JP4570429B2 - 無機質板の製造方法 - Google Patents
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Description
上記無機質板は上記無機質原料を水と混練し、該混練物を押出成形等によって成形し、養生硬化せしめた上で焼成することによって製造されているが、板表面に意匠を施すために釉薬が施される。従来このような無機質板に用いる釉薬が提供されている(例えば特許文献1,2,3参照)。
該骨材の粒径は0.5〜3mmであることが望ましく、該原料混合物中には該水硬性無機質材料は15〜35質量%、該ガラス質成分含有材料は1〜15質量%、該骨材は20〜45質量%、該補強繊維は15〜25質量%含有されていることが望ましく、更に該水硬性無機質材料はスラグおよび石灰類であり、該ガラス質成分含有材料は軟化温度が900℃以下の低融点ガラスであり、該骨材はシャモットおよび/またはケイ砂であり、該補強繊維はワラストナイトであることが望ましい。また該石灰類は消石灰であり、該原料混合物中スラグは15〜30質量%、消石灰は該スラグの添加量に対して5〜15質量%、該原料混合物中にケイ砂は10〜25質量%添加されていることが望ましく、更に該原料混合物中には木質セメント板廃材粉砕物および/または可燃性有機成分が5〜35質量%添加されていてもよい。
本発明にあっては、表面に凹凸が形成されている無機質板の表面に全面的にB2O3を含まないかあるいはB2O3を5質量%以下の量で含み、したがって無機質板表面に対する侵蝕性がないかあるいは侵蝕性の低い第1の釉薬を施し、更にB2O3を10〜25質量%含み、したがって無機質板表面に対して侵蝕性がある第2の釉薬を凸部のみに施す。そうすると凸部にあっては第2の釉薬が焼成前のポーラスな第1の釉薬層を浸透して無機質板表面に達し、第2の釉薬に含まれているB2O3により焼成中に凸部部分の無機質板表面が侵蝕されるが、侵蝕は主としてガラス質成分含有材料、水硬性無機質材料に対して及ぼされ、骨材は侵蝕されにくいので、凸部部分において表面にぶつとなって残存する。したがって無機質板の凸部表面は粗面となる。該骨材の粒径が0.5〜3mmであると、無機質板の凸部表面は適度なぶつぶつ状態となる。一方無機質板の凹部表面には第1の釉薬焼成層形成されるが、この部分は侵蝕されないので平滑で光沢を帯びる。
該水硬性無機質材料はスラグおよび石灰類であり、該ガラス質成分含有材料は軟化温度が900℃以下の低融点ガラスであり、該骨材はシャモットやケイ砂である場合には、水の添加量を少なくしてもスラグは活性度が高く化学的反応性に富み、円滑に硬化反応を起こすことが出来、焼成温度を低下するためにガラス質成分含有材料として低融点のものを使用するが、該スラグは該ガラス質成分含有材料とも反応し、該ガラス質成分含有材料の本来の融点よりも低い温度で溶融が開始され、水の添加量を少なくすると共に焼成温度を大巾に低下せしめて成形体の膨張収縮を抑制する。
骨材としてシャモットやケイ砂を選択すると、ガラス質成分含有材料軟化物の流動が抑制され、焼成時の膨張収縮が抑制される。上記水硬性無機質材料硬化後の含有する水の逃散による縮みは寸法比として約1%、そしてシャモットおよび/またはケイ砂が原料混合物中に20質量%以上存在する場合には、ガラス質成分含有材料軟化物の流動が抑制され、しかも該ガラス質成分含有材料は焼成時には若干膨張する傾向にあり、これらの点がバランスして本発明の無機質板は焼成後の収縮率が殆ど0になる。
本発明にあっては、凸部の表面が骨材に起因するぶつぶつが適度に散在し、好ましい半艶消しないし艶消し外観の粗面であり、凹部は平滑かつ光沢を帯び、凸部と凹部とでコントラストのついた面白味のある意匠を有する無機質板を提供することが出来る。
〔水硬性無機質材料〕
本発明の水硬性無機質材料としては、例えば普通ポルトランドセメント、早強セメント、アルミナセメント、高炉スラグセメント、フライアッシュセメント等のセメント類、高炉スラグ、電気炉酸化スラグ、電気炉還元スラグ等のスラグ、生石灰、消石灰等の石灰類あるいは石膏、炭酸マグネシウム等がある。望ましい水硬性無機質材料としては上記スラグと石灰類特に消石灰との組合わせがある。
