JP4569824B2 - 伸縮自在シャフト - Google Patents
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Description
一般に、中間軸には、内軸および筒状の外軸に形成された対応する軌道溝間に、中間軸の軸方向に並ぶ列をなす複数のボールを介在させたボールスプライン構造が採用されている。
また、外軸および内軸をともに中空軸とし、外軸および内軸の弾性復元力を用いて転動体に予圧を与える伸縮自在シャフトが提案されている(例えば特許文献2参照)。
特許文献1では、高トルクが負荷されたときに、内軸の外周面に形成された山形突起が外軸の内周面に形成された半円形の凹部に係合することより、内軸と外軸との相対回転量を規制している。
また、周方向に並ぶ複数の分割体に分割された内軸と外軸との間に、転動体を介在させ、内軸内に配置された環状の板ばねの拡開力を用いて、内軸を拡径方向に弾性的に付勢することより、小トルが伝達されるときに、内軸と外軸とを弾性連結する伸縮自在シャフトが提案されている(例えば特許文献5参照)。
また、本発明において、上記転動体は外軸の外径の10〜40%の直径を有するボールを含む場合がある。例えば、外軸の外径が30mmの場合に、ボールの直径が3mm未満であると、ボールや軌道溝に圧痕が発生するおそれがあり、また、ボールの直径が12mmを超えると、外軸が大型となり、伸縮自在シャフトが大型化する。伸縮自在シャフトの大型化をさせないために外軸の外径を変えずに、内軸を小型化した場合、内軸が強度不足となり、また内輪軌道の接触径が減少する結果、圧痕が付き易くなる。そこで、ボールの直径を上記の範囲に設定することにより、軌道溝等の圧痕発生を防止しつつ伸縮自在シャフトの小型化を図ることができる。
また、本発明において、上記一方の残余部の内周面に形成された上記一対の規制部の一方と上記他方の残余部の内周面に形成された上記一対の規制部の一方とは互いに平行であり、上記一方の残余部の内周面に形成された上記一対の規制部の他方と上記他方の残余部の内周面に形成された上記一対の規制部の他方とは互いに平行であり、上記内軸の断面は実質的に矩形であり、上記内軸の上記少なくとも一対の平坦部は、互いに平行な第1の対の平坦部と、互いに平行な第2の対の平坦部とを含み、上記第1の対の平坦部の一方および上記第2の対の平坦部の一方は、互いの間に内軸の対応する軌道溝を配置する状態で同一平面上に配置され、上記第2の対の平坦部の他方および上記第2の対の平坦部の他方は、互いの間に内軸の対応する軌道溝を配置する状態で同一平面上に配置されている場合がある。
また、上記一対の対向部のそれぞれに対応する、外軸の中心角は、70〜110度の範囲にある場合がある。
また、上記所定の領域に対応する外軸の中心角は、15〜25度の範囲にある場合がある。
また、上記内軸の外周面は、上記第1の対の平坦部間に配置された起伏部と、上記第2の対の平坦部間に配置された起伏部とを含み、各起伏部は、軸方向に延びる凹条を含む場合がある。
また、上記内軸としてチューブが用いられ、内軸の外周面は、上記第1の対の平坦部間および上記第2の対の平坦部間にそれぞれ配置され、径方向外方へ突出する膨出部を含む場合がある。
図1は、本発明の一実施形態に係る伸縮自在シャフトが中間軸に適用されたステアリング装置の模式図であり、図2および図3は伸縮自在シャフトの断面図である。
図1を参照して、ステアリング装置1は、一端にステアリングホイール等の操舵部材2が固定されたステアリングシャフト3、このステアリングシャフト3と自在継手4を介して一体回転可能に連結された伸縮自在シャフトとしての中間軸5とを備える。また、ステアリング装置1は、上記中間軸5と自在継手6を介して一体回転可能に連結されたピニオン軸7と、このピニオン軸7に設けられたピニオン7aに噛み合うラック8aを有して車両の左右方向に延びるラック軸8とを備える。
ラック軸8は、図示しない軸受を介してハウジング12により軸方向に移動自在に支持されている。ピニオン軸7、ラック軸8、タイロッド9、ナックルアーム10および操向輪11を含んで舵取り機構100が構成されている。
