝送線路130の位置に何も接続されていないに等しい状態となる。そのため、接続点128側で発生した周波数fRFの信号は、そのまま伝送線路102を介して、高周波信号用帯域通過フィルタ104に入力される。
高周波信号用帯域通過フィルタ104は、周波数fRFの信号に対して通過特性を有している。そのため、第1アンチパラレルダイオードペア126が発生し伝送線路102を介して高周波信号用帯域通過フィルタ104に到達した信号のうち、周波数fRFの成分が高周波信号用帯域通過フィルタ104を通過し、高周波信号端子64より出力される。
上記のとおり、偶高調波ミキサ回路100の第1アンチパラレルダイオードペア126には、安定した電力強度の局部発振信号が入力され、局部発振信号の過入力が防止される。そのため、第1アンチパラレルダイオードペア126に流れる電流が安定するようになる。
図4に、局部発振信号源80からリミッタ付ミキサ70に入力される局部発振信号の電力強度と、第1アンチパラレルダイオードペア126のダイオード122及び124に流れる直流電流との関係を示す。なお図4において、横軸は入力される局部発振信号の電力強度のレベルを示し、縦軸は、ダイオード122及び124に流れる直流電流を示す。なお図4においては、本実施の形態に係るリミッタ付ミキサ70におけるリミッタ回路110による局部発振信号の制限を行なった場合の当該関係を「リミッタあり」として示す。またリミッタによる制限が行なわれなかった場合における当該関係を、「リミッタなし」として示す。
図4を参照して、リミッタなしの場合、ミキサに入力される局部発振信号の電力強度のレベルが大きくなるにしたがいダイオード122及び124に流れる電流が指数関数的に増加している。これに対して、本実施の形態に係るリミッタ付ミキサ70に対応するリミッタありの場合、電流増加は、リミッタなしの場合に比べ低く抑えられている。すなわち、本実施の形態に係るリミッタ付ミキサ70は、局部発振信号の電力強度にばらつきがあっても、第1アンチパラレルダイオードペア126に流れる電流を低く抑えられる。ダイオード122及び124への負担が軽減されるため、ダイオード122及び124の劣化が遅くなり、リミッタ付ミキサ70を長寿命化させることができる。したがって、装置全体の信頼性を向上させることが可能となる。
図5に、リミッタ付ミキサ70に入力される局部発振信号の電力強度とリミッタ付ミキサ70より出力される高周波信号の電力強度との関係を示す。図5においても、リミッタありの場合とリミッタなしの場合とについて、当該関係を対比して示す。図5を参照して、リミッタなしの場合、リミッタ付ミキサ70に入力される局部発振信号の電力強度がおよそ8dBm以上となると、その電力強度が高くなるにしたがいミキサから出力される高周波信号の電力強度が減少している。これに対して、本実施の形態に係るリミッタ付ミキサ70(ミキサあり)は、入力される局部発振信号の電力強度が約4dBm以上になると、出力される高周波信号の電力強度が局部発振信号の電力強度に関わらずほぼ一定値を示すようになる。
したがって、8dBmを超える高い電力強度の局部発振信号がリミッタ付ミキサ70に入力された場合においても、リミッタ付ミキサ70の周波数変換効率が低下しないことが明らかとなった。また、局部発振信号源80が4dBm程度以上の電力強度を有する局部発振信号を発生するようにしておくことにより、安定した電力強度の高周波信号を得ることができる。
以上のように、本実施の形態に係るリミッタ付ミキサ70は、偶高調波ミキサ回路100とリミッタ回路110とが一体に構成されたものであり、偶高調波ミキサ回路100に入力される局部発振信号の電力強度をリミッタ回路110によって制限することができる。これにより、局部発振信号が過入力された場合に、偶高調波ミキサ回路100には電力強度が制限された局部発振信号しか入力されず、変換損はほぼ一定となる。また偶高調波ミキサ回路100のダイオード122及び124に流れる直流電流を制限することができる。リミッタ付ミキサ70全体としての性能のばらつきを低減するとともに、偶高調波ミキサ回路への局部発振信号の過入力を防ぐことによって、ダイオード122及び124へにかかる負担が軽減し、リミッタ付ミキサ70の長寿命化が可能になる。
リミッタ回路110は、アンチパラレルダイオードペアと伝送線路とからなる構成であるため、高調波ミキサを半導体チップ上に形成する工程と同じ工程で製造することができる。そのため、リミッタ回路110を搭載するために新たに必要な工程はほとんどない。よって、製造コストを増やすことなく、変換損のばらつきを低減できる。
さらに、本実施の形態に係る周波数変換装置60は、局部発振信号用帯域通過フィルタ84として、厚膜印刷工程で形成された帯域通過フィルタを採用している。そのため、周波数変換装置60の製造コストを低減できる。厚膜印刷工程で形成された帯域通過フィルタの採用により、局部発振信号の電力強度に従来と同程度又はそれ以上のばらつきが生じるが、本実施の形態に係るリミッタ付ミキサ70の変換損は、周波数変換時の変換損のばらつきが少ない。したがって、本実施の形態に係る周波数変換装置60により、低コストでかつ安定した性能を持つ信頼性の高い周波数変換装置が提供できる。