上記水硬性無機質材料は、焼成前に生板を硬化せしめることが出来、ある程度強度があり破損しにくい硬化生板とすることが出来、作業性、歩留り等が向上する。
更に本発明では、焼成により溶融してバインダーとなるガラス質成分含有材料を添加する。このようなガラス質成分含有材料としては、例えばシラス、フライアッシュ、坑火石、ガラス粉、板ガラスの粉砕品、ガラス発泡体、シラスバルーン、パーライト等がある。該ガラス質成分含有材料として望ましいものは、軟化点が900℃以下の低融点ガラスであり該低融点ガラスとしては、PbO,B2O3,ZnO等の低融点成分の含有量を多くしたガラスがあり、例えば軟化点840℃、融点1200℃のEガラス粉末は望ましい低融点ガラスである。Eガラス即ちElectrical glassはガラス繊維の粉末のことであり、平均粒径は30μm、主成分はSiO2 54質量%、Al2 O3 15質量%、CaO23質量%、B2 O3 7質量%でありB2 O3 を含有しているので低融点であり、1000℃前後の低温焼成を可能にする。板の軽量化を図るには、パーライト、フライアッシュバルーン、シラスバルーン、ガラス発泡体等の軽量材料を選択することが好ましい。
更に本発明では、焼成により溶融して板構造の主体的要素となる骨材が添加される。上記骨材としては、B2O3によって侵蝕されにくいかまたは侵蝕されないものが選択され、このような骨材としてはAl2O3および/またはSiO2 を含有するものがあり、例えば陶石、長石、ろう石、カオリン、ハロサイト、木節粘土、蛙目粘土、セリサイト、シャモット等の粘土質鉱物やケイ砂、ケイ石、珪藻土、キラ、シリカフューム等のケイ酸質原料がある。上記骨材の中で望ましいものは安定的に強度を発現するシャモットあるいはケイ砂である。上記骨材の粒径は0.5〜3mmであることが好ましく、更に1〜2mmであることが好ましい。
更に本発明では、焼成による膨張収縮を抑制するために無機繊維が添加されてもよい。上記無機繊維としては、例えばワラストナイト、セピオライト等の鉱物繊維、スチールファイバー、ステンレスファイバー等の金属繊維、ガラス繊維、セラミック繊維等がある。 望ましい補強繊維としてはワラストナイトがある。ワラストナイトはアスペクト比(15)が一般の補強繊維と比べて大きい。セラミック繊維としてはAl2 O3 −SiO2 系セラミック繊維、Al2 O3 −SiO2 −ZrO2 系セラミック繊維があり、繊維の組織としては、非晶性のものや多結晶ムライト質のものがある。ワラストナイトは吸水性が低いので原料混合物の水添加量は水硬性無機質材料の水和硬化に必要な量であればよく、したがって原料混合物への水添加量を5〜15質量%と最小限にすることが出来、原料混合物中に凝集物や塊りが生成することが防止され、原料混合物を型板上に散布する作業性が良好になる。更にワラストナイトは保形性、切断性を改良し、大きなサイズの板の製造を容易にする。ワラストナイトは一般に平均繊維長600μm、平均繊維径40μmのものを使用する。
本発明にあっては、焼成時に焼滅して無機質板に多孔質構造を形成するために可燃性有機成分が添加されてもよい。このような可燃性有機成分としては、例えば木片、木質繊維束、木質パルプ、木毛、木粉等の木質材、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維等の有機繊維、発泡ポリスチレンビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリプロピレンビーズ等の合成樹脂成分、あるいは木質セメント板廃材等がある。可燃性有機成分のソースとして使用される木質セメント板廃材とは、木片、木質繊維束、木質パルプ、木毛、木粉等の木質補強材と、普通ポルトランドセメント、早強セメント、アルミナセメント、高炉スラグセメント、フライアッシュセメント等のセメント類や生石灰、消石灰等の石灰類、あるいは石膏、炭酸マグネシウム等の水硬性無機質材料とを主体とする原料混合物を使用し、乾式法、半乾式法、湿式法、押出成形法等で板状に成形した木質セメント板の廃材であるが、製造工程中の端材や、増改築時に発生するこれらの廃材を粉砕して再利用するものである。
