JP4569860B2 - ステンレス鋼部分を含む製品の加熱ろう付け方法 - Google Patents

Description

この発明は、金属製品、特にその一部にステンレス鋼製部品を含む製品を連続してろう付け加熱室へコンベヤーにて搬送し、該ろう付け加熱室内で所定のろう付け温度に加熱してろう付けする方法に関するものである。

ステンレス鋼をはじめとして、金属製品をろう付けするときには、製品を酸化することなしに、即ち還元雰囲気下で行うことが肝要である。このために、還元性ガスである水素を１００容量％雰囲気として低い酸素分圧下で、ろう付けをすることは広く知られている。ステンレス鋼の酸化還元平衡酸素分圧は、図３の平衡図で示される通りであって、比較的に低い温度でステンレス鋼をろう付けするときには、水素１００容量％の雰囲気が使われる。

しかし、水素は空気中での容積が４％で爆発限界となるので、その取り扱いには慎重でなければならない。このために、不活性ガスである窒素やアルゴンに４容量％以下の水素を添加して、炉内雰囲気とすることが行われている。このようにすることにより、爆発の危険性がなく、特に窒素は水素よりも価格が安く経済的ではあるが、ステンレス鋼を含む金属製品のろう付け時に製品を還元下におくか、還元することは難しい状況を生じる。

ところが、窒素等の不活性ガスをグラファイトマッフル内で加熱すると、還元性ガスのＣＯガスを含む雰囲気となることが知られており（例えば、特開昭６０−１９０５１４号公報）、この窒素＋ＣＯガス雰囲気を使ってステンレス鋼を還元下に保って、ろう付けすることができる。この窒素＋ＣＯガスの酸化還元平行酸素分圧は、図３の平衡図で示される通りであり、８００℃以上の高温では顕著に低く、ステンレス鋼を還元下に保つ。
言い換えれば、ステンレス鋼を８００℃近傍、安全をとれば８００℃以上の高温で加熱して、ろう付けするときには、この窒素＋ＣＯガスが還元性ガスとして、保証して使えることになる。また、８００℃以下の場合には、図３に示す通り、ステンレス鋼部分に対する酸化還元平衡酸素分圧以下にならず、還元力が弱く、この窒素雰囲気のみでは不充分であるため、還元力の大きな水素ガスを併用し、ステンレス鋼の酸化還元平衡酸素分圧より低い酸素分圧下の雰囲気ガスとする。
特開昭６０−１９０５１４号公報

この発明の課題は、その一部にステンレス鋼部品を含む製品を、同一の連続炉を使用して、安定した還元性雰囲気の下で、雰囲気ガスの爆発の虞れ等なしに、容易かつ経済的にろう付けを行うことを達成することにある。

上記課題を解決するため、本発明では、ステンレス鋼部分を含む製品の加熱ろう付方法において、ろう付け加熱室を上方に配置し、該加熱室前後の入口と出口にはそれぞれ下方へ向かって連通して延びる前方向と後方向の室を備えた全体が山型をなすいわゆるハンプバック炉型の連続式加熱炉を使用し、前記ろう付け加熱室内にはグラファイト製のマッフルを設けて、コンベヤーにて連続して搬送されてくるステンレス鋼部品を一部に含む製品をろう付する方法であって、前記ろう付け加熱室のマッフル内のろう付け温度は８００℃以下であり、またろう付け雰囲気は水素ガスを４容量％以上添加したステンレス鋼の酸化還元平衡酸素分圧より低い酸素分圧下の不活性ガス雰囲気であり、かつ前記したろう付け加熱室より前方向と後方向に設けられた室内の雰囲気は不活性ガスとすることを特徴とする。
なお、前記ろう付け加熱室のグラファイト製マッフル内の不活性ガスとしては、窒素ガスまたはアルゴンガスが使用され、前記ろう付け加熱室より前方向と後方向に設けられた室内の不活性ガスには窒素ガスを使用することが好ましい。
また、前記したろう付け加熱室より前方向と後方向に設けられた各室内の雰囲気として使用される窒素は、室温以下に保たれることが好ましい。

この発明によれば、単一の連続式加熱炉を使用して、その一部にステンレス鋼部分を含む製品のろう付けを、ろう付け加熱室内の還元性雰囲気条件を適宜定めることにより、容易かつ安全に達成することができる真に優れた効果を有するものである。

図１は、この発明の方法を実施するのに好適な連続式加熱炉の一例を示すものである。装置全体が符号１で示されるこの連続式加熱炉は、いわゆるハンプバック炉型と呼ばれる全体山型をなし、上方に配置されたろう付け加熱室３と、該加熱室前後の入口と出口にはそれぞれ下方へ向かって連通して延びる前方向の前室４と、後方向にある第１冷却室５，第２冷却室６，後室７とから構成されている。
この連続式加熱炉１中をメッシュベルト２が循環して、被ろう付け製品である金属部品を炉内へ順次かつ連続して移送する。符号８は炉の運転操作パネルである。