なお、本実施の形態に係る局部発振信号用帯域通過フィルタ84は厚膜印刷工程によって形成できる。したがって、周波数変換装置60全体を厚膜印刷工程によってセラミック多層基板のマルチチップモジュールとして製造できる。このようにすることにより、周波数変換装置60の部材コストを大幅に低減させることが可能になる。
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態に係るリミッタ付ミキサ70を含む周波数変換装置60は、アップコンバータとしてだけでなく、ダウンコンバータとしても使用できる。以下、第1の実施の形態に係る周波数変換装置60をアップコンバータとして使用した高周波無線装置、及び周波数変換装置60をダウンコンバータとして使用した高周波無線装置について説明する。
図6(A)と図6(B)とに、周波数変換装置60をアップコンバータとして使用した送信機200の構成と、周波数変換装置60をダウンコンバータとして使用した受信機220の構成とを対比して示す。
図6(A)を参照して、送信機200は、周波数変換装置60と、周波数変換装置60の中間周波信号端子に接続され、3GHz〜5.5GHzの帯域成分からなる変調信号を発生するための変調信号源202と、周波数変換装置60の高周波信号端子に接続され、周波数変換装置60によるアップコンバートにより得られる高周波信号を増幅するためのパワーアンプ204と、パワーアンプ204に接続され、増幅された高周波信号を高周波電波として放射するためのアンテナ206とを含む。
図6(B)を参照して、受信機220は、周波数変換装置60と、電波を受信するためのアンテナ226と、アンテナ226及び周波数変換装置60の高周波信号端子の間に設けられ、アンテナが受信した信号を増幅して周波数変換装置60に高周波信号として入力するためのローノイズアンプ224と、周波数変換装置60の中間周波信号端子に接続され、3GHz〜5.5GHzの帯域成分からなる中間周波信号を周波数変換装置60から受けて、検波/変調等を行ない当該中間周波信号から情報を取出すためのチューナ222とを含む。なお、図6(A)及び(B)に示す周波数変換装置60の構成はいずれも、図1及び図2に示す第1の実施の形態に係る周波数変換装置60のものと同一である。したがって、その構成の詳細については繰返さない。
パワーアンプ204及びローノイズアンプ224は互いに他と同じ構成のものであってもよい。アンテナ206及び226は、互いに他と同じ構成のものであってもよい。ただし、図6(A)に示す送信機200のパワーアンプ204と図6(B)に示すローノイズアンプ224とは、周波数変換装置60の高周波信号端子に対して、互いに他と逆向きになるよう接続される。
送信機200において、周波数変換装置60及びパワーアンプ204は、一つの半導体チップ上に集積される。受信機220において、周波数変換装置60及びローノイズアンプ224は、一つの半導体チップ上に集積される。特にリミッタ付ミキサ70及びパワーアンプ204とを集積化することによりそれらの接続部における損失が著しく低減されるため、所定の送信電力を出力するために必要なパワーアンプの利得が小さくなる。その結果、装置の小型化、低消費電力化が可能となる。
以下に、周波数変換装置60を用いた送信機200の動作について説明する。
局部発振信号源80の信号源回路82は、周波数fLO=28GHzの正弦波を含む信号を発生する。局部発振信号用帯域通過フィルタ84は、信号源回路82が発生した信号のうち、周波数fLO=28GHzの信号を通過させる。通過した信号は、局部発振信号としてリミッタ付ミキサ70に入力される。リミッタ付ミキサ70に入力された局部発振信号の電力強度は、リミッタ回路110により調整されて、偶高調波ミキサ回路100に入力される。
変調信号源202は、周波数fIF=3GHz〜5.5GHzの帯域成分からなる変調信号を発生し、ミキサ60の中間周波信号用端子に入力する。偶高調波ミキサ回路100は、局部発振信号と変調信号とを混合することにより変調信号のアップコンバートを行なう。このアップコンバートにより、fRF=fIF+2×fLO=59GHz〜62.5GHzの高周波信号成分を含む混合信号を発生する。高周波信号用帯域通過フィルタ104は、発生した混合信号のうち、59GHz〜62.5GHzの成分を通過させる。通過した59GHz〜62.5GHzの信号が、高周波信号としてパワーアンプ204に入力される。パワーアンプ204は、入力された高周波信号を増幅して出力する。アンテナ206は、パワーアンプ204により増幅され出力された高周波信号を、高周波電波として放射する。
以下に、周波数変換装置60を用いた受信機220の動作、及び周波数変換装置60によるダウンコンバートの動作について説明する。
図6(B)を参照して、局部発振信号源80の信号源回路82は、周波数fLO=28GHzの正弦波を含む信号を発生する。局部発振信号用帯域通過フィルタ84は、信号源回路82が発生した信号のうち、周波数fLO=28GHzの信号を通過させる。通過した信号は、局部発振信号としてリミッタ付ミキサ70に入力される。リミッタ付ミキサ70に入力された局部発振信号の電力強度は、リミッタ回路110により調整されて、偶高調波ミキサ回路100に入力される。