上記木質セメント板廃材には上記木質分が通常10〜30質量%含有される。
本発明において使用される第1の釉薬は、B2 O3 を含まないか、あるいはB2 O3 を5質量%以下の量で含み、したがって無機質板表面に対して侵蝕性がないか侵蝕性が極めて少ない釉薬であり、望ましい釉薬の組成として下記のものがある。
SiO2 45〜65モル%
B2 O3 0〜5 〃
Al2 O3 10〜20 〃
Li2 O 0〜5 〃
R2 O 0〜10 〃
R’O 0〜15 〃
こゝにRはNa,K等のアルカリ金属、R’はMg,Ca,Zn,Ba,Sr等のアルカリ土類金属である。
上記釉薬には更にTiO2 ,ZrO2 等が含まれていてもよい。
Al2 O3 は10モル%に満たない量である場合には、釉薬の無機質板への浸透性が不足し、またAl2 O3 が20モル%を越える量で含まれていると、無機質板の耐火度が高すぎ硬く脆い表面になる。
SiO2 35〜65モル%
B2 O3 10〜25 〃
Al2 O3 5〜10 〃
Li2 O 0〜10 〃
R2 O 0〜15 〃
R’O 0〜15 〃
こゝにRはNa,K等のアルカリ金属、R’はMg,Ca,Zn,Ba,Sr等のアルカリ土類金属である。
上記釉薬には更にTiO2 ,ZrO2 等が含まれていてもよい。
本発明の原料混合物にあっては、通常該水硬性無機質材料15〜35質量%、ガラス質成分含有材料1〜15質量%、骨材20〜45質量%、補強繊維は15〜25質量%程度の比率とされる。骨材が45質量%を上回る量で添加された場合には板の比重が高くなり、軽量化が実施されにくゝ、また逆に強度が低下する傾向になり、かつ加工性も劣化する。一方骨材が20質量%を下回る量で添加された場合には、板の強度が低下しかつ耐凍性も劣化する。更に上記原料に加えて木質セメント板廃材粉砕物および/または可燃性有機成分が使用されてもよい。この場合木質セメント板廃材粉砕物および/または可燃性有機成分の添加量は5〜35質量%程度にすることが望ましい。該木質セメント板廃材粉砕物および/または可燃性有機成分の量が5質量%を下回ると多孔性が充分付与されず、軽量化が実施されない。また該木質セメント板廃材粉砕物および/または可燃性有機成分の量が35質量%を上回ると過度に多孔性になり、機械的強度や耐凍性に劣るようになる。上記水硬性無機質材料としてスラグと石灰質、特に消石灰とを組合わせた場合には、スラグは原料混合物中に15〜30質量%、石灰質はスラグの添加量に対して5〜15質量%とされる。またワラストナイトは原料混合物中に15〜25質量%とされる。
本発明の無機質板は半乾式法または抄造法により製造される。
本発明の無機質板の製造方法としては、原料混合物に水を所定量添加したものを使用する半乾式法が一般に適用される。前記したように本発明では吸水性が低いワラストナイトを使用するので、水添加量を5〜15質量%と少量にすることが出来る。
本発明の製造方法にあっては、型板上に上記水分含有量の原料混練物を散布して該マットを水分存在下で圧締養生硬化せしめ、得られた無機質板生板を焼成して本発明の無機質板とする。
養生硬化は上記圧締状態で行われ、通常45〜80℃の温度で6〜12時間の条件が採用される。
養生硬化後は解圧脱型し、望ましくは絶乾状態に乾燥させ、実加工等の所定の加工を施す。更に該無機質板生板の表面には上記第1の釉薬を全面的に施す。施釉方法としてはスプレー掛け、流し掛け、浸し掛け、塗り掛け等の公知の方法が適用される。第1の釉薬の施釉量は50〜150g/m2 が適当な量である。次いで該無機質板の凸部の部分にのみに第2の釉薬を施す。施釉方法は凹部をマスキングしてスプレー掛け、流し掛け、浸し掛け等の公知の方法で、あるいはNC制御されるインクジェット等の方法が採られる。上記第2の釉薬は未焼成のポーラスな第1の釉薬層に浸透して凸部表面に至る。焼成条件としては、通常1000〜1200℃、10〜30分の条件が採用される。上記焼成中に上記第1の釉薬層を浸透し無機質板凸部表面に達した第2の釉薬に含まれるB2 O3 が該凸部の水硬性無機質材料やガラス質成分含有材料を侵蝕し、骨材が凸部表面にぶつとなって残存する。