伸縮自在シャフトとしての中間軸5は、筒状の外軸13と、この外軸13に嵌め合わされた内軸14とを備える。外軸13および内軸14は、複数列の転動体としてのボール15を介して軸長方向Xに相対移動可能に且つトルク伝達可能に接続されている。
再び図2を参照して、内軸13は中空の軸、すなわちチューブにより形成されている。内軸14の外周面141には、互いの間に二面幅を形成する相対向する二対の平坦部21,22が形成され、外軸13の内周面131には、内軸14の対応する平坦部21,22とそれぞれ係合して外軸13と内軸14との相対回転量を規制するための規制部31,32が形成されている。
凹部29の内面に、互いに平行な一対の平坦部からなる規制部31,31が形成されている。各規制部31は、それぞれ対応する平坦部21に対向している。また、凹部30の内面に、互いに平行な一対の平坦部からなる規制部32,32が形成されている。各規制部32は、それぞれ対応する平坦部22に対向している。
また、外軸13の中心軸線A1および外軸13の各軌道溝16の曲率中心A2を含む平面C1と、各軌道溝16にそれぞれ隣接する規制部31,32との間に、変形促進部としての屈曲部33を設けてあるので、外軸13を撓み易くすることができる。したがって、外軸13やボール15に負荷される応力を緩和することができる。その結果、長期にわたってボール15への予圧力を維持することができ、耐久性に優れた伸縮自在シャフトとしての中間軸5を実現することができる。
また、上記ボール15の直径は、外軸13の外径の10〜40%の範囲にあることが好ましい。すなわち、ボール15の直径が外軸13の外径の10%未満であると、ボール15や軌道溝16,17に圧痕が発生するおそれがある。また、ボール15の直径が外軸13の外径の40%を超えると、外軸13が大型となり、伸縮自在シャフトとしての中間軸5が大型化する。大型化をさせないために外軸13の外径を変えずに、内軸14を小型化した場合、内軸14が強度不足となり、また内輪軌道の接触径が減少する結果、圧痕が付き易くなる。
また、上記ボール15の接触角は5〜40度であることが好ましい。ボールの接触角が5度未満では、ボール15に関するガタが大きくなる。一方、接触角が40度を超えると、内軸14の二対の平坦部21,22が、外軸の対応する規制部31,32に当接し難くなる。そこで、ボール15の接触角B1を5〜40度とすることにより、ガタを少なくしつつ、高トルク負荷時の内軸14と外軸13の相対回転量を所要の大きさに設定することができる。
上記の中心角P1が30度未満では、規制部分に作用する応力に加え、軌道溝16近傍に作用する応力が大きくなり塑性変形を生じ易くなるという不具合がある。また、中心角P1が60度を超えると、規制部分に作用する応力に加え、突出部27,28に作用する応力が大きくなり、塑性変形を生じ易くなるという不具合がある。そこで、上記の中心角P1を30〜60度の範囲に設定した。上記の中心角P1のより好ましい範囲としては40〜50度である。
次いで、図4は本発明の別の実施の形態を示している。図4を参照して、本実施の形態では、中実の内軸14Aの外周面141に、互いの間に二面幅を形成する一対の平坦部210,210が形成されている。筒状の外軸13Aの内周面131に、各平坦部210,210にそれぞれ対向する平坦部310,310が形成されている。各平坦部310の長手方向の一方の端部に、規制部311が形成され、他方の端部に、規制部312が形成されている。
本実施の形態においても、図2の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、内軸14Aや外軸13Aの寸法精度が多少ばらついても、内軸14Aおよび外軸13Aの相対回転量が大きくなることが少ない。
また、外軸13Aの中心軸線A1および各軌道溝16の曲率中心A2を含む平面C1と、各軌道溝16にそれぞれ隣接する規制部311,312との間の領域に対応する、外軸13Aの中心角P2は、30〜60度の範囲にあることが好ましい。上記の中心角P2が30度未満では、規制部分に作用する応力に加え、軌道溝16近傍に作用する応力が大きくなり塑性変形を生じ易くなるという不具合がある。また、上記の中心角P2が60度を超えると、規制部分に作用する応力に加え、突出部27,28に作用する応力が大きくなり、塑性変形を生じ易くなるという不具合がある。そこで、上記の中心角P2を30〜60度の範囲に設定した。上記の中心角P2のより好ましい範囲としては40〜50度である。