図2を参照して、局部発振信号が第2局部発振信号用伝送線路120を介して第1アンチパラレルダイオードペア126に入力されると、第1アンチパラレルダイオードペア126内の接合抵抗及び接合容量が、局部発振信号に応じて時間的に変化する。
再び図6(B)を参照して、アンテナ226が周波数fRFの成分を含む電波を受けると、アンテナ226に受信信号が発生する。受信信号は、ローノイズアンプ224により増幅される。増幅された受信信号は、周波数変換装置60の高周波信号端子64よりリミッタ付ミキサ70に入力される。高周波信号用帯域通過フィルタ104は、高周波信号用端子64より入力された信号のうち、周波数fRF=59GHz〜62.5GHzの帯域の信号を高周波信号として通過させる。伝送線路102は、高周波信号用帯域通過フィルタ104を通過した高周波信号を偶高調波ミキサ回路100へ伝送する。図2を参照して、入力された高周波信号はそのまま接続点128まで伝送される。接続点128より中間周波信号端子62側には、中間周波信号用伝送線路130がある。中間周波信号用伝送線路130は、周波数fRFの信号の1/4波長にあたる電気長を有しており、周波数fRFの信号に対して電気的に開放と等価となる。すなわち高周波信号についてみた場合、中間周波信号用伝送線路130の位置に何も接続されていないに等しい状態となる。そのため、高周波信号は接続点128からそのまま、第1アンチパラレルダイオードペア126に入力される。
第1アンチパラレルダイオードペア126に中間周波信号が入力されると、第1アンチパラレルダイオードペア126において、局部発振信号と中間周波信号とが混合される。その結果、第1アンチパラレルダイオードペア126の両端(すなわち接続点128及び132)に、周波数fIF=|fRF−2fLO|=3〜5.5GHzの成分を含む混合信号が発生する。
周波数fIFは、局部発振信号の周波数fLO=28GHz及び高周波信号の周波数fRF=59GHz〜62.5GHzに比べて十分に低い周波数であるため、高周波信号の周波数fRFは、局部発振信号の周波数fLOのおよそ2倍となる。ここで、高周波信号の周波数fRFに注目する。接続点132側に接続された先端短絡スタブ134は周波数fLOの信号の1/4波長にあたる電気長を有する。すなわち、先端短絡スタブ134は、周波数fRFの信号のおよそ1/2波長の電気長を有することになる。そのため接続点132は、周波数fRFの信号に対しておおむね接地と等価となる。したがって、接続点132からリミッタ回路110及びその先の局部発振信号端子106に向かって、周波数fRFの高周波信号が流れることはない。
接続点128側で発生した周波数fIF3〜5.5GHzの信号に注目する。中間周波信号用伝送線路130は、周波数fRFの信号の1/4波長にあたる電気長を有しており、周波数fIFの信号に対して電気的に開放と等価となる。すなわち周波数fIFの信号について見た場合、中間周波信号用伝送線路130の位置に何も接続されていないに等しい状態となる。そのため、接続点128側で発生した周波数fIFの信号は、そのまま中間周波信号用伝送線路130に流れることになる。
中間周波信号用伝送線路130は、周波数fIFの信号に対して短絡と等価である。第1アンチパラレルダイオードペア126が発生した信号のうち、周波数fIFの成分が中間周波信号用伝送線路130を経由して、中間周波信号端子62より中間周波信号として出力される。
再び図6(B)を参照して、中間周波信号端子62から出力された中間周波信号は、チューナ222に入力される。チューナ222は、入力された中間周波信号から所望の情報を取りだす。受信装置220における信号のダウンコンバート時にも、偶高調波ミキサ回路100に入力される局部発振信号の電力強度がリミッタ回路により制限されるため、変換損のばらつきが少なく安定したダウンコンバートが可能となる。
以上のように、リミッタ付ミキサ70及びそれを用いた周波数変換装置60を、アップコンバータ又はダウンコンバータとして使用した高周波通信装置により、性能のばらつきの小さな高周波通信装置を実現できる。また高周波通信装置全体を、厚膜印刷工程を用いたセラミック多層基板のマルチチップモジュールとして形成できるため、装置の部材コストが大幅に低減できる。
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含む。
60 周波数変換装置、62 中間周波信号端子、64 高周波信号端子、70 リミッタ付ミキサ、80 局部発振信号源、82 信号源回路、84 局部発振信号用帯域通過フィルタ、86 誘電体発振器、88 周波数3逓倍器、90 バッファアンプ、100 偶高調波ミキサ回路、102 伝送線路、104 高周波信号用帯域通過フィルタ、106 局部発振信号端子、108 第1局部発振信号用伝送線路、110 リミッタ回路、120 第2局部発振信号用伝送線路、122,124,146,148 ダイオード、126 第1アンチパラレルダイオードペア、130 中間周波信号用伝送線路、134 先端短絡スタブ、138 キャパシタ、142,144 整合用伝送線路、150 第2アンチパラレルダイオードペア、200 送信機、202 変調信号源、204 パワーアンプ、206,226 アンテナ、220 受信機、222 チューナ、224 ローノイズアンプ