焼成温度が1200℃を越えると溶融状態の第1の釉薬と第2の釉薬とが混合してしまうので、凹部も第2の釉薬によって侵蝕されるようになり、凹部と凸部とで外観上のコントラストが少なくなる。
このようにして製造された無機質板は、凹部が平滑であり、凸部表面がぶつぶつ状態の粗面となる。該無機質板は通常厚み15〜20mm、比重は1.2〜1.8程度である。
本発明の無機質板にあっては三層構造にされてもよい。無機質板を軽量化のために多孔構造とすると、表面が多孔になり粗面を呈するために意匠的に劣ったものとなるし、表面の凹部にごみが入り込み汚れが付着し易い。更に表面にエンボス加工によって明確な凹凸模様を付すことが困難である。また吸水し易く吸水による内部構造の劣化、更には耐凍結融解性能の劣化の問題もある。
そこで本発明の無機質板において、このような多孔構造を芯層とし、表裏層は多孔でない構造とした三層構造の無機質板とすれば、芯層が多孔質であるから軽量になり、切削加工性および施工性に優れたものとなるが、表裏層は多孔質でなく緻密構造であるから表面平滑で好ましい外観となり、明確なエンボス加工が容易となる。また表裏層によって板内部に水分が侵入することが防止されるので、内部構造が劣化しにくゝ耐久性のある耐凍結融解性能に優れた板になる。
以下に本発明の実施例を示す。
(1)収縮率(成形時〜焼成後)
成形後の寸法と焼成後の寸法の比率(%)
(2)比重
絶乾比重
(3)曲げ強度
JIS A 1408に準じる(N/mm2 )
(4)表面意匠性
マイクロスコープによる表面写真
(5)切断性
ハンドソーで切断でき、また切断時に割れや欠けが無くスムーズに切断可能か(スムーズに切断できた場合○)
(6)耐凍結融解性能
ASTM A法(水中凍結4時間⇔水中融解2時間)100サイクル、ASTM B法(気中凍結4時間⇔水中融解2時間)100サイクル、JIS A5422(気中凍結2時間⇔水中融解1時間)100サイクル、のすべての試験方法にて異常が無いか(異常無し○)
(7)耐衝撃性
JIS A 1408に準じ、500gの鉄球の落下でひび割れが生じない高さ(m)
上記物性評価の結果は表1に示される。
表面意匠性に関しては試料表面(凸部および凹部)のマイクロスコープ写真によって評価した。図1(凸部)をみると凸部の表面がぶつぶつ状態の粗面となっており、図2(凹部)をみると凹部の表面が平滑であることが認められる。
Claims (6)
- 水硬性無機質材料と、ガラス質成分含有材料と、B2O3によって侵蝕されにくいかまたは侵蝕されない骨材と、補強繊維とを主成分とした原料混合物の板状成形体硬化物であって、表面に凹凸が形成されており、該板状成形体硬化物の表面にB2O3を含まないかあるいはB2O3を5質量%以下の量で含む第1の釉薬を全面的に施し、更にB2O3を10〜25質量%含む第2の釉薬を凸部のみに施し、その後焼成することを特徴とする無機質板の製造方法。
- 該骨材の粒径は0.5〜3mmである請求項1に記載の無機質板の製造方法。
- 該原料混合物中には該水硬性無機質材料は15〜35 質量%、該ガラス質成分含有材料は1〜15質量%、該骨材は20〜45質量%、該補強繊維は15〜25質量%含有されている請求項1または2に記載の無機質板の製造方法。
- 該水硬性無機質材料はスラグおよび石灰類であり、該ガラス質成分含有材料は軟化温度が900℃以下の低融点ガラスであり、該骨材はシャモットおよび/またはケイ砂であり、該補強繊維はワラストナイトである請求項1〜3に記載の無機質板の製造方法。
- 該石灰類は消石灰であり、該原料混合物中スラグは15〜30質量%、消石灰は該スラグの添加量に対して5〜15質量%、該原料混合物中にケイ砂は10〜25質量%添加されている請求項4に記載の無機質板の製造方法。
- 該原料混合物中には木質セメント板廃材粉砕物および/または可燃性有機成分が5〜35質量%添加されている請求項1〜5に記載の無機質板の製造方法。
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