次いで、図6は本発明のさらに別の実施の形態を示している。図6を参照して、本実施の形態では、星形をなす筒状の外軸13Bと同じく相似形の星形をなす内軸14Bを用いた。本実施の形態では、外軸13Bの全周に分散して交互に逆向きに屈曲する屈曲部33C〜33Fを配置することになるので、外軸13Bをより撓み易くすることができる。本実施の形態において、内軸14Bを中空の軸としてもよい。
次いで、図7は本発明のさらに別の実施の形態を示している。図7を参照して、本実施の形態の特徴とすることろは、外軸13Cを角形のチューブにより形成すると共に、内軸14Cもこれに相似形の中実の角形の軸に形成した。外軸13Cの角形の相対向する一対の隅部132,132に、ボール15のための軌道溝16がそれぞれ形成されている。各隅部132,132には、当該隅部132,132のもともとのR状部分を利用して径方向外方へ突出する山形の突出部51,52が膨出形成され、各突出部51,52の基端部に変形促進部としての屈曲部33G,33Hが形成されている。
内軸14Dの外周面141は、相対向する第1の対の平坦部41,42と、相対向する第2の対の平坦部43,44と、相対向する第3の対の平坦部45,46とを有している。内軸14Dの外周面141には、内軸14Dの断面中心を挟んで対向する一対の軌道溝17が形成されている。平坦部41および平坦部43は、同一平面上に配置され、平坦部41と平坦部43の間に、一方の軌道溝17が配置されている。また、平坦部42および平坦部44は同一平面上に配置され、平坦部42と平坦部44との間に、他方の軌道溝17が配置されている。
本実施の形態によれば、外軸13Dにおいて、規制部71〜74を軌道溝16に近接させて配置している。軌道溝16とその両側に近接した規制部71〜74を除く残りの部分は、外軸13Dの中心軸線A1を中心とする円弧状をなす一対の対向部75,76とされ、外軸13Dの周方向に関して広い領域とされている。したがって、外軸13Dの回転方向のねじれ量を大きく確保することができる。
また、上述のように、ねじれ量を大きく確保できる円弧状の対向部75,76を、規制部71〜74に滑らかに連続させてあるので、軌道溝16や規制部71〜74における応力集中を緩和することができる。その結果、外軸13Dの強度や耐久性が向上する。
また、内軸14Dにおいても、両軸13D,14Dの回転規制のための平坦部41〜44を、各軌道溝17に近接させて配置しているので、内軸14Dの減肉が可能となる。その結果、内軸14Dの軽量化を達成することができる。
各起伏部47,48には、凸条49と一対の凹条50とが、内軸14Eの軸方向に延びるように形成されている。凸条49の輪郭は、外軸13Dの中心軸線A1を中心とする円周に沿う丸形とされ、これにより、内軸14Eのねじり強度を確保している。凹条50は滑らかな湾曲状の断面をなししている。
次いで、図11は本発明のさらに別の実施の形態を示している。図11を参照して、本実施の形態が図9の実施の形態と異なるのは、内軸14Fとしてチューブを用い、中空状として、軽量化を図った点にある。また、第3の平坦部45,46に代えて、なだらかな山形状に径方向外方へ突出する膨出部55を形成している。これは、チューブからなる内軸14Fのねじり強度を、図9の実施の形態の中実の内軸14Dの強度と同等にするためである。
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、上記各実施の形態において、図12に示すように、保持器を廃止して総ボールとし、列をなすボール15の前後で例えば圧縮コイルばね等の付勢部材61を用いてボール15を両側から付勢するようにしてもよい。その場合、外軸13および内軸14に、ボール抜脱防止部としての塑性変形部62,63をそれぞれ設けて、ボール15の脱落防止の機能を果たさせてもよい。