ろう付け加熱室３は、図２の縦断面図で示される通り、該ろう付け加熱室３を構成する炉殻１０の内周面が断熱材１１で囲まれ、該断熱材１１内側の断面が矩形の空間の中央には、グラファイト製のマッフル９が上記ろう付け加熱室３の長手方向に伸展するように設けられている。マッフル９の外側の上下の空間には、加熱ヒーター１２が設けられ、一方マッフル９の内部の下辺に沿っては、メッシュベルト２が炉の長手方向で移動するように設けられる。なお、図１と２において、ろう付け加熱室３と、その前方向の前室４と、後方向にある第１冷却室５，第２冷却室６，後室７への雰囲気ガスの導入管についてはその図示を省略した。

上記したグラファイト製のマッフルを備えた連続式加熱炉を用いて、ステンレス鋼（SUS304）になる鋼管の側壁に、銅パイプの先端を、銀ろう（BAg7）にてろう付けした。このときのろう付けの条件は以下の通りであり、良好なろう付けができた。
加熱室３内の雰囲気：窒素＋水素６０容量％ガス
室４，５，６，７内の雰囲気：窒素
加熱室３内でのろう付け加熱温度：７４０℃

この実施例１の加熱ろう付けにおいては、銅パイプをステンレス鋼へ低温ろう付けしたが、連続式加熱炉１の加熱室３内の水素リッチな雰囲気は、図３の平衡図で見られる通りに、ステンレス鋼製の鋼管を還元下に保って、美麗にろう付けした。銅パイプも勿論何らの支障なくろう付けされた。
水素をその爆発限界の４容量％以上で、この実施例１では使用したが、背をなす加熱室３内の雰囲気水素ガス（ガス比重0.069:空気1）は、この背より裾状に下方に延びる室４，５，６，７内の窒素ガス（ガス比重0.977）によって加熱室内に抑止されて、炉の入口と出口の周辺の大気から完全に断絶され、爆発の危険性は終始除去された。

参考例１

実施例１と同一の連続式加熱炉を用いて、同一のステンレス鋼管に同一の銅パイプをろう付けした。ただし、この参考例ではろう材にCu-Mnろう（Cu52.5%,Mn38.5%）を用いた。
加熱室３内の雰囲気：窒素＋ＣＯガス
室４，５，６，７内の雰囲気：窒素
加熱室３内でのろう付け加熱温度：９２０℃

同一の炉により、この参考例では、爆発の危険性のある水素を使わずに、ステンレス鋼が還元下で美麗にろう付けできた。因みに、加熱室３のグラファイト製マッフル９内の窒素雰囲気は、その酸素分圧がこの参考例のろう付け温度の９２０℃では最低でも１０^−２０以下に保たれ、ステンレス対して、図３の平衡図にてみられる通りに、還元性である。必要によっては、水素を好ましくはその爆発限界以下の４容量％まで、或いはそれ以上の量で加えても良い。

参考例２

実施例１と同一の連続式加熱炉を用いて、同一のステンレス製鋼管の側壁に、同じ組成のステンレス(SUS304)パイプを、ニッケルろう（BNi5)でろう付けした。
加熱室内の雰囲気：アルゴンガス＋ＣＯガス
室４，５，６，７内の雰囲気：室温以下の窒素
加熱室３内のろう付け加熱温度：１２００℃
この参考例の高温下でのろう付けにおいても、ステンレス製品は美麗に光輝ろう付けされた。この参考例においても、加熱室内の雰囲気がステンレスに対して還元性であることは、図３の平衡図より明らかな通りである。

この発明の方法を実施するために好適な連続式加熱炉全体の一例を説明的に示す側面図である。 図１の連続式加熱炉におけるろう付け加熱室の断面図である。 水素１００容量％雰囲気または、グラファイト製の加熱マッフル内にある不活性雰囲気ガスと対比した、ステンレス鋼の酸化還元平衡酸素分圧を示す平衡図である。

１−連続式加熱炉の全体
２−メッシュベルト
３−ろう付け加熱室
４−前室
５−後室
６−後室
７−後室
８−操作パネル
９−グラファイト製のマッフル
１０−炉殻
１１−断熱材
１２−加熱ヒーター

Claims (3)

1. ろう付け加熱室を上方に配置し、該加熱室前後の入口と出口にはそれぞれ下方へ向かって連通して延びる前方向と後方向の室を備えた連続式加熱炉において、前記ろう付け加熱室内にはグラファイト製のマッフルを設けて、コンベヤーにて連続して搬送されてくる一部にステンレス鋼製部品を含む製品をろう付する方法であって、前記ろう付け加熱室のマッフル内のろう付け温度は８００℃以下であり、またろう付け雰囲気は水素ガスを４容量％以上添加したステンレス鋼の酸化還元平衡酸素分圧より低い酸素分圧下の不活性ガス雰囲気であり、かつ前記したろう付け加熱室より前方向と後方向に設けられた室内の雰囲気は不活性ガスとすることを特徴とするステンレス鋼部分を含む製品の加熱ろう付方法。
2. 前記ろう付け加熱室のグラファイト製マッフル内の不活性ガスが窒素またはアルゴンであって、前記ろう付け加熱室より前方向と後方向に設けられた室内の不活性ガスが窒素である請求項１記載のステンレス鋼部分を含む製品の加熱ろう付け方法。
3. 前記ろう付け加熱室より前方向と後方向に設けられた室内の窒素が室温以下に保たれる請求項２記載のステンレス鋼部分を含む製品の加熱ろう付け方法。

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