また、上記各実施の形態において、外軸および内軸の少なくとも一方の表面硬度をビッカース硬度で400〜550Hvの範囲とすることが好ましい。表面硬度が400Hv未満では、ボール15の表面硬度が一般的に700Hv程度であり、硬度差が大きいため、圧痕が入り易い。外軸および内軸の少なくとも一方の表面硬度が550Hvを超えると、硬化処理の際の熱変形により、軸に撓みを生じさせてしまうおそれがある。そこで、上記の範囲に設定することが好ましい。但し、外軸および内軸の少なくとも一方に窒化処理を施す場合には、熱変形を抑えながら表面硬度を700Hv程度まで硬化させることができるので、好ましい。
また、上記各実施の形態において、外軸および内軸の少なくとも一方が調質材(焼入れ、焼き戻が施された材料)により形成されていれば許容応力を上げ、安全率を高く設定できるという点で好ましい。
Claims (12)
- 互いに嵌め合わされた内軸および筒状の外軸と、
内軸および外軸の長手方向に延び互いに対向する軌道溝と、
互いに対向する軌道溝間に弾性的に挟持され軌道溝の延びる方向に列をなす転動体とを備え、
内軸の外周面に、互いの間に二面幅を形成する相対向する少なくとも一対の平坦部が設けられ、
外軸の内周面に、内軸の対応する平坦部とそれぞれ係合して内軸と外軸の相対回転量を規制するための規制部が設けられ、
外軸の軌道溝の曲率中心および外軸の中心軸線を含む平面と規制部との間の、外軸の周方向の所定の領域に、当該所定の領域の変形を促進するための変形促進部が形成されていることを特徴とする伸縮自在シャフト。 - 請求項1において、上記変形促進部は屈曲部および薄肉部の少なくとも一方を含む伸縮自在シャフト。
- 請求項1又は2において、上記転動体は外軸の外径の10〜40%の直径を有するボールを含む伸縮自在シャフト。
- 請求項3において、上記外軸の肉厚は外軸の外径の5〜15%である伸縮自在シャフト。
- 請求項3又は4において、上記ボールの接触角は5〜40度である伸縮自在シャフト。
- 請求項3,4又は5の何れか1項において、上記外軸は角形のチューブにより形成され、角形の相対向する一対の隅角部にボールのための軌道溝がそれぞれ形成されている伸縮自在シャフト。
- 請求項1から5の何れか1項において、上記外軸は、外軸の径方向に相対向する一対の対向部を含み、
上記一対の対向部のそれぞれの断面は、外軸の中心軸線を中心とする円弧状をなしており、
上記外軸は、外軸の周方向に関して、上記一対の対向部の間に配置される一対の残余部を含み、
上記外軸の軌道溝は、一方の残余部の内周面に形成された軌道溝と、他方の残余部の内周面に形成された軌道溝とを含み、
上記外軸の規制部は、一方の残余部の内周面に形成された一対の規制部と、他方の残余部の内周面に形成された一対の規制部とを含む伸縮自在シャフト。 - 請求項7において、上記一方の残余部の内周面に形成された上記一対の規制部の一方と上記他方の残余部の内周面に形成された上記一対の規制部の一方とは互いに平行であり、 上記一方の残余部の内周面に形成された上記一対の規制部の他方と上記他方の残余部の内周面に形成された上記一対の規制部の他方とは互いに平行であり、
上記内軸の断面は実質的に矩形であり、
上記内軸の上記少なくとも一対の平坦部は、互いに平行な第1の対の平坦部と、互いに平行な第2の対の平坦部とを含み、
上記第1の対の平坦部の一方および上記第2の対の平坦部の一方は、互いの間に内軸の対応する軌道溝を配置する状態で同一平面上に配置され、
上記第2の対の平坦部の他方および上記第2の対の平坦部の他方は、互いの間に内軸の対応する軌道溝を配置する状態で同一平面上に配置されていることを特徴とする伸縮自在シャフト。 - 請求項8において、上記一対の対向部のそれぞれに対応する、外軸の中心角は、70〜110度の範囲にある伸縮自在シャフト。
- 請求項9において、上記所定の領域に対応する外軸の中心角は、15〜25度の範囲にある伸縮自在シャフト。
- 請求項8において、上記内軸の外周面は、上記第1の対の平坦部間に配置された起伏部と、上記第2の対の平坦部間に配置された起伏部とを含み、各起伏部は、軸方向に延びる凹条を含む伸縮自在シャフト。
- 請求項8において、上記内軸としてチューブが用いられ、
内軸の外周面は、上記第1の対の平坦部間および上記第2の対の平坦部間にそれぞれ配置され、径方向外方へ突出する膨出部を含む伸縮自在シャフト